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  • 特許-電気機器、過電圧保護装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電気機器、過電圧保護装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/04 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H02H9/04 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020009545
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021118589
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 友一朗
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-231942(JP,A)
【文献】特開昭61-102006(JP,A)
【文献】実開昭50-147138(JP,U)
【文献】特開2009-200327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分電盤に設置される電気機器であって、
外部電源が電気的に接続される一対の電源接続端子と、
前記一対の電源接続端子を介して前記外部電源から電力を得る回路部と、
前記一対の電源接続端子と前記回路部との間にあって、前記回路部を過電圧から保護する保護部と、
を備え、
前記保護部は、
前記一対の電源接続端子間に並列的に接続される複数の過電圧保護要素と、
前記複数の過電圧保護要素に関する故障の検知をする検知部と、
前記複数の過電圧保護要素にそれぞれ直列に電気的に接続され、フォトカプラを含む複数の検知素子と、を有し、
前記複数の過電圧保護要素の各々における第1端は、前記一対の電源接続端子のうち一方の電源接続端子と前記回路部との間に電気的に接続され、
前記複数の過電圧保護要素の各々における第2端は、前記一対の電源接続端子のうち他方の電源接続端子と前記回路部との間に電気的に接続され
前記検知部は、前記複数の検知素子の各々における前記フォトカプラからの出力によって、前記複数の過電圧保護要素の各々が故障しているか否かの判断を行う、
電気機器。
【請求項2】
前記複数の過電圧保護要素は、同じ性能である、
請求項1の電気機器。
【請求項3】
前記複数の過電圧保護要素の各々は、前記一対の電源接続端子を介して前記回路部にかかる電圧を所定電圧未満に低減し、
前記複数の過電圧保護要素は、前記所定電圧が互いに等しい、
請求項1又は2の電気機器。
【請求項4】
前記複数の過電圧保護要素の各々は、バリスタである、
請求項1~3のいずれか一つの電気機器。
【請求項5】
前記回路部を構成する第1電子部品の耐圧は、前記分電盤に用いられる第2電子部品の耐圧よりも低い、
請求項1~4のいずれか一つの電気機器。
【請求項6】
前記第1電子部品は、過渡電圧の許容値が第1値である第1過電圧カテゴリに対応し、
前記第2電子部品は、過渡電圧の許容値が前記第1値より大きい第2値である第2過電圧カテゴリに対応し、
前記保護部は、前記一対の電源接続端子を介して前記回路部にかかる電圧を前記第1値未満に低減する、
請求項5の電気機器。
【請求項7】
前記保護部は、前記検知部での検知の結果を報知する報知部を含む、
請求項1~6のいずれか一つの電気機器。
【請求項8】
前記保護部は、前記複数の過電圧保護要素と前記一対の電源接続端子の一方との間に電気的に接続されるヒューズを有する、
請求項1~7のいずれか一つの電気機器
【請求項9】
前記回路部は、前記一対の電源接続端子を介して得た電力に基づいて動作電力を生成する電源部を含み、
前記保護部は、前記電源部と前記一対の電源接続端子との間にある、
請求項1~8のいずれか一つの電気機器。
【請求項10】
前記回路部は、センサからのセンシング情報に基づいて所定の物理量に関する計測情報
を生成する計測部を含む、
請求項9の電気機器。
【請求項11】
分電盤に設置される電気機器に用いられる過電圧保護装置であって、
外部電源が電気的に接続される一対の電源接続端子と、前記一対の電源接続端子を介して前記外部電源から電力を得る回路部との間にあって、前記一対の電源接続端子間に並列的に接続される複数の過電圧保護要素と、
