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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/08 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
B65D43/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021000784
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106072
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000234627
【氏名又は名称】シロウマサイエンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 隆広
(72)【発明者】
【氏名】高島 弘明
(72)【発明者】
【氏名】北田 直也
(72)【発明者】
【氏名】西村 伶
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕幸
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000996(JP,A)
【文献】特開2004-352341(JP,A)
【文献】米国特許第02755976(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に取り付けられる中蓋と、ヒンジと、ヒンジによって中蓋に対して開閉可能に連結された外蓋とを備える射出成形品のヒンジキャップにおいて、
中蓋は、容器本体の口部に取り付けられる筒状の中壁部と、中壁部の内面からその内側を閉鎖する状態で突出すると共に内容物の通過口が形成された中閉鎖板部と、中閉鎖板部のうち表面から口径方向外側に向かって突出する爪部とを備え、
外蓋は、筒状の外壁部と、外壁部の内面からその内側を閉鎖する状態で突出する外閉鎖板部と、外壁部の内面においてその貫通方向に並んだ複数のアンダーカット部としての凸部と複数の凹部とを備え、
一つの凸部と、当該一つの凸部に対し外壁部の奥側に隣り合う凹部とは、外蓋の閉状態で爪部に嵌合する嵌合部を形成し、
嵌合部に対し外壁部の貫通方向に隣り合う凸部と、当該隣り合う凸部に対し外壁部の奥側に隣り合う凹部とは、疑似嵌合部を形成し、
外壁部は、嵌合部に対する外壁部の周方向の両側に、外壁部の貫通方向に延びる長穴としての貫通穴が形成され、外壁部の内面には、開口端から一対の貫通穴に達するまで別々に延びる一対の溝部が形成されていることを特徴とするヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に取り付けられる中蓋と、ヒンジと、中蓋に対して開閉可能に連結
された外蓋とを備えるヒンジキャップに関する
【背景技術】
【0002】
従来のヒンジキャップとして、容器本体に取り付けられるキャップ本体と、ヒンジ部と、キャップ本体に対して開閉可能に連結された封止部とを備えるものが知られている(特許文献1)。このヒンジキャップは、キャップ本体に形成された係止部と、封止部に形成された爪部とを嵌合することによって、ヒンジキャップの閉状態を保持するようになっている。
【0003】
爪部は筒状物の内面に形成された凹部と凸部とから構成されている。また爪部は、筒状物の周方向うちヒンジ部とは反対側に形成されている。そして爪部のうち凸部は、射出成形においては金型から離型する時に離型抵抗となるアンダーカット部である。
なおこのヒンジキャップと本発明との用語について整理すると、本発明ではキャップ本体を中蓋、封止部を外蓋、係止部を爪部、爪部を嵌合部と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-246137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンダーカット部がある場合、1)金型から無理抜きする手法や、2)金型にスライドコアを使う手法が知られている。
2)の手法を用いる金型は1)の手法を用いる金型に比べて、複雑であり、高価になる。
