(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ナノワイヤ製造装置およびナノワイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/283 20060101AFI20240906BHJP
B22F 9/02 20060101ALI20240906BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20240906BHJP
H01J 9/04 20060101ALN20240906BHJP
H01J 37/06 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
H01L21/283 Z
B22F9/02 Z
H01B13/00 501Z
H01J9/04 A
H01J37/06 A
(21)【出願番号】P 2020147169
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】木村 康裕
(72)【発明者】
【氏名】巨 陽
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-075961(JP,A)
【文献】特開2006-239790(JP,A)
【文献】特開2004-202682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/283
B22F 9/02
H01B 13/00
H01J 9/04
H01J 37/06
B82B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロマイグレーションによる原子拡散によりナノワイヤを製造するナノワイヤ製造装置であって、
ナノワイヤ製造装置は、内部に空間を有する部材を含み、
部材は、
ナノワイヤ材料を空間に供給する供給口と、
空間に供給されたナノワイヤ材料をナノワイヤとして射出する少なくとも一つの射出口と、
を含む、
ナノワイヤ製造装置。
【請求項2】
部材の射出口から相対する端部方向に空間を観た時に、当該方向に垂直な空間の断面積が、
射出口側から空間の端部まで同じである、
または、
射出口側から空間の端部へ向かって徐々に大きくなる部分を含む、
請求項1に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項3】
導電膜を更に含み、
導電膜は、射出口を介して部材の空間側と外側に連続して積層している部分を含む、
請求項1または2に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項4】
導電膜は、空間側に積層された場所から供給口に連続して積層している、
請求項3に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項5】
部材は、
供給口を含む第1部材と、
射出口を含む第2部材と、
を含み、
第1部材に第2部材を接合して空間が規定される、
請求項1に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項6】
導電膜を更に含み、
第2部材は、第1部材に接合される第1面を含み、
導電膜は、第1面の第1部材が接合される場所を介して空間側と外側に連続して積層している部分を含む、
請求項5に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項7】
導電膜を更に含み、
第2部材は、
第1部材に接合される第1面と、
第1面に対向する第2面と、
を含み、
導電膜は、射出口を介して第1面から第2面に連続して積層している部分を含む、
請求項5に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項8】
第1部材は、空間を規定する第3面を含み、
導電膜は、第3面の第2部材が接合される場所から供給口に連続して積層している部分を含む、
請求項6または7に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項9】
導電膜の導電率に対するナノワイヤ材料の導電率の比が、5~20である、
請求項3、4、6~8の何れか1項に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項10】
導電膜が、窒化チタン膜である、
請求項3、4、6~9の何れか1項に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項11】
アタッチメントを更に含み、
アタッチメントは、
射出口から射出されたナノワイヤが入る入口と、
ナノワイヤが出る出口と、
を含み、
出口は、射出口の形状とは異なる、
請求項1~10の何れか1項に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項12】
射出口が、複数である、
請求項1~11の何れか1項に記載のナノワイヤ製造装置。
【請求項13】
エレクトロマイグレーションによる原子拡散によりナノワイヤを製造するナノワイヤ製造装置を用いたナノワイヤ製造方法であって、
ナノワイヤ製造装置は、内部に空間を有する部材を含み、
部材は、
ナノワイヤ材料を空間に供給する供給口と、
空間に供給されたナノワイヤ材料をナノワイヤとして射出する少なくとも一つの射出口と、
を含み、
ナノワイヤ製造方法は、
ナノワイヤ材料を供給口から空間に供給する供給工程と、
ナノワイヤ材料にエレクトロマイグレーションを発生させるための電流を印加する電流印加工程と、
エレクトロマイグレーションによってナノワイヤ材料を移動させて射出口からナノワイヤを射出させる射出工程と、
を含む、ナノワイヤ製造方法。
【請求項14】
射出工程中に、ナノワイヤ材料を供給口から空間に供給する、
請求項13に記載のナノワイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、ナノワイヤ製造装置およびナノワイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子・情報・エレクトロニクス分野などの各種工業分野において、例えば、ナノ電子部品、ナノ磁性材料、集積回路の配線等に、金属ナノワイヤが要求され、その研究開発が広く行われている。
【0003】
また、金属は、熱伝導性や展延性・焼結性に富んだ加工性に加え、体積強度比、環境負荷の少ないリサイクル性・補修性などの特徴を有している。そのため金属ナノワイヤは、集積回路の配線のみならず、ナノ・マイクロスケールにおいても金属の特性を発揮する機械材料としても期待されている。
【0004】
