(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-04
(45)【発行日】2024-09-12
(54)【発明の名称】動物用被服
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A01K13/00 H
(21)【出願番号】P 2024539534
(86)(22)【出願日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2024014692
【審査請求日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2023068509
(32)【優先日】2023-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】松本 建一
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第3771571(JP,B1)
【文献】特開2015-142571(JP,A)
【文献】特開2007-282577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水速乾性繊維を含む第1の生地と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜が被覆されている第2の生地とが重ね合わされた身生地を備える動物用被服。
【請求項2】
前記第2の生地が、被着される動物から見て、繊維よりも外側の面に金属膜が形成されている請求項1記載の動物用被服。
【請求項3】
前記第1の生地及び前記第2の生地のうちの少なくとも一方が、遮熱ポリエステル繊維をさらに含む請求項1又は2記載の動物用被服。
【請求項4】
前記第1の生地及び前記第2の生地が、編物である請求項1
又は2記載の動物用被服。
【請求項5】
前記動物用被服が馬着である請求項
1又は2記載の動物用被服。
【請求項6】
前記動物用被服が愛玩動物用の被服である請求項
1又は2記載の動物用被服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物に着せて暑さを防ぐ動物用被服に関する。
【背景技術】
【0002】
動物用被服は、乗用馬、牛や馬などの家畜、犬や猫などの愛玩動物に用いられている。乗用馬に用いられる動物用被服は馬着と呼ばれている。動物用被服は、素材の選択や、形状、構造の工夫により、防寒、保温、防暑、防水、虫よけ、装飾などの目的に応じた機能を有するように仕立てられる。
【0003】
地球温暖化により夏季は近年ますます暑くなっており、そのため動物の暑さを防ぐ動物用被服の要望が強くなっている。
【0004】
冷却具の収容部を設け、この収容部の冷却具によりペットの腹部を冷やすペット用腹巻がある(特許文献1)。また、保冷剤を収容可能なポケットを有する家畜用冷却帯がある(特許文献2)。これらの技術は、冷却具や保冷剤によってペットや家畜を冷却することから、冷却具や保冷剤が気温又は動物の体温で温まった後は冷却効果が薄れるし、また繰り返し冷却するために冷却具や保冷剤を交換する手間が煩雑であり、更に冷却具や保冷剤のコストが嵩む。
【0005】
接触冷感繊維とポリウレタン系弾性繊維との交編により身生地が構成された家畜用衣料がある(特許文献3)。この技術は、冷却具や保冷剤が不要であることから特許文献1や特許文献2の上述した不都合はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-287321号公報
【文献】特開2013-179903号公報
【文献】特開2017-123842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の、接触冷感繊維とポリウレタン系弾性繊維との交編により身生地が構成された家畜用衣料では、防暑効果が十分ではなかった。動物のなかでも馬や牛は暑さに弱いため、防暑のための動物用被服が特に求められているところである。
そこで本発明の目的は、防暑効果に優れた動物用被服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の動物用被服は、吸水速乾性繊維を含む第1の生地と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜が被覆されている第2の生地とが重ね合わされた身生地を備える。
【0009】
本発明の動物用被服においては、上記第2の生地が、被着される動物から見て、繊維よりも外側の面に金属膜が形成されていること、上記第1の生地及び前記第2の生地のうちの少なくとも一方が、遮熱ポリエステル繊維をさらに含むこと、上記第1の生地及び前記第2の生地が、編物であることが好ましい。また、上記動物用被服は馬着とすることができ、又は愛玩動物用の被服とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の動物用被服によれば、防暑効果に優れた動物用被服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の動物用被服の一実施形態の模式的な断面図である。
