(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材
(51)【国際特許分類】
B08B 1/00 20240101AFI20240906BHJP
B43L 21/02 20060101ALI20240906BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B08B1/00
B43L21/02 A
G03G21/00 310
(21)【出願番号】P 2022522123
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2020018891
(87)【国際公開番号】W WO2021229665
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】596116363
【氏名又は名称】三和テクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517052792
【氏名又は名称】ライズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【氏名又は名称】横井 宏理
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【氏名又は名称】横井 知理
(72)【発明者】
【氏名】福井 和郎
(72)【発明者】
【氏名】庄司 進
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-118893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00
B43L 21/02
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平滑面の物体上に付着した塵埃、粉体および液体に含有される粒子並びに液体を清掃する清掃部材は縞模様の織物とこの織物を支持する支持部材からなり、この清掃部材の縞模様の織物は粒子または液体と接する面である表面が
織糸と織組織によって縞模様が形成される縞模様の織物であって凹条部が平織組織もしくは綾織組織で形成され凸条部が繻子織で形成された織物の組織による段差を有し、この清掃部材と上記の物体に付着の粒子および液体に含有の粒子並びに液体との間の相対的な移動による清掃速度、略平滑面の物体上に対する清掃部材の当接荷重、および凹条部と凸条部からなる縞模様の織物の凸条部の傾いた角度による掻き取り作用により、略平滑面上に付着した塵埃、粉体、および液体に含有される粒子並びに液体を清掃することを特徴とする平滑面を清掃する縞模様状の織物と織物の支持部材からなる清掃部材。
【請求項2】
上記の粒子あるいは液体と接する面である表面が縞模様の織物の凹条部と凸条部からなる段差は清掃される粒子の径よりも大きな段差であり、縞模様の織物の凸条部を形成する経糸に用いる糸はモノフィラメントもしくはマルチフィラメントからなる糸であり、清掃される粒子の半径であるR
1と粒子を掻き取るためのフィラメントの糸の半径であるR
2との比である、R
1/R
2の比は0.084以上とし、清掃部材を構成する凹条部と凸条部からなる縞模様の織物の表面を略平滑面上に付着した粒子または液体に当接させ、さらに縞模様の織物の凹状部と凸条部の向きを斜交方向ないし直交方向となるように清掃部材を移動させるかまたは粒子または液体の付着している面を移動させ、略平滑面の物体上に付着している粒子または液体を縞模様の織物の凸条部の繊維で掻き取りもしくは縞模様の凹条部の繊維で捕捉し、または、掻き取リもしくは補足による粒子または液体を清掃部材の移動もしくは粒子または液体の付着面の移動による相対速度
によって縞模様織物の向きを斜行方向に傾けた角度である斜角を形成し凹部に捕捉した粒子を斜角にそって粒子を移動させる、あるいは縞模様を斜行方向ないし直交方向に形成し縞模様の凹部の間隙が織物の経糸と緯糸による格子状の間隙から掻き取った粒子を通過せしめる掻き取り効果を維持するように構成し、略平滑面上に付着した塵埃、粉体、液体に含有される粒子や液体を清掃することを特徴とする請求項1に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材。
【請求項3】
上記の凹条部と凸条部からなる縞模様の織物は繻子織の組織と平織の組織の組合せもしくは繻子織の組織と綾織の組織の組合せからなり、この繻子織の組織は平織部の組織もしくは綾織の組織よりも組織の厚みが厚く構成され、この繻子織の組織により凸条部が形成され、清掃される粒子の径よりも大きな段差が形成された縞模様の織物を有する清掃部材であり、この縞模様の織物の凸条部を形成する繻子織の経糸に用いる糸はモノフィラメントの糸もしくはマルチフィラメントからなる糸であり、清掃される粒子の半径であるR
1と粒子を掻き取るためのフィラメントの糸の半径であるR
2との比である、R
1/R
2の比は0.084以上とし、この凹条部と凸条部からなる縞模様の織物からなる清掃部材の表面を略平滑面上に付着した粒子または液体に当接させ、さらに縞模様の織物の凹状部と凸条部の向きを斜交方向ないし直交方向となるように清掃部材を移動させるかまたは液体に付着している面を移動させ、略平滑面上に付着している粒子や液体を繻子織から構成される凸条部の繊維で掻き取りもしくは平織または綾織からなる凹条部の繊維で捕捉し、または、掻き取った粒子または液体を清掃部材の移動もしくは粒子または液体の付着面の移動による相対速度と縞模様の織物の凹条部と凸条部により斜角方向に粒子や液体を移動させるか、または、平織または綾織からなる凹条部に形成した間隙から掻き取った粒子や液体を通過せしめることで、掻き取り材である繊維の掻き取り効果を維持するように構成し、略平滑面上に付着した塵埃、粉体、液体に含有される粒子や液体を清掃することを特徴とする請求項2に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材。
【請求項4】
上記の繻子織の組織はその経糸が平織の組織もしくは綾織の組織を形成する経糸よりも太い糸を用いることにより、繻子織の組織は組織全体が凸条部になるように構成され、平織の組織もしくは綾織の組織は組織全体が凹条部になるように構成され、平織の組織もしくは綾織の組織と繻子織の組織との間に、これらの凹条部と凸条部による段差を設けた凹条部と凸条部からなる縞模様の織物であり、凸条部を形成する繻子織の経糸は合成繊維からなるモノフィラメントの糸もしくは複数の繊維からなるマルチフィラメントの紡糸または紡績糸である糸であり、清掃される粒子の半径であるR
1と、マルチフィラメントの糸で粒子と接して粒子を掻き取る繊維の半径であるR
2との比を、R
1/R
2とするとき、0.084≦R
1/R
2とし、この凹条部と凸条部からなる縞模様に形成された清掃部材の織物の表面は、略平滑面上に付着した塵埃または粉体などの粒子に当接されて、縞模様の織物の凹条部と凸条部の向きが移動方向に対して斜交方向ないし直交方向となるように配置され、清掃部材を移動させるかまたは粒子の付着している面を移動させるかにより、略平滑面上に付着している塵埃または粉体などの粒子を繻子織から構成される凸条部で掻き取り、凹条部に捕捉されたまたは掻き取らたれた粒子を凹条部との相対速度および縞模様の斜角の程度により移動させるかまたは織物の凹条部に形成の間隙の移動により掻き取られた粒子を凹条部に形成の間隙から通過させて、掻き取り部の掻き取り効果を維持するように構成し、略平滑面上に付着した塵埃または粉体などの粒子を清掃することを特徴とする請求項3に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材。
【請求項5】
上記の清掃部材の織物は粒子もしくは液体と接する面の表面が凹条部と凸条部による段差を有する縞模様の織物からなり、この縞模様の織物は繻子織の組織と平織の組織の組合せもしくは繻子織の組織と綾織の組織の組合せから形成され、繻子織の組織の経糸と平織の組織の経糸もしくは繻子織の組織の経糸と綾織の組織の経糸はマルチフィラメントからなる甘撚りされた経糸であり、繻子織の経糸はフィラメント数が平織りまたは綾織りに用いる経糸のフィラメント数よりも多く構成されてなる経糸で糸径が太く構成され、各々の甘撚りされた経糸はモノフィラメントの緯糸および各々の織物の組織により、フィラメントが広がるように構成され、各々のマルチフィラメントの広がりおよびフィラメント数の差で段差を有するように形成した縞模様の清掃部材の織物であり、清掃される粒子の半径であるR
