(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】清掃具
(51)【国際特許分類】
B08B 1/00 20240101AFI20240906BHJP
【FI】
B08B1/00
(21)【出願番号】P 2019123757
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000101363
【氏名又は名称】アズマ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【氏名又は名称】林 直生樹
(72)【発明者】
【氏名】田口 信吾
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】西 秀隆
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-285079(JP,A)
【文献】登録実用新案第3120907(JP,U)
【文献】特開2007-7242(JP,A)
【文献】実開平4-74042(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B1/00-1/04
B08B5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンの凹状面を清掃するための清掃具であって、
軸線方向に延びて上面及び下面を有する棒状の柄と、該柄の前記軸線方向両端部のうち少なくともいずれか一方に形成されたスクレーパ部とを有し、
前記スクレーパ部は、前記柄を押動させることによって汚れを擦り落とす第1エッジと、前記第1エッジで擦り落とした汚れを受けるための第1受け皿部と、前記柄を引動させることによって汚れを擦り落とす第2エッジと、前記第2エッジで擦り落とした汚れを受けるための第2受け皿部と、を有し、
前記スクレーパ部において、
前記第1エッジは、前記押動方向側の端に、該押動方向に向けて、且つ前記柄の前記下面側へ凹状に湾曲させて形成され、
前記第2エッジは、前記第1エッジよりも前記柄の引動方向側の位置に、該引動方向に向けて、且つ前記柄の前記下面側へ凹状に湾曲させて形成され、
前記第1受け皿部は、前記第1エッジから前記柄側に延びて前記下面側へ凹状に湾曲させた凹面状に形成され、
前記第2受け皿部は、前記第2エッジから前記第1エッジ側に延びて前記下面側へ凹状に湾曲させた凹面状に形成され、
前記第1エッジ及び第2エッジは、清掃具を上面側から見た場合に、前記柄の軸線に対して互いに同じ方向に傾斜する直線をなすと共に、互いに平行をなしている、
ことを特徴とする清掃具。
【請求項2】
前記スクレーパ部は、前記柄の前記第1受け皿部に隣接する位置に、該柄の側方に突出するように形成された平面視形状が三角形状をなす突壁部を有し、
前記突壁部は、前記第1エッジの一端から柄の後方に向けて次第に該柄の側面から遠ざかるように延びる第1
側辺と、該第1
側辺の後端部から前記柄の側面に向けて延びる第2
側辺とを有し、前記第2
側辺に前記第2エッジが形成され、前記第1
側辺と前記柄の側面との間に前記第2受け皿部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の清掃具。
【請求項3】
前記柄の引動方向側の端部にブラシ部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は清掃具に関するものであり、特に、シロッコファンの羽根などを清掃するのに適した清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台所等に設置されるレンジフードの換気には、通常、シロッコファンが使用される。このシロッコファン20は、
図8にその一部を示すように、細長い板状をした複数の羽根21を、回転軸(不図示)の回りに並列且つ円筒状に配置したもので、調理中に発生する油の蒸気や、空気中の粉塵等を、このシロッコファン20で前記レンジフードの中に吸い込み、外部に排出する。前記シロッコファン20の羽根21は平板ではなく、凹状に湾曲した形をしている。
前記レンジフードにおいては、前記シロッコファン20で吸い込んだ油の蒸気や粉塵等が該シロッコファン20の羽根21等に徐々に付着していき、油汚れとしてこびりついた状態になるため、落とすのが非常に大変であった。
【0003】
特許文献1には、前記シロッコファン20の羽根21を清掃するのに適した掃除用具が開示されている。この掃除用具は、棒状の柄と、該柄の先端に形成されたスプーン状のへら部とを有するもので、前記シロッコファン20の羽根21の湾曲面に付着した汚れを、前記スプーン状のへら部でほじくるようにして除去するものである。
【0004】