【
図2】本発明の動物用被服の別の実施形態の模式的な断面図である。
【
図3】本発明の動物用被服を馬着に用いた実施形態の模式図である。
【
図4】本発明の動物用被服を馬着に用いた別の実施形態の模式図である。
【
図5】
図4の馬着を構成する首用馬着の分解図である。
【
図6】
図4の馬着を構成する胴用馬着の分解図である。
【
図7】本発明の動物用を犬用被服に用いた実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の動物用被服の実施形態を、図面を用いて具体的に説明する。
図1に本発明の一実施形態の動物用被服1の模式的な断面図を示す。
図1において、動物用被服1は、吸水速乾性繊維を含む第1の生地2と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜3aが被覆されている第2の生地3とが重ね合わされた身生地4を備えている。
【0013】
吸水速乾性繊維を含む生地は、人体又は動物から発する汗を素早く吸収して乾かし、被服内をドライで快適な状態に保つことができる生地である。したがって、吸水速乾性繊維を含む生地を動物用被服に用いれば、防暑効果を得ることができ、接触冷感繊維を含む生地と比較しても、優れた防暑効果が期待できる。しかしながら、本発明者の研究によれば、吸水速乾性繊維を含む生地のみで仕立てた動物用被服では、防暑効果が十分でなく、特に馬などの暑さに弱い動物用の被服として満足できる性能が得難かった。
【0014】
近年、生地に金属膜をコーティングする技術が開発された。この技術を用いて金属膜が表面に被覆されている生地は、表面の金属膜によって赤外線を反射することで遮熱性を向上させ、ひいては防暑性能を向上できることが期待できる。しかしながら、本発明者の研究によれば、吸水速乾性繊維を含む生地の表面に金属膜を被覆させた生地のみで仕立てた動物用被服は、依然として防暑効果が十分でなく、特に馬などの暑さに弱い動物用の被服として満足できる性能が得難かった。
【0015】
ここで、本発明の一実施形態の動物用被服1は、吸水速乾性繊維を含む第1の生地2と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜が被覆されている第2の生地3とが重ね合わされた身生地4を備えている。吸水速乾性繊維を含む第1の生地2と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜が被覆されている第2の生地3とが重ね合わされたことにより、第1の生地2と第2の生地3との相乗効果により、これらの生地のそれぞれから期待される効果を超えた、優れた防暑効果が得られた。これは本発明者の研究により初めて知見されたことである。
【0016】
(第1の生地)
吸水速乾性繊維を含む第1の生地2は、吸水性についてJIS L1907:2010におけるバイレック法で80mm以上であり、かつ、速乾性については拡散性残留水分率試験で標準状態(20℃,65%RH)にて残留水分率が10%に至るまでの時間が55分以下のものとすることができる。
【0017】
吸水速乾性繊維を形成するポリマーの種類としては、ポリエステル、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66など)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリプロピレンなどが挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましい。これらのポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。繊維の断面形状としては、複数の凹部を有するX型、Y型、W型、十字型などの異型断面繊維、中空繊維であることが好ましい。その凹部によって水分を急速に吸い取り、拡散する吸水速乾性を有している。また中空であることによって、水分を急速に吸い取り、拡散する吸水速乾性を有している。吸水速乾性ポリエステル繊維としては、例えば帝人フロンティア株式会社の商品名オクタ(登録商標)、クラレトレーディング株式会社の商品名スペースマスター(登録商標)、東洋紡エムシー株式会社の商品名ドライファスト(登録商標)、旭化成アドバンス株式会社の商品名テクノファイン(登録商標)、KBセーレン株式会社の商品名ソアリオン(登録商標)Yなどが挙げられる。
吸水速乾性脂肪族ポリアミド繊維としては、東洋紡株式会社製のシルファインエール(登録商標)などが挙げられる。
吸水速乾性エチレンビニルアルコール繊維としては、クラレ株式会社製のソフィスタ(登録商標)などが挙げられる。
【0018】
第1の生地2は、上述の吸水速乾性繊維を用いて編物、織物又は不織布として得ることができる。なかでも編物とした生地は、通気性が良好であるのでより優れた防暑効果が得られるし、また、生地の伸縮性に富み、動物に対する着脱を容易にすることができるので好ましい。
【0019】
