(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】冷却塔監視システム
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20240906BHJP
G01M 13/045 20190101ALI20240906BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240906BHJP
【FI】
F28F27/00 501Z
G01M13/045
G01M99/00 A
(21)【出願番号】P 2020180461
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勲
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】出口 将嗣
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084407(JP,A)
【文献】国際公開第2004/017033(WO,A1)
【文献】特開2018-159721(JP,A)
【文献】特開2019-015427(JP,A)
【文献】特開平8-261886(JP,A)
【文献】特開2002-163387(JP,A)
【文献】特開2018-080880(JP,A)
【文献】特開昭61-153399(JP,A)
【文献】特開2009-3517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
F28C 1/00-3/18
G01M 13/045,99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔における一又は複数の監視対象箇所又は当該箇所の近傍に配設され、当該監視対象箇所で対象とする物理情報を検出する一又は複数のセンサと、
前記冷却塔に配設され、前記センサから出力されたデータを受け取って外部に
所定の時間間隔で送信する送信部と、
前記冷却塔から離れた所定箇所に位置して、
複数の冷却塔の前記送信部から送信されたデータを受け取り、受け取ったデータを直接又は所定の処理を施した上で記録し、当該記録をデータの受け取りごとに繰り返して、センサ出力に基づく時系列データを
冷却塔ごとに取得するデータ処理部とを備え、
前記センサによる検出が、
間欠的に、且つ前記冷却塔の運転状態における少なくとも冷却塔の送風機が定格運転された所定タイミングに実行され、
前記データ処理部が、
各冷却塔について、取得した前記センサ出力に基づく時系列データを解析して、冷却塔における監視対象箇所に対応する所定部品の性能劣化度合いを判定し、当該判定した劣化度合い
の時間経過に伴う変化傾向と、冷却塔の運転休止期間を含んだ運転スケジュールとに基づいて、前記部品についてメンテナンスを行うべき時期を予測することを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記センサが、前記冷却塔における監視対象箇所としての送風機の一又は複数の軸受部に配設され、前記物理情報として
前記軸受部の振動の加速度を検出する加速度センサを少なくとも含
み、
前記データ処理部が、各冷却塔について、前記加速度センサの出力に基づく前記時系列データを解析して、前記監視対象箇所に対応する前記軸受部の性能劣化度合いを判定し、当該判定した劣化度合いの時間経過に伴う変化傾向と、冷却塔の前記運転スケジュールとに基づいて、軸受部についてメンテナンスを行うべき時期を予測することを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項3】
前記請求項
1に記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記センサが、前記冷却塔における監視対象箇所としての熱交換部の近傍に配設され、前記物理情報として熱交換部の入口側と出口側との差圧を検出する差圧センサを少なくとも含み、
前記データ処理部が、各冷却塔について、前記差圧センサの出力に基づく前記時系列データを解析して、前記監視対象箇所に対応する熱交換部の性能劣化度合いを判定し、当該判定した劣化度合いの時間経過に伴う変化傾向と、冷却塔の前記運転スケジュールとに基づいて、熱交換部についてメンテナンスを行うべき時期を予測することを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項4】
前記請求項
1に記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記センサが、前記冷却塔における監視対象箇所としての循環管路の所定箇所に配設され、前記物理情報として前記循環管路の所定箇所における循環水圧力を検出する圧力センサを少なくとも含み、
前記データ処理部が、各冷却塔について、前記圧力センサの出力に基づく前記時系列データを解析して、前記監視対象箇所に対応するストレーナの性能劣化度合いを判定し、当該判定した劣化度合いの時間経過に伴う変化傾向と、冷却塔の前記運転スケジュールとに基づいて、ストレーナについてメンテナンスを行うべき時期を予測することを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項5】
前記請求項
1又は2に記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記冷却塔が、送風機における電動機のインバータ制御を行うインバータ制御部を有し、
冷却塔運転状態における所定タイミングでインバータ制御部により実行される、送風機の定格運転の際に、あらかじめ設定された定格運転のタイミングに係る情報、又は、所定の検出部を用いて前記インバータ制御部から検出した定格運転状態を示す情報、に基づいて、前記センサによる検出を同期して実行させることを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項6】
前記請求項
2に記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記冷却塔が、送風機における電動機のインバータ制御を行うインバータ制御部を有し、
前記センサによる検出が、前記送風機の定格運転時以外の運転状態における所定タイミングにも実行され、
