(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】プロペラシャフト
(51)【国際特許分類】
B60K 17/22 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B60K17/22 Z
(21)【出願番号】P 2024502854
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2022046053
(87)【国際公開番号】W WO2023162418
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2022026367
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】市川 勝一
(72)【発明者】
【氏名】堤 大喜
(72)【発明者】
【氏名】増田 肇幸
(72)【発明者】
【氏名】石倉 健一郎
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-173031(JP,A)
【文献】特開2018-30389(JP,A)
【文献】特開平7-40752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力を伝達するプロペラシャフトであって、
前記車両への取り付けに供する車両取付部材であって、前記車両に取り付けられる取付部と、前記取付部に支持される被支持部と、を有する前記車両取付部材と、
前記車両取付部材を介して前記車両に支持される第1軸部材であって、前記車両のトランスミッションの出力軸に接続され、前記出力軸を介して前記車両の駆動力が伝達されるスリーブヨーク部と、前記第1軸部材の回転軸線の方向において前記スリーブヨーク部と反対側に設けられ、前記車両取付部材の前記被支持部に覆われるスタブシャフト部と、前記スリーブヨーク部と前記スタブシャフト部を繋ぐ筒部と、を有し、前記スタブシャフト部において、前記回転軸線の方向における前記車両取付部材と重なり合う位置に、前記第1軸部材のうち最もねじり強度が低い最弱部が設けられた前記第1軸部材と、
を備えたことを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項2】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記取付部は、センターベアリングサポートであり、
前記被支持部は、前記スタブシャフト部を回転支持するベアリングであることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項3】
請求項2に記載のプロペラシャフトであって、
前記スタブシャフト部は、前記筒部に接続される接続部と、前記回転軸線の方向において前記接続部の反対側の外周面に設けられた雄スプライン部と、前記接続部と前記雄スプライン部の間に設けられ、前記ベアリングが固定されるベアリング固定部と、を有し、
前記最弱部は、前記回転軸線の方向において、前記ベアリング固定部と前記雄スプライン部の間に設けられていることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項4】
請求項3に記載のプロペラシャフトであって、
前記雄スプライン部に係合可能な雌スプライン部を介して第1軸部材に接続される第2軸部材を備え、
前記第2軸部材の前記雌スプライン部の外周側には、前記回転軸線の方向において前記センターベアリングサポートの内周部を包囲する筒状のカバー部材が設けられていることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項5】
請求項3に記載のプロペラシャフトであって、
前記最弱部は、前記スタブシャフト部の外周面に設けられ、前記回転軸線に対する径方向において、前記雄スプライン部の根元部の直径よりも小径に形成された凹部であることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項6】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記最弱部は、前記回転軸線の方向において、前記スタブシャフト部の外周面で最も小径に形成されていることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項7】
請求項2に記載のプロペラシャフトであって、
前記スタブシャフト部は、前記筒部に接続される接続部と、前記回転軸線の方向において前記接続部の反対側の外周面に設けられた雄スプライン部と、前記接続部と前記雄スプライン部の間に設けられ、前記ベアリングが固定されるベアリング固定部と、前記接続部と前記ベアリング固定部の間に設けられ、前記ベアリングの内輪よりも大径に形成されると共に、前記ベアリングの内輪が付き当てられる段差部と、を有し、
前記最弱部は、前記段差部に設けられていることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項8】
請求項2に記載のプロペラシャフトであって、
前記スタブシャフト部は、前記筒部に接続される接続部と、前記回転軸線の方向において前記接続部の反対側の外周面に設けられた雄スプライン部と、前記接続部と前記雄スプライン部の間に設けられ、前記ベアリングが固定されるベアリング固定部と、前記接続部と前記ベアリング固定部の間に設けられ、前記ベアリングの内輪よりも大径に形成されると共に、前記ベアリングの内輪が付き当てられる段差部と、前記接続部と前記段差部の間に形成されたスタブ筒部と、を有し、
