(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240905BHJP
F04B 23/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B25F5/00 D
F04B23/02 E
(21)【出願番号】P 2024052858
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-04-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519157727
【氏名又は名称】マクセルイズミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上條 敬一郎
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-161904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0087064(US,A1)
【文献】米国特許第07464578(US,B2)
【文献】国際公開第2012/164590(WO,A1)
【文献】米国特許第10312653(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
F04B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクと、シリンダと、前記シリンダに作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有する本体と、前記シリンダの油圧力によって作動する工具ヘッドを備え、前記油圧ポンプに前記作動油の吸入部が設けられ前記吸入部における吸入口
を覆うように前記オイルタンクが配され
ており、前記オイルタンク
は、前記作動油が収容される側の面に凸部が形成されており、前記シリンダに前記作動油を送液するときに前記吸入口に近づく位置に
前記凸部が形成されている
構成であり、
前記オイルタンクは、前記凸部の幅が前記吸入口の内径の0.5倍以下であり、前記凸部の長さが前記吸入口の内径の2倍以上であること
を特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記オイルタンクは、
前記凸部の向きが前記シリンダの軸線と同じ方向になるように前記凸部が形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクと、シリンダと、前記シリンダに作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有する本体と、前記シリンダの油圧力によって作動する工具ヘッドを備え、前記油圧ポンプに前記作動油の吸入部が設けられ前記吸入部における吸入口
を覆うように前記オイルタンクが配され
ており、前記吸入部は、前記吸入口と交差しつつ前記シリンダの軸線周りに周回するように段差が形成されており、前記段差に亘って
前記吸入口が形成されている
構成であり、
前記段差は、前記シリンダの軸線から遠い位置で前記シリンダのピストン寄りに形成された第1周面と、前記第1周面よりも前記シリンダの軸線に近い位置で前記第1周面よりも前記シリンダのピストンから遠ざかるように形成された第2周面との径差であり、
前記径差は、前記オイルタンクの肉厚の1倍以上の大きさであること
を特徴とする電動工具。
【請求項4】
ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクと、シリンダと、前記シリンダに作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有する本体と、前記シリンダの油圧力によって作動する工具ヘッドを備え、前記油圧ポンプに前記作動油の吸入部が設けられ前記吸入部における吸入口を覆うように前記オイルタンクが配されており、前記吸入部に溝形状の油路が形成されており、前記吸入口に繋がって前記油路が形成されている構成であり、
前記油路は、前記シリンダの軸線と同じ方向にて前記吸入口と前記吸入部の後端とに亘って形成されていること
を特徴とす
る電動工具。
【請求項5】
ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクと、シリンダと、前記シリンダに作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有する本体と、前記シリンダの油圧力によって作動する工具ヘッドを備え、前記油圧ポンプに前記作動油の吸入部が設けられ前記吸入部における吸入口を覆うように前記オイルタンクが配されており、前記吸入部に溝形状の油路が形成されており、前記吸入口に繋がって前記油路が形成されている構成であり、