センサによる定格運転時以外の検出のタイミングにおいては、センサから出力されたデータに対し、データ処理部で軸受の劣化に係る振動成分がより明確化される所定のデータ処理を施した上での記録を繰り返して、前記センサ出力に基づく時系列データを取得することを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項7】
前記請求項
2に記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記データ処理部が、前記加速度センサから出力されたデータに対し、所定のデータ処理を施して、軸受部以外の冷却塔所定箇所の不具合に起因する振動加速度成分を明確化した第二のデータを新たに取得して記録し、当該第二のデータの記録を繰り返して得られる前記センサ出力に基づく時系列データを解析して、前記冷却塔所定箇所の劣化度合いを判定することを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項8】
前記請求項1ないし7のいずれかに記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記データ処理部が、少なくとも冷却塔における所定部品について予測したメンテナンス時期の情報を、所定の配信用装置に送信し、
当該配信用装置が、少なくとも前記メンテナンス時期の情報を、前記冷却塔に対応させてあらかじめ登録された一又は複数の端末装置に送信することを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項9】
前記請求項8に記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記データ処理部が、冷却塔における前記所定部品について判定した劣化度合いに係る情報を、前記配信用装置を通じて前記冷却塔に対応する端末装置に送信し、
前記端末装置が、冷却塔における前記所定部品の劣化度合いに係る情報を、端末装置の表示手段に他の情報と合わせて表示することを
特徴とする冷却塔監視システム。
【請求項10】
前記請求項1ないし9のいずれかに記載の冷却塔監視システムにおいて、
前記データ処理部が、前記部品のメンテナンスが推奨される劣化状態の閾値である警告レベルと、部品の使用継続不可状態の閾値である危険レベルをあらかじめ設定し、通常のメンテナンスの時期の予測として、部品の劣化度合いが前記警告レベルに達する時期を予測するようにし、
前記センサが、前記冷却塔における複数の監視対象箇所に対応させて複数配設され、
前記データ処理部が、
前記冷却塔の各監視対象箇所に関わるセンサごとに、前記センサ出力に基づく時系列データを解析して、センサに対応する所定部品の性能劣化度合いを判定し、当該判定した劣化度合いに基づいて、前記部品についてメンテナンス時期をいったん予測し、
複数の部品について、予測されたメンテナンス時期が互いに近く、所定の期間内に含まれる場合には、前記データ処理部が、各部品の劣化度合いが
前記危険レベルに達しない範囲内で各メンテナンス時期を調整して、それぞれのメンテナンス時期が重複するよう再設定し、当該再設定した時期の情報を示すことを
特徴とする冷却塔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔に取り付けたセンサの検出結果を遠隔で取得して冷却塔各部の状況を監視可能とすると共に、検出結果から部品の劣化を判断して交換時期を予測可能とする監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場や空気調和設備などで循環使用する水などの液相の熱媒体の冷却を目的として屋外に設置される冷却塔では、冷却塔内部の熱交換部において、ファン(送風機)の作動に伴って外部から取込まれる空気(外気)と熱媒体とを、直接あるいは間接的に熱交換させ、冷却を行う仕組みとなっている。こうした冷却塔は、仮に不具合により運転停止に至ると、その影響が極めて大きいことから、不具合を未然に防ぐメンテナンスが欠かせないものとなっている。
【0003】
冷却塔に対し適切にメンテナンスを行うためには、冷却塔の現状を把握しておくのが望ましいことから、建物の屋上等、人が立ち入りにくい箇所に設けられることの多い冷却塔に対し、冷却塔の運転時間や運転回数等を自動的に計測する装置を設けることが、従来より提案されていた。
このような冷却塔の運転時間や運転回数を計測可能な設備を備えた運転監視装置の例として、特許第5612928号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の冷却塔の運転監視装置は、前記特許文献に示される構成を有しており、送風機の運転により冷却塔の塔体内が所定負圧以下になるのを負圧検出手段で検出し、この負圧検出手段の出力から、計測手段で冷却塔の運転回数や運転時間を計測することができる。
【0006】
ただし、こうした従来の冷却塔の運転監視装置は、冷却塔の運転を監視し、その運転回数や運転時間を計測可能とする機能を有するに過ぎず、冷却塔の運転継続に伴って進行する、例えば循環水中の汚れ付着による充填材の詰まりなどの、冷却塔各部の変化を監視し検出することはできなかった。
【0007】
このため、冷却塔のメンテナンス対応としては、所定運転時間経過等に基づいて定期的に全ての交換対象部品を交換するものとならざるを得なかった。この場合、交換が必要な部品のみを選別して交換することができず、交換対象に含まれる部品において劣化が進んでいない状態であっても、定められた交換時期に達すると漏れなく交換されることから、メンテナンスコストが大きくなるという課題を有していた。
【0008】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、設置した各種センサによる検出結果を用いて、冷却塔における監視対象箇所の劣化度合いを判断可能とすると共に、劣化する部品の交換すべき時期を予測して、最適なタイミングでのメンテナンスを実現可能とし、冷却塔に起因する重大なトラブルの発生を防止しつつ、メンテナンスコストの抑制が図れる、冷却塔監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷却塔監視システムは、冷却塔における一又は複数の監視対象箇所又は当該箇所の近傍に配設され、当該監視対象箇所で対象とする物理情報を検出する一又は複数のセンサと、前記冷却塔に配設され、前記センサから出力されたデータを受け取って外部に送信する送信部と、前記冷却塔から離れた所定箇所に位置して、冷却塔の前記送信部から送信されたデータを受け取り、受け取ったデータを直接又は所定の処理を施した上で記録し、当該記録をデータの受け取りごとに繰り返して、センサ出力に基づく時系列データを取得するデータ処理部とを備え、前記センサによる検出が、前記冷却塔の運転状態における少なくとも冷却塔の送風機が定格運転された所定タイミングに実行され、前記データ処理部が、取得した前記センサ出力に基づく時系列データを解析して、冷却塔における監視対象箇所に対応する所定部品の性能劣化度合いを判定し、当該判定した劣化度合いに基づいて、前記部品についてメンテナンスを行うべき時期を予測するものである。
