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特許7550346グラフェンナノリボンの製造方法、及びグラフェンナノリボン前駆体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】グラフェンナノリボンの製造方法、及びグラフェンナノリボン前駆体
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/184 20170101AFI20240906BHJP
   C07C 25/22 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C01B32/184
C07C25/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020189595
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078721
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-06-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「グラフェンナノリボンの合成・評価とシミュレーション」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山口 淳一
(72)【発明者】
【氏名】林 宏暢
(72)【発明者】
【氏名】山田 容子
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156791(JP,A)
【文献】特表2017-520618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
C07C 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(1)で表される化合物を重合させることを特徴とするグラフェンナノリボンの製造方法。
【化1】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【請求項2】
アームチェアエッジグラフェンナノリボン(AGNR)である、請求項1に記載のグラフェンナノリボンの製造方法
【請求項3】
アームチェアエッジグラフェンナノリボン(AGNR)が、N/M-AGNR(ただし、N及びMは、互いに異なり同一ではない整数を表す)、又は、N/M/L-AGNR(ただし、N、M及びLは、互いに異なり同一ではない整数を表す)である、請求項1又は2に記載のグラフェンナノリボンの製造方法
【請求項4】
構造式(1)で表されることを特徴とするグラフェンナノリボン前駆体。
【化1】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンナノリボン、及びその製造方法、並びにグラフェンナノリボン前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンはC原子が蜂の巣格子状に互いに強固に共有結合した二次元のシート構造の材料である。グラフェンは室温においても極めて高い電子移動度及びホール移動度を有し、グラフェンはバリスティック伝導及び半整数量子ホール効果等の特異な電子物性を示す。これらグラフェンの特徴的な電子的機能を活かしたエレクトロニクスデバイスの研究開発が近年盛んに行われている。
【0003】
ナノサイズのグラフェンとして、幅が数nmのリボン形状のグラフェン、所謂、グラフェンナノリボン(GNR)が広く知られている。GNRの物性は、エッジ構造やリボン幅の大きさによって大きく変化する。
【0004】
GNRには、長さ方向に沿った両端のエッジ構造がアームチェア型であるアームチェアエッジ、及び長さ方向に沿った両端のエッジ構造がジグザク型であるジグザグエッジの2種類が存在する。前記アームチェアエッジを有するアームチェアエッジGNR(AGNR)は、量子閉じ込め効果及びエッジ効果によって有限のバンドギャップが開き、AGNRは半導体的な性質を示す。一方、前記ジグザクエッジを有するジグザグエッジGNR(ZGNR)は、磁性や金属的な性質を示す。
【0005】
従来のGNRの作製技術としては、電子線リソグラフィ・エッチングによりグラフェンシートを裁断するトップダウン的手法(例えば、非特許文献1)、カーボンナノチューブを化学的に切開する方法(例えば、非特許文献2)、有機溶媒に溶解したグラファイトフレークからソノケミカル法により形成する方法(例えば、非特許文献3)等が提案されている。
【0006】
一方、予め有機化学合成により作製した前駆体分子を超高真空下で金属結晶基板に蒸着し、基板加熱により金属表面上で前駆体分子どうしを重合反応及び環化することで、リボン幅やアームチェアエッジ構造が原子レベルで制御されたAGNRをボトムアップ的に形成する方法が提案されている(例えば、非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】M. Y. Han et al., Phys. Rev. Lett. 98, 206805 (2007)
【文献】D. V. Kosynkin et al., Nature 458, 872 (2009)
【文献】X. Li et al., Science 319, 1229 (2008)
【文献】J. Cai et al., Nature 466, 470 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、安定した物性を示すGNRを作製するには、リボン幅及びエッジ構造の制御が非常に重要である。前記トップダウン法では、原子レベルでのリボン幅及びエッジ構造の制御は容易ではなく、安定した物性を示すGNRを得ることが困難である。
【0009】
また、従来のGNRは、リボン幅に応じてバンドギャップの値が一義的に決まり、GNRのバンドギャップとしては、離散的に存在していた。そのため、バンドギャップの値の選択自由度が低かったという問題がある。
【0010】
本発明は、バンドギャップの値の選択自由度を高めることができるグラフェンナノリボン及びその製造方法、並びにグラフェンナノリボン前駆体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様では、本件で開示するグラフェンナノリボンは、構造式(1)で表される化合物を繰り返し単位として有する。
【化1】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【0012】
1つの態様では、本件で開示するグラフェンナノリボンの製造方法は、構造式(1)で表される化合物を重合させる。
【化2】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【0013】