前記複数の過電圧保護要素に関する故障の検知をする検知部と、
前記複数の過電圧保護要素にそれぞれ直列に電気的に接続され、フォトカプラを含む複数の検知素子と、を備え、
前記複数の過電圧保護要素の第1端は、前記一対の電源接続端子のうち一方の電源接続端子と前記回路部との間に電気的に接続され、
前記複数の過電圧保護要素の第2端は、前記一対の電源接続端子のうち他方の電源接続端子と前記回路部との間に電気的に接続され、
前記検知部は、前記複数の検知素子の各々における前記フォトカプラからの出力によって、前記複数の過電圧保護要素の各々が故障しているか否かの判断を行う、
過電圧保護装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気機器、及び、過電圧保護装置に関する。本開示は、特に、分電盤に設置される電気機器、及び、電気機器に用いられる過電圧保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気機器の一種である、電力計測ユニット(計測装置)を開示する。特許文献1の電力計測ユニットは、分電盤内の所定箇所に設置されてセンサユニット(センサ)が設置された各回路の電力を計測する機能を有する。電力計測ユニットは、センサユニットと信号線、電線を用いて接続され、また、通信線を介してパソコンなどの外部の監視装置に電力計測値を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-199209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
課題は、電気機器の回路部の過電圧からの保護の性能を向上できる、電気機器、及び、過電圧保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の電気機器は、分電盤に設置される電気機器であって、一対の電源接続端子と、回路部と、保護部とを備える。前記一対の電源接続端子は、外部電源が電気的に接続される。前記回路部は、前記一対の電源接続端子を介して前記外部電源から電力を得る。前記保護部は、前記一対の電源接続端子と前記回路部との間にあって、前記回路部を過電圧から保護する。前記保護部は、前記一対の電源接続端子間に並列的に接続される複数の過電圧保護要素と、前記複数の過電圧保護要素に関する故障の検知をする検知部と、前記複数の過電圧保護要素にそれぞれ直列に電気的に接続され、フォトカプラを含む複数の検知素子と、を有する。前記複数の過電圧保護要素の各々における第1端は、前記一対の電源接続端子のうち一方の電源接続端子と前記回路部との間に電気的に接続される。前記複数の過電圧保護要素の各々における第2端は、前記一対の電源接続端子のうち他方の電源接続端子と前記回路部との間に電気的に接続される。検知部は、前記複数の検知素子の各々における前記フォトカプラからの出力によって、前記複数の過電圧保護要素の各々が故障しているか否かの判断を行う。
【0006】
本開示の一態様の過電圧保護装置は、分電盤に設置される電気機器に用いられる過電圧保護装置であって、複数の過電圧保護要素と、検知部と、複数の検知素子と、を備える。前記複数の過電圧保護要素は、外部電源が電気的に接続される一対の電源接続端子と、前記一対の電源接続端子を介して前記外部電源から電力を得る回路部との間にあって、前記一対の電源接続端子間に並列的に接続される。前記検知部は、前記複数の過電圧保護要素に関する故障の検知をする。前記複数の検知素子は、前記複数の過電圧保護要素にそれぞれ直列に電気的に接続され、フォトカプラを含む。前記複数の過電圧保護要素の各々における第1端は、前記一対の電源接続端子のうち一方の電源接続端子と前記回路部との間に電気的に接続される。前記複数の過電圧保護要素の各々における第2端は、前記一対の電源接続端子のうち他方の電源接続端子と前記回路部との間に電気的に接続される。前記検知部は、前記複数の検知素子の各々における前記フォトカプラからの出力によって、前記複数の過電圧保護要素の各々が故障しているか否かの判断を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示の態様によれば、電気機器の回路部の過電圧からの保護の性能を向上できる、という効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の計測装置(電気機器)が設置された分電盤の概略図である。