1)の手法の場合には無理抜きする関係で、アンダーカット部が部分的に欠けたり、傷ついたりして、設計通りの形状から意図しない形状になることがある。また嵌合部を筒状物の周方向のうち全周ではなく、ヒンジとは反対側、つまり一部にのみ形成すると、離型するときに離型抵抗が嵌合部のアンダーカット部に集中し、アンダーカット部が損傷し易くなる。そしてアンダーカット部が損傷すると、ヒンジキャップの閉状態が不安定になる。
【0006】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は、筒状物の内面のうちヒンジキャップの閉状態の安定に関与する部分としての嵌合部のアンダーカット部を射出成形での離型時に損傷しづらくし、且つ嵌合状態を安定させられるヒンジキャップを提供することである
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器本体に取り付けられる中蓋と、ヒンジと、ヒンジによって中蓋に対して開閉可能に連結された外蓋とを備える射出成形品のヒンジキャップを前提とする。
中蓋は、容器本体の口部に取り付けられる筒状の中壁部と、中壁部の内面からその内側を閉鎖する状態で突出すると共に内容物の通過口が形成された中閉鎖板部と、中閉鎖板部のうち表面から口径方向外側に向かって突出する爪部とを備える。
外蓋は、筒状の外壁部と、外壁部の内面からその内側を閉鎖する状態で突出する外閉鎖板部と、外壁部の内面においてその貫通方向に並んだ複数のアンダーカット部としての凸部と複数の凹部とを備える。
そして一つの凸部と、当該一つの凸部に対し外壁部の奥側に隣り合う凹部とは、外蓋の閉状態で爪部に嵌合する嵌合部を形成し、嵌合部に対し外壁部の貫通方向(奥側と開口端側との少なくとも片側)において隣り合う凸部と、当該隣り合う凸部に対し外壁部の奥側に隣り合う凹部とは、疑似嵌合部を形成する。
【0008】
嵌合部は、複数の凸部のうちどの凸部を含むものであっても良い。ただし嵌合部に対して外蓋の開口端側に別の凸部を配置すると、外蓋の開閉操作において爪部が当該別の凸部に接触する可能性がある。接触するのは、外蓋の開閉動作中における当該別の凸部の軌跡上に爪部が位置する場合である。このような場合、外蓋の開閉動作において爪部は嵌合部の凸部だけでなく、当該別の凸部をも乗り越えないと、外蓋を開いたり、閉じたりできなくなる。そして爪部が一つの凸部を乗り越えるだけで、外蓋を開いたり閉じたりできるようにするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち嵌合部は複数の凸部のうち最も開口端側の凸部を含むものにすることである。なお嵌合部が最も開口端側の凸部を含むものとした場合、疑似嵌合部は嵌合部に対し外壁部の奥側に隣り合うことになる。
【0009】
また嵌合部と疑似嵌合部の凹部と凸部とで形成される列は、外壁部の周方向に関して数や位置を問わないが、外蓋の開閉のし易さや離型のし易さ、外蓋の閉状態での安定を考慮すれば、次のようにすることが望ましい。
すなわち嵌合部と疑似嵌合部の凹部と凸部で形成される列の数は、外壁部の周方向に関して一つであり、且つヒンジとは反対側に形成されることである。
【0010】
また外壁部は、嵌合部に対する外壁部の周方向の両側に貫通穴が形成されているか否かを問わないが、開閉操作を容易にしながらも爪部と嵌合部との嵌合状態を安定させるには次のようにすることが望ましい。
すなわち外壁部は、嵌合部に対する外壁部の周方向の両側に貫通穴が形成されていることである。
【0011】
貫通穴の形状は問わないが、外蓋の開閉操作を容易にするには次のようにすることが望ましい。
すなわち貫通穴は外壁部の貫通方向に延びる長穴にすることである。
【0012】
またヒンジキャップは内容物の通過口をどのような構成にするのかを問わない。またヒンジキャップは単独で使用するものか、別の部品と組み合わせて使用するものかを問わない。しかし閉状態の密閉性を向上させるには、ヒンジキャップとパッキンとを組み合わせたヒンジキャップセットとして、次のようにすることが望ましい。
すなわちヒンジキャップセットは、ヒンジキャップと、ヒンジキャップの閉状態において密閉性を高めるパッキンとを備えることにする。そして中閉鎖板部は、中壁部の内面からその周方向の全周に亘って口径方向内側に突出する中閉鎖板本体と、中閉鎖板本体の内周部から容器本体とは反対側に向かって突出すると共に中閉鎖板本体の内周部に形成された内容物の通過口としてのノズルとを備えることにする。また外蓋はその内部にパッキン支持部を備えるもことにする。そしてパッキンはノズルの先端に密接する状態に凹む弾力性を備えることにする。