第1の生地2の色は、特に限定されないが赤外線の吸収が少ない色が好ましく、白色がより好ましい。もっとも、デザイン性、装飾性の観点から二色以上を用いても良いし、図柄を描いてもよい。
【0020】
(第2の生地)
吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜3aが被覆されている第2の生地3の、金属膜3aを除いた部分については、第1の生地2と同様に、吸水性についてJIS L1907:2010におけるバイレック法で80mm以上であり、かつ、速乾性については拡散性残留水分率試験で標準状態 (20℃,65%RH)にて残留水分率が10%に至るまでの時間が55分以下のものとすることができる。
【0021】
第2の生地3の吸水速乾性繊維は、第1の生地2と同様のものが挙げられる。
【0022】
第2の生地3の吸水速乾性繊維は、第1の生地2の吸水速乾性繊維と同一の素材であってもよいし、異なる素材であってもよい。
【0023】
第2の生地3は、上述の吸水速乾性繊維を用いて編物、織物又は不織布として得ることができる。なかでも編物とした生地は、通気性が良好であるのでより優れた防暑効果が得られるし、また、生地の伸縮性に富み、動物に対する着脱を容易にすることができるので好ましい。
【0024】
第2の生地3は、一方の表面に金属膜3aが被覆されている。生地に金属膜3aをコーティングする方法は、布の風合いを損なわず、また繰り返しの洗濯に耐え得るコーティング法であれば特に限定されないが、スパッタリングが好ましい。スパッタリングはPVDの一種であり、真空装置内でイオン化されたガスを金属ターゲットに衝突させてターゲットの金属を叩き出し、叩き出された金属を基布の表面に堆積させて金属膜を形成する。スパッタリングは強い密着性と良質な金属膜がロールツーロールで得られるので、第2の生地3の表面に金属膜3aを形成するのに適した技術である。
【0025】
第2の生地3の表面に被覆される金属膜3aは、純金属ばかりでなく、合金や金属間化合物を含む。金属膜3aの材料は、ステンレス鋼、チタン、銅ニッケル合金、アルミニウム等の、遮熱効果の大きな材料である。金属膜3aの厚さは、遮熱効果が十分に得られ、また布の風合いを損なわない観点から適切な厚みを定めることができる。通常は30nm程度の厚さがあれば十分である。
【0026】
第2の生地3の吸水速乾性繊維の色は、特に限定されないが赤外線の吸収が少ない色が好ましく、白色がより好ましい。もっとも、デザイン性、装飾性の観点から二色以上を用いても良いし、図柄を描いてもよい。
【0027】
第2の生地3における、金属膜が形成されている表面は、その金属膜が呈する金属色を有している。
【0028】
(身生地)
身生地4は、第1の生地2と第2の生地3とを重ね合わせたものである。
図1に示した身生地4は、第2の生地3の金属膜3aが第1の生地2に対向するように重ね合わされている。
【0029】
第1の生地2と第2の生地3との固定は、両端部において、テープ5を用いたパイピングにより縫い合わされて固定されている。固定方法はパイピングに限られず、生地の端部を折り曲げて縫い合わせてもよい。要は第1の生地2と第2の生地3との両端部において固定できればよく、縫い合わせに限られず、接着剤や接着テープ、熱圧着などでもよい。第1の生地2と第2の生地3とを両端部で固定するのは、両端部の間で、第1の生地2と第2の生地3との間に若干の空隙が形成されてもよいからであり、この空隙により遮熱効果を高めることができる。なお、身生地の大きさなどによっては、必要に応じて、両端部以外においても第1の生地2と第2の生地3とを部分的に固定してもよい。
【0030】
図1に示した身生地4は、第1の生地2を動物用被服のおもて面、すなわち、動物用被服を動物に着せたときに外方に向かう面にして、第2の生地3を動物用被服の裏面、すなわち、動物用被服を動物に着せたときに動物に向かう面にするのが好ましい。これは、第2の生地3の金属膜3aが、被着される動物から見て、第2の生地3の吸水速乾性繊維よりも外側の面に形成されるようにするためである。本発明者の研究によれば、第2の生地3の金属膜3aが、被着される動物から見て、第2の生地3の吸水速乾性繊維よりも外側の面に形成されることによって、金属膜3aが、被着される動物から見て、第2の生地3の吸水速乾性繊維よりも内側の面に形成される場合と比べて、より優れた遮熱効果があることが判明した。その理由は、金属膜3aが、被着される動物から見て、第2の生地3の吸水速乾性繊維よりも外側の面に形成される場合は、動物から体温として発される熱が金属膜3aにより動物に向けて反射されることが少ないため、防暑性が向上するためと考えられる。
【0031】
上述した身生地4を備える本実施形態の動物用被服1は、第1の生地2が、吸水速乾性繊維を用いているので、通気性に優れ、動物の汗を吸収し速やかに乾燥させるのでムレにくく、動物用被服1としたときに、動物用被服の内側の温度上昇の抑制と汗冷えの抑制とを両立させることができる。また、動物用被服1に散水すると素早く濡れ広がり、そして速乾するので、動物の迅速なクールダウンが可能となる。
【0032】