さらに、より長い金属ナノワイヤを用いることで、例えば、電子顕微鏡のフィラメント、電子部品のボンディングワイヤ、医療用ナノナイフ、重力波望遠鏡の構成部品であるヒートリンク等といった新たな産業分野においての利用が期待されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、金属配線に高密度電子流を与えてエレクトロマイグレーション(以下、「EM」と記載することがある。)によって金属ナノワイヤを製造する方法が記載されている。詳細には、(1)金属配線にEMと呼ばれる電子流を発生させて、金属原子を移動させ、(2)移動した金属原子が蓄積され高圧力が発生し、(3)その高圧力を利用し、金属原子を物理的に拘束して集約させ、成長させることによって金属ナノワイヤを製造する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-075961号公報
【文献】特開2006-239790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2には、ナノワイヤを製造するデバイスが記載されている。デバイスは、電流入出力用パッド間にアルミニウム配線を設け、アルミニウム配線の上に絶縁層を積層している。そして、デバイスの絶縁層は、アルミニウム配線上に開口を備えている。
【0008】
そのため、特許文献1および特許文献2に記載のデバイスでは、電流入出力用パッド間に電位を印加することで、EMが発生し、アルミニウムのナノワイヤが開口から射出される。
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載のデバイスは、絶縁層の開口からナノワイヤを射出させるため、材料となるアルミニウム配線を絶縁層で覆う必要がある。そうすると、ナノワイヤを形成するための材料であるアルミニウムの量は、絶縁層の下のアルミニウム配線の量に依存するという問題がある。また、特許文献1および特許文献2に記載のデバイスの絶縁層は、CVD等の薄膜形成技術で積層している。そのため、積層後の絶縁層を除去してアルミニウムを供給することは難しく、特許文献1および特許文献2に記載のデバイスは再利用が困難であるという問題がある。
【0010】
そこで、本出願における開示は、金属ナノワイヤを形成するための材料を、所望のタイミングで供給できるナノワイヤ製造装置の提供を課題とする。本出願における開示のその他の任意付加的な効果は、発明を実施するための形態において明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)エレクトロマイグレーションによる原子拡散によりナノワイヤを製造するナノワイヤ製造装置であって、
ナノワイヤ製造装置は、内部に空間を有する部材を含み、
部材は、
ナノワイヤ材料を空間に供給する供給口と、
空間に供給されたナノワイヤ材料をナノワイヤとして射出する少なくとも一つの射出口と、
を含む、
ナノワイヤ製造装置。
(2)部材の射出口から相対する端部方向に空間を観た時に、当該方向に垂直な空間の断面積が、
射出口側から空間の端部まで同じである、
または、
射出口側から空間の端部へ向かって徐々に大きくなる部分を含む、
上記(1)に記載のナノワイヤ製造装置。
(3)導電膜を更に含み、
導電膜は、射出口を介して部材の空間側と外側に連続して積層している部分を含む、
上記(1)または(2)に記載のナノワイヤ製造装置。
(4)導電膜は、空間側に積層された場所から供給口に連続して積層している、
上記(3)に記載のナノワイヤ製造装置。
(5)部材は、
供給口を含む第1部材と、
射出口を含む第2部材と、
を含み、
第1部材に第2部材を接合して空間が規定される、
上記(1)に記載のナノワイヤ製造装置。
(6)導電膜を更に含み、
第2部材は、第1部材に接合される第1面を含み、
導電膜は、第1面の第1部材が接合される場所を介して空間側と外側に連続して積層している部分を含む、
上記(5)に記載のナノワイヤ製造装置。
(7)導電膜を更に含み、
第2部材は、
第1部材に接合される第1面と、
第1面に対向する第2面と、
を含み、
導電膜は、射出口を介して第1面から第2面に連続して積層している部分を含む、
上記(5)に記載のナノワイヤ製造装置。
(8)第1部材は、空間を規定する第3面を含み、
導電膜は、第3面の第2部材が接合される場所から供給口に連続して積層している部分を含む、
上記(6)または(7)に記載のナノワイヤ製造装置。
(9)導電膜の導電率に対するナノワイヤ材料の導電率の比が、5~20である、
上記(3)、(4)、(6)~(8)の何れか1つに記載のナノワイヤ製造装置。
(10)導電膜が、窒化チタン膜である、
上記(3)、(4)、(6)~(9)の何れか1つに記載のナノワイヤ製造装置。
(11)アタッチメントを更に含み、
アタッチメントは、
射出口から射出されたナノワイヤが入る入口と、
ナノワイヤが出る出口と、
を含み、
出口は、射出口の形状とは異なる、
上記(1)~(10)の何れか1つに記載のナノワイヤ製造装置。
(12)射出口が、複数である、
上記(1)~(11)の何れか1つに記載のナノワイヤ製造装置。
(13)エレクトロマイグレーションによる原子拡散によりナノワイヤを製造するナノワイヤ製造装置を用いたナノワイヤ製造方法であって、
ナノワイヤ製造装置は、内部に空間を有する部材を含み、
部材は、
ナノワイヤ材料を空間に供給する供給口と、
空間に供給されたナノワイヤ材料をナノワイヤとして射出する少なくとも一つの射出口と、
を含み、
ナノワイヤ製造方法は、
ナノワイヤ材料を供給口から空間に供給する供給工程と、
ナノワイヤ材料にエレクトロマイグレーションを発生させるための電流を印加する電流印加工程と、
エレクトロマイグレーションによってナノワイヤ材料を移動させて射出口からナノワイヤを射出させる射出工程と、
を含む、ナノワイヤ製造方法。
(14)射出工程中に、ナノワイヤ材料を供給口から空間に供給する、
上記(13)に記載のナノワイヤ製造方法。
【発明の効果】
【0012】
金属ナノワイヤを形成するための材料を、所望のタイミングで供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置の例を模式的に示す図。
【
図3】第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置の変形例を模式的に示す図。
【
図4】第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法の例を模式的に示す図。
【
図5】第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置の例を模式的に示す図。
【
図6】第2の実施形態に係るナノワイヤ製造方法の例を模式的に示す図。
【
図7】第3の実施形態に係るナノワイヤ製造装置の例を模式的に示す図。
【
図8】第3の実施形態に係るナノワイヤ製造方法の例を模式的に示す図。
【