前記油路は、前記吸入口を前記シリンダの軸線に向かって通る中心線から外れた位置で前記油圧ポンプの周方向にて前記吸入口のひとつと前記吸入口の他のひとつとに亘って形成されていること
を特徴とす
る電動工具。
【請求項6】
前記本体は、前記電動モータを起動する起動スイッチが配されたハンドル部と、前記電動モータに電力を供給するバッテリパックと、前記バッテリパックを脱着可能に取付ける取付部を有すること
を特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧式の電動工具が提案されている(特許文献1:特開2001-018018号公報、特許文献2:特開2022-181248号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-018018号公報
【文献】特開2022-181248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクは、軽量かつ密閉性に優れている。しかし、例えば、連続使用や周囲温度上昇の影響等で作動油が高温になった場合や、経年動作に伴って作動油が漏出しオイルタンク内の作動油が減少した場合において、オイルタンクの挙動が変化して作動油の吸入口を塞いでしまい、作動油の吸入不足に伴うピストン動作の減速や作動油の吸入停止に伴う作動不良に至ることがある。また、電動工具の小型化を図るためにタンク容量を極力小さくしたいが、タンク容量を小さくすると吸入口へのオイルタンク内壁の張り付きが生じるリスクが高くなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクを用いつつ、タンク容量を小さくしても動作信頼性に優れた電動工具を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、一実施形態として、以下に開示する解決策により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係る電動工具は、ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクと、シリンダと、前記シリンダに作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有する本体と、前記シリンダの油圧力によって作動する工具ヘッドを備え、前記油圧ポンプに前記作動油の吸入部が設けられ前記吸入部における吸入口を覆うように前記オイルタンクが配されており、前記オイルタンクは、前記作動油が収容される側の面に凸部が形成されており、前記シリンダに前記作動油を送液するときに前記吸入口に近づく位置に前記凸部が形成されている構成であり、前記オイルタンクは、前記凸部の幅が前記吸入口の内径の0.5倍以下であり、前記凸部の長さが前記吸入口の内径の2倍以上であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、タンク容量を小さくしたオイルタンクが吸入部の吸入口に近接したとしても凸部が吸入口に最初に接することで、吸入口とオイルタンクとに隙間が確保できるので吸入部への油路が確保できる。よって、動作信頼性の高い小型の電動工具にできる。
【0009】
一例として、前記オイルタンクは、前記凸部の幅が前記吸入口の内径の0.5倍以下である。この構成によれば、油路を確保しつつオイルタンクの変形量を確保できる。一例として、前記オイルタンクは、前記凸部の長さが前記吸入口の内径の2倍以上である。この構成によれば、オイルタンクの変形量が大きくなったとしても吸入口を塞がずに油路を確保できる。一例として、前記オイルタンクは、前記作動油が満たされたときに前記シリンダの軸線と同じ方向になる位置に前記凸部が形成されている。この構成によれば、シリンダに作動油を送液するときに吸入口にオイルタンクが最初に近づく位置に凸部が配される。尚且つ、型抜き方向に凸部を形成できるので、金型によるオイルタンクの成形が容易にできる。
【0010】
本発明に係る電動工具は、ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクと、シリンダと、前記シリンダに作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有する本体と、前記シリンダの油圧力によって作動する工具ヘッドを備え、前記油圧ポンプに前記作動油の吸入部が設けられ前記吸入部における吸入口を覆うように前記オイルタンクが配されており、前記吸入部は、前記吸入口と交差しつつ前記シリンダの軸線周りに周回するように段差が形成されており、前記段差に亘って前記吸入口が形成されている構成であり、前記段差は、前記シリンダの軸線から遠い位置で前記シリンダのピストン寄りに形成された第1周面と、前記第1周面よりも前記シリンダの軸線に近い位置で前記第1周面よりも前記シリンダのピストンから遠ざかるように形成された第2周面との径差であり、前記径差は、前記オイルタンクの肉厚の1倍以上の大きさであることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、タンク容量を小さくしたオイルタンクが吸入部の吸入口に近接したとしてもオイルタンクが段差に最初に接することで、吸入口とオイルタンクとに隙間が確保できるので吸入部への油路が確保できる。よって、動作信頼性の高い小型の電動工具にできる。