1と、糸を構成するフィラメントで粒子または液体と接し、粒子を掻き取るフィラメントの半径であるR
2との比を、R
1/R
2とするとき、0.084≦R
1/R
2≦1.000とし、この凹条部と凸条部からなる縞模様に形成された清掃部材の織物の表面を略平滑面上に付着した塵埃、粉体、液体に含有される粒子や液体に当接させ、縞模様の織物の凹条部と凸条部の向きを、清掃部材または塵埃や粉体などの粒子の付着している面の移動方向に対して、斜行方向ないし直行方向になるように配置して、清掃部材を移動させるか、または塵埃や粉体などの粒子の付着している面を移動させるかにより、略平滑面上に付着している塵埃や粉体、液体に含有される粒子や液体を繻子織から構成される凸条部で掻き取り、平織の組織もしくは綾織の組織のフィラメントの広がりにより形成された凹条部に捕捉し、清掃部材と清掃される粒子もしくは液体との速度差である清掃における移動相対速度および縞模様の織物の凹条部と凸条部の配置角度である斜角により凸条部で掻き取り凹条部で捕捉した粒子や液体を凹条部の長手方向に移動させて清掃することを特徴とする請求項2、3、4に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材。
【請求項6】
上記の凹条部と凸条部による段差を有する縞模様の織物は、この織物を支持する支持部材が反発弾性を有する反発弾性体から形成されていることを特徴とする請求項5に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材。
【請求項7】
上記の反発弾性を有する反発弾性体から形成され支持部材により支持されている縞模様の清掃部材の織物は粒子や液体と接する面の表面が凹条部と凸条部による段差を有する縞模様の織物からなり、この縞模様の織物は繻子織の組織と平織の組織の組み合わせもしくは繻子織の組織と綾織の組織の組合せから形成され、繻子織の組織は複数の繊維からなるマルチフィラメントの経糸とモノフィラメントからなる緯糸で織られ、平織の組織または綾織の組織は経糸および緯糸が共にモノフィラメントからなる糸で織られた組織であり、繻子織の組織の経糸は平織の組織の経糸または綾織の組織の経糸よりも太い複数のフィラメントで甘撚りされた経糸であり、縞模様の織物は繻子織の組織全体で凸条部となり、平織の組織全体または綾織の組織全体で凹条部となり、これらの凹条部で粒子の通る格子状空隙を有し、かつ、上記の段差を有するように形成の縞模様の清掃部材の織物であり、清掃される粒子の半径であるR
1と、糸を構成するフィラメントで粒子と接して粒子を掻き取る作用をする、このフィラメントの半径であるR
2との比をR
1/R
2とするとき、この比は0.084≦R
1/R
2≦1.000を満足し、この凹条部と凸条部からなる縞模様の清掃部材の織物の表面を略平滑面上に付着した塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体に当接させ、縞模様の織物の凹条部と凸条部の向きを、清掃部材または塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体の移動方向に対して、斜交方向ないし直交方向となるように配置して、清掃部材を移動させるかもしくは塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体の付着している面を移動させるかすることにより、略平滑面上に付着している塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体を、繻子織の組織全体で構成されている凸条部により掻き取り、モノフィラメントで構成された平織の組織または綾織の組織で形成した格子状空隙を移動させることにより、掻き取った粒子や液体を格子状隙に通過させて、空隙の目詰まりを防止しながら塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体の付着している面を清掃することを特徴とする請求項6に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材。
【請求項8】
上記の縞模様の清掃部材の織物が支持されている反発弾性体からなる支持部材は縞模様の織物の凹条部に粒子の通る格子状空隙を有する平織または綾織の近傍の箇所に、塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体が通過できる孔を有する支持部材であり、この支持部材と縞模様の織物から清掃部材が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平滑面上に付着した粒子や塵埃などを清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子が平面上に付着してなるものは、例えば、チョークによって黒板に書かれた文字や絵、マーカーによってホワイトボードに書かれた文字や絵、ガラスやディスプレーなどに付着した塵埃などがある。また、装置においては、トナーなどを用いた電子写真方式の装置で中間転写ベルト上に付着したトナー、さらにはシート状のフィルムで封止されたトナーカートリッジなどのシート状のフィルムがある。ところで、チョークによる文字はチョークの粒子によって描かれ、ホワイトボードなどに描かれる文字も隠蔽性のあるマーカーの粒子で描かれている。このように、平面上に粒子によって描かれたものや平面上に粒子が付着しているものなど、多くの例が身近に存在する。
【0003】
そして、このような、平面上に粒子によって描かれたものや平面上に粒子が付着しているものなどは、これらの粒子に適した清掃部材またはクリーニング部材によって、平面上の表面が清掃されている。例えば、黒板の場合は黒板消し(黒板拭き)、ホワイトボードの場合はイレーザーで表面の文字や絵が消去される。
【0004】
チョーク粉によって黒板に描かれた文字や絵を消去する黒板消しは、黒板消しの素材としては凹部と凸部のある布、フェルト、皮革、綿、ブラシなどが用いられ、これらを用いた黒板消しで摺擦による払拭をして、これらの素材の払拭部の間隙からなるチョーク取込み込み孔にチョーク粉を収集している(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、ホワイトボード用のイレーザーとしてはパイル織物、フェルト、メラミンスポンジなどからなる清掃部材がイレーザーとして用いられ、パイル織物やフェルトを用いた時は払拭きにて粒子を収集しイレースされ、メラニンスポンジを用いた場合は表面を研磨するようにして描かれた粒子を除去している。
【0006】
さらに、トナーなどの粉体を用いた電子写真装置に用いられるベルトの清掃としてはクリーニングブレード、ブラシローラ、フェルト、ウェブローラなどが用いられている。
【0007】
また、トナーを用いたカートリッジのトナー封止材としてフィルムが用いられているカートリッジにおいてはフィルムをピーリングした時にフィルムに付着しているトナーの噴出およびピーリングの際のトナーの噴出を防止するために、フィルムをスポンジなどのシール材によって挟持しフィルムに付着しているトナーおよび噴出するトナーの掻き取りを行っている。
【0008】
このように平面上に付着した粒子の除去もしくは清掃方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献には、従来技術として、布の凸部で黒板状のチョーク粉を掻き取り、布の凹部に収集する方法では、粒子を凹部に収集するために凹部と凸部からなる払拭部が飽和状態つまり目詰まり状態になることが記載されている。また、チョーク粉の拭払いについては、拭払部で摺擦することにより消す黒板消しが従来技術として開示されており、かつ、布の凸部で黒板上のチョーク粉を掻き取ることが記載されている。しかし、布の凸部がどのような構成でチョーク粉を掻き取っているかについては記載されていない。
【0009】
また、ホワイトボードのイレーザーについては平織物、パイル織物、フェルト(不織布)やスポンジなどが開示されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【0010】
