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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/12 20230101AFI20240905BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240905BHJP
   H10K 59/35 20230101ALI20240905BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20240905BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240905BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20240905BHJP
   H10K 101/25 20230101ALN20240905BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20240905BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K50/16
H10K59/35
H10K85/30
H10K85/60
H10K101:10
H10K101:25
H10K101:40
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2024096623
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2024063426の分割
【原出願日】2014-03-25
(65)【公開番号】P2024116364
(43)【公開日】2024-08-27
【審査請求日】2024-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2013065394
(32)【優先日】2013-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直明
(72)【発明者】
【氏名】西條 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/143434(WO,A1)
【文献】特開2012-186461(JP,A)
【文献】特開2012-238854(JP,A)
【文献】特開2012-254971(JP,A)
【文献】国際公開第2008/015949(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/034751(WO,A1)
【文献】特表2006-518535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0205632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
H05B 33/00- 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項2】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルと重なりを有し、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項3】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なりを有し、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項4】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項5】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルと重なりを有し、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項6】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なりを有し、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項7】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項8】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルと重なりを有し、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項9】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なりを有し、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項10】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項11】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルと重なりを有し、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項12】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有する含窒素複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なりを有し、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項13】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項14】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルと重なりを有し、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項15】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なりを有し、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項16】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項17】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルと重なりを有し、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項18】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有する発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なりを有し、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項19】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項20】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルと重なりを有し、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項21】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なりを有し、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項22】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項23】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルと重なりを有し、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項24】
緑色の発光を示す発光素子と、青色の発光を示す発光素子と、を有するトップエミッション構造の発光装置であって、
前記緑色の発光を示す発光素子は、第1の発光層と、前記第1の発光層の陰極側に接し第1の化合物を有する第1の電子輸送層と、を有し、
前記青色の発光を示す発光素子は、第2の発光層と、前記第2の発光層の陰極側に接し前記第1の化合物を有する第2の電子輸送層と、を有し、
前記第1の発光層が有するπ電子不足型複素芳香族化合物と前記第1の発光層が有するカルバゾール骨格を含む化合物とは、励起錯体を形成する組み合わせであり、
前記励起錯体の発光スペクトルは、前記第1の発光層が有する発光物質の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なりを有し、
前記第1の電子輸送層と前記第2の電子輸送層とは、前記緑色の発光を示す発光素子と前記青色の発光を示す発光素子において共通の電子輸送層として用いられており、
前記第1の化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項25】
請求項1乃至請求項12のいずれか一において、
前記第2の発光層が有するアントラセン骨格を含む有機化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記含窒素複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項26】
請求項13乃至請求項24のいずれか一において、
前記第2の発光層が有するアントラセン骨格を含む有機化合物の三重項励起エネルギー準位は、前記π電子不足型複素芳香族化合物の三重項励起エネルギー準位よりも低い、発光装置。
【請求項27】
請求項25または請求項26において、
前記第2の発光層が有する前記アントラセン骨格を含む有機化合物の三重項励起エネルギー準位は、Ir(ppy)を添加し、燐光発光を測定して求めたものである、発光装置。
【請求項28】
請求項2、3、5、6、8、9、11、12、14、15、17、18、20、21、23及び24のいずれか一において、
前記励起錯体の発光スペクトルのピークは、前記発光物質の吸収スペクトルのピークよりも長波長である、発光装置。
【請求項29】
請求項2、3、5、6、8、9、11、12、14、15、17、18、20、21、23、24及び28のいずれか一において、
前記発光物質は、イリジウムを含み、520nm~600nmに発光のピークを有する、発光装置。
【請求項30】
請求項1乃至請求項29のいずれか一において、
前記第1の発光層の陽極側に第3の層を有し、
前記第3の層は芳香族アミン化合物を有する、発光装置。
【請求項31】
請求項1乃至請求項30のいずれか一において、
前記第2の発光層の陽極側に第4の層を有し、
前記第4の層はカルバゾール骨格を含む化合物を有する、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、電界を加えることにより発光が得られる発光層を一対の電極間に挟
んでなる発光素子、また、このような発光素子を有する発光装置、電子機器、及び照明装
置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型軽量、高速応答性、直流低電圧駆動などの特徴を有する有機化合物を発光層として
用いた発光素子は、次世代のフラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。特
に、発光素子をマトリクス状に配置した表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、視
野角が広く視認性が優れる点に優位性があると考えられている。
【0003】
発光素子の発光機構は、一対の電極間に発光体を含む発光層を挟んで電圧を印加するこ
とにより、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が発光層の発光中心で
再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に緩和する際にエネルギーを
放出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起状態と三重項励起状態が知ら
れ、発光はどちらの励起状態を経ても可能であると考えられており、一重項励起状態(S
)からの発光が蛍光、三重項励起状態(T)からの発光が燐光と呼ばれている。
【0004】
このような発光素子に関しては、素子特性または生産性を向上させる為に、素子構造の
改良や材料開発等が盛んに行われている。また、発光素子としては、有機EL素子の研究
開発が精力的に行われており、フルカラー化への開発が活発化している。
【0005】
フルカラー化の手法の一つとして、例えば、発光層を画素ごとに塗り分ける手法がある
。該発光層は、シャドウマスクを用いて必要な画素のみに蒸着される。この場合、工程を
減らしてコストを削減するために、発光層以外の層、例えば、正孔輸送層、電子輸送層、
及び陰極を複数の画素で共通に形成する構成が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-6362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された構成の場合、正孔輸送層または電子輸送層は、複数の画素で共
通して用いられるために、異なる色を表示する画素ごとで駆動電圧などの素子特性が異な
る。また、このような構成の場合、異なる色を表示する画素で、正孔輸送層または電子輸
送層が共通のため、画素ごとに最適な素子構成になっておらず、複数の画素の少なくとも
いずれか一つの画素において、素子特性の異常、例えば駆動電圧の上昇または信頼性の低
下などが発生するといった課題がある。
【0008】
上述した課題に鑑み、本発明の一態様では、一対の電極間に複数の発光層を有する発光
素子であって、該複数の発光層の各々において、駆動電圧が低く、且つ発光効率が高い発
光素子を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、陰極と陽極の間に第1の発光層乃至第3の発光層を具備する発光素
子であって、第1の発光層は、第1の燐光性材料と、第1の電子輸送性材料と、を有し、
第2の発光層は、第2の燐光性材料と、第2の電子輸送性材料と、を有し、第3の発光層
は、蛍光性材料と、第3の電子輸送性材料と、を有し、第1の発光層乃至第3の発光層は
、それぞれ陰極側に配置された電子輸送層に接して設けられ、電子輸送層を形成する材料
の三重項励起エネルギー準位が、第1の電子輸送性材料及び第2の電子輸送性材料の三重
項励起エネルギー準位よりも低いことを特徴とする発光素子である。
【0010】
このように電子輸送層が第1乃至第3の発光層に共通して接する構成とすることで、発
光素子形成時の生産性を高めることができる。また、該電子輸送層は、第1の電子輸送性
材料及び第2の電子輸送性材料の三重項励起エネルギー準位(T1準位)よりもT1準位
が低い材料で形成されている。第1の電子輸送性材料及び第2の電子輸送性材料の電子輸
送性が高いため、本発明の一態様の発光素子の発光領域は、発光層の正孔輸送層側に形成
される。そのため、第1の発光層及び第2の発光層は、電子輸送層の低いT1準位に影響
を受けず、駆動電圧が低く、且つ発光効率が高い素子構成となる。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、陰極と陽極の間に第1の発光層乃至第3の発光層を具備
する発光素子であって、第1の発光層は、第1の燐光性材料と、第1の電子輸送性材料と
を有し、第2の発光層は、第2の燐光性材料と、第2の電子輸送性材料とを有し、第3の
発光層は、蛍光性材料と、第3の電子輸送性材料とを有し、且つ第1の発光層及び第2の
発光層の陰極側に接して設けられ、第3の電子輸送性材料の三重項励起エネルギー準位が
、第1の電子輸送性材料及び第2の電子輸送性材料の三重項励起エネルギー準位よりも低
いことを特徴とする発光素子である。
【0012】
このように第3の発光層が第1の発光層及び第2の発光層の陰極側に接して設けられる
ことで、第3の発光層は、第1の発光層上及び第2の発光層上においては、電子輸送層と
して機能し、第3の発光層においては、発光層として機能する。なお、第3の発光層に含
まれる蛍光性材料(ドーパント、またはゲスト材料ともいう)は、第1の電子輸送性材料
及び第2の電子輸送性材料の電子輸送性が高いため、第1の発光層上及び第2の発光層上
では、発光に寄与しない。一方で、第3の発光層においては、蛍光性材料からの発光が得
られる。すなわち、第3の発光層が電子輸送層と発光層の機能を同時に備えるため、第1
の発光層上及び第2の発光層上においては、電子輸送層として共通に用いることが可能と
なり、第3の発光層においては発光層として用いることが可能となる。したがって、発光
素子形成時の生産性を高めることができる。
【0013】
また、本発明の一態様は、発光素子を有する発光装置、発光装置を有する電子機器、及
び照明装置も範疇に含めるものである。したがって、本明細書中における発光装置とは、
画像表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター
、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTCP
(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの
先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On
Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置
に含むものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様である発光素子は、一対の電極間に複数の発光層を有する発光素子であ
って、該複数の発光層の各々において、駆動電圧が低く、且つ発光効率が高い発光素子を
提供することができる。また、該発光素子を形成する際の生産性を向上させることが実現
できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
図2】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
図3】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
図4】本発明の一態様の発光素子を用いた発光装置を説明する図。
図5】本発明の一態様である発光素子及び発光装置を用いた電子機器を説明する図。
図6】実施例の発光素子を説明する図。
図7】発光素子1及び比較発光素子2の電流密度-輝度特性を示す図。
図8】発光素子1及び比較発光素子2の電圧-輝度特性を示す図。
図9】発光素子1及び比較発光素子2の輝度-電流効率特性を示す図。
図10】発光素子1及び比較発光素子2の電圧-電流特性を示す図。
図11】発光素子1及び比較発光素子2の発光スペクトルを示す図。
図12】発光素子3及び比較発光素子4の電流密度-輝度特性を示す図。
図13】発光素子3及び比較発光素子4の電圧-輝度特性を示す図。
図14】発光素子3及び比較発光素子4の輝度-電流効率特性を示す図。
図15】発光素子3及び比較発光素子4の電圧-電流特性を示す図。
図16】発光素子3及び比較発光素子4の発光スペクトルを示す図。
図17】発光素子5及び比較発光素子6の電流密度-輝度特性を示す図。
図18】発光素子5及び比較発光素子6の電圧-輝度特性を示す図。
図19】発光素子5及び比較発光素子6の輝度-電流効率特性を示す図。
図20】発光素子5及び比較発光素子6の電圧-電流特性を示す図。
図21】発光素子5及び比較発光素子6の発光スペクトルを示す図。
図22】発光素子7及び発光素子8の電流密度-輝度特性を示す図。
図23】発光素子7及び発光素子8の電圧-輝度特性を示す図。
図24】発光素子7及び発光素子8の輝度-電流効率特性を示す図。
図25】発光素子7及び発光素子8の電圧-電流特性を示す図。
図26】発光素子7及び発光素子8の発光スペクトルを示す図。
図27】発光素子1、3、7、8及び比較発光素子2、4の信頼性試験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内
容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、
必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0018】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子を構成する上での概念および具体的
な発光素子の構成について説明する。まず、本発明の一態様である発光素子について、図
1(A)、(B)を用いて説明する。
【0020】
図1(A)に示す発光素子は、一対の電極(陽極101及び陰極103)間に発光層1
15を有し、発光層115は、第1の燐光性材料121aと第1の電子輸送性材料122
aを含む第1の発光層115aと、第2の燐光性材料131aと第2の電子輸送性材料1
32aを含む第2の発光層115bと、蛍光性材料141aと第3の電子輸送性材料14
2aを含む第3の発光層115cと、を有する。
【0021】
また、第1の発光層115a、第2の発光層115b、第3の発光層115cのそれぞ
れは、陰極103側に配置された電子輸送層117と接して設けられる。
【0022】
また、第1の発光層115aは、第1の燐光性材料121aと、第1の電子輸送性材料
122aと、さらに第1の正孔輸送性材料123aを含む構成としてもよい。また、第2
の発光層115bは、第2の燐光性材料131aと、第2の電子輸送性材料132aと、
さらに第2の正孔輸送性材料133aを含む構成としてもよい。
【0023】
第1の発光層115aにおいて、第1の電子輸送性材料122aは、ホスト材料として
機能し、第1の燐光性材料121aは、ゲスト材料(ドーパントともいう)として機能す
る。また、第1の正孔輸送性材料123aは、アシスト材料として機能する。すなわち、
ホスト材料として機能する第1の電子輸送性材料122aに第1の燐光性材料121a及
び第1の正孔輸送性材料123aが分散された構成である。また、第2の発光層115b
において、第2の電子輸送性材料132aは、ホスト材料として機能し、第2の燐光性材
料131aは、ゲスト材料として機能する。また、第2の正孔輸送性材料133aは、ア
シスト材料として機能する。すなわち、ホスト材料として機能する第2の電子輸送性材料
132aに第2の燐光性材料131a及び第2の正孔輸送性材料133aが分散された構
成である。また、第3の発光層115cにおいて、第3の電子輸送性材料142aは、ホ
スト材料として機能し、蛍光性材料141aは、ゲスト材料として機能する。すなわち、
ホスト材料として機能する第3の電子輸送性材料142aに蛍光性材料141aが分散さ
れた構成である。
【0024】
例えば、第1の燐光性材料121aとしては、赤色の発光を示す燐光性材料を発光物質
として用いることができる。また、第2の燐光性材料131aとしては、緑色の発光を示
す燐光性材料を発光物質として用いることができる。また、蛍光性材料141aとしては
、青色の発光を示す蛍光性材料を発光物質として用いることができる。なお、本明細書中
において、赤色の発光を示す燐光性材料の最大発光波長は、570nmより大きく740
nm以下であり、緑色の発光を示す燐光性材料の最大発光波長は、500nmより大きく
570nm以下であり、青色の発光を示す蛍光性材料の最大発光波長は、400nm以上
500nm以下である。
【0025】
また、図1(A)において、一対の電極間には、発光層115及び電子輸送層117以
外にも、正孔注入層111、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b、第
3の正孔輸送層113c、及び電子注入層119が形成されている。
【0026】
より具体的には、図1(A)に示す発光素子は、基板100上の陽極101と、陽極1
01上の正孔注入層111と、正孔注入層111上の第1の正孔輸送層113aと、正孔
注入層111上の第2の正孔輸送層113bと、正孔注入層111上の第3の正孔輸送層
113cと、第1の正孔輸送層113a上の第1の発光層115aと、第2の正孔輸送層
113b上の第2の発光層115bと、第3の正孔輸送層113c上の第3の発光層11
5cと、第1の発光層115a、第2の発光層115b、及び第3の発光層115c上の
電子輸送層117と、電子輸送層117上の電子注入層119と、電子注入層119上の
陰極103と、を有する。
【0027】
このように必要に応じて、一対の電極間に発光層115及び電子輸送層117以外の層
、例えば、正孔注入性もしくは電子注入性の物質、正孔輸送性もしくは電子輸送性の物質
、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)等を含む層を形成
してもよい。ただし、これらは必ずしも必要ではない。
【0028】
また、図1(A)に示す発光素子においては、第1の正孔輸送層113aと、第2の正
孔輸送層113bと、第3の正孔輸送層113cと、が各発光層(第1の発光層115a
、第2の発光層115b、及び第3の発光層115c)に対して、それぞれ配置されてい
る。ただし、この構成に限定されず、正孔輸送層は、各発光層に対して共通に形成しても
よい。また、図1(A)に示す発光素子においては、第1の正孔輸送層113a、第2の
正孔輸送層113b、及び第3の正孔輸送層113cの膜厚を調整することによって、各
発光層から射出される光の光学距離を調整することができる。
【0029】
また、図1(A)に示す発光素子においては、発光層115(第1の発光層115a、
第2の発光層115b、及び第3の発光層115c)は、電子輸送層117、電子注入層
119及び陰極103が共通している。このように、電子輸送層117、電子注入層11
9及び陰極103を発光層115で共通して用いることによって、発光素子形成時の生産
性を高めることができる。なお、図1(A)に示す発光素子形成時の塗り分け工程は、第
1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b及び第3の正孔輸送層113cを正
孔注入層111の上に形成し、第1の発光層115a、第2の発光層115b及び第3の
発光層115cをそれぞれ第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b及び第
3の正孔輸送層113cの上に形成する。また、各正孔輸送層と各発光層を連続して形成
することで、塗り分け回数を低減することが可能である。例えば、第1の正孔輸送層11
3aと第1の発光層115aを連続して形成し、第2の正孔輸送層113bと第2の発光
層115bを連続して形成し、第3の正孔輸送層113cと第3の発光層115cを連続
して形成する。したがって、合計3回の塗り分けで、図1(A)に示す発光素子を形成す
ることができる。
【0030】
また、図1(A)に示す発光素子は、第1の電子輸送性材料122a及び第2の電子輸
送性材料132aの電子輸送性が非常に高い。したがって、第1の発光層115a及び第
2の発光層115bの発光領域は、第1の正孔輸送層113a及び第2の正孔輸送層11
3b近傍の領域に形成される。そのため、第1の発光層115a及び第2の発光層115
bからの発光は、電子輸送層117の三重項励起エネルギー準位が第1の電子輸送性材料
122a及び第2の電子輸送性材料132aの三重項励起エネルギーよりも低いにもかか
わらず、電子輸送層117の三重項励起エネルギー準位の影響を受けない、あるいは極め
て影響を受けにくい。
【0031】
すなわち、本発明の一態様の発光素子では、第1の発光層115a、第2の発光層11
5b、及び第3の発光層115cにおいて、共通の電子輸送層117を用いた場合におい
ても、各発光層において、最適化された素子構成とすることができ、生産性が高く、且つ
発光効率の高い発光素子を実現することができる。
【0032】
次に、図1(B)に示す発光素子について、以下説明を行う。
【0033】
図1(B)に示す発光素子は、一対の電極(陽極101及び陰極103)間に発光層1
15を有し、発光層115は、第1の燐光性材料121aと第1の電子輸送性材料122
aを含む第1の発光層115aと、第2の燐光性材料131aと第2の電子輸送性材料1
32aを含む第2の発光層115bと、第1の発光層115a及び第2の発光層115b
を覆い、且つ蛍光性材料141aと第3の電子輸送性材料142aを含む第3の発光層1
15cと、を有する。
【0034】
また、第3の発光層115cは、第1の発光層115a及び第2の発光層115bの陰
極103側に接して設けられている。
【0035】
また、第1の発光層115aは、第1の燐光性材料121aと、第1の電子輸送性材料
122aと、さらに第1の正孔輸送性材料123aを含む構成としてもよい。また、第2
の発光層115bは、第2の燐光性材料131aと、第2の電子輸送性材料132aと、
さらに第2の正孔輸送性材料133aを含む構成としてもよい。
【0036】
また、図1(B)において、一対の電極間には、発光層115以外にも、正孔注入層1
11、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b、第3の正孔輸送層113
c、及び電子注入層119が形成されている。ただし、これらは必要に応じて設ければよ
い。
【0037】
より具体的には、図1(B)に示す発光素子は、基板100上の陽極101と、陽極1
01上の正孔注入層111と、正孔注入層111上の第1の正孔輸送層113aと、正孔
注入層111上の第2の正孔輸送層113bと、正孔注入層111上の第3の正孔輸送層
113cと、第1の正孔輸送層113a上の第1の発光層115aと、第2の正孔輸送層
113b上の第2の発光層115bと、第1の発光層115a、第2の発光層115b、
及び第3の正孔輸送層113c上の第3の発光層115cと、第3の発光層115c上の
電子注入層119と、電子注入層119上の陰極103と、を有する。
【0038】
図1(B)に示す発光素子においては、第3の発光層115cは、発光層と第1の発光
層115a及び第2の発光層115bの電子輸送層として機能する。
【0039】
なお、第1の電子輸送性材料122a、及び第2の電子輸送性材料132aの電子輸送
性が高いため、第3の発光層115cに含まれる蛍光性材料141aは、第1の発光層1
15a及び第2の発光層115bでは、発光に寄与しない。一方で、第3の発光層115
cにおいては、第3の発光層115cに含まれる蛍光性材料141aからの発光が得られ
る。
【0040】
すなわち、本発明の一態様の発光素子では、第3の発光層115cが電子輸送層と発光
層の機能を同時に備えるため、第1の発光層115a上及び第2の発光層115b上にお
いては、第3の発光層115cを電子輸送層として共通に用いることが可能となり、第3
の正孔輸送層113c上においては、第3の発光層115cを発光層として用いることが
可能となる。したがって、生産性が高く、且つ発光効率の高い発光素子を実現することが
できる。なお、図1(B)に示す発光素子形成時の塗り分け工程は、第1の正孔輸送層1
13a、第2の正孔輸送層113b及び第3の正孔輸送層113cを正孔注入層111の
上に形成し、第1の発光層115a、第2の発光層115bをそれぞれ第1の正孔輸送層
113a及び第2の正孔輸送層113bの上に形成し、第3の発光層115cを第1の発
光層115a、第2の発光層115b及び第3の正孔輸送層113cの上に形成する。ま
た、各正孔輸送層と各発光層を連続して形成することで、塗り分け回数を低減することが
可能である。例えば、第1の正孔輸送層113aと第1の発光層115aを連続して形成
し、第2の正孔輸送層113bと第2の発光層115bを連続して形成し、第3の正孔輸
送層113cを形成する。その後、第1の発光層115a、第2の発光層115b、及び
第3の正孔輸送層113c上に第3の発光層115cを形成する。したがって、合計3回
の塗り分けで、図1(B)に示す発光素子を形成することができる。また、図1(B)に
示す発光素子は、図1(A)に示す発光素子よりも電子輸送層117を形成する工程を省
略することが可能となる。
【0041】
ここで、図1(A)、(B)に示す発光素子のその他の構成要素について、以下詳細に
説明する。
【0042】
<基板>
基板100は、発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えばガラ
ス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい
。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポ
リカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等
が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポ
リ塩化ビニル等からなる)、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素
子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0043】
<陽極>
陽極101は、導電性を有する金属、合金、導電性化合物等を1種又は複数種用いて形
成することができる。特に、仕事関数の大きい(4.0eV以上)材料を用いることが好
ましい。例えば、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)
、珪素もしくは酸化珪素を含有したインジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化
タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン、金、白金、ニッケル
、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又は金属材料の
窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。または、銀、銅、アルミニウム、チタン
等をナノワイヤ状(もしくは細線状)に形成し、その上に導電性物質(導電性有機材料や
グラフェンなど)を、塗布法又は印刷法等によって形成することで陽極101を形成して
もよい。
【0044】
<陰極>
陰極103は、導電性を有する金属、合金、導電性化合物などを1種又は複数種用いて
形成することができる。特に、仕事関数が小さい(3.8eV以下)材料を用いることが
好ましい。例えば、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素(例えば、リチウム、セ
シウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシ
ウム等)、これら元素を含む合金(例えば、Mg-Ag、Al-Li)、ユーロピウム、
イッテルビウム等の希土類金属、これら希土類金属を含む合金、アルミニウム、銀等を用
いることができる。
【0045】
<正孔注入層及び正孔輸送層>
正孔注入層111、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b、及び第3
の正孔輸送層113cに用いる正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’-ビス
[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-N
PD)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-
ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カル
バゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリ
ス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,
4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミ
ン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-