前記最弱部は、前記スタブ筒部に設けられていることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項9】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記最弱部は、焼きなまし加工により形成されていることを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項10】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記スリーブヨーク部は、前記車両と接続され、前記車両から潤滑液が導かれる車両接続筒部と、前記車両と接続される側とは反対側に設けられ、前記車両接続筒部を封止する底部と、を有し、前記最弱部よりもねじり強度が高く設定されていることを特徴とするプロペラシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロペラシャフトとしては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、このプロペラシャフトは、車両のトランスミッションに接続される第1軸部材と、車両のデファレンシャルに接続される第2軸部材と、を有し、第1軸部材と第2軸部材とが、車体に支持されるセンターベアリングを介して一体回転可能に連結されている。第1軸部材は、主として、トランスミッションから駆動力が伝達されるスリーブヨーク部と、このスリーブヨーク部から駆動力が伝達される筒部と、この筒部と繋がるスタブシャフト部と、によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のプロペラシャフトによれば、スリーブヨーク部とスタブシャフト部との強度の関係については何ら考慮されていない。このため、前記従来のプロペラシャフトにおいては、スリーブヨーク部のねじり強度が、スタブシャフト部のねじり強度よりも低くなってしまうおそれがあった。すなわち、第1軸部材において、スリーブヨーク部が最弱部となってしまい、このスリーブヨーク部が破損することによって、当該スリーブヨーク部を受容するトランスミッションのケース内部に充填された潤滑液が漏出してしまうおそれがある点で、改善の余地を残していた。
【0006】
そこで、本発明は、前記従来のプロペラシャフトの技術的課題に鑑みて案出されたものであり、スリーブヨーク部のねじり強度をスタブシャフト部のねじり強度よりも高く確保することができるプロペラシャフトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その一態様として、第1軸部材のスタブシャフト部において、車両取付部材と重なり合う位置に、前記第1軸部材で最もねじり強度が低い最弱部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スリーブヨーク部のねじり強度をスタブシャフト部のねじり強度よりも高く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプロペラシャフトの半縦断面図である。
【
図2】
図1に示すスリーブヨーク部と車両(トランスミッションの出力軸)との接続部を拡大して表示した拡大断面図である。
【
図3】
図2に示す第1駆動側継手部材の縦断面図である。
【
図4】
図1に示す第1軸部材と第2軸部材との接続部を拡大して表示した拡大断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るプロペラシャフトのスタブシャフト部の拡大断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の変形例に係るプロペラシャフトのスタブシャフト部の拡大断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るプロペラシャフトのスタブシャフト部の拡大断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るプロペラシャフトのスタブシャフト部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るプロペラシャフトの実施形態について、図面に基づき詳述する。なお、下記の実施形態では、当該プロペラシャフトを、従来と同様、自動車用のプロペラシャフトについて適用したものを例示して説明する。
【0011】
また、以下の説明では、便宜上、各図の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図1に示すプロペラシャフトPSの回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0012】
(プロペラシャフトの構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプロペラシャフトPSの全体の形態を表示した、当該プロペラシャフトPSの半断面図を示している。
【0013】
図1に示すように、プロペラシャフトPSは、車両の前方に配置される回転軸である図示外の第1回転軸と、車両の後方に配置される回転軸である図示外の第2回転軸と、の間に、車両の前後方向に沿って配置される。例えば、駆動方式がFR(フロントエンジン・リアドライブ)の車両の場合、前記第1回転軸は、車両の前方に配置され、エンジンやモータ等の駆動源から回転力が伝達されるトランスミッションの出力軸に相当し、前記第2回転軸は、車両の後方に配置され、車両の後輪へ回転力を伝達するデファレンシャルの入力軸に相当する。
【0014】
すなわち、本実施形態に係るプロペラシャフトPSは、前後で2分割に構成された2ピース構造を有してなるもので、第1継手部材J1を介して図示外のトランスミッションに接続される第1軸部材1と、第2継手部材J2を介して図示外のデファレンシャルに接続される第2軸部材2とが、第3継手部材J3を介して、回転軸線Zを中心として一体回転可能に接続されたものである。
【0015】
