(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】加熱処理装置および高炭化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 47/44 20060101AFI20240906BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C10B47/44
C10B53/02
(21)【出願番号】P 2024074841
(22)【出願日】2024-05-02
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599149175
【氏名又は名称】柴田 勝美
(73)【特許権者】
【識別番号】518001357
【氏名又は名称】株式会社JRTEC
(73)【特許権者】
【識別番号】518001368
【氏名又は名称】ベスト・アライアンス有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】並松 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】伊海 政子
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-120211(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022148(WO,A1)
【文献】特開2001-334242(JP,A)
【文献】特開2002-322479(JP,A)
【文献】特開平09-210333(JP,A)
【文献】特開2003-279021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 47/44
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気または高温燃焼ガスからなる高温ガスを処理原料に対して噴出する1または複数のキルンと、
前記キルンで発生した可燃ガスを排出する排気口と、
前記排気口から排出した前記可燃ガスが流通するガス流通路と、
前記ガス流通路を流通した前記可燃ガスが回収される回収部と、を有する、加熱処理装置であって、
前記ガス流通路に前記可燃ガスを400℃以上の温度まで加熱するタール化防止炉を設け
ており、
400~900℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスを前記キルン内に噴出することで処理原料を一度に高炭化物に変える1回処理モードと、300~450℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスを前記キルン内に噴出し処理原料を加熱処理した後に、当該処理原料を1回目の加熱処理よりも高い400~900℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスで再度、加熱処理することで高炭化物を得る2回処理モードと、を切替可能となっており、
前記1回処理モードが選択されている場合は、前記タール化防止炉を稼働させ、前記2回処理モードが選択されている場合は、前記タール化防止炉を停止させる、制御部を有する、加熱処理装置。
【請求項2】
前記2回処理モードの1回目の加熱処理の加熱温度よりも高い350~550℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスを前記キルン内に噴出し処理原料を加熱処理した後に、当該処理原料を前記2回処理モードの2回目の加熱処理の加熱温度よりも高い800~900℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスで加熱することで活性炭を得る賦活モードをさらに選択可能となっており、
前記制御部は、前記賦活モードが選択されている場合も、前記タール化防止炉を停止させる、請求項
1に記載の加熱処理装置。
【請求項3】
200~450℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスを前記キルン内に噴出することで処理原料を一度に半炭化物に変えるトレファクションモードを選択可能となっており、
前記トレファクションモードにおける加熱処理の加熱温度は、前記1回処理モードおよび前記2回処理モードの加熱処理の加熱温度よりも低く、
前記制御部は、前記トレファクションモードが選択されている場合は、前記タール化防止炉を停止させる、請求項
1に記載の加熱処理装置。
【請求項4】
前記高温ガスは過熱蒸気である、請求項1
または2に記載の加熱処理装置。
【請求項5】
加熱処理炉内に過熱蒸気を充填し、加熱処理炉内を無酸素状態とする、請求項
3に記載の加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱蒸気または高温燃焼ガスにより処理原料の加熱処理し、高炭化物を得ることができる加熱処理装置および高炭化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発明者らは、高温の過熱蒸気または高温燃焼ガスで処理原料を加熱処理することで、半炭化物または炭化物を得ることができる加熱処理装置を提案している(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化物は、バイオマスなどの処理原料を低酸素または無酸素状態で加熱して熱分解(炭化)させることで得られる、炭素を主体とした物質である。炭化の度合いが高いほど高いエネルギーが得られるため、処理原料がより高度に(より多い割合で)炭素に分解された高炭化物のニーズが高くなっている。