2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化
合物、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9
-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニル
カルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:
PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3
-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる
。その他、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5
-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4
-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:C
zPA)等のカルバゾール誘導体、等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に
10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸
送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0046】
さらに、正孔注入層111、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b、
及び第3の正孔輸送層113cとして、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK
)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{
N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フ
ェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)ポリ[N,N’-ビス(4-ブチル
フェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)など
の高分子化合物を用いることもできる。
【0047】
また、正孔注入層111、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b、及
び第3の正孔輸送層113cに用いることができるアクセプター性物質としては、遷移金
属酸化物を挙げることができる。該遷移金属酸化物としては、元素周期表における第4族
乃至第8族に属する金属の酸化物が好ましい。具体的には、酸化モリブデンが特に好まし
い。
【0048】
<第1の発光層>
第1の発光層115aは、第1の燐光性材料121a(ゲスト材料)、第1の電子輸送
性材料122a(ホスト材料)、及び第1の正孔輸送性材料123a(アシスト材料)を
有している。また、第1の発光層115aは、赤色の発光を示すと好ましい。
【0049】
なお、ホスト材料(または、アシスト材料)のT1準位は、ゲスト材料のT1準位より
も高いことが好ましい。ホスト材料のT1準位がゲスト材料のT1準位よりも低いと、発
光に寄与するゲスト材料の三重項励起エネルギーをホスト材料が消光(クエンチ)してし
まい、発光効率の低下を招くためである。
【0050】
また、第1の燐光性材料121a(ゲスト材料)、第1の電子輸送性材料122a(ホ
スト材料)、及び第1の正孔輸送性材料123a(アシスト材料)は、励起錯体を形成で
きる組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、第1の燐光性材料121a(ゲス
ト材料)の吸収スペクトルと重なり、励起錯体の発光スペクトルのピークが第1の燐光性
材料121a(ゲスト材料)の吸収スペクトルのピークよりも長波長であると好ましい。
【0051】
ここで、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動効率を高めるため、分子間の移
動機構として知られているフェルスター機構(双極子-双極子相互作用)及びデクスター
機構(電子交換相互作用)を考慮した上で、ホスト材料の発光スペクトル(一重項励起状
態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギ
ー移動を論じる場合は燐光スペクトル)とゲスト材料の吸収スペクトル(より詳細には、
最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯におけるスペクトル)との重なりが大きくなるこ
とが好ましい。
【0052】
しかしながら通常、ホスト材料の蛍光スペクトルを、ゲスト材料の最も長波長(低エネ
ルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ねることは困難である。なぜならば、そ
のようにしてしまうと、ホスト材料の燐光スペクトルは蛍光スペクトルよりも長波長(低
エネルギー)側に位置するため、ホスト材料のT1準位が燐光性化合物のT1準位を下回
ってしまい、上述したクエンチの問題が生じてしまうからである。一方、クエンチの問題
を回避するため、ホスト材料のT1準位が燐光性化合物のT1準位を上回るように設計す
ると、今度はホスト材料の蛍光スペクトルが短波長(高エネルギー)側にシフトするため
、その蛍光スペクトルはゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸
収スペクトルと重ならなくなる。したがって、ホスト材料の蛍光スペクトルをゲスト材料
の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ね、ホスト材料の
一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に高めることは、通常困難である。
【0053】
そこで本発明の一態様の発光素子が有する、第1の発光層115aは、ゲスト材料であ
る第1の燐光性材料121a(第1の物質とする)とホスト材料である第1の電子輸送性
材料122a(第2の物質とする)の他に、第1の正孔輸送性材料123a(第3の物質
とする)を含み、ホスト材料と第3の物質は励起錯体(エキサイプレックスともいう)を
形成する組み合わせであることが好ましい。この場合、発光層におけるキャリア(電子及
び正孔)の再結合の際にホスト材料と第3の物質は、励起錯体を形成する。
【0054】
これにより、発光層において、ホスト材料の蛍光スペクトル及び第3の物質の蛍光スペ
クトルは、より長波長側に位置する励起錯体の発光スペクトルに変換される。そして、励
起錯体の発光スペクトルとゲスト材料の吸収スペクトルとの重なりが大きくなるように、
ホスト材料と第3の物質を選択すれば、一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に
高めることができる。なお、三重項励起状態に関しても、ホスト材料ではなく励起錯体か
らのエネルギー移動が生じると考えられる。このような構成を適用した本発明の一態様で
は、励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルとの重なりを利用したエ
ネルギー移動により、エネルギー移動効率を高めることができるため、外部量子効率の高
い発光素子を実現することができる。
【0055】
また、第1の電子輸送性材料122a(ホスト材料)と第1の正孔輸送性材料123a
(アシスト材料)を用いる場合、その混合比によってキャリアバランスを制御することが
できる。具体的には、第1の電子輸送性材料122a:第1の正孔輸送性材料123a=
1:9~9:1(重量比)の範囲とするのが好ましい。
【0056】
また、励起錯体同士のエネルギー移動(励起子拡散)は起こりにくいため、上述のよう
に励起錯体を利用することで、電子輸送層117への励起子拡散を防ぐことができる。
【0057】
第1の発光層115aに用いることのできる第1の燐光性材料121aとしては、例え
ば600nm~700nmに発光のピークを有する燐光性材料が挙げられる。該燐光性材
料としては、例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェ
ニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dib
m)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメ
タナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dpm)])、ビス
[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジ
ウム(III)(略称:[Ir(d1npm)(dpm)])のようなピリミジン骨格
を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフ
ェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)]
)、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム
(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス
[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称
:[Ir(Fdpq)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジ
ウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)
(略称:[Ir(piq)])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イ
リジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])
のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述した中でも、
ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れ
るため、特に好ましい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の
良い赤色発光が得られる。
【0058】
第1の発光層115aに用いることのできる第1の電子輸送性材料122aとしては、
含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族化合物が好ましく、例えば、2
-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサ
ジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-t
ert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス
[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]
ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾ
ール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’
’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾー
ル)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1
-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)などのポリアゾ
ール骨格を有する複素環化合物(オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリア
ゾール誘導体等)や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ
[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾ
チオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称
:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフ
ェニル-3-イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4
,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6m
PnP2Pm)、4,6-ビス〔3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル〕ピリミジン(
略称:4,6mDBTP2Pm-II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物(ピラ
ジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピリダジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノ
キサリン誘導体等)や、3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ピリ
ジン(略称:3,5DCzPPy)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3
-イル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物(ピ
リジン誘導体、キノリン誘導体、ジベンゾキノリン誘導体等)が挙げられる。上述した中
でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼
性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有する複素環
化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0059】
また、第1の発光層115aに用いることのできる第1の正孔輸送性材料123aとし
ては、π電子過剰型複素芳香族化合物(例えばカルバゾール誘導体やインドール誘導体)
や芳香族アミン化合物が好ましく、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N
-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル
)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:T
PD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フ
ェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフ
ルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’
-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)
、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニル
アミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9
H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(
1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニル
アミン(略称:PCBANB)、4、4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニ
ル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,
9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イ
ル)フェニル]-フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[
4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-スピロ-9,9’-
ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合
物や、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N
-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェ
ニル)-9-フェニル-カルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニ
ル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や
、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)
(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-
フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)
、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニル
ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物
や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(