第1軸部材1は、前端部が第1継手部材J1を介して前記図示外のトランスミッションの出力軸と一体回転可能に接続される。また、第1軸部材1の後端部は、車両取付部材5を介して図示外の車体のフロア下部に取り付け支持されると共に、第3継手部材J3を介して第2軸部材2に接続される。なお、車両取付部材5は、本発明に係る取付部に相当するセンターベアリングサポート51と、このセンターベアリングサポート51を介して図示外の車体のフロアに懸架される、本発明に係る被支持部に相当するセンターベアリング52と、を備える。
【0016】
第2軸部材2は、前端部が第3継手部材J3を介して第1軸部材1に一体回転可能に接続され、後端部が第2継手部材J2を介して前記図示外のデファレンシャルの入力軸に一体回転可能に接続される。また、この第2軸部材2は、前側に配置される円柱状の第1軸部21と、後側に配置される円筒状の第2軸部22と、をもって軸方向に2分割に形成されている。そして、この第1軸部21と第2軸部22は、後述する雄スプライン部210と雌スプライン部220とが嵌合してなるスプライン嵌合をもって、軸方向に相対移動可能に接続されている。なお、第1軸部21と第2軸部22の間には、前記スプライン嵌合された部分への異物の侵入を抑制するゴム製のカバー部材23が、第1軸部21と第2軸部22とに跨って両者の接続部を覆うように設けられている。
【0017】
第1軸部21は、前端部が第3継手部材J3の後述する第3従動側継手部材J32の後端部に圧入によって固定されていて、後端部の外周面に、雄スプライン部210が形成されている。第2軸部22は、軸方向に2分割に構成され、前端側に設けられ、第1軸部21との接続に供する第2軸部接続部221と、後端側に設けられ、第2軸部22の本体を構成する第2軸部本体部222と、を有する。
【0018】
第2軸部接続部221は、所定の金属材料により比較的厚肉な円筒状を呈し、内周側に雌スプライン部220が形成されている。第2軸部本体部222は、金属材料やFRPに代表される繊維強化プラスチックにより比較的薄肉の円筒状を呈し、前端部が第2軸部接続部221の後端部に圧入により固定され、後端部が第2継手部材J2の後述する第2駆動側継手部材J21の前端部に圧入により固定されている。
【0019】
第1継手部材J1は、前記図示外のトランスミッションの出力軸に接続され、本発明に係るスリーブヨーク部を構成する第1駆動側継手部材J11と、第1軸部材1に接続される第1従動側継手部材J12と、第1駆動側継手部材J11と第1従動側継手部材J12とを一体回転可能に連結する第1十字軸J13と、を備える。
【0020】
第2継手部材J2は、第2軸部材2の第2軸部22に接続される第2駆動側継手部材J21と、前記図示外のデファレンシャルの入力軸に接続される第2従動側継手部材J22と、第2駆動側継手部材J21と第2従動側継手部材J22とを一体回転可能に連結する第2十字軸J23と、を備える。
【0021】
第3継手部材J3は、第1軸部材1に接続される第3駆動側継手部材J31と、第2軸部材2の第1軸部21に接続される第3従動側継手部材J32と、第3駆動側継手部材J31と第3従動側継手部材J32とを一体回転可能に連結する第3十字軸J33と、を備える。
【0022】
(トランスミッションの出力軸と第1継手部材の接続構造)
図2は、車両に搭載されたトランスミッション3の出力軸31と第1駆動側継手部材J11との接続部をプロペラシャフトPSの回転軸線Zに沿って切断した、車両のトランスミッション3の出力軸31と第1駆動側継手部材J11との接続部の部分拡大断面図を示している。なお、本実施形態では、第1駆動側継手部材J11が、本発明に係るスリーブヨーク部に相当する。また、
図3は、
図2に示す第1駆動側継手部材J11をプロペラシャフトPSの回転軸線Zに沿って切断した、第1駆動側継手部材J11の縦断面図を示している。
【0023】
図2に示すように、トランスミッション3は、金属材料によって概ね円筒状に形成されたケース30の内側を軸方向に沿って貫通する軸貫通孔300に、図示外の変速ギヤと繋がる出力軸31が収容されている。すなわち、トランスミッション3のケース30の軸貫通孔300が、第1駆動側継手部材J11の軸部41の外径よりも若干大きい内径に設定されていて、後述するスプライン結合により出力軸31の後端部の外周側に重なり合う軸部41が、ケース30の軸貫通孔300の後端部に挿入されている。
【0024】
ケース30の後端部の内周側には、ケース30の内周面と軸部41の外周面(軸部側シール面412)との間を液密にシールする概ね円環状のシール部材SLを保持可能なシール保持部32が形成されている。すなわち、このシール保持部32にシール部材SLが嵌め着けられていて、シール部材SLの外周面がシール保持部32の内側面に密着し、シール部材SLの内周面が軸部41の外周面に密着することにより、ケース30の内部に充填された潤滑液TFの外部への流出が抑制されている。
【0025】
出力軸31は、円柱状に形成された一般部310と、一般部310の後端部の所定領域(軸部貫通孔410に挿入される軸方向領域)において当該一般部310よりも小さい外径に形成され、第1駆動側継手部材J11の従動側スプライン部411にスプライン結合する駆動側スプライン部311と、を有する。かかる構成から、駆動側スプライン部311の形成範囲において駆動側スプライン部311と従動側スプライン部411が噛み合うことにより、出力軸31と第1駆動側継手部材J11とが軸方向において相対移動可能となっている。
【0026】
トランスミッション3の出力軸31に接続される第1駆動側継手部材J11は、
図2、
図3に示すように、出力軸31にスプライン結合により接続される軸部41と、この軸部41の後端部に拡径状に形成されたフランジ状のヨークボディ部42と、このヨークボディ部42から二股状に分岐して設けられ、軸方向において軸部41とは反対の方向に延びる一対のヨーク部43,44と、を備え、軸部41とヨークボディ部42と一対のヨーク部43,44とが鍛造によって一体に形成されている。また、第1駆動側継手部材J11は、スタブシャフト部12(後述する最小径凹部71)よりも高いねじれ強度に設定されている。