【0013】
なおパッキンの復元力によって外蓋には開く力が作用するので、例えばパッキンがないヒンジキャップよりも爪部と嵌合部との嵌合力を強固にしなければ、パッキンの復元力によって外蓋が開いてしまう可能性がある。そしてパッキンの復元力によって外蓋が開かないように嵌合力を強固にするためには、例えばパッキンが無いヒンジキャップに比べて爪部と嵌合部との嵌合状態における口径方向の寸法を大きくしなければならない。そのような構成であっても、離型抵抗を分散させるための複数のアンダーカット部によって嵌合部の形状を設計通りの形状に近づけることができるので、ヒンジキャップは爪部と嵌合部との嵌合状態が安定し、パッキンによって密閉性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヒンジキャップは、アンダーカット部としての複数の凸部を筒状の外壁部の貫通方向に一直線に並べて配置してあるので、外壁部が射出成型用金型のうち外壁部の内面を形作る部分から離型するときの離型抵抗が複数のアンダーカット部に分散し、例えばアンダーカット部としての一つの凸部を外壁部に配置したヒンジキャップと比べて、嵌合部の形状を設計通りの形状に近づけることができ、嵌合部と爪部との嵌合状態が安定する。
また本発明のヒンジキャップは、嵌合部に対する外壁部の周方向の両側に貫通穴が形成されているので、貫通穴の分だけ外壁部が弾性変形し易くなるので、外蓋の開閉操作が容易になるし、外力が加わらない限り貫通穴の有無によって外蓋の形状が変わらないので、爪部と嵌合部との嵌合状態が安定する。
本発明のヒンジキャップは、貫通穴が外壁部の貫通方向に延びる長穴であるので、外蓋の開閉操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)(b)図は、射出成形状態での本発明の第一実施形態のヒンジキャップとパッキンとを示す平面図、A-A線断面図である。
図2図1のヒンジキャップを示す右側面図である。
図3】パッキンを取り付けたヒンジキャップの閉状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3に示すように本発明の第一実施形態のヒンジキャップセットは、図示しない容器本体に取り付けられるヒンジキャップ1と、ヒンジキャップ1の閉状態において密閉性を高めると共にヒンジキャップ1の内部に支持されたパッキンPとを備える
【0022】
ヒンジキャップ1は、容器本体に取り付けられる中蓋2と、二つのヒンジ3と、二つのヒンジ3によって中蓋2に対して開閉可能に連結された外蓋4と、中蓋2に対する開放力を外蓋4に付与する弾性板5とを備える。またヒンジキャップ1は樹脂製で、射出成形品である。
【0023】
中蓋2は、容器本体の口部に取り付けられる筒状の中壁部11と、中壁部11の内面からその内側を閉鎖する状態で突出する中閉鎖板部12と、中閉鎖板部12のうち表面から口径方向外側に向かって突出する爪部13とを備える。
【0024】
以下ではヒンジキャップ1を射出成形時の状態を基準として説明する。射出成形時の状態とは、図1に示すように外蓋4が開いており且つ中蓋2に対して外蓋4が右側に配置された状態である。
また方向に関しては前記した左右方向以外については以下のように定める。
「容器本体側」とは、図1では対象物(例えば中閉鎖板部12)に対して下側のことである。また「容器本体とは反対側」とは図1では上側のことである。
筒状物の「貫通方向」とは、中壁部11であれば、図1での上下方向のことである。
「前後方向」とは、上下方向と左右方向の双方に直交する方向のことである。
「口径方向」とは、筒状物を貫通方向から視ると、平面に表された環になるが、その環の中心を通過する直線の方向のことである。
【0025】
中壁部11は図1(b)に示すように中閉鎖板部12に対して容器本体側に延びる形である。また中壁部11は、口径方向外側に向かって間隔をあけて順番に配置された第1、第2、第3の中壁部14~16を備える。第1、第2、第3の中壁部14~16は筒状、より詳しく言えば円筒状で、互いの円筒の中心線を共有する位置関係となっている。第1、第2、第3の中壁部14~16は貫通方向の一方側(下側)を開口端側とし、他方側(上側)の端部を中閉鎖板部12に接合してある。第1、第2、第3の中壁部14~16は、この記載順に下端の位置が低く形成されている。