また、動物用被服1は、第2の生地3についても、吸水速乾性繊維を用いているので、通気性に優れ、動物の汗を吸収し速やかに乾燥させるのでムレにくく、動物用被服1としたときに、動物用被服1の内側の温度上昇の抑制と汗冷えの抑制とを両立させることができる。また、動物用被服1に積極的に散水すると素早く濡れ広がり、そして速乾するので、動物の迅速なクールダウンが可能となる。
【0033】
さらに、動物用被服1は、第2の生地3の一方の表面に金属膜3aが被覆されているので、太陽光線中の赤外線を反射し外気の熱を遮蔽するので優れた遮熱効果を有している。よって、日差しの強い運動の時においても、熱線を和らげ、動物用被服1の内側の温度上昇を抑えることができる。
【0034】
次に、
図1に示した動物用被服1の変形例を説明する。これまで説明した動物用被服1の第1の生地2及び第2の生地3は、吸水速乾性繊維を含むものであるが、この第1の生地2及び第2の生地3のうちの少なくとも一方の生地は、吸水速乾性繊維ばかりでなく、遮熱ポリエステル繊維をさらに含むことができる。遮熱ポリエステル繊維は、繊維中に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化ケイ素および赤外線反射セラミックの微粒子を含む繊維が挙げられる。遮熱ポリエステル繊維の形態は、単独繊維、複合繊維の何れでも良く、複合繊維としては、サイドバイサイド型、芯鞘型等が挙げられる。
【0035】
遮熱ポリエステル繊維を含む第1の生地2及び第2の生地3の少なくとも一方の生地は、JIS L1951:2019に基づく試験で遮熱率15%以上、好ましくは35%以上のものとすることができる。
【0036】
遮熱ポリエステル繊維は、動物用被服1の第1の生地2及び第2の生地3のうちのいずれかに含むことにより、生地の遮熱性を向上させることができる。第1の生地2及び第2の生地3の両方に、遮熱ポリエステル繊維を含むことが、より好ましい。
【0037】
第1の生地2及び第2の生地3のうちの少なくとも一方の生地に含まれる遮熱ポリエステル繊維は、例えば帝人フロンティア株式会社の商品名イクスマック(登録商標)NEO、涼しや(登録商標)、ユニチカトレーディング株式会社の商品名こかげ(登録商標)、こかげマックス(登録商標)、サラクール(登録商標)、KBセーレン株式会社の商品名イレイド(登録商標)などが挙げられる。
【0038】
第1の生地2及び第2の生地3のうちの少なくとも一方の生地を、吸水速乾性繊維と、遮熱ポリエステル繊維との複合材とするための方法には、編物の場合の交編、織物の場合の交織などがある。吸水速乾性繊維と、遮熱ポリエステル繊維とを複合させた編物としては、吸水速乾性ポリエステル繊維として上述したKBセーレン株式会社の商品名ソアリオンYと、遮熱ポリエステル繊維としてKBセーレン株式会社の商品名イレイドとを複合させた、KBセーレン株式会社の商品名ドライフィール(登録商標)ASなどの例がある。かかる編物の生地を第1の生地2及び第2の生地3のうちの少なくとも一方の生地に用いることができる。
【0039】
本変形例の動物用被服1は、第1の生地2及び第2の生地3のうちの少なくとも一方の生地が、吸水速乾性繊維に加えて遮熱ポリエステル繊維を含むので、生地が吸水速乾性繊維のみの例に比べて、動物用被服1の遮熱性をより向上させることができ、日差しの強い日の運動時などにおいて、動物が受ける熱線を和らげ、動物用被服1の内側の温度上昇を抑えるので、動物用被服1の防暑性をより向上させることができる。
【0040】
図2に、本発明の別の実施形態の動物用被服1Aの模式的な断面図を示す。
図2において、動物用被服1Aは、吸水速乾性繊維を含む第1の生地2と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜3aが被覆されている第2の生地3とが重ね合わされた身生地4Aを備えている。
【0041】
図2の動物用被服1Aにおける吸水速乾性繊維を含む第1の生地2と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜3aが被覆されている第2の生地3とは、
図1を用いて先に説明した実施形態の動物用被服1における吸水速乾性繊維を含む第1の生地2と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜3aが被覆されている第2の生地3と同じである。したがって、動物用被服1Aについての以下の説明では、第1の生地2と第2の生地3とについて、
図1を用いて先に説明した実施形態の動物用被服1における説明と重複する説明は省略する。
【0042】
図2の動物用被服1Aが、
図1の動物用被服1と相違する点は、
図1に示した身生地4では第2の生地3の金属膜3aが第1の生地2に対向するように重ね合わされているのに対して、
図2に示した身生地4Aでは、第2の生地3の吸水速乾性繊維が第1の生地2に対向するように重ね合わされている点である。
【0043】
そして、