【0027】
軸部41は、本発明に係る車両接続筒部を構成する円筒状を呈し、内周側に、トランスミッション3の出力軸31を受容する軸部貫通孔410が、軸方向に沿って形成されている。また、この軸部貫通孔410の軸方向の所定領域には、トランスミッション3の出力軸31の外周側に形成された駆動側スプライン部311とスプライン結合可能な従動側スプライン部411が形成されている。また、軸部41の外周側には、トランスミッション3のケース30との間に配置されるシール部材SLの内周面が密着可能な平坦状の軸部側シール面412が形成されている。すなわち、シール部材SLの内周面が軸部側シール面412に密着することにより、トランスミッション3のケース30内に充填された潤滑液TFの外部への流出が抑制されている。また、軸部貫通孔410の後端部には、軸部41の底部を構成することによりトランスミッション3のケース30から軸部貫通孔410の内部に導かれた潤滑液TFを封止可能な概ね円板状のプラグ66が圧入によって取り付けられている。
【0028】
また、軸部41の先端部の外周縁には、先端に向かって外径を徐々に縮小してなる概ね円錐テーパ状の軸部外周側テーパ部413が形成されている。これにより、シール部材SLが配置されたケース30内に軸部41を挿入する際、シール部材SLの内周面に対して摺動する軸部41の先端部によりシール部材SLの内周面を損傷してしまう不具合を抑制することが可能となっている。
【0029】
ヨークボディ部42は、概ね円板状を呈し、軸部41に対して段差拡径状に形成されている。また、このヨークボディ部42の底部(前端部)には、トランスミッション3のケース30の後端面と当接することでトランスミッション3の出力軸31と軸部41とが互いに近づく方向への移動を規制するストッパ部45が設けられている。
【0030】
ストッパ部45は、ヨークボディ部42の底部が段差状に縮径されてなり、トランスミッション3のケース30の後端部よりも僅かに大きな外径に設定されている。また、ストッパ部45の外周側には、当該ストッパ部45と軸方向に対向するトランスミッション3のケース30へと向かって延出する円筒状のカバー部材61が、圧入により固定されている。カバー部材61は、軸方向においてトランスミッション3のケース30と相互に重なるように設けられる。すなわち、カバー部材61は、トランスミッション3のケース30とストッパ部45とが離間した状態で発生するケース30とストッパ部45の軸方向隙間を覆うことにより、軸部側シール面412への異物の付着を抑制する。
【0031】
一対のヨーク部43,44は、ヨークボディ部42の外周側端縁から軸方向に沿って延びるように設けられ、軸部41よりも厚肉に形成されている。また、この一対のヨーク部43,44には、第1十字軸J13の一対の軸部J131,J132(
図1参照)と係合可能な一対の軸貫通孔430,440が、ヨーク部43,44の厚さ方向において回転軸線Zを挟んで径方向に対向するように形成されている。
【0032】
[第1実施形態]
(第1軸部材と第2軸部材の接続部の構成)
図4は、
図1に示す第1軸部材1と第2軸部材2との接続部を拡大して表示した当該接続部の拡大断面図を示している。また、
図5は、
図4に示すスタブシャフト部12の半断面図を示している。
【0033】
図4に示すように、第1軸部材1は、第1従動側継手部材J12の後端部に接続される筒部11と、筒部11の後端部に接続され、第2軸部材2との接続に供するスタブシャフト部12と、を有する。なお、本発明に係る第1軸部材は、第1継手部材J1と第1軸部材1とを含む概念であって、第1継手部材J1の第1駆動側継手部材J11からなるスリーブヨーク部と、筒部11と、スタブシャフト部12と、を含む。
【0034】
筒部11は、FRPに代表される繊維強化プラスチックにより、比較的薄肉の円筒状に形成されたものである。この筒部11は、前端部が第1従動側継手部材J12の後端部に圧入により固定され、後端部がスタブシャフト部12の前端部に圧入により固定されている。
【0035】
スタブシャフト部12は、
図4、
図5に示すように、筒部11に接続される接続部121と、軸方向において接続部121の反対側に設けられ、第3駆動側継手部材J31に設けられた雌スプライン部J311とスプライン結合可能な雄スプライン部122と、接続部121と雄スプライン部122との間に設けられ、センターベアリング52が固定されるベアリング固定部123と、を有する。
【0036】
接続部121は、筒部11の後端部の内周面に圧入される圧入部121aと、この圧入部121aの後端側に段差状に拡径形成されたフランジ部121bと、を有する。すなわち、接続部121は、フランジ部121bの前端面を筒部11の後端面に突き当てるように、圧入部121aが筒部11の後端部に圧入により固定される。
【0037】
また、フランジ部121bの後端側には、例えば車体が前後方向に衝突するなど第1軸部材1と第2軸部材2が相互に近づく方向へ移動した際にセンターベアリングサポート51(後述する車両取付部511)と衝突可能な概ね円板状の衝突部材60が取り付けられる衝突部材取付部124が形成されている。衝突部材取付部124は、前端側へ開口する中空形状をなすスタブ筒部120の外周側に設けられ、フランジ部121bの後端側に段差状に縮径した平坦面により形成されている。そして、衝突部材60の前端面をフランジ部121bの後端面に突き当てるようにして、衝突部材60がスタブシャフト部12の後端側から衝突部材取付部124に圧入により固定される。
【0038】
また、衝突部材取付部124の後端側には、ベアリング固定部123との間に、概ね円環状のシール部材62が取り付けられるシール取付部125が形成されている。このシール取付部125は、センターベアリング52の内輪521よりも大径となる外径に設定されている。そして、シール取付部125には、後述するセンターベアリングサポート51のベアリング支持部512の前端部(後述する第2支持部材515)との間を液密にシールするシール部材62が嵌め着けられている。