1つの態様では、本件で開示するグラフェンナノリボン前駆体は、構造式(1)で表される。
【化3】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【発明の効果】
【0014】
1つの側面として、バンドギャップの値の選択自由度を高めることができるグラフェンナノリボン、及びその製造方法、並びにグラフェンナノリボン前駆体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、7-AGNRの一般式を示した図である。
図2図2は、実施形態1で用いた(a-1)グラフェンナノリボン前駆体分子、及び前記(a-1)から得られるグラフェンナノリボン(b)7/11-AGNR及び(c)9/11/13-AGNRを表す構造式である。
図3図3は、前記(a-1)から得られるグラフェンナノリボン(b)7/11-AGNR及び(c)9/11/13-AGNRの構造式に、前記(a-1)の配置構造を示した模式図である。
図4図4は、前記(a-1)から得られるグラフェンナノリボン(b)7/11-AGNR及び(c)9/11/13-AGNRの構造式に、C原子の数「N」を示した模式図である。
図5A図5Aは、前記(a-1)から得られるグラフェンナノリボン(b)7/11-AGNRの第一原理シミュレーションで計算されたバンドの分散状態を表す図である。
図5B図5Bは、前記(a-1)から得られるグラフェンナノリボン(c)9/11/13-AGNRの第一原理シミュレーションで計算されたバンドの分散状態を表す図である。
図6図6は、実施形態2で用いた(a-2)グラフェンナノリボン前駆体分子、及び前記(a-2)から得られるグラフェンナノリボン(b)7/13-AGNR及び(c)9/13/17-AGNRを表す構造式である。
図7A図7Aは、前記(a-2)から得られるグラフェンナノリボン(b)7/13-AGNRの第一原理シミュレーションで計算されたバンドの分散状態を表す図である。
図7B図7Bは、前記(a-2)から得られるグラフェンナノリボン(c)9/13/17-AGNRの第一原理シミュレーションで計算されたバンドの分散状態を表す図である。
図8図8は、実施形態3で用いた(a-3)グラフェンナノリボン前駆体分子、及び前記(a-3)から得られるグラフェンナノリボン(b)11/15-AGNR及び(c)13/15/17-AGNRを表す構造式である。
図9図9は、実施形態4で用いた(a-4)グラフェンナノリボン前駆体分子、及び前記(a-4)から得られるグラフェンナノリボン(b)11/17-AGNR及び(c)13/17/21-AGNRを表す構造式である。
図10A図10Aは、実施形態5における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す上面図(その1)である。
図10B図10Bは、実施形態5における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す上面図(その2)である。
図10C図10Cは、実施形態5における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す上面図(その3)である。
図10D図10Dは、実施形態5における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す上面図(その4)である。
図10E図10Eは、実施形態5における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す上面図(その5)である。
図10F図10Fは、図10Dの切断線I-I’における切断面を示す断面図である。
図10G図10Gは、図10Eの切断線I-I’における切断面を示す断面図である。
図11A図11Aは、実施形態6における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その1)である。
図11B図11Bは、実施形態6における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その2)である。
図11C図11Cは、実施形態6における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その3)である。
図11D図11Dは、実施形態6における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その4)である。
図11E図11Eは、実施形態6における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その5)である。
図12A図12Aは、実施形態7における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その1)である。
図12B図12Bは、実施形態7における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その2)である。
図12C図12Cは、実施形態7における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その3)である。
図12D図12Dは、実施形態7における電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す模式図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
グラフェンはπ電子共役が二次元に拡張しているため、バンドギャップがゼロに等しく、金属的な性質(ギャップレス半導体)を示す。しかし、グラフェンのサイズがナノスケールになると、シート構造を成すバルクのC原子の個数とエッジを成すC原子の個数とが同等になり、その形状やエッジの影響を強く受けるためバルクとは大きく異なる物性を示すようになる。
【0017】
一般に、リボン幅方向に存在するC原子の数が「N」であるAGNRは「N-AGNR」と呼ばれる。例えば、リボン幅方向に六員環が3つ配列したアントラセンを基本ユニットとし、前記基本ユニットがリボン長さ方向に縮合しているAGNRは7-AGNRと呼ばれる。図1に、7-AGNRの一般式を示す。基本ユニットであるアントラセンと隣接するアントラセンどうしを繋ぐリボン幅方向のC-C結合とにおいては、リボン幅方向に存在するC原子は、「7つ」となる。
【0018】
AGNRは、Nの値によって、N=3p、3p+1、3p+2(ここで、pは正の整数)の3つのサブファミリーに分類されることがある。理論計算によれば、同じサブファミリー内でのN-AGNRのバンドギャップの大きさEは、Nの値の増加、すなわち、リボン幅の増加に伴って減少することが示されている(例えば、L.Yang et al., Phys. Rev. Lett. 99, 186801 (2007))。また、各サブファミリー間で、EにはE 3p+1>E 3p>E 3p+2の大小関係がある。