略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-
イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などの
フラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化
合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高
く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。
【0060】
<第2の発光層>
第2の発光層115bは、第2の燐光性材料131a(ゲスト材料)、第2の電子輸送
性材料132a(ホスト材料)、及び第2の正孔輸送性材料133a(アシスト材料)を
有している。また、第2の発光層115bは、緑色の発光を示すと好ましい。
【0061】
また、第2の燐光性材料131a(ゲスト材料)、第2の電子輸送性材料132a(ホ
スト材料)、及び第2の正孔輸送性材料133a(アシスト材料)は、励起錯体を形成で
きる組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、第2の燐光性材料131a(ゲス
ト材料)の吸収スペクトルと重なり、励起錯体の発光スペクトルのピークが第2の燐光性
材料131a(ゲスト材料)の吸収スペクトルのピークよりも長波長であると好ましい。
なお、励起錯体の構成については、第1の発光層115aと同様の構成を第2の発光層1
15bにも適用することができる。
【0062】
また、第2の電子輸送性材料132a(ホスト材料)と第2の正孔輸送性材料133a
(アシスト材料)を用いる場合、その混合比によってキャリアバランスを制御することが
できる。具体的には、第2の電子輸送性材料132a:第2の正孔輸送性材料133a=
1:9~9:1(重量比)の範囲とするのが好ましい。
【0063】
また、励起錯体同士のエネルギー移動(励起子拡散)は起こりにくいため、上述のよう
に励起錯体を利用することで、電子輸送層117への励起子拡散を防ぐことができる。
【0064】
第2の発光層115bに用いることのできる第2の燐光性材料131aとしては、例え
ば520nm~600nmに発光のピークを有する燐光性材料が挙げられる。該燐光性材
料としては、例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(I
II)(略称:[Ir(mppm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリ
ミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])、(アセチルア
セトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称
:[Ir(mppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert
-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBup
pm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[4-(2-ノルボルニル)-
6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(endo-,exo-混合物)(略
称:Ir(nbppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-
6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称
:[Ir(mpmppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-
ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(aca
c)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセト
ナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称
:[Ir(mppr-Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イ
ソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[I
r(mppr-iPr)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリ
ジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(
略称:[Ir(ppy)])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウ
ム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス
(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir
(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III
)(略称:[Ir(bzq)])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イ
リジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2-フェニルキノリナト-N
,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(ac
ac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述し
た中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際
だって優れるため、特に好ましい。
【0065】
第2の発光層115bに用いることのできる第2の電子輸送性材料132aとしては、
第1の電子輸送性材料122aに示す材料と同様の材料を用いることができる。また、第
2の発光層115bに用いることのできる第2の正孔輸送性材料133aとしては、第1
の正孔輸送性材料123aに示す材料と同様の材料を用いることができる。
【0066】
<第3の発光層>
第3の発光層115cは、蛍光性材料141a(ゲスト材料)、及び第3の電子輸送性
材料142a(ホスト材料)を有している。また、第3の発光層115cは、青色の発光
を示すと好ましい。
【0067】
第3の発光層115cに用いることのできる蛍光性材料141aとしては、N,N’-
ビス〔4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル〕-N,N’-ジフ
ェニル-ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(
3-メチルフェニル)-N,N’-ビス〔3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-
イル)フェニル〕-ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)
、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフ
ェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾー
ル-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称
:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニ
ル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニ
ル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-
3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブ
チルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9
-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA
)などが挙げられる。特に、ピレン骨格を有する蛍光性化合物は正孔トラップ性が高く、
発光効率や信頼性に優れているため好ましい。また、1,6FLPAPrnや1,6mM
emFLPAPrnのようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合
物は、正孔トラップ性が高く、発光効率や信頼性に優れているため好ましい。
【0068】
第3の発光層115cに用いることのできる第3の電子輸送性材料142aとしては、
例えば、アントラセン骨格を含む有機化合物が好ましい。該アントラセン骨格を含む有機
化合物としては、例えば、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル
]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、9-フェニル-3-[4-(10-フェニ
ル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-
ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバ
ゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アント
ラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA
)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-B
uDNA)など電子輸送性である一方で正孔を受け取りやすい化合物を好適に用いること
ができる。本発明の一態様の発光素子において、第3の電子輸送性材料142aは、アン
トラセン骨格を有すると、電子輸送性を有するだけでなく正孔も受け取りやすいため好ま
しい。
【0069】
<電子輸送層>
電子輸送層117は、電子輸送性の高い物質を含む層である。また、電子輸送層117
を形成する材料の三重項励起エネルギー準位が、第1の発光層115a及び第2の発光層
115bに用いる第1の電子輸送性材料122a及び第2の電子輸送性材料132aの三
重項励起エネルギー準位よりも低い材料である。このような材料としては、第3の発光層
115cに用いることのできる第3の電子輸送性材料142aと同様の材料を用いること
ができる。
【0070】
<電子注入層>
電子注入層119は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層119には、
フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF
、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物
を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物
を用いることができる。
【0071】
あるいは、電子注入層119に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる
複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子
が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物とし
ては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、電子供与体としては、有
機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカ
リ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、
エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類
金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げら
れる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラ
チアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0072】
なお、上述した正孔注入層111、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層11
3b、第3の正孔輸送層113c、第1の発光層115a、第2の発光層115b、第3
の発光層115c、電子輸送層117、及び電子注入層119は、それぞれ、蒸着法(真
空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0073】
また、上述した発光素子の第1の発光層115a、第2の発光層115b、及び第3の
発光層115cで得られた発光は、陽極101及び陰極103のいずれか一方または両方
を通って外部に取り出される。したがって、本実施の形態における陽極101及び陰極1
03のいずれか一方、または両方が透光性を有する電極となる。
【0074】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み
合わせることができる。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、図1に示す本発明の一態様の発光素子の変形例について、図
2及び図3を用いて説明を行う。なお、先の実施の形態に示す同様の箇所、または同様の
機能を有する部分については、同様の符号を付し、その詳細の説明は省略する。
【0076】
図2(A)に示す発光素子は、一対の電極(陽極101及び陰極103)間に発光層1
15を有し、発光層115は、第1の燐光性材料121aと第1の電子輸送性材料122
aを含む第1の発光層115aと、第2の燐光性材料131aと第2の電子輸送性材料1
32aを含む第2の発光層115bと、蛍光性材料141aと第3の電子輸送性材料14
2aを含む第3の発光層115cと、を有する。
【0077】
また、第1の発光層115a、第2の発光層115b、第3の発光層115cのそれぞ
れは、陰極103側に配置された電子輸送層117と接して設けられる。
【0078】
また、第1の発光層115aは、第1の燐光性材料121aと、第1の電子輸送性材料
122aと、さらに第1の正孔輸送性材料123aを含む構成としてもよい。また、第2
の発光層115bは、第2の燐光性材料131aと、第2の電子輸送性材料132aと、
さらに第2の正孔輸送性材料133aを含む構成としてもよい。
【0079】
また、図2(A)において、一対の電極間には、発光層115及び電子輸送層117以
外にも、正孔注入層111、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b、第
4の正孔輸送層113d、及び電子注入層119が形成されている。
【0080】
より具体的には、図2(A)に示す発光素子は、基板100上の陽極101と、陽極1
01上の正孔注入層111と、正孔注入層111上の第4の正孔輸送層113dと、第4
の正孔輸送層113d上の第1の正孔輸送層113aと、第4の正孔輸送層113d上の
第2の正孔輸送層113bと、第1の正孔輸送層113a上の第1の発光層115aと、
第2の正孔輸送層113b上の第2の発光層115bと、第4の正孔輸送層113d上の
第3の発光層115cと、第1の発光層115a、第2の発光層115b、及び第3の発
光層115c上の電子輸送層117と、電子輸送層117上の電子注入層119と、電子
注入層119上の陰極103と、を有する。
【0081】
次に、図2(B)に示す発光素子について、以下説明を行う。
【0082】
図2(B)に示す発光素子は、一対の電極(陽極101及び陰極103)間に発光層1
15を有し、発光層115は、第1の燐光性材料121aと第1の電子輸送性材料122
aを含む第1の発光層115aと、第2の燐光性材料131aと第2の電子輸送性材料1
32aを含む第2の発光層115bと、第1の発光層115a及び第2の発光層115b
を覆い、且つ蛍光性材料141aと第3の電子輸送性材料142aを含む第3の発光層1
15cと、を有する。
【0083】
また、第3の発光層115cは、第1の発光層115a及び第2の発光層115bの陰
極103側に接して設けられている。
【0084】
また、第1の発光層115aは、第1の燐光性材料121aと、第1の電子輸送性材料
122aと、さらに第1の正孔輸送性材料123aを含む構成としてもよい。また、第2
の発光層115bは、第2の燐光性材料131aと、第2の電子輸送性材料132aと、
さらに第2の正孔輸送性材料133aを含む構成としてもよい。
【0085】
また、図2(B)において、一対の電極間には、発光層115以外にも、正孔注入層1
11、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b、第4の正孔輸送層113
d、及び電子注入層119が形成されている。
【0086】
より具体的には、図2(B)に示す発光素子は、基板100上の陽極101と、陽極1
01上の正孔注入層111と、正孔注入層111上の第4の正孔輸送層113dと、第4
の正孔輸送層113d上の第1の正孔輸送層113aと、第4の正孔輸送層113d上の
第2の正孔輸送層113bと、第1の正孔輸送層113a上の第1の発光層115aと、
第2の正孔輸送層113b上の第2の発光層115bと、第1の発光層115a、第2の
発光層115b、及び第4の正孔輸送層113d上の第3の発光層115cと、第3の発
光層115c上の電子注入層119と、電子注入層119上の陰極103と、を有する。
【0087】
図2(A)、(B)に示す発光素子は、図1(A)、(B)に示す発光素子と異なる点
として、正孔注入層111上に第4の正孔輸送層113dが設けられている。また、第3
