(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】粒子、粒子含有組成物および粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/16 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
C12N1/16 J
(21)【出願番号】P 2019571149
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2019004445
(87)【国際公開番号】W WO2019156174
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018022501
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518050229
【氏名又は名称】合同会社レビアスファーマ
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】小泉 桂一
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-200180(JP,A)
【文献】特開2009-291076(JP,A)
【文献】特開昭55-156564(JP,A)
【文献】特表平05-504131(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106892978(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101709077(CN,A)
【文献】特開2014-136692(JP,A)
【文献】特開2006-129834(JP,A)
【文献】Letters in Applied Microbiology,2002年,Vol. 35, No. 4,pp. 267-271
【文献】Carbohydrate Research, 1991, Vol. 219, pp. 203-213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも60℃以上の温度で加熱処理した酵母から得られ、
超純水に分散させた際のその分散液を濃厚系粒径アナライザーを用いて測定し算出された平均粒子径が
50nm以上150nm未満である粒子であって、上記粒子が球体であり、糖を主成分としており、耐圧性、耐熱性、耐寒性、耐乾燥性からなる群から選ばれる少なくとも一つと、抗酸化力および免疫活性化力の少なくとも一つと、を有することを特徴とする粒子
(但し、幹細胞の未分化維持材または増殖促進剤として用いられる粒子、および、糖尿病の予防または改善剤として用いられる粒子を除く)。
【請求項2】
少なくとも60℃以上の温度で加熱処理した酵母から得られ、
超純水に分散させた際のその分散液を濃厚系粒径アナライザーを用いて測定し算出された平均粒子径が150nm以上
500nm以下である粒子であって、上記粒子が球体であり、糖を主成分としており、耐圧性、耐熱性、耐寒性、耐乾燥性からなる群から選ばれる少なくとも一つと、抗酸化力および免疫活性化力の少なくとも一つと、を有することを特徴とする粒子
(但し、幹細胞の未分化維持材または増殖促進剤として用いられる粒子、および、糖尿病の予防または改善剤として用いられる粒子を除く)。
【請求項3】
請求項1または2記載の粒子を含むことを特徴とする粒子含有組成物。
【請求項4】
上記粒子が組成物全体に対し10~99重量%含まれる請求項3記載の粒子含有組成物。
【請求項5】
請求項1または2記載の粒子を製造する方法であって、酵母を加熱する工程と、上記工程により得られた加熱物から粒子を分離する工程とを備えることを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項6】
上記酵母を加熱する工程の加熱が、煮沸である請求項5記載の粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性等の特性に優れるとともに、抗酸化力および免疫活性化力を有する、加熱処理した酵母から得られ、最大径が1nm以上150nm未満または150nm以上1000nm以下である粒子、これらの粒子を含有する組成物および上記粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、数多くの微細な粒子が様々な分野で用いられている。このような微細な粒子として、例えば、フラーレンやカーボンナノチューブ等のナノ粒子や、リポソーム等の天然物由来の微細な粒子が知られている。前者は耐熱性や耐溶剤性等の物性があり、後者は天然物由来で人体への適用が容易である等、多種多様な物性や特性が認められている。
【0003】
しかしながら、各技術分野において、このような微細な粒子の物性や特性は、更なる向上が望まれているのが現状である。また、微細な粒子は、微細化、ナノ化していくほど製造が困難であり、その品質安定性や生産性の向上も望まれている。
【0004】
このような微細な粒子を用いる技術分野のうち、本発明者らは、製剤の技術分野に着目した。すなわち、製剤の技術分野では、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、有用性を高める等の目的で、ほとんどすべての製剤に、賦形剤、安定剤、保存剤、成形助剤等の添加剤が添加されている(特許文献1参照)。しかし、製剤の硬度を高めるための添加剤を用いると、製剤の硬度は高まるものの、崩壊性が低下するという問題が生じる傾向にある。また、逆に製剤の崩壊性を重視すると、所望の硬度を得ることができないという問題が生じる傾向にある。