しかしながら、前記掃除用具のへら部はスプーン状をしているため、前記羽根21の湾曲面に付着した汚れを該へら部でほじくる際に、該へら部の先端部分しか使用することができず、このため、前記湾曲面に硬くこびりついた状態の汚れを残さず除去するのは困難であった。また、前記羽根21の湾曲面以外の部分に付着した汚れを、スプーン状をした前記へら部で落とすのも非常に難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、シロッコファンの羽根や羽根以外の部分などに付着した汚れを簡単且つ確実に落とすことができる、作業性と清掃効率とに勝れた清掃具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の清掃具は、ファンの凹状面を清掃するための清掃具であって、軸線方向に延びて上面及び下面を有する棒状の柄と、該柄の前記軸線方向両端部のうち少なくともいずれか一方に形成されたスクレーパ部とを有し、前記スクレーパ部は、前記柄を押動させることによって汚れを擦り落とす第1エッジと、前記第1エッジで擦り落とした汚れを受けるための第1受け皿部と、前記柄を引動させることによって汚れを擦り落とす第2エッジと、前記第2エッジで擦り落とした汚れを受けるための第2受け皿部と、を有し、前記スクレーパ部において、前記第1エッジは、前記押動方向側の端に、該押動方向に向けて、且つ前記柄の前記下面側へ凹状に湾曲させて形成され、前記第2エッジは、前記第1エッジよりも前記柄の引動方向側の位置に、該引動方向に向けて、且つ前記柄の前記下面側へ凹状に湾曲させて形成され、前記第1受け皿部は、前記第1エッジから前記柄側に延びて前記下面側へ凹状に湾曲させた凹面状に形成され、前記第2受け皿部は、前記第2エッジから前記第1エッジ側に延びて前記下面側へ凹状に湾曲させた凹面状に形成され、前記第1エッジ及び第2エッジは、清掃具を上面側から見た場合に、前記柄の軸線に対して互いに同じ方向に傾斜する直線をなすと共に、互いに平行をなしていることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記スクレーパ部は、前記柄の前記第1受け皿部に隣接する位置に、該柄の側方に突出するように形成された平面視形状が三角形状をなす突壁部を有し、前記突壁部は、前記第1エッジの一端から柄の後方に向けて次第に該柄の側面から遠ざかるように延びる第1側辺と、該第1側辺の後端部から前記柄の側面に向けて延びる第2側辺とを有し、前記第2側辺に前記第2エッジが形成され、前記第1側辺と前記柄の側面との間に前記第2受け皿部が形成されていることが望ましい。
【0010】
更に、本発明の清掃具は、前記柄の引動方向側の端部にブラシ部が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の清掃具は、前方への押し動作によって汚れを擦り落とす第1エッジと、後方への引き動作によって汚れを擦り落とす第2エッジとを有しているので、シロッコファンの羽根のように湾曲した部分に付着した汚れも、その他の部分に付着した汚れも、前記2つのエッジを使用することによって簡単且つ確実に落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る清掃具の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の清掃具を異なる角度から見た斜視図である。
【
図3】
図1清掃具の一部を柄の上面側から正視した場合の要部拡大図である。
【
図5】
図3を図の上方から見た状態を示す平面図である。
【
図6】
図3を図の下方から見た状態を示す底面図である。
【
図7】
図3を図の右側から見た状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1-
図7は本発明に係る清掃具1の一実施形態を示すもので、この清掃具1は、細長い棒状をした柄2と、該柄2の軸線L方向の一端(第1端2c)に形成されたスクレーパ部3及び他端(第2端2d)に形成されたブラシ部4とを有している。
前記柄2は、断面が長方形状をした角棒状をなすもので、上面2a及び下面2bを有している。
図1及び
図2においては、前記柄2の上面2aが手前側を向き、下面2bが向こう側を向いている。
前記柄2の第2端2d寄りの位置には、前記清掃具1を不使用時にフック等に吊り掛けておくための孔2eが形成されている。
【0014】
前記スクレーパ部3は、前記柄2を軸線L方向前方(
図1の右方向)へ押し動かすことによって汚れを擦り落とす第1エッジ5と、該第1エッジ5で擦り落とした汚れを受けるための凹面状をした第1受け皿部6とを有すると共に、前記柄2を軸線L方向後方(
図1の左方向)へ引き動かすことによって汚れを擦り落とす第2エッジ7と、該第2エッジ7で擦り落とした汚れを受けるための凹面状をした第2受け皿部8とを有している。従って、以下の説明において「前」あるいは「前方」とは、清掃具1を押し動かす方向のことであり、「後」あるいは「後方」とは、清掃具1を引き動かす方向のことである。
【0015】
前記第1エッジ5は、前記柄2の第1端2cにおける下面2b側の位置に、軸線L方向前方に向けて形成され、該柄2の下面2b側に向けて凹状に湾曲している。
【0016】
前記第1受け皿部6は、前記柄2の上面2aに、前記第1エッジ5の位置から該柄2の後方に向けて延在するように形成され、該柄2の下面2b側に向けて凹状をなすように湾曲している。従って、前記第1受け皿部6の前端部に前記第1エッジ5が形成されていることになる。