第1の中壁部14は容器本体の口部の内側に配置される。第3の中壁部16は第2の中壁部15を口径方向外側から覆う。第2の中壁部15はその内周面に雌ネジ15aが形成されている。雌ネジ15aは容器本体の口部の外周面に形成された雄ネジに螺合する。
【0026】
中閉鎖板部12は、中壁部11(第3の中壁部16)の内面のうち貫通方向の他方端側(上側)からその周方向の全周に亘って口径方向内側に突出する中閉鎖板本体21と、中閉鎖板本体21の内周部に形成された内容物の通過口としてのノズル22とを備える。
【0027】
ノズル22は中閉鎖板本体21の内周部から容器本体とは反対側(上側)に向かって突出する筒状であり、上側に向かって内径及び外径が小さくなる形状である。より詳しく言えば、ノズル22は、テーパー状のノズル本体部23と、ノズル本体部23の先部から上側に向かって突出する円筒状の吐出口部24とを備える。
【0028】
中閉鎖板本体21は平面視すると、環状、より詳しく言えば円環状である。また中閉鎖板本体21は、その表面のうち外周部よりも内側部分を隆起させた隆起部26としてある。隆起部26の外形は平面視すると、外蓋4の後述する外壁部31の開口端部に嵌合する形であり、より詳しく言えば、中閉鎖板本体21の外形である円形の中心に対してヒンジ3とは反対側とヒンジ3側(左右)とに間隔を開けて対向する二つの半円状部27と、二つの半円状部27の両端を繋ぐ平行な二本の直線状部28とを備える。二つの半円状部27は何れも中閉鎖板本体21の外形の円形に沿う形状である。そして隆起部26に外壁部31の開口端部が嵌合した場合には、外壁部31が中閉鎖板本体21のうち隆起部26に対し口径方向外側に位置する部分、つまり中閉鎖板本体21の外周部に載る状態になる。なお隆起部26の表面から上方に突出するのが爪部13であり、爪部13については追って詳述する。
【0029】
また中閉鎖板本体21のヒンジ3側には、中壁部11(第3の中壁部16)からその貫通方向の他方側に延長する状態の延長壁29が形成されている。
このような中蓋2に被せるのが外蓋4である。
【0030】
外蓋4は、筒状の外壁部31と、外壁部31の内面からその内側を閉鎖する状態で突出する外閉鎖板部32と、ノズル22の先端に密接するパッキンPを外閉鎖板部32の内面において支持するパッキン支持部33と、外壁部31の内面において突出するアンダーカット部としての複数の凸部34と、外壁部31の内面において複数の凸部34に対して相対的に凹んだ複数の凹部35とを備える。
【0031】
外閉鎖板部32は、外壁部31の貫通方向の一方側を閉鎖する外閉鎖板本体部37と、外閉鎖板本体部37の内面から突出すると共にパッキンPを載せる台座部38とを備える。
【0032】
台座部38は、図1(a)に示すように真上から見て「十」字状に形成されている。
なお台座部38に載せるパッキンPは円板形であり、台座部38の十字の交差方向の寸法よりも直径の大きな円形である。またパッキンPは、ヒンジキャップ1よりも柔らかい樹脂製で、ノズル22の先端を押し付けた場合に幾分凹んで密接を確保できる程度の弾力性を備えている。
【0033】
パッキン支持部33は、パッキンPを上下方向に対して交差(より詳しくは直交)する方向の両側から挟む一対の支持アーム33aを備える。
一対の支持アーム33aは、外閉鎖板部32の内面から突出すると共に外壁部31の内面から台座部38の周囲に達するまで延びている。
支持アーム33aは、外壁部31の内面のうちヒンジ3側から台座部38に向かって延びるアーム部本体33bと、アーム部本体33bのうち台座部38側の先端から台座部38の周囲を部分的に包囲する状態に延びる支持部本体33cとを備える。貫通方向から見ると、支持部本体33cは、台座部38に載せるパッキンPの外形に沿うように円弧状に形成されている。また一対の支持部本体33cの内側に形成される円弧の直径はパッキンPの直径よりも僅かに小さく形成されている。
【0034】
外壁部31はその外面のうちヒンジ3とは反対側に、前後方向から見て円弧状に凹んだ湾曲凹面31aを備えている。湾曲凹面31aは、外壁部31の貫通方向における外閉鎖板部32側に形成され、外蓋4を開く操作時に指を当て易くしてある。また湾曲凹面31aは図2に示すように右側から見ると、上辺部31bを下向きに開口する形の円弧形状とし、左右の側辺部31cを上下方向に延びる直線状とし、下辺部31dを左右方向に延びる直線状としてある。