ホワイトボード上におけるボード消去具(イレーザー)の課題としては、マーカーのインキカスなどによって目詰まりが発生し短期間のうちに、性能が低下する問題が記載されている。そして、パイル織物や植毛などによる凸部を有するものが考案されている。
【0011】
さらに電子写真方式の画像形成装置でローラ間に架張されたベルトに画像が形成され、転写残留トナーの除去としてクリーニング部材がある。このクリーニング部材は従来よりゴムブレードからなるクリーニングブレードが採用されており、ブレードのエッジ部でトナーが除去され、ベルト表面が清掃される。また、近年はトナーの小粒子化と高速化に伴い、ブラシとブレードの併用の装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0012】
このように粉体を用いた装置においては、ゴム基材からなるクリーニングブレードを用いてベルト表面の清掃が行われ、さらにブラシローラなどを用いて粉体の清掃が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平7-205595号公報
【文献】特開2008-1006号公報
【文献】特開平8-67096号公報
【文献】特開2016-151657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
平滑面上に付着した塵埃や粉体などの粒子を清掃する清掃部材において、従来の平滑面上の清掃部材は毛羽を有する平織の布やパイル織であるコール天などからなる布、あるいはフェルトやゴムブレードなどによって、平滑面上に付着している粒子を除去している。しかし、従来の課題としては、圧接による摺擦で布やフェルトに粒子が目詰まりをおこす寿命的な問題がある。これらの問題は、平織の布やパイル織の布あるいはフェルトなどの繊維に粒子が付着することと、繊維による抱え込みにより粒子が溜まって掻き取り効果の低下に伴う、クリーニング性の低下と同時に飽和した粒子が飛散することから生じる問題である。さらにゴム状のブレードではそのエッジ部に傷が生じた場合に、その疵の発生箇所が清掃できないことから生じる問題である。
【0015】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、略平滑面の物体上に付着した塵埃や粉体などの粒子を清掃する清掃部材において、清掃部材は平織の布や綾織の布または繻子織の布などの繊維素材から形成され、繊維表面および繊維内への粒子の付着や抱え込みを防止し、これらの粒子を抱え込んだとしても、粒子の掻き取り効果が長時間安定して維持できる繊維素材からなる平滑面上を清掃する清掃部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するための、第1の手段は、略平滑面の物体上に付着した塵埃、粉体および液体に含有される粒子並びに液体を清掃する清掃部材は縞模様の織物とこの織物を支持する支持部材からなり、この清掃部材の縞模様の織物は粒子あるいは液体と接する面である表面が縞模様の織物の凹条部と凸条部からなる段差を有し、この清掃部材と上記の物体に付着の粒子および液体に含有の粒子並びに液体との間の相対的な移動による清掃速度、略平滑面の物体上に対する清掃部材の当接荷重、および凹条部と凸条部からなる縞模様の織物の凸条部の傾いた角度による掻き取り作用により、略平滑面上に付着した塵埃、粉体、および液体に含有される粒子並びに液体を清掃することを特徴とする平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材である。
【0017】
第2の手段は、上記の粒子あるいは液体と接する面である表面が縞模様の織物の凹条部と凸条部からなる段差は清掃される粒子の径よりも大きな段差であり、縞模様の織物の凸条部を形成する経糸に用いる糸はモノフィラメントもしくはマルチフィラメントからなる糸であり、清掃される粒子の半径であるR1と粒子を掻き取るためのフィラメントの糸の半径であるR2との比である、R1/R2の比は0.084以上とし、清掃部材を構成する凹条部と凸条部からなる縞模様の織物の表面を略平滑面上に付着した粒子または液体に当接させ、さらに縞模様の織物の凹状部と凸条部の向きを斜交方向ないし直交方向となるように清掃部材を移動させるかまたは粒子または液体の付着している面を移動させ、略平滑面の物体上に付着している粒子または液体を縞模様の織物の凸条部の繊維で掻き取りもしくは縞模様の凹条部の繊維で捕捉し、または、掻き取リもしくは補足による粒子または液体を清掃部材の移動もしくは粒子または液体の付着面の移動による相対速度や、あるいは縞模様織物の凹条部と凸条部の向きを斜行方向ないし直行方向となるように斜角による粒子の移動や、あるいは縞模様の織物の凹条部の間隙から掻き取った粒子を通過せしめる掻き取り効果を維持するように構成し、略平滑面上に付着した塵埃、粉体、液体に含有される粒子や液体を清掃することを特徴とする第1の手段に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材である。
【0018】
第3の手段は、上記の凹条部と凸条部からなる縞模様の織物は繻子織の組織と平織の組織の組合せもしくは繻子織の組織と綾織の組織の組合せからなり、この繻子織の組織は平織部の組織もしくは綾織の組織よりも組織の厚みが厚く構成され、この繻子織の組織により凸条部が形成され、清掃される粒子の径よりも大きな段差が形成された縞模様の織物を有する清掃部材であり、この縞模様の織物の凸条部を形成する繻子織の経糸に用いる糸はモノフィラメントの糸もしくはマルチフィラメントからなる糸であり、清掃される粒子の半径であるR1と粒子を掻き取るためのフィラメントの糸の半径であるR2との比である、R1/R2の比は0.084以上とし、この凹条部と凸条部からなる縞模様の織物からなる清掃部材の表面を略平滑面上に付着した粒子または液体に当接させ、さらに縞模様の織物の凹状部と凸条部の向きを斜交方向ないし直交方向となるように清掃部材を移動させるかまたは液体に付着している面を移動させ、略平滑面上に付着している粒子や液体を繻子織から構成される凸条部の繊維で掻き取りもしくは平織または綾織からなる凹条部の繊維で捕捉し、または、掻き取った粒子または液体を清掃部材の移動もしくは粒子または液体の付着面の移動による相対速度と縞模様の織物の凹条部と凸条部により斜角方向に粒子や液体を移動させるか、または、平織または綾織からなる凹条部に形成した間隙から掻き取った粒子や液体を通過せしめることで、掻き取り材である繊維の掻き取り効果を維持するように構成し、略平滑面上に付着した塵埃、粉体、液体に含有される粒子や液体を清掃することを特徴とする第2の手段に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材である。
【0019】
第4の手段は、上記の繻子織の組織はその経糸が平織の組織もしくは綾織の組織を形成する経糸よりも太い糸を用いることにより、繻子織の組織は組織全体が凸条部になるように構成され、平織の組織もしくは綾織の組織は組織全体が凹条部になるように構成され、平織の組織もしくは綾織の組織と繻子織の組織との間に、これらの凹条部と凸条部による段差を設けた凹条部と凸条部からなる縞模様の織物であり、凸条部を形成する繻子織の経糸は合成繊維からなるモノフィラメントの糸もしくは複数の繊維からなるマルチフィラメントの紡糸または紡績糸である糸であり、清掃される粒子の半径であるR1と、マルチフィラメントの糸で粒子と接して粒子を掻き取る繊維の半径であるR2との比を、R1/R2とするとき、0.084≦R1/R2とし、この凹条部と凸条部からなる縞模様に形成された清掃部材の織物の表面は、略平滑面上に付着した塵埃または粉体などの粒子に当接されて、縞模様の織物の凹条部と凸条部の向きが移動方向に対して斜交方向ないし直交方向となるように配置され、清掃部材を移動させるかまたは粒子の付着している面を移動させるかにより、略平滑面上に付着している塵埃または粉体などの粒子を繻子織から構成される凸条部で掻き取り、凹条部に捕捉されたまたは掻き取らたれた粒子を凹条部との相対速度および縞模様の斜角の程度により移動させるかまたは織物の凹条部に形成の間隙の移動により掻き取られた粒子を凹条部に形成の間隙から通過させて、掻き取り部の掻き取り効果を維持するように構成し、略平滑面上に付着した塵埃または粉体などの粒子を清掃することを特徴とする第3の手段に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材である。