しかしながら、上述した特許文献1では、加熱温度が低く高炭化物を効率良く得ることができず、仮に、加熱温度を高めた場合には、加熱処理により発生する可燃ガスに、タールの原因となる炭化水素などの成分が多く含まれてしまい、可燃ガスの温度が排気の途中で低下した場合に炭化水素などの成分が液化しタールが発生することで、タールがガス流通路の内壁に付着してしまい燃焼効率を低下させる場合や、タールが装置から漏れ出してしまうなどの問題があり、高炭化物を効率的に得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、高炭化物を効率良く得ることができる加熱処理装置および高炭化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱処理装置は、過熱蒸気または高温燃焼ガスを処理原料に対して噴出する1または複数のキルンと、前記キルンで発生した可燃ガスを排出する排出口と、前記排出口から排出した前記可燃ガスが流通するガス流通路と、前記ガス流通路を流通した前記可燃ガスが回収される回収部と、を有する、加熱処理装置であって、前記流通路に前記可燃ガスを400℃以上の温度まで加熱するタール化防止炉を設けており、400~900℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスを前記キルン内に噴出することで処理原料を一度に高炭化物に変える1回処理モードと、300~450℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスを前記キルン内に噴出し処理原料を加熱処理した後に、当該処理原料を1回目の加熱処理よりも高い400~900℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスで再度、加熱処理することで高炭化物を得る2回処理モードと、を切替可能となっており、前記1回処理モードが選択されている場合は、前記タール化防止炉を稼働させ、前記2回処理モードが選択されている場合は、前記タール化防止炉を停止させる、制御部を有する。
上記加熱処理装置において、前記2回処理モードの1回目の加熱処理の加熱温度よりも高い350~550℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスを前記キルン内に噴出し処理原料を加熱処理した後に、当該処理原料を前記2回処理モードの2回目の加熱処理の加熱温度よりも高い800~900℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスで加熱することで活性炭を得る賦活モードをさらに選択可能となっており、前記制御部は、前記賦活モードが選択されている場合も、前記タール化防止炉を停止させる構成とすることができる。
上記加熱処理装置において、200~450℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスを前記キルン内に噴出することで処理原料を一度に半炭化物に変えるトレファクションモードを選択可能となっており、前記トレファクションモードにおける加熱処理の加熱温度は、前記1回処理モードおよび前記2回処理モードの加熱処理の加熱温度よりも低く、前記制御部は、前記トレファクションモードが選択されている場合は、前記タール化防止炉を停止させる構成とすることができる。
上記加熱処理装置において、前記高温ガスは過熱蒸気である構成とすることができる。
上記加熱処理装置において、加熱処理炉内に過熱蒸気を充填し、加熱処理炉内を無酸素状態とするように構成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高炭化物を効率良く得ることができる加熱処理装置および高炭化物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る加熱処理装置の平面断面図である。
【
図2】本実施形態に係る加熱処理装置の側面断面図である。
【
図3】本実施形態に係る加熱処理装置の正面図である。
【
図4】本実施形態に係る加熱処理装置の全体を示す構成図である。
【
図5】本実施形態に係る加熱処理モードを説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係るトレファクションモードでの加熱処理動作を説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係る1回処理モードでの加熱処理動作を説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係る2回処理モードの1回目の加熱処理動作を説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係る2回処理モードの2回目の加熱処理動作を説明するための図である。
【
図10】本実施形態に係る賦活モードの1回目の加熱処理動作を説明するための図である。
【
図11】本実施形態に係る賦活モードの2回目の加熱処理動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面に基づいて、本発明に係る加熱処理装置を説明する。なお、本発明に係る加熱処理装置に適用できる被加熱処理物(以下、処理原料という。)は、木材加工工場や廃棄物中間処理場などから発生する木質材や生物由来の有機性資源などに加えて、草木、藻類、生ごみ、鶏糞、畜糞、都市汚泥、し尿汚泥、建設廃材、食品廃棄物、炭素を含む廃プラスチックなどを処理原料として用いることもできる。また、本発明に係る加熱処理装置は、生産工場などで用いる各種の有機物または無機物からなる原料や製品の乾燥、半炭化または炭化を含む加熱処理にも適用できる。さらに、本発明に係る加熱処理装置は、処理原料の加熱処理を連続で行うこともでき、またバッチ処理で行うこともできる。
【0010】
なお、本実施形態に係る加熱処理装置では、複数の加熱処理モードが選択可能となっており、加熱処理モードに応じて処理原料を加熱し炭化させることで、半炭化物、炭化物、高炭化物および活性炭を得ることができる。本実施形態では、半炭化物を固定炭素が30%未満のものとし、炭化物を固定炭素が30%以上かつ60%未満のものとし、高炭化物を固定炭素が60%以上かつ80%未満、活性炭を固定炭素が80%以上のものとして説明する。一般に、半炭化物は、処理原料を200~350℃の比較的低い温度で加熱処理することで得ることができ、炭化物は、処理原料を350~550℃で加熱処理することで得ることができ、高炭化物は処理原料を400~900℃の比較的高い温度で加熱処理することで得ることがで、活性炭は、処理原料を800~900℃の比較的高い温度で賦活させることで得ることができる。加熱温度が高いほどセルロースやリグニンなどの成分も熱分解され炭素に変化するため、炭化物では、半炭化物と比べて、固定炭素の割合が高くなり、高炭化物では、炭化物および半炭化物に比べて、固定炭素の割合がより高くなり、活性炭では、半炭化物、炭化物および高炭化物に比べて、固定炭素の割合がより高くなる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る加熱処理装置1の平面断面図であって、