図9】図面代用写真で、射出口から射出されるナノワイヤの電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、ナノワイヤ製造装置について詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0015】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、数値、数値範囲、および定性的な表現(例えば、「同一」、「同じ」等の表現)については、当該技術分野において一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
【0016】
なお、図面において示す各構成の位置、大きさ、範囲などは、理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、本出願における開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0017】
(ナノワイヤ製造装置の第1の実施形態)
図1~3を参照して、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1について説明する。
図1Aは、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1a~1cの外観の一例を模式的に示す図である。
図1Bは、部材2を金属材料で形成するナノワイヤ製造装置1aの一例を模式的に示す断面図である。
図1Cは、部材2を非金属材料で形成するナノワイヤ製造装置1bの一例を模式的に示す断面図である。
図1Dは、部材2を非金属材料で形成するナノワイヤ製造装置1cの一例を模式的に示す断面図である。
図1Eおよび
図1Fは、
図1Cの供給口4から射出口5の方向にナノワイヤ製造装置を観た概略図である。
図2A~2Dは、射出口5を例示したものである。
図3A~3Cは、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1の変形例を模式的に示す図である。
【0018】
ナノワイヤ製造装置1a~1cは、内部に空間3を有する部材2を具備する。そして、部材2は、ナノワイヤ材料を空間3に供給する供給口4、ナノワイヤを射出する射出口5を具備する。
【0019】
部材2は、内部に空間3を有するものであれば、特に限定はない。例えば、空間3を1つの部材で規定してもよく、複数の部材により空間3を規定してもよい。
図1Aに示す例では、1つの部材2によって、空間3を規定している。また、部材2を形成する材料については、ナノワイヤを射出できれば、特に限定はない。部材2を形成する材料として、例えば、ステンレス、チタン、クロム、タングステン等の金属材料、ガラス、ケイ素、セラミックス(例えば、アルミナ、窒化チタン)等の非金属材料が挙げられる。金属材料は、ナノワイヤ材料に比べEMが発生し難く、ナノワイヤ材料と反応しないものがより好ましい。金属材料が、ナノワイヤ材料と反応して金属間化合物等を形成してしまうと溶着してナノワイヤ材料の移動を妨げてしまう場合がある。
図1Bに示す例では、部材2を金属材料で形成している。また、
図1Cおよび
図1Dに示す例では、部材2を非金属材料で形成している。なお、図示は省略するが、部材2を金属材料で形成する場合は、漏電を防ぐため、必要に応じで部材2の外周を絶縁材料で被覆してもよい。
【0020】
後掲するが、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1によるナノワイヤの製造は、EMによって行われる。したがって、空間3に保持されたナノワイヤ材料に電流を印加する必要がある。そのため、部材2を非金属材料で形成する場合は、ナノワイヤ材料に電流を印加するために、ナノワイヤ製造装置1は、導電膜6を具備する。
図1C、
図1Dに示す例では、ナノワイヤ製造装置1b、1cは、部材2が非金属材料であるので、導電膜6を具備している。
【0021】
部材2が有する空間3は、ナノワイヤ材料を部材2内に保持できれば、その形状に特に限定はない。
図1には、部材2の射出口5から相対する端部方向(
図1に示す例では供給口4の方向)に空間3を観た時に、当該方向に垂直な空間3の断面積が、射出口5側から供給口4まで同じである略円柱形状の例が示されている。代替的に、空間3は、略多角柱形状、略立方体形状、略直方体形状等であってもよい。更に代替的に、
図3Aに示すように、部材2の射出口5から相対する端部方向に空間3を観た時に、当該方向に垂直な空間3の断面積が、射出口5側から空間3の端部へ向かって徐々に大きくなる部分3aを含んでもよい。空間3が徐々に大きくなる部分3aは、例えば、円錐や角錐等の錐形状等が挙げられる。また、
図3Bに示すように、空間3が徐々に大きくなる部分3aと略円柱形状等の断面積が同じ部分を組み合わせてもよい。
【0022】
供給口4は、ナノワイヤ材料を空間3へ供給するためのものであり、空間3と連通している。供給口4は、射出口5からナノワイヤが射出されることを妨げないのであれば、部材2のどの部分に具備してもよい。
図1に示す例では、部材2の射出口5に相対する側の端部に供給口4が具備されている。代替的に、
図3Cに示すように、部材2の空間3の側面に供給口4を具備してもよい。
【0023】
射出口5は、空間3と連通し、ナノワイヤを射出する。
図2A~
図2Dは、射出口5を正面側から観た図である。また、射出口5から射出されるナノワイヤは、射出口5の形状に依存する。
図1に示す例では、射出口5は略円形状である。代替的に、射出口5は、
図2Aに示す略四角形状、
図2Bに示す略五角形状等、任意の形状でもよい。また、
図1に示す例では、射出口5は1つである。代替的に、
図2Cおよび
図2Dに示すように、射出口5は、複数であってもよい。射出口5が複数であれば、一度に複数のナノワイヤを製造できる。なお、
図2Cおよび
図2Dに示す例では、複数の射出口5は同一形状である。代替的に、複数の射出口5は異なる形状であってもよい。
【0024】
射出口5の大きさは、製造するナノワイヤのサイズに応じて、適宜設定すればよい。例えば、700nm~10μmの範囲が挙げられる。なお、本明細書において「射出口5の大きさ」とは、円形の場合は直径を意味し、円形以外の場合は略並行となる線で射出口5を挟んだ際に、最も長い距離を意味する。
【0025】
また、本明細書において、射出口5は次のように定義される。
図1A~
図1Dおよび
図3Cに示すとおり、空間3の端部からナノワイヤが外部に射出される箇所まで距離がある場合、射出口5は、空間3の端部からナノワイヤが外部に射出される箇所まで、換言すると、部材2の第1壁21から第2壁22を貫通するように形成されている貫通孔を意味する。一方、
図3Aおよび
図3Bの符号5で示される箇所のとおり、空間3の端部から直接ナノワイヤが外部に射出される場合、射出口5は空間3と外部との境界面を意味する。