【0010】
このように本発明によれば、冷却塔における監視対象箇所の部品に対応するセンサから出力されたデータを、冷却塔から離れたデータ処理部に伝え、データをデータ処理部で記録して、センサ出力に基づく時系列データを取得し、これをデータ処理部で解析して監視対象箇所の部品の劣化度合いを判定し、この劣化度合いに基づいて部品のメンテナンス時期を事前に予測することにより、予測された時期に基づいて部品に対し計画的に洗浄や交換等のメンテナンスを実行できると共に、メンテナンスが不可欠な部品に対し、メンテナンスが必要な状態に達した部品のみを選んで、適切なタイミングでメンテナンスを行え、メンテナンスが直ちに必要ではない部品について、メンテナンス無しで使用する期間を最大限確保して、メンテナンス頻度を減らせるなど、メンテナンスに係る負担を確実に軽減できる。
【0011】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記センサが、前記冷却塔における監視対象箇所としての送風機の一又は複数の軸受部に配設され、前記物理情報として軸受部の振動の加速度を検出する加速度センサを少なくとも含むものである。
【0012】
このように本発明によれば、監視対象箇所としての送風機軸受部に取り付けた加速度センサを用いて、軸受部の劣化に伴ってより大きくなる軸受部の振動の加速度を検出することにより、加速度センサで軸受部の振動を適切に検出して、振動の大きさとしてあらわれる軸受の劣化の進行を確実に把握でき、軸受の交換時期を正確に予測可能とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記冷却塔が、送風機における電動機のインバータ制御を行うインバータ制御部を有し、冷却塔運転状態における所定タイミングでインバータ制御部により実行される、送風機の定格運転の際に、あらかじめ設定された定格運転のタイミングに係る情報、又は、所定の検出部を用いて前記インバータ制御部から検出した定格運転状態を示す情報、に基づいて、前記センサによる検出を同期して実行させるものである。
【0014】
このように本発明によれば、インバータ制御部による制御で実行される定格運転のタイミングに合わせて、センサから出力されたデータを送信し、データ処理部で定格運転時のデータを取り扱い可能とすることにより、センサの検出対象の物理情報について、確実に定格運転時の物理情報に基づいたデータを分析でき、特に加速度センサによる検出で定格運転時に顕著となる軸受の振動の特徴を適切に取得して、軸受の劣化を正確に判断できる。
【0015】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記冷却塔が、送風機における電動機のインバータ制御を行うインバータ制御部を有し、前記センサによる検出が、前記送風機の定格運転時以外の運転状態における所定タイミングにも実行され、センサによる定格運転時以外の検出のタイミングにおいては、センサから出力されたデータに対し、データ処理部で軸受の劣化に係る振動成分がより明確化される所定のデータ処理を施した上での記録を繰り返して、前記センサ出力に基づく時系列データを取得するものである。
【0016】
このように本発明によれば、送風機の定格運転時以外の運転状態においても、センサから出力されたデータを送信して、データ処理部で受け取ったデータからセンサ出力に基づく時系列データを取得し、これを解析して劣化度合いを判断する場合に、データ処理部がデータに対し所定の処理を施し、振動の特徴がより現れるようにすることにより、振動の形であらわれる軸受の劣化度合いをより適切に判断可能となることとなり、メンテナンス時期を正確に予測でき、メンテナンスを適切なタイミングで行える。
【0017】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記データ処理部が、前記加速度センサから出力されたデータに対し、所定のデータ処理を施して、軸受部以外の冷却塔所定箇所の不具合に起因する振動加速度成分を明確化した第二のデータを新たに取得して記録し、当該第二のデータの記録を繰り返して得られる前記センサ出力に基づく時系列データを解析して、前記冷却塔所定箇所の劣化度合いを判定するものである。
【0018】
このように本発明によれば、加速度センサから出力されたデータを送信部から送信して、データ処理部で受け取ったデータの時間的な変化を取得するにあたって、データ処理部がデータに対し軸受部以外の振動の特徴がより現れるようにする所定の処理を施して、軸受部以外の冷却塔所定箇所の不具合に起因する振動成分を明確化した第二のデータを新たに生成し、この第二のデータを繰り返し記録してセンサ出力に基づく時系列データを取得し、これについても解析して、軸受部以外の所定箇所の劣化度合いを判定可能とすることにより、冷却塔における軸受部以外の箇所についても、劣化状態が振動の形であらわれたものを捉え、その時間的な変化を解析することでその正確な劣化度合いを判定でき、軸受以外に対してもそのメンテナンス時期の予測が可能となり、計画的にメンテナンスを実行できると共に、メンテナンスが必要となったタイミングで適切にメンテナンスを行え、メンテナンス頻度を減らしてメンテナンスに係る負担の軽減が図れる。