図2図2は、上記計測装置の回路構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)実施形態
(1-1)概要
本実施形態は、電気機器の一種である計測装置に関する。図1は、一実施形態の電気機器10が適用される分電盤100を示す。分電盤100は、外部電源である交流電源200からの電力を分配するために利用される。つまり、分電盤100は、交流電源200に電気的に接続される。交流電源は、一例として、商用電源である。図1では、分電盤100は、主幹開閉器(主幹ブレーカ)110と、複数の分岐開閉器(分岐ブレーカ)120とを備える。なお、分電盤100は、複数の分岐開閉器120を備えることは必須ではなく、1以上の分岐開閉器120を有していればよい。また、分電盤100は、主幹開閉器110及び複数の分岐開閉器120を収容するキャビネット130を備える。キャビネット130は、造営材(例えば建物の壁)に取り付けられる。造営材は、建物(戸建て住宅、集合住宅の住戸又はテナントビル等)内の部屋の壁に限らず、例えば、建物内の部屋の天井又は床であってもよい。
【0010】
主幹開閉器110は、一次側端端子と、二次側端子と、一次側端子と二次側端子との間の電路に接続された接点とを備える。主幹開閉器110は、例えば接点に漏電電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常状態を検知すると、接点を開いて電路を遮断する。主幹開閉器110は従来周知の構成であってよいから詳細な説明は省略する。
【0011】
分岐開閉器120は、配線用遮断器である。分岐開閉器120は、電源端子部(一次側接続部)と、負荷接続部(二次側接続部)とを備える。また、分岐開閉器120は、遮断回路を備える。遮断回路は、電源端子部と負荷接続部との間の電路に挿入される接点装置と、接点装置を操作するためのハンドルとを備える。電源端子部は、電源との接続に利用される。電源端子部は、主幹開閉器110との電気的接続に利用される。負荷接続部は、負荷との接続に利用される。負荷としては、電気機器との接続のための配線器具が挙げられる。配線器具としては、コンセント、引掛シーリング等がある。なお、分岐開閉器120は、熱動式引外し装置を有していてもよい。熱動式引外し装置は、例えば、バイメタル又はトリメタル等の熱動素子を含み、熱動素子が作動することにより、遮断回路の接点装置を開くように構成される。また、分岐開閉器120は、電磁式引外し装置を有していてもよい。電磁式引外し装置は、例えば、電磁石装置を含み、電磁石装置が作動することにより、遮断回路の接点装置を瞬時に開くように構成される。なお、分岐開閉器120は、配線用遮断器(ブレーカ)としての機能を有していなくてもよい。分岐開閉器120は、例えば、スイッチ、リレー又は解列器として用いられてもよい。
【0012】
キャビネット130は、複数の取付部材140を備える。取付部材140は、分岐開閉器120をキャビネット130に固定するために利用される。本実施形態では、取付部材140は、DINレールである。
【0013】
本実施形態の電気機器10は、分電盤100に設置される。電気機器10は、取付部材140に取り付けられることで、キャビネット130に固定される。また、電気機器10は、分電盤100の分岐開閉器120に電気的に接続されて、交流電源200からの電力を受け取る。また、電気機器10は、センサ300に電気的に接続されて、センサ300からセンシング情報を取得する。
【0014】
特に、本実施形態の電気機器10は、図2に示すように、分電盤100に設置される電気機器10であって、一対の電源接続端子10a,10bと、回路部30と、保護部70とを備える。一対の電源接続端子10a,10bは、外部電源200が電気的に接続される。回路部30は、一対の電源接続端子10a,10bを介して外部電源200から電力を得る。保護部70は、一対の電源接続端子10a,10bと回路部30との間にあって、回路部30を過電圧から保護する。保護部70は、一対の電源接続端子10a,10b間に並列的に接続される複数の過電圧保護要素71を有する。
【0015】
このように、本実施形態の電気機器10では、一対の電源接続端子10a,10bと回路部30との間に保護部70がある。そのため、電気機器10の回路部30の過電圧からの保護が図れる。更に、保護部70は、一対の電源接続端子10a,10b間に並列的に接続される複数の過電圧保護要素71を有する。したがって、複数の過電圧保護要素71の少なくとも一つが正常であれば、回路部30の過電圧からの保護が可能となる。したがって、電気機器10によれば、電気機器10の回路部30の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【0016】