【0019】
上述したように、安定した物性を示すGNRを作製するには、リボン幅及びエッジ構造の制御が非常に重要である。リボン幅及びエッジ構造が原子レベルで制御された高品質なGNRを形成するには、非特許文献4で示されるような前駆体分子を金属結晶面上で重合反応及び環化するボトムアップ法が有効である。
【0020】
前記ボトムアップ法の技術開示以降、各種デバイス応用に向けてGNRのバンドギャップエンジニアリングが試みられている。
これまで、GNRのバンドギャップ変調は、主にAGNRのリボン幅を変えることで実現されてきた。リボン幅の異なるAGNRを合成するために、様々な前駆体分子が提案されているものの、その種類は10種ほどにとどまっている。
【0021】
前駆体分子設計の観点から、AGNRのリボン幅の変化のみによるバンドギャップ変調には限りがあり、リボン幅の他に、新たなリボン構造を利用したバンドギャップ変調の実現が求められている。
【0022】
本発明者らが鋭意検討を行ったところ、従来のリボン幅が揃ったGNRにおいては、リボン幅に応じてバンドギャップの値が一義的に決まり、GNRのバンドギャップの値としては、離散的に存在していたという問題がある(例えば、L.Yang et al., Phys. Rev. Lett. 99, 186801 (2007))。
これに対し、前記構造式(1)で表される化合物を繰返し単位として有し、n及びnが互いに異なり同一ではなく、1~6の整数としたGNRとすることで、GNRのエッジに周期配列構造を導入することができ、リボン幅の異なるN-AGNRセグメントがリボン長さ方向に周期的にヘテロ接合した構造をとることにより、離散的に存在していたバンドギャップの値と値との間の領域にバンドギャップの値を有するGNRを得ることができ、バンドギャップの値の選択自由度を高めることができることを見出し、開示の技術の完成に至った。
なお、ここで言う「ヘテロ接合」とは、リボン幅の異なるN-AGNRセグメントがsp結合で結晶構造として繋がっている状態を意味する。
【0023】
(グラフェンナノリボン)
開示のグラフェンナノリボンは、構造式(1)で表される化合物を繰返し単位として有する。
【化4】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【0024】
ここで、図面を参照して、開示のグラフェンナノリボンの一例について説明する。
図2は、前記構造式(1)で表される化合物において、n=1、n=2、X=Br、及びY=Z=Hである化合物を(a-1)グラフェンナノリボン前駆体分子としてGNRを合成した場合に得られる2種類のAGNR((b)7/11-AGNR、(c)9/11/13-AGNR)を表す構造式である。図2中、矢印は前記(a-1)グラフェンナノリボン前駆体分子を金属結晶面上で重合反応及び環化したことを意味する。
図3は、図2の(b)7/11-AGNR、及び(c)9/11/13-AGNRに、前記(a-1)がどのように配置されているかを表した模式図である。
図2及び図3の(b)7/11-AGNR、及び(c)9/11/13-AGNRにおいては、前記構造式(1)におけるX、Y及びZが脱離し、隣接する前記構造式(1)どうしが連結してグラフェンナノリボン構造をなしている。
前記構造式(1)におけるXを有する芳香族六員環は、グラフェンナノリボンの長さ方向の中心軸A-A’に相当し、n及びnの縮合環構造をとり得る芳香族六員環部分が、グラフェンナノリボンの幅方向に延びる構造部分に相当する。
【0025】
図4は、(b)7/11-AGNR、及び(c)9/11/13-AGNRにおけるC原子の数「N」を示した図である。開示のグラフェンナノリボンは、前記構造式(1)中のn及びnが互いに異なり同一ではないことで、リボン幅の異なるN-AGNRセグメントがリボン長さ方向に周期的にヘテロ接合した構造をとる。開示のグラフェンナノリボンは、N/M-AGNR(ただし、N及びMは、互いに異なり同一ではない整数を表す)、及びN/M/L-AGNR(ただし、N、M及びLは、互いに異なり同一ではない整数を表す)で表される2種類のヘテロ接合構造をとる。
例えば、図4(b)の7/11-AGNRにおいては、C原子の数Nが「7」である7-AGNRと、C原子の数が「11」である11-AGNRとがヘテロ接合している。
7-AGNRのC原子の数え方としては、上述したものと同様である。また、11-AGNRのC原子の数え方としては、リボン幅方向に六員環が5つ配列したペンタセンと隣接するペンタセンどうしを繋ぐリボン幅方向のC-C結合とにおいて、リボン幅方向に存在するC原子は、「11」となる。
また、図4(c)の9/11/13-AGNRにおいては、C原子の数Nが9である9-AGNRと、C原子の数が11である11-AGNRと、C原子の数が13である13-AGNRとがヘテロ接合している。
9-AGNRのC原子の数え方としては、リボン幅方向に六員環が4つ配列したテトラセンと隣接するテトラセンどうしを繋ぐリボン幅方向のC-C結合とにおいて、リボン幅方向に存在するC原子は、「9」となる。
また、11-AGNRのC原子の数え方としては、リボン幅方向に六員環が5つ配列したペンタセンと隣接するペンタセンどうしを繋ぐリボン幅方向のC-C結合とにおいて、リボン幅方向に存在するC原子は、「11」となる。
また、13-AGNRのC原子の数え方としては、リボン幅方向に六員環が6つ配列したヘキサセンと隣接するヘキサセンどうしを繋ぐリボン幅方向のC-C結合とにおいて、リボン幅方向に存在するC原子は、「13」となる。
【0026】
前記構造式(1)中、n及びnとしては、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表す。n及びnが7以上であると、前記構造式(1)で表される化合物自体の合成が難しく、仮に合成できたとしても、ボトムアップ法でポリマー化することが困難である。また、n及びnが7以上になると、得られるGNRがバンドギャップの値をもたなくなると推測される。
【0027】
前記構造式(1)中、前記X、Y及びZとしては、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。これらの中でも、X=Br、及びY=Z=Hの場合が好ましい。
【0028】
前記X、Y及びZは、金属結晶面上において、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たす。前記関係を充たすことで、前記Xの脱離による前記構造式(1)で表される化合物どうしの重合反応(ポリマー化)か起き、次いで、前記Y及びZの脱離による前記構造式(1)で表される化合物間の環化反応が誘起されて、GNRの安定合成が促進される。