【0019】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記センサが、前記冷却塔における複数の監視対象箇所に対応させて複数配設され、センサから出力されるデータを受ける入力部をセンサごとに対応させて複数チャンネル有すると共に、データを前記送信部に出力可能な出力部を1チャンネル分のみ有し、各入力部と出力部との接続を所定周期ごとに所定の順序で切替えて、各入力部に入力されたデータを1チャンネルの情報に変換して順次送信部へ出力可能とするデータ変換部を備え、前記データ処理部が、前記データ変換部から出力されたデータを送信部及び受信部を通じて受け取り、当該データに所定時間周期で含まれる各センサごとのデータから前記センサ出力に基づく時系列データをそれぞれ取得し、解析するものである。
【0020】
このように本発明によれば、冷却塔における複数の監視対象箇所に対応させて配設された各センサからそれぞれ出力されるデータを、データ変換部の各入力部に入力し、データ変換部が各入力部に入力されたデータを所定周期ごとに切替えて1チャンネルのデータに変換した上で、唯一の出力部から送信部に出力し、このデータ変換部から出力されたデータを受け取ったデータ処理部が、データに所定の時間間隔で含まれる各センサごとのデータから、センサ出力に基づく時系列データをそれぞれ取得して解析し、各センサに対応する部品の劣化度合いを把握可能とすることにより、各部品についてメンテナンス時期の予測を的確に行える状態を確保しつつ、データ処理部で各センサから出力されたままの複数チャンネルのデータを受け取る必要がなく、データ送信のコストやデータロガーとしてのデータ処理部のコストを抑えられる。
【0021】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記センサによる検出が、運転状態にある前記冷却塔に対し所定時間間隔で実行され、前記送信部によるデータの送信が、センサによる検出と同期して、又はデータを一旦メモリに一時的に保持した上で検出から所定時間の後に、少なくともセンサから出力されたデータを含む必要最小限のデータのみ送信するようにされるものである。
【0022】
このように本発明によれば、所定頻度でなされるセンサからのデータ出力と同期して、送信部によるデータ送信を、直接、又は、情報を一時的にメモリ等に保持した上で検出から所定時間の後に、センサから出力されたデータを含む必要最小限のデータのみで行うことにより、通信に伴い送受されるデータ量を必要最小限にとどめられ、通信コストと電力消費を抑えることができる。
【0023】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記データ処理部が、少なくとも冷却塔における所定部品について予測したメンテナンス時期の情報を、所定の配信用装置に送信し、当該配信用装置が、少なくとも前記メンテナンス時期の情報を、前記冷却塔に対応させてあらかじめ登録された一又は複数の端末装置に送信するものである。
【0024】
このように本発明によれば、冷却塔に対応する端末装置でその冷却塔に係るメンテナンス時期の情報を受け取って確認できることにより、冷却塔の管理者が自らの管理対象の冷却塔について、予測されたメンテナンス時期を端末装置から確実に認識して、予測された時期に基づいてメンテナンスを実行でき、冷却塔におけるメンテナンスが必要な部品に対し適切な頻度でメンテナンスを行え、冷却塔における重大なトラブルの発生を防止できると共に、冷却塔のメンテナンスに係るコストを抑制できる。
【0025】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記データ処理部が、冷却塔における前記所定部品について判定した劣化度合いに係る情報を、前記配信用装置を通じて前記冷却塔に対応する端末装置に送信し、前記端末装置が、冷却塔における前記所定部品の劣化度合いに係る情報を、端末装置の表示手段に他の情報と合わせて表示するものである。
【0026】
このように本発明によれば、センサ出力に基づく時系列データをデータ処理部で解析して得られる、監視対象箇所に対応する所定部品の性能劣化度合いに係る情報について、所定の表示手段等に表示すると共に、他の情報も合わせて表示可能とすることにより、冷却塔各部の劣化度合い、例えば、充填材やストレーナの詰まり具合を示すと共に、劣化が進んだ状態と劣化の無い正常状態の各場合における冷却塔の効率の差から、損失となるコストを算出し、これを他の情報として劣化度合いと合わせて表示するようにすれば、部品の劣化度合いとそれによる影響を問題点として認識しやすく、表示された情報を確認した冷却塔の管理者にメンテナンスの必要性を強く印象付けられ、メンテナンスの実行を促せることとなる。
【0027】
また、本発明に係る冷却塔監視システムは必要に応じて、前記センサが、前記冷却塔における複数の監視対象箇所に対応させて複数配設され、前記データ処理部が、各監視対象箇所に関わるセンサごとに、前記センサ出力に基づく時系列データを解析して、センサに対応する所定部品の性能劣化度合いを判定し、当該判定した劣化度合いに基づいて、前記部品についてメンテナンス時期をいったん予測し、複数の部品について、予測されたメンテナンス時期が互いに近く、所定の期間内に含まれる場合には、前記データ処理部が、各部品の劣化度合いが部品の使用継続できない状態に達しない範囲内で各メンテナンス時期を調整して、それぞれのメンテナンス時期が重複するよう再設定し、当該再設定した時期の情報を示すものである。
【0028】
このように本発明によれば、冷却塔における複数の監視対象箇所に対応する各センサから出力されたデータに基づいて、データ処理部で各監視対象箇所に対応する部品の劣化度合いをそれぞれ判定し、部品ごとに劣化度合いに応じたメンテナンス時期を予測した上で、複数の部品における各メンテナンス時期が所定の期間内に含まれる程度に近い時期として予測されると、各部品のメンテナンス時期を、各部品の劣化度合いが部品を継続使用できない劣化状態には達しない範囲内で、時期が重複するようデータ処理部で調整し、各部品同士で重複するメンテナンス時期が再設定されることにより、データ処理部から複数の部品同士で重複するメンテナンス時期を示して、一つのメンテナンス機会にメンテナンス担当者が複数の部品のメンテナンスをまとめて行うようにすることができ、部品ごとのメンテナンス時期に冷却塔まで出向いてメンテナンスを実行する手間を削減可能となり、メンテナンス担当人員の派遣コストを抑えて、冷却塔のメンテナンスに係るコスト削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冷却塔監視システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る冷却塔監視システムを適用する冷却塔の一部切欠正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る冷却塔監視システムを適用する冷却塔の平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る冷却塔監視システムにおける加速度センサの配設状態説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る冷却塔監視システムの冷却塔部分のブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る冷却塔監視システムによるメンテナンス時期予測状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る冷却塔監視システムを前記