【0039】
雄スプライン部122は、スタブシャフト部12の後端部において、軸方向の所定領域にわたって形成されている。また、雄スプライン部122の後端部には、雄スプライン部122よりも小径に形成された小径端部126を有し、この小径端部126の外周面には、周知の止め輪(例えばスナップリング)63を嵌め着け可能な環状溝126aが形成されている。すなわち、この環状溝126aに嵌め着けられた止め輪63が第3駆動側継手部材J31の雌スプライン部J311の後端部に有する係止突起J312に係止することにより、雌スプライン部J311に対する雄スプライン部122の抜け止めがされている。
【0040】
ベアリング固定部123は、シール取付部125の後端側に段差状に縮径し、雄スプライン部122の外径よりも若干大きく、かつセンターベアリング52の内輪521を圧入可能な外径を有する平坦状に形成されている。また、ベアリング固定部123とシール取付部125の間には、ベアリング固定部123の外周面に対して概ね垂直に設けられ、センターベアリング52の内輪521の突き当てに供する段差部128が形成されている。
【0041】
センターベアリングサポート51は、図示外の車体のフロア下部に取り付けられる金属製の車両取付部511と、センターベアリング52を支持する金属製のベアリング支持部512と、車両取付部511とベアリング支持部512とを繋ぐゴム製の弾性支持部513と、を備える。すなわち、センターベアリングサポート51は、センターベアリング52を介してプロペラシャフトPSの中間部を支持するベアリング支持部512が弾性支持部513によって弾性的に支持されることで、車両走行中に軸方向に変位するプロペラシャフトPSが図示外の車体のフロア下部に弾性的に支持される。
【0042】
ここで、ベアリング支持部512は、前端側から後端側へ向かって段差状に縮径する円筒状の第1支持部材514と、第1支持部材514の前端部の内周側に取り付けられ、前端側に開口するように折り返し状に形成された第2支持部材515と、を有する。
【0043】
第1支持部材514は、金属製の薄板を円筒状に形成してなるものであり、前端側に設けられた大径部514aと、この大径部514aから段差状に縮径された中径部514bと、この中径部514bから段差状に縮径された小径部514cと、を有する。大径部514aは、内周側に、第2支持部材515が固定される。中径部514bは、センターベアリング52の外輪522の外周面を保持しつつ、後端側に設けられた段部514dが外輪522の後端部に当接することにより、外輪522の後方への移動を規制する。小径部514cは、軸方向において第3駆動側継手部材J31の前端部と重なり合うように後端側へ延出する。
【0044】
第2支持部材515は、金属製の薄板を前端側へ折り返すような縦断面が横U字形状となるように折り曲げ形成したものであり、この折り曲げ部を挟んで一側部515aが第1支持部材514(大径部514a)に接続されると共に、他側部515bがシール取付部125と対向するように配置され、当該他側部515bによってシール部材62を保持している。
【0045】
センターベアリング52は、周知のボールベアリングであって、ベアリング固定部123に圧入固定される内輪521と、センターベアリングサポート51に支持される外輪522と、内輪521と外輪522の間に転動可能に支持される複数の転動体であるボール523と、を有する。内輪521は、前端部がシール取付部125の後端面に当接し、後端部に第3駆動側継手部材J31の前端部が当接することをもって、シール取付部125の後端面と第3駆動側継手部材J31の前端部との間で挟持状態に保持される。外輪522は、ベアリング支持部512の中径部514bにより外周側が保持された状態で、ベアリング支持部512の第2支持部材515と段部514dとの間で挟持状態に保持される。
【0046】
また、スタブシャフト部12には、軸方向における衝突部材取付部124とシール取付部125との間に、概ね平坦状のカバー取付部127が形成されている。このカバー取付部127には、後端側へと向かって延びる概ね円筒状の第1ダストカバー64が取り付けられている。この第1ダストカバー64は、カバー取付部127に圧入により固定される第1カバー小径部641と、軸方向において第1カバー小径部641とは反対側に設けられ、第1カバー小径部641から後端側へと向かって段差状に拡径形成された第1カバー大径部642と、を有し、これらが金属材料によって一体に形成されている。また、第1ダストカバー64は、第1カバー大径部642が軸方向においてセンターベアリングサポート51の第2支持部材515の一側部515a及び他側部515bと重なり合うように、第2支持部材515の一側部515aと他側部515bとの間に挿入されている。このように、第1カバー大径部642が第2支持部材515の前端側開口部に挿入されて第2支持部材515の一側部515a及び他側部515bと重なり合うように設けられることで、第1ダストカバー64と第2支持部材515とをもって、いわゆるラビリンス構造が形成されている。
【0047】
また、スタブシャフト部12には、軸方向における雄スプライン部122とベアリング固定部123との間に、当該スタブシャフト部12の外周側で最も外径の小さい最小径凹部71が形成されている。この最小径凹部71は、雄スプライン部122とベアリング固定部123との間に括れ状に形成され、雄スプライン部122の根元部の直径よりも小径な外径を有していて、第1軸部材1において最もねじり強度が低い最弱部WPを構成している。より具体的には、最小径凹部71は、ベアリング固定部123から雄スプライン部122側へ徐々に外径が減少する第1テーパ部71aと、雄スプライン部122からベアリング固定部123側へ徐々に外径が減少する第2テーパ部71bと、これら第1テーパ部71aと第2テーパ部71bとの間に平坦状に設けられ、スタブシャフト部12の外周側で最小径となる最小径部71cと、を有する。