【0005】
ところで、製剤のなかでも、医師等の処方箋が不要な一般用医薬品は、管理が厳格な医療用医薬品とは異なり、薬局等に陳列され、一般の人が容易に購入できるようになっている。しかしながら、薬局等の店舗構成によっては店内の温度が一定でないため、一般用医薬品は、医療用医薬品に比べ、より耐熱性、耐寒性が求められる傾向にある。また、食品、化粧品等も同様に、より耐熱性、耐寒性が求められる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、製剤に添加することで硬度、崩壊性等の特性を容易に制御することができ、しかも、これらの特性を損なうことなく耐熱性、耐寒性を高めることのでき、一般用医薬品に配合しても充分に特性を発揮することのできる、新しい微細な粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[8]を要旨とする。
[1]加熱処理した酵母から得られ、最大径が1nm以上150nm未満である粒子。
[2]加熱処理した酵母から得られ、最大径が150nm以上1000nm以下である粒子。
[3]上記粒子が球体である、[1]または[2]の粒子。
[4]上記粒子が糖を主成分としている、[1]~[3]のいずれかの粒子。
[5][1]~[4]のいずれかの粒子を含む粒子含有組成物。
[6]上記粒子が組成物全体に対し10~99重量%含まれる、[5]の粒子含有組成物。
[7][1]~[4]のいずれかの粒子を製造する方法であって、酵母を加熱する工程と、上記工程により得られた加熱物から粒子を分離する工程とを備える粒子の製造方法。
[8]上記酵母を加熱する工程の加熱が煮沸である、[7]の粒子の製造方法。
【0009】
すなわち、本発明者は、様々な用途に適用可能である微細な粒子を得るため、種々の検討を重ねた。その結果、これまで明らかにされていない新しい微細な粒子を見い出した。この粒子は、その後の研究の結果、分散性、耐熱性、耐寒性等に優れるだけでなく、抗酸化力および免疫活性化力を有していることが判明した。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の粒子は、加熱処理した酵母から得られるものであるため、天然の食物繊維に由来する健康面の利益を享受することができる。しかも、最大径が、1~1000nmと極めて小さく、水系および油系のいずれにも耐溶解性を有し、かつ耐熱性、耐圧性、耐寒性、耐乾燥性等に優れているため、幅広い製剤に配合することができる。また、本発明の粒子を製剤に用いると、硬度、崩壊性等の特性の制御を容易に行うことができ、所望の特性を備えた製剤を得ることができる。さらに、本発明の粒子は、抗酸化力および免疫活性化力を有しているため、上記粒子を含む粒子含有組成物は、活性酸素を抑えるとともに、免疫系の調節を行うことが期待できる。
【0011】
なかでも、本発明の粒子が球体であると、流動性、分散性に優れるものとなる。
【0012】
そして、本発明の粒子が糖を主成分としていると、相対的にアレルゲンとなりやすいタンパク質含量が少ない、あるいは全くなくなるため、服用に際し、より安全性の高いものとすることができる。
【0013】
また、本発明の粒子含有組成物のうち、上記粒子を組成物全体に対し10~99重量%含むものは、より本発明の粒子が有する抗酸化力および免疫活性化力の恩恵を被ることができる。
【0014】
さらに、本発明の粒子を製造する方法であって、酵母を加熱する工程と、上記工程により得られた加熱物から粒子を分離する工程とを備えるものは、より安全に粒子を製造することができる。
【0015】
なかでも、上記酵母を加熱する工程の加熱が煮沸であると、より本発明の粒子の製造効率を高めることができる。
【0016】
なお、本発明において「主成分」とは、その材料の特性に影響を与える成分の意味であり、その成分の含有量は、通常、材料全体の50重量%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態である粒子Aおよび粒子Bの製造過程を説明するための図である。
【
図2】(a)は上記粒子Aの集合体を示した写真であり、(b)は上記粒子Aの透過型電子顕微鏡写真であり、(c)は上記粒子Bの透過型電子顕微鏡写真であり、(d)は上記粒子Aおよび粒子Bの製造過程における別分画[液体(III)]に含まれる粒子の透過型電子顕微鏡写真であり、(e)は上記粒子Aおよび粒子Bの製造過程における別分画[白色浮遊物(IV)]に含まれる粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図3】上記粒子Aの粒子径の分布を示した図である。
【
図4】上記粒子Bの粒子径の分布を示した図である。
【
図5】上記液体(III)に含まれる粒子の粒子径の分布を示した図である。
【
図6】上記白色浮遊物(IV)に含まれる粒子の粒子径の分布を示した図である。
【
図7】上記粒子AのRaman分析スペクトルを示した図である。
【
図8】(a)は上記粒子Aを超純水に分散させたものを凍結乾燥した状態を示した写真であり、(b)はその粒子Aを再度超純水に分散させた状態を示した写真であり、(c)はその粒子Aの透過型電子顕微鏡写真であり、(d)はその粒子Aの粒子径の分布を示した図である。
【