【0026】
導電膜6は、空間3に保持されたナノワイヤ材料に電流を印加させるために、部材2に積層される。後掲するが、EMによってナノワイヤを射出口5から射出するためには、ナノワイヤ材料中を移動する電子が射出口5側へ移動するように、ナノワイヤ材料に電流を印加することが好ましい。したがって、導電膜6は、少なくとも射出口5の近傍で、かつ外部電源と接続可能な場所に積層される。
図1Cに示す例では、導電膜6は、射出口5を介して部材2の空間3側と外側に連続して積層している部分を含んでいる。換言すると、導電膜6は、空間3側の第1壁21から射出口5を通って外側の第2壁22に積層されている。つまり、第1壁21に積層された導電膜6が空間3に露出し、第2壁22に積層された導電膜6がナノワイヤ製造装置1bの外部に露出している。
【0027】
なお、導電膜6は、少なくとも射出口5の近傍に積層されていれば、部材2のその他の部分に延伸して積層してもよい。
図1Dに示す例では、導電膜6は、第1壁21から射出口5を通って第2壁22に積層されることに加えて、任意付加的に空間3を規定する第3壁23に積層されている。第3壁23に導電膜6が積層されることで、空間3に露出する導電膜6の面積が増え、空間3内に保持されるナノワイヤ材料との接触面積を増やせる。また、図示していないが、第2壁22に積層された導電膜6を任意付加的に第3壁23に対向する外側の壁まで延在してもよい。
【0028】
また、導電膜6は、空間3に保持されたナノワイヤ材料に電流を印加し、ナノワイヤを射出できる程度のEMを発生できれば、上記した積層される場所の全面に設けてもよいし(当該場所において導電膜6が離間せず連続して積層される)、一部に設けてもよい(当該場所において導電膜6が離間する部分あり)。
図1Eには、第1壁21上に導電膜6を略ドーナッツ状に積層した例、換言すると、第1壁21に導電膜6を離間せずに連続して積層した例が示されている。一方、
図1Fには、第1壁21上に導電膜6を放射状に4本積層した例、換言すると、積層される場所の導電層6を離間して積層した例が示されている。なお、図示は省略するが、射出口5、第2壁22、第3壁23に積層される導電膜6についても同様に、積層される場所の全面に設けてもよいし、一部に設けてもよい。したがって、本明細書において、例えば、「射出口を介して部材の空間側と外側に連続して積層している部分」と記載した場合、部材2の空間3側-射出口5-部材2の外側に連続して積層、換言すると、電気が流れるように積層した部分を少なくとも含むことを意味する。他の実施形態における「射出口を介して・・・」も同様である。なお、上記のとおり、ナノワイヤ材料との接触面積を増やすとの観点からは、ナノワイヤ材料と接触する場所では、導電膜6を全面に積層することがより好ましい。
【0029】
導電膜6の材料は、ナノワイヤ材料に比べEMが発生し難く、ナノワイヤ材料と反応しない導電性の材料であれば、特に限定はない。また、
図1Dに示す例では、導電膜6がナノワイヤ材料よりも導電率が高いと、ナノワイヤ材料よりも導電膜6を電子が移動してしまう。そのため、ナノワイヤ材料を移動する電子が少なくなり、EMの効率が低くなるおそれがある。したがって、導電膜6は、ナノワイヤ材料よりも導電率が低いものが好ましく、例えば、導電膜6の導電率に対するナノワイヤ材料の導電率の比は、5~20が好ましく、10~20であることがより好ましい。導電膜6の導電率が低くなることで、電子は、ナノワイヤ材料の方を移動することから、EMの効率が下がらない。ナノワイヤ材料にもよるが、ナノワイヤ材料に比べEMが発生し難く、ナノワイヤ材料と反応せず、かつ導電率の低い導電膜6としては、例えば、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)、窒化チタンアルミ(TiAlN)、窒化ホウ素(BN)、タングステン、二酸化ルテニウム(RuO
2)等が挙げられる。
【0030】
なお、ナノワイヤ材料中を移動する電子が導電膜6に移動しても、ナノワイヤ材料中の電子を射出口5方向へ移動させることができれば、導電膜6の導電率は、ナノワイヤ材料の導電率よりも高くてもよい。
図1Cに示す例では、ナノワイヤ材料中の電子は、射出口5方向に向かい、導電膜6へ移動する。したがって、ナノワイヤ材料中の電子は、射出口5方向以外に移動することはない。よって、導電膜6の積層する場所によるものの、ナノワイヤ材料に比べて導電率の高いものも用いることができる。
図1Cに示す例では、導電膜6として、例えば、金、銀、銅、タングステン等を用いてもよい。
【0031】
導電膜6は、公知の薄膜作製技術、例えば、物理気相成長法(PVD)(蒸着、スパッタリング等)、化学気相成長法(CVD)(原子層堆積等)、無電解めっき等によって、部材2上に積層される。
【0032】
(ナノワイヤ製造方法の第1の実施形態)
図4を参照して、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法について説明する。
図4Aは、部材2を金属材料で形成する第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1aでのナノワイヤ製造方法の一例を示す図である。
図4Bは、部材2を非金属材料で形成する第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1bでのナノワイヤ製造方法の一例を示す図である。
図4Cは、部材2を非金属材料で形成する第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1cでのナノワイヤ製造方法の一例を示す図である。
【0033】
第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法は、(1)ナノワイヤ材料71を供給口4から空間3に供給する供給工程と、(2)ナノワイヤ材料71にエレクトロマイグレーションを発生させるための電流を印加する電流印加工程と、(3)エレクトロマイグレーションによってナノワイヤ材料71を移動させて射出口5からナノワイヤ7を射出させる射出工程と、を含む。上記工程は、(1)、(2)、(3)の順に実施される。
【0034】
供給工程は、ナノワイヤ材料71をナノワイヤ製造装置の供給口4から空間3に供給する工程である。供給口4から供給されたナノワイヤ材料71は、空間3に保持される。
【0035】
ナノワイヤ材料71は金属である。EMは、金属であれば発生するので、製造したいナノワイヤに応じて適宜選択すればよい。例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、スズ、ビスマス、タングステン等の金属、またはそれら金属の合金が挙げられる。また、供給口4に供給されるナノワイヤ材料71は、どのような形状であってもよく、例えば、粉末状、小片状、細線状、棒状等が挙げられる。
