(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】保冷容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/18 20060101AFI20240906BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B65D81/18 B
A61J3/00 300A
(21)【出願番号】P 2018166522
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-04-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】北野 智章
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 優大
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 秀司
(72)【発明者】
【氏名】小島 真弥
【合議体】
【審判長】岩谷 一臣
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-243340(JP,A)
【文献】特開2017-150729(JP,A)
【文献】特開2017-56017(JP,A)
【文献】登録実用新案第3174797(JP,U)
【文献】特開2013-203461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0328644(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0291584(US,A1)
【文献】中国実用新案第203958959(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
F25D 1/00- 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装部材と、前記包装部材に収納された
金属または樹脂からなる伝熱体と、この伝熱体の表面に設けた蓄冷剤と、前記伝熱体および前記蓄冷剤を透明な包装部材にて包装されてなる壁体を有し、前記蓄冷剤は、前記包装部材の内部において、前記伝熱体よりも外側に配置され、前記壁体の厚み方向から見た場合に、前記伝熱体の面積は前記蓄冷剤の面積よりも大きく、前記蓄冷剤と前記伝熱体とが密着しており、前記包装部材と前記伝熱体とが直接接触しており、前記包装部材を通して目視で前記蓄冷剤の融解度合いが確認できるように構成された収納箱を
収納した保冷容器。
【請求項2】
前記壁体は、少なくとも、脱着可能な固定部材または前記包装部材にて隣り合う前記壁体と連結されてなる請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
少なくとも前記蓄冷剤を覆う部分の包装部材は、透明な樹脂である請求項1または2に記載の保冷容器。
【請求項4】
収納箱内部に物理量センサを設けた請求項1~3のいずれか一項に記載の保冷容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収納箱に関し、特に、収納物を所望の温度に管理することに適した収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収納物を所望の温度域で管理するために断熱性容器が用いられている。この断熱性容器には、例えば、真空断熱材等の断熱材料が用いられ、所望の温度域で保管が可能となるよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その収納物が治験薬の場合、例えば、2℃~8℃の温度域での保管が必要であるが、収納箱内部のある箇所でこの温度域に入っていたとしても、別の箇所でこの温度域から外れた場合にはその収納物が廃棄処分となってしまう。したがって、収納箱内部の温度分布をできるだけ抑えることが重要である。
【0005】
収納箱内部の温度分布は、一般的に、収納箱の天面部と底部で大きく温度差が発生し、天面部の温度が高くなる。
【0006】
本発明は、この温度差に着目してなされたものであり、温度差を抑制することで収納箱内部の温度をより均一にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、伝熱体と、この伝熱体の表面に設けた蓄冷剤と、前記伝熱体および前記蓄冷剤を包装部材にて包装されてなる壁体を有し、前記蓄冷剤を外側に配して構成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
蓄冷剤の冷気が伝熱体全体に広がるとともに、収納箱内部の空気が伝熱体と接触することで天面部と底面部との温度分布が伝熱体でより均一化され、その結果、収納箱内部の温度をより均一に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1における収納箱の概略斜視図
【
図6】(a)~(c)は、薬品を収納した実施の形態1における同収納箱をさらに保冷容器に収容する説明のための断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第一の発明は、伝熱体と、この伝熱体の表面に設けた蓄冷剤と、前記伝熱体および前記蓄冷剤を包装部材にて包装されてなる壁体を有し、前記蓄冷剤を外側に配して構成されたものであり、これにより、蓄冷剤からの冷気が伝熱体全体に広がり、その伝熱体を通じて収納箱内部に冷気を伝えることになるため、収納箱内部の温度をより均一に保つことができる。
【0011】
本発明の第二の発明は、第一の発明の壁体は、少なくとも、脱着可能な固定部材または前記包装部材にて隣り合う前記壁体と連結されてなるものであり、これにより収納箱を折り畳むことが可能となり、蓄冷剤を冷却する際、収納箱を折り畳んだ状態で冷却装置に投入できるため冷却装置内のスペースを有効に活用することができるとともに、一つ一つの蓄冷剤を包装部材から取り出す必要もなく、また冷却完了した蓄冷剤を一つ一つ包装部材に収める必要もなくなるため、冷却作業を簡便にすることができる。
【0012】
本発明の第三の発明は、第一または第二の発明の、少なくとも前記蓄冷剤を覆う部分の包装部材は、透明な樹脂としたものであり、これにより包装部材を通して目視で蓄冷剤の融解度合いを確認することができる。