図9】(a)は凍結乾燥した粒子Aを再度超純水に分散させ、超純水ごとオートクレーブした状態を示した写真であり、(b)はその粒子Aの透過型電子顕微鏡写真であり、(c)はその粒子Aの粒子径の分布を示した図である。
【
図10】(a)は凍結乾燥後の粒子Aを再度超純水に分散させ、一週間経過後の状態を示した写真であり、(b)はその粒子Aの透過型電子顕微鏡写真であり、(c)はその粒子Aの粒子径の分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。但し、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明において「酵母」とは、子のう菌類および担子菌類等に属する、単細胞で形がほぼ球形の真核微生物であって、生活環の大部分を単細胞で経過する、いわゆる発酵をおこなう酵母全般をいい、酵母そのものはもちろん、凍結状態および乾燥状態等、各種状態を含むものを意味する。均一性の高い粒子を大量に製造することが容易な点から、とりわけ、サッカロマイセス属やシゾサッカロマイセス属に属する酵母が好ましく用いられる。
【0020】
本発明において「粒子」とは、電子顕微鏡で観察した際、その構造が、2層構造、2重膜構造、多層構造、多重膜構造にも見えるものを意味する。すなわち、本発明の粒子は、少なくとも最外層と内部とは異なる電子密度を有している。
【0021】
本発明の一実施の形態である粒子は、最大径が1~1500nmであり、40~1000nmであることが好ましく、50~800nmであることがより好ましく、さらに好適には50~500nmである。そして、本発明において「粒子の最大径」とは、粒子が球体である場合にはその直径をいい、その他の形状である場合には、その最大長をいう。粒子の径は、例えば、得られた粒子を超純水に分散させ、その分散液を、濃厚系粒径アナライザーを用いて測定することができる。濃厚系粒径アナライザーを用いて粒子径を測定した場合、算出された平均粒子径をその粒子の最大径とし、算出された平均粒子径が、最大径で規定される範囲に入っていればよい。
【0022】
本発明の一実施の形態である粒子は、通常、カーボンナノチューブ等の尖った部分がない形状をしており、好ましくは球体の形状をしている。また、粒子の表面は平滑であり、物理的な接触によって形成された摩耗痕は見られない。上記球体には、真球だけでなく、卵形、楕円体等の形状も含まれる。粒子の形状は、例えば、ネガティブ染色した粒子を、透過型電子顕微鏡で撮影し、その外観を観察することにより判別することができる。例えば、ペレット状に集合した粒子を超純水に分散させ、この分散液をメッシュに吸着させ、その上に染色剤を載せる。そして、余剰の染色液を濾紙で吸い取り、乾燥させたものを、透過型電子顕微鏡で撮影することにより、粒子の外観を観察することができる。
【0023】
本発明の一実施の形態である粒子は、水系の液体に対する分散性が高い。また、その優れた分散性が長期間保たれる。粒子の分散性は、例えば、得られた粒子を超純水に分散させ、その分散液を透過型電子顕微鏡で撮影し、その分散の程度を観察することにより判別することができる。また、上記分散液を、一定期間保存後のものと対比することにより、分散性保持の程度を判別することができる。
【0024】
本発明の一実施の形態である粒子は、耐圧性および耐熱性に優れ、少なくとも2気圧までの加圧、121℃までの加熱により粒子径の変化がほぼない。粒子の耐圧性、耐熱性は、例えば、超純水に分散させた粒子と、この分散液を加圧および加熱したものとに含まれる粒子について、それぞれ濃厚系粒径アナライザーで粒子径の分布を算出し、両者を対比したときに、両者において粒子径の分布が変動していないことから判別することができる。
【0025】
本発明の一実施の形態である粒子は、耐寒性および耐乾燥性に優れ、-50から-80℃までの冷却、乾燥により粒子径の変化がほぼない。粒子の耐寒性および耐乾燥性は、例えば、超純水に分散させた粒子と、この分散液を凍結乾燥(-50℃)し、その乾燥物を再度超純水に分散させたものに含まれる粒子について、それぞれ濃厚系粒径アナライザーで粒子径の分布を算出し、両者を対比したときに粒子径の分布が変動していないことから判別することができる。また、上記凍結乾燥物を-80℃で7日間保存後、超純水に分散させたものに含まれる粒子を、同様に対比させても粒子径の分布の変動はない。
【0026】
本発明の一実施の形態である粒子は、優れた抗酸化力を有している。なかでも、最大径が80nm以上、好ましくは150nm以上、1500nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下の粒子が優れた抗酸化力を有し、80nm以上1500nm以下、好ましくは150nm以上1000nm以下の粒子がより優れた抗酸化力を有し、150nm以上800nm以下の粒子がさらに優れた抗酸化力を有している。上記粒子が抗酸化力を有していることは、例えば、得られた粒子を超純水に分散させ、その分散液をESRスピントラッピング法(以下「ESR法」という)により、体内で発生する活性酸素であるスーパーオキシドラジカル、ヒドロキシルラジカルおよび一重項酸素を消去する能力を測定し、その結果から判別することができる。
【0027】
本発明の一実施の形態である粒子は、優れた免疫活性化力を有している。なかでも、最大径が1nm以上、好ましくは50nm以上、250nm未満、好ましくは150nm未満の粒子が優れた免疫活性化力を有し、1nm以上250nm未満、好ましくは1nm以上150nm未満の粒子がより優れた免疫活性化力を有し、50nm以上150nm未満の粒子がより一層優れた免疫活性化力を有している。上記粒子が免疫活性化力を有していることは、例えば、マクロファージ等の免疫担当細胞を活性化するリポポリサッカライド(LPS)をポジティブコントロールとしたときの、インターフェロンβ(IFNβ)、インターロイキン-6(IL-6)および腫瘍壊死因子α(TNFα)の産生量を測定し、その結果から判別することができる。