(1-2)詳細
以下、本実施形態の電気機器10について、図1及び図2を参照して更に詳細に説明する。電気機器10は、図1に示すように、筐体20を備える。更に、図2に示すように、電気機器10は、一対の電源接続端子10a,10bと、回路部30と、保護部70とを備える。一対の電源接続端子10a,10bと、回路部30と、保護部70とは筐体20に収容される。
【0017】
一対の電源接続端子10a,10bは、外部電源である交流電源200が電気的に接続される。より詳細には、一対の電源接続端子10a,10bは、外部電源(交流電源200)からの電源線が電気的に接続される。本実施形態では、一対の電源接続端子10a,10bは、電源線によって、分電盤100の分岐開閉器120に電気的に接続される。これによって、一対の電源接続端子10a,10bが交流電源200に電気的に接続される。
【0018】
回路部30は、図2に示すように、計測部40と、通信部50と、電源部60とを含む。
【0019】
計測部40は、電子部品を基板に実装することによって、構成されている。計測部40は、一対の電源接続端子40a,40bと、センサ接続部40cとを備える。一対の電源接続端子40a,40bは、電源部60に電気的に接続される。センサ接続部40cは、センサ300(電流センサ)が電気的に接続される。
【0020】
計測部40は、センサ300からのセンシング情報(例えば、測定値)に基づいて所定の物理量に関する計測情報を生成する。本実施形態では、センサ300は、電流センサである。電流センサである。電流センサは、交流電源200からの供給電力、太陽電池、蓄電装置、及び燃料電池等の発電設備からの供給電力、及び負荷等での消費電力等の計測に利用される。この場合、所定の物理量としては、電力(単位W)が挙げられる。本実施形態の場合、計測部40は、センサ300からのセンシング情報(電流値)に基づいて所定の物理量(電力)に関する計測情報(電力計測情報)を生成する。
【0021】
通信部50は、電子部品を基板に実装することによって、構成されている。通信部50は、一対の電源接続端子50a,50bを備える。一対の電源接続端子50a,50bは、電源部60に電気的に接続される。また、通信部50は、アンテナと、操作部とを備える。アンテナは、通信部50での無線通信に利用される。操作部は、通信部50による通信の設定に用いられる。例えば、操作部が操作されることで、通信部50は、無線通信の相手先の登録が可能となる。操作部は、プッシュスイッチである。
【0022】
通信部50は、計測部40で生成された計測情報を送信する。本実施形態では、通信部50は、無線通信によって計測部40で生成された計測情報を送信する。一例として、通信部50は、ゲートウェイ等の通信装置と無線通信が可能であって、計測情報を通信装置に送信する。通信装置に送信された計測情報は、通信装置から、予め設定された情報提示装置に無線通信又は有線通信によって送信される。そして、情報提示装置は、通信装置から受け取った計測情報を提示することができ、これによって、ユーザは、情報提示装置にて計測情報を確認することが可能となる。
【0023】
電源部60は、電子部品を基板に実装することによって、構成されている。電源部60は、一対の入力端子60a,60bと、一対の出力端子60c,60dとを備える。一対の入力端子60a,60bは、一対の電源接続端子10a,10bに電気的に接続される。一対の出力端子60c,60dは、計測部40の一対の電源接続端子40a,40bに電気的に接続される。また、一対の出力端子60c,60dは、通信部50の一対の電源接続端子50a,50bに電気的に接続される。
【0024】