の発光層115cには、第3の正孔輸送層113cが設けられていない。すなわち、第3
の発光層115cは、第4の正孔輸送層113dと接して設けられている。また、第4の
正孔輸送層113dに用いることのできる材料は、第3の正孔輸送層113cと同様の材
料を用いることができる。
【0088】
第4の正孔輸送層113dは、第1の発光層115a、第2の発光層115b、及び第
3の発光層115cに対して共通して用いることができる。従って、図2(A)、(B)
に示す発光素子は、図1(A)、(B)に示す本発明の一態様の発光素子の優れた効果に
加え、さらに発光素子形成時の生産性を高めることができる。なお、図2(A)に示す発
光素子形成時の塗り分け工程は、第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層113b
、第1の発光層115a、第2の発光層115b、及び第3の発光層115cとなる。ま
た、各正孔輸送層と各発光層を連続して形成することで、塗り分け回数を低減することが
可能である。例えば、第1の正孔輸送層113aと第1の発光層115aを連続して形成
し、第2の正孔輸送層113bと第2の発光層115bを連続し、第3の発光層115c
を形成する。したがって、合計3回の塗り分けで、図2(A)に示す発光素子を形成する
ことができる。また、図2(B)に示す発光素子形成時の塗り分け工程は、第1の正孔輸
送層113a、第2の正孔輸送層113b、第1の発光層115a、及び第2の発光層1
15bとなる。また、各正孔輸送層と各発光層を連続して形成することで、塗り分け回数
を低減することが可能である。例えば、第1の正孔輸送層113aと第1の発光層115
aを連続して形成し、第2の正孔輸送層113bと第2の発光層115bを連続して形成
する。したがって、合計2回の塗り分けで、図2(B)に示す発光素子を形成することが
できる。
【0089】
また、図2(A)、(B)に示す発光素子においては、第1の発光層115a、及び第
2の発光層115bは、それぞれ独立して第1の正孔輸送層113a、及び第2の正孔輸
送層113bと接して形成されている。したがって、各発光層で最適な素子構成とするこ
とができ、各発光層の各々において、発光効率の高い発光素子を実現することができる。
【0090】
また、図2(A)、(B)に示す発光素子においては、第1の正孔輸送層113a、第
2の正孔輸送層113b、及び第4の正孔輸送層113dの膜厚を調整することによって
、各発光層における光学距離を調整することができる。
【0091】
次に、図3(A)に示す発光素子について、以下説明を行う。
【0092】
図3(A)に示す発光素子は、一対の電極(陽極101及び陰極103)間に発光層1
15を有し、発光層115は、第1の燐光性材料121aと第1の電子輸送性材料122
aを含む第1の発光層115aと、第2の燐光性材料131aと第2の電子輸送性材料1
32aを含む第2の発光層115bと、蛍光性材料141aと第3の電子輸送性材料14
2aを含む第3の発光層115cと、を有する。
【0093】
また、第1の発光層115a、第2の発光層115b、第3の発光層115cのそれぞ
れは、陰極103側に配置された電子輸送層117と接して設けられる。
【0094】
また、第1の発光層115aは、第1の燐光性材料121aと、第1の電子輸送性材料
122aと、さらに第1の正孔輸送性材料123aを含む構成としてもよい。また、第2
の発光層115bは、第2の燐光性材料131aと、第2の電子輸送性材料132aと、
さらに第2の正孔輸送性材料133aを含む構成としてもよい。
【0095】
また、図3(A)において、一対の電極間には、発光層115以外にも、正孔注入層1
11、正孔輸送層113、及び電子注入層119が形成されている。
【0096】
より具体的には、図3(A)に示す発光素子は、基板100上の陽極101と、陽極1
01上の正孔注入層111と、正孔注入層111上の正孔輸送層113と、正孔輸送層1
13上の第1の発光層115aと、正孔輸送層113上の第2の発光層115bと、正孔
輸送層113上の第3の発光層115cと、第1の発光層115a、第2の発光層115
b、及び第3の発光層115c上の電子注入層119と、電子注入層119上の陰極10
3と、を有する。
【0097】
次に、図3(B)に示す発光素子について、以下説明を行う。
【0098】
図3(B)に示す発光素子は、一対の電極(陽極101及び陰極103)間に発光層1
15を有し、発光層115は、第1の燐光性材料121aと第1の電子輸送性材料122
aを含む第1の発光層115aと、第2の燐光性材料131aと第2の電子輸送性材料1
32aを含む第2の発光層115bと、第1の発光層115a及び第2の発光層115b
を覆い、且つ蛍光性材料141aと第3の電子輸送性材料142aを含む第3の発光層1
15cと、を有する。
【0099】
また、第3の発光層115cは、第1の発光層115a及び第2の発光層115bの陰
極103側に接して設けられている。
【0100】
また、第1の発光層115aは、第1の燐光性材料121aと、第1の電子輸送性材料
122aと、さらに第1の正孔輸送性材料123aを含む構成としてもよい。また、第2
の発光層115bは、第2の燐光性材料131aと、第2の電子輸送性材料132aと、
さらに第2の正孔輸送性材料133aを含む構成としてもよい。
【0101】
また、図3(B)において、一対の電極間には、発光層115以外にも、正孔注入層1
11、正孔輸送層113、及び電子注入層119が形成されている。
【0102】
より具体的には、図3(B)に示す発光素子は、基板100上の陽極101と、陽極1
01上の正孔注入層111と、正孔注入層111上の正孔輸送層113と、正孔輸送層1
13上の第1の発光層115aと、正孔輸送層113上の第2の発光層115bと、第1
の発光層115a、第2の発光層115b、及び正孔輸送層113上の第3の発光層11
5cと、第3の発光層115c上の電子注入層119と、電子注入層119上の陰極10
3と、を有する。
【0103】
図3(A)、(B)に示す発光素子は、図1(A)、(B)に示す発光素子と異なる点
として、正孔注入層111上に正孔輸送層113が設けられている。すなわち、正孔輸送
層113は、第1の発光層115a、第2の発光層115b、及び第3の発光層115c
の共通の正孔輸送層として用いることができる。また、正孔輸送層113に用いることの
できる材料は、第3の正孔輸送層113cと同様の材料を用いることができる。したがっ
て、図3(A)、(B)に示す発光素子は、図1(A)、(B)に示す本発明の一態様の
発光素子の優れた効果に加え、さらに発光素子形成時の生産性を高めることが出来る。な
お、図3(A)に示す発光素子形成時の塗り分け工程は、第1の発光層115a、第2の
発光層115b、及び第3の発光層115cとなり、合計3回となる。また、図3(B)
に示す発光素子形成時の塗り分け工程は、第1の発光層115a、及び第2の発光層11
5bとなり、合計2回となる。
【0104】
ただし、図3(A)、(B)に示す素子構成においては、第1の発光層115a、第2
の発光層115b、及び第3の発光層115cは、共通して正孔輸送層113を用いるた
め、第1の発光層115a、及び第2の発光層115b、及び第3の発光層115cのい
ずれか1つまたは2つにおいては、素子特性が低下する可能性がある。ただし、素子特性
よりも生産性を優先する場合においては、図3(A)、(B)に示す構成を適用しても良
い。また、図3(A)、(B)に示す構成においては、第1の電子輸送性材料122a及
び第2の電子輸送性材料132a及び第3の発光層115cの電子輸送性が非常に高い。
したがって、各発光層で共通の正孔輸送層を用いた場合においても、電子輸送層側での素
子特性の低下がない、または極めて少ないため、複数の発光層全体でバランスのとれた発
光素子とすることができる。
【0105】
また、図3(A)、(B)に示す発光素子においては、第1の発光層115a、第2の
発光層115b、及び第3の発光層115cは、下方に共通の陽極101を用いている構
成について例示したが、これに限定されない。例えば、第1の発光層115a、第2の発
光層115b、及び第3の発光層115cは、それぞれ独立に異なる膜厚の陽極101を
下方に有する構成としてもよい。例えば、異なる膜厚の陽極101の構成としては、第1
の発光層115a、第2の発光層115b、第3の発光層115cの順に陽極101の膜
厚を厚くすることができる。
【0106】
図3(A)、(B)に示す発光素子においては、各発光層において共通の正孔輸送層1
13を用いているため、陽極101の膜厚によって光学距離を調整する構成は、各発光層
の素子特性を向上させるのに有用な構成の一つである。
【0107】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み
合わせることができる。
【0108】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子を適用して作製された発光装置につ
いて図4を用いて説明する。
【0109】
図4(A)、(B)は、陰極と陽極の間に第1の発光層乃至第3の発光層を有する発光
装置250及び発光装置260の断面図である。
【0110】
まず、図4(A)に示す発光装置250について、以下説明を行う。
【0111】
発光装置250は、基板200側(図4(A)に示す矢印側)から光を取り出すことの
できる、所謂ボトムエミッション構造の発光装置である。
【0112】
また、発光装置250は、基板200上に、それぞれ島状に分離された陽極201a、
201b、201cを有する。基板200は、実施の形態1に示す基板100に示す材料
を用いることができる。陽極201a、201b、201cは、実施の形態1に示す陽極
101に示す材料を用いることができる。また、陽極201a、201b、201cは、
異なる色を発する素子ごとに厚さを異ならせて設けても良い。また、発光装置250にお
いては、ボトムエミッション構造の発光装置であるため、陽極201a、201b、20
1cは、可視光において透光性を有する材料(例えば、ITOなど)を用いて形成すると
良い。
【0113】
また、発光装置250は、隔壁251a、251b、251c、251dを有する。隔
壁251aは、陽極201aの一方の端部を覆う。また、隔壁251bは、陽極201a
の他方の端部と、陽極201bの一方の端部を覆う。また、隔壁251cは、陽極201
bの他方の端部と、陽極201cの一方の端部を覆う。また、隔壁251dは、陽極20
1cの他方の端部を覆う。隔壁251a、251b、251c、251dは、有機樹脂ま
たは無機絶縁材料を用いることができる。有機樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、
ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、またはフェノール樹脂
等を用いることができる。無機絶縁材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を
用いることができる。隔壁251a、251b、251c、251dの作製が容易となる
ため、特に感光性の樹脂を用いることが好ましい。
【0114】
また、発光装置250は、陽極201a、201b、201c及び隔壁251a、25
1b、251c、251d上に正孔注入層211を有する。正孔注入層211は、実施の
形態1に示す正孔注入層111に示す材料を用いることができる。
【0115】
また、発光装置250は、正孔注入層211上に、それぞれ島状に分離された第1の正
孔輸送層213a、第2の正孔輸送層213b、及び第3の正孔輸送層213cを有する
。また、第1の正孔輸送層213a、第2の正孔輸送層213b、及び第3の正孔輸送層
213c上にそれぞれ、第1の発光層215a、第2の発光層215b、及び第3の発光
層215cを有する。第1の正孔輸送層213a、第2の正孔輸送層213b、第3の正
孔輸送層213c、第1の発光層215a、第2の発光層215b、及び第3の発光層2
15cは、それぞれ実施の形態1に示す第1の正孔輸送層113a、第2の正孔輸送層1
13b、第3の正孔輸送層113c、第1の発光層115a、第2の発光層115b、及
び第3の発光層115cに示す材料を用いることができる。
【0116】
また、第1の発光層215aは、図1(A)に示す第1の発光層115aと同様に、第
1の燐光性材料と、第1の電子輸送性材料と、第1の正孔輸送性材料と、を有する。また
、第2の発光層215bは、図1(A)に示す第2の発光層115bと同様に、第2の燐
光性材料と、第2の電子輸送性材料と、第2の正孔輸送性材料と、を有する。また、第3
の発光層215cは、図1(A)に示す第3の発光層115cと同様に、蛍光性材料と、
第3の電子輸送性材料と、を有する。ただし、図4(A)において、図の煩雑を避けるた
め、第1の燐光性材料、第1の電子輸送性材料、第1の正孔輸送性材料、第2の燐光性材
料、第2の電子輸送性材料、第2の正孔輸送性材料、蛍光性材料、及び第3の電子輸送性
材料は省略して図示している。
【0117】
また、発光装置250は、第1の発光層215a、第2の発光層215b、及び第3の
発光層215c上に、電子輸送層217を有する。また、電子輸送層217上に、電子注
入層219を有する。また、電子注入層219上に、陰極203を有する。電子輸送層2
17は、実施の形態1に示す電子輸送層117に示す材料を用いることができる。電子注
入層219は、実施の形態1に示す電子注入層119に示す材料を用いることができる。
陰極203は、実施の形態1に示す陰極103に示す材料を用いることができる。また、
発光装置250においては、ボトムエミッション構造の発光装置であるため、陰極203
は、特に反射性を有する材料(例えば、アルミニウムなど)を用いて形成すると良い。
【0118】
なお、図4(A)では、陽極を下方に配置し陰極を上方に配置する構成について説明し
たが、これに限定されず、例えば、陽極を上方に配置し陰極を下方に配置する構成として
もよい。この場合、陽極と陰極の間の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、及
び電子輸送層の積層順を入れ替えればよい。
【0119】
発光装置250の第1の発光層215a、第2の発光層215b、及び第3の発光層2
15cは、電子輸送層217に接して設けられており、電子輸送層217を形成する材料
の三重項励起エネルギー準位が、第1の発光層215aに含まれる電子輸送性材料及び第
2の発光層215bに含まれる第2の電子輸送性材料の三重項励起エネルギー準位よりも
低い。このように発光装置250が有する各発光素子は、各発光層が共通の電子輸送層を
用いた場合においても、最適な素子構成となっているため、低い駆動電圧、高い電流効率
、または長寿命となる。したがって、低消費電力または長寿命の発光装置250を提供す
ることができる。また、共通の電子輸送層を用いていることから、生産性の高い発光装置
250を提供することができる。
【0120】
次に、図4(B)に示す発光装置260について、以下説明を行う。
【0121】
発光装置260は、発光装置250の変形例であり、図4(B)に示す矢印側から光を
取り出すことのできる、所謂トップエミッション構造の発光装置である。
【0122】
また、発光装置260は、基板200上に、それぞれ島状に分離された反射電極253
a、253b、253cを有する。また、反射電極253a、253b、253c上に、
それぞれ島状に分離された陽極201a、201b、201cを有する。発光装置260
においては、トップエミッション構造の発光装置であるため、反射電極253a、253
b、253cは、反射性を有する材料(例えば、アルミニウムまたは銀など)を用いて形
成すると良い。
【0123】
また、発光装置260は、隔壁251a、251b、251c、251dを有する。隔
壁251aは、反射電極253a及び陽極201aの一方の端部を覆う。また、隔壁25
1bは、反射電極253a及び陽極201aの他方の端部と、反射電極253b及び陽極
201bの一方の端部を覆う。また、隔壁251cは、反射電極253b及び陽極201
bの他方の端部と、反射電極253c及び陽極201cの一方の端部を覆う。また、隔壁
251dは、反射電極253c及び陽極201cの他方の端部を覆う。
【0124】
また、発光装置260は、陽極201a、201b、201c及び隔壁251a、25
1b、251c、251d上に正孔注入層211を有する。
【0125】
また、発光装置260は、正孔注入層211上に、それぞれ島状に分離された第1の正
孔輸送層213a、第2の正孔輸送層213b、及び第3の正孔輸送層213cを有する
。また、第1の正孔輸送層213a、第2の正孔輸送層213b、及び第3の正孔輸送層
213c上にそれぞれ、第1の発光層215a、第2の発光層215b、及び第3の発光
層215cを有する。
【0126】
なお、第1の発光層215aは、図1(A)に示す第1の発光層115aと同様に、第
1の燐光性材料と、第1の電子輸送性材料と、第1の正孔輸送性材料と、を有する。また
、第2の発光層215bは、図1(A)に示す第2の発光層115bと同様に、第2の燐
光性材料と、第2の電子輸送性材料と、第2の正孔輸送性材料と、を有する。また、第3
の発光層215cは、図1(A)に示す第3の発光層115cと同様に、蛍光性材料と、
第3の電子輸送性材料と、を有する。ただし、図4(B)において、図の煩雑を避けるた
め、第1の燐光性材料、第1の電子輸送性材料、第1の正孔輸送性材料、第2の燐光性材
料、第2の電子輸送性材料、第2の正孔輸送性材料、蛍光性材料、第3の電子輸送性材料
は省略して図示している。
【0127】
また、発光装置260は、第1の発光層215a、第2の発光層215b、及び第3の
発光層215c上に、電子輸送層217を有する。また、電子輸送層217上に、電子注
入層219を有する。また、電子注入層219上に、陰極として機能する半透過・半反射
電極253を有する。半透過・半反射電極253は、例えば、薄い金属膜(好ましくは2
0nm以下、更に好ましくは10nm以下)と導電性の金属酸化物を積層して形成するこ
とができる。薄い金属膜としては、銀、マグネシウム、またはこれらの金属材料を含む合
金等を、単層または積層して形成することが出来る。導電性の金属酸化物としては、酸化
インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、ITO、酸化
インジウム酸化亜鉛(In―ZnO)、またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリ
コンを含ませたものを用いることができる。
【0128】
発光装置260においては、トップエミッション構造の発光装置であるため、反射電極
253a、253b、253cと半透過・半反射電極253との間で、光の共振効果を利
用した微小光共振器(マイクロキャビティ)を採用し、特定波長における光強度を増加さ
せることができる。なお、このマイクロキャビティとしての機能は、反射電極253a、
253b、253cと半透過・半反射電極253の間に挟持される材料、または光路長等
で調整することが可能である。例えば、陽極201a、201b、201c、第1の正孔
輸送層213a、第2の正孔輸送層213b、及び第3の正孔輸送層213cの膜厚を調
整することで、各発光層から発する特定波長の光強度を増加させればよい。なお、発光装
置260においては、第1の正孔輸送層213a、第2の正孔輸送層213b、及び第3
の正孔輸送層213cの膜厚によって、光路長を調整する構成について例示している。
【0129】
また、図4(B)では、陽極を下方に配置し陰極を上方に配置する構成について説明し
たが、これに限定されず、例えば、陽極を上方に配置し陰極を下方に配置する構成として
もよい。この場合、陽極と陰極の間の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、及
び電子輸送層の積層順を入れ替えればよい。
【0130】
発光装置260の第1の発光層215a、第2の発光層215b、及び第3の発光層2
15cは、電子輸送層217に接して設けられており、電子輸送層217を形成する材料
の三重項励起エネルギー準位が、第1の発光層215aに含まれる電子輸送性材料及び第
2の発光層215bに含まれる第2の電子輸送性材料の三重項励起エネルギー準位よりも
低い。このように発光装置260が有する各発光素子は、各発光層が共通の電子輸送層を
用いた場合においても、最適な素子構成となっているため、低い駆動電圧、高い電流効率
、または長寿命となる。したがって、低消費電力または長寿命の発光装置260を提供す
ることができる。また、共通の電子輸送層を用いていることから、生産性の高い発光装置
260を提供することができる。
【0131】
また、図4(A)に示す発光装置250及び図4(B)に示す発光装置260は、基板
200上に発光素子のみが形成された構成について例示したが、これに限定されず、例え
ば、基板200上にトランジスタ(例えば、TFTなど)を別途形成し、該トランジスタ
と、陽極201a、201b、201cまたは反射電極253a、253b、253cと
を電気的に接続させる構成とすると好ましい。
【0132】
ここで、図4(A)に示す発光装置250の作製方法について、以下説明を行う。
【0133】
まず、基板200上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の形状に加工することで陽極2
01a、201b、201cを形成する。次に、基板200及び陽極201a、201b
、201c上に隔壁251a、251b、251c、251dを形成する。なお、陽極2
01a、201b、201c及び隔壁251a、251b、251c、251dは、トラ
ンジスタの作製工程で形成すると好ましい。
【0134】
また、上記トランジスタの構造は限定されず、トップゲート型のトランジスタを用いて
もよいし、逆スタガ型などのボトムゲート型のトランジスタを用いてもよい。また、nチ
ャネル型トランジスタを用いても、pチャネル型トランジスタを用いてもよい。また、ト
ランジスタに用いる材料についても特に限定されない。例えば、シリコンやIn-Ga-
Zn系金属酸化物等の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを適用する
ことができる。
【0135】
次に、陽極201a、201b、201c及び隔壁251a、251b、251c、2
51d上に、正孔注入層211を形成する。陽極201a、201b、201cは、蒸着
法(真空蒸着法を含む)、スパッタリング法、塗布法、またはインクジェット法を用いて
形成することができる。また、正孔注入層211は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写
法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0136】
次に、正孔注入層211と接し、陽極201aと重畳する位置に第1の正孔輸送層21
3aを形成する。第1の正孔輸送層213aは、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、
印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。本実施の形態にお
いては、蒸着法を用い、蒸着マスク(メタルマスク、ファインメタルマスク、またはシャ
ドウマスクともいう)を用いて所望の領域に形成する。
【0137】
次に、第1の正孔輸送層213a上に第1の発光層215aを形成する。第1の発光層
215aは、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法
等の方法で形成することができる。本実施の形態においては、蒸着法を用い、蒸着マスク
(メタルマスク、ファインメタルマスク、またはシャドウマスクともいう)を用いて所望
の領域に形成する。なお、第1の正孔輸送層213a及び第1の発光層215aは、同一
の蒸着マスクを用いて、連続して形成すると好ましい。
【0138】
次に、正孔注入層211と接し、陽極201bと重畳する位置に第2の正孔輸送層21
3bを形成する。第2の正孔輸送層213bは、第1の正孔輸送層213aと同様の手法
を用いて形成することができる。
【0139】
次に、第2の正孔輸送層213b上に第2の発光層215bを形成する。第2の発光層
215bは、第1の発光層215aと同様の手法を用いて形成することができる。なお、
第2の正孔輸送層213b及び第2の発光層215bは、同一の蒸着マスクを用いて、連
続して形成すると好ましい。
【0140】
次に、正孔注入層211と接し、陽極201cと重畳する位置に第3の正孔輸送層21
3cを形成する。第3の正孔輸送層213cは、第1の正孔輸送層213aと同様の手法
を用いて形成することができる。
【0141】
次に、第3の正孔輸送層213c上に第3の発光層215cを形成する。第3の発光層
215cは、第1の発光層215aと同様の手法を用いて形成することができる。なお、
第3の正孔輸送層213c及び第3の発光層215cは、同一の蒸着マスクを用いて、連
続して形成すると好ましい。
【0142】
次に、正孔注入層211、第1の発光層215a、第2の発光層215b、及び第3の
発光層215c上に電子輸送層217を形成し、その後、電子輸送層217上に電子注入
層219を形成する。電子輸送層217及び電子注入層219は、蒸着法(真空蒸着法を
含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0143】
次に、電子注入層219上に陰極203を形成する。陰極203は、蒸着法(真空蒸着
法を含む)、スパッタリング法、塗布法、またはインクジェット法を用いて形成すること
ができる。
【0144】
以上により図4(A)に示す発光装置250を作製することができる。
【0145】
また、図4(B)に示す発光装置260は、上記発光装置250の作製工程に加え、陽
極201a、201b、201cの下方に反射電極253a、253b、253cを形成
する工程と、陰極203の代わりに半透過・半反射電極253を形成する工程を追加する
ことで形成することができる。
【0146】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み
合わせることができる。
【0147】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子または発光装置を用いて完成させた様々
な電子機器および照明装置の一例について、図5を用いて説明する。
【0148】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機と
もいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジ
タルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機
、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0149】
本発明の一態様の発光素子を、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する
発光部を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
【0150】
また、本発明の一態様の発光素子が備える一対の電極を可視光に対する透光性を有する
材料を用いて形成することで、シースルーの発光部を有する電子機器、照明装置を実現す
ることができる。
【0151】
また、本発明の一態様を適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、
例えば、ダッシュボードや、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
【0152】
図5(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、
筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示
することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここで
は、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0153】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリ
モコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キ
ー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示さ
れる映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作
機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0154】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機
により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線に
よる通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(
送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0155】
図5(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キ
ーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む
。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される
【0156】
図5(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成さ
れており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部
7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図
5(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307
、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ73
11(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化
学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動
、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えて
いる。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部73
04および表示部7305の両方、又は一方に発光装置を用いていればよく、その他付属
設備が適宜設けられた構成とすることができる。図5(C)に示す携帯型遊技機は、記録
媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の
携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図5(C)に示す
携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0157】
図5(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401
に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、ス
ピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光
装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0158】
図5(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情
報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は
、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0159】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする
表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表
示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0160】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力
を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場
合、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好
ましい。
【0161】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサ
を有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、
表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0162】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操
作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類
によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画
のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0163】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表
示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モー
ドから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0164】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7
402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。
また、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光
源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0165】
図5(E)は卓上照明装置であり、照明部7501、傘7502、可変アーム7503
、支柱7504、台7505、電源7506を含む。なお、卓上照明装置は、発光装置を
照明部7501に用いることにより作製される。なお、照明装置には天井固定型の照明器
具又は壁掛け型の照明器具なども含まれる。
【0166】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または実施例に示す構成と適宜組み
合わせることができる。
【実施例1】
【0167】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子の電子輸送層として用いることのできる9-
[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称
:CzPA)と、燐光性素子のホスト材料(第1の電子輸送性材料及び第2の電子輸送性
材料)として用いることのできる2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェ
ニル-3-イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II
)の三重項励起エネルギー準位(T1準位)の測定を行った。なお、本実施例で用いる材
料の化学式を以下に示す。
【0168】
【化1】
【0169】