図2に示した身生地4Aは、第2の生地3を動物用被服のおもて面、すなわち、動物用被服を動物に着せたときに外方に向かう面にして、第1の生地2を動物用被服の裏面、すなわち、動物用被服を動物に着せたときに動物に接する面にしている。これは、第2の生地3の金属膜3aが、被着される動物から見て、第2の生地3の吸水速乾性繊維よりも外側の面に形成されるようにするためである。本発明者の研究によれば、第2の生地3の金属膜3aが、被着される動物から見て、第2の生地3の吸水速乾性繊維よりも外側の面に形成されることによって、金属膜3aが、被着される動物から見て、第2の生地3の吸水速乾性繊維よりも内側の面に形成される場合と比べて、より優れた遮熱効果があることが判明した。その理由は、金属膜3aが、被着される動物から見て、第2の生地3の吸水速乾性繊維よりも外側の面に形成される場合は、動物から体温として発される熱が金属膜3aにより動物に向けて反射されることが少なくなるため、防暑性が向上するためと考えられる。
【0044】
図2に示した本実施形態の動物用被服1Aは、おもて面が第2の生地3の金属膜による金属色を有している。ユーザーによっては、おもて面の色が吸水速乾性繊維の白色、その他の着色された色よりも、金属色を好む場合がある。したがって、ユーザーの要望に合わせて、
図1の動物用被服1又は
図2の動物用被服1Aを用意することができる。
【0045】
図2の身生地4Aは、
図1の身生地4と同様に、第1の生地2と第2の生地3との固定が、両端部において、テープ5を用いたパイピングにより縫い合わされて固定されている。固定方法はパイピングに限られず、生地の端部を折り曲げて縫い合わせてもよい。要は第1の生地2と第2の生地3との両端部において固定できればよく、縫い合わせに限られず、接着剤や接着テープ、熱圧着などでもよい。第1の生地2と第2の生地3とを両端部で固定するのは、両端部の間で、第1の生地2と第2の生地3との間に若干の空隙が形成されてもよいからであり、この空隙により遮熱効果を高めることができる。なお、身生地の大きさなどによっては、必要に応じて、両端部以外においても第1の生地2と第2の生地3とを部分的に固定してもよい。
【0046】
上述した身生地4Aを備える本実施形態の動物用被服1Aは、
図1の動物用被服1と同様の効果を有する。具体的には、前述した
図1の動物用被服1の効果の説明と重複するが、第1の生地2が、吸水速乾性繊維を用いているので、通気性に優れ、動物の汗を吸収し速やかに乾燥させるのでムレにくく、動物用被服としたときに、動物の体温上昇と汗冷えの抑制とを両立させることができる。また、動物用被服に散水すると素早く濡れ広がり、そして速乾するので、動物の迅速なクールダウンが可能となる。
【0047】
また、動物用被服1Aは、第2の生地3についても、吸水速乾性繊維を用いているので、通気性に優れ、動物の汗を吸収し速やかに乾燥させるのでムレにくく、動物用被服1Aとしたときに、動物用被服1Aの内側の温度上昇の抑制と汗冷えの抑制とを両立させることができる。また、動物用被服1Aに積極的に散水すると素早く濡れ広がり、そして速乾するので、動物の迅速なクールダウンが可能となる。
【0048】
さらに、動物用被服1Aは、第2の生地3の一方の表面に金属膜3aが被覆されているので、太陽光線中の赤外線を反射し外気の熱を遮蔽するので優れた遮熱効果を有している。よって、日差しの強い運動の時においても、熱線を和らげ、動物用被服1Aの内側の温度上昇を抑えることができる。
【0049】
次に、
図2に示した動物用被服1Aの変形例を説明する。これまで説明した動物用被服1Aの第1の生地2及び第2の生地3は、吸水速乾性繊維を含むものであるが、この第1の生地2及び第2の生地3のうちの少なくとも一方の生地は、吸水速乾性繊維ばかりでなく、遮熱ポリエステル繊維をさらに含むことができる。遮熱ポリエステル繊維は、繊維中に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化ケイ素および赤外線反射セラミックの微粒子を含む繊維を例示することができる。遮熱ポリエステル繊維の形態は、単独繊維、複合繊維の何れでも良く、複合繊維としては、サイドバイサイド型、芯鞘型等が挙げられる。
【0050】
遮熱ポリエステル繊維を含む第1の生地2及び第2の生地3の少なくとも一方の生地は、
図1を用いて説明した実施形態の動物用被服1の変形例における遮熱ポリエステル繊維を含む第1の生地2及び第2の生地3の少なくとも一方の生地と同じである。したがって、動物用被服1Aの変形例についての以下の説明では、
図1を用いて先に説明した実施形態の動物用被服1の変形例における遮熱ポリエステル繊維に関する説明と重複する説明は省略する。
【0051】
本変形例の動物用被服1Aは、第1の生地2及び第2の生地3のうちの少なくとも一方の生地が、吸水速乾性繊維に加えて遮熱ポリエステル繊維を含むので、生地が吸水速乾性繊維のみの例に比べて、動物用被服1Aの遮熱性をより向上させることができ、日差しの強い日の運動時などにおいて、動物が受ける熱線を和らげ、動物用被服1Aの内側の温度上昇を抑えるので、動物用被服1Aの防暑性をより向上させることができる。
【0052】
次に、本発明の動物用被服を、馬着とした実施形態について説明する。
図3は、馬に馬着10を着せた状態を示す模式図である。