【0048】
第3駆動側継手部材J31は、スタブシャフト部12との接続に供する概ね円筒状のシャフト接続部J310を有し、このシャフト接続部J310の内周側に、スタブシャフト部12の雄スプライン部122とスプライン結合可能な雌スプライン部J311が軸方向の所定範囲にわたって形成されている。また、シャフト接続部J310には、雌スプライン部J311の後端部の内周側に、スタブシャフト部12に取り付けられた止め輪63が係止可能な係止突起J312が突出形成されている。
【0049】
また、シャフト接続部J310の外周側は、前端側に向かって段差状に縮径形成されていて、後端側に設けられた一対の第3駆動側継手ヨーク部J313と、第3駆動側継手ヨーク部J313から段差状に縮径形成された第3駆動側継手カバー取付部J314と、第3駆動側継手カバー取付部J314から段差状に縮径形成された第3駆動側継手小径部J315と、を有する。一対の第3駆動側継手ヨーク部J313は、第3十字軸J33に接続される。一方、第3駆動側継手小径部J315は、センターベアリングサポート51における第1支持部材514の後端部に挿入され、センターベアリング52の内輪521の後端部に当接するように配置される。
【0050】
第3駆動側継手カバー取付部J314には、前端側へと延びる概ね円筒状の第2ダストカバー65が取り付けられている。この第2ダストカバー65は、第3駆動側継手カバー取付部J314に圧入により固定される第2カバー小径部651と、軸方向において第2カバー小径部651とは反対側に設けられ、第2カバー小径部651から前端側へと向かって段差状に拡径形成された第2カバー大径部652と、を有し、これらが金属材料によって一体に形成されている。また、第2ダストカバー65は、軸方向において第2カバー大径部652がセンターベアリングサポート51の第1支持部材514の小径部514cを包囲するように、軸方向において第2カバー大径部652が第1支持部材514の小径部514cの外周側に重なり合うように配置される。このように、第2ダストカバー65の第2カバー大径部652と第1支持部材514の小径部514cとが重なり合うことにより、第2ダストカバー65と第1支持部材514とをもって、いわゆるラビリンス構造が形成されている。
【0051】
(本実施形態の作用効果)
前記従来のプロペラシャフトでは、スリーブヨーク部とスタブシャフト部の強度の関係については何ら考慮されていないため、スリーブヨーク部のねじり強度がスタブシャフト部のねじり強度よりも低くなってしまうおそれがあった。すなわち、第1継手部材を含む第1軸部材では、スリーブヨーク部が最弱部となってしまい、当該スリーブヨーク部が破損することにより、スリーブヨーク部に繋がるトランスミッションの出力軸からトランスミッションの内部に充填された潤滑液が漏出してしまうおそれがある点で、改善の余地を残していた。
【0052】
これに対して、本実施形態に係るプロペラシャフトPSでは、以下のような効果が奏せられることで、前記従来のプロペラシャフトの技術的課題を解決することができる。
【0053】
本実施形態に係るプロペラシャフトPSは、車両(図示外)の駆動力を伝達するプロペラシャフトであって、車両への取り付けに供する車両取付部材であって、車両に取り付けられる取付部(センターベアリングサポート51)と、センターベアリングサポート51に支持される被支持部(センターベアリング52)と、を有する車両取付部材5と、車両取付部材5を介して車両に支持される第1軸部材であって、車両のトランスミッション3の出力軸31に接続され、出力軸31を介して車両の駆動力が伝達されるスリーブヨーク部(第1駆動側継手部材J11)と、第1軸部材1の回転軸線Zの方向において第1駆動側継手部材J11と反対側に設けられ、車両取付部材5のセンターベアリング52に覆われるスタブシャフト部12と、第1駆動側継手部材J11とスタブシャフト部12を繋ぐ筒部11と、を有し、スタブシャフト部12において、回転軸線Zの方向における車両取付部材5と重なり合う位置に、第1軸部材1のうち最もねじり強度が低い最弱部WP(本実施形態では最小径凹部71)が設けられた第1軸部材1と、を備えている。
【0054】
このように、本実施形態によれば、第1軸部材1のスタブシャフト部12における車両取付部材5と重なり合う位置に最小径凹部71が設けられていて、この最小径凹部71によって、第1継手部材J1を含む第1軸部材1において最もねじり強度が低い最弱部WPが構成されている。このため、第1軸部材1において、第1駆動側継手部材J11が最弱部WPとなるおそれがない。これにより、例えば車両衝突時など、第1駆動側継手部材J11が破損した場合に、当該第1駆動側継手部材J11を受容するトランスミッション3のケース30の内部に充填された潤滑液TFが漏出する不具合を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、前記取付部は、センターベアリングサポート51であり、前記被支持部は、スタブシャフト部12を回転支持するセンターベアリング52である。
【0056】
このように、本実施形態では、第1軸部材1が、ベアリング固定部123に固定されるセンターベアリング52、及びこれを支持するセンターベアリングサポート51を介して、車体に支持されている。このため、例えば車両衝突時など、プロペラシャフトPSが最弱部WPである最小径凹部71において破損した場合でも、第1軸部材1は、センターベアリング52及びセンターベアリングサポート51を介して車体に支持されることとなる。これにより、最小径凹部71の破損時におけるプロペラシャフトPSの車体からの脱落を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、スタブシャフト部12は、筒部11に接続される接続部121と、回転軸線Zの方向において接続部121の反対側の外周面に設けられた雄スプライン部122と、接続部121と雄スプライン部122の間に設けられ、センターベアリング52が固定されるベアリング固定部123と、を有し、最弱部WPは、回転軸線Zの方向において、ベアリング固定部123と雄スプライン部122の間に設けられている。