図1ないし
図6に基づいて説明する。本実施形態においては、直交流形(クロスフロータイプ)として誘引通風用の送風機のある中央部を挟んで二つの熱交換部を対向配置される冷却塔に適用した例について説明する。
【0031】
前記各図に示すように、本実施形態に係る冷却塔監視システム1は、外部から取り入れた空気と冷却対象の熱媒体とを熱交換させる冷却塔10における、複数の監視対象箇所に取り付けられ、これら監視対象箇所で目的とする物理情報を検出する複数のセンサ11、12、13、14と、これらセンサから出力されたデータを処理して1チャンネル分のデータとするデータ変換部15と、このデータ変換部15から出力されたデータを受け取って外部に送信する送信部18と、冷却塔10から離れた場所で送信部18から送信されたデータを受け取り、この受け取ったデータを直接又は所定の処理を施した上で記録し、この記録をデータの受け取りごとに繰り返してセンサ出力に基づく時系列データを取得する、前記データ処理部としてのデータ処理装置20と、このデータ処理装置20から転送された冷却塔10の所定部品について予測したメンテナンス時期の情報を、冷却塔10に対応する端末装置80に送信する配信用装置25とを備える構成である。
【0032】
本実施形態に係る冷却塔監視システム1を適用する冷却塔10は、熱媒体である循環水と空気とを熱交換させる熱交換部30と、熱交換部30の上側に配設されて循環水を供給され、この循環水を熱交換部30各部へ分配滴下させる上部水槽40と、熱交換部30下側に配設されて熱交換部30を通過した循環水を回収する下部水槽50と、この下部水槽50から取出されて所定の循環管路95を経た循環水をあらためて前記上部水槽40に送込む配水管路60と、下部水槽50中央上方に配設されて熱交換部30の各充填材シート31間に誘引通風で外部の空気を通す送風機70とを備える構成である。
【0033】
前記熱交換部30は、多数の略板状の充填材シート31を積層状態で一体化して形成され、前記送風機70下方の空間を挟んで下部水槽50上側に一対配設され、充填材シート31間の隙間に循環水を滴下されると共に横方向へ外気を通過させて、充填材シート31表面近傍で循環水と空気との熱交換を行わせる公知の構成であり、詳細な説明を省略する。
【0034】
前記上部水槽40は、底部に多数の小孔を有する浅い箱状体で形成され、配水管路60に接続されて熱交換部30の上側に配設され、この熱交換部30の上側で、前記下部水槽50を出て冷凍機や空気調和機器等に通じる循環管路95を経由してきた循環水の供給を受け、この循環水を底部の多数の孔から熱交換部30各部へ向けて一様に所定の水量で分配滴下させる公知の構成である。
【0035】
前記下部水槽50は、固定設置される支持枠51上に配設され、流下した循環水を受けて一時貯溜しつつ回収するものであり、循環水減少時に補給される補給水の給水部(図示を省略)等をそれぞれ接続され、循環水を所定量貯溜可能とされる公知の構成である。
【0036】
この下部水槽50における循環管路95へ進む水の出口には、ストレーナ57が設けられ、水中に析出したスケール等の異物を分離して、循環水のみが循環管路95に流通するようにしている。
【0037】
前記配水管路60は、循環管路95を通じて冷却塔10に還流してきた循環水を上部水槽40へ供給する管路として冷却塔内に設けられるものである。
また、前記送風機70は、冷却塔10の中央上部に配設され、その下方で一対の熱交換部30に挟まれた中央の通風用空間を介して誘引通風で各熱交換部30に横方向から外部の空気を通し、熱交換部30を横に通過した空気を上方へ吹出して冷却塔外へ排出する公知のものである。
【0038】
この送風機70は、その側方に設けられた電動機75の駆動力をベルト伝動機構により羽根車71に伝えることで、羽根車71を回転させて誘引通風を実行できる仕組みである。ベルト伝動機構は、駆動側プーリ76と、従動側プーリ77と、ベルト78とで構成される。
【0039】
前記駆動側プーリ76は、電動機75の出力軸75aに固定配設され、この出力軸75aと一体に回転可能とされるものである。
前記従動側プーリ77は、送風機70における羽根車71の回転軸71aに固定配設され、羽根車71と一体に回転可能とされるものである。
【0040】
前記ベルト78は、無端ベルトとして形成され、駆動側プーリ76と従動側プーリ77との間に掛け渡されて、駆動側プーリ76の回転に伴って走行移動し、従動側プーリ77に回転を生じさせるものである。
【0041】
送風機70を駆動する電動機75はインバータ制御され、冷却塔10には電動機75用のインバータ制御部79が、冷却塔の制御盤に収められる形で設けられる。
このインバータ制御部79からは、これに取り付けられた所定の検出部を用いて、送風機70の定格運転の際に、この定格運転に係る制御状態を示す情報を検出することもできる。この場合、検出部で検出した情報に基づいて定格運転状態を判別でき、判別した定格運転時に前記センサによる検出を行うことで、送風機70の定格運転のタイミングと同期させてセンサでの検出を実行できる。
【0042】
この他、冷却塔稼働状態における所定タイミングで、インバータ制御部79による制御下で実行される、送風機の定格運転に対して、あらかじめ設定されたこの定格運転のタイミングに係る情報に基づいて、前記センサによる検出を定格運転のタイミングと同期させて実行するようにすることもできる。
【0043】
冷却塔10に設けられる複数のセンサは、送風機70の複数の軸受部における振動を加速度として検出する加速度センサ11、12と、熱交換部30の入口側と出口側との差圧を検出する差圧センサ13と、冷却塔10に接続される循環管路95の所定箇所で循環水の圧力を検出する圧力センサ14である。