【0012】
一例として、前記段差は、前記オイルタンクの肉厚の1倍以上である。この構成によれば、オイルタンクの変形量が大きくなったとしても吸入口を塞がずに油路を確保できる。一例として、前記段差は、前記吸入口を前記シリンダの軸線に向かって通る中心線と交差しつつ、前記吸入部を周回するように形成されている。この構成によれば、シリンダに作動油を送液するときにオイルタンクが最初に近づく位置に段差が配される。尚且つ、油圧ポンプの周方向に段差を形成できるので旋盤加工や切削加工による段差の成形が容易にできる。
【0015】
本発明に係る電動工具は、ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクと、シリンダと、前記シリンダに作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有する本体と、前記シリンダの油圧力によって作動する工具ヘッドを備え、前記油圧ポンプに前記作動油の吸入部が設けられ前記吸入部における吸入口を覆うように前記オイルタンクが配されており、前記吸入部に溝形状の油路が形成されており、前記吸入口に繋がって前記油路が形成されている構成であり、前記油路は、前記シリンダの軸線と同じ方向にて前記吸入口と前記吸入部の後端とに亘って形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、吸入部の後端がオイルタンクの深さ方向に露出しているので吸入部への油路が確保できる。尚且つ、シリンダの軸線と同じ方向に溝形状の油路を形成できるのでミーリング加工などの切削加工によって溝形状の油路の成形が容易にできる。
【0016】
本発明に係る電動工具は、ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクと、シリンダと、前記シリンダに作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有する本体と、前記シリンダの油圧力によって作動する工具ヘッドを備え、前記油圧ポンプに前記作動油の吸入部が設けられ前記吸入部における吸入口を覆うように前記オイルタンクが配されており、前記吸入部に溝形状の油路が形成されており、前記吸入口に繋がって前記油路が形成されている構成であり、前記油路は、前記吸入口を前記シリンダの軸線に向かって通る中心線から外れた位置で前記油圧ポンプの周方向にて前記吸入口のひとつと前記吸入口の他のひとつとに亘って形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、オイルタンクが溝形状の油路に接し難い位置になるとともに溝形状の油路の深さが確保できるので、溝形状の油路の摩耗が防止できる。尚且つ、油圧ポンプの周方向に溝形状の油路を形成できるので旋盤加工によって溝形状の油路の成形が容易にできる。
【0017】
一例として、前記本体は、前記電動モータを起動する起動スイッチが配されたハンドル部と、前記電動モータに電力を供給するバッテリパックと、前記バッテリパックを脱着可能に取付ける取付部を有する。この構成によれば、可搬性に優れた電動工具になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクを用いつつ、タンク容量を小さくしても動作信頼性に優れた電動工具が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電動工具の例を示す概略の側面図である。
【
図2】
図2Aは、本実施形態の電動工具に係るオイルタンクの例を示す概略の外観図である。
図2Bは、
図2Aに示すオイルタンクの概略の内部構造図である。
図2Cは、本実施形態の電動工具の第1例の要部を示す概略の内部構造図である。
【
図3】
図3Aは、本実施形態の電動工具の第2例の要部を示す概略の内部構造図である。
図3Bは、第2例に係る吸入部の概略の縦断面図である。
図3Cは、第2例に係る吸入部の概略の横断面図である。
【
図4】
図4Aは、本実施形態の電動工具の第3例の要部を示す概略の内部構造図である。
図4Bは、第3例に係る吸入部5の概略の縦断面図である。
図4Cは、第3例に係る吸入部の概略の横断面図である。
【
図5】
図5Aは、本実施形態の電動工具の第4例の要部を示す概略の内部構造図である。
図5Bは、第4例に係る吸入部の概略の縦断面図である。