【0035】
また外壁部31は図1(b)に示すように、貫通方向の他方側である開口端(上端)のヒンジ3側に、ヒンジ3とは反対側よりも貫通方向の一方側(下側)に陥没した陥没部31vを備える。陥没部31vの形状は中蓋2の延長壁29に対応させてある。また外壁部31の閉鎖端(下端)となる外閉鎖板部32側の端は、ヒンジ3側からヒンジ3とは反対側に向かうにつれて貫通方向の一方側(下側)に位置するように傾斜する状態に形成されている。
【0036】
外閉鎖板本体部37は、外壁部31の形状に対応させて、ヒンジ3側からヒンジ3とは反対側に向かうにつれて外壁部31の貫通方向の一方側に向かうように傾斜する形状としてある。また外閉鎖板本体部37は例えば外壁部31が湾曲凹面31aのない形であった場合よりもヒンジ3とは反対側に延びる形状である。
【0037】
また外壁部31はその内面に関しては、射出成形用金型のうち外壁部31の内面を形作る凸型部分の抜き易さを考慮して、貫通方向の一方側である外閉鎖板部32側(下側)から貫通方向の他方側である開口端側(上側)に向かって大きくなる状態に形成されている。つまり外壁部31の内面は開口端(上方)に向かうにつれて口径方向外側に広がっている。
より詳しく言えば、外壁部31の内面は一部を除いて、テーパー状の斜面となっており、上下方向に対して角度θだけ傾いている。外壁部31の内面の一部とは、外壁部31の内面のうち湾曲凹面31aに対応する部分であり、外閉鎖板部32から上方に向かうにつれて僅かに口径方向外側である右側に広がる状態で傾斜する斜面部31gと、斜面部31gの上端から上方に向かうにつれて右側に向かう状態で湾曲する湾曲凸面31fとを備える。斜面部31gの角度は外壁部31の内面の角度θよりも小さい。
【0038】
また外壁部31は図2に示すように口径方向に貫通する一対の貫通穴31hが周方向に間隔を開けて形成されている。一対の貫通穴31hは周方向に関しては、その全周のうち湾曲凹面31aに対応する部分に、言い換えればヒンジ3とは反対側に形成されている。また一対の貫通穴31hは上下方向(外壁部31の貫通方向)に延びる長穴であり、湾曲凹面31aよりも上側の部分と湾曲凹面31aの部分とに及ぶ範囲に形成されている。
【0039】
また外壁部31は図1に示すように、その内面において開口端(上端)から長穴としての一対の貫通穴31hに達するまで別々に延びる一対の溝部31sを備えている。溝部31sということは底があるということ、貫通してしないということなので、外壁部31の開口端側は周方向に繋がる環状となっている。また溝部31sと貫通穴31hとは外壁部31の貫通方向(上下方向)に繋がっている。そして外壁部31の周方向に関して、一対の溝部31sとの間及び一対の貫通穴31hとの間には、複数の凸部34と複数の凹部35とが配置される。
【0040】
複数の凸部34と複数の凹部35とは外壁部31の貫通方向に交互に並んで配置される。また凸部34と凹部35とが並んだ列の数は、外壁部31の周方向に関して一つである。複数の凸部34と複数の凹部35のうち最も開口端側に位置するのは、凹部35となっている。
【0041】
凹部35は、凹部35自身に対し周方向の両側に位置する外壁部31の内面に対して凹んでいる。凹部35の凹み具合は外壁部31の周方向に関して段差状になっている。また本実施形態では凹部35の数は3つであり、図1(b)では開口端側から1番目の凹部35には35a、2番目の凹部35には35b、3番目の凹部35には35cを併記してある。そしてどの凹部35かを区別して説明する場合には、数字とアルファベットの符号を用い、どの凹部35かを区別しないで説明する場合には数字のみの符号を用いる。
【0042】
凸部34は、当該凸部34自身に対し周方向の両側に位置する外壁部31の内面に対して突出し、射出成形においてアンダーカット部となる。また本実施形態では凸部34の数は二つであり、図1(b)では開口端側から1番目の凸部34に34a、2番目の凸部34に34bを併記してある。そしてどの凸部34かを区別して説明する場合には、数字とアルファベットの符号を用い、どの凹部35かを区別しないで説明する場合には数字のみの符号を用いる。
【0043】