前記関係式を充たさない場合、例えば、X=F、Y=Cl、及びZ=Brの場合においては、Fが脱離する温度より低い温度でCl及びBrが脱離するので、GNRの長さ方向にポリマー化が進まず(主鎖方向に重合が進まない)、グラフェンナノリボンの形状にならずに分子の塊状になってしまうことがある。
【0029】
(グラフェンナノリボンの製造方法)
開示のグラフェンナノリボンの製造方法は、構造式(1)で表される化合物を重合させる。
【化5】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【0030】
重合とは、ボトムアップ法でGNRを作製することを意味し、具体的には、予め有機化学合成により作製した前駆体分子を超高真空下で金属結晶基板に蒸着し、150℃~250℃の基板加熱により前記構造式(1)中のXが脱離して分子どうしの重合反応(ポリマー化)が起き、次いで300℃~400℃の基板加熱により前記構造式(1)中のY及びZが脱離して環化反応が起きて、GNRが作製される方法である。
【0031】
(グラフェンナノリボン前駆体)
開示のグラフェンナノリボン前駆体は、構造式(1)で表される。
【化6】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【0032】
前記構造式(1)中、n及びnとしては、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表す。n及びnが7以上であると、前記構造式(1)で表される化合物自体の合成が難しく、仮に合成できたとしても、ボトムアップ法でポリマー化することが困難である。また、n及びnが7以上になると、得られるGNRがバンドギャップの値をもたなくなると推測される。
【0033】
前記構造式(1)中、前記X、Y及びZとしては、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。これらの中でも、X=Br、及びY=Z=Hの場合が好ましい。
【0034】
前記X、Y及びZは、金属結晶面上において、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たす。前記関係を充たすことで、前記Xの脱離による前記構造式(1)で表される化合物どうしの重合反応(ポリマー化)か起き、次いで、前記Y及びZの脱離による前記構造式(1)で表される化合物間の環化反応が誘起されて、GNRの安定合成が促進される。
前記関係式を充たさない場合、例えば、X=F、Y=Cl、及びZ=Brの場合においては、Fが脱離する温度より低い温度でCl及びBrが脱離するので、GNRの長さ方向にポリマー化が進まず(主鎖方向に重合が進まない)、グラフェンナノリボンの形状にならずに分子の塊状になってしまうことがある。
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面において、図示の便宜上、相対的に正確な大きさや厚みを示していない構成部材がある。
【0036】
<実施形態1>
本実施形態1では、一例として、前記構造式(1)において、n=1、n=2、X=Br、Y=Z=Hである(a-1)グラフェンナノリボン前駆体分子[図2(a-1)]を用いたグラフェンナノリボンの製造方法について説明する。
【0037】
前記(a-1)は、以下の方法によって合成することができる。使用した反応条件や溶媒は一例であって、他の反応条件や溶媒を用いて実施することも可能である。
出発化合物である1,4-ジブロモ-2,3-ジヨードベンゼン(1,4-dibromo-2,3-diiodobenzene)を2つの連続した鈴木カップリング反応にかける。1,4-dibromo-2,3-diiodobenzene及びフェニルボロン酸(phenylboronic acid)をジオキサン(dioxane)に溶解させる。次いで、触媒のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)を加え、炭酸ナトリウム(Na2CO3)の塩基の存在下のもと、80℃~100℃で攪拌し、溶媒を蒸発させることで第一のIがモノカップリングした生成物が得られる。
次いで、生成物の第二のIを同様の鈴木カップリング反応により、2-ナフタレンボロン酸(2-naphthylboronic acid)とカップリングさせた後、カラムクロマトグラフィーによって精製して(a-1)が得られる。
【0038】
前記(a-1)の合成では、所望とするグラフェンナノリボンのヘテロ接合構造(以下、ヘテロ接合構造を有するグラフェンナノリボンをヘテロ接合GNRと称することもある)や電子物性(バンドギャップ、仕事関数、及び電子親和力)に応じて、反応化合物の骨格や修飾基を適宜選択すればよい。
【0039】
開示のグラフェンナノリボンをボトムアップ法により形成するのに用いる金属基板としては、Au(111)単結晶基板を用いる。その他に、Cu(111)、Ni(111)、Rh(111)、Pd(111)、Ag(111)、Ir(111)、及びPt(111)の単結晶基板を利用することもできる。
また、形成されるGNRの指向性を制御するために、数nm幅のステップアンドテラス周期構造を有する前記単結晶の高指数面基板(例えば、Au(788)基板)を利用することもできる。
【0040】
前記金属基板のその他の例としては、例えば、マイカ、サファイア、MgOなどの絶縁基板上に前記金属を堆積して形成した金属薄膜基板を利用することもできる。
また、前記金属薄膜基板上のGNRの位置や指向性を制御するために、金属薄膜を電子線リソグラフィ・エッチング加工により数nm幅の細線状にパターンニングすることもできる。
金属性の結晶基板の他に、IV族半導体、III-V族化合物半導体、II-VI族化合物半導体、遷移金属酸化物半導体などの半導体性の結晶基板を用いることもできる。
【0041】
先ず、前記(a-1)をAu(111)基板に蒸着する前に、Au表面上の有機系汚染物質の除去、並びに(111)結晶面の平坦性を向上させることを目的に、Arイオンスパッタと超高真空下でのアニールを1セットとする表面清浄処理を複数サイクル実施する。
表面清浄処理は1セットあたり、Arイオンスパッタはイオン加速電圧を1.0kV、イオン電流を10μAに設定して1分間行い、アニールは5×10-7 Pa以下の真空度を保持しつつ400℃~500℃で10分間行う。本実施形態1では3サイクル実施する。
【0042】
前記表面清浄処理を施したAu(111)基板を大気中に曝すことなく、超高真空の真空槽内でAu(111)基板の表面にGNRをin situ形成する。
基本真空度が5×10-8 Pa以下の超高真空下にて、前記(a-1)をK-cell型エバポレーターを用いて約120℃に加熱・昇華し、室温(約25℃)に保持したAu(111)基板上に堆積する。
蒸着速度は0.05nm/min~0.1nm/min、蒸着膜厚は0.5ML~1MLに設定する(ML:monolayer,1ML=約0.25nm)。
【0043】