図3の馬着10は、馬の前肢を含む胴の前部及び首部を覆う馬着前部10Aと、馬の後肢を含む胴の後部を覆う馬着後部10Bとの2つの部材からなり、馬着前部10Aの後端と、馬着後部10Bの前端とが部分的に重なるように、馬に着せている。馬着前部10A及び馬着後部10Bは、それぞれ、馬に着せたときに馬の背を中心に線対称な形状を有している。馬着前部10A及び馬着後部10Bは、それぞれ一枚の身生地を有しているが、二枚以上の身生地を繋ぎ合わせて馬着前部10A又は馬着後部10Bを構成していても良い。
【0053】
そして、馬着前部10A及び馬着後部10Bが、それぞれ
図1に示した動物用被服1の断面構造又は
図2に示した動物用被服1Aの断面構造を有している。
【0054】
馬着前部10Aは、馬の首部を覆ったときに首部の右側に位置する端部と首部の左側に位置する端部とを繋ぐバンド、馬の胴の前端において馬の右側に位置する端部と馬の左側に位置する端部とを繋ぐバンドを有することができる。これらのバンドは
図3に表れていないが、これらのバンドで馬着前部10Aは馬の首部及び胴部に固定される。また、馬着前部10Aの後端と馬着後部10Bの前端との重複部分の近傍に鞍が設けられていて、この鞍を固定するためのバンドにより、馬着後部10Bは馬の胴部に固定される。もっとも、鞍を固定するためのバンドとは別に、馬着後部10Bが、馬の胴部に固定されるためのバンドを有することもできる。
【0055】
馬着後部10Bは、尾の付け根を保護するためのテールフラップを設けた形状とすることもできる。
【0056】
図3のように、馬着10が、馬着前部10Aと、馬着後部10Bとの2つの部材からなることにより、馬着前部10Aのみを馬に着せたり、馬着後部10Bのみを馬に着せたり、馬着前部10Aと馬着後部10Bとの両方を馬に着せたりすることができ、暑さに応じたフレキシブルな対応が可能である。もっとも、本発明の動物用被服としての馬着は、
図3に示された実施形態に限定されず、一つの馬着で馬の首部から胴の後端まで覆うような形状とすることもできるし、また、首部を覆わずに胴部のみを覆う形状とすることもできる。
【0057】
馬着10は、
図1に示した動物用被服1の断面構造又は
図2に示した動物用被服1Aの断面構造を有していることから、乗用馬のウォーミングアップ時、乗馬時、クールダウン時、厩舎にいる時に着せて、優れた防暑効果を有している。
【0058】
次に、本発明の動物用被服を、馬着とした別の実施形態について説明する。
図4は、馬に馬着20を着せた状態を示す模式図である。
図4の馬着20は、馬の首部を覆う首用馬着21と、馬の胴部を覆う胴用馬着22とを有している。首用馬着21は、馬の首部に首用馬着21を固定するための複数のバンド23と、首用馬着21と胴用馬着22とを接続するための複数のバンド24とを有している。
【0059】
図5に、首用馬着21の分解図を示す。首用馬着21の主な部材は、馬の右側の首部を覆うための首用馬着部材211と、馬の左側の首部を覆うための首用馬着部材212である。首用馬着部材211、212は、馬の背を中心に線対称な形状を有している。馬の右側とは、本明細書では乗馬したときに人の右手がある方をいい、馬の左側とは、乗馬したときに人の左手がある方をいう。
【0060】
首用馬着21は首用馬着部材211の直線的な一辺211aと首用馬着部材212の直線的な一辺212aが縫い合わされて一体形状となっている。首用馬着21が有しているバンド23は、図示した例では面ファスナーであり、首用馬着部材211には面ファスナーのフック23aが縫い付けられ、首用馬着部材212には面ファスナーのループ23bが縫い付けられている。首用馬着21を馬の首に被着させたときに、首用馬着部材211のフック23aと、首用馬着部材212のループ23bとを重ね合わせることで面ファスナーのフック23aとループ23bとが着脱可能に係合し、これにより首用馬着21を馬の首に固定することができる。
【0061】
首用馬着21が有しているバンド24は、図示した例では首用馬着部材211、212にそれぞれ一個を有している。バンド24の基端部は、首用馬着部材211、212のそれぞれに縫い付けられている。バンド24の先端部は面ファスナーのフック24aが形成されていて、バンド24の両端部以外の部分は面ファスナーのループ24bが形成されている。バンド24が折り返されて先端部のフック24aが、両端部以外の部分のループ24bに重ね合わされることでフック24aとループ24bとが着脱可能に係合する。
【0062】
図6に、胴用馬着22の分解図を示す。胴用馬着22の主な部材は、馬の右側の胴部を覆うための胴用馬着部材221と、馬の左側の胴部を覆うための胴用馬着部材222である。胴用馬着部材221、222は、馬の背を中心に線対称な形状を有している。胴用馬着部材221、222において、本明細書では馬に被着させたときに馬の首に近い側を前側といい、馬の尻に近い側を後側という。
【0063】
胴用馬着22は胴用馬着部材221の一辺221aと胴用馬着部材222の一辺222aとが縫い合わされて一体形状となっている。縫い合わされたときに胴用馬着22が立体的な形状となるように、胴用馬着部材221、222の後側にはそれぞれダーツ221b、222bが形成されている。