【0044】
前記加速度センサ11、12は、物理情報としての加速度を検出するものであり、冷却塔10における送風機70の複数の軸受部に取り付けられ、各軸受部の振動を加速度の形で検出する。詳細には、一方の加速度センサ11は、送風機70における電動機75の出力軸75aを支持する軸受部に取り付けられ、他方の加速度センサ12は、羽根車71の回転軸71aを支持する軸受部に取り付けられる構成である。
これら加速度センサ11、12は、軸受部がその劣化の進行に伴い振動を増大させる性質から、振動を検出して劣化の度合いを把握するために用いられる。
【0045】
前記差圧センサ13は、物理情報として二つの測定点における圧力の差(差圧)を検出するものであり、冷却塔10における熱交換部30の近傍に、この熱交換部30の入口側と出口側の各空間に管等を介して連通可能として設けられ、熱交換部30の入口側と出口側との差圧を検出可能とされる。
【0046】
熱交換部30については、その長期にわたる使用でスケールや藻類等の微生物、土、ほこりなどが熱交換部30をなす充填材シート31に付着、蓄積して劣化すると、熱交換部30における空気や水の通過に係る圧力損失が増大して、冷却塔の熱交換性能低下につながる。
【0047】
差圧センサ13により、熱交換部30について差圧を検出し、その変化を監視することで、熱交換部30の劣化度合い、具体的には、熱交換部30への付着物の付着度合いを把握可能としている。
【0048】
前記圧力センサ14は、物理情報としての圧力を検出するものであり、冷却塔10に接続される循環管路95のうち、下部水槽50のストレーナ57より下流側所定箇所に設けられ、この循環管路95の所定箇所における循環水圧力を検出可能とされる。
【0049】
冷却塔10の長期にわたる使用に伴い、ストレーナ57にスケール等の異物が付着、蓄積して目詰まりを起こした劣化状態に陥ると、ストレーナ57における圧力損失が増大して循環水の流通が妨げられ、それが冷却塔の性能低下をもたらすこととなる。
【0050】
圧力センサ14により、循環管路95の圧力を検出し、その変化を監視することにより、ストレーナ57の劣化度合い、具体的には、ストレーナ57への異物の付着度合いを把握可能としている。
【0051】
前記データ変換部15は、センサから出力されるデータを受ける入力部15aを複数のセンサごとに対応させて複数チャンネル有すると共に、データを送信部18に出力可能な出力部15bを1チャンネル分のみ有し、マルチプレクサ15cで各入力部15aと出力部15bとの接続を所定周期ごとに所定の順序で切替えて、各入力部15aに入力されたデータを多重化した1チャンネルのデータで、且つネットワーク上でやり取り可能な形式のデータに変換して順次送信部18へ出力可能とするものである。
【0052】
前記送信部18は、冷却塔10の所定箇所、例えばインバータ制御部79のある制御盤に配設され、データ変換部15の出力部15bと接続され、データ変換部15から出力されるデータを、通信相手となる外部のデータ処理装置20に向けて送信するものである。
【0053】
この送信部18は、センサから出力された後、データ変換部15で1チャンネルに統合されて出力されるデータを取得可能とされてなり、必要に応じてネットワーク100に接続されて、データをデータ処理装置20に送信可能とされる。
【0054】
送信部18が、データをデータ処理装置20に送信するタイミングは、センサ11、12、13、14で物理情報の検出が実行されてデータが出力された際とする他、あらかじめ設定された所定の時間間隔とすることができる。この所定の時間間隔で送信を行う場合、送信部18の送信と同期して各センサで物理情報の検出を実行するようにすれば、電力消費を必要最小限に抑えられ、都合がよい。
【0055】
なお、送信部18が前記所定の時間間隔で送信を行う条件で、送信を行わない間にも各センサでの検出がより短い時間間隔で実行されて、データの出力がなされるようにしている場合には、データをその発生時刻を示す情報と共に、メモリ等の所定の情報記録手段に一時的に記録蓄積しておき、送信部18が送信を行う機会にそれらのデータを読み出してまとめて送信するようにしてもよく、通信の頻度を抑えつつ、データの欠落を防いで、データ処理装置20での時系列データの解析をより精度よく行える。
【0056】
送信部18は、より詳細には、LANやIP通信網等と無線で接続し、これらを通じてネットワーク100に接続され、データ処理装置20との間でデータを送受信する仕組みである。送信部18をネットワークに接続する場合、その通信は、携帯電話方式(LTE、3G等)による通信の他に、例えばIEEE 802.11シリーズやIEEE 802.15シリーズの規格方式等による無線通信や、いわゆるLPWANとされる各方式による省電力型の無線通信として行うことができる。送信部18が、例えばLPWAN(低消費電力広域無線通信)の技術を採用したものである場合、電力消費を抑えるために、ゲートウェイや基地局等を介してネットワーク100に接続して通信を行う頻度を、一又は数日に1回の割合とすることもできる。
【0057】
前記データ処理装置20は、冷却塔10から離れた場所にあって、所定のネットワーク100に接続され、このネットワーク100を介して複数の冷却塔10の送信部18から送信されるデータを受け取り、受け取ったデータを冷却塔10ごとに記録し解析等処理するサービスを実行可能なサーバとされる構成である。
【0058】
詳細には、データ処理装置20は、受け取った冷却塔10の送信部18からのデータを直接又は所定の処理を施した上で記録し、この記録をデータの受け取りごとに繰り返して、センサ出力に基づく時系列データを取得し、さらに、この取得した前記センサ出力に基づく時系列データを解析して、冷却塔における監視対象箇所に対応する所定部品の性能劣化度合いを判定し、この判定した劣化度合いに基づいて、前記部品についてメンテナンスを行うべき時期を予測し、この予測した時期の情報を配信用装置25に送信する構成である。
【0059】
データ処理装置20が送信部18から受け取るデータは、データ変換部15から出力された多重化されたデータであり、データ処理装置20は、このデータに所定時間周期で含まれる各センサごとのデータを抜き出し、前記センサ出力に基づく時系列データをそれぞれ取得して、各時系列データについてそれぞれ解析を行う仕組みである。