次いで、前記Au(111)基板を室温から400℃まで1℃/min~5℃/minの昇温速度で昇温する。
150℃~250℃のAu(111)基板上で前記(a-1)は、脱Br化及びC-C結合反応によりポリマー化し、さらに300℃~400℃で脱H化及び環化反応によりヘテロ接合GNRが形成される。
【0044】
Au(111)基板上に蒸着した前記(a-1)の自己配向に依存して、最終的に形成されるヘテロ接合GNRでは二種類の構造を取り得る。
図2(b)は、7-AGNRと11-AGNRが結合した周期配列を有する7/11-AGNRのヘテロ接合GNR、図2(c)は9-AGNRと11-AGNRと13-AGNRが結合した周期配列を有する9/11/13-AGNRのヘテロ接合GNRを表す。
【0045】
室温のAu(111)基板上に前記(a-1)を蒸着して基板加熱した場合、7/11-AGNRのヘテロ接合GNRが優先的に形成されるが、高温(例えば、350℃以上)に保持したAu(111)基板に(a-1)を蒸着して基板加熱した場合では、9/11/13-AGNRのヘテロ接合GNRが形成される。
【0046】
図5A及び図5Bは、それぞれ7/11-AGNRと9/11/13-AGNRのヘテロ接合GNRの第一原理シミュレーション(密度汎関数法/一般化勾配近似:DFT-GGA)で計算されたバンドの分散状態を表す図である。バンドギャップは、7/11-AGNRでE=1.06eV、9/11/13-AGNRでE=0.07eVという結果が得られた。
【0047】
<実施形態2>
本実施形態2では、一例として、前記実施形態1で説明したボトムアップ法により、前記構造式(1)において、n=1、n=3、X=Br、Y=Z=Hである(a-2)グラフェンナノリボン前駆体分子[図6(a-2)]を用いたグラフェンナノリボンの製造方法について説明する。
【0048】
前記(a-2)は、以下の方法によって合成することができる。使用した反応条件や溶媒は一例であって、他の反応条件や溶媒を用いて実施することも可能である。
出発化合物である1,4-ジブロモ-2,3-ジヨードベンゼン(1,4-dibromo-2,3-diiodobenzene)を2つの連続した鈴木カップリング反応にかける。1,4-dibromo-2,3-diiodobenzene及びフェニルボロン酸(phenylboronic acid)をジオキサン(dioxane)に溶解させる。次いで、触媒のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)を加え、炭酸ナトリウム(Na2CO3)の塩基の存在下のもと、80℃~100℃で攪拌し、溶媒を蒸発させることで第一のIがモノカップリングした生成物が得られる。
次いで、生成物の第二のIを同様の鈴木カップリング反応により、2-アントラセンボロン酸(2-anthraceneboronic acid)とカップリングさせた後、カラムクロマトグラフィーによって精製して(a-2)が得られる。
【0049】
前記実施形態1と同様にして、表面処理を施したAu(111)基板上に前記(a-2)グラフェンナノリボン前駆体分子を蒸着する。前駆体分子は、六員環数が増加するにつれて、その昇華温度は高くなる。前記(a-2)は、約180℃に加熱及び昇華し、室温に保持したAu(111)基板上に堆積する。
次いで、150℃~250℃の基板加熱により前記(a-2)は脱Br化及びC-C結合反応でポリマー化し、さらに300℃~400℃に基板加熱することで脱H化及び環化反応によりヘテロ接合GNRが形成される。
【0050】
実施形態1と同様、前記(a-2)から7/13-AGNR[図6(b)]と9/13/17-AGNR[図6(c)]の2種類のヘテロ接合GNRが形成される。
図6(b)は、7-AGNRと13-AGNRが結合した周期配列を有する7/13-AGNRのヘテロ接合GNR、図6(c)は9-AGNRと13-AGNRと17-AGNRが結合した周期配列を有する9/13/17-AGNRのヘテロ接合GNRを表す。
【0051】
図7A及び図7Bは、それぞれ7/13-AGNRと9/13/17-AGNRのヘテロ接合GNRの第一原理シミュレーション(密度汎関数法/一般化勾配近似:DFT-GGA)で計算されたバンドの分散状態を表す図である。バンドギャップは、7/11-AGNRでE=0.80eV、9/11/13-AGNRでE=0.25eVという結果が得られた。
【0052】
<実施形態3>
本実施形態3では、一例として、前記実施形態1で説明したボトムアップ法により、前記構造式(1)において、n=2、n=3、X=Br、Y=Z=Hである(a-3)グラフェンナノリボン前駆体分子[図8(a-3)]を用いたグラフェンナノリボンの製造方法について説明する。
【0053】
前記(a-3)は、以下の方法によって合成することができる。使用した反応条件や溶媒は一例であって、他の反応条件や溶媒を用いて実施することも可能である。
出発化合物である1,4-ジブロモ-2,3-ジヨードベンゼン(1,4-dibromo-2,3-diiodobenzene)を2つの連続した鈴木カップリング反応にかける。1,4-dibromo-2,3-diiodobenzene及び2-ナフタレンボロン酸(2-naphthylboronic acid)をジオキサン(dioxane)に溶解させる。次いで、触媒のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)を加え、炭酸ナトリウム(Na2CO3)の塩基の存在下のもと、80℃~100℃で攪拌し、溶媒を蒸発させることで第一のIがモノカップリングした生成物が得られる。
次いで、生成物の第二のIを同様の鈴木カップリング反応により、2-アントラセンボロン酸(2-anthraceneboronic acid)とカップリングさせた後、カラムクロマトグラフィーによって精製して(a-3)が得られる。
【0054】
前記実施形態1と同様にして、表面処理を施したAu(111)基板上に前記(a-3)グラフェンナノリボン前駆体分子を蒸着する。前記(a-3)は、約180℃に加熱及び昇華し、室温に保持したAu(111)基板上に堆積する。
次いで、150℃~250℃の基板加熱により前記(a-3)は脱Br化及びC-C結合反応でポリマー化し、さらに300℃~400℃に基板加熱することで脱H化及び環化反応によりヘテロ接合GNRが形成される。
【0055】
実施形態1と同様、前記(a-3)から11/15-AGNR[図8(b)]と13/15/17-AGNR[図8(c)]の2種類のヘテロ接合GNRが形成される。
図8(b)は、11-AGNRと15-AGNRが結合した周期配列を有する11/15-AGNRのヘテロ接合GNR、図8(c)は13-AGNRと15-AGNRと17-AGNRが結合した周期配列を有する13/15/17-AGNRのヘテロ接合GNRを表す。
【0056】
<実施形態4>