図2のI-Iに沿う断面図である。また、
図2は本実施形態に係る加熱処理装置1の側面断面図であって、
図1のII-II線に沿う断面図である。さらに、
図3は本実施形態に係る加熱処理装置1の正面図である。
【0012】
加熱処理装置1は、
図2および
図3に示すように、第1キルン10、第2キルン20および第3キルン30と、架台40とを有する。架台40は、第1キルン10、第2キルン20および第3キルン30を載置するための台であり、3段構造となっている。本実施形態では、
図2および
図3に示すように、架台40の上段に第1キルン10が載置され、架台40の中段に第2キルン20が載置され、架台40の下段に第3キルン30が載置される。これにより、加熱処理装置1では、第1キルン10、第2キルン20および第3キルン30が垂直方向に配置される構造となる。一方で、第1キルン10、第2キルン20、第3キルン30は、排出シュート110,210を介して直列に連通しており、第1キルン10に投入された処理原料は、第1キルン10、第2キルン20、第3キルン30内を搬送されながら加熱処理が行われた後に、第3キルン30から高炭化物、炭化物または半炭化物として排出される。なお、第1キルン10では主に処理原料の乾燥処理が行われ、第2キルン20および第3キルン30では主に処理原料の高炭化、炭化または半炭化処理が行われる。以下に、第1キルン10、第2キルン20および第3キルン30の各構成について説明する。
【0013】
第1キルン10は、処理原料を加熱処理する加熱処理炉11を有する。加熱処理炉11の長さは、特に限定されないが、本実施形態においては8m~12mとされる。また、加熱処理炉11の内幅も、特に限定されないが、本実施形態においては0.5m~2.0mとされる。加熱処理炉11の一端側には処理原料を投入するための原料投入口(ホッパー)16が設けられ、他端側には処理原料を第2キルン20へと排出するための原料排出口17が設けられている。また、加熱処理炉11内には、
図1に示すように、一対のスクリューコンベア12,13と、一対のノズル配管14,15とがそれぞれ平行に配置されている。
【0014】
一対のスクリューコンベア12,13のうち、第1のスクリューコンベア12は、右回転(時計回りで回転)することで、処理原料を加熱処理炉11の原料投入口16から原料排出口17まで搬送する。また、第2のスクリューコンベア13は、左回転(反時計回りで回転)することで、処理原料を加熱処理炉11の原料投入口16から原料排出口17へと搬送する。
図1~
図3に示すように、第1のスクリューコンベア12および第2のスクリューコンベア13は並列して配置されるとともに、原料投入口16側から原料排出口17側に向けて平面視した場合に、第2のスクリューコンベア13が、第1のスクリューコンベア12の右側に配置される。なお、一対のスクリューコンベア12,13は、モーター100の駆動により各回転方向に回転する。
【0015】
加熱処理炉11内には、一対のノズル配管14,15が配置される。第1のノズル配管14および第2のノズル配管15は、
図1および
図2に示すように、加熱処理炉11内を延在するとともに、その一端は過熱蒸気発生器50と接続している。また、第1のノズル配管14および第2のノズル配管15には、延在方向に所定の間隔で噴出口が設けられており、過熱蒸気発生器50で発生させた高温の過熱蒸気(200~700℃)を噴出口から噴出することで、加熱処理炉11内の処理原料を加熱処理する。なお、過熱蒸気発生器50は、過熱蒸気に代えて、または過熱蒸気に加えて、蒸気を発生することもでき、発生した蒸気を加熱処理炉11に供給することもできる。
【0016】
また、第1のノズル配管14および第2のノズル配管15は、第1のスクリューコンベア12および第2のスクリューコンベア13と平行に配置される。具体的には、第1のノズル配管14は、第1のスクリューコンベア12よりも外側、すなわち、原料投入口16側から原料排出口17側に向けて平面視した場合に、第1のスクリューコンベア12の左側に配置される。同様に、第2のノズル配管15は、第2のスクリューコンベア13よりも外側、すなわち、原料投入口16側から原料排出口17側に向けて平面視した場合に、第2のスクリューコンベア13の右側に配置される。
【0017】
言い換えると、本実施形態では、右回転(時計回りで回転)する第1のスクリューコンベア12の左側と、左回転(反時計回りで回転)する第2のスクリューコンベア13の右側に、それぞれ一対のノズル配管14,15が配置される。これは、スクリューコンベア12,13の回転方向と反対側に処理原料が寄せられる傾向があり、スクリューコンベア12,13の回転方向と反対側に一対のノズル配管14,15をそれぞれ配置することで、スクリューコンベア12,13の回転方向の反対側に寄せられた処理原料を効率的に加熱処理することができるためである。
【0018】
また、本実施形態では、
図2に示すように、第1のノズル配管14および第2のノズル配管15は、第1のスクリューコンベア12および第2のスクリューコンベア13よりも上方に配置されており、下側または下側方に向かって、過熱蒸気を噴出する構成となっている。これにより、一対のノズル配管14,15は、スクリューコンベア12,13の回転を邪魔することなく、処理原料に向けて過熱蒸気を噴出することができる。
【0019】