【0060】
前記配信用装置25は、データ処理装置20から送信された、冷却塔10における所定部品についてデータ処理装置20で予測されたメンテナンス時期の情報を、各冷却塔10に対応させてあらかじめ登録された一又は複数の端末装置80にネットワーク100を通じて送信するサービスを実行可能なサーバとされる構成である。
【0061】
なお、本実施形態をはじめとする本願で使用する「サーバ」の語は、必ずしも単独の実体のある装置を意味するものでなく、複数の装置がネットワーク接続されて協動して、要求される一又は複数のサービスを一体として提供する装置群である場合や、装置の一部機能に過ぎないものの、要求される一又は複数のサービスをあたかも一つの装置のように提供する機能を有して、サービスを提供される側からは一つの装置として取り扱える仮想装置である場合も包含する。
【0062】
この配信用装置25は、冷却塔10ごとにその所定部品について予測されたメンテナンス時期の情報を受け取り、このメンテナンス時期の情報を端末装置80に送信する場合に、冷却塔10に対応する端末装置、具体的にはその冷却塔10を管理する管理者が用いる端末装置、としてあらかじめ登録された端末装置80に対して、必要に応じ通信状態を確立した上で、ネットワーク100を介して部品ごとのメンテナンス時期や性能劣化度合いといった情報をメール送信やプッシュ通知等の手法でそれぞれ送信する機能を有している。
【0063】
この配信用装置25から情報を送信される端末装置80は、表示部81等を備え、有線又は無線でネットワーク100と接続して通信するための通信手段を有する、携帯電話やいわゆるスマートフォン、コンピュータなどの公知の装置である。
【0064】
次に、前記構成に基づく冷却塔監視システムを適用した冷却塔の作動状態について説明する。
冷却塔10を含む循環管路95を流通する熱媒体としての循環水は、公知の冷却塔同様に、通常の冷却塔運転状態では、循環管路95の経路中にある冷凍機や空気調和機器等を経て熱を受取り、温度を上げて冷却塔10に達する。冷却塔10に戻った循環水は、まず冷却塔10内の配水管路60に入り、管路を上部水槽40側へ向うこととなる。
【0065】
配水管路60を経て上部水槽40に導入された循環水は、所定時間で上部水槽40の底部の各孔を通過し、下側の熱交換部30各部へ分配滴下される。
この上部水槽40から滴下され、熱交換部30に達した循環水は、熱交換部30をなす充填材シート31間の各隙間に進み、充填材シート31に沿って流下しつつ、送風機70による誘引通風でこの熱交換部30に対して横方向に導入される外部の空気と接触する。循環水は、主に空気と循環水の温度差に伴う熱伝達(顕熱)による冷却作用、及び、循環水の蒸発熱(潜熱)による冷却作用により冷却される一方、熱交換により逆に空気温度を上昇させることとなる。
【0066】
こうして循環水は熱交換部30における空気との熱交換を経て冷却された後、下部水槽50に達して回収される。下部水槽50に溜った循環水は、下部水槽出口のストレーナ57を通過してから再び循環管路95に入り、熱媒体として新たに冷凍機や空気調和機器等で熱を受け取った後、冷却塔10に戻って前記過程が繰返される。
【0067】
一方、循環水と熱交換し温度を上昇させた空気は、送風機70の誘引により熱交換部30をなす各充填材シート31間の隙間を横向きに通過する。充填材シート31間を通って熱交換部30から出た空気は、送風機70により冷却塔外に排出され、排出空気は外部の空気中に拡散する。
【0068】
続いて、前記構成に基づく冷却塔監視システムの使用状態について説明する。
冷却塔10の運転状態では、負荷の状況(循環水温、循環水量他)に応じたON・OFF等、所定の制御下で電動機75が作動し、電動機75の出力軸75a及びこれと一体の駆動側プーリ76があらかじめ設定された回転方向に回転する。この駆動側プーリ76が回転するのに伴い、駆動側プーリ76に巻掛けられているベルト78が走行移動し、駆動力を伝達して従動側プーリ77を駆動側プーリ76と同じ回転方向に回転させる。
【0069】
こうして走行状態を継続するベルト78により駆動力を得て回転する従動側プーリ77は、一体の羽根車71を同様に回転させる。従動側プーリ77及びこれと一体の羽根車71が回転することで、送風が実行され、この送風に基づいて冷却塔への誘引通風がなされることとなる。
送風機70による送風実行に伴い、電動機75の出力軸や羽根車71の回転軸がこれらを支える軸受部に対し動くことで、軸受部の摩耗等の劣化が進行する。
【0070】
また、冷却塔への誘引通風と共に、上部水槽40から熱交換部30への循環水の散水が行われるのに伴って、散水と誘引通風によって熱交換部30に付着物が付着するなどの劣化も少しずつ進行する。
さらに、冷却塔に循環水が流通することにより、下部水槽50にある異物が循環水の通るストレーナ57に集まり、ストレーナ57の目詰まりによる劣化も進行する。
【0071】
なお、冷却塔10では、負荷や周囲環境の状況に応じて、一時的に送風機70による送風を停止させる、すなわち、電動機75を停止させて送風機70を作動させないようにする制御が行われるが、こうして電動機75を停止させている際は、電動機75の出力軸や羽根車71の回転軸は回転せず、軸受部の振動に係る加速度はセンサ11、12で検出されないが、回転停止に伴い軸受部の劣化も進まず、その劣化度合いは変化しない。また、冷却塔10の熱交換部30への誘引通風や散水も停止するので、熱交換部30への付着物の付着が進行せず、熱交換部30の劣化度合いは維持され、且つ、循環水の流通も止まることで、ストレーナ57の目詰まりは進行せず、ストレーナ57における劣化度合いの変化もない。
【0072】
こうした冷却塔10において、その運転状態における、冷却塔が定格運転される所定タイミングに各センサによる検出を実行する。例えば、冷却塔10の送風機70がインバータ制御とされる場合、制御の関係で、冷却塔運転状態における所定タイミングで送風機70の定格運転が実行される。
【0073】
よって、冷却塔運転状態において、前記検出部で検出した情報に基づいて判別された定格運転のタイミング、又は、既知の定格運転のタイミングに係る情報に基づいた定格運転のタイミングに同期させて、各センサによる検出を実行させる。
【0074】