複数の凹部35のうち最も開口端側の凹部35a、つまり開口端側から1番目の凹部35aは開口端に向かって口径方向外側にむかう状態に傾斜している。また複数の凸部34のうち最も開口端側の凸部34a、つまり開口端側から1番目の凸部34aと、1番目の凸部34aに対し外壁部31の奥側に隣り合う凹部35b(つまり開口端側から2番目の凹部35b)とは、外蓋4の閉状態で中蓋2の爪部13の先部に嵌合する嵌合部41を形成する。
【0044】
爪部13はヒンジ3とは反対側において中閉鎖板部12の隆起部26の表面から上方に突出する爪根本部13aと、爪根本部13aの上端部から口径方向外側に向かって延びる爪先部13bとを備える。
【0045】
また嵌合部41に対し外壁部31の奥側において隣り合う凸部34bは開口端側から2番目の凸部34bである。当該隣り合う凸部34bに対し外壁部31の奥側に隣り合う凹部35cは、開口端側から3番目の凹部35cある。開口端側から2番目の凸部34bと、開口端側から3番目の凹部35cとは、嵌合部41と似た形状であるが、外蓋4の閉状態で爪部13の先部とは嵌合しない疑似嵌合部43を形成する。また疑似嵌合部43は嵌合部41に対し外壁部31の奥側に隣り合っている。なお嵌合部41に対し外壁部31の開口端側には1番目の凹部35aしかないので、本実施形態では疑似嵌合部43は嵌合部41に対し外壁部31の奥側にのみ形成される。
【0046】
疑似嵌合部43の凹部35cに対する凸部34bの突出量L3は、本実施形態では嵌合部41において凹部35bに対する凸部34aの突出量L1と比べて小さくしてある。
【0047】
嵌合部41の凸部34aと疑似嵌合部43の凸部34bにおける奥側の面は、外壁部31の貫通方向に対してそれぞれ傾いた嵌合斜面41aと疑似嵌合斜面43aである。そして嵌合斜面41aと疑似嵌合斜面43aは何れも、外壁部31の奥側から開口端側に向かうにつれて口径方向内側に向かう状態に傾斜している。そのうえで疑似嵌合斜面43aと貫通方向の直線とで形成される鋭角の角度θ3は、本実施形態では嵌合斜面41aと貫通方向の直線とで形成される鋭角の角度θ1と比べて小さくしてある。
【0048】
なお嵌合部41と疑似嵌合部43とは、外壁部31の周方向に関してヒンジ3とは反対側、より詳しく言えば一対の溝部31sとの間及び一対の貫通穴31hとの間に配置され、且つ貫通方向に並んだ列を周方向に関して一つのみ形成する。
【0049】
ヒンジ3は、外蓋4の外壁部31と中蓋2の中壁部11(第3の中壁部16)とに接合しており、外壁部31に対し口径方向外側に突出する第1の片部3aと、中蓋2に対し口径方向外側に突出する第2の片部3bと、第1の片部3aと第2の片部3bとに接合すると共に両方に対し厚みの薄いヒンジ本体3cとを備える。なおヒンジ本体3cは、外蓋4が開閉するときの(回転運動をするときの)中心部となる。また一対のヒンジ3の間に位置するのが弾性板5である。
【0050】
弾性板5は、板状であって、いわゆる板バネとして機能する。また弾性板5は、屈曲する形であり、その両端が外蓋4の外壁部31と中蓋2の中壁部11に対し接合されている。より詳しく言えば弾性板5は、外蓋4から中蓋2に向かって順に、折れ曲がり自在な第1の折れ曲がり部、V字状に屈曲した板バネ部、折れ曲がり自在な第2の折れ曲がり部を備える。第1の折れ曲がり部と第2の折れ曲がり部とは板バネ部よりも厚みを薄くしてある。第1の折れ曲がり部、板バネ部、第2の折れ曲がり部については図では符号を省略してある。
【0051】
本発明の第一実施形態のヒンジキャップ1は、アンダーカット部としての二つの凸部34を筒状の外壁部31の貫通方向に一直線に並べて配置してあるので、外壁部31が射出成型用金型のうち外壁部31の内面を形作る部分から離型するときの離型抵抗が複数のアンダーカット部に分散し、例えばアンダーカット部としての一つの凸部を外壁部31に配置したヒンジキャップと比べて、嵌合部41の形状を設計通りの形状に近づけることができ、嵌合部41と爪部13との嵌合状態が安定する。しかも嵌合部41の凹部35bが外壁部31の内面に対して凹んだ形状なので、外蓋4の閉状態においては嵌合部41の凹部35bに対して爪部13が周方向に位置決めされた状態になり、嵌合部41と爪部13との嵌合状態が安定する。
【0052】
また本発明の第一実施形態のヒンジキャップ1は、嵌合部41が複数の凸部34のうち最も開口端側の凸部34aを含むものなので、外蓋4の開閉動作中に別の凸部を爪部13が乗り越えなくて済むので、開閉操作が容易になる。
【0053】