T1準位の測定には、各物質の燐光発光を測定することにより求めた。測定条件として
は、325nmの励起光を各物質に照射し、測定温度10Kで測定した。また、2mDB
TBPDBq-IIについては、メカニカルチョッパによる時間分解測定を行った。Cz
PAについては、時間分解測定が難しいため、Ir(ppy)を増感剤として添加し、
時間分解をせずに測定を行った。測定条件としては、重量比としてCzPAを3に対し、
Ir(ppy)を1の割合で添加した。なお、三重項励起エネルギー準位の測定は、発
光波長より吸収波長から算出した方が精度は高い。しかしながら、T1準位の吸収は極め
て微弱であり、測定が困難であることから、ここでは、発光波長を測定することによりT
1準位を求めた。したがって、測定値に多少の誤差を含むものとする。測定結果は、表1
に示す通りである。
【0170】
【表1】
【0171】
表1に示すように、電子輸送層として用いることのできるCzPAの三重項励起エネル
ギー準位が、燐光性素子のホスト材料(第1の電子輸送性材料及び第2の電子輸送性材料
)として用いることのできる2mDBTBPDBq-IIの三重項励起エネルギー準位よ
りも0.69eV低いことが確認された。
【実施例2】
【0172】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子(発光素子1、発光素子3、及び発光素子5
)、及び比較用の発光素子(比較発光素子2、比較発光素子4、及び比較発光素子6)に
ついて、図6(A)を用いて説明する。なお、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示
す。
【0173】
【化2】
【0174】
【化3】
【0175】
以下に、本実施例で用いた本発明の一態様の発光素子(発光素子1、発光素子3、及び
発光素子5)、及び比較用の発光素子(比較発光素子2、比較発光素子4、及び比較発光
素子6)の作製方法を示す。
【0176】
なお、発光素子1及び比較発光素子2は、赤色の発光を示す発光素子であり、発光素子
3及び比較発光素子4は、緑色の発光を示す発光素子であり、発光素子5及び比較発光素
子6は、青色の発光を示す発光素子である。
【0177】
(発光素子1)
まず、基板1100上に、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ
化合物(ITO-SiO、以下ITSOと略記する。)をスパッタリング法にて成膜し
、陽極1101を形成した。なお、用いたターゲットの組成は、In:SnO
SiO=85:10:5[重量%]とした。また、陽極1101の膜厚は、110nm
とし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0178】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄
し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0179】
その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸
着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を
30分程度放冷した。
【0180】
次に、陽極1101が形成された面が下方となるように、陽極1101が形成された基
板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10-4Pa程度まで
減圧した後、陽極1101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4,4’,4’’-(
ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-I
I)
と酸化モリブデンを共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、4
0nmとし、DBT3P-IIと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=DBT3
P-II:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室
内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0181】
次に、正孔注入層1111上に、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9
-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nmの膜厚となるように成膜
し、正孔輸送層1113を形成した。
【0182】
次に、2mDBTBPDBq-IIと、4、4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9
-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB
)と、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウ
ム(III)(略称:Ir(tppr)dpm)と、を共蒸着し、正孔輸送層1113
上に発光層1115を形成した。ここで、2mDBTBPDBq-II、PCBNBB、
及びIr(tppr)dpmの重量比は、0.8:0.2:0.06(=2mDBTB
PDBq-II:PCBNBB:Ir(tppr)dpm)となるように調節した。ま
た、発光層1115の膜厚は40nmとした。
【0183】
なお、発光層1115において、2mDBTBPDBq-IIは、電子輸送性材料であ
り、ホスト材料として機能する。また、PCBNBBは、正孔輸送性材料であり、アシス
ト材料として機能する。また、Ir(tppr)dpmは、イリジウムを含む有機金属
錯体であり、ゲスト材料として機能する。
【0184】
さらに、発光層1115上にCzPAを膜厚10nmとなるように成膜し、電子輸送層
1117を形成した。
【0185】
その後、電子輸送層1117上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚1
5nmとなるように成膜し、第1の電子注入層1119aを形成した。
【0186】
さらに、第1の電子注入層1119a上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚
で蒸着し、第2の電子注入層1119bを形成した。
【0187】
最後に、第2の電子注入層1119b上に陰極1103として、アルミニウムを200
nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。
【0188】
(比較発光素子2)
比較発光素子2は、発光素子1と比較し電子輸送層1117が異なる。具体的には、比
較発光素子2の電子輸送層1117は、発光素子1に用いたCzPAの代わりに、2mD
BTBPDBq-IIを用いた。なお、2mDBTBPDBq-IIの膜厚は10nmと
した。
【0189】
なお、比較発光素子2については、電子輸送層1117以外の構成は、発光素子1と同
様に作製した。
【0190】
(発光素子3)
発光素子3は、発光素子1と比較し発光層1115が異なる。具体的には、発光素子3
の発光層1115は、発光素子1に用いた2mDBTBPDBq-II、PCBNBB、
及びIr(tppr)dpmの代わりに、2mDBTBPDBq-II、PCBNBB
、及び(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト
)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)(acac))を用いた。
【0191】
また、発光素子3の発光層1115は、2mDBTBPDBq-IIと、PCBNBB
と、Ir(tBuppm)(acac)と、を共蒸着し形成した。ここで、2mDBT
BPDBq-II、PCBNBB、及びIr(tBuppm)(acac)の重量比は
、0.8:0.2:0.06(=2mDBTBPDBq-II:PCBNBB:Ir(t
Buppm)(acac))となるように調節した。また、発光素子3の発光層111
5の膜厚は40nmとした。
【0192】
なお、発光素子3の発光層1115において、2mDBTBPDBq-IIは、電子輸
送性材料であり、ホスト材料として機能する。また、PCBNBBは、正孔輸送性材料で
あり、アシスト材料として機能する。また、Ir(tBuppm)(acac)は、イ
リジウムを含む有機金属錯体であり、ゲスト材料として機能する。
【0193】
なお、発光素子3については、発光層1115以外の構成は、発光素子1と同様に作製
した。
【0194】
(比較発光素子4)
比較発光素子4は、発光素子1と比較し発光層1115及び電子輸送層1117が異な
る。具体的には、比較発光素子4の発光層1115は、発光素子1に用いた2mDBTB
PDBq-II、PCBNBB、及びIr(tppr)dpmの代わりに、2mDBT
BPDBq-II、PCBNBB、及びIr(tBuppm)(acac)を用いた。
また、比較発光素子4の電子輸送層1117は、発光素子1に用いたCzPAの代わりに
、2mDBTBPDBq-IIを用いた。
【0195】
また、比較発光素子4の発光層1115は、2mDBTBPDBq-IIと、PCBN
BBと、Ir(tBuppm)(acac)と、を共蒸着し形成した。ここで、2mD
BTBPDBq-II、PCBNBB、及びIr(tBuppm)(acac)の重量
比は、0.8:0.2:0.06(=2mDBTBPDBq-II:PCBNBB:Ir
(tBuppm)(acac))となるように調節した。また、比較発光素子4の発光
層1115の膜厚は40nmとした。
【0196】
また、比較発光素子4の電子輸送層1117の膜厚は、膜厚は10nmとした。
【0197】
なお、比較発光素子4については、発光層1115及び電子輸送層1117以外の構成
は、発光素子1と同様に作製した。
【0198】
(発光素子5)
発光素子5は、発光素子1と比較し発光層1115が異なる。具体的には、発光素子5
の発光層1115は、発光素子1に用いた2mDBTBPDBq-II、PCBNBB、
及びIr(tppr)dpmの代わりに、CzPA、及びN,N’-ビス(3-メチル
フェニル)-N,N’-ビス〔3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェ
ニル〕-ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)を用いた。
【0199】
また、発光素子5の発光層1115は、CzPAと、1,6mMemFLPAPrnと
、を共蒸着し形成した。ここで、CzPA、及び1,6mMemFLPAPrnの重量比
は、1:0.05(=CzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように調節した
。また、発光素子5の発光層1115の膜厚は25nmとした。
【0200】
なお、発光素子5の発光層1115において、CzPAは、電子輸送性材料であり、ホ
スト材料として機能する。また、1,6mMemFLPAPrnは、蛍光性材料であり、
ゲスト材料として機能する。
【0201】
なお、発光素子5については、発光層1115以外の構成は、発光素子1と同様に作製
した。
【0202】
(比較発光素子6)
比較発光素子6は、発光素子1と比較し発光層1115及び電子輸送層1117が異な
る。具体的には、比較発光素子6の発光層1115は、発光素子1に用いた2mDBTB
PDBq-II、PCBNBB、及びIr(tppr)dpmの代わりに、CzPA、
及び1,6mMemFLPAPrnを用いた。また、比較発光素子6の電子輸送層111
7は、発光素子1に用いたCzPAの代わりに、2mDBTBPDBq-IIを用いた。
【0203】
また、比較発光素子6の発光層1115は、CzPAと、1,6mMemFLPAPr
nと、を共蒸着し形成した。ここで、CzPA、及び1,6mMemFLPAPrnの重
量比は、1:0.05(=CzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように調節
した。また、比較発光素子6の発光層1115の膜厚は25nmとした。
【0204】
なお、比較発光素子6の発光層1115において、CzPAは、電子輸送性材料であり
、ホスト材料として機能する。また、1,6mMemFLPAPrnは、蛍光性材料であ
り、ゲスト材料として機能する。
【0205】
また、比較発光素子6の電子輸送層1117の膜厚は、膜厚は10nmとした。
【0206】
なお、比較発光素子6については、発光層1115及び電子輸送層1117以外の構成
は、発光素子1と同様に作製した。
【0207】
また、上述した本発明の一態様の発光素子(発光素子1、発光素子3、及び発光素子5
)、並びに比較発光素子(比較発光素子2、比較発光素子4、及び比較発光素子6)の蒸
着過程は、全て抵抗加熱法を用いた。
【0208】
このように、本発明の一態様の発光素子(発光素子1、発光素子3、及び発光素子5)
、と、比較発光素子(比較発光素子2、比較発光素子4、及び比較発光素子6)は、発光
層1115及び電子輸送層1117以外の構成は、同一の構成である。
【0209】
以上により得られた本発明の一態様の発光素子(発光素子1、発光素子3、及び発光素
子5)、と、比較発光素子(比較発光素子2、比較発光素子4、及び比較発光素子6)の
素子構造を表2に示す。
【0210】
【表2】
【0211】
表2に示すように本発明の一態様の発光素子は、燐光性材料(発光素子1及び発光素子
3)のホスト材料として、2mDBTBPDBq-IIを用い、蛍光性材料(発光素子5
)のホスト材料として、CzPAを用いている。また、発光素子1、発光素子3、及び発
光素子5の電子輸送層は、共通のCzPAを用いている。一方で、比較用の発光素子は、
燐光性材料(比較発光素子2及び比較発光素子4)のホスト材料として、2mDBTBP
DBq-IIを用い、蛍光性材料(比較発光素子6)のホスト材料として、CzPAを用
いている。また、比較発光素子2、比較発光素子4、及び比較発光素子6の電子輸送層は
、共通の2mDBTBPDBq-IIを用いている。
【0212】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、上記作製した各発光素子が大気に曝
されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時
に80℃にて1時間熱処理)を行った。その後、各発光素子の動作特性について測定を行
った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0213】
発光素子1及び比較発光素子2の電流密度-輝度特性を図7に、電圧-輝度特性を図8
に、輝度-電流効率特性を図9に、電圧-電流特性を図10に、発光スペクトルを図11
に、それぞれ示す。
【0214】
発光素子3及び比較発光素子4の電流密度-輝度特性を図12に、電圧-輝度特性を図
13に、輝度-電流効率特性を図14に、電圧-電流特性を図15に、発光スペクトルを
図16に、それぞれ示す。
【0215】
発光素子5及び比較発光素子6の電流密度-輝度特性を図17に、電圧-輝度特性を図
18に、輝度-電流効率特性を図19に、電圧-電流特性を図20に、発光スペクトルを
図21に、それぞれ示す。
【0216】
なお、図7図12、及び図17において、横軸は電流密度(mA/cm)を、縦軸
は輝度(cd/m)を表す。また、図8図13、及び図18において、横軸は電圧(
V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、図9図14、及び図19において、
横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、図10図15
、及び図20において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流(mA)を表す。また、図11
図16、及び図21において、横軸は波長(nm)を、縦軸は強度(任意単位)を表す
。なお、図11図16、及び図21において、各発光素子の発光スペクトルが概略重な
っている。
【0217】
また、各発光素子における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度
(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(
%)を表3に示す。
【0218】
【表3】
【0219】
表3に示す通り、発光素子1の輝度992cd/mにおける素子特性として、電流効
率が27cd/Aであり、外部量子効率が24%であり、CIE色度座標が、(x,y)
=(0.66,0.34)であった。また、比較発光素子2の輝度1103cd/m
ける素子特性として、電流効率が27cd/Aであり、外部量子効率が23%であり、C
IE色度座標が、(x,y)=(0.66,0.34)であった。
【0220】
また、図11に示す通り、発光素子1及び比較発光素子2の発光スペクトルは、619
nmにピークを有している。
【0221】
以上のように発光素子1と比較発光素子2を比べた場合、素子特性に大きな違いは確認
されない。すなわち、発光素子1の電子輸送層1117(CzPA)の電子輸送性、及び
燐光性材料のホスト材料である電子輸送性材料(2mDBTBPDBq-II)の電子輸
送性が非常に高いため、発光層1115で励起される発光が電子輸送層1117側に拡散
しない、あるいは拡散しにくい素子構成であることが確認された。
【0222】
また、表3に示す通り、発光素子3の輝度804cd/mにおける素子特性として、
電流効率が91cd/Aであり、外部量子効率が26%であり、CIE色度座標が、(x
,y)=(0.43,0.56)であった。また、比較発光素子4の輝度987cd/m
おける素子特性として、電流効率が93cd/Aであり、外部量子効率が26%であり
、CIE色度座標が、(x,y)=(0.43,0.56)であった。
【0223】
また、図16に示す通り、発光素子3及び比較発光素子4の発光スペクトルは、それぞ
れ549nm、546nmにピークを有している。
【0224】