【0028】
なお、加圧、加熱、冷却、乾燥を行っても、本発明の一実施の形態である粒子の構造は変化しない。このことは、粒子を超純水に分散させたものと、この分散液を加圧および加熱したもの、または冷却および乾燥したものを再度超純水に分散させ、電子顕微鏡でそれらに含まれる粒子の構造を対比観察することにより判別することができる。これらは、従来のナノ粒子である、リポソーム等では得られなかった特性である。
【0029】
このような粒子は、例えば、酵母を加熱する工程と、上記工程により得られた加熱物から粒子を分離する工程とを備える方法により製造することができる。
【0030】
上記酵母を加熱する工程としては、例えば、酵母を培養液ごと95℃近傍に設定された加熱乾燥室に入れ、加熱と乾燥とを同時に行うことや、酵母を液体に浸漬し、この液体ごと酵母を加熱すること等があげられ、より好ましくは液体ごと酵母を加熱することであり、加熱工程の加熱が煮沸であることがより好ましい。上記液体ごと酵母を加熱することについて、より詳しく説明する。まず、材料となる、酵母を準備する。この酵母はどのような状態であってもよいが、粒子の製造効率を高める点から、乾燥、粉砕されていることが好ましい。上記準備した酵母を別途用意した液体に浸漬し、通常、60℃以上で3分間以上、加熱することにより、上記酵母を構成する成分を液体に溶解させた加熱物を得る。なお、加熱時間が長いほど酵母から得られる粒子の収率が高まる傾向がみられる。上記液体としては、例えば、水、アルコール等の各種溶媒として用いられる液体を単独もしくは2種以上混合して用いることがあげられる。しかし、粒子を服用等することを考慮すると、健康面への配慮の点から、水もしくは水系の液体が好ましく用いられる。
【0031】
なお、本発明において「酵母を構成する成分を液体に溶解させる」とは、細胞壁の基本骨格と基質とを分離する等して酵母の構造を崩壊させ、液体中に崩壊した酵母の成分が分散した系を形成することをいい、酵母の成分の一つである多糖をサイズの小さいものに分解する等により、液体中に分散させることも含む意味である。
【0032】
つぎに、上記工程により得られた加熱物から、本発明の粒子を分離する工程としては、例えば、遠心分離、フィルターろ過、限外ろ過、超遠心分離等があげられる。これらは、材料となる細胞壁を有する生物の種類等に応じて、より適するものが用いられる。なかでも、操作の容易性の点から、遠心分離、フィルターろ過が好ましく、精製度を高める点から、これらを組み合わせて用いることが好ましい。
なお、加熱工程を経由した酵母が乾燥状態である場合には、これを液体に浸漬させ、液体中に崩壊した酵母の成分を分散させたものに対し、上記粒子を分離する工程を行うことが好ましい。
【0033】
上記遠心分離としては、粒子のサイズにもよるが、例えば、加熱物を1万~100万Gで遠心分離し、その上清を採取する方法があげられる(粗分離工程)。さらに、より精製度を高めるために、例えば、上記上清をポアサイズ0.22~0.45μmのフィルターでろ過し、そのろ液を得るようにしてもよい(精密分離工程)。
【0034】
このように、本発明の一実施の形態である粒子は、酵母を構成する成分、例えば各種糖類等に対し、末端分子の置換等を行うことを目的とする手法(例えば、苛性ソーダ、塩酸等を用いる手法)を採用していないため、安全性にも優れている。
【0035】
本発明の一実施の形態である粒子は、例えば、製剤、食品、化粧品等に配合することにより、添加剤として各特性、例えば、硬度や崩壊性等の制御が可能になる。製剤等において、添加剤を検討する際には、添加剤が主剤の配合量に制限を生じさせないことが重要になる。しかし、本発明の粒子は、製剤等を構成する組成物に対し比較的少量の添加で各特性の制御が可能となるため、主剤の配合量に制限を生じさせることがなく、配合の自由度を高めることができる。
【0036】
本発明の一実施の形態である粒子を添加剤として配合する場合には、組成物全体に対し、0.01~95重量%含まれていることが好ましく、より好ましくは0.01~90重量%、さらに好ましくは0.1~50重量%、より一層好ましくは1~10重量%である。
【0037】
また、本発明の一実施の形態である粒子は、例えば、製剤、食品等に配合することにより、抗酸化作用を有する組成物および免疫活性化作用を有する組成物として利用することができる。
抗酸化作用を有する組成物または免疫活性化作用を有する組成物に上記粒子を配合する場合には、例えば、組成物全体に対して粒子が10重量%以上含まれることが好ましく、20重量%以上含まれることがより好ましく、30重量%以上含まれることがさらに好ましく、40重量%以上含まれることがより一層好ましく、さらに一層好ましくは50重量%以上含まれることである。また、組成物全体に対して粒子含量が99重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましく、70重量%以下であることがより一層好ましく、さらに一層好ましくは60重量%以下である。含有量が少なすぎると、所望の作用を発揮するために多量の摂取が必要となる傾向がみられ、逆に多すぎると所望の作用を得るためのコントロールがし辛くなる傾向がみられるためである。
【実施例】
【0038】