図5Cは、第4例に係る吸入部の概略の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態は、電動圧縮機、電動圧着機、電動切断機、その他既知の油圧式の電動工具に適用できる。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0021】
図1は、本実施形態に係る電動工具1の例を示す概略の図である。電動工具1は、シリンダ4に作動油9bを送液する油圧ポンプ8aと、油圧ポンプ8aを駆動する電動モータ8bと、電動モータ8bに電力を供給するバッテリパック14bを有する本体2と、シリンダ4の油圧力によって作動する工具ヘッド3を備える。本実施形態は、現場で作業者が手に持って使用するコードレスタイプの工具である。ここで、電動工具1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。
【0022】
ピストン4aは、軸線P1に沿って往復動する。つまり、ピストン4aは、図中のY方向矢印の方向に前進し、図中のY方向矢印の反対方向に後退する。
図1の例は、圧縮用の工具ヘッド3を搭載した電動工具1である。なお、電動工具1は、作業する際の向きに依らずいずれの向きにおいても正常に作動する。
【0023】
本体2は、シリンダ4と、シリンダ4の後部に配された油圧ポンプ8aと、油圧ポンプ8aの後部に配された減速機付きの電動モータ8bと、電動モータ8bを駆動制御する制御回路6を有する。一例として、油圧ポンプ8aは、電動モータ8bの駆動軸によって回転する斜板カムを有する斜板式のピストンポンプである。シリンダ4の後部と油圧ポンプ8aの吸入部5とは、互いに連結されている。
【0024】
制御回路6と電動モータ8bに電力供給するバッテリパック14bは、本体2の取付部14aに接続されており、取付部14aは本体2のハンドル部2bに連結している。ハンドル部2bは作業者が把持する持ち手部分であり、起動スイッチ2cとリターンスイッチ2dが配されている。起動スイッチ2cを操作することで電動モータ8bおよび油圧ポンプ8aが作動し、シリンダ4に作動油9bが送液されて、工具ヘッド3が作動する。シリンダ4の内部には、リリーフ弁を通じて作動油9bをオイルタンク7に戻すためのリターン流路が形成されており、リターンスイッチ2dを操作することで作動油9bがオイルタンク7に戻される。
【0025】
オイルタンク7は、ゴムまたはエラストマ製であり、油圧ポンプ8aにおける吸入部5の周囲に配されている筒状体である。オイルタンク7は、耐油性かつ絶縁性のゴム質材からなる。一例として、オイルタンク7は、ウレタンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、イソブチレン-イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、または既知の耐油性かつ絶縁性のエラストマからなる。
【0026】
[第1例]
図2Aは、本実施形態の電動工具1に係るオイルタンク7の例を示す概略の外観図である。
図2Bは、
図2Aに示すオイルタンク7の概略の内部構造図である。
図2Cは、本実施形態の電動工具1の第1例の要部を示す概略の内部構造図である。オイルタンク7は、吸入口5aに向かい合った内側の位置に凸部11が形成されている。オイルタンク7は、シリンダ4に作動油9bを送液するときに吸入口5aに近づく位置に、1つまたは複数の凸部11が形成されている。
【0027】
一例として、凸部11の幅は、吸入口5aの内径の0.5倍以下である。一例として、凸部11の長さは、吸入口5aの内径の2倍以上である。一例として、凸部11の高さは、オイルタンク7の肉厚の1倍以上である。この構成によれば、オイルタンク7の変形量が大きくなったとしても吸入口5aを塞がずに油路を確保できる。一例として、凸部11は、作動油9bが満たされたときにシリンダ4の軸線P1と同じ方向または軸線P1と平行な方向になるように形成されている。この構成によれば、型抜き方向に凸部11を形成できるので、金型によるオイルタンク7の成形が容易にできる。
【0028】
[第2例]
図3Aは、本実施形態の電動工具1の第2例の要部を示す概略の内部構造図である。
図3Bは、第2例に係る吸入部5の概略の縦断面図である。
図3Cは、吸入口5aのうちのひとつの中心を通って軸線P1に交差する中心線P2からピストン4aの方向を視たときの第2例に係る吸入部5の概略の横断面図である。油圧ポンプ8aは、吸入部5に段差12が形成されている。吸入口5aは、段差12に亘って形成されている。
【0029】
