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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20240906BHJP
【FI】
G01F1/66 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021050923
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149008
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 良平
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103149(JP,A)
【文献】特開2005-043207(JP,A)
【文献】特開2019-196905(JP,A)
【文献】特開2021-018129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66-1/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測流体が流れる矩形断面の計測流路と、
前記計測流路の上流と下流に配置した一対の超音波送受波器と、
一方の前記超音波送受波器から他方の前記超音波送受波器への超音波の伝搬時間を計測する計測部と、
前記計測部で計測された伝搬時間に基づいて前記被計測流体の流速や流量を演算する演算部と、
前記計測流路に、前記被計測流体の流れ方向に沿って平行となるように配置して前記計測流路を複数の分割流路とするための仕切り板と、を備え、
前記一対の超音波送受波器は、前記計測流路の第1の面に設けられ、
前記一対の超音波送受波器のうち一方の前記超音波送受波器が送信した前記超音波は、第1の伝搬経路を通過して、前記第1の面に対向する第2の面で反射されて、他方の前記超音波送受波器で受信され、
前記一対の超音波送受波器のうち他方の前記超音波送受波器が送信した前記超音波は、第2の伝搬経路を通過して前記第2の面で反射されて、一方の前記超音波送受波器で受信され、
前記仕切り板は、一方の前記超音波送受波器から他方の前記超音波送受波器へ超音波が正規の経路で伝搬する正規伝搬経路を短絡し、前記第1の伝搬経路と前記第2の伝搬経路と前記第1の面とで形成される領域である短絡経路に前記分割流路間を連通する切欠部または開口部を設け、前記短絡経路とは異なる領域には前記切欠部及び前記開口部を設けていないことを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記開口部は、前記仕切り板の前記短絡経路における開口比率が20%以上であることを特徴とする請求項1記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記開口部は、開口を複数個設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記開口部は、微細穴を多数設けた多孔体、若しくはメッシュ体として形成したことを
特徴とする請求項1または2に記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記仕切り板を複数設け、前記開口部の有無または形状の違いにより、複数の種類の仕切り板を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を多層に分割した構成で流量を計測する超音波流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の超音波流量計として、図6に示されるような、被計測流体が流れる流路105を仕切り板109により多層に分割して被計測流体の流量を計測する構成で、一方の超音波送受波器116から送信された超音波が流路105の底板部107で反射して他方の超音波送受波器117に受信されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示された超音波流量計では、正規伝搬経路124、125に対して反射せずに他方の超音波送受波器に伝搬する短絡経路Rを有する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-103149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、V字型などのように、一方の超音波送受波器116から送信された超音波が、流路105の底板部107で反射して他方の超音波送受波器117に達する正規伝搬経路124、125と、反射せずに他方の超音波送受波器117に達する短絡経路Rとが存在するので、送信された超音波は、正規伝搬経路124、125を通過する正規の受信信号と、短絡経路Rを通過する回折波信号が干渉することによって受信信号に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