電源部60は、計測部40及び通信部50に電力(動作電力)を供給する。電源部60は、一対の電源接続端子10a,10bを介して得た電力に基づいて動作電力を生成する。本実施形態では、電源部60は、入力電力を、入力電力より電圧が低い出力電力に変換して出力する。本実施形態では、入力電力は、交流電源200からの交流電力である。よって、入力電力の電圧は、実効値により評価する。また、出力電力は、計測部40及び通信部50の動作電力であって、直流電力である。このように、電源部60は、交流電源200からの入力電力(交流電力)に基づいて、計測部40及び通信部50の動作用の出力電力(直流電力)を生成し、出力する。本実施形態では、電源部60は、一対の入力端子60a,60bを介して交流電源200から得た電力(入力電力)を、計測部40及び電源部60を動作させるための出力電力に変換して、一対の出力端子60c,60dから出力することになる。一対の出力端子60c,60dから出力された出力電力(動作電力)は、一対の電源接続端子40a,40bを介して計測部40に供給され、更に、一対の電源接続端子50a,50bを介して、通信部50に供給される。このようにして、電源部60から計測部40及び通信部50に電力が供給される。
【0025】
保護部70は、一対の電源接続端子10a,10bと回路部30との間にあって、回路部30を過電圧から保護するために設けられる。本実施形態では、保護部70は、電源部60と一対の電源接続端子10a,10bとの間にある。したがって、電気機器10の回路部30の電源部60の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【0026】
本実施形態では、回路部30を構成する第1電子部品の耐圧は、分電盤100に用いられる第2電子部品の耐圧よりも低くなっている。第1電子部品は、計測部40を構成する電子部品、通信部50を構成する電子部品、及び電源部60を構成する電子部品を含み得る。第2電子部品は、分電盤100の主幹開閉器110を構成する電子部品、及び分岐開閉器120を構成する電子部品を含み得る。第1電子部品及び第2電子部品の例としては、トランジスタ、IC、ダイオード、オペアンプ、抵抗、コイル、コンデンサ、リレー、スイッチ、コネクタ等が挙げられる。
【0027】
ところで、安全規格の一つとして、過電圧カテゴリに関する規格(IEC 60664)がある。過電圧カテゴリは、機器の定格衝撃耐電圧と定格電圧に該当する公称電圧によって下表のように過電圧カテゴリI、II、III、IVと4つに分類され、公称電圧に対する定格衝撃耐電圧のレベルが設定されている。以下では、過電圧カテゴリI、II、III、IVを、CATI、II、III、IVと略称することがある。
【0028】
【表1】
【0029】
CATIは、過渡過電圧を低レベルに制限するための処置が講じられた回路に接続される機器である。例えば、絶縁型変圧器を介した電源装置等で保護された電子回路装置が挙げられる。CATIIは、固定配線設備(コンセント等)から供給されるエネルギー消費型機器である。例えば、情報処理機器、可般型工具及び家庭用機器が挙げられる。CATIIIは、機器の信頼性及び有効性が特に要求される固定配線設備中の機器である。例えば、固定設備中のスイッチ及び固定設備に永久に接続される産業用機器が挙げられる。CATIVは、引込口部で使用される機器である。例えば、1次側過電流保護装置が挙げられる。
【0030】
そして、本実施形態では、第1電子部品は、過渡電圧の許容値が第1値である第1過電圧カテゴリに対応する。また、第2電子部品は、過渡電圧の許容値が第1値より大きい第2値である第2過電圧カテゴリに対応する。ここで、第1過電圧カテゴリはCATIIを、第2過電圧カテゴリはCATIIIを想定している。保護部70は、一対の電源接続端子10a,10bを介して回路部30にかかる電圧を第1値未満に低減するように構成されている。したがって、保護部70によって、耐圧が低い電子部品を、より高い耐圧が求められる環境下でも使用可能となる。したがって、電気機器10の製造コストの低下を図ることができる。
【0031】
図2に示すように、保護部70は、複数(本実施形態では2つ)の過電圧保護要素71と、検知部72と、複数(本実施形態では2つ)の検知素子721と、報知部73と、電流制限要素74とを備える。
【0032】
複数の過電圧保護要素71は、一対の電源接続端子10a,10b間に並列的に接続される。より詳細には、過電圧保護要素71の第1端が、電源接続端子10aと電源部60の入力端子60aとの間に電気的に接続され、過電圧保護要素71の第2端が、電源接続端子10bと電源部60の入力端子60bとの間に電気的に接続される。
【0033】