本実施形態4では、一例として、前記実施形態1で説明したボトムアップ法により、前記構造式(1)において、n=2、n=4、X=Br、Y=Z=Hである(a-4)グラフェンナノリボン前駆体分子[図9(a-4)]を用いたグラフェンナノリボンの製造方法について説明する。
【0057】
前記(a-4)は、以下の方法によって合成することができる。使用した反応条件や溶媒は一例であって、他の反応条件や溶媒を用いて実施することも可能である。
出発化合物である1,4-ジブロモ-2,3-ジヨードベンゼン(1,4-dibromo-2,3-diiodobenzene)を2つの連続した鈴木カップリング反応にかける。1,4-dibromo-2,3-diiodobenzene及び2-ナフタレンボロン酸(2-naphthylboronic acid)をジオキサン(dioxane)に溶解させる。次いで、触媒のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)を加え、炭酸ナトリウム(Na2CO3)の塩基の存在下のもと、80℃~100℃で攪拌し、溶媒を蒸発させることで第一のIがモノカップリングした生成物が得られる。
次いで、生成物の第二のIを同様の鈴木カップリング反応により、2-テトラセンボロン酸(2-tethraceneboronic acid)とカップリングさせた後、カラムクロマトグラフィーによって精製して(a-4)が得られる。
【0058】
前記実施形態1と同様にして、表面処理を施したAu(111)基板上に前記(a-4)グラフェンナノリボン前駆体分子を蒸着する。前記(a-4)は、約180℃に加熱及び昇華し、室温に保持したAu(111)基板上に堆積する。
次いで、150℃~250℃の基板加熱により前記(a-4)は脱Br化及びC-C結合反応でポリマー化し、さらに300℃~400℃に基板加熱することで脱H化及び環化反応によりヘテロ接合GNRが形成される。
【0059】
実施形態1と同様、前記(a-4)から11/17-AGNR[図9(b)]と13/17/21-AGNR[図9(c)]の2種類のヘテロ接合GNRが形成される。
図9(b)は、11-AGNRと17-AGNRが結合した周期配列を有する11/17-AGNRのヘテロ接合GNR、図9(c)は13-AGNRと17-AGNRと21-AGNRが結合した周期配列を有する13/17/21-AGNRのヘテロ接合GNRを表す。
【0060】
<実施形態5>
本実施形態5では、前記ボトムアップ法により形成される開示のヘテロ接合GNRをチャネルに利用した電界効果トランジスタ(FET)の製造工程について、図10A図10Gを用いて説明する。図10A図10Eは、本実施形態5におけるFETの製造工程を順に示す上面図である。図10F及び図10Gは、それぞれ図10D及び図10Eの切断線I-I’における切断面を示す断面図である。
【0061】
先ず、図10Aに示すように、絶縁基板11上に金属層を堆積し、電子線リソグラフィ及びドライエッチングにより前記金属層をパターニングして、ライン状の金属層12を形成する。
【0062】
以下に図10Aの製造工程を説明する。例えば、絶縁基板11は、劈開して清浄表面を出したマイカ基板を用いる。マイカ基板の劈開面上に金属層としてAuを蒸着法により厚みが10nm~50nmとなるように堆積させる。Au蒸着時はマイカ基板を400℃~550℃で加熱し、Au(111)面配向性を向上させる。金属層の材料としては、Cu、Ni、Rh、Pd、Ag、Ir、及びPtが挙げられる。絶縁基板の種類に応じて金属層のエピタキシャル結晶面を制御することができる。
【0063】
次いで、絶縁基板11上の金属層をパターニングしてライン上の金属層12を形成する。
開示のグラフェンナノリボン前駆体の重合反応及び環化反応は、絶縁基板11上では誘起されない。したがって、金属層12の位置及びサイズによりヘテロ接合GNRの位置及びサイズを制御することができる。例えば、金属層12のパターニング幅としては、所望するヘテロ接合GNRのリボン幅を考慮して設計し、パターニング長さとしては、最終的に製造されるFETのチャネル長を考慮して設計すればよい。例えば、金属層12のパターニング幅は、1nm~5nmとし、パターニング長さは50nm~500nmとする。
【0064】
金属層/絶縁基板11上に電子線レジストをスピンコートし、金属層をエッチングするためのマスクパターンを電子線レジストに形成する。電子線レジストには、ZEP 520A(日本ゼオン社製)をZEP-A(同社製)で1:1に希釈したレジストを用いることができる。次いで、マスクパターンを用いて、Arイオンミリングにより金属層のエッチング処理を行う。このようにして、金属層12を形成することができる。
【0065】
次いで、図10Bに示すように、金属層12上にヘテロ接合GNR13を形成する。
【0066】
以下に図10Bの製造工程を説明する。ヘテロ接合GNR13は、開示のグラフェンナノリボン前駆体を用いて形成することができる。前記実施形態1から4と同様にして、金属層12の表面清浄処理を行う。この表面清浄処理により、金属層12の表面に付着したレジスト残渣などの有機系汚染物質を除去することができ、さらに、Au(111)表面の平坦性をより向上させることができる。
前記表面清浄処理を施した金属層12/絶縁基板11を大気中に曝すことなく、超高真空の真空槽内で金属層12の表面にヘテロ接合GNR13をin situ形成する。
例えば、室温に保持した金属層12/絶縁基板11に開示のグラフェンナノリボン前駆体を蒸着した後、300℃~400℃に昇温する。この結果、開示のグラフェンナノリボン前駆体の重合反応及び環化反応が誘起され、金属層12により位置及びサイズが制御されたヘテロ接合GNR13が形成される(図10B)。
【0067】
続いて、図10Cに示すように、電子線リソグラフィ、蒸着法、及びリフトオフにより、ヘテロ接合GNR13の一方の端部上にソース電極14を形成し、他方の端部上にドレイン電極15を形成する。ソース電極14及びドレイン電極15は、例えばTi膜及びその上のCr膜を含む2層電極である。
【0068】
ソース電極14及びドレイン電極15が堆積されていない領域(ヘテロ接合GNR13チャネルの下層)の金属層は、後工程のウェットエッチングにより最終的に除去される。このため、ソース電極14及びドレイン電極15に利用する金属種は、金属層を成す金属種に対して十分なエッチング選択比を有する必要がある。後述するように、金属層のウェットエッチングにKI水溶液を用いる場合、KI水溶液に対して十分なエッチャント耐性のあるCr/Tiの2層電極は、電極の金属種として適当である。
【0069】
ソース電極14及びドレイン電極15の形成では、ヘテロ接合GNR13、金属層12、及び絶縁基板11上に2層レジストをスピンコートし、電子線リソグラフィにより2層レジストに電極パターンを形成する。例えば、2層レジストの上層にはZEP 520Aの希釈レジストを用い、犠牲層である下層にはPMGI SFG2S(Michrochem社製)を用いる。電極パターンの形成後、厚みが0.5nm~1nmのTi膜及び厚みが30nm~50nmのCr膜を蒸着法により堆積する。続いて、2層レジストの除去によりリフトオフする。このようにして、図10Cに示すようにヘテロ接合GNR13に一対の電極が形成された構造体が得られる。