油圧ポンプ8aは、軸線P1の周りに配されて斜板カムに接しつつ往復動するプランジャ9aを有する。油圧ポンプ8aは、1つまたは複数のプランジャ9aを有する。油圧ポンプ8aからシリンダ4に作動油9bが送液されることでシリンダ室4bの油圧が高くなってピストン4aが往動する。シリンダ4からオイルタンク7に作動油9bが戻ることでシリンダ室4bの油圧が低下してピストン4aが復動する。シリンダ4は、シリンダ室4bにピストン4aが配されており、ピストン4aの軸心に合わせてピストン4aの外周に沿うようコイルバネ4cが配されている。油圧ポンプ8aは、鉄系材料、チタン系材料、ニッケル系材料またはアルミニウム系材料からなる。シリンダ4は、鉄系材料、チタン系材料、ニッケル系材料またはアルミニウム系材料からなる。
【0030】
プランジャ9aの二次側でシリンダ室4bに通じる位置には、作動油9bのプランジャ9aへの逆流を防止する逆流防止弁5dが配されている。また、プランジャ9aの二次側で逆流防止弁5dが配されている位置よりも油圧ポンプ8aに近い位置には、作動油9bのオイルタンク7への逆流を防止する逆流防止弁5dが配されている。
【0031】
一例として、段差12は、オイルタンク7の肉厚の1倍以上である。一例として、段差12は、中心線P2と交差しつつ、複数の吸入部5を周回するように形成されている。この構成によれば、旋盤加工によってシリンダ4を成形することが容易にできる。
【0032】
[第3例]
図4Aは、本実施形態の電動工具の第3例の要部を示す概略の内部構造図である。
図4Bは、第3例に係る吸入部5の概略の縦断面図である。
図4Cは、吸入口5aのうちのひとつの中心を通って軸線P1に交差する中心線P2からピストン4aの方向を視たときの第3例に係る吸入部5の概略の横断面図である。吸入部5は、溝形状の第1油路13aが形成されている。第1油路13aは、V溝形状、U溝形状、凹溝形状、または既知の溝形状である。第1油路13aは、吸入口5aに繋がって形成されている。
【0033】
一例として、第1油路13aは、吸入口5aをシリンダ4の軸線に向かって通る中心線P2から外れた位置で油圧ポンプ8aの周方向にて吸入口5aのひとつと吸入口5aの他のひとつとを互いに繋いで形成されている。この構成によれば、油圧ポンプ8aの周方向に溝形状の第1油路13aを形成できるので旋盤加工によって溝形状の第1油路13aの成形が容易にできる。
【0034】
[第4例]
図5Aは、本実施形態の電動工具の第4例の要部を示す概略の内部構造図である。
図5Bは、第4例に係る吸入部5の概略の縦断面図である。
図5Cは、吸入口5aのうちのひとつの中心を通って軸線P1に交差する中心線P2からピストン4aの方向を視たときの第4例に係る吸入部5の概略の横断面図である。油圧ポンプ8aは、吸入部5に溝形状の第2油路13bが形成されている。第2油路13bは、V溝形状、U溝形状、凹溝形状、または既知の溝形状である。第2油路13bは、軸線P1と同じ方向にて、吸入口5aと吸入部5の後端とに亘って形成されている。この構成によれば、切削加工によって溝形状の第2油路13bの成形が容易にできる。
【0035】
上述の実施形態は、オイルタンク7の内側に線状の凸部11を有する例で説明したが、この例に限定されず、凸部11の形状を島状やドット状や鱗状にすることも可能である。また、各実施例の適用に限定されず、各実施例を組合せて適用することができる。例えば、第1例の凸部11と第2例の段差12とを組み合わせることができる。例えば、第1例の凸部11と第3例の溝形状の第1油路13aとを組み合わせることができる。例えば、第2例の段差12と第4例の溝形状の第2油路13bとを組み合わせることができる。
【0036】
本構成は、上述のピストル型に限定されず、ストレート型を含む可搬型の電動工具に広く適用することができる。本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 電動工具
2 本体、2a 筐体、2b ハンドル部、2c 起動スイッチ、2d リターンスイッチ
3 工具ヘッド
4 シリンダ、4a ピストン、4b シリンダ室、4c コイルバネ
5 吸入部、5a 吸入口、5b 流路、5c チェック弁、5d 逆流防止弁
6 制御回路
7 オイルタンク
8a 油圧ポンプ、8b 電動モータ
9a プランジャ、9b 作動油
11 凸部
12 段差
13a 第1油路、13b 第2油路
14a 取付部、14b バッテリパック
P1 軸線
P2 中心線
【要約】
【課題】ゴムまたはエラストマ製のオイルタンクを用いつつ、タンク容量を小さくしても動作信頼性に優れた電動工具を提供することを目的とする。
【解決手段】電動工具1は、ゴムまたはエラストマ製のオイルタンク7と、シリンダ4と、シリンダ4に作動油9bを送液する油圧ポンプ8aと、油圧ポンプ8aを駆動する電動モータ8bとを有する本体2と、シリンダ4の油圧力によって作動する工具ヘッド3を備える。そして、油圧ポンプ8aに作動油9bの吸入部5が設けられており、吸入部5に形成した吸入口5aの周囲にオイルタンク7が配されており、オイルタンク7の内側に凸部11が形成されている。オイルタンク7の凸部11は、シリンダ4に作動油9bを送液するときに吸入口5aに近づく位置に形成されている。
【選択図】
図1