複数の過電圧保護要素71の各々は、一対の電源接続端子10a,10bを介して回路部30にかかる電圧を所定電圧未満に低減する。本実施形態では、複数の過電圧保護要素71は、所定電圧が互いに等しい。つまり、複数の過電圧保護要素71は、同じ性能である。本実施形態では、複数の過電圧保護要素71の各々は、バリスタである。つまり、複数の過電圧保護要素71は、同じ部品(バリスタ)により構成されている。換言すれば、複数の過電圧保護要素71は、制限電圧が同じバリスタにより構成されている。例えば、制限電圧(すなわち、所定電圧)は、回路部30にかかる電圧を第1値未満に低減可能な値としてある。第1値は、CATIIにおいて、公称電圧300Vに対応する、2500Vであって、この場合、一例として、制限電圧が780Vのバリスタが過電圧保護要素71として利用され得る。この構成よって、保護部70は、回路部30にかかる電圧を第1値未満に低減可能である。
【0034】
検知部72は、複数の過電圧保護要素71に関する故障の検知をする。検知部72によれば、複数の過電圧保護要素71に関する故障の検知が可能となり、保護部70の修理/交換等の対処が可能となる。本実施形態では、検知部72は、複数の検知素子721を利用して、複数の過電圧保護要素71に関する故障の検知をする。複数の検知素子721は、複数の過電圧保護要素71にそれぞれ直列に電気的に接続される。検知素子721は、フォトカプラを含む。より詳細には、検知素子721では、フォトダイオードが対応する過電圧保護要素71に電気的に直列に接続され、フォトトランジスタからの出力が検知部72に与えられる。これによって、検知部72は、過電圧保護要素71が故障しているか否かの判断が可能となる。例えば、検知素子721がフォトダイオードの発光時に検知部72に検知信号を送信する場合、検知部72は検知信号の有無によって、過電圧保護要素71の故障の判断が行える。
【0035】
報知部73は、検知部72での検知の結果を報知する。報知部73によれば、複数の過電圧保護要素71に関する故障の報知が可能となり、保護部70の修理/交換等の対処を促すことができる。本実施形態では、報知部73は、表示部と音出力部とを含む。報知部73は、複数の過電圧保護要素71の少なくとも一つが故障した場合に、表示部と音出力部とを利用して報知を行う。表示部は、複数の過電圧保護要素71に関する故障を視覚的に報知する。表示部は、発光ダイオード等の発光素子を含み得る。表示部による表示態様には、例えば、点灯/消灯、発光色若しくは点灯パターン(点滅周期等)、又はこれらの組み合わせが含まれる。音出力部は、複数の過電圧保護要素71に関する故障を聴覚的に報知する。音出力部は、例えば、スピーカ又はブザー等で実現される。音出力部は、例えば、ビープ音を出力し、出力音であるビープ音の態様によって、複数の過電圧保護要素71に関する故障を報知する。ビープ音の態様には、一例として、「ピッ」、「ピピッ」又は「ピーピー」といった態様が含まれる。ただし、音出力部は、ビープ音に限らず、ビープ音と共に又はビープ音に代えて、音声又はメロディを出力してもよい。
【0036】
電流制限要素74は、複数の過電圧保護要素71と一対の電源接続端子10a,10bの一方との間に電気的に接続される。本実施形態では、電流制限要素74は、複数の過電圧保護要素71と電源接続端子10aとの間に電気的に接続される。電流制限要素74は、複数の過電圧保護要素71の少なくとも一つの短絡故障時に、外部電源である交流電源200から回路部30に供給される電流の制限をするように構成される。したがって、電流制限要素74によれば、複数の過電圧保護要素71のいずれかの短絡故障時に、電気機器10の回路部30の保護を図ることができる。ここで、電流の制限は、電流を0にすることを含む。本実施形態では、電流制限要素74は、ヒューズを含む。ヒューズが溶断する電流値は、交流電源200の電圧値、回路部30の耐圧等を考慮して適宜設定される。
【0037】
以上述べた、保護部70は、分電盤100に設置される電気機器10に用いられる過電圧保護装置である。つまり、保護部70は、分電盤100に設置される電気機器10に用いられる過電圧保護装置70であって、複数の過電圧保護要素71を備える。複数の過電圧保護要素71は、外部電源200が電気的に接続される一対の電源接続端子10a,10bと、一対の電源接続端子10a,10bを介して外部電源200から電力を得る回路部30との間にある。複数の過電圧保護要素71は、一対の電源接続端子10a,10b間に並列的に接続される。この過電圧保護装置によれば、電気機器10の回路部30の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【0038】
(2)変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