また、本実施形態に係る加熱処理装置1では、第2キルン20および第3キルン30においても、第1キルン10と同様に、加熱処理炉21,31内に一対のスクリューコンベア22,23,32,33と一対のノズル配管24,25,34,35とをそれぞれ有する。すなわち、第2キルン20および第3キルン30においても、第1のスクリューコンベア22,32および第2のスクリューコンベア23,33と、第1のノズル配管24,34および第2のノズル配管25,35とが平行に配置されており、右回転(時計回りで回転)する第1のスクリューコンベア22,32の左側に第1のノズル配管24,34が配置され、左回転(反時計回りで回転)する第2のスクリューコンベア23,33の右側に第2のノズル配管25,35が配置される。また、第1のノズル配管24,34および第2のノズル配管25,35は、第1のスクリューコンベア22,32および第2のスクリューコンベア23,33よりも上方に配置される。第2キルン20および第3キルン30においても、各スクリューコンベア22,23,32,33の回転方向と反対側に各ノズル配管24,25,34,35を配置することで、スクリューコンベア22,23,32,33の回転方向と反対側に寄せられた処理原料を効率的に加熱処理することができる。
【0020】
加熱処理装置1では、第1キルン10の加熱処理炉11と第2キルン20の加熱処理炉21とが排出シュート110を介して連通している。第1キルン10の加熱処理炉11の原料排出口17まで搬送された処理原料は、原料排出口17、排出シュート110、第2キルン20の原料投入口26を順に通って、第2キルン20の加熱処理炉21内に搬送される。また、第2キルン20の加熱処理炉21において、処理原料は、一対のスクリューコンベア22,23により原料投入口26側から原料排出口27側へと搬送され、加熱処理炉21の原料排出口27まで搬送される。また、本実施形態に係る加熱処理装置1では、第2キルン20の加熱処理炉21と第3キルン30の加熱処理炉31とは排出シュート210を介して連通しており、処理原料は第2キルン20の加熱処理炉21の原料排出口27、排出シュート210および第3キルン30の原料投入口36を順に通って、第3キルン30の加熱処理炉31内に搬送される。そして、処理原料は、第3キルン30の加熱処理炉31を、一対のスクリューコンベア32,33により原料投入口36側から原料排出口37側へと搬送され、加熱処理炉31の原料排出口37から外部へと排出される。なお、排出シュート110,210や原料排出口17,27,37には、これらを開閉するための開閉バルブを設けることができる。
【0021】
第3キルン30の原料排出口37の下には、原料排出口37から排出された高炭化物、炭化物や半炭化物を無酸素状態で、その温度を大気中で燃えない温度(即ち、非自燃温度)まで下げて外部に排出する処理物排出機構を設ける構成とすることもできる。この場合、処理物排出機構は全長が約3m(2~5m程度が好ましい)の排出用コンベアを備え、加熱処理装置1により加熱処理されて減容された処理原料を、蒸気および過熱蒸気で酸素を追い出した状態で、徐々に搬送することで、処理原料を100℃以下(着火点以下)に降温することができる。
【0022】
また、加熱処理装置1の各部材は、高温度で使用されるため、周囲は耐熱材料(例えば、ステンレス、耐熱鋼)などで構成され、内部は超高温の場合、強度を有するレンガや耐熱耐摩耗性セラミックなどを貼着する構成とすることができる。通常はシェルをステンレス構造として、外部に高温仕様のセラミックファイバー等にて保温する。
【0023】
また、本実施形態に係る加熱処理装置1では、
図4に示すように、過熱蒸気発生器50、燃焼炉60、ガス流通路70、流路切替部71、タール化防止炉80、制御部90、操作部120、および煙突130を有する。なお、
図4は、本実施形態に係る加熱処理装置1の全体を示す構成図である。
【0024】
具体的には、加熱処理装置1では、第1キルン10の排気管19、第2キルン20の排気管29、第3キルンの排気管39がそれぞれガス流通路70と接続している。また、ガス流通路70は、燃焼炉60と接続している。これにより、第1キルン10で発生した可燃ガス、第2キルン20で発生した可燃ガス、第3キルン30で発生した可燃ガスはそれぞれの排気管19,29,39からガス流通路70へと排出され、燃焼炉60へと送られる。
【0025】
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、加熱処理装置1のガス流通路70に流路切替部71およびタール化防止炉80が設けられている。タール化防止炉80は、ガス流通路70を流通する可燃ガスを400℃以上まで加熱するバーナーなどの装置である。キルン10,20,30で発生した可燃ガスは炭化水素などのタールの原因となる成分を含有しており、可燃ガスが低温となった場合に、炭化水素などの成分が液化してタールが発生し、ガス流通路70の配管内壁などに付着することで全体的な燃焼効率が低下してしまう場合や、加熱処理装置1の停止時にガス流通路70に付着したタールが外部に漏れ出てしまう場合などがある。タール化防止炉80によりガス流通路70を流通する可燃ガスを加熱することで、可燃ガスに含まれる炭化水素などの凝集によるタールの発生を抑制し、エネルギー源となる炭化水素を含んだままのエネルギーの高い可燃ガスを燃焼炉60までそのまま送ることができ、その結果、燃焼炉60での燃焼効率をより高めることができる。
【0026】
また、流路切替部71は、たとえば、三方弁やダイヤフラム弁で構成することができ、キルン10,20,30で発生しガス流通路70に排出された可燃ガスを、タール化防止炉80を経由して、または、タール化防止炉80を経由させないで、燃焼炉60まで流通させる流路の切り替えを行う。なお、本実施形態では、流路切替部71は、制御部90の制御に基づいて動作する。
【0027】
さらに、本実施形態に係る加熱処理装置1は、流路切替部71、燃焼炉60およびタール化防止炉80の動作を制御する制御部90を有する。特に、本実施形態において、制御部90は、
図3に示すように、半炭化物、高炭化物または活性炭を得るための処理モードとして、トレファクションモードと、1回処理モードと、2回処理モードと、賦活モードの4つのモードで処理原料を加熱処理することができる。なお、
図5は、本実施形態において実施可能な加熱処理のモードを説明するための図である。
【0028】