具体的には、加速度センサ11、12が、これを取り付けた送風機70の複数の軸受部の振動加速度を検出し、差圧センサ13が、熱交換部30の入口側と出口側との差圧を検出し、圧力センサ14が、循環管路95におけるストレーナ57より下流側所定箇所における循環水圧力を検出することとなる。
この他、冷却塔の運転状態で、所定時間間隔、例えば、1時間ごとに、前記各センサによる検出を実行するようにしてもよい。
【0075】
冷却塔10の複数のセンサ(加速度センサ11、12、差圧センサ13、圧力センサ14)による検出で得られた複数チャンネルのデータは、データ変換部15で1チャンネル分のデータに変換された上で送信部18により送信される。送信されたデータは、ネットワーク100を通じてデータ処理装置20で受信され、そのままデータ処理装置20に記録される。
【0076】
送信部18によるデータ送信は、各センサによる検出実行と同期して、又はデータを一時的にメモリ等に保持した上で検出から所定時間の後に、センサから出力されたデータを含む必要最小限のデータのみで行い、通信コストと電力消費を抑えるようにするのが望ましい。
【0077】
送信部18では、あらかじめデータ変換部15で1チャンネル分のデータにまとめられたデータを送信し、この送信されたデータがそのままデータ処理装置20に記録されることにより、データ送信のコストやデータロガーとしてのデータ処理装置20のコストを抑えることができる。
【0078】
データ処理装置20は、センサから出力されたデータの記録を受信ごとに繰り返して、各センサ出力に基づく時系列データを取得する。その上で、データ処理装置20は、こうした時系列データを解析して、冷却塔10における送風機軸受部、熱交換部30、及びストレーナ57の性能劣化度合いを判定する。
【0079】
加速度センサ11、12の出力に基づく時系列データの解析は、例えば、その時点を含む所定時間長さのデータに対するFFT(高速フーリエ変換)により加速度スペクトルの周波数分布を求め、これにおける送風機の定格運転の回転数に対応する周波数のスペクトル強度を取得する処理を、時間の経過と共に繰り返して、時間経過に伴い増減変化する前記スペクトル強度を、軸受の劣化度合いとして取り扱う、といった手順でなされる。
【0080】
軸受の劣化に伴って軸受の振動は大きくなるが、こうした軸受の振動周波数は、送風機の定格運転の回転数に対応する周波数になると考えられることから、FFT後の加速度スペクトルにおける、送風機の定格運転の回転数に対応する周波数のスペクトル強度は、軸受の振動の大きさに応じて変動する値となり、これを軸受の劣化をあらわす指標値として利用できる仕組みである。
【0081】
なお、送風機70がインバータ制御の場合に、定格運転以外の状況で加速度センサによる検出を行う際は、センサから出力されたデータに対し、データ処理装置20で軸受の劣化に係る振動成分がより明確化される所定のデータ処理(例えば、FFTのような変換演算やフィルタリングなど)を施した上での記録を繰り返して、その処理後のデータの時間変化(時系列データ)を取得し、それに基づいて解析することで、送風機の回転数の情報が入手できない場合でも、軸受の劣化度合いをより適切に判定できるようにする。
【0082】
差圧センサ13の出力に基づく時系列データの解析は、例えば、差圧センサ13による検出で得られた所定時点の差圧のデータについて、熱交換部30がスケール他の付着等により劣化して熱交換部30の圧力損失が大きくなっている場合には、熱交換部入口と出口の差圧も大きくなる、という傾向を示すことから、前記所定時点のデータをそのままその時点における熱交換部30の劣化度合いと見なし、データの大きさから劣化度合いを判定するという手順でなされる。
【0083】
圧力センサ14の出力に基づく時系列データの解析は、例えば、圧力センサ14による検出で得られた所定時点の循環水圧力のデータについて、ストレーナ57がスケール他の異物付着等により劣化してストレーナ57の圧力損失が大きくなっている場合には、ストレーナ下流側のセンサ位置における圧力が低下する、という傾向を示すことから、前記所定時点のデータがその初期状態から変化している量を、その時点におけるストレーナ57の劣化度合いと見なし、データの変化量から劣化度合いを判定するという手順でなされる。
【0084】
センサ出力に基づく時系列データをデータ処理装置20により解析して得られる、監視対象箇所に対応する部品の劣化度合い、具体的には、部品の劣化を示すスペクトル強度や圧力値などの指標値には、実際に劣化した部品に対しセンサによる検出を行って得られたデータ等から、メンテナンスが推奨される部品劣化状態や、さらなる劣化進行に伴う部品の使用継続不可状態に相当する閾値をあらかじめ設定することができる。
【0085】
そして、部品の劣化度合いが、その変化傾向(時間経過に対する指標値変化の度合い)から、現時点からどのくらい後に、前記メンテナンスが推奨される部品劣化状態の閾値である警告レベルや、部品の使用継続不可状態の閾値である危険レベルに達するかは、例えば最小二乗法等の回帰分析の手法を用いるなどして、容易に予測できる。データ処理装置20は、こうした劣化度合いの変化傾向と、経過時間及び冷却塔の運転スケジュールとの関係性から、センサで検出を行った各監視対象箇所の部品(軸受、熱交換部、ストレーナ)について、部品の劣化度合いがメンテナンスを推奨される状態となった前記警告レベルに達する時期、すなわちメンテナンス時期を予測する。
【0086】
こうして予測された部品のメンテナンス時期の情報は、データ処理装置20からネットワーク100を通じて配信用装置25に送信される。そして、配信用装置25では、受け取った冷却塔10ごとの部品のメンテナンス時期の情報を、冷却塔ごとに対応する端末装置としてあらかじめ登録された各端末装置80に対して、ネットワーク100を介してそれぞれ送信する。この他、部品の劣化度合いが前記警告レベルに実際に達した時点に、その旨を示す情報を、前記メンテナンス時期の情報同様、データ処理装置20からネットワーク100を通じて配信用装置25に送信し、さらに配信用装置25から冷却塔ごとに対応する端末装置80に送信するようにしてもよい。
【0087】
端末装置80において、予測されたメンテナンス時期が具体的に表示等で示されることで、こうした時期におけるメンテナンス実行を冷却塔の管理者に提案可能としている。
これにより、冷却塔に対し計画的にメンテナンスを実行でき、冷却塔各部の劣化が運転不能をもたらす事態に至ることはなくなり、冷却塔の重大なトラブルを回避できると共に、メンテナンスに係る作業量や交換部品を必要