つぎに、実施例を説明する。まず、本発明の粒子自体について検討を行い(実施例1)、ついで、これらの粒子を用いた製剤について検討を行った(実施例2)。ただし、本発明は、これに限定されるものではない。
【0039】
〔本発明の粒子自体についての検討〕
下記に示す手順で本発明の一実施の形態である粒子Aおよび粒子Bをそれぞれ作製した。そして、得られた粒子Aおよび粒子Bについて、下記のとおりに粒子径の分布の算出を行った。そして、粒子Aについては、外観の観察、構成糖およびリグニンの分析、Raman分析、耐熱性、耐圧性、耐寒性および耐乾燥性の評価、水分散性および保存性の評価を下記の各項目に従い行った。
さらに、粒子Aおよび粒子Bについて、抗酸化力および免疫活性化力について測定し、それぞれ後記の項目に従い評価した。
【0040】
〔実施例1〕
酵母(日本ガーリック社製、天然ビール酵母)100gを1Lの95℃の水に浸漬し、3時間加熱を続けて加熱物を得た。この加熱物を13,250Gで遠心分離を行い、比較的大きなサイズの夾雑物を取り除いた上澄を得た。この上澄を140,000Gで遠心分離を行った結果、
図1に示すように4つに分画された。
すなわち、
図1において、遠心管底部に付着する透明のペレット(I)、このペレットの近傍の遠心間底部に浮遊する白色の泥状物(II)、遠心管中間部の茶色の液体(III)および遠心管上層の白色浮遊物(IV)の4つの分画である。上記透明のペレット(I)は、粒子Aがペレット状に集合したものである。このペレット(I)だけを取り出したものを
図2(a)示す。また、上記泥状物(II)は、粒子Bの集合体である。なお、上記液体(III)は、再度超遠心を行うことで、上記ペレット(I)および上記泥状物(II)に分画されるため、上記液体(III)には、上記粒子Aおよび粒子Bが含まれていると考えられる。
得られた粒子Aおよび粒子Bを定法に従い凍結乾燥(東京理科器械社製、EYEL4)して、以下の検討に供した。
【0041】
(粒子径の分布の算出)
上記粒子Aおよび粒子Bについて、これらをそれぞれ超純水に分散し、その分散液を濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製、FPAR-1000)を用いて、ヒストグラム法により粒子径の分布を算出した。
図3に粒子Aの粒子径の分布図を示し、
図4に粒子Bの粒子径の分布図を示す。これらは、いずれも正規分布を示していた。なお、
図3および
図4において、正規分布から外れた粒子径の粒子がごく微量現れているが、これらは分画しきれなかったものが混入しているものと考えられる。したがって、粒子Aまたは粒子Bの平均粒子径を算出する際には、これらの混入粒子を除いたもので行うこともできる。
また、上記液体(III)に含まれる粒子および白色浮遊物(IV)に含まれる粒子についても同様に粒子径の分布を算出した。
図5に液体(III)に含まれる粒子の粒子径の分布図を示し、
図6に白色浮遊物(IV)に含まれる粒子の粒子径の分布図を示す。
【0042】
(外観の観察)
上記粒子A、粒子B、上記液体(III)に含まれる粒子および上記白色浮遊物(IV)に含まれる粒子をそれぞれネガティブ染色し、透過型電子顕微鏡により撮影した。粒子Aの写真を
図2(b)に示し、粒子Bの写真を
図2(C)に示す。また、上記液体(III)に含まれる粒子の写真を
図2(d)に示し、白色浮遊物(IV)に含まれる粒子の写真を
図2(e)に示す。これらは、得られた各粒子を超純水に分散させ、この分散液をコロジオン貼付メッシュ(日新イーエム社製)に吸着させ、その上に酢酸ウラニル(染色剤)を載せる。そして、余剰の酢酸ウラニルを濾紙で吸い取り、乾燥させたものを、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM-1400TC)で撮影したものである。粒子Aの代表的なものは、
図2(b)に示されるとおり、その最大径が約70nmの球体であった。また、粒子Bの代表的なものは、
図2(c)に示されるとおり、その最大径が約500nmを超える球体であった。
【0043】
(構成糖の分析)
上記粒子Aについて、その構成糖の分析を行った。構成糖の分析は以下の通り行った。すなわち、まず、ペレット状に集合し精製度が高まった粒子Aを真空乾燥機にて60℃で約1日乾燥させたものを供試試料(無水ベース)とし、この供試試料の適量(約0.3g)を天秤でビーカーへ量り取り、72%硫酸3mLを加え、30℃で撹拌しながら1時間放置した。この反応液を精製水84mLと混釈しながら耐圧瓶に完全に移した後、120℃で1時間オートクレーブで加熱分解した。加熱分解後、分解液と残渣をろ別し、ろ液と残渣の洗液を加えて100mLに定容したものを検液とした。また、分解時の糖の過分解を補正するために、単糖を用いた回収率試験を並行して行った。検液中の単糖(ラムノース、リボース、キシロース、アラビノース、フルクトース、マンノース、グルコース、ガラクトース)については、高速液体クロマトグラフ法(蛍光検出器)により定量を行った。分析に使用した装置は、ジーエルサイエンス社製、GL-7400 HPLC systemである。得られた分解液の単糖濃度と試料分解量から、試料中の構成糖量を算出した。得られた結果を下記の表1に示す。なお、表1の結果は、単糖の回収率試験より求めた分解時の糖過分解補正係数(Sf)を用い構成糖量を補正したものである。また、フルクトースは過分解されやすいため、Sfが大きな値となり、含まれる誤差が大きい。よって、過分解補正後のフルクトース量は参考値扱い(例えば表1中では「※2」として記載)としている。
【0044】
【0045】