【0070】
続いて、図10D及び図10Fに示すように、電子線リソグラフィ、蒸着法、及びリフトオフにより、ヘテロ接合GNR13上にゲート電極16及びゲート絶縁層17のゲートスタック構造を形成する。図10Fは、図10Dの切断線I-I’における切断面を示す断面図である。
ゲート電極16及びゲート絶縁膜17の形成では、ソース電極14及びドレイン電極15の形成と同様に、2層レジストをスピンコートし、電子線リソグラフィにより2層レジストにゲートパターンを形成する。例えば、2層レジストの上層にはZEP 520Aの希釈レジストを用い、犠牲層である下層にはPMGI SFG2Sを用いる。
本実施形態5では、例えば、ゲート長を10nmに設計する。ここで、後工程でチャネルの下層の金属層はウェットエッチングされるため、ゲートパターンはソース電極14及びドレイン電極15とオーバーラップさせずに、図10D及び図10Fに示すような開口部18を設けた構造にする必要がある。
【0071】
ゲートパターンの形成後、ゲート絶縁層17及びゲート電極16を順次、蒸着法により積層する。ゲート絶縁層17には、厚みが5nm~10nmのYが用いられる。真空槽内にOガスを導入しながらY金属を蒸着することでY絶縁層を形成することができる。ゲート電極16には、ソース電極14及びドレイン電極15と同じ膜厚でCr/Tiの2層電極が堆積される。
ゲート絶縁層17には他に、前記と同様のOガスを導入する蒸着法により、SiO、HfO、ZrO、La、TiOを用いることも可能である。ゲート絶縁層17及びゲート電極16に利用する材料としては、後工程のチャネルの下層の金属層の除去に用いるエッチャントに対して十分なエッチング耐性を有する必要がある。
続いて、2層レジストの除去によりリフトオフする。このようにして、図10D及び図10Fに示すようにゲート電極16及びゲート絶縁膜17のゲートスタック構造が形成される。
【0072】
次に、図10E及び図10Gに示すように、チャネルの下層の金属層をウェットエッチングにより除去して、空隙19を形成する。図10Gは、図10Eの切断線I-I’における切断面を示す図である。本実施形態5では、金属層のウェットエッチングにKI水溶液をエッチャントとして用いた。
金属層のウェットエッチング後には、純水による洗浄及びイソプロピルアルコールによるリンス処理を順次行う。続いて、乾燥処理として、溶液の表面張力や毛管力によるチャネルの切断を防ぐことを目的として、例えばCOガスを用いた超臨界乾燥処理を行う。
【0073】
以上の製造工程を経て、最終的に図10E及び図10Gのような一対の電極とゲート絶縁層によってサスペンデッドされたヘテロ接合GNRをチャネルに利用したFETを製造することができる。
【0074】
<実施形態6>
本実施形態6では、前記ボトムアップ法により形成される開示のヘテロ接合GNRのネットワーク膜を、他の絶縁基板に転写して製造される薄膜トランジスタ(TFT)について、図11A図11Eを用いて説明する。
【0075】
前記実施形態5と同様にして、絶縁基板に11金属層12を形成する。絶縁基板11にはマイカ基板を用い、金属層12にはAuを蒸着する。金属層12に対して表面清浄処理を行った後、ボトムアップ法によりヘテロ接合GNR13を形成する。本実施形態6では、開示のグラフェンナノリボン前駆体を蒸着する厚みを2ML~4MLに設定することで、個々のヘテロ接合GNR13が互いに接触したネットワーク膜20を形成することができる。
【0076】
図11Aに示すように、ネットワーク膜20、金属層12、及び絶縁基板11の上面に、保護層21を形成する。ここで、保護層21にはCrを用いる。
Crの保護層21は、次の方法で形成する。Au(111)上にネットワーク膜20を形成した後、真空槽から暴露することなく、in situでネットワーク膜20上にCr金属を蒸着法で成膜する。蒸着速度は0.01nm/s~0.05nm/s、厚みは1nm~3nmとする。次いで、大気中に曝すことで自然酸化により、Cr金属はCr酸化物の保護層21となる。
このCr酸化物の保護層21は、後述するように、ネットワーク膜20の転写の際に用いる有機系支持層の残留物からネットワーク膜20を保護する機能を有する。
【0077】
保護層21には、容易に酸化して絶縁化する性質と、GNRを構成するC原子と化学結合しにくい性質との両方を備える必要がある。
保護層21の材料としては、Crの他に、例えば、SiO、Al、Sc、MnO、ZnO、Y、ZrO、MoO、及びRuOが挙げられる。
一方で、TiやNiは容易に酸化してTiOやNiOとなるが、それらをGNR上に堆積した場合、界面においてTiCやNiCを形成することでGNRの物性に影響を与えるため適当ではない。
【0078】
続いて、図11Bに示すように、保護層21上に支持層22を形成する。
支持層22は、アクリル樹脂のポリメタクリル酸メチル(polymethyl methacrylate、PMMA)をスピンコートして100nm~500nmの厚みに塗布する。
前記支持層22の材料としては、PMMAの他に、エポキシ樹脂、熱剥離テープ、粘着テープ、各種のフォトレジストや電子線レジスト、あるいは、それらの積層膜が挙げられる。
【0079】
次に、金属層12のAu(111)をKI水溶液のウェットエッチングにより除去し、絶縁基板から支持層22/保護層21/ネットワーク膜20を切り離す。次いで、支持層22/保護層21/ネットワーク膜20に対して、純水洗浄、乾燥処理を施した後、図11Cの矢印に示すように、上面にゲート絶縁層17/ゲート電極16を具備した転写絶縁基板23上に、ネットワーク膜20とゲート絶縁層17が接触する向きに、支持層22/保護層21/ネットワーク膜20を転写する。
【0080】
転写の後、支持層22のPMMAを約70℃のアセトンに浸漬して除去し、イソプロピルアルコールでリンス処理を施す。
一般的に、グラフェン上のPMMAは完全に取り除くことが難しく、その残留物がグラフェンの特性を劣化させることが知られている。本実施形態6では、ネットワーク膜20上に保護層21が形成されており、PMMAが直接接触しないため、PMMAの残留物による膜特性の劣化を抑制することができる。
【0081】
転写絶縁基板23には、熱酸化膜が形成されたSi基板を用いる。また、実施形態5と同様にして、電子線リソグラフィ、蒸着法、及びリフトオフを用いてCr/Tiのゲート電極16を形成する。ゲート絶縁層17は原子層堆積(ALD)法によりゲート電極16を覆うようにHfOを5nm~10nmの厚みで形成する。
【0082】