【0013】
本発明の第四の発明は、収納箱内部に物理量センサを設けたものであり、これにより収納箱内部の環境状況をモニター、管理することができる。
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における収納箱の概略斜視図、
図2は、同収納箱の断面図、
図3は、同収納箱の展開図、
図4は、
図3におけるA-A線の断面図、
図5は、同収納箱を折りたたんだ状態の断面図である。
【0015】
本実施の形態1における収納箱1は、
図4に示すように、一つの面が、伝熱体1cの表面に蓄
冷剤1bを設けて包装部材1aで包装した壁体10からなっており、この壁体10が6面で収納箱1を形成している。
【0016】
ここで蓄冷剤1bは、収納箱1の外側に配置される。これは、蓄冷剤1bの冷気がより均一に収納箱1内部に伝わるようにするためである。すなわち、伝熱体1cがなければ蓄冷剤1bの冷気は収納箱1の底部に一方的に流れていくため、結果、天面部と底部との温度差が開いてしまう。そこで伝熱体1cを設けることにより、蓄冷剤1bの冷気が伝熱体1c全体に広がるとともに、収納箱1内部の空気が伝熱体1cと接触することで天面部と底面部との温度分布が伝熱体でより均一化され、その結果として、収納箱1内部の温度をより均一に保つことができる。
【0017】
加えて、蓄冷剤1bを収納箱1の外側に配置することで、収納箱1の内部が隅々まで見通せることができる。蓄冷剤1bを収納箱1の内側に配置した場合、収納物が蓄冷剤1bの陰になりその存在を見落とす虞がある。特に、収納物が小さい薬品ビンの場合、このようなミスが発生しやすい。しかし、本実施に形態1の収納箱1は、収納した薬品ビンが蓄冷剤の陰になることはなく、視認性が高い構成となっていることも特徴である。
【0018】
さらに、蓄冷剤1bを収納箱1の外側に配置し、少なくとも前記蓄冷剤1bを覆う部分の包装部材1aを透明な樹脂とすることで、包装部材1aを通して目視で蓄冷剤1bの融解度合いを確認することができる。
【0019】
温度管理をする上で蓄冷剤の融解度合いを把握することは重要なことであるが、収納箱を開けて中にある蓄冷剤を確認することは、内部温度の上昇をもたらすと共に不要な振動、光等を薬品等に与えてしまいかねないため現実には難しい。
【0020】
しかし、本実施の形態1における収納箱1の場合、収納箱1を開けることなく包装部材1aを通して目視で蓄冷剤1bの融解度合いを確認することができるため、融解度合いを確認できない不安感を解消することができる。
【0021】
伝熱体1cとしては、金属(例えば、アルミニウム、銅)、または、樹脂(例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂)などを用いることができ、より伝導度の高い材料を用いることが望ましい。
【0022】
収納箱1は折り畳むことが可能である。
図3に示すように、各壁体10は、少なくとも、包装部材1aもしくは脱着可能な固定部材1dで連結されているので、固定部材1dを外すことで簡単に展開、折り畳むことができ、また簡単に収納箱に組み立てることができる。
【0023】
固定部材1dとしては面状テープを用いることができ、蓄冷剤1bや伝熱体1cの重量、厚み等に応じて固定部材1dの大きさ、壁体10の連結場所等を設定すればよい。
【0024】
蓄冷剤は、一般的には、使用前に冷却装置で冷却を行い、収納箱を使用する際、蓄冷剤を収納箱に設置するが、本実施の形態1における収納箱1は、蓄冷剤1bを壁体10に設置した状態で収納箱1を折り畳むことができる。例えば、
図5に示すように、蓄冷剤1bが縦に配列するよいうに折り畳むことができる。冷却装置の内部の高さスペースの制限が厳しい場合は、蓄冷剤1bが2列に縦方向に配列するように折り畳むことで高さを抑えることができる。
【0025】
いずれにしても、一つ一つの蓄冷剤を包装部材から取り出す作業が必要なく、また冷却完了した蓄冷剤を一つ一つ包装部材に収める必要もなくなるため、冷却作業を簡便かつ効率的に行うことができる。なお、本実施の形態1における収納箱1には蓄冷剤1bを出し入れするための開口部は図示していないが、管理すべき温度域に応じて蓄冷剤を適宜選択するため、あるいは、蓄冷剤の点検等により出し入れが必要なため、前記開口部を壁体10、例えば、収納箱1の天面方向に開口するよう包装部材1aに設ければよい。その際、上述した収納箱1内部の温度をより均一にするために蓄冷剤1bと伝熱体1cの密着性を阻害することがないよう、前記開口部に上述した固定部材等を設けて密着性を維持または向上できるようにすることが望ましい。
【0026】
本実施の形態1における収納箱1は、さらに保冷容器に収納することも可能である。これにより、収納箱の温度をより均一に長時間維持することが可能となる。
【0027】
図6は、薬品ビンを収納した実施の形態1における収納箱をさらに保冷容器に収容する様子を模式的に示した図である。
【0028】
薬品ビン20を収納した収納箱1を保冷容器30の収納部に収納し、蓋31をしてこの蓋31が開かないよう外装ケース32のファスナー32でしっかりと閉じる。
【0029】
なお、収納箱1には、収納物の運搬中の収納箱内部の環境変化を記録するため、物理量センサ(例えば、温度センサ、振動センサ、光センサ等単体もしくはそれらの複合センサ)を収納箱に設けることも可能である。その場合は、一番温度が高いと考えられる箇所(例えば、収納箱内部の天面部)に設けることが望ましい。併せて、前記物理量センサからの測定データを外部機器に送信するために、有線、または無線手段を使うことが可能である。
【0030】
有線の場合は、物理量センサから延出するケーブルを収納箱天面に這わせて各壁体との連結部の隙間から収納箱外へ引き回す方法が考えられる。
【0031】
無線の場合は、電波の遮蔽の影響を考慮し、伝熱体材料として樹脂を用いることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、収納箱内部の温度をより均一に保つことができるため、特定の温度域での保管環境が必要な、例えば、治験薬、血液、検体等を運搬するための収納箱、保冷容器等、に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 収納箱
1a 包装部材
1b 蓄冷剤
1c 伝熱体
1d 固定部材
10 壁体
20 薬品
30 保冷容器
31 蓋
32 ファスナー
33 外装ケース