【0006】
特に、空気、或いは都市ガスやLPガスに比べ音速が速く長波長となる水素などが被計測流体である場合は、空気、或いは都市ガスやLPガスなどと比較して回折が起こりやすいことが知られており、回折波信号の干渉によって正規の受信信号に悪影響を及ぼし、流量測定精度を低下させてしまう課題を有していた。
【0007】
なお、図6において、説明のために短絡経路Rを点線で示しているが、実際の短絡経路は、正規伝搬経路124、125と流路105の内壁面105aで囲まれた三角形の領域全体の部分となる。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、V字型などのような正規伝搬経路に対して短絡経路を有する場合において、正規伝搬経路を通過した正規の受信信号に対して、短絡経路を通過した回折波信号の干渉による悪影響を極小化することができ、音速が速く長波長となる水素環境下などにおいても、高精度の流量測定を実現することができる超音波流量計の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波流量計は、被計測流体が流れる矩形断面の計測流路と、前記計測流路の上流と下流に配置した一対の超音波送受波器と、一方の前記超音波送受波器から他方の前記超音波送受波器への超音波の伝搬時間を計測する計測部と、前記計測部で計測された伝搬時間に基づいて前記被計測流体の流速や流量を演算する演算部と、前記計測流路に、前記被計測流体の流れ方向に沿って平行となるように配置して前記計測流路を複数の分割流路とするための仕切り板と、を備え、前記一対の超音波送受波器は、前記計測流路の第1の面に設けられ、前記一対の超音波送受波器のうち一方の前記超音波送受波器が送信した前記超音波は、第1の伝搬経路を通過して、前記第1の面に対向する第2の面で反射されて、他方の前記超音波送受波器で受信され、前記一対の超音波送受波器のうち他方の前記超音波送受波器が送信した前記超音波は、第2の伝搬経路を通過して前記第2の面で反射されて、一方の前記超音波送受波器で受信され、前記仕切り板は、一方の前記超音波送受波器から他方の前記超音波送受波器へ超音波が正規の経路で伝搬する正規伝搬経路を短絡し、前記第1の伝搬経路と前記第2の伝搬経路と前記第1の面とで形成される領域である短絡経路に前記分割流路間を連通する切欠部または開口部を設け、前記短絡経路とは異なる領域には前記切欠部及び前記開口部を設けていないことを特徴とすることで、音速が速く長波長となる水素環境下などにおいても、高精度の流量測定を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波流量計によると、超音波の正規伝搬経路に対する短絡経路部分について、仕切り板上に分割流路間を連通する開口部を設けることによって、正規伝搬経路を通過した正規の受信信号に対して、正規伝搬経路を短絡する回折波信号の干渉による悪影響を極小化することができるため、音速が速く長波長となる水素環境下などにおいても、精度が高い超音波流量計を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1における超音波流量計の流路部の断面斜視図
図2】本発明の実施の形態1における超音波流量計の流路部の側面図
図3】本発明の実施の形態1における超音波流量計の構成を示す断面図
図4】(a),(b)本発明の実施の形態1における開口部の詳細図
図5】本発明の実施の形態2における開口部の他の構成を示す詳細図
図6】(a)従来の超音波流量計における超音波流量計の構成を示す断面図、(b)同側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、被計測流体が流れる矩形断面の計測流路と、前記計測流路の上流と下流に配置した一対の超音波送受波器と、一方の前記超音波送受波器から他方の前記超音波送受波器への超音波の伝搬時間を計測する計測部と、前記計測部で計測された伝搬時間に基づいて前記被計測流体の流速や流量を演算する演算部と、前記計測流路に、前記被計測流体の流れ方向に沿って平行となるように配置して前記計測流路を複数の分割流路とするための仕切り板と、を備え、前記仕切り板は、一方の前記超音波送受波器から他方の前記超音波送受波器へ超音波が正規の経路で伝搬する正規伝搬経路を短絡する短絡経路に前記分割流路間を連通する切欠部または開口部を設けたことを特徴とすることで、正規伝搬経路を通過した正規の受信信号に対して、短絡経路を通過する回折波信号の干渉による悪影響を極小化することができるため、音速が速く長波長となる水素環境下などにおいても、精度が高い超音波流量計を構築することができる。