【0064】
胴用馬着22は、馬に被着させたときに鞍が胴用馬着22と接するのをなるべく避けるように、胴用馬着部材221、222はそれぞれ、前側に湾曲部221c、222cを有している。また胴用馬着部材221、222の前側の先端同士は、面ファスナーで着脱可能に接続できるようになっている。そのために胴用馬着部材221の前側の先端には面ファスナーのフック221dが縫い付けられていて、胴用馬着部材222の前側の先端には面ファスナーのループ222dが縫い付けられている。
【0065】
胴用馬着部材221、222の後側には、それぞれDリング221e、222eが取り付けられている。Dリング221eと222eとに1本の紐(図示せず)を通し、その紐を締め付けることで胴用馬着22が馬の尻部でバタつくのを回避できる。
【0066】
胴用馬着22を馬に被着させたときに、胴用馬着部材221の面ファスナーのフック221dと胴用馬着部材222の面ファスナーのループ222dとを重ね合わせることでフック221dとループ222dは着脱可能に係合する。そして、胴用馬着22は、馬の背に取り付けられた鞍との接触を湾曲部221c、222cで避けたような、空隙が形成されることになる。
【0067】
胴用馬着22と首用馬着21とは、次のようにして接続される。首用馬着21のバンド24の先端部を胴用馬着22の上記した空隙に通して折り返し、バンド24の先端部のフック24aと、バンド24の両端部以外の部分のループ24bとを重ね合わせる。このことでバンド24は、面ファスナーのフック24aと24bとが、胴用馬着22の先端部を挟み込んだ状態で着脱可能に係合する。これにより胴用馬着22と首用馬着21とは、バンド24を介して接続される。
【0068】
図4~6を用いて説明した馬着20は、首用馬着21及び胴用馬着22が、それぞれ
図1に示した動物用被服1の断面構造又は
図2に示した動物用被服1Aの断面構造を有している。
馬着20は、
図1に示した動物用被服1の断面構造又は
図2に示した動物用被服1Aの断面構造を有していることから、乗用馬のウォーミングアップ時、乗馬時、クールダウン時、厩舎にいる時に着せて、優れた防暑効果を有している。
【0069】
また、馬着20は、首用馬着21と、胴用馬着22との2つの主部材からなることにより、首用馬着21のみを馬に着せたり、胴用馬着22のみを馬に着せたり、首用馬着21と、胴用馬着22との両方を馬に着せたりすることができ、暑さに応じたフレキシブルな対応が可能である。
【0070】
さらに、馬着20は、乗馬時の鞍を避けるような構造を有していることから、乗馬時において、馬から降りて鞍を取り外すことなく首用馬着21や胴用馬着22やその両方を馬に被着させ、又は脱がすことができる。したがって、天候や馬の状態に応じて素早く馬着を被着させ、又は脱がすことがてきる。
【0071】
次に、本発明の動物用被服を、愛玩動物用の被服とした実施形態について説明する。
図7は、愛玩動物の一例としての犬に犬用被服30を着せた状態を示す模式図である。
図7の犬用被服30は、犬の背を覆う部分31と、この背を覆う部分に接続して腹を覆う部分32とが一体的になって犬の胴部を巻いている基本形状を有している。腹を覆う部分32の側端部の裏面には面ファスナーのフック32aが形成され、犬の背を覆う部分31の側端部には、面ファスナーのループ31aが形成されている。この面ファスナーのフック32aとのループ31aが重ね合わされることで、犬用被服30は、犬の胴部を巻いた状態で着脱可能に固定されている。
【0072】
また、犬用被服30は、前側で犬の首を巻く部分33を有し、この犬の首を巻く部分33と、腹を覆う部分32の先端とが、面ファスナー(どちらがフックであるか、ループであるかを問わない)により着脱可能に係合されている。
【0073】
図7の犬用被服30は、
図1に示した動物用被服1の断面構造又は
図2に示した動物用被服1Aの断面構造を有している。そして、犬用被服30は、
図1に示した動物用被服1の断面構造又は
図2に示した動物用被服1Aの断面構造を有していることから、愛玩動物を散歩させるときに着せて、優れた防暑効果を有している。犬や猫などの愛玩動物は、散歩時に地表から胴体までの距離が近く、日光の照り返しによる暑さが人間よりも厳しいことから、腹を覆う部分32を有する犬用被服30を着せることによる防暑効果は特に大きい。なお、本発明の愛玩動物用被服は、
図7に示した犬用に限らず、猫その他の愛玩動物に適用される。
【実施例】
【0074】
本発明の動物用被服の性能を赤外線スペクトル測定による赤外線の透過率により評価した。評価に用いた試料は、次のとおりである。
【0075】
(実施例1)
身生地として吸水速乾性ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名ソアリオンYと、遮熱ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名イレイドとを複合させた生地であるKBセーレン株式会社の商品名ドライフィールAS(品番:SW5588)を二枚用意した。生地はいずれも白色であった。これらの生地のうちの一枚の一方の表面には、ステンレス鋼の金属膜をスパッタリングにより30nmの厚さで被覆させた。この金属膜が被覆された生地の金属膜に対向するように、残りの一枚の生地を重ね合わせて実施例1の試料とした。実施例1の試料は、おもて面がポリエステル繊維である、