【0039】
一変形例では、電気機器10の構成部材の形状は、必ずしも、上記実施形態の形状に限定されず、電気機器10のデザインや仕様要求等に応じて適宜変更可能である。例えば、筐体20は、全体として、円形や多角形の箱状であり得る。また、電気機器10の構成部材の数は、構成部材の用途に応じて変更可能である。
【0040】
一変形例では、回路部30は、計測部40、通信部50、及び電源部60に加えて他の回路要素を有し得る。また、回路部30は、必ずしも、計測部40と通信部50と電源部60とを含む必要はなく、回路部30は、電気機器10の種類等に応じて適宜変更され得る。
【0041】
一変形例では、計測部40は、電流センサ以外のセンサに対応するように構成されていてよい。つまり、センサ300は、電流センサに限定されない。例えば、センサ300は、温度センサ、湿度センサ、気体や液体等の流体の流量センサ、電磁波センサ、人感センサ、イメージセンサ、超音波センサ等の種々のセンサから選択され得る。計測部40は、センサ300に応じて処理内容が設定され得る。
【0042】
一変形例では、通信部50は、有線通信によって計測部40で生成された計測情報を送信してもよい。通信部50が有線通信をする場合、アンテナ及び操作部は必須ではない。
【0043】
一変形例では、電源部60は、交流電源200の他にも、太陽電池や、蓄電池、燃料電池等の外部電源に対応するように構成されていてもよい。
【0044】
一変形例では、保護部70は、複数(本実施形態では2つ)の過電圧保護要素71のみを備えていてもよい。つまり、検知部72と、複数(本実施形態では2つ)の検知素子721と、報知部73と、電流制限要素74とは任意の要素であり得る。また、過電圧保護要素71の数は2つではなく、3以上であってもよい。また、過電圧保護要素71のパラメータ(バリスタの制限電圧)等は、電気機器10の使用態様に応じて適宜設定され得る。また、検知素子721は、フォトカプラに限らず、過電圧保護要素71に電流が流れているかどうかを検出可能な素子であってもよい。また、検知素子721は過電圧保護要素71と一対一に対応している必要はない。また、報知部73は、必ずしも、表示部と音出力部との両方を含む必要はなく、表示部と音出力部との少なくとも一方を含んでいてよい。また、電流制限要素74は、ヒューズに限らず、PTCサーミスタ等であってもよい。
【0045】
(3)態様
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0046】
第1の態様は、分電盤(100)に設置される電気機器(10)であって、一対の電源接続端子(10a,10b)と、回路部(30)と、保護部(70)とを備える。前記一対の電源接続端子(10a,10b)は、外部電源(200)が電気的に接続される。前記回路部(30)は、前記一対の電源接続端子(10a,10b)を介して前記外部電源(200)から電力を得る。前記保護部(70)は、前記一対の電源接続端子(10a,10b)と前記回路部(30)との間にあって、前記回路部(30)を過電圧から保護する。前記保護部(70)は、前記一対の電源接続端子(10a,10b)間に並列的に接続される複数の過電圧保護要素(71)を有する。この態様によれば、電気機器(10)の回路部(30)の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【0047】
第2の態様は、第1の態様に基づく電気機器(10)である。第2の態様では、前記複数の過電圧保護要素(71)は、同じ性能である。この態様によれば、電気機器(10)の回路部(30)の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【0048】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく電気機器(10)である。第3の態様では、前記複数の過電圧保護要素(71)の各々は、前記一対の電源接続端子(10a,10b)を介して前記回路部(30)にかかる電圧を所定電圧未満に低減する。前記複数の過電圧保護要素(71)は、前記所定電圧が互いに等しい。この態様によれば、電気機器(10)の回路部(30)の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【0049】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか一つに基づく電気機器(10)である。