【0013】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記開口部は、仕切り板の前記短絡経路部分における開口比率が20%以上であることを特徴とすることで、回折波信号のうち、仕切り板で反射して超音波送受波器の受信側に到達する回折反射信号の割合を低減することで、正規受信波形に干渉して悪影響を及ぼす回折波信号の振幅を極小化することができるため、音速が速く長波長となる水素環境下などにおいても、精度がより高い超音波流量計を構築することができる。
【0014】
第3の発明は、特に第1または2の発明において、前記開口部は、開口を複数個設けたことを特徴とすることで、超音波伝搬の反射や拡散による受信信号の減衰を抑制でき、さらに開口部の分散により流れの乱れが分散され、各分割流路での流れが安定化し、精度良い流量計測が実現できる。
【0015】
第4の発明は、特に第1または2の発明において、前記開口部は、微細穴を多数設けた多孔体、若しくはメッシュ体として形成したことを特徴とすることで、開口の形状として
微細な形状設定が可能となり、超音波の減衰の抑制と流れの安定化を両立できる。
【0016】
第5の発明は、特に第1~4のいずれか1つの発明において、前記仕切り板を複数設け、前記開口部の有無または形状の違いにより、複数の種類の仕切り板を有することを特徴とすることで、開口部による流れの乱れの影響を最小化し、超音波の減衰の抑制と流れの安定化を両立できる。
【0017】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0018】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0019】
(実施の形態1)
実施の形態1について、図1図4を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態1における超音波流量計の流路部の概略構成を示す断面斜視図、図2図1におけるB-B断面図で流路部の断面を示している。
【0021】
図1および図2において、流路部1は、被計測流体が流れる矩形断面の筒状流路2を有しており、筒状流路2は、第1の面11、第2の面16、第1の側面25、第2の側面26で囲まれた構成で、内部は被計測流体の流れ方向に沿って平行となるように配置した仕切り板3A~3Hにより、矩形断面の分割流路6A~6Iに分割され、全体として多層流路10を形成している。
【0022】
図1は、図2の分割流路6Eの位置での断面を示したもので、分割流路6Eでは仕切り板3A~3Dと向き合う筒状流路2を形成する面でもある図面手前側の面(図2の第1の側面25)は描かれていない。
【0023】
筒状流路2の分割流路6A~6Iに臨み、対向する2面の一つである上面の第1の面11には上流側の超音波送受波器12および下流側の超音波送受波器13が配置されている。この第1の面11は、第1の超音波通過窓14および第2の超音波通過窓15を有している。また、分割流路6A~6Iに臨み、対向する2面の一つである下面の第2の面16は超音波の反射面として作用するように構成されている。
【0024】
この一対の超音波送受波器12、13および多層流路10により 超音波が伝搬する計測流路17を形成しており、超音波送受波器12から送信された超音波は伝搬経路P1を通過して第2の面16に達した後、反射されて伝搬経路P2を通過して超音波送受波器13で受信され、逆に超音波送受波器13から送信された超音波は伝搬経路P2を通過して第2の面16に達した後、反射されて伝搬経路P1を通過して超音波送受波器12で受信される。
【0025】
また、仕切り板3A~3Hには、開口部18を図3に示す超音波の伝搬経路P1、P2を短絡する領域(伝搬経路P1、P2と第1の面11で囲まれた三角形の領域)に設けており、この開口部18により隣接する分割流路は互いに連通している。以降、伝搬経路P1、P2を正規伝搬経路、短絡する領域を伝搬する経路を短絡経路Rと表記することがある。
【0026】
ここで、分割流路6A、および分割流路6Iは、それぞれ、もっとも外側に位置しているため、外側流路とも称する。また、分割流路6B~6Hは、それぞれ、内側に位置しているため、内側流路とも称する。
【0027】
図3は、超音波流量計30の構成を図1のA-A断面と共に示した図である。なお、計測回路(計測部)28と演算回路(演算部)29は、回路基板(図示せず)上に搭載されているものであり、説明の為、図に示すように、取り出して表記している。
【0028】
前述のように正規伝搬経路P1、P2で示した矢印は超音波の伝搬経路であり、超音波は計測流路17を横切るように伝搬する。なお、矢印の方向は上流側の超音波送受波器12から超音波を発信して、下流側の超音波送受波器13で受信する場合を示したもので、下流側の超音波送受波器13から超音波を発信して上流側の超音波送受波器12で受信する場合は矢印方向が逆になる。