【0020】
第5の手段は、上記の清掃部材の織物は粒子もしくは液体と接する面の表面が凹条部と凸条部による段差を有する縞模様の織物からなり、この縞模様の織物は繻子織の組織と平織の組織の組合せもしくは繻子織の組織と綾織の組織の組合せから形成され、繻子織の組織の経糸と平織の組織の経糸もしくは繻子織の組織の経糸と綾織の組織の経糸はマルチフィラメントからなる甘撚りされた経糸であり、繻子織の経糸はフィラメント数が平織りまたは綾織りに用いる経糸のフィラメント数よりも多く構成されてなる経糸で糸径が太く構成され、各々の甘撚りされた経糸はモノフィラメントの緯糸および各々の織物の組織により、フィラメントが広がるように構成され、各々のマルチフィラメントの広がりおよびフィラメント数の差で段差を有するように形成した縞模様の清掃部材の織物であり、清掃される粒子の半径であるR1と、糸を構成するフィラメントで粒子または液体と接し、粒子を掻き取るフィラメントの半径であるR2との比を、R1/R2とするとき、0.084≦R1/R2≦1.000とし、この凹条部と凸条部からなる縞模様に形成された清掃部材の織物の表面を略平滑面上に付着した塵埃、粉体、液体に含有される粒子や液体に当接させ、縞模様の織物の凹条部と凸条部の向きを、清掃部材または塵埃や粉体などの粒子の付着している面の移動方向に対して、斜行方向ないし直行方向になるように配置して、清掃部材を移動させるか、または塵埃や粉体などの粒子の付着している面を移動させるかにより、略平滑面上に付着している塵埃や粉体、液体に含有される粒子や液体を繻子織から構成される凸条部で掻き取り、平織の組織もしくは綾織の組織のフィラメントの広がりにより形成された凹条部に捕捉し、清掃部材と清掃される粒子もしくは液体との速度差である清掃における移動相対速度および縞模様の織物の凹条部と凸条部の配置角度である斜角により凸条部で掻き取り凹条部で捕捉した粒子や液体を凹条部の長手方向に移動させて清掃することを特徴とする第2、第3、第4の手段に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材である。
【0021】
第6の手段は、上記の凹条部と凸条部による段差を有する縞模様の織物は、この織物を支持する支持部材が反発弾性を有する反発弾性体から形成されていることを特徴とする第5の手段に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材である。
【0022】
第7の手段は、上記の反発弾性を有する反発弾性体から形成され支持部材により支持されている縞模様の清掃部材の織物は粒子や液体と接する面の表面が凹条部と凸条部による段差を有する縞模様の織物からなり、この縞模様の織物は繻子織の組織と平織の組織の組み合わせもしくは繻子織の組織と綾織の組織の組合せから形成され、繻子織の組織は複数の繊維からなるマルチフィラメントの経糸とモノフィラメントからなる緯糸で織られ、平織の組織または綾織の組織は経糸および緯糸が共にモノフィラメントからなる糸で織られた組織であり、繻子織の組織の経糸は平織の組織の経糸または綾織の組織の経糸よりも太い複数のフィラメントで甘撚りされた経糸であり、縞模様の織物は繻子織の組織全体で凸条部となり、平織の組織全体または綾織の組織全体で凹条部となり、これらの凹条部で粒子の通る格子状空隙を有し、かつ、上記の段差を有するように形成の縞模様の清掃部材の織物であり、清掃される粒子の半径であるR1と、糸を構成するフィラメントで粒子と接して粒子を掻き取る作用をする、このフィラメントの半径であるR2との比をR1/R2とするとき、この比は0.084≦R1/R2≦1.000を満足し、この凹条部と凸条部からなる縞模様の清掃部材の織物の表面を略平滑面上に付着した塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体に当接させ、縞模様の織物の凹条部と凸条部の向きを、清掃部材または塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体の移動方向に対して、斜交方向ないし直交方向となるように配置して、清掃部材を移動させるかもしくは塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体の付着している面を移動させるかすることにより、略平滑面上に付着している塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体を、繻子織の組織全体で構成されている凸条部により掻き取り、モノフィラメントで構成された平織の組織または綾織の組織で形成した格子状空隙を移動させることにより、掻き取った粒子や液体を格子状隙に通過させて、空隙の目詰まりを防止しながら塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体の付着している面を清掃することを特徴とする第6の手段に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材である。
【0023】
第8の手段は、上記の縞模様の清掃部材の織物が支持されている反発弾性体からなる支持部材は縞模様の織物の凹条部に粒子の通る格子状空隙を有する平織または綾織の近傍の箇所に、塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体が通過できる孔を有する支持部材であり、この支持部材と縞模様の織物から清掃部材が形成されていることを特徴とする第7の手段に記載の平滑面上を清掃する縞模様の織物と織物の支持部材からなる清掃部材である。
【発明の効果】
【0024】
本願の手段では、略平滑面上に付着した塵埃、粉体および液体に含有される粒子並びに液体を清掃する清掃部材は凹条部と凸条部からなる縞模様の織物とこの織物を支持する支持部材から形成されており、さらに、この縞模様の凹条部と凸条部から複数の段差が形成されており、この複数の段差と複数の凸条部は塵埃、粉体、液体に含有される粒子もしくは液体を掻き取るための清掃部材となっている。さらに清掃部材を形成する凹条部と凸条部からなる縞模様の織物を支持する支持部材として反発弾性体が設けられているので、この反発弾性体に圧縮による反発弾性を加えることで、略平滑面上に付着した塵埃または粉体などの粒子を安定して的確に掻き取ることができる。また、さらに凹条部と凸条部からなる縞模様の織物の凹条部と凸条部の向きを斜め方向である斜角とすることで、凸条部で掻き取った塵埃または粉体などの粒子を凹条部の向きである斜め方向の斜角に移動させることで、清掃部材への塵埃または粉体などの粒子の付着を防止することができ、その結果、清掃部材は長期間の使用が可能である。また、この凹条部を粒子の移動する空隙とすることで、凸条部で掻き取った埃または粉体などの粒子を凹条部の空隙によって移動させることができ、凸条部への埃または粉体などの粒子の付着が防止でき、清掃部材の長期の使用が可能となる。さらに本願の清掃部材である縞模様の織物を繻子織の織物と平織の織物の組み合わせもしくは繻子織の織物と綾織の織物の組み合わせから形成するとき、繻子織は経糸1がモノフィラメントもしくはマルチフィラメントと緯糸のモノフィラメントもしくはマルチフィラメントから形成し、平織もしくは綾織は粒子を通過せしめる場合は経糸2がモノフィラメントと緯糸のモノフィラメントが好ましく、凹条部で粒子を移動させる場合は経糸2のマルチフィラメントと緯糸のマルチフィラメントから形成することが好ましい構成で、本願の手段の清掃部材は従来にない優れた清掃部材となっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の清掃部材を用いたホワイトボードのイレーザーの例である。
【
図2】略平滑面を有するベルトが移動してベルト下面に付着している粒子を清掃する本発明の清掃部材の例である。
【
図3】清掃部材を構成する縞模様の織物で繻子織の凸条部の経糸
1と綾織の凹条部の経糸
2にそれぞれマルチフィラメントの糸を用いた本発明の構成例である。
【
図5】清掃部材を構成する縞模様の織物で繻子織の凸条部の経糸
1にマルチフィラメントの糸と平織の格子状の空隙のある凹条部の経糸
2にモノフィラメントの糸を用いた本発明の構成例である。
【
図7】付着粒子の半径に比して掻き取り繊維の半径が大きい場合の掻き取り原理図である。
【
図8】付着粒子の半径に比して掻き取り繊維の半径が大きい場合から小さい場合へと変化させた掻き取り原理図である。