図1に示した断面構造を有している。
【0076】
(実施例2)
身生地として吸水速乾性ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名ソアリオンYと、遮熱ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名イレイドとを複合させた生地であるKBセーレン株式会社の商品名ドライフィールAS(品番:SW5588)を二枚用意した。生地はいずれも白色であった。これらの生地のうちの一枚の一方の表面には、ステンレス鋼の金属膜をスパッタリングにより30nmの厚さで被覆させた。この金属膜が被覆された生地のポリエステル繊維に対向するように、残りの一枚の生地を重ね合わせて実施例2の試料とした。実施例2の試料は、おもて面が金属膜である、
図2に示した断面構造を有している。
【0077】
(比較例1)
身生地として吸水速乾性を有する東レ株式会社の編物の生地(製品名:コンフォートセンサー、品番:T7700)を一枚用意して、この生地を比較例1の試料とした。
【0078】
(比較例2)
身生地として吸水速乾性を有する東レ株式会社の編物の生地(製品名:コンフォートセンサー、品番:T7700)を一枚用意した。この生地の一方の表面に、ステンレス鋼の金属膜をスパッタリングにより30nmの厚さで被覆させて比較例2の試料とした。
【0079】
(比較例3)
身生地として吸水速乾性ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名ソアリオンYと、遮熱ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名イレイドとを複合させた生地であるKBセーレン株式会社の商品名ドライフィールAS(品番:SW5588)を一枚用意した。この生地を比較例3の試料とした。
【0080】
(比較例4)
身生地として吸水速乾性ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名ソアリオンYと、遮熱ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名イレイドとを複合させた生地であるKBセーレン株式会社の商品名ドライフィールAS(品番:SW5588)を一枚用意した。この生地の一方の表面には、ステンレス鋼の金属膜をスパッタリングにより30nmの厚さで被覆させて比較例4の試料とした。
【0081】
(比較例5)
身生地として吸水速乾性ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名ソアリオンYと、遮熱ポリエステル繊維であるKBセーレン株式会社の商品名イレイドとを複合させた生地であるKBセーレン株式会社の商品名ドライフィールAS(品番:SW5588)を二枚用意した。これらの生地を重ね合わせて比較例5の試料とした。比較例5の試料は、二枚の生地のいずれも表面に金属膜を有していない。
【0082】
上記実施例1、2及び比較例1~5の生地は、素材と金属膜の有無以外は同一条件とした。
【0083】
実施例1、2及び比較例1~5の各試料に、日本分光の紫外線可視近赤外線分光光度計V-770を用いて、赤外線波長領域における透過率を、積分球ユニットにより測定した。測定した波長は750~2500nmであり、走査速度は400nm/minであった。
【0084】
得られた各試料の赤外線スペクトルから求められた透過率の平均値が、実施例1は2.26%、実施例2が3.85%であり、低い透過率であった。
これに対して、透過率の平均値が、比較例1は39.04%、比較例2が19.15%、比較例3が26.61%、比較例4が10.41%、比較例5が10.98%であった。
【0085】
以上、本発明の動物用被服について説明したが、本発明の動物用被服は、実施例の記載に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で幾多の変形が可能である。例えば本明細書の実施形態では動物用被服を主に馬着及び愛玩動物用被服について説明したが、馬着及び愛玩動物用被服に限らず牛や馬などの家畜の動物用被服とすることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 動物用被服
2 第1の生地
3 第2の生地
4 身生地
5 テープ
10 馬着
10A 馬着前部
10B 馬着後部
20 馬着
21 首用馬着
22 胴用馬着
30 犬用被服
【要約】
防暑効果に優れた本発明の動物用被服(1)は、吸水速乾性繊維を含む第1の生地(2)と、吸水速乾性繊維を含み、一方の表面に金属膜が被覆されている第2の生地(3)とが重ね合わされた身生地(4)を備える。