第4の態様では、前記複数の過電圧保護要素(71)の各々は、バリスタである。この態様によれば、電気機器(10)の回路部(30)の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【0050】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか一つに基づく電気機器(10)である。第5の態様では、前記回路部(30)を構成する第1電子部品の耐圧は、前記分電盤(100)に用いられる第2電子部品の耐圧よりも低い。この態様によれば、電気機器(10)の製造コストの低下を図ることができる。
【0051】
第6の態様は、第5の態様に基づく電気機器(10)である。第6の態様では、前記第1電子部品は、過渡電圧の許容値が第1値である第1過電圧カテゴリに対応する。前記第2電子部品は、過渡電圧の許容値が前記第1値より大きい第2値である第2過電圧カテゴリに対応する。前記保護部(70)は、前記一対の電源接続端子(10a,10b)を介して前記回路部(30)にかかる電圧を前記第1値未満に低減する。この態様によれば、電気機器(10)の製造コストの低下を図ることができる。
【0052】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく電気機器(10)である。第7の態様では、前記保護部(70)は、前記複数の過電圧保護要素(71)に関する故障の検知をする検知部(72)を含む。この態様によれば、複数の過電圧保護要素(71)に関する故障の検知が可能となり、保護部(70)の修理/交換等の対処が可能となる。
【0053】
第8の態様は、第7の態様に基づく電気機器(10)である。第8の態様では、前記保護部(70)は、前記検知部(72)での検知の結果を報知する報知部(73)を含む。この態様によれば、複数の過電圧保護要素(71)に関する故障の報知が可能となり、保護部(70)の修理/交換等の対処を促すことができる。
【0054】
第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか一つに基づく電気機器(10)である。第9の態様では、前記保護部(70)は、前記複数の過電圧保護要素(71)と前記一対の電源接続端子(10a,10b)の一方との間に電気的に接続される電流制限要素(74)を有する。この態様によれば、複数の過電圧保護要素(71)のいずれかの短絡故障時に、電気機器(10)の回路部(30)の保護を図ることができる。
【0055】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づく電気機器(10)である。第10の態様では、前記回路部(30)は、前記一対の電源接続端子(10a,10b)を介して得た電力に基づいて動作電力を生成する電源部(60)を含む。前記保護部(70)は、前記電源部(60)と前記一対の電源接続端子(10a,10b)との間にある。この態様によれば、電気機器(10)の回路部(30)の電源部(60)の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【0056】
第11の態様は、第10の態様に基づく電気機器(10)である。第11の態様では、前記回路部(30)は、センサ(300)からのセンシング情報に基づいて所定の物理量に関する計測情報を生成する計測部(40)を含む。この態様によれば、電気機器を計測装置として利用可能となる。
【0057】
第12の態様は、分電盤(100)に設置される電気機器(10)に用いられる過電圧保護装置(70)であって、複数の過電圧保護要素(71)を備える。前記複数の過電圧保護要素(71)は、外部電源(200)が電気的に接続される一対の電源接続端子(10a,10b)と、前記一対の電源接続端子(10a,10b)を介して前記外部電源(200)から電力を得る回路部(30)との間にある。前記複数の過電圧保護要素(71)は、前記一対の電源接続端子(10a,10b)間に並列的に接続される。この態様によれば、電気機器(10)の回路部(30)の過電圧からの保護の性能を向上できる。
【符号の説明】
【0058】
10 電気機器
10a,10b 電源接続端子
30 回路部
40 計測部
60 電源部
70 保護部
71 過電圧保護要素
72 検知部
73 報知部
74 電流制限要素
100 分電盤
200 交流電源(外部電源)
図1
図2