以上のように発光素子3と比較発光素子4を比べた場合、素子特性に大きな違いは確認
されない。すなわち、発光素子3の電子輸送層1117(CzPA)の電子輸送性及び燐
光性材料のホスト材料である電子輸送性材料(2mDBTBPDBq-II)の電子輸送
性が非常に高いため、発光層1115で励起される発光が電子輸送層1117側に拡散し
ない、あるいは拡散しにくい素子構成であることが確認された。
【0225】
また、表3に示す通り、発光素子5の輝度905cd/mにおける素子特性として、
電流効率が11cd/Aであり、外部量子効率が9%であり、CIE色度座標が、(x,
y)=(0.14,0.19)であった。また、比較発光素子6の輝度1115cd/m
おける素子特性として、電流効率が12cd/Aであり、外部量子効率が9%であり、
CIE色度座標が、(x,y)=(0.14,0.19)であった。
【0226】
また、図21に示す通り、発光素子5及び比較発光素子6の発光スペクトルは、それぞ
れ464nm、465nmにピークを有している。
【0227】
以上のように発光素子5と比較発光素子6を比べた場合、素子特性に違いが生じている
。具体的には、表3及び図20に示すように、主に電圧-電流特性に違いが生じている。
発光素子5は、905cd/mにおける電圧が3.3Vであり、比較発光素子6は、1
115cd/mにおける電圧が3.5Vである。また、図20に示すように3V付近か
ら電圧を上げた際に、本発明の一態様の発光素子5よりも比較発光素子6の電流値が低い
【0228】
これは、比較発光素子6の電子輸送層1117が、燐光性材料のホスト材料である電子
輸送性材料(2mDBTBPDBq-II)を用いていることに起因する。この燐光性材
料のホスト材料は、発光層1115に使用している電子輸送性材料(CzPA)と比較し
て電子輸送性が低くなる。
【0229】
一方で本発明の一態様の発光素子5は、電子輸送層1117(CzPA)の電子輸送性
が、燐光性材料のホスト材料である電子輸送性材料(2mDBTBPDBq-II)の電
子輸送性よりも優れているため、より低駆動電圧で優れた素子特性を有している。
【0230】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態に示す構成、または他の実施例に示す構
成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【実施例3】
【0231】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子(発光素子7及び発光素子8)について、図
6(B)を用いて説明する。なお、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0232】
【化4】
【0233】
【化5】
【0234】
以下に、本実施例で用いた本発明の一態様の発光素子(発光素子7及び発光素子8)の
作製方法を示す。
【0235】
なお、発光素子7は、赤色の発光を示す発光素子であり、発光素子8は、緑色の発光を
示す発光素子である。
【0236】
(発光素子7)
まず、基板1100上に、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ
化合物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、陽極1101を形成した。なお、用
いたターゲットの組成は、In:SnO:SiO=85:10:5[重量%]
とした。また、陽極1101の膜厚は、110nmとし、電極面積は2mm×2mmとし
た。
【0237】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄
し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0238】
その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸
着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を
30分程度放冷した。
【0239】
次に、陽極1101が形成された面が下方となるように、陽極1101が形成された基
板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10-4Pa程度まで
減圧した後、陽極1101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4,4’,4’’-(
ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)((略称:DBT3P-
II)
と酸化モリブデンを共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、4
0nmとし、DBT3P-IIと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=DBT3
P-II:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0240】
次に、正孔注入層1111上に、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9
-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nmの膜厚となるように成膜
し、正孔輸送層1113を形成した。
【0241】
次に、2mDBTBPDBq-IIと、4、4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9
-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB
)と、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウ
ム(III)(略称:Ir(tppr)dpm)と、を共蒸着し、正孔輸送層1113
上に発光層1115を形成した。ここで、2mDBTBPDBq-II、PCBNBB、
及びIr(tppr)dpmの重量比は、0.8:0.2:0.06(=2mDBTB
PDBq-II:PCBNBB:Ir(tppr)dpm)となるように調節した。ま
た、発光層1115の膜厚は40nmとした。
【0242】
なお、発光層1115において、2mDBTBPDBq-IIは、電子輸送性材料であ
り、ホスト材料として機能する。また、PCBNBBは、正孔輸送性材料であり、アシス
ト材料として機能する。また、Ir(tppr)dpmは、イリジウムを含む有機金属
錯体であり、ゲスト材料として機能する。
【0243】
さらに、発光層1115上にCzPAと、1,6mMemFLPAPrnと、を共蒸着
し、発光層1115上に電子輸送層1117aを形成した。ここで、CzPA、及び1,
6mMemFLPAPrnの重量比は、1:0.05(=CzPA:1,6mMemFL
PAPrn)となるように調節した。また、発光素子7の電子輸送層1117aの膜厚は
25nmとした。
【0244】
なお、発光素子7の電子輸送層1117aは、先の実施例2に示す発光素子5及び比較
発光素子6の発光層に用いた構成と同じである。すなわち、青色の発光を示す発光層を発
光素子7の電子輸送層1117aとして用いた構成である。
【0245】
その後、電子輸送層1117上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚1
5nmとなるように成膜し、第1の電子注入層1119aを形成した。
【0246】
さらに、第1の電子注入層1119a上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚
で蒸着し、第2の電子注入層1119bを形成した。
【0247】
最後に、第2の電子注入層1119b上に陰極1103として、アルミニウムを200
nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子7を作製した。
【0248】
(発光素子8)
発光素子8は、発光素子7と比較し発光層1115が異なる。具体的には、発光素子8
の発光層1115は、発光素子7に用いた2mDBTBPDBq-II、PCBNBB、
及びIr(tppr)dpmの代わりに、2mDBTBPDBq-II、PCBNBB
、及びIr(tBuppm)(acac)を用いた。
【0249】
また、発光素子8の発光層1115は、2mDBTBPDBq-IIと、PCBNBB
と、Ir(tBuppm)(acac)と、を共蒸着し、正孔輸送層1113上に形成
した。ここで、2mDBTBPDBq-II、PCBNBB、及びIr(tBuppm)
(acac)の重量比は、0.8:0.2:0.06(=2mDBTBPDBq-II
:PCBNBB:Ir(tBuppm)(acac))となるように調節した。また、
発光素子8の発光層1115の膜厚は40nmとした。
【0250】
なお、発光素子8の発光層1115において、2mDBTBPDBq-IIは、電子輸
送性材料であり、ホスト材料として機能する。また、PCBNBBは、正孔輸送性材料で
あり、アシスト材料として機能する。また、Ir(tBuppm)(acac)は、イ
リジウムを含む有機金属錯体であり、ゲスト材料として機能する。
【0251】
また、発光素子8の電子輸送層1117aは、発光素子7と同様に、先の実施例2に示
す発光素子5及び比較発光素子6の発光層に用いた構成と同じである。すなわち、青色の
発光を示す発光層を発光素子8の電子輸送層1117aとして用いた構成である。
【0252】
なお、発光素子8については、発光層1115以外の構成は、発光素子7と同様に作製
した。
【0253】
また、上述した本発明の一態様の発光素子(発光素子7及び発光素子8)の蒸着過程は
、全て抵抗加熱法を用いた。
【0254】
以上により得られた本発明の一態様の発光素子(発光素子7及び発光素子8)の素子構
造を表4に示す。
【0255】
【表4】
【0256】
表4に示すように本発明の一態様の発光素子は、燐光性材料(発光素子7及び発光素子
8)のホスト材料として、2mDBTBPDBq-IIを用いている。また、発光素子7
及び発光素子8の電子輸送層は、共通のCzPA及び1,6mMemFLPAPrnを用
いている。
【0257】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、上記作製した各発光素子が大気に曝
されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時
に80℃にて1時間熱処理)を行った。その後、各発光素子の動作特性について測定を行
った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0258】
発光素子7及び発光素子8の電流密度-輝度特性を図22に、電圧-輝度特性を図23
に、輝度-電流効率特性を図24に、電圧-電流特性を図25に、発光スペクトルを図2
6に、それぞれ示す。
【0259】
なお、図22において、横軸は電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m
)を表す。また、図23において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表
す。また、図24において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を
表す。また、図25において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流(mA)を表す。また、
図26において、横軸は波長(nm)を、縦軸は強度(任意単位)を表す。
【0260】
また、各発光素子における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度
(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(
%)を表5に示す。
【0261】
【表5】
【0262】
表5に示す通り、発光素子7の輝度984cd/mにおける素子特性として、電流効
率が27cd/Aであり、外部量子効率が25%であり、CIE色度座標が、(x,y)
=(0.66,0.34)であった。また、発光素子8の輝度948cd/mおける素
子特性として、電流効率が76cd/Aであり、外部量子効率が23%であり、CIE色
度座標が、(x,y)=(0.44,0.56)であった。
【0263】
また、図26に示す通り、発光素子7及び発光素子8の発光スペクトルは、それぞれ6
20nm、548nmにピークを有している。また、電子輸送層に用いた1,6mMem
FLPAPrnからの青色発光(図21参照)は、観測されていないことがわかる。
【0264】
以上のように、本発明の一態様の発光素子7は、電子輸送層1117aとして、青色の
発光を示す発光層を用いても、実施例2で示した発光素子1と同等の素子特性が得られた
。また、本発明の一態様の発光素子8は、電子輸送層1117aとして、青色の発光を示
す発光層を用いても、実施例2で示した発光素子3と同等の素子特性が得られた。
【0265】
したがって、電子輸送層1117aに用いた蛍光性材料のホスト材料(CzPA)の電
子輸送性及び燐光性材料のホスト材料である電子輸送性材料(2mDBTBPDBq-I
I)の電子輸送性が大きいため、本発光素子の発光領域は、発光層1115の正孔輸送層
1113近傍の領域に形成され、発光層1115で励起される発光が電子輸送層1117
a側に拡散しない、あるいは拡散しにくい素子構成であることが確認された。また、発光
素子7及び発光素子8に用いた電子輸送層1117aには、蛍光性材料である1,6mM
emFLPAPrnが含まれている。しかしながら、図22乃至図26に示す通り、蛍光
性材料である1,6mMemFLPAPrnは、素子特性に影響を与えないことが確認さ
れた。
【0266】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態に示す構成、または他の実施例に示す構
成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【実施例4】
【0267】
本実施例では、実施例2及び実施例3で作製した本発明の一態様の発光素子である発光
素子1、発光素子3、発光素子7、及び発光素子8と、比較用の発光素子である比較発光
素子2、及び比較発光素子4について、信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図27
(A)、(B)に示す。
【0268】
図27(A)は、発光素子1、比較発光素子2、及び発光素子7、すなわち赤色の素子
の信頼性試験結果である。また、図27(B)は、発光素子3、比較発光素子4、及び発
光素子8、すなわち緑色の素子の信頼性試験結果である。なお、図27(A)、(B)に
おいて、信頼性試験の測定方法は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一
定の条件で各発光素子を駆動した。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は初期輝度を1
00%とした時の規格化輝度(%)を表す。また、図27(A)、(B)において、各発
光素子のデータが概略重なっている。
【0269】
図27(A)の結果より、発光素子1の357時間経過後の規格化輝度は、68%であ
った。また、比較発光素子2の357時間経過後の規格化輝度は、68%であった。また
、発光素子7の357時間経過後の規格化輝度は、66%であった。また、図27(B)
の結果より、発光素子3の688時間経過後の規格化輝度は、81%であった。また、比
較発光素子4の688時間経過後の規格化輝度は、82%であった。また、発光素子8の
688時間経過後の規格化輝度は、80%であった。
【0270】
以上のように、本発明の一態様である発光素子1及び発光素子7は、比較発光素子2と
同等の信頼性試験の結果であった。また、本発明の一態様である発光素子3及び発光素子
8は、比較発光素子4と同等の信頼性試験の結果であった。
【0271】
なお、本実施例に示す構成は、他の実施の形態に示す構成、または他の実施例に示す構
成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【符号の説明】
【0272】
100 基板
101 陽極
103 陰極
111 正孔注入層
113 正孔輸送層
113a 第1の正孔輸送層
113b 第2の正孔輸送層
113c 第3の正孔輸送層
113d 第4の正孔輸送層
115 発光層
115a 第1の発光層
115b 第2の発光層
115c 第3の発光層
117 電子輸送層
119 電子注入層
121a 第1の燐光性材料
122a 第1の電子輸送性材料
123a 第1の正孔輸送性材料
131a 第2の燐光性材料
132a 第2の電子輸送性材料
133a 第2の正孔輸送性材料
141a 蛍光性材料
142a 第3の電子輸送性材料
200 基板
201a 陽極
201b 陽極
201c 陽極
203 陰極
211 正孔注入層
213a 第1の正孔輸送層
213b 第2の正孔輸送層
213c 第3の正孔輸送層
215a 第1の発光層
215b 第2の発光層
215c 第3の発光層
217 電子輸送層
219 電子注入層
250 発光装置
251a 隔壁
251b 隔壁
251c 隔壁
251d 隔壁
253 半透過・半反射電極
253a 反射電極
253b 反射電極
253c 反射電極
260 発光装置
1100 基板
1101 陽極
1103 陰極
1111 正孔注入層
1113 正孔輸送層
1115 発光層
1117 電子輸送層
1117a 電子輸送層
1119a 電子注入層
1119b 電子注入層
7100 テレビジョン装置
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7312 マイクロフォン
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7501 照明部
7502 傘
7503 可変アーム
7504 支柱
7505 台
7506 電源
図1
図2
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