【
図9】異形断面の繊維で付着粒子の掻き取り原理の図である。
【
図13】清掃荷重と付着濃度の関係を示すグラフである。
【
図15】凹条部と凸条部による段差と粒子の流動性の関係を示すグラフである。
【
図16】凹条部の幅と粒子の流動性および反発荷重の関係を示すグラフである。
【
図17】清掃部材の傾き角度と粒子の移動速度の関係を示すグラフである。
【
図18】清掃部材の液体における当接荷重と清掃性の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の清掃部材1の例として黒板消しすなわちイレーザー8がある。ここではホワイトボード用のイレーザー8の例を
図1に示す。
図1では、清掃部材1を構成するイレーザー8は凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2で、この縞模様の織物2を支持する支持部材5として反発弾性を有する反発弾性体5aを縞模様の織物2と一体的に構成し、これをハンドリングするホルダー7に取り付けて手動で清掃するイレーザー8とした例である。縞模様の織物2の支持部材5である反発弾性体5aは発泡体や反発弾性を有するゴム部材であっても良い。このように縞模様の織物2とその支持部材5である反発弾性体5aを一体的にすることで、縞模様の織物2のフレキシブルな性質と反発弾性体5aのフレキシブルな性質が合わさって、清掃される面9に付着した付着粒子6aを縞模様の織物2の凸条部4で、清掃される面9に付着した付着粒子6aとフレキシブルに掻き取りできる。
【0027】
次に、
図2は、略平滑面を有するベルトである清掃される面9に対し、その下部に対抗するように清掃部材1を設けた例であり、清掃部材1は凹条部3に空隙3cを設けた縞模様の織物2と織物2を支持する支持部材5を有する。ところで、この
図2では、清掃部材1そのものが粒子受部6cの箱型の剛体を有するので、支持部材5としては、反発弾性を有するウレタンフォームやオレフィン系フォームなどの発泡体または反発弾性を有するエラストマー(ゴムを含む)からなる反発弾性体5aやもしくは不織布などを用いた支持部材5であっても形状を維持しうる程度の硬さを有するものであれば良く、この支持部材5に孔5bを設け、ベルトである清掃される面9の対抗支持部材10と清掃部材1に圧力を付与するために基盤12の上に設けた圧力付与部材11のバネで清掃部材1を下面から上方へ弾発し、ベルトである清掃される面9を清掃部材1と対抗支持部材10との間で挟持し、ベルトである清掃される面9の下面に付着している付着粒子6aを、矢印で示す清掃される面9の移動方向9bへの移動によって縞模様の織物2の凸条部4で掻き取り、掻き取った粒子6bを、この縞模様の織物2に形成した凹条部3の空隙3cおよび支持部材5の孔5bを通過させて粒子受部6cの内部に掻き落して、付着粒子6aを捕集している例を示している。このように構成することで、縞模様の織物2に目詰まりしない構成とすることができ、長寿命化とすることができる。また、図に示していないが、粒子受部6cに設けた通気性を有する吸引手段により掻き取った粒子6bを吸引することもできる。
【0028】
次に、本発明の清掃部材1に用いている凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2の構成について、
図3、4、5、6について示す。
図3は、本発明の清掃部材1に用いている凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2の組織2aの配列について示している。凸条部4は繻子織4aから形成され、凹条部3は平織3aから形成されている。これらの凹条部3と凸条部4を交互に形成した組織2aから縞模様の織物2は形成されている。
図3の(a)は縞模様の織物2の平面図で、
図3の(b)は側面図である。さらに、
図4は、
図3のA部の拡大図である詳細図を示す。
図4の(a)の平面図と(b)の側面図に示すように、繻子織4aからなる凸条部4は甘撚りされたマルチフィラメントの経糸
12bとモノフィラメントの緯糸2dの組織2aからなり、平織3aの凹条部3は甘撚りされたマルチフィラメントの経糸
22cとモノフィラメントの緯糸2dの組織2aからなる。このように、
図4の(a)の平面図と
図4の(b)の側面図は、各組織2aの凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2のイメージ図として示されている。そして、
図4の(b)の側面図に見られるように、繻子織4aの凸条部4と平織3aの凹条部3とで段差13を形成している。この段差13が形成される理由は、凸条部4の繻子織4aに用いる経糸
12bが凹条部3の平織3aに用いる経糸
22cよりも太い糸を使用していることによる。
図4は甘撚りされた綾織3bの経糸
22cが甘撚りされたフィラメントが緯糸2d上で広がり得るように経糸
22cが配置されており、緯糸2d上で経糸
22cのフィラメントが広がっている状態のイメージ図として示されている。これに対して、凸条部4の繻子織4aのマルチフィラメントからなる経糸
12bは、繻子織4aにより、近接するように織られ、甘撚りされた経糸
12bのフィラメントは隣り合う経糸
12bのフィラメントによって広がりが規制され、平織3aの経糸
22cよりも厚みを得ている。この経糸
12bと経糸
22cの広がりの差と経糸
12bと経糸
22cの太さの差によって、
図4の(b)に示すように、繻子織4aの凸条部4の経糸
12bと平織3aの凹条部3の経糸
22cとの間に段差13が形成されている。これにより平織3aの凹条部3と繻子織4aの凸条部4からなる縞模様の織物2が形成されている。なお、糸の甘撚りはマルチフィラメントを500回/m以下の撚り回数で撚った糸を使用して形成されている。
【0029】
さらに、
図5、
図6は、トナーなどの粒子6が通過可能な空隙3cを有する凹条部3の平織3aを形成している縞模様の織物2のイメージ図を示している。
図5は平織3aの凹条部3と繻子織4aの凸条部4からなる縞模様の織物2であり、
図5の(a)は縞模様の織物2の平面図で、平織3aが通気性の空隙3cを有するイメージ図を示している。
図5の(b)はその側面図である。さらに、
図6は、
図5のB部の拡大図である詳細図を示している。
図6の(a)の平面図と(b)の側面図に示すように、平織3aの経糸
22cがモノフィラメントからなり、緯糸2dもモノフィラメントからなり、この経糸
22cと緯糸2dにより格子状の空隙3cが形成され、空隙3cを有する縞模様の織物2となっている例である。そして、
図6の(b)に見られるように、凸条部4の繻子織4aの経糸
12bのマルチフィラメントの糸が凹条部2の平織3aのモノフィラメントの経糸
22cよりも太い糸を使用して、
図6の(b)に示されるように、段差13が形成されている。なお、空隙3cの大きさは、平織3aの幅と平織3aに使用するモノフィラメントの経糸
22cの本数およびモノフィラメントの緯糸2dの単位面積当たりの本数を制御することで、変化させることができる。
【0030】
このように構成された清掃部材1の織物である凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2は自由度が高いため、この縞模様の織物2の裏面に支持部材5を貼り合わせて清掃部材1とすることができる。その支持部材5の材質としては、反発弾性を有するウレタンフォームやオレフィン系フォームなどの発泡体または反発弾性を有するエラストマー(ゴムを含む)からなる反発弾性体5a、もしくは不織布などを用いることができる。また、
図2に示すように、この支持部材5を樹脂や金属などの剛体からなるトナーなどの粒子受部6cに貼り合わせることもできる。そして、その貼り合わせについては、両面テープや、ホットメルトや、接着剤などによって貼り合わせて、一体的な構成の清掃部材1とすることができる。さらに、発泡体との貼り合わせでは、発泡体を溶融させて貼り合わせるフレームラミネート法により貼り合わせることで、一体的に構成として清掃部材1とすることもできる。さらに支持部材5に対して縞模様の織物2を交換可能な構成として清掃部材1とすることもできる。
【0031】
次に、本発明の清掃部材1による清掃原理である掻き取りについて説明する。この清掃部材1のトナーなどの粒子6の掻き取りについては、付着粒子6aの付着粒子半径15をR