【0036】
電流印加工程は、EMが射出口5の方向へ発生するようにナノワイヤ材料71に電流を印加する。
図4Aに示すナノワイヤ製造装置1aの例では、部材2が金属材料から形成されている。そのため、部材2の第2壁22に外部電源の正極が接続される。そして、外部電源の負極は、部材2に接続すると、ナノワイヤ材料71に電流が流れないので、ナノワイヤ材料71に直接接続される。したがって、外部電源の負極からの電子は、ナノワイヤ材料71を介して射出口5方向へ移動する。また、
図4Bに示すナノワイヤ製造装置1bの例では、部材の第2壁22に積層された導電膜6に外部電源の正極が接続され、ナノワイヤ材料71に負極が接続される。よって、ナノワイヤ製造装置1bは、ナノワイヤ製造装置1aと同様に電子が移動する。また、
図4Cに示すナノワイヤ製造装置1cの例のように、導電膜6が、任意付加的に空間3を規定する第3壁23に積層されたときには、外部電源の負極を第3壁23に積層された導電膜と接続できる。勿論、ナノワイヤ製造装置1cを用いたときに、外部電源の負極を直接ナノワイヤ材料71に接続してもよい。
図4Cに示す例では、外部電源の負極からの電子が、第3壁23に積層された導電膜6に移動する。そして、第3壁23に積層された導電膜6とナノワイヤ材料71が接触したところで、電子は、ナノワイヤ材料71へ移動する。これは、導電膜6の導電率が、ナノワイヤ材料71の導電率よりも低いことによる。その後、ナノワイヤ材料71に移動した電子は、射出口5の方向へ移動する。
【0037】
ナノワイヤ材料71を流れる電流量は、EMが発生すれば特に限定はないが、電流密度として1×106A/m2以上が好ましく、1×108A/m2以上がより好ましい。
【0038】
射出工程は、電流印加によって発生したEMによってナノワイヤ材料71を移動させて射出口5からナノワイヤ7を射出させる工程である。EMは、金属配線を流れる電流密度が上がると原子拡散により金属原子が電子の移動する方向に輸送される現象である。先ず、
図4A~
図4Cに示す例のように、電流印加により、射出口5の方向へ電子が移動する。次に、ナノワイヤ製造装置1a~1cの空間3に保持されたナノワイヤ材料71は、EMによる原子拡散により射出口5の方向へ移動する。そして、射出口5の方向へ移動したナノワイヤ材料71が蓄積され射出口5付近に高い圧力が生じる。その結果、高い圧力によって、射出口5からナノワイヤ7が射出・製造される。
【0039】
第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1a~1fおよびナノワイヤ製造方法は、以下の効果を奏する。
(1)ナノワイヤ製造装置1a~1fは、供給口4を具備している。そのため、ナノワイヤ材料71に電流を印加している間であっても、所望のタイミングでナノワイヤ材料71を供給口4から供給できる。したがって、ナノワイヤ7の製造によって減少したナノワイヤ材料71を補充できることから、従来技術のように、ナノワイヤ材料71の量に限定はない。なお、ナノワイヤ材料71の供給は、通電を切って行ってもよい。
(2)ナノワイヤ材料71を供給口4から供給できるので、供給量に応じた長いナノワイヤ7を製造できる。
(3)ナノワイヤ材料71を供給口4から供給できるので、ナノワイヤ製造装置1a~1fを繰り返し使用できる。
(4)ナノワイヤ材料71を供給口4から供給できるので、異なる金属組成を有するナノワイヤ7を製造できる。例えば、第一の金属材料でナノワイヤ7を製造し、その後、第一の金属材料とは異なる第二の金属材料を供給口4から供給することで、第一の金属材料と第二の金属材料が連続した異なる金属組成を有したナノワイヤ7を製造できる。
(5)簡便にナノワイヤ7を製造できる。例えば、溶解させた金属材料に圧力をかけて、射出口から射出させてナノワイヤを製造する場合には、材料の溶解、高圧力の付加、温度管理等の手順があるため煩雑である。しかしながら、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1a~1fは、ナノワイヤ材料71の供給とナノワイヤ材料71に電流印加することで、ナノワイヤ7を製造することができ、煩雑な手順は必要ない。
(6)複数の射出口5を具備した場合、一度に複数のナノワイヤ7を製造できる。
(7)部材2の第3壁23を介し第1壁21から供給口4まで導電膜6を積層した場合、外部電源を導電膜6に接続できる。そのため、ナノワイヤ材料71に直接外部電源を接続することなく、ナノワイヤ材料71に電流を印加できる。
【0040】
(ナノワイヤ製造装置の第2の実施形態)
図5を参照して、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1g~1jについて説明する。
図5Aは、ナノワイヤ製造装置1g~1jの外観の一例を模式的に示す図である。
図5Bは、第2部材25を金属材料で形成するナノワイヤ製造装置1gの一例を模式的に示す断面図である。
図5Cは、部材2を非金属材料で形成するナノワイヤ製造装置1hの一例を模式的に示す断面図である。
図5Dは、部材2を非金属材料で形成するナノワイヤ製造装置1iの一例を模式的に示す断面図である。
図5Eは、部材2を非金属材料で形成するナノワイヤ製造装置1jの一例を模式的に示す断面図である。
【0041】
第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1a~1fは、部材2が有する空間3を一つの部材で規定している。一方、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1g~1jは、部材2が有する空間3を、第1部材24に第2部材25を接合して規定した点で第1の実施形態と異なる。したがって、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1g~1jでは、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0042】
第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1g~1jにおいて、部材2は、第1部材24と第2部材25を具備する。そして、第1部材24に第2部材25を接合して、空間3を規定する。また、第1部材24は供給口4を具備し、第2部材25は射出口5を具備する。
【0043】
第1部材24は、供給口4となる開口(以下、「第1開口」と記載することがある。)と、第2部材25との接合により覆われる開口(以下、「第2開口」と記載することがある。)を少なくとも具備し、それら開口が連通している。第1部材24は、第1開口と第2開口が空間3を介して連通していれば、第1開口および第2開口を第1部材24のどの場所に具備してもよい。
図5に示す例では、第1開口と第2開口は対向し、連通している。代替的に、第1部材25は、第1開口と第2開口とを対向しない位置に具備し、空間3を介して連通してもよい。