図5に示すように、トレファクションモードは、1回の加熱処理により半炭化物を生成物として得るためのモードであり、キルン10,20,30に200~450℃の過熱蒸気を噴出することで、一度の加熱処理により、処理原料から半炭化物を生成する。また、1回処理モードは、1回の加熱処理により高炭化物を生成物として得るためのモードであり、キルン10,20,30に400~900℃の過熱蒸気を噴出することで、一度の加熱処理により、処理原料から高炭化物を生成する。これに対して、2回処理モードとは、1回目の加熱処理を行った後に一度、加熱処理した処理原料(炭化または半炭化された処理原料)を冷却(常温で放置)し、その後、再度、2回目の加熱処理を行うことで高炭化物を得るモードである。具体的に、2回処理モードでは、1回目の加熱処理でキルン10,20,30に300~450℃の過熱蒸気を噴出し、2回目の加熱処理で、キルン10,20,30に、1回目の加熱処理よりも高い400~900℃の過熱蒸気を噴出することで、2度の加熱処理により、処理原料から高炭化物を生成する。さらに、賦活モードとは、2回処理モードと同様に2回の加熱処理を行うが、2回処理モードよりも高い加熱温度で加熱処理を行うことで活性炭を得るモードである。具体的に、賦活モードでは、1回目の加熱処理でキルン10,20,30に350~550℃の過熱蒸気を噴出し、2回目の加熱処理でキルン10,20,30に1回目の加熱処理よりも高い800~900℃の過熱蒸気を噴出する。また、賦活モードでは、2回処理モードと比べて、1回目の加熱処理の加熱温度および2回目の加熱処理の加熱温度は高い温度に設定される。なお、
図5に示すように、1回処理モードおよび2回処理モードにおいては、主に(半数以上の割合で)、高炭化物が生成物として生成されるが、生成物の一部に半炭化物や活性炭などに分類される物質を含むこともできる。同様に、賦活モードでは、主に、活性炭が生成物として生成されるが、生成物の一部に半炭化物や高炭化物などに分類される物質を含むこともできる。本実施形態において、制御部90は、トレファクションモードと、1回処理モードを行う場合と、2回処理モードを行う場合と、賦活モードを行う場合とで、流路切替部71,燃焼炉60およびタール化防止炉80の動作や燃焼温度を変更する。以下に、加熱処理装置1の各モードでの動作について説明する。
【0029】
まず、トレファクションモードの詳細について説明する。
図6は、トレファクションモードにおける加熱処理装置1の動作例を説明するための図である。制御部90は、作業者が操作部120を操作してトレファクションモードを選択すると、過熱蒸気発生器50から200~450℃の過熱蒸気が発生するように、燃焼炉60の動作を制御する。具体的に、燃焼炉60は、制御部90の制御に基づいて、重油、軽油、LPG、LNG、水素、バイオ燃料などの燃料、および、各キルン10,20,30で発生した可燃ガスを燃料として、過熱蒸気発生器50で過熱蒸気を発生させるための高温の燃焼ガスを生成し、生成した高温の燃焼ガスを過熱蒸気発生器50に送る。これにより、過熱蒸気発生器50において、水を200~450℃の過熱蒸気へと変化させ、各キルン10,20,30の第1のノズル配管14,24,34および第2のノズル配管15,25,35から噴出させることができる。また、制御部90は、モーター100を稼働させて、第1キルン10に投入された処理原料を、キルン10,20,30を順に通過して搬送させることで、過熱蒸気による加熱処理により、処理原料が半炭化物へと変化し、第3キルン30から排出されることとなる。たとえば、
図6に示す例では、2000Kg/Hの処理原料を、トレファクションモードで加熱処理することで、1400~1600Kg/Hの半炭化物を得ることができる。
【0030】
また、トレファクションモードにおいて、制御部90は、タール化防止炉60を稼働せず、
図6に示すように、ガス流通路70を流通する可燃ガスがタール化防止炉80を通らないように、流路切替部71の切り替えを制御する。なお、
図6においては、可燃性ガスが流通するガス流通路の流路を黒色で示し、可燃性ガスが流通しないガス流通路の流路をグレーで示す(後述する
図7~11においても同様。)。トレファクションモードでは、処理原料を加熱処理する加熱温度が低いため、処理原料に含まれる炭化水素(タール発生の原因成分)がガス化しにくく、可燃ガスに含まれにくいため、後述するようなタールによる問題が生じにくいためである。
【0031】
次いで、1回処理モードについて説明する。
図7は、1回処理モードにおける加熱処理装置1の動作を説明するための図である。作業者が操作部120を操作して1回処理モードを選択した場合、制御部90により、1回処理モードに応じた流路切替部71、タール化防止炉80および燃焼炉60の動作制御が行われる。具体的には、制御部90は、
図7に示すように、1回処理モードにおいて、燃焼炉60で850~1000℃の燃焼ガスを発生させることで、過熱蒸気発生器50で20℃の水を加熱して400~900℃の過熱蒸気を生成させ、各キルン10,20,30内に噴出させる。また、本動作例において、キルン10,20,30で処理原料が加熱処理されると、処理原料の炭化により250~400℃程度の可燃ガスが発生する。制御部90は、
図7に示すように、ガス流通路70上にある流路切替部71を制御し、可燃ガスがタール化防止炉80を通るようにガス流通路70を切り替える。これにより、可燃ガスは、タール化防止炉80へと進み、タール化防止炉80で400℃以上の温度まで加熱され、タールの原因となる炭化水素などの成分を可燃ガスに含んだ状態のまま、高温の状態で燃焼炉60まで送られることとなり、燃焼炉60で燃料として用いることができる。
【0032】
ここで、1回処理モードで処理原料を一度に高炭化物に変える場合、生の処理原料を400~900℃と比較的高温の過熱蒸気で加熱することとなるが、この場合、処理原料から発生する可燃ガス(乾留ガス)に、処理原料の油分などに由来する炭化水素などの成分が多く含まれる。このような炭化水素などの成分を多く含む可燃ガスが、排気口18,28,38から排出されガス流通路70へと流通する際に、たとえば350℃以下まで降温してしまうと、可燃ガスに含まれる炭化水素などの成分が液化してタールが発生してしまい、このタールがガス流通路70の内壁面に付着などすることで、処理原料の燃焼効率を低下させてしまう原因となってしまう。そこで、本実施形態において、制御部90は、1回処理モードにおいては、タール化防止炉80を稼働するとともに、流路切替部71によりガス流通路70を流通する可燃ガスを、タール化防止炉80を経由させて、タール化防止炉80で400℃以上となるまで加熱することで、可燃ガスに含まれる炭化水素などが凝集してしまいタールが発生することを抑止し、可燃ガスを、炭化水素などを多く含む状態(炭化水素などがタールとして液化しない状態)で燃焼炉60まで送ることができる。炭化水素などは燃焼エネルギーを有しているため、炭化水素を多く含む可燃ガスを燃焼炉60に送ることで、燃焼炉60における燃焼効率をより高めることができる。たとえば、