1とし、掻き取り部材である糸を構成する繊維14の付着粒子6aと接する位置での繊維半径16をR
2とした時に、R
1とR
2の比であるR
1/R
2を0.084以上とするものである。これは
図7の(2)に示すように、清掃される面9と掻き取り作用をする繊維半径16のR
2の繊維14との間に対し、水平方向の第1層目の付着粒子6aが水平方向の清掃される面9との間に3個食い込んでいる条件であり、水平方向の第2層目の付着粒子6aへの食い込み角度すなわち掻き取り角度14aが46、1°で、この掻き取り角度は45°以上であって粒子6が自由に落下できる条件である。さらに清掃部材1である縞模様の織物2は複数列の凸条部4からなっており、この複数列のうちの1列目の凸条部4で大部分の付着粒子6aを掻き取り除去し、2列目の凸条部4、3列目の凸条部4と順次に連続して掻き取り除去することで、粒子6の付着した清掃される面9の表面を清掃することができる。なお、清掃される面9に付着の水平方向の第1層目の付着粒子6aを掻き取る条件としては、
図7の(4)に示すように、R
1/R
2の比が0.172で、食い込み角度すなわち掻き取り角度14aが45°となり第1層目の食い込み粒子すなわち付着粒子6aが自由に落下できる条件となっている。したがって、水平方向の付着粒子6aが自由に落下できるのは、
図7の(2)のR
1/R
2の比が0.084以上であり、より好ましくは
図7の(4)のR
1/R
2の比が0.172以上である。
【0032】
以上に説明したように、本発明の清掃部材1による掻き取りでは、付着粒子6aの付着粒子半径15をR
1とし、粒子6と接する掻き取り部材1である繊維14の繊維半径16をR
2とするとき、粒子6が食い込む条件すなわち粒子6の何個が清掃される面9と繊維14とで形成される間隙17の水平な第1層目に食い込み得る条件は、R
1とR
2の比によって定まる。なお、
図7の(1)~(4)の全体について、以下に説明する。
【0033】
図7の(1)は、清掃部材1による掻き取り部半径すなわち粒子6と接する水平方向の繊維半径16のR
2と、清掃される面9に付着している水平方向の第1層目の先端の付着粒子6aの付着粒子半径15のR
1との間に、水平方向の第1層目の4個の付着粒子6aが食込んでおり、この場合の先端の付着粒子6aの食い込み角度である掻き取り角度14aは29.3°で、その食い込み条件はR
1/R
2の比の値が0.068である。
【0034】
図7の(2)は、清掃部材1による掻き取り部半径すなわち粒子6と接する水平方向の繊維半径16のR
2と、清掃される面9に付着している水平方向の第1層目の先端の付着粒子6aの付着粒子半径15のR
1との間に、水平方向の第1層目の3個の付着粒子6aが食込んでおり、この場合の先端の付着粒子6aの食い込み角度である掻き取り角度14aは32.3°で、その食い込み条件はR
1/R
2の比の値が0.084である。
【0035】
図7の(3)は、清掃部材1による掻き取り部半径すなわち粒子6と接する水平方向の繊維半径16のR
2と、清掃される面9に付着している水平方向の第1層目の先端の付着粒子6aの付着粒子半径15のR
1との間に、水平方向の第1層目の2個の付着粒子6aが食込んでおり、この場合の先端の付着粒子6aの食い込み角度である掻き込み角度14aは36.9°で、その食い込み条件はR
1/R
2の比の値が0.111である。
【0036】
図7の(4)は、清掃部材1による掻き取り部半径すなわち粒子6と接する水平方向の繊維半径16のR
2と、清掃される面9に付着している水平方向の第1層目の先端の付着粒子6aの付着粒子半径15のR
1との間に、水平方向の第1層目の1個の付着粒子6aが食込んでおり、この場合の先端の付着粒子6aの食い込み角度である掻き取り角度14aは45°で、その食い込み条件はR
1/R
2の比の値が0.172である。
【0037】
さらに、
図8の(1)~(5)に示すように、付着粒子半径15と掻き取り部半径すなわち繊維半径16の比である、R
1/R
2である比が大きくなることで、付着粒子6aに対する食い込み角度すなわち掻き取り角度14aが大きくなり、清掃される面9への付着粒子6aをより一層に掻き取ることができる。しかし、
図8の(3)に示すように、掻き取り角度14aは、付着粒子半径15のR
1と繊維14の繊維半径16のR
2が同じになった時に、最大の掻き取り角度14aの90°となる。
【0038】
図8の(4)および(5)に示すように、付着粒子6aと当接する繊維14が付着粒子半径15のR
1よりも細い繊維半径16のR
2となった場合には、付着粒子6aと当接する掻き取り部材である繊維14が、水平方向の上段の1段目の繊維14よりも下段の繊維14と接するようになり、繊維半径16のR
2が小さくなるほど、すなわち2段目の繊維14、3段目の繊維14となるにしたがってより下段の繊維14と接するようになり、掻き取り角度14aが小さくなってくる。そして、図示していないが、付着粒子半径15より繊維半径16が極細になった場合の理論上の掻き取り角度14aの最小値は60°となる。しかし、この60°の角度は十分に掻き取りの効果を得ることができる角度であるため、繊維半径16が仮に極細になっても問題はない。さらに、付着粒子6aを掻き取った後に、掻き取られた粒子6bの落下または移動する領域を確保することが必要であり、その領域である段差13を縞模様の織物2の凹条部3と凸条部4で形成することが重要となる。そして、段差13の形成は付着粒子径より大きくなるように形成し、特に付着粒子径より細い繊維14を用いた場合は、多数の繊維14で撚糸し、太い糸にして縞模様の織物2に段差13を形成するものとする。そして、掻き取られた粒子6bの落下または移動する領域である段差13は掻き取られた粒子6bが動き得る段差13であることが必要であり、少なくとも付着粒子径の10倍以上の段差13を設けることが好ましい。さらに掻き取り箇所で付着粒子6aと当接するために、この凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2を反発弾性体5aで支持して、掻き取り部材である繊維14と当接させる手段や、この縞模様の織物2を支持する支持部材5に圧力を付与して掻き取り部材である繊維14と当接させる手段が必要である。
【0039】
次に、異形断面の繊維14を用いた場合について、
図9により説明する。粒子6が付着している清掃される面9に接している各異型断面の繊維14のR部の半径R
2が、
図9の(1)、(2)、(3)に示すように、同一であれば、異型断面の形状に関係なく、付着粒子半径15のR
1と異型断面の繊維14のR部の繊維半径16のR
2との比であるR
1/R
2の値はいずれも同じで0.6となり、付着粒子6aの掻き取り角度14aも同じになる。したがって、付着粒子6aが保持されている清掃される面9に対し、繊維14が接している繊維半径16が小さければ、R
1/R
2の比の値は大きくなって掻き取り効果が得られ、繊維14の断面形状に関係なく付着粒子6aを掻き取ることができる。
【0040】
次に、表1および表3の実施例における清掃部材1の凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2の構成において、先ず表1について記載する。なお、この凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2の組織2aは、
図10に見られるように、凹条部3が平織3aで、凸条部4が繻子織4aでそれぞれ構成されている。表1の実施例1における縞模様の織物2の凸条部4を形成している経糸
12bはマルチフィラメントで甘撚りされた糸であり、凹条部3を形成している経糸
22cはモノフィラメントであり、緯糸2dは平織3aの凹条部3と繻子織4aの凸条部4が共にモノフィラメントの2本から形成されている。この構成により凹条部3の平織3aの部分は格子状の間隙17を形成している。一方、
図11に見られるように、表1の実施例2における縞模様の織物2の凸条部4を形成している経糸
12bは実施例1の経糸
12bと同じマルチフィラメントで甘撚りされた糸でマルチフィラメントの糸であり、凹条部2を形成している経糸
22cは実施例1とは異なったマルチフィラメントからなる甘撚りされた糸であり、緯糸2dは綾織3bの凹条部3と繻子織4aの凸条部4が共にモノフィラメントの2本から形成されている。実施例1の縞模様の織物2を
図10に示し、実施例1の縞模様の織物2を