【0044】
第2部材25は、第1部材24に接合されて空間3を規定する。また、第2部材25は、射出口5を具備する。第2部材25は、第1部材24に接合される側の面を第1面26とし、第1面26が第1部材24に接合されて空間3を規定する。なお、第2部材25の第1面26と相対する外側を向く面を第2面27とする。第2部材25は、第1部材24に接合されて空間3を規定し、射出口5を具備するのであれば、形状や大きさに特に限定はない。
図5に示す例では、第2部材25は、厚さが均一の円形状である。代替的に、第2部材25を、楕円形状や多角形状、厚さが均一ではないものとしてもよい。
【0045】
第1部材24と第2部材25の接合方法に、特に限定はない。接合方法は、例えば、接着剤による接合、ネジ等の固定部材による接合、溶接、陽極接合、またはそれらを組み合わせた接合が挙げられる。また、接合に用いられる接着剤に、特に限定はない。接着剤としては、例えば、カーボンペースト、銀ペースト、ニッケルペースト、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0046】
また、第1部材24および第2部材25を形成する材料は、上記第1の実施形態で説明した部材2を形成する材料と同じものを用いることができる。
図5A~5Eに示す例では、第1部材24は、非金属材料で形成しているが、代替的に、金属材料で形成してもよい。なお、
図5Bに示す例では、第2部材25を金属材料で形成している。また、
図5C~
図5Eに示す例では、第2部材25を非金属材料で形成している。
【0047】
第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1においても、上記第1の実施形態と同様に、空間3に保持されたナノワイヤ材料に電流を印加する必要がある。そのため、
図5C~
図5Eに示す、第1部材24および第2部材25を非金属材料で形成しているナノワイヤ製造装置1h~1jは、導電膜6を具備している。
【0048】
導電膜6は、上記第1の実施形態と同様に、少なくとも射出口5の近傍で、かつ外部電源と接続可能な場所に積層されればよい。
図5Cに示す例では、導電膜6は、第2部材25の第1面26の第1部材24が接合される場所を介して空間3側から外側に連続して積層している部分を含む。すなわち、導電膜6は、第1部材24に第2部材25を接合している場所より空間3側の部分で空間3に露出し、外側の部分でナノワイヤ製造装置1hの外部に露出する。代替的に、上記第1の実施形態で説明したように、導電膜6は、第2部材25が具備する射出口5を介して空間3側の第1面26から外側の第2面27へ連続して積層している部分を含んでもよい。
図5Dには、導電膜6を第1面26から射出口5を通って第2面に連続して積層した例が示されている。
【0049】
また、
図5Eに示す例のように、導電膜6は、第1部材24に第2部材25を接合している場所を介して空間3側から外側に連続して積層されることに加えて、任意付加的に第1部材24の空間3を規定する第3面28に積層してもよい。第3面28に導電膜6が積層されることで、空間3内に保持されるナノワイヤ材料との接触面積を増せる。また、図示していないが、導電層6を、射出口5を介して第1面26から第2面27に連続して積層することに加えて、任意付加的に第1面26から第3面28に延在してもよい。
【0050】
また、更に導電膜6を、第1部材24に第2部材25を接合している場所を介して空間3側から外側に連続して積層した際、導電膜6を任意付加的に第3面28に対向する外側の面まで延在してもよい。
【0051】
(ナノワイヤ製造方法の第2の実施形態)
図6を参照して、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造方法について説明する。
図6Aは、第2部材25を金属材料で形成する第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1gでのナノワイヤ製造方法の一例を示す図である。
図6Bは、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1hでのナノワイヤ製造方法の一例を示す図である。
図6Cは、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1iでのナノワイヤ製造方法の一例を示す図である。
図6Dは、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1jでのナノワイヤ製造方法の一例を示す図である。
【0052】
第2の実施形態に係るナノワイヤ製造方法は、部材2が有する空間3を、第1部材24に第2部材25を接合して規定したナノワイヤ製造装置1g~1jでナノワイヤを製造する点で、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法と異なり、その他の点は、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法と同じである。したがって、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造方法では、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造方法において明示的に説明されなかったとしても、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0053】
電流印加工程は、EMが射出口5の方向へ発生するようにナノワイヤ材料71に電流を印加する。
図6Aに示すナノワイヤ製造装置1gの例では、第2部材25が金属材料で形成されている。そのため、第2部材25の第2面27に外部電源の正極が接続される。そして、外部電源の負極は、ナノワイヤ材料71に直接接続される。したがって、外部電源の負極からの電子は、ナノワイヤ材料71を介して射出口5方向へ移動する。
【0054】
図6Bに示すナノワイヤ製造装置1hの例では、導電膜6は、第1部材24に第2部材25を接合している場所を介して空間3側と外側に連続して積層されている。したがって、第1部材24に第2部材25を接合している場所よりも空間3側に積層された導電膜6がナノワイヤ材料71に接触する。そして、第1部材24に第2部材25を接合している場所よりも外側に積層された導電膜6は、外部電源の正極に接続される。また、外部電源の負極は、ナノワイヤ材料71に直接接続される。ナノワイヤ材料71に電流が印加されると、導電膜6は、空間3の射出口5側の端部に積層されているので、電子は、射出口5の方向へ移動する。
【0055】
図6Cに示すナノワイヤ製造装置1iを用いた例は、上記実施形態1に係るナノワイヤ製造装置1bを用いた場合の電極の接続と同様である。