図7に示す例では、2000Kg/Hの処理原料を、1回処理モードで加熱処理することで、500~800Kg/Hの高炭化物を得ることができる。
【0033】
次に、2回処理モードについて説明する。
図8は、2回処理モードにおける1回目の加熱処理における加熱処理装置1の動作を説明するための図であり、
図9は、2回処理モードにおける2回目の加熱処理における加熱処理装置1の動作を説明するための図である。作業者が操作部120を操作して2回処理モードを選択した場合、制御部90は、まず、
図8に示すように、過熱蒸気発生器50から300~450℃の過熱蒸気が発生するように燃焼炉60を制御する。また、1回目の加熱処理において、制御部90は、タール化防止炉80を停止し、
図8に示すように、キルン10,20,30で発生した可燃ガスがタール化防止炉80を経由せずに燃焼炉60へと送られるように、流路切替部71を制御する。1回目の加熱処理では、処理原料は300~450℃の比較的低い温度で加熱されるため、処理原料に含まれる炭化水素などがガス化しにくく、可燃ガスが炭化水素などの成分を多く含有しないため、可燃ガスの温度が低くなってもタールが発生しにくく、タール化防止炉80を用いて可燃ガスを加熱する必要性が低いためである。なお、2回処理モードの1回目の加熱処理では、処理原料は大部分が低炭化物(炭化物のうち固定炭素が低いもの)となり、処理原料に含まれる炭化水素は、処理原料が加熱処理により低炭化物となる際に、大部分が処理原料に残留し、低炭化物の一部を構成することとなる。たとえば、
図8に示す例では、2000Kg/Hの処理原料に対して、2回処理モードの1回目の加熱処理を行うことで、850~1400Kg/Hの低炭化物を得ることができる。
【0034】
また、2回処理モードにおいて、1回目の加熱処理で生成された低炭化物は、一度、加熱処理装置1から取り出され、一定時間、常温などの温度下で放置(冷却)される。なお、冷却時間や冷却後の温度は特に限定されないが、たとえば、低炭化物を100℃以下(または着火点以下)まで降温させることが好ましい。このように、低炭化物を加熱処理装置1から取り出し一定時間放置することで、低炭化物を乾燥させて、タールの原因となる炭化水素などの成分を低炭化物に固定化することができ、後述する2度目の加熱処理において比較的高温で低炭化物を加熱した場合でも、炭化水素などのタールの原因となる成分がガス化することを抑制することができる。
【0035】
2回処理モードの2回目の加熱処理においては、冷却された低炭化物が加熱処理装置1の原料投入口16から再度投入される。また、2回目の加熱処理において、制御部90は、過熱蒸気発生器50から1回処理モードよりも高い加熱温度、具体的には、400~900℃の過熱蒸気が噴出されるように燃焼炉60の動作を制御する。このように、低炭化物を比較的高い温度で加熱することで、低炭化物をより炭化が進んだ高炭化物に変えることができる。たとえば、
図9に示す例では、2000Kg/Hの低炭化物に対して、2回処理モードの2回目の加熱処理を行うことで、1100~1300Kg/Hの高炭化物を得ることができる。
【0036】
また、2回処理モードでは、1回目の加熱処理を300~450℃という比較的低い温度で行い、その後、加熱処理した処理原料を冷却することで、1回処理モードで生の処理原料を400~900℃という比較的高温の過熱蒸気で一度に加熱する場合と比べて、処理原料から発生する可燃ガスに含まれるタールの量を減らすことができる。具体的には、2回処理モードでは、1回処理モードと比べて、可燃ガスに含まれる、タールの原因となる炭化水素などの成分の量を1/5程度とすることができ、その分、処理後の高炭化物に含まれる炭化水素などの量を増やすことができる。その結果、2回処理モードにおいては、1回処理モードと比べて、よりエネルギーの高い高炭化物を製造することが可能となる。
【0037】
なお、上述したように、2回処理モードにおいては、1回処理モードと比べて、可燃ガスにタールの原因となる炭化水素などの成分が含まれる量が少ないため、可燃ガスがガス流通路70を流通する際に温度が低下しても、可燃ガスからタールが発生し、ガス流通路70の内壁にタールが付着してしまうことを抑制することができる。そのため、本実施形態において、制御部90は、2回処理モードにおいては、2回目の加熱処理においても、タール化防止炉80を停止し、可燃ガスをガス流通路70で加熱することなく、燃焼炉60へと送るように流路切替部71を制御する構成とすることができる。
【0038】
次に、賦活モードについて説明する。
図10は、賦活モードにおける1回目の加熱処理における加熱処理装置1の動作を説明するための図であり、
図11は、賦活モードにおける2回目の加熱処理における加熱処理装置1の動作を説明するための図である。作業者が操作部120を操作して賦活モードを選択した場合、制御部90は、まず、
図10に示すように、過熱蒸気発生器50から350~550℃の過熱蒸気が発生するように燃焼炉60を制御する。また、1回目の加熱処理において、制御部90は、タール化防止炉80を停止し、
図10に示すように、キルン10,20,30で発生した可燃ガスがタール化防止炉80を経由せずに燃焼炉60へと送られるように、流路切替部71を制御する。賦活モードの1回目の加熱処理では、処理原料は350~550℃の比較的低い温度で加熱されるため、処理原料に含まれる炭化水素などがガス化しにくく、可燃ガスが炭化水素などの成分を多く含有しないため、可燃ガスの温度が低くなってもタールが発生しにくく、タール化防止炉80を用いて可燃ガスを加熱する必要性が低いためである。なお、処理原料に含まれる炭化水素は、処理原料が加熱処理により炭化物となった際に、大部分が処理原料に残留し、炭化物の一部を構成することとなる。たとえば、
図10に示す例では、2000Kg/Hの処理原料に対して、賦活処理モードの1回目の加熱処理を行うことで、700~1100Kg/Hの炭化物を得ることができる。