上記表1に示される結果よりわかるように、上記粒子Aの構成糖は、ほぼ全量がグルコースである。この結果は、酵母の細胞壁が主にβ-グルカンで構成され、ヘミセルロースおよびリグニンをほぼ含有していないことに相関すると思われる。しかしながら、粒子Aの構成糖には、ガラクトース、ラムノース、マンノース等も含まれていることから、粒子Aが単なる成分の単離物でない。
【0046】
(リグニンの分析)
上記粒子Aのリグニンの分析は、以下のとおり行った。本来、リグニン測定は、試料中の可溶分(油分、タンニン、ポリフェノール等)を有機溶剤等で事前に除去するのが定法であるが、上記リグニンの分析では抽出を行っていない。すなわち、上記リグニンの分析では、酸不溶性リグニンの定量として、上記構成糖分析でろ別し得られた残渣を105℃で乾燥し重量をはかり分解残渣率を算出し、さらに、残渣中の灰分を測定し補正することで、酸不溶性リグニン濃度を算出した。また、酸可溶性リグニンの定量として、上記構成糖分析でろ別し得られたろ液を、ダブルビーム分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、U-2001型)を用いて210nmの波長で測定し、下記の式(1)に従い、カバ(植物名)の酸可溶性リグニンの吸光係数を用いて濃度を算出した。得られた結果を下記の表2に示す。なお、カバのリグニンの吸光係数は110L・g-1cm-1近傍であることが知られている。
【0047】
【0048】
【0049】
上記表2に示されるとおり、上記粒子Aには、リグニンが僅かであるが含まれることがわかった。
【0050】
(Raman分析)
上記粒子AのRaman分析は、粒子Aを少量(0.5mm四方程度)スライドガラスに載せたものに対し、inVia Reflexラマンマイクロスコープを用い、下記の条件により行った。すなわち、LD励起グレーンレーザー(波長532nm)を用い、使用対物レンズ50倍、照射レーザービーム径1.5μm、照射レーザーパワー1mW以下、測光ラマンシフト範囲4000~150cm
-1、波数分解能6cm
-1、積算回数10回とし、データベースとのスペクトル波形比較照合によるライブラリー検索により分析を行った。得られたスペクトルを
図7に示す。
【0051】
上記分析の結果、上記粒子Aは、意外なことにでんぷんに近いスペクトルを有することがわかった。また、
図7においても、主に水酸基に帰属する3500~3300cm
-1を中心とした幅の広いピークがみられ、C-H結合に帰属する2900cm
-1近傍のピークがみられた。なお、上記粒子Aをヨウ素デンプン反応に付したところ、反応はみられなかった。したがって、粒子Aが、でんぷんではないことは確認されている。
【0052】
<耐熱性、耐圧性、耐寒性および耐乾燥性>
まず、上記粒子Aを超純水に分散させたものを凍結乾燥した〔
図8(a)〕。そして、その凍結乾燥物を再度超純水に分散させたもの〔
図8(b)〕を、上記外観の観察と同様にして観察し〔
図8(c)〕、上記濃厚系粒径アナライザーで粒子径の分布を算出した〔
図8(d)〕。
つぎに、上記凍結乾燥物を超純水に分散させたもの〔
図9(a)〕を、さらにオートクレーブにより加熱加圧(2気圧、121℃、20分間)し、上記外観の観察と同様に観察し〔
図9(b)〕、上記濃厚系粒径アナライザーで粒子径の分布を算出した〔
図9(c)〕。
これらの結果を対比させて考察した結果、凍結乾燥を行っても、加熱加圧を行っても、粒子Aの外観および粒子径に大きな変化はみられず、粒子Aは、耐熱性、耐寒性および耐乾燥性に優れることがわかった。粒子Bについても、粒子Aと同様の実験を行ったが、粒子Aと同様に優れた耐熱性、耐寒性および耐乾燥性を有していた。
【0053】
<水分散性および保存性>
上記凍結乾燥物を超純水に分散させたもの〔
図8(b)〕を、4℃で1週間保存したものを
図10(a)に示す。また、この保存後の分散液に含まれる粒子Aを、上記外観の観察と同様に観察したものを
図10(b)に示す。そして、この保存後の分散液に含まれる粒子Aを上記濃厚系粒径アナライザーで粒子径の分布を算出したものを
図10(c)に示す。これらの結果は、いずれも経時によって粒子Aの外観および粒子径に大きな変化はみられないことを示しており、長期保存によっても、粒子Aは水分散性が保たれ、保存性に優れることがわかった。また、粒子Bについても、粒子Aと同様の実験を行ったが、粒子Aと同様に優れた水分散性および保存性を有していた。
【0054】
<抗酸化力>
実施例1で作製した粒子Aおよび粒子Bについて、(1)スーパーオキシドラジカル消去活性値(units SOD/g)を測定した。
また、実施例1で作製した粒子Bについて、(2)ヒドロキシルラジカル消去活性値(μmoL DMSO/g)および(3)一重項酸素消去活性値(μmoL Histidine/g)を測定した。
なお、上記(1)~(3)の測定は、いずれもESRスピントラッピング(ESR)法により行い、それらの測定条件はそれぞれ以下に示すとおりである。
【0055】
(1)スーパーオキシドラジカル消去活性値(units SOD/g)
実施例1で作製した粒子Aおよび粒子Bのそれぞれについて、スーパーオキシドラジカル消去活性値(units SOD/g)を測定した。結果を後記の表3に示す。なお、測定方法および測定条件は以下に示すとおりである。
【0056】
[測定方法]
ヒポキサンチンとキサンチンオキシダーゼとを反応させることによりスーパーオキシドラジカルを産生し、そのスーパーオキシドラジカルの周波数に共鳴するフリーラジカルが粒子Aまたは粒子Bを含有する試験液中にどのくらい存在するかを測定することにより行った。すなわち、スーパーオキシドラジカル捕捉剤としてジメチルスルホキシド(DMSO)を用い、以下のプロトコールを用いて上記各試験液のスーパーオキシドラジカル消去活性の測定を行った。