図11に示す。さらに、実施例1および実施例2の通気性について検証した結果を、表2に通気抵抗値Rおよびフランジール型換算通気量Vとして示す。
【0041】
表3に示す実施例1では、
図10に示すように、平織3aからなる凹条部3の経糸
22cにモノフィラメントを用いることで、格子状の間隙17を形成することができ、表2の通気抵抗値Rも実施例1に用いた縞模様の織物2では0.016KPa・sec/mと低い。一方、実施例2では、
図11に示すように、凹条部3の経糸
22cにマルチフィラメントの糸を用いることで、間隙17の詰まった綾織3bを形成しており、したがって、表2の通気抵抗値Rも実施例2の縞模様の織物2では1.480KPa・sec/mと高い値となっている。これらは表1の実施例1および実施例2では、縞模様の織物2の凸条部4の経糸
12bは共に同じマルチフィラメントの甘撚りされた糸を用いているが、実施例1の縞模様の織物2の凹条部3の経糸
22cのモノフィラメントとは異なり、実施例2の縞模様の織物2の凹条部3の経糸
22cはマルチフィラメントからなる糸であり、上記したように間隙17の詰まった綾織3bの織り組織2aである。したがって、実施例1の凹条部の経糸
22cにモノフィラメントを使用して経糸
22cの密度を小さくして、粒子6が通り得る間隙17を形成した平織3aでは、表2に示すフランジール型換算通気量Vは778.4cm
3/cm
2・secと大きいが、一方、実施例2の凹条部の経糸
22cにマルチフィラメントを使用して経糸
22cの密度を大きくして、粒子6の通りにくい間隙17の詰まった綾織3bでは、表2に示すフランジール型換算通気量Vは8.4cm
3/cm
2・secと極めて小さい。
【0042】
表1に示す、実施例3と実施例4のそれぞれの縞模様の織物2の凸条部4の幅および凹条部3の幅はいずれも1.0mmであり、この値は実施例1および実施例2の凸条部4の幅および凹条部3の幅である2.0mmの各半分の値の構成を示している。さらに、実施例5に用いた縞模様の織物2は糸の材質が凸条部4の経糸1、凹条部3の経糸2および緯糸が全てマルチフィラメントのレーヨンの糸であり、かつ表3に示す実施例5に用いた縞模様の織物2の繊維径φ2の16.0μmは、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4に用いた縞模様の織物2の繊維径φ2の22.6μmと異なる径の構成を示している。実施例6に用いた縞模様の織物2は表1に示すように、経糸1および経糸2が共にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の摩擦係数の低いフッ素樹脂からなるマルチフィラメントの経糸で、かつ緯糸がナイロンのモノフィラメントの2本である繊維14で構成された縞模様の織物2である。実施例7に用いた縞模様の織物2は表1に示すように、経糸1および経糸2が共にペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)のフッ素樹脂で、かつ経糸1および経糸2の繊維径が同じ太さの太いマルチフィラメントからなる経糸であり、緯糸がレーヨンのマルチフィラメントの糸で構成されている。
【0043】
【0044】
【0045】
次に、表3に示す、実施例3を除く、実施例1、2と4~7の凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2を支持する支持部材5である反発弾性体5aの発泡体を貼り合わせて形成した反発弾性体5aを有する縞模様の織物2に係るものと、上記で除いた実施例3の凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2のみに係るものにおいて、それぞれ織物2に所定の清掃荷重を掛けて清掃される面9を清掃したときの清掃性について確認し、その清掃性の結果を表3に示す。なお、この清掃性の評価は
図12に示す評価治具18を用いて行った。
図12に示すように、評価治具18のボックス18a中に、球形の平均粒径6μmのトナーなどの粒子6を収納し、粒子6の付着している平面状のPETシート9aの下面を清掃される面9とし、この平面状のPETシート9aの一部をボックス18a内の粒子6の中に挿入し、清掃部材1である縞模様の織物2の凹条部3と凸条部4を、
図12の(b)に示すPETシート9aの移動方向(引き抜き方向)9bである水平な矢印方向に対して、直交するように配置し、残りのPETシート9aをボックス18aのカバー18bの外側に水平に配置する。さらに、実施例1、2と4~7では、カバー18bの下部のボックス18aの内面上に反発弾性体5aである支持部材5の下面を貼着し、この支持体5が貼着された反発弾性体5aの上に縞模様の織物2を配置し、一方、実施例3では、カバー18bの下部のボックス18aの内面上に縞模様の織物2のみを配置し、これらの縞模様の織物2の上面とカバー18bの下面の間で、PETシート9aに当接圧である清掃荷重の約300g/cm
2の挟持圧を掛けて挟持し、図示しない加速器でボックス18aに所定の振動を加えた後、挟持したPETシート9aを矢印の移動方向(引き抜き方向)9bに引き抜き、PETシート9aの下面に付着の付着粒子6aの付着濃度を濃度計で測定して評価を行った。
【0046】
【0047】
表3の実施例1~7および比較例1~2において、実施例1~7では付着粒子半径15であるR1と、掻き取り部材である縞模様の織物2の繊維半径16であるR2の比であるR1/R2の値は0.168~0.375であり、この値は適正範囲の0.16~0.38の範囲内である。さらに清掃部材1の構成が、縞模様の織物2のみで弾性体(反発弾性体5a)を有していない実施例3に対して清掃荷重として300g/cm2を掛け、一方、縞模様の織物2と弾性体(反発弾性体5a)を有する実施例1、2と4~7に対して清掃荷重として280g/cm2を掛け、これらの清掃部材1の清掃性の結果は、表3で、いずれも○となっている。これに対して、比較例1は清掃部材1の構成として、本願の織物2を有していない従来の不織布のみからなる清掃部材1であり、比較例2は本願の織物2を有していない従来の発泡体(ウレタンフォーム)のみからなる清掃部材1であり、これらの構成で、比較例1の場合は、清掃荷重として300g/cm2を掛けたもので、この値は、清掃部材の構成が縞模様の織物2と反発弾性体5aからなる実施例1、2と4~7の場合の280g/cm2よりも、やや高い圧力の清掃荷重を掛けて擦ることで、初期の間は問題の無いレベルであり、表3に見られるように、この清掃部材1の清掃性の結果は△であり、一方、比較例2の場合は、清掃荷重として比較例1よりも高い320g/cm2を掛けたもので、この値は、清掃効果は比較例1に比してやや劣っているが、同じく表3に見られるように、この清掃性の結果は△である。以上の表3に示すように、本発明の実施例の清掃部材1の構成とすることで付着粒子6aを十分に清掃することができる。
【0048】
次に、表4に示すように、実施例4の縞模様の織物2と支持部材5として弾性体(反発弾性体5a)からなる清掃部材1を用い、上記の表3の280g/cm
2から、162g/cm
2、276g/cm
2、700g/cm
2と変化させて、さらに比較例2の発泡体(ウレタンフォーム)のみからなる清掃部材1を用い、当接圧である清掃荷重を3166g/cm
2として、粒子6であるトナーを除去する清掃性(クリーニング性)の確認を、
図12の評価治具18を用いて行った。
図13のグラフに、実施例4の清掃部材1における清掃荷重と清掃性すなわちPETシート9a上の付着粒子6aの付着濃度の結果を示す。さらに、同様に
図13のグラフに比較例2である発泡体(ウレタンフォーム)のみからなる清掃部材1における清掃荷重と清掃性すなわちPETシート9a上の付着粒子6aの付着濃度の結果を示す。
図13のグラフに示すように、実施例4の清掃荷重は凡そ260g/cm
2~750g/cm
2でその付着濃度は0.02前後である。この付着濃度は付着粒子6aが目視できないレベルで良好な清掃状態であった。これに対し、比較例2の発泡体(ウレタンフォーム)の清掃荷重は凡そ316g/cm
2~640g/cm
2で付着濃度は凡そ0.07~0.09であり、付着粒子6aが目視できるレベルで十分な清掃効果とは言えない結果であった。
【0049】