【0039】
また、賦活モードにおいて、1回目の加熱処理で生成された炭化物は、一度、加熱処理装置1から取り出され、一定時間、常温などの温度下で放置(冷却)される。なお、冷却時間や冷却後の温度は特に限定されないが、2回処理モードと同様に、炭化物を100℃以下(または着火点以下)まで降温させることが好ましい。
【0040】
そして、賦活モードの2回目の加熱処理においては、冷却された炭化物が加熱処理装置1の原料投入口16から再度投入される。また、賦活モードの2回目の加熱処理において、制御部90は、過熱蒸気発生器50から、2回処理モードの2回目の加熱処理よりも高い温度、具体的には、800~900℃の過熱蒸気が噴出されるように燃焼炉60の動作を制御する。このように、賦活モードでは、1回目の加熱処理で得た炭化物を、2回目の加熱処理において、より高い温度で加熱することで、高炭化物よりもさらに炭化が進んだ活性炭に変えることができる。たとえば、
図11に示す例では、2000Kg/Hの炭化物に対して、賦活処理モードの2回目の加熱処理を行うことで、700~1200Kg/Hの活性炭を得ることができる。
【0041】
また、賦活モードでは、2回処理モードと同様に、1回目の加熱処理は比較的低温で加熱し、2回目の加熱処理で比較的高温で加熱することで、1回処理モードで生の処理原料を400~900℃という比較的高温の過熱蒸気で一度に加熱する場合と比べて、処理原料から発生する可燃ガスに含まれるタールの量を減らすことができる。なお、賦活モードでは、2回処理モードと同様に、1回処理モードと比べて、可燃ガスにタールの原因となる炭化水素などの成分が含まれる量が少ないため、可燃ガスがガス流通路70を流通する際に温度が低下しても、可燃ガスからタールが発生し、ガス流通路70の内壁にタールが付着してしまうことを抑制することができる。そのため、本実施形態において、制御部90は、賦活モードでは、2回処理モードと同様に、2回目の加熱処理においても、タール化防止炉80を停止し、可燃ガスをガス流通路70で加熱することなく、燃焼炉60へと送るように流路切替部71を制御する構成とすることができる。
【0042】
また、活性炭を製造する場合に、処理原料を850~900℃で一度に加熱してしまうと、処理原料が備長炭のように緻密に縮み、ミクロポアなどの微細な空洞が形成されず、高性能な活性炭を得られなくなる。賦活モードでは、1回目の加熱処理において400~550℃の加熱温度で加熱処理を行い、その後冷却することで、処理原料にミクロポアなどの微細な空洞を形成し定着させることができ、その後、850~900℃の過熱蒸気で加熱することで水性ガス化反応(C+H2O→CO+H2)により、外表面および孔表面の炭素がガス化され、ミクロポアよりもさらに微細な孔を有する、高性能な活性炭を形成することができる。
【0043】
なお、上述した動作例は、本実施形態に係る加熱処理装置1の動作の一例であって、過熱蒸気の温度が上記動作例に限定されるものではない。
【0044】
たとえば、上述した動作例では、トレファクションモード、2回処理モードおよび賦活モードにおいて、タール化防止炉80を停止させる構成を例示したが、燃焼炉60の手前のガス流通路70に温度センサを設置し、当該温度センサで測定した可燃ガスの温度が、たとえば300℃以下となる場合には、トレファクションモード、2回処理モードや賦活モードにおいてもタール化防止炉80を稼働する構成とすることができる。また、上述の動作例では、1回処理モードを行う場合にタール化防止炉80を稼働させる構成を例示したが、燃焼炉60の手前のガス流通路70に温度センサを設置し、当該温度センサで測定したガス流通路70の可燃ガスの温度が350℃未満となった場合に、タール化防止炉80を稼働させるとともに、キルン10,20,30で発生した可燃ガスがタール化防止炉80を経由するように流路切替部71を切り替えて、可燃ガスを350℃以上まで加熱する構成とすることができる。
【0045】
また、操作部120は、作業者が操作することで、加熱処理モードを選択することができ、選択された処理モードの情報が、操作部120から制御部90へと送信される。これにより、制御部90は、流路切替部71、燃焼炉60およびタール化防止炉80の動作を、選択された処理モードに応じて制御する。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る加熱処理装置1は、400~900℃の過熱蒸気を処理原料に対して噴出する1または複数のキルン10,20,30と、キルン10,20,30で発生した可燃ガスを排出する排気口18,28,38と、排気口18,28,38から排出した可燃ガスが流通するガス流通路70と、ガス流通路70を流通した可燃ガスが回収される燃焼炉60と、を有し、ガス流通路70に可燃ガスを400℃以上の温度まで加熱するタール化防止炉80を設けている。これにより、本実施形態に係る加熱処理装置1では、タール化防止炉80を稼働し、ガス流通路70を流通する可燃ガスを400℃以上まで加熱することで、可燃ガスに含まれる炭化水素などの成分が液化しタールが発生することを抑制し、可燃ガスを、燃焼エネルギー源となる炭化水素などの成分を多く含む状態で燃焼炉60まで送ることができ、その結果、燃焼炉60における燃焼効率をより高めることができる。
【0047】
また、本実施形態において、制御部90は、400~900℃の過熱蒸気をキルン10,20,30内に噴出することで処理原料を一度に高炭化物に変える1回処理モードと、400℃未満、より好ましくは200~350℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスをキルン10,20,30内に噴出した後に、加熱処理した処理原料を400~900℃の過熱蒸気または高温燃焼ガスで再加熱することで高炭化物を得る2回処理モードと、を切り替え可能となっており、1回処理モードが選択されている場合は、タール化防止炉80を稼働させ、2回処理モードが選択されている場合は、タール化防止炉80を停止させる。これにより、1回処理モードにおいて、400~900℃の過熱蒸気をキルン10,20,30内に噴出する高温モードで処理原料を加熱する場合は、処理原料からタールの原因となる炭化水素などの成分がガス化しやすいため(可燃ガスに含まれる炭化水素などの成分が多くなるため)、タール化防止炉80を稼働させて、可燃ガスの温度を400℃以上まで加熱することで、ガス流通路70におけるタールの付着を防ぎ、可燃ガスをタールの原因となる炭化水素などの成分を多く含んだ状態のまま燃焼炉60まで送ることができる。