・試験液(40重量%):50μL
・8.55M 5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド(DMPO):30μL・1.25mM ヒポキサンチン:50μL
・4.37mM DMSO:20μL
・0.1U/mLキサンチンオキシダーゼ50μLを加え、撹拌後60秒間反応させ測定した。
[測定条件]
調製した試験液をESRフラットセルに回収し、以下の測定条件でESR測定した。
・Field:335±5mT
・Power:3mW
・Modulation Width:0.079mT
・Time Constant:0.1sec
・Sweep Time:1min
・Amplify:250
【表3】
【0057】
表3の結果より、粒子Aおよび粒子Bはいずれも優れたスーパーオキシドラジカル消去活性を有することがわかった。なかでも、粒子径の大きな粒子Bのスーパーオキシドラジカル消去活性がより優れていた。
【0058】
(2)ヒドロキシルラジカル消去活性値(μmoL DMSO/g)
粒子Bのヒドロキシルラジカル消去活性値(μmoL DMSO/g)を測定し、データベースに登録されているレモンの値と対比した。結果を下記の表4に示す。なお、測定方法および測定条件は以下に示すとおりである。
【0059】
[測定方法]
過酸化水素に紫外線を照射することによりヒドロキシルラジカルを産生し、そのヒドロキシルラジカルの周波数に共鳴するフリーラジカルが粒子Bを含有する試験液中にどのくらい存在するかを測定することにより行った。すなわち、ヒドロキシルラジカル捕捉剤としてDMSOを用い、以下のプロトコールを用いて上記試験液のヒドロキシルラジカル消去活性の測定を行った。
・試験液(25重量%):50μL
・5.7M DMPO:20μL
・2.5mM 過酸化水素:90μL
・紫外線を30秒間照射した後、測定した。
[測定条件]
調製した試験液をESRフラットセルに回収し、以下の測定条件でESR測定した。
・Field:335±5mT
・Power:3mW
・Modulation Width:0.1mT
・Time Constant:0.1sec
・Sweep Time:1min
・Amplify:50
【0060】
【0061】
表4の結果より、粒子Bは抗酸化力の高いとされているレモンおよび赤パプリカよりもはるかに優れたヒドロキシルラジカル消去活性を有することがわかった。
【0062】
(3)一重項酸素消去活性値(μmoL Histidine/g)
粒子Bの一重項酸素消去活性値(μmoL Histidine/g)を測定し、データベースに登録されているレモンおよび赤パプリカの値と対比した。結果を下記の表5に示す。なお、測定方法および測定条件は以下に示すとおりである。
【0063】
[測定方法]
リボフラビンに紫外線を照射することにより一重項酸素を産生し、その一重項酸素の周波数に共鳴するフリーラジカルが粒子Bを含有する試験液中にどのくらい存在するかを測定することにより行った。すなわち、一重項酸素捕捉剤として2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(TMPD)を用い、以下のプロトコールを用いて上記試験液の一重項酸素消去活性の測定を行った。
・試験液(11.1重量%):25μL
・44.4mM TMPD:50μL
・2.5mM DMSO:100μL
・55.5mM リボフラビン:50μL
・紫外線を20秒間照射した後、測定した。
[測定条件]
調製した試験液をESRフラットセルに回収し、以下の測定条件でESR測定した。
・Field:336.4±5mT
・Power:3mW
・Modulation Width:0.1mT
・Time Constant:0.1sec
・Sweep Time:1min
・Amplify:250
【0064】
【0065】
表5の結果より、粒子Bは抗酸化力の高いとされているレモンおよび赤パプリカよりもはるかに優れた一重項酸素消去活性を有することがわかった。
【0066】
<免疫活性化力>
実施例1で作製した粒子AおよびBが、マウスマクロファージ細胞であるRAW264.7細胞(以下「RAW264.7細胞」とする)に対する免疫活性化能力を有するかを検討するため、下記の測定方法および条件に従って、(1)インターフェロンβ(IFNβ)、(2)インターロイキン-6(IL-6)および(3)腫瘍壊死因子α(TNFα)の産生量を測定した。
【0067】
[測定方法および条件]
まず、超純水(コントロール)、粒子Aおよび粒子B(いずれも最終濃度10mg/mL)、リポ多糖(LPS:最終濃度1ng/mL)を被験物質として準備した。
つぎに、RAW264.7細胞を、5.0×107cells/mLとなるように培養液に分散させた細胞液を準備し、この細胞液1.8mLに被験物質200μLをそれぞれ添加し、37℃、5%CO2の条件下で、3時間、6時間、9時間、24時間インキュベートした。その後、RLT lysis bufferを用いてこれらの細胞を回収した。上記回収した各細胞からRNAを抽出し、得られたRNAから上記各細胞のcDNAを作製した。
そして、作製したcDNAをRealtime PCRし、IFNβ、IL-6およびTNFαの産生量を測定し、下記の各項目にしたがって評価した。
【0068】
(1)インターフェロンβ(IFNβ)