【0029】
第1の超音波送受波器12、および第2の超音波送受波器13からの信号は計測部である計測回路28にて伝搬時間測定等の処理をされ、さらに演算部である演算回路29で既知の方法により被計測流体の流速や流量等の演算が実行される。
【0030】
図4は、仕切り板3A~3Hに設けた開口部18の詳細を示したものである。開口部18は、超音波の正規伝搬経路P1,P2の短絡経路Rに相当する部分であり、正規伝搬経路P1,P2、および第1の面11に囲まれた領域である。
【0031】
図4(a)は、第2の仕切り板3Bでの詳細図であり、開口部18の形状の一例を示している。開口部18は微細穴24を多数設けた多孔体22で形成したものである。なお、微細穴24の孔径及び間隔は必要な整流効果を維持できる間隔に調整される。多孔体22としては、機械的に多数の孔を開けたパンチング板や、化学的に微細な多数の孔を開けたエッチング板などを利用することで、製造性を高めることができる。
【0032】
図4(b)は、開口部18の形状を示す他の例であり、金網のようなメッシュ体23で形成したものである。メッシュ体23のメッシュ数や開口率については、必要な整流効果を維持できる範囲内に設定する必要がある。
【0033】
次に、本発明の超音波流量計の動作について説明する。
【0034】
図3において、入口部21より筒状流路2へ流入する流れは、仕切り板3A~3Hにより、分割流路6A~6Iへ分流して流れる。
【0035】
この分割流路6A~6I内の計測流路17の流れを横切るように超音波送受波器12と超音波送受波器13の間で第2の面16で超音波を反射させて超音波の送信受信を繰り返し、伝搬時間の計測を行う。
【0036】
一方の超音波送受波器12(または超音波送受波器13)から送信された超音波信号は、一方の超音波通過窓14(または超音波通過窓15)を通過して、分割流路6A~6I内に入った後、第2の面16で反射して他方の超音波通過窓15(または超音波通過窓14)を通過し、他方の超音波送受波器13(または超音波送受波器12)に到達する。その間、仕切り板3A~3H、第1の側面25、第2の側面26で多重の反射を繰り返す。
【0037】
一方、正規伝搬経路P1,P2を短絡する短絡経路Rを通過する回折波信号については、開口部18によって反射面に衝突する割合を少なくし、多重の反射による回折波信号の振幅を低減することができる。そして、正規伝搬経路P1,P2を通過した正規の受信信
号に対して、短絡経路Rを通過する回折波信号の干渉による悪影響を極小化することができるため、計測精度が向上する。
【0038】
しかし、超音波の伝搬経路領域において分割流路の壁面が全域にわたり全て開口していると、超音波の多重反射はなくなるものの流れの整流効果が低減し、分割流路6A~6I間での流速分布の相違や変動をもたらして、計測精度や計測可能領域が低下する。
【0039】
そこで、各仕切り板3A~3Hでの開口部18を正規伝搬経路P1,P2、および第1の面11に囲まれた範囲として、この範囲に微細孔を複数個設けたり、メッシュとすることで流れの整流効果を維持し、回折波信号の低減と流れの整流効果の維持を両立できる。このため、超音波伝搬における回折波信号を低減することができ、さらに開口部18の開口の分散により流れの乱れが分散され、各分割流路での流れが安定化し、精度良い流量計測が実現できる。
【0040】
なお、正規伝搬経路P1,P2を通過した正規の受信信号に対する短絡経路Rを通過する回折波信号の干渉による影響を低減するには、短絡経路Rの領域における開口部の開口比率は20%以上であることが好ましい。
【0041】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図5を参照しながら説明する。
【0042】
図5(a)は、本発明の実施の形態2における開口部18の他の構成を示すもので、実施の形態1と同じ機能のものは同一番号で示している。
【0043】
本実施の形態においては、開口部18の範囲として、超音波の正規伝搬経路P1,P2および第1の面11に囲まれた短絡経路に相当する部分の内、超音波送受波器12と超音波送受波器13間の最短の短絡経路である第1の面11近傍のみに限定し、複数の開口31を設けている。
【0044】
ここで、一方の超音波送受波器12(または超音波送受波器13)から送信された超音波信号は、一方の超音波通過窓14(または超音波通過窓15)を通過して、分割流路6A~6I内に入った後、第2の面16で反射して他方の超音波通過窓15(または超音波通過窓14)を通過し、他方の超音波送受波器13(または超音波送受波器12)に到達する。その間、仕切り板3A~3H、第1の側面25、第2の側面26で多重の反射を繰り返す。
【0045】