【0058】
このように、本実施形態では、スタブシャフト部12のベアリング固定部123が、センターベアリング52及びこれを支持するセンターベアリングサポート51により車体に支持されている。このため、第1軸部材1の最弱部WPに相当する最小径凹部71が破損して第1軸部材1が分断されてしまった場合でも、第1軸部材1のうち、最小径凹部71よりもベアリング固定部123側については、センターベアリング52及びセンターベアリングサポート51を介して車体に支持されることとなる。これにより、最小径凹部71の破損時における当該最小径凹部71よりもベアリング固定部123側(前端側)の脱落を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、最小径凹部71が、軸方向において、ベアリング固定部123と雄スプライン部122の間に設けられている。このため、ベアリング固定部123に対するセンターベアリング52の圧入に影響を与えることなく、最小径凹部71を設けることができる。
【0060】
また、本実施形態では、雄スプライン部122に係合可能な雌スプライン部J311を介して第1軸部材1に接続される第2軸部材2を備え、第2軸部材2の雌スプライン部J311の外周側には、回転軸線Zの方向においてセンターベアリングサポート51の内周部(第1支持部材514)を包囲する筒状のカバー部材(第2ダストカバー65)が設けられている。
【0061】
このように、本実施形態では、第2軸部材2の外周側に設けられた第2ダストカバー65が、回転軸線Zの方向において、センターベアリングサポート51と重なり合うように設けられている。具体的には、第2ダストカバー65の第2カバー大径部652が、センターベアリングサポート51の第1支持部材514の小径部514cの外周側を包囲するように配置されている。このため、例えば車両衝突時など、第1軸部材1の最弱部WPを構成する最小径凹部71が破損して第1軸部材1と第2軸部材2が分断された場合であっても、最小径凹部71よりも後端側に位置する第2軸部材2については、第2ダストカバー65の第2カバー大径部652が第1支持部材514の小径部514cに引っかかることにより車体に支持されることとなる。これにより、最小径凹部71の破損時における第2軸部材2の脱落についても抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、最弱部WPを構成する最小径凹部71は、スタブシャフト部12の外周面に設けられ、回転軸線Zに対する径方向において、雄スプライン部122の根元部の直径よりも小径に形成された凹部である。
【0063】
このように、本実施形態では、最小径凹部71が、雄スプライン部122の根元部の直径よりも小径に形成された凹部によって構成されている。すなわち、比較的小径となる雄スプライン部122の根元部に、当該根元部よりも小径の最小径凹部71が形成されている。これにより、比較的少ない加工量で最小径凹部71を形成可能となり、当該最小径凹部71を容易かつ歩留まりよく形成することができる。
【0064】
また、本実施形態では、最弱部WPを構成する最小径凹部71は、回転軸線Zの方向において、スタブシャフト部12の外周面で最も小径に形成されている。
【0065】
このように、本実施形態では、最弱部WPを構成する最小径凹部71が、スタブシャフト部12の外周面における最小径部に設定されている。これにより、最小径凹部71を容易に形成できるメリットがある。
【0066】
また、本実施形態では、第1駆動側継手部材J11は、車両と接続され、車両から潤滑液が導かれる車両接続筒部(軸部41の軸部貫通孔410)と、車両と接続される側とは反対側に設けられ、軸部41の軸部貫通孔410を封止する底部(プラグ66)と、を有し、最弱部WPよりもねじり強度が高く設定されている。
【0067】
このように、本実施形態では、第1駆動側継手部材J11が最弱部WPよりも高いねじり強度を有していて、当該第1駆動側継手部材J11が最弱部WPとなってしまうおそれがない。このため、最弱部WPとなる最小径凹部71の破損によって第1駆動側継手部材J11の内部に封入された潤滑液TFが漏出してしまう不具合を抑制することができる。
【0068】
(変形例)
図6は本発明に係るプロペラシャフトの第1実施形態の変形例を示し、前記第1実施形態に係る最小径凹部71の配置を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0069】
図6は、本発明の第1実施形態の変形例に係る第1軸部材1のスタブシャフト部12の半断面図を示している。
【0070】
本変形例に係るプロペラシャフトPSは、
図6に示すように、第1軸部材1のスタブシャフト部12における段差部128に、最小径凹部71が設けられている。すなわち、本変形例に係るプロペラシャフトPSでは、ベアリング固定部123の前端部であって当該ベアリング固定部123と段差部128との境界部の外径が、スタブシャフト部12において最小となるように構成されていて、この段差部128に設けられた最小径凹部71によって、第1継手部材J1を含む第1軸部材1において最もねじれ強度が低い最弱部WPが構成されている。
【0071】
以上のように、本変形例では、スタブシャフト部12は、筒部11に接続される接続部121と、回転軸線Zの方向において接続部121の反対側の外周面に設けられた雄スプライン部122と、接続部121と雄スプライン部122の間に設けられ、センターベアリング52が固定されるベアリング固定部123と、接続部121とベアリング固定部123の間に設けられ、センターベアリング52の内輪521よりも大径に形成されると共に、センターベアリング52の内輪521が突き当てられる段差部と、を有し、最弱部WPは、段差部128に設けられている。