表4に見られるように、実施例4の縞模様の織物と反発弾性体の支持部材5を有するものにおける、縞模様の織物2の凹部と凸部の段差が0.06mmである清掃部材1では、清掃荷重が162g/cm2であるものは、PETシート上の粒子6の付着濃度が0.28、摩擦係数が0.3、判定が△であって清掃部材1としては不向きであり、清掃荷重が276g/cm2であるものは、PETシート上の粒子6の付着濃度が0.03、摩擦係数が0.3、判定が○であって清掃部材として向いており、清掃荷重が700g/cm2であるものは、PETシート上の粒子6の付着濃度が0.01、摩擦係数が0.3、判定が○であって清掃部材として向いている。一方、比較例2の清掃部材が発泡体(ウレタンフォーム)では、清掃荷重が316g/cm2、トナーの付着濃度が0.09、摩擦係数が1.2、判定は△であって清掃部材としては不向きである。
【0050】
【0051】
さらに、清掃部材1の縞模様の織物2における凹条部3の効果について、
図15および
図16のグラフで示す。
図15のグラフに示すように、粒子6を遮るベルトの表面である清掃される面9に付着した付着粒子6aを、縞模様の織物2の凹条部3と凸条部4の段差13(
図15の(c)参照)で掻き取りを行った時、掻き取り箇所に粒子6が付着しないようにすることが望ましい。そのためには、凹条部3の箇所で粒子6が動き易いことが重要となる。
図14(a)に示す評価治具18を振動試験機(図示しない)で加振し、
図14の(b)に示すように、本発明の清掃部材1の縞模様の織物2の凹条部3の箇所と凸条部4のそれぞれを、粒子6が漏れ出す方向19と平行にして、凹条部3の箇所から粒子6が漏れて、流出する粒子の流動性である加速度について確認した。その結果を
図16のグラフにより示す。まず、縞模様の織物2の凹条部3と凸条部4の、
図15の(c)に示す凹条部3と凸条部4の段差13が大きい程、
図15の(a)に示すように、低い振動の加速度で粒子6が流出し易くなり、さらに、
図15の(a)に示すように、段差13が大きくなるほど、圧接荷重の差による影響が小さくなり、逆に、凹条部3と凸条部4による段差13が小さいほど、粒子6の流動性である粒子の流動性である加速度が大きくなって粒子6が流れ難くなっている。つまり、凹条部3と凸条部4の段差13が大きくなると、掻き取られた粒子6が溜まり難くなり、掻き取り効果が長く維持できることになる。逆に、凹条部3と凸条部4による段差13が小さくなると、掻き取り箇所の近傍に粒子6が溜まり易くなって、掻き取り効果が低下する方向となる。
【0052】
図16のグラフは、縞模様の織物2の裏面に反発弾性体5aである発泡体を支持部材5として貼り合わせた清掃部材1における、凹条部3と凸条部4からなる縞模様の織物2の凹条部3の幅と粒子の流動性による差および反発荷重による差について示す。
図16に示すように凹条部3の幅も粒子の流動性の重要な因子で、凹条部3の幅が2mmよりも狭くなると粒子6の流れが低下する。一般に、縞模様の織物2の裏面に貼り合わせた支持部材5である反発弾性体5aの特性にもよるが、反発弾性体5aの反発荷重が大きくなると、凹条部3の緯糸2dが撓み易くなり、緯糸2dの撓みが大きくなると、凹条部3の中央部の段差13が小さくなって粒子6の流れが低下する。このように、凹条部3については段差13および凹条部3の幅が重要な因子である。今回用いた平均粒子径6μm前後の粒子6では、
図16に見られるように、凹条部3の幅が0.5mm以上で、
図15に見られるように凹条部3と凸条部4の段差13が0.05mm以上で掻き取られた粒子6が動くことが容易になる。そして、平均粒子径6μm前後の微粒子では0.05mm前後以上の段差13で凹条部3の幅が0.5mm以上が好ましく、発泡体からなる反発弾性体5aを縞模様の織物3の裏面に支持部材5として貼り合わせた清掃部材1では、
図15に示すように、段差13が0.05mm以上で、
図16に示されるように、凹条部3の幅が1mm前後であることが最も好ましい。また、凸条部4の幅の繻子織4aと凹条部3の幅の平織3aもしくは綾織3bは、必要に応じて、任意の幅に織り上げることができる。
【0053】
次に、所定の清掃速度(250mm/sec)と清掃荷重(130g/cm
2)で清掃部材1を動かし、清掃部材1に付着している粒子6を清掃部材1に対して直交する角度からそれぞれ別の角度に変化させ(つまり、傾き角度を変化させ)て、掻き取った粒子6の動きについて、単位時間当たりの移動量(粒子の移動速度)として測定した結果を
図17のグラフに示す。
図17に見られるように、清掃部材1を直交する方向へ傾けることにより、清掃部材1で掻き取った粒子6を移動させることができ、直交方向への傾き角度を大きくすると、単位時間当たりに掻き取られた粒子6の移動速度が大きくなる。つまり、縞模様の織物2を傾き角度を清掃方向に対して傾けることで、粒子6を移動させることができる。その結果、清掃部材1である縞模様の織物2における粒子6の目詰まりが軽減でき、縞模様の織物2の長寿命化が可能な清掃部材1とすることができる。
【0054】
また、
図18は、液体に水を用いた場合を想定して、約25.8mm幅の複数のガラス板に、それぞれ水を滴下し、電子天秤でそれぞれの水の滴下量を測定した後、それぞれの滴下した水滴が付着している面のガラス板に所定の荷重で清掃部材1を当接させ、このガラス板を引き抜き、その引き抜き時のガラス板上の水滴の残量を測定し、清掃前の水適量の質量とガラス板の引抜き後の水滴の残量の質量との差により、清掃部材1による清掃性をパーセントで示している。そして、それぞれの水の滴下量で、当接荷重を変化させ、本発明の清掃部材1の縞模様の織物2による清掃性を、
図18に示している。この結果、当接荷重が低荷重である水(液体)から、当接荷重が高荷重である水(液体)に対しても、本発明の清掃部材1は水清掃性が100%である性能を有していることがわかる。
【0055】
ところで、液体の清掃については、清掃部材1は縞模様の織物2からなる部材であるため、織物での吸水性が高いので、清掃性の効果は通常は拭き取る効果になりやすい。そこで、吸水性の低いフィラメントからなる織物の構成が必要となる。例えば、糸の素材であとしては、短繊維のマルチフィラメントの糸よりも、長繊維からなる糸で甘撚りされた糸の方が好ましい。さらに、吸水性を低くするために撥水加工を施した糸や撥水性の糸を用いる方が好ましい。さらに、吸水性を少なくするために、撥水加工した糸や撥水性の糸を用いる方が好ましい。撥水加工としては織物にシリコーン処理やテフロン(登録商標)処理を施すなどがある。また、吸水性の低い糸の材料としてはフッ素樹脂の糸などがある。
【0056】
上記したように、本発明の清掃部材1は簡単な構成で目詰まりを軽減でき、長寿命が可能な清掃部材1である。さらに低い荷重で清掃が可能な清掃部材1である。また、凹条部3に掻き取られた粒子6bを通過させることが可能な格子状の空隙3cが形成でき、掻き取られた粒子6bを格子状の空隙3cから落下させることも可能な縞模様の織物2からなる清掃部材1である。さらに、縞模様の織物2の凹条部3から掻き取られた粒子6bを吸引することも可能であり、かつ高寿命の清掃具を可能とし得る清掃部材1である。また、従来のエラストマーなどにより平滑面を清掃する部材では、ただの1ヶ所の傷などによっても、その清掃機能が低下してしまう。しかし、本発明の清掃部材1では、複数の列の凸条部4を有する縞模様の織物2に構成することができるので、1ヶ所の傷が生じたくらいでは、清掃機能が損なわれることが無く、かつ、縞模様の織物2からなる清掃部材1はしなやかさを有しているので、縞模様の織物2の裏面に反発弾性体5aを支持部材5として設けることにより、従来のエラストマーからなる清掃する部材に変わる、しなやかさの有る清掃部材1にすることが可能である。これらは、例えば自動車のワイパーや窓拭きなどの清掃具としても使用が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 清掃部材
2 縞模様の織物
2a 組織
2b 経糸1
2c 経糸2
2d 緯糸
3 凹条部
3a 平織
3b 綾織
3c 空隙
4 凸条部
4a 繻子織
5 支持部材
5a 反発弾性体
5b 孔
6 粒子
6a 付着粒子
6b 掻き取られた粒子
6c 粒子受部
7 ホルダー
8 イレーザー
9 清掃される面(ベルトの表面)
9a PETシート
9b 移動方向(引き抜き方向)
10 対抗支持部材
11 圧力付与部材
12 基盤
13 段差
14 繊維(掻き取り部材)
14a 掻き取り角度
15 付着粒子半径(R1)
16 繊維半径(粒子と接する繊維の繊維半径)
17 間隙
18 評価治具
18a ボックス
18b カバー
19 粒子の漏れだす方向