一方、他方の超音波送受波器13(または超音波送受波器12)に到達する回折波信号として、一方の超音波送受波器12(または超音波送受波器13)から送信された後、一方の超音波通過窓14(または超音波通過窓15)を通過する際に、超音波通過窓14の端部19(または超音波通過窓15の端部20)で回折して、最短経路部分を通って、他方の超音波通過窓15の端部20(または超音波通過窓14の端部19)で再度回折して、他方の超音波送受波器13(または超音波送受波器12)に到達する回折波信号が存在する。その間、仕切り板3A~3H、第1の側面25、第2の側面26で多重の反射を繰り返す。
【0046】
開口部18では反射面に衝突する面積が減るので多重の反射による回折波信号を低減することができるが、本実施の形態では、仕切り板3A~3Hのうち、開口部18を最短経路部分となる各超音波通過窓の端部19―端部20間近傍に限定することにより、回折波信号を低減することができると共に、分割流路の壁面全体に対する開口割合が少ないため、流れの整流効果の悪化を抑えることができ、精度良い流量計測が実現できる。
【0047】
図5(b)は、仕切り板3A~3Hの他の構成を示す例であり、図5(a)に示す開口部18を第1の面11側に拡大して1つの凹形状の切欠部32としたものである。この形状とすることにより、仕切り板3Eの形状が簡素となり加工性が向上すると共に、回折波信号を低減する効果を得ることができる。
【0048】
また、図5(c)に示すように、仕切り板3Eに複数の切欠部33を設けるようにしても図5(b)と同様に回折波信号を低減する効果を得ることができる。
【0049】
以上の実施の形態1および実施の形態2で示したように、仕切り板は超音波の正規伝搬経路P1,P2に対する短絡経路Rに開口部18を設けたもので、開口部18を上記した構成とするとともに、計測流路17の対向する2面のいずれか1面の側である第1の面11に第1の超音波送受波器12、第2の超音波送受波器13が設置され、第1の超音波送受波器12、第2の超音波送受波器13の内のいずれか一方の超音波送受波器の発信した超音波が、第1の面11に対向する第2の面16において一回以上反射し他方の超音波送受波器が受信するように構成することで、正規伝搬経路を通過した正規の受信信号に対して、正規伝搬経路を短絡する回折波信号の干渉による悪影響を極小化することができ、音速が速く長波長となる水素環境下などにおいても、精度が高い超音波流量計を構築することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態において、一対の超音波送受波器12、13の配置として、ここでは第2の面16で1回超音波を反射させるV字型の超音波伝搬経路をなす構成にて説明したが、これに限るものではなく、第2の面16で2回超音波を反射させ第1の面11で1回超音波を反射させるW字型の超音波伝搬経路(図示せず)をなす構成など、第2の面16で1回以上反射し、超音波の正規伝搬経路P1,P2に対する短絡経路Rを有するような他の構成であってもよい。
【0051】
また、計測流路17として、多層流路10のすべての層を用いる構成を例示したが、サイズの大きい計測流路では、多層流路10の内の一部の一層のみを用いる構成でも良く、また、超音波の伝搬面が複数層にまたがっても、同様の効果を得ることができるものである。
【0052】
なお、図1では仕切り板3A~3Hすべてに開口部を設けているが、正規伝搬経路P1,P2を短絡する回折波信号が流量測定精度に及ぼす影響が小さく、流量測定精度を確保できる条件を満たせば、最小枚数のみに開口部を設けても差し支えない。また、開口部18に設けた開口の形状についても同様の条件を満たせば記載した限りではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明の超音波流量計は、超音波の正規伝搬経路を短絡する回折波信号の干渉による悪影響を極小化することにより、音速が速く長波長で回折が起こりやすい水素環境下などにおいても、超音波の伝搬時間を精度よく計測できるため流量を精度よく測定することができる。
【0054】
これにより、従来の都市ガスやLPガス用の流量計測のみならず、水素の流量計測においても、超音波信号を安定させることが実現できる。また、この方法の採用により、水素用のガスメータや計測器としての応用が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
3A~3H 仕切り板
6A~6I 分割流路
10 多層流路
11 第1の面
12、13 超音波送受波器
16 第2の面
17 計測流路
18 開口部
22 多孔体
23 メッシュ体
24 微細穴
28 計測回路(計測部)
29 演算回路(演算部)
30 超音波流量計
31 開口
32、33 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6