【0072】
このように、本変形例によれば、最弱部WPを構成する最小径凹部71が、センターベアリング52の内輪521を突き当てる段差部128に設けられている。これにより、スタブシャフト部12の加工時において、段差部128と最小径凹部71とを同時に加工することが可能となり、プロペラシャフトPSの良好な生産性を確保することができる。
【0073】
[第2実施形態]
図7は本発明に係るプロペラシャフトの第2実施形態を示し、前記第1実施形態に係る最弱部WPの構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0074】
図7は、本発明の第2実施形態に係る第1軸部材1のスタブシャフト部12の半断面図を示している。
【0075】
本実施形態に係るプロペラシャフトPSは、
図7に示すように、第1軸部材1のスタブシャフト部12において前記中空状のスタブ筒部120を構成する衝突部材取付部124に、最弱部WPが設けられている。具体的には、本実施形態に係るプロペラシャフトPSは、衝突部材取付部124の前端部であって当該衝突部材取付部124と接続部121のフランジ部121bとの境界部に、径方向内側へ比較的大きく凹む凹部72が設けられている。この凹部72は、径方向内側へ大きく凹むことにより、スタブ筒部120の肉厚を局部的に減少させ、かかる薄肉部によって、第1継手部材J1を含む第1軸部材1において最もねじれ強度が低い最弱部WPが形成されている。
【0076】
以上のように、本実施形態では、スタブシャフト部12は、筒部11に接続される接続部121と、回転軸線Zの方向において接続部121の反対側の外周面に設けられた雄スプライン部122と、接続部121と雄スプライン部122の間に設けられ、センターベアリング52が固定されるベアリング固定部123と、接続部121とベアリング固定部123の間に設けられ、センターベアリング52の内輪521よりも大径に形成されると共に、センターベアリング52の内輪521が突き当てられる段差部128と、接続部121と段差部128の間に形成されたスタブ筒部120と、を有し、最弱部WPは、スタブ筒部120に設けられている。
【0077】
このように、本実施形態では、接続部121と段差部128との間にスタブ筒部120が設けられている。このため、中空状のスタブ筒部120をもってスタブシャフト部12の軽量化を図りつつ、当該中空形状により最弱部WPを構成する凹部72の肉厚を薄くすることが可能となり、当該凹部72によって最弱部WPをより効果的に形成することができる。
【0078】
[第3実施形態]
図8は本発明に係るプロペラシャフトの第3実施形態を示し、前記第1実施形態に係る最弱部WPの構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0079】
図8は、本発明の第3実施形態に係る第1軸部材1のスタブシャフト部12の半断面図を示している。
【0080】
本実施形態に係るプロペラシャフトPSは、
図8に示すように、第1軸部材1のスタブシャフト部12における雄スプライン部122とベアリング固定部123との間に、焼きなまし加工が施された焼きなまし加工部73が設けられている。この焼きなまし加工部73は、雄スプライン部122の根元部と同等の外径であって環状溝126aよりも大きな外径に設定された平坦状部129に設けられている。そして、本実施形態では、かかる焼きなまし加工部73によって、第1継手部材J1を含む第1軸部材1において最もねじれ強度が低い最弱部WPが構成されている。
【0081】
以上のように、本実施形態では、最弱部WPは、焼きなまし加工により形成されている。
【0082】
このように、本実施形態では、最弱部WPが、焼きなまし加工部73により形成されている。このため、最弱部WPを、前記最小径凹部71や前記凹部72のような溝状に形成する必要がなくなる。換言すれば、最弱部WPを溝状に形成する場合、当該最弱部WPの加工に供する工具の形状に応じて溝深さのみならず溝幅も確保する必要があるが、焼きなまし加工の場合は、加工を施す熱処理範囲を指示するのみで最弱部WPを形成することができる。これにより、スタブシャフト部12の形状の自由度を向上させることができる。
【0083】
すなわち、最弱部WPを溝状に形成した場合、かかる溝状の最弱部WPには部品を圧入することができないため、当該最弱部WPの分だけスペースを確保する必要があり、当該最弱部WPのレイアウト性に制約を生じる場合がある。ところが、焼きなまし加工の場合には、最弱部WPを平坦状に形成することが可能となるため、当該最弱部WPに部品の圧入を行う設計も可能となる。
【0084】
さらに、最弱部WPを焼きなまし加工により形成した場合、当該最弱部WPを溝状に形成する場合に比べて、雄スプライン部122の長さをより長く確保することが可能となる。これにより、雄スプライン部122の歯部に作用する単位面積当たりの荷重が低減され、当該雄スプライン部122の強度アップを図ることができる。
【0085】
本発明は、前記実施形態等で例示した構成や態様に限定されるものではなく、前述した本発明の作用効果を奏し得るような形態であれば、適用対象の仕様やコスト等に応じて自由に変更可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…第1軸部材、11…筒部、12…スタブシャフト部、2…第2軸部材、3…トランスミッション、31…出力軸、5…車両取付部材、51…センターベアリングサポート(取付部)、52…センターベアリング(被支持部)、71…最小径凹部(最弱部)、72…凹部(最弱部)、73…焼きなまし加工部(最弱部)、J1…第1継手部材、J11…第1駆動側継手部材(スリーブヨーク部)、PS…プロペラシャフト、Z…回転軸線、