また、前記第1受け皿部6の湾曲面は、前記柄2の後方側に行くに従って次第に浅くなると共に、該湾曲面の幅が狭くなっていき、前記第2エッジ7が形成されている付近で消滅している。
【0017】
一方、前記第2エッジ7及び第2受け皿部8は、前記柄2の第1端2c近くの側面に形成された突壁部9に形成されている。
【0018】
前記突壁部9は、
図3に示すように、清掃具1を上面2a側から見た時の形状が三角形をなすもので、前記柄2の第1端2cから該柄2の後方に向けて次第に該柄2の側面から離れる方向に傾斜して延びる第1側辺9aと、該第1側辺9aの後端部から前記柄2の側面に向けて斜めに延びる第2側辺9bとを有し、該第2側辺9bに前記第2エッジ7が、柄2の下面2b側に向けて凹状をなすように湾曲した状態に形成されており、また、前記突壁部9の上面2aに前記第2受け皿部8が、該突壁部9の下面2b側に向けて凹状に湾曲した状態に形成されている。
【0019】
前記突壁部9は、
図5及び
図6から明らかなように、前記第2側辺9b側が前記柄2の下面2bより僅かに下方に突出するように傾斜しており、従って、前記第2エッジ7も、前記柄2の下面2bより少し下方に突出していることになる。
なお、前記突壁部9の傾斜角度を図示した場合よりも大きくすることにより、前記第2エッジ7の下方への突出量を図示した場合より大きくすることもできる。
【0020】
また、前記第1エッジ5及び第2エッジ7は、
図3から明らかなように、清掃具1を上面2a側から見た場合に、前記柄2の軸線Lと斜めに交叉する直線をなすと共に、前記軸線Lに対して互いに同じ方向に傾斜し、且つ互いに平行をなしている。
なお、前記第1エッジ5及び第2エッジ7の曲率は、互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0021】
前記ブラシ部4は、前記柄2の第2端2dに互いに平行をなすように固定した2つの繊維束11を有している。該繊維束11は、油汚れを掻き落とすことができる程度の剛性を備えた硬質の繊維を柱状に束ねたものである。前記繊維は、天然繊維であっても、合成繊維であっても、金属繊維であっても良い。
【0022】
前記構成を有する清掃具1の使用方法について説明する。
図8には、前記清掃具1のスクレーパ部3により、シロッコファン20の羽根21の湾曲面21aに付着した汚れを落とす場合について示されている。この場合、前記清掃具1の柄2の下面2bを前記羽根21側に向けた状態で、前記スクレーパ部3の湾曲する第1エッジ5を前記羽根21の湾曲面21aに押し当て、前記清掃具1を前方に押し動かすことにより、前記第1エッジ5で汚れを擦り落とすようにする。擦り落とされた汚れは、第1受け皿部6に受けられたあと、外部に排出される。
【0023】
また、前記第2エッジ7を使用するときは、前記清掃具1の角度を変えて前記第2エッジ7を羽根21の湾曲面21aに押し当て、その状態で該清掃具1を後方に引き動かすことにより、前記第2エッジ7で汚れを擦り落とすようにする。擦り落とされた汚れは、第2受け皿部8に受けられたあと、外部に排出される。
【0024】
一方、前記ブラシ部4の繊維束11は、前記第1エッジ5及び第2エッジ7で擦り落とした汚れが外部に排出されずに羽根21の湾曲面21a内に残っている場合に該汚れを排出するのに使用するほか、未だ前記湾曲面21aに付着している汚れを補助的に擦り落とすのにも使用する。
【0025】
更に、前記シロッコファン20の羽根21の側面や底面、あるいは枠などに付着した汚れは、前記第1エッジ5及び第2エッジ7とブラシ部4とを、前述したような方法で適宜使い分けることにより、除去する。
【0026】
このようにして前記操作を繰り返すことにより、前記シロッコファン20の各部に付着した汚れを、主として前記第1エッジ5及び第2エッジ7を使用し、清掃具1を押し引き操作することにより、簡単且つ確実に除去することができる。
【0027】
なお、前記実施形態の清掃具1は、柄2の一端と他端とにスクレーパ部3とブラシ部4とが形成されているが、前記ブラシ部4はなくても良く、あるいは、前記柄2の両端にそれぞれスクレーパ部3が形成されていても良い。
前記柄2の両端にそれぞれスクレーパ部3が形成されている場合、一方のスクレーパ部3における第1エッジ5及び第2エッジ7の曲率と、他方のスクレーパ部3における第1エッジ5及び第2エッジ7の曲率とは、互いに等しくても、互いに異なっていても良く、あるいは、一方のスクレーパ部3における第1エッジ5及び第2エッジ7の向きと、他方のスクレーパ部3における第1エッジ5及び第2エッジ7の向きとが、互いに異なっていても構わない。
【0028】
更に、前記実施形態の清掃具1の柄2の断面形状は長方形状であるが、該柄2の断面形状は、長方形以外の多角形状であっても、円形あるいは楕円形であっても構わない。
【符号の説明】
【0029】
1 清掃具
2 柄
2a 上面
2b 下面
3 スクレーパ部
4 ブラシ部
5 第1エッジ
6 第1受け皿部
7 第2エッジ
8 第2受け皿部
9 突壁部
L 軸線