図6Dに示すナノワイヤ製造装置1jの例では、導電膜6は、第1面26の第1部材24に第2部材25を接合している場所を介して空間3側と外側、および任意付加的に第3面28に積層されている。そのため、外部電源の負極を第3面28に積層された導電膜6と接続できる。勿論、ナノワイヤ製造装置1jを用いたときに、外部電源の負極を直接ナノワイヤ材料71に接続してもよい。
【0056】
したがって、ナノワイヤ製造装置1g~1jにおいて、ナノワイヤ材料71を移動する電子は、射出口5の方向へ流れることから、射出口5の方向へEMが発生する。よって、射出工程において、発生したEMによりナノワイヤ材料71が移動し、射出口5からナノワイヤ7が射出される。
【0057】
第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1g~1jおよびナノワイヤ製造方法は、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1a~1fおよびナノワイヤ製造方法が奏する効果に加え、以下の効果を相乗的に奏する。
(1)第1部材24と第2部材25を具備することで、第1部材24に第2部材25を接合している場所を介して、外部電源と接続できる。
(2)第1部材24に第2部材25を接合するので、所望の形状の射出口5を具備した第2部材25を接合できる。
【0058】
(ナノワイヤ製造装置の第3の実施形態)
図7を参照して、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1kについて説明する。
図7Aは、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1kの一例を模式的に示す断面図である。
図7Bは、出口82を正面として観たアタッチメント8の一例を模式的に示す図である。
図7Cは、
図7BのX-X’におけるアタッチメント8の断面図を模式的に示す図である。
図7Dは、アタッチメント8の出口82から射出されるナノワイヤ7の形状を模式的に示す図である。
【0059】
第3の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1kは、アタッチメント8を具備する点で第1の実施形態と異なり、その他の点は、第1の実施形態と同じである。したがって、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1kでは、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第3の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。また、
図7に示す例は、第1の実施形態を参照して説明をしているが、第3の実施形態は、第2の実施形態で説明済みの事項も採用可能であることは言うまでもない。
【0060】
上記第1の実施形態で説明したように、射出口5から射出されるナノワイヤの形状は、射出口5の形状に依存している。しかしながら、例えば、中空状のようなナノワイヤを製造しようとしたとき、射出口5の形状を変えるだけでは、製造できない場合もある。そこで、
図2に示すような単に射出口5の形状を変化させることでは製造が難しい形状のナノワイヤを製造するために、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1kは、アタッチメント8を具備する。
【0061】
アタッチメント8は、射出口5から射出されたナノワイヤの形状を変える。アタッチメント8は、入口81と出口82を具備する。入口81は、射出口5から射出したナノワイヤが導入される場所である。また、出口82は、アタッチメント8に導入したナノワイヤが射出される場所である。
【0062】
アタッチメント8から射出されるナノワイヤの形状は、アタッチメント8の出口82の形状に依存する。出口82の形状は特に限定はなく、製造したいナノワイヤの形状にあわせて適宜調整すればよい。
図7Bおよび
図7Cには、中空状のナノワイヤを製造するアタッチメント8の例が示されている。また、
図7Dには、アタッチメント8から射出される中空状のナノワイヤ7が示されている。
【0063】
アタッチメント8を形成する材料は、上記第1の実施形態で説明した部材2を形成する材料と同じものを用いることができる。また、図示はしていないが、アタッチメント8を非金属材料で形成する場合、アタッチメント8は、アタッチメント8の入口81から出口82にわたり導電膜を具備してもよい。
【0064】
アタッチメント8は、射出口5から射出されるナノワイヤが入口81に導入されるよう、部材2の第2壁22に接合される。アタッチメント8の第2壁22への接合方法は、特に限定はない。接合方法は、例えば、上記第2の実施形態で説明した、第1部材24と第2部材25との接合方法を用いることができる。
【0065】
(ナノワイヤ製造方法の第3の実施形態)
図8を参照して、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造方法について説明する。
図8は、金属材料で形成されたアタッチメント8を具備する第3の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1kを用いたナノワイヤ製造方法の一例を示す図である。
【0066】
第3の実施形態に係るナノワイヤ製造方法は、アタッチメント8を具備したナノワイヤ製造装置1kでナノワイヤを製造する点で、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法と異なり、その他の点は、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法と同じである。したがって、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造方法では、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造方法において明示的に説明されなかったとしても、第1の実施形態に係るナノワイヤ製造方法で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。また、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造方法は、第2の実施形態に係るナノワイヤ製造方法で説明済みの事項も採用可能であることは言うまでもない。
【0067】
電流印加工程は、EMが射出口5の方向へ発生するようにナノワイヤ材料に電流を印加する。
図8に示す例では、アタッチメント8を金属材料で形成している。