転写絶縁基板23は、平坦性が高い表面を有すること以外には特に制限はなく、例えば、ディスプレ等への応用のため、透明なガラス基板、あるいはフレキシブルなPET基板などを用いることもできる。また、ゲート電極16、さらに後述のソース電極14及びドレイン電極15の金属種についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Au/Ti、Pt/Ti、Pd/Ti、あるいは、透明電極材料のITO(酸化インジウムスズ)、In、SnO、AlZnO、及びGaZnOを利用することも可能である。
【0083】
続いて、電子線リソグラフィにより、ソース電極14及びドレイン電極15を形成するための電極のレジストパターンを形成する。ここで、ソース-ドレイン電極間の距離を10nm~50nmに設計する。
図11Dに示すように、ソース電極14及びドレイン電極15とネットワーク膜20との間に導通をとるため、電極の形成される領域のCrをウェットエッチングにより除去して、電極開口部24を形成する。エッチャントには、例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムを用いることができる。その後、ゲート電極16を形成した方法と同様にしてCr/Tiを蒸着し、リフトオフすることで、ソース電極14及びドレイン電極15を形成する。
【0084】
以上の製造工程を経て、転写法を用いて、図11Eに示すようなヘテロ接合GNRのネットワーク膜20をチャネルに利用したボトムゲート・トップコンタクト型薄膜トランジスタ(TFT)を製造することができる。
【0085】
<実施形態7>
実施形態6と同様にして、ヘテロ接合GNRのネットワーク膜を他の基板に転写することで製造されるトップゲート・トップコンタクト型薄膜トランジスタ(TFT)について、図12A図12Dを用いて説明する。
【0086】
図12Aに示すように、実施形態6と同様の工程を経て、図12A中の矢印で示すように、支持層22/保護層21/ネットワーク膜20を転写絶縁基板上23に転写する。
ここで、実施形態6と同様、支持層22はPMMA、保護層21はCr、転写絶縁基板23は熱酸化膜が形成されたSi基板である。
【0087】
転写してPMMAを除去した後、実施形態6と同様に、電子線リソグラフィにより、ソース電極14及びドレイン電極15を形成するための電極のレジストパターンを形成する。
図12Bに示すように、ソース電極14及びドレイン電極15とネットワーク膜20との間に導通をとるため、電極が形成される領域のCrをウェットエッチングにより除去することで、電極開口部24を形成する。
次いで、図12Cに示すように、Cr/Tiを蒸着した後、リフトオフすることで、ソース電極14及びドレイン電極15を形成する。
【0088】
続いて、電子線リソグラフィにより、ゲートスタックのレジストパターンを形成し、ゲート絶縁層17及びゲート電極16を順次、蒸着法により堆積する。
ゲート絶縁層17には、厚みが5nm~10nmのHfOを用いる。1×10-5Pa以下の真空中にOガスを導入しながらHf金属を蒸着することで、HfOのゲート絶縁層17を形成することができる。ゲート電極16には、ソース電極14及びドレイン電極15と同様にしてCr/Tiを蒸着する。最後に、リフトオフを行い、Cr/Ti/HfOのゲートスタック構造を形成する。
【0089】
以上の製造工程を経て、転写法を用いて、図12Dに示すようなヘテロ接合GNRのネットワーク膜をチャネルに利用したトップゲート・トップコンタクト型薄膜トランジスタ(TFT)を製造することができる。
【0090】
更に以下の付記を開示する。
(付記1)
構造式(1)で表される化合物を繰返し単位として有することを特徴とするグラフェンナノリボン。
【化7】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
(付記2)
アームチェアエッジグラフェンナノリボン(AGNR)である、付記1に記載のグラフェンナノリボン。
(付記3)
アームチェアエッジグラフェンナノリボン(AGNR)が、N/M-AGNR(ただし、N及びMは、互いに異なり同一ではない整数を表す)、又は、N/M/L-AGNR(ただし、N、M及びLは、互いに異なり同一ではない整数を表す)である、付記1又は2に記載のグラフェンナノリボン。
(付記4)
構造式(1)で表される化合物を重合させることを特徴とするグラフェンナノリボンの製造方法。
【化8】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
(付記5)
構造式(1)で表されることを特徴とするグラフェンナノリボン前駆体。
【化9】
ただし、前記構造式(1)中、nとnとは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
(付記6)
構造式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化10】
ただし、前記構造式(1)中、n1とn2とは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
(付記7)
構造式(1)で表される化合物を繰返し単位として有するグラフェンナノリボンに、一対の電極を接触させて形成する工程を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【化11】
ただし、前記構造式(1)中、n1とn2とは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
(付記8)
構造式(1)で表される化合物を繰返し単位として有するグラフェンナノリボンと、前記グラフェンナノリボンに接触して設けられた一対の電極とを有することを特徴とする電子デバイス。
【化12】
ただし、前記構造式(1)中、n1とn2とは、互いに異なり同一ではなく、1~6の整数を表し、X、Y及びZは、前記構造式(1)からの脱離温度が次式、T<T≦T、の関係を充たし、それぞれ、F、Cl、Br、I、H、OH、SH、SOH、SOH、SONH、PO、NO、NO、NH、CH、CHO、COCH、COOH、CONH、COCl、CN、CF、CCl、CBr、及びCIから選択される1種を表す。
【産業上の利用可能性】
【0091】
開示の技術によるグラフェンナノリボン、及びその製造方法、並びにグラフェンナノリボン前駆体は、ナノエレクトロニクスやオプトエレクトロニクス分野において、バンドギャップエンジニアリングを利用するデバイス製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
11 絶縁基板
12 金属層
13 ヘテロ接合GNR
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 ゲート電極
17 ゲート絶縁膜
18 開口部
19 空隙
20 ネットワーク膜
21 保護層
22 支持層
23 転写絶縁基板
24 電極開口部

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D