粒子AをRAW264.7細胞に作用させたものと、LPSをRAW264.7細胞に作用させたものとを対比した。その結果を下記の表6に示す。なお、表6は、超純水(コントロール)の上清中に産生されたIFNβ量を1としたときの、粒子AおよびLPSそれぞれの上清中に産生されたIFNβ量を示している。
【0069】
【0070】
表6の結果より、粒子Aは、IFNβ産生に際してポジティブコントロールであるLPSよりも高い活性を有することがわかる。すなわち、粒子AはIFNβ産生を促し、抗腫瘍性を高める能力を有している。
【0071】
(2)インターロイキン-6(IL-6)
粒子AをRAW264.7細胞に作用させたものと、LPSをRAW264.7細胞に作用させたものとを対比した。対比した結果を下記の表7に示す。なお、表7は、超純水(コントロール)の上清中に産生されたIL-6量を1としたときの、LPSおよび粒子Aのそれぞれの上清中に産生されたIL-6量を示している。
【0072】
【0073】
表7の結果より、粒子Aは、IL-6産生に際してポジティブコントロールであるLPSよりも極めて高い活性を有することがわかる。すなわち、粒子AはIL-6産生を促し、抗ウイルス性を高める能力が極めて高い。
【0074】
(3)腫瘍壊死因子α(TNFα)
粒子Aまたは粒子BをRAW264.7細胞に作用させたものと、LPSをRAW264.7細胞に作用させたものとを対比した。その結果を下記の表8に示す。なお、表10は、超純水(コントロール)の上清中に産生されたTNFα量を1としたときの、LPS、粒子Aおよび粒子Bのそれぞれの上清中に産生されたTNFα量を示している。
【0075】
【0076】
表8の結果より、粒子Aおよび粒子Bは、いずれもTNFα産生に際してポジティブコントロールであるLPSよりも高い活性を有することがわかる。すなわち、本発明の粒子は、その粒径の大小に関わらずTNFα産生を促し、抗腫瘍性を高める能力を有している。
【0077】
〔本発明の粒子を用いた製剤についての検討〕
つぎに、実施例1で作製した粒子Aを用いた製剤(実施例2)と、本発明の粒子を用いない製剤(比較例1)とを作製し、それぞれの溶出率(%)を算出した。また、これらに対して、硬度および崩壊性の測定も行った。
【0078】
〔実施例2、比較例1〕
実施例1で作製した粒子Aおよび下記の材料を準備し、これらの材料を撹拌混合し得られた混合物を、打錠機(市橋精機社製、HANDTAB-100)を用いて8kNで圧縮し、200mgの製剤(直径8mm、曲率半径12mm)である実施例2を得た。また、比較例1として、粒子Aの代わりに乳糖を用いた以外は実施例2と同様にして200mgの製剤(本発明の粒子を用いない製剤)を作製した。下記の表9に、実施例2および比較例1の配合を示す。
【0079】
【0080】
(溶出率(%)の算出)
溶出試験器(富山産業社製、NTR-3000)を用いて、第16改正日本薬局方溶出試験法にしたがってその溶出率(%)を算出した。なお、上記試験は、試験液として精製水900mLを用い、パドル法にて行った。そして、試験開始70分後まで定期的に試験液をサンプリングし、0.45μmのメンブランフィルターを通したものを測定試料とした。得られた各測定試料の275nmにおける吸光度を、紫外可視吸光光度計(島津製作所社製、UV-1800)を用いて測定した。得られた吸光度を下記の式(2)に当てはめ、試験開始t分後における溶出率(%)を算出した。その結果を下記の表10に示す。
溶出率(%)=試験開始t分後の吸光度/試験開始70分後の吸光度×100…(2)
【0081】
【0082】
上記表10に示された結果より、混合物全体に対し、わずか10重量%の粒子Aの添加で、試験開始から5分後の時点から40分後の時点まで、約2倍の溶出率の亢進が確認できた。これより、粒子Aは、速溶解・崩壊型錠剤の添加剤としての機能を有していることがわかった。
【0083】
また、実施例2および比較例1について、下記の項目にしたがって硬度および崩壊時間の測定を行った。その結果を後記の表11に示す。
【0084】
(硬度の測定)
ロードセル式錠剤硬度計(岡田精工社製、ポータブルチェッカーPC-30)を用い、製剤の直径方向に徐々に荷重を加え、製剤が破砕した時の荷重をその製剤の硬度として測定した。測定はn=5で行い、その平均を製剤の硬度として採用した。
【0085】
(崩壊時間の測定)
崩壊試験器(富山産業社製、NT-200)を用い、第16改正日本薬局方崩壊試験法にしたがってその崩壊時間(崩壊性)を測定した。なお、上記試験においては、試験液として精製水1000mLを使用し、測定温度は37±2℃とした。製剤が試験液に崩壊・分散するまでに要した時間を崩壊時間とした。
【0086】
【0087】
上記表11に示された結果より、実施例2は、比較例1に対し硬度が高いことがわかった。しかしながら、実施例2は硬度が高いにもかかわらず、比較例1に対し製剤の崩壊までの時間が短くなっている。すなわち、本発明の粒子を製剤に用いると、硬度、崩壊性、および薬物の溶出性等の特性を制御する、今までにない非常に優れた添加剤になり得ることがわかった。粒子Bについても、粒子Aと同様に良好な溶出率等が見られ、非常に優れた添加剤になり得ることがわかった。
【0088】
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の粒子は、代表的には、製剤、食品、化粧品等の添加剤に適している。また、抗酸化剤および免疫活性化剤として用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
A 粒子
B 粒子