図8に示すように、アタッチメント8は、金属材料から形成される部材2または第2壁22に積層された導電膜6と接触させ、電気的に接続する。したがって、アタッチメント8に外部電源の正極を接続することで、アタッチメント8を移動するナノワイヤ材料にもEMを発生できる。なお、射出口5とアタッチメント8の出口82の距離が短い場合、アタッチメント8を金属材料で形成する場合であっても、金属材料から形成される部材2または第2壁22に積層された導電膜6に外部電源の正極を接続してもよい。射出口5とアタッチメント8の出口82の距離が短い場合、アタッチメント8内でEMが発生しなくても、高い圧力により射出口5からナノワイヤ7が射出されていることから、当該圧力により出口82からナノワイヤ7を射出できる。
【0068】
また、アタッチメント8を非金属材料で形成し、入口81から出口82にわたり導電膜を具備する場合には、アタッチメント8が具備する導電膜と、金属材料から形成される部材2または第2壁22に積層された導電膜6とを接触させてもよい。そして、出口82の導電膜に外部電源の正極を接続することで、アタッチメント8を移動するナノワイヤ材料にもEMを発生できる。なお、射出口5とアタッチメント8の出口82の距離が短い場合、金属材料から形成される部材2または第2壁22に積層された導電膜6に外部電源の正極を接続してもよい。また、その際、アタッチメント8は、導電膜を具備しなくてもよい。上記したように、射出口5とアタッチメント8の出口82の距離が短い場合、アタッチメント8内でEMが発生しなくても、出口82からナノワイヤ7を射出できる。
【0069】
射出工程では、発生したEMにより、射出口5からナノワイヤ7が射出される。そして、ナノワイヤ7は、アタッチメント8の入口81に導入される。ナノワイヤ7が入口81に導入された後も、次々とナノワイヤ7が射出口5から射出されるので、入口81から出口82にナノワイヤ7が通過する過程で圧力がかかる。したがって、第3の実施形態に係るナノワイヤ製造方法では、アタッチメント8の出口82の形状と同様の形状のナノワイヤ7を製造できる。また、射出工程において、アタッチメント8を加熱してもよい。ナノワイヤ7がアタッチメント8を通過する過程で、ナノワイヤ7に圧力と熱がかかるので、ナノワイヤ7をより変形させやすくなる。
【0070】
第3の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1kおよびナノワイヤ製造方法は、第1および第2の実施形態に係るナノワイヤ製造装置1a~1jおよびナノワイヤ製造方法が奏する効果に加え、以下の効果を相乗的に奏する。
(1)アタッチメント8を具備することで、射出口5で製造することが難しい形状のナノワイヤを製造できる。
【実施例】
【0071】
<実施例1>
[ナノワイヤ製造装置の作製]
以下に記載する手順でナノワイヤ製造装置を作製した。
【0072】
〔材料〕
・ガラスキャピラリ(筒)(外径/内径 0.57/0.14mm、長さ32mm)(EMマイスターミニキャップ0.5μl、アズワン)(第1部材24)
・カーボンペースト(超高温耐熱カーボンペーストG7716)(イーエムジャパン株式会社)
・Siメッシュウェハ(孔サイズ10μm×10μm矩形(射出口5))(コーンズテクノロジー株式会社)(第2部材25)
【0073】
〔製造方法〕
(1)ガラスキャピラリ内壁に原子層堆積装置(ALD)を用いて導電膜6として窒化チタン(TiN)膜を100nm堆積した。
(2)SiメッシュウェハにCVDを用いて絶縁膜としてSiO2300nm、高周波スパッタリング装置を用いて密着改善層としてTi300nm、同様に高周波スパッタリング装置を用いて導電膜6としてTiN300nmを順に堆積した(以下、Siメッシュウェハの絶縁膜、密着改善層および導電膜6が堆積された側の面を「堆積面」と記載する。)。
(3)SiメッシュウェハをミラーコンパウンドGC#320(粒径40μm、アズワン)と超音波ディスクカッター(Model601、Gatan,Inc.)によりφ3mmに切り抜いた。
(4)ガラスキャピラリ先端にSiメッシュウェハの堆積面を接するようにして、ガラスキャピラリとSiメッシュウェハをカーボンペーストで接着させた。
(5)24時間大気中で放置し、その後90℃で2時間、260℃で2時間加熱し、ナノワイヤ製造装置を作製した。
【0074】
<実施例2>
[ナノワイヤの製造]
実施例1で作製したナノワイヤ製造装置を用い以下の手順で、ナノワイヤを製造した。
(1)保持治具である金属ニードル(外径/内径 1.08/0.72mm、長さ15mm)(ゲージ19、武蔵エンジニアリング株式会社)にナノワイヤ製造装置を挿入し、ナノワイヤ製造装置を保持した。
(2)ナノワイヤ製造装置のガラスキャピラリの開口(供給口4)から、長さ30mmのAl細線(AL-011167、直径φ0.10mm、99.9%)(株式会社ニラコ)を挿入した。
(3)ナノワイヤ製造装置と電源を接続した。この時、Siメッシュウェハの堆積面を電源の正極、Al細線の端部を電源の負極に接続して回路を形成した。電源には、多出力直流安定化電源PW8-3AQP(株式会社テクシオ・テクノロジー)を用いた。
(4)ナノワイヤ製造装置へ1×108A/m2の定電流となるように電流を印可した。
【0075】
図9に、ナノワイヤ製造装置のSiメッシュウェハの射出口5からAlナノワイヤが射出された画像を示す。
【0076】
ナノワイヤ製造装置のSiメッシュウェハは、複数の略正方形の射出口5を有しており、複数の射出口5から、射出口5の形状に応じた矩形のAlナノワイヤが射出されたことが示された。なお、
図9に示されたAlナノワイヤは、Siメッシュウェハの射出口5(メッシュ孔)よりも小さい。これは、Siメッシュウェハへの絶縁膜、密着改善層、導電膜6の堆積時に材料がメッシュ孔に回り込み、堆積面側のメッシュ孔のサイズが、堆積面とは反対側の面(
図9に示された面)のメッシュ孔のサイズより小さくなったためと考えられる。
【0077】
以上のことから、本出願で開示するナノワイヤ製造装置によって、ナノワイヤを製造することができた。また、ナノワイヤ製造装置は、開口を有していることから、所望のタイミングでナノワイヤ材料の供給を行うことができ、従来技術のように、ナノワイヤ材料の量に限定されない。また、ナノワイヤ材料の供給を続けることで長いナノワイヤを製造することが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本出願で開示するナノワイヤ製造装置を用いることで、所望のタイミングでナノワイヤ材料の供給できる。したがって、機械、材料、電気、宇宙、医療などの幅広い産業分野にとって有用である。
【符号の説明】
【0079】
1、1a~1k…ナノワイヤ製造装置、2…部材、21…第1壁、22…第2壁、23…第3壁、24…第1部材、25…第2部材、26…第1面、27…第2面、28…第3面、3…空間、3a…空間が徐々に大きくなる部分、4…供給口、5…射出口、6…導電膜、7…ナノワイヤ、71…ナノワイヤ材料、8…アタッチメント、81…入口、82…出口