また本発明の第一実施形態のヒンジキャップ1は、嵌合部41と疑似嵌合部43との凹部35と凸部34で形成される列を、外壁部31の周方向に関して一列としたので、複数列にした場合に比べて、外蓋4を開閉し易くなるし、射出成型時に離型もし易くなり、しかも当該列をヒンジ3とは反対側に形成したので、ヒンジ3の近傍に形成した場合に比べて、外蓋4の閉状態が安定する。
【0054】
また本発明の第一実施形態のヒンジキャップ1は、嵌合部41に対する外壁部31の周方向の両側に貫通穴31hが形成されているので、貫通穴31hの分だけ外壁部31が弾性変形し易くなるので、外蓋4の開閉操作が容易になるし、外力が加わらない限り貫通穴31hの有無によって外蓋4の形状が変わらないので、爪部13と嵌合部41との嵌合状態が安定する。
【0055】
また本発明の第一実施形態のヒンジキャップ1は、貫通穴31hを外壁部31の貫通方向に延びる長穴としてあるので、貫通穴31hの長さに応じて外蓋4の開閉操作が容易になるし、射出成型時の離型抵抗も小さくなる。しかも嵌合部41だけでなく疑似嵌合部43の周方向の両側にも長穴である貫通穴31hが配置しているので、外蓋4の開閉操作の容易さや離型抵抗の小ささの効果が十分に発揮される。
【0056】
また本発明の第一実施形態のヒンジキャップ1は、外壁部31がその内面において開口端から貫通穴31hに達するまで延びる溝部31sを備えるので、外壁部31のうち開口端部側が周方向に関して繋がっている(環状である)ことになり、外蓋4に外力が加わった場合にでも爪部13と嵌合部41との嵌合状態が安定している。
【0057】
また本発明の第一実施形態のヒンジキャップ1は、中閉鎖板部12にはその表面から隆起すると共に外壁部31の開口端部に嵌合する隆起部26を備えるので、外蓋4の閉状態が安定する。
【0058】
また本発明の第一実施形態のヒンジキャップセットは、離型抵抗を分散させるための複数のアンダーカット部(凸部34)によって嵌合部41の形状を設計通りの形状に近づけることができるので、パッキンPの復元力があっても爪部13と嵌合部41との嵌合状態を保てるようにでき、パッキンPとノズル22との密接によって密閉性が向上する。
【0059】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば疑似嵌合部43は上記実施形態では一つであったが、本発明ではこれに限らず、複数であってもよい。
【0060】
また疑似嵌合部43の凹部35に対する凸部34の突出量L3を、嵌合部41の凹部35に対する凸部34の突出量L1に比べて、上記実施形態では小さくしてあったが、本発明ではこれに限らず、望ましくは同じ以上か、より望ましくはより大きくすることが良い。そうすることで、離型時に嵌合部41の表面をできる限り損傷しないようにでき、嵌合部41と爪部13との嵌合状態を安定させられる。
【0061】
また疑似嵌合斜面43aと貫通方向の直線とで形成される鋭角の角度θ3を、嵌合斜面41aと貫通方向の直線とで形成される鋭角の角度θ1に比べて、上記実施形態では小さくしてあったが、本発明ではこれに限らず、望ましくは同じ以上か、より望ましくはより大きくすることが良い。そうすることで、離型時に嵌合部41の表面をできる限り損傷しないようにでき、嵌合部41と爪部13との嵌合状態を安定させられる。
【符号の説明】
【0062】
1 ヒンジキャップ
2 中蓋
3 ヒンジ
3a 第1の片部
3b 第2の片部
3c ヒンジ本体
4 外蓋
5 弾性板
P パッキン
θ 角度
11 中壁部
12 中閉鎖板部
13 爪部
13a 爪根本部
13b 爪先部
14 第1の中壁部
15 第2の中壁部
15a 雌ネジ
16 第3の中壁部
21 中閉鎖板本体
22 ノズル
23 ノズル本体部
24 吐出口部
26 隆起部
27 半円状部
28 直線状部
29 延長壁
31 外壁部
31a 湾曲凹面
31b 上辺部
31c 側辺部
31d 下辺部
31f 湾曲凸面
31g 斜面部
31h 貫通穴
31s 溝部
31v 陥没部
32 外閉鎖板部
33 パッキン支持部
33a 支持アーム
33b アーム部本体
33c 支持部本体
34,34a,34b 凸部
L1 突出量
35,35a,35b,35c 凹部
L3 突出量
37 外閉鎖板本体部
38 台座部
41 嵌合部
41a 嵌合斜面
θ1 角度
43 疑似嵌合部
43a 疑似嵌合斜面
θ3 角度
図1
図2
図3