【0048】
また、2回処理モードにおいては、1回目の加熱処理では300~450℃と比較的低温の過熱蒸気で処理原料を加熱するため、2回目の加熱処理では、タールの原因となる炭化水素などの成分が固定化された低炭化物を炭化するため、タールの原因となる炭化水素などの成分がガス化しにくく、可燃ガスに含まれる炭化水素などの成分を少なくすることができる。具体的には、2回処理モードでは、1回処理モードと比べて、可燃ガスに含まれる炭化水素などの成分の量を1/5程度とすることができ、その分、加熱処理後の高炭化物において炭化水素などの成分(またはそれに由来する炭素)の量を多くすることができるため、1回処理モードと比べて、より高いエネルギーを有する高炭化物を製造することが可能となる。また、2回処理モードでは、タール化防止炉80による加熱を行わなくても、可燃ガスに含まれる炭化水素などが液化したタールがガス流通路70の内壁に付着してしまうことを抑制することもできる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
たとえば、上述した実施形態では、燃焼炉60において、キルン10,20,30で発生した可燃ガスを回収し、回収した可燃ガスを燃焼させることで、再度、キルン10,20,30に噴き出す高温の過熱蒸気または高温燃焼ガスを生成する構成を例示したが、燃焼炉60に代えて、可燃ガスを別に利用するために燃焼させずに回収のみする装置を設ける構成とすることもできる。
【0051】
また、上述した実施形態では、過熱蒸気を噴出することで処理原料の加熱処理を行う構成を例示したが、この構成に限定されず、過熱蒸気に代えて高温燃焼ガスを噴出することで処理原料の加熱処理を行う構成としてもよい。また、上述した実施形態に係る加熱処理装置1において、第1キルン10で過熱蒸気を用いて加熱処理を行い、第2キルン20および第3キルンで高温燃焼ガスを用いて加熱処理を行う構成としてもよい。
【0052】
さらに、上述した実施形態では、各キルン10,20,30をそれぞれ略水平に配置する構成を例示したが、この構成に限定されず、各キルン10,20,30を下降傾斜、たとえば0.2~2度の範囲で、原料排出口17,27,37側が低くなるように傾斜する構成としてもよいし、反対に、各キルン10,20,30を上昇傾斜、たとえば0.2~2度の範囲で、原料排出口17,27,37側が高くなるように傾斜する構成としてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、タール化防止炉80を有する構成を例示したが、1回処理モードを実行しない構成とする場合には、タール化防止炉80を有しない加熱処理装置を用いることができる。1回処理モード以外のモードでは、タールの原因となる炭化水素などの成分が可燃ガス中に多く含まれないため、タールの発生を抑制するために可燃ガスを加熱するためのタール化防止炉80を省略することができるためである。
【0054】
また、上述した実施形態では、第1キルン10に原料投入口16を有する構成を例示したが、この構成に加えて、原料投入口16に処理原料を投入するためのコンベアなどをさらに有する構成とすることもできる。
【0055】
さらに、上述した実施形態では、第1キルン10、第2キルン20および第3キルン30の3つのキルンを有する構成を例示したが、この構成に限定されず、第1キルン10および第2キルン20のみから構成してもよいし、4以上のキルンを有する構成としてもよい。
【0056】
加えて、上述した実施形態では、一対のスクリューコンベアを有する構成を例示したが、単一のスクリューコンベアまたは3本以上のスクリューコンベアを有する構成とすることができる。
【0057】
また、上述した実施形態では、トレファクションモードを選択可能な構成を例示したが、この構成に限定されず、トレファクションモードを実行しない構成とすることができる。同様に、上述した実施形態では、賦活モードを選択可能な構成を例示したが、この構成に限定されず、賦活モードを実行しない構成とすることもできる。
【0058】
さらに、上述した実施形態では、2回処理モードにおいて、制御部90は、タール化防止炉80を停止し、キルン10,20,30で発生した可燃ガスを、タール化防止炉80を経由しないで、ガス流通路70から燃焼炉60まで送るように、流路切替部71を制御する構成を例示したが、この構成に限定されず、作業者の操作部120の操作により、タール分の多い処理原料の場合などに、2回処理モードにおいても、タール化防止炉80を稼働し、可燃ガスがタール化防止炉80を経由するように流路切替部71を制御する構成することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…加熱処理装置
10,20,30…キルン
11,21,31…加熱処理炉
12,22,32…第1のスクリューコンベア
13,23,33…第2のスクリューコンベア
14,24,34…第1のノズル配管
15,25,35…第2のノズル配管
16,26,36…原料投入口
17,27,37…原料排出口
18,28,38…排気口
19,29,39…排気管
110,210…排出シュート
40…架台
50…過熱蒸気発生器
60…燃焼炉
70…ガス流通路
71…流路切替部
80…タール化防止炉
90…制御部
100…モーター
120…操作部
130…煙突
【要約】 (修正有)
【課題】高炭化物を効率良く得ることができる加熱処理装置および高炭化物の製造方法を提供する。
【解決手段】過熱蒸気または高温燃焼ガスを処理原料に対して噴出する1または複数のキルン10,20,30と、キルン10,20,30で発生した可燃ガスを排出する排気口と、排気口から排出した前燃ガスが流通するガス流通路70と、ガス流通路70を流通した可燃ガスが回収される回収部60と、を有する、加熱処理装置であって、ガス流通路70に可燃ガスを400℃以上の温度まで加熱するタール化防止炉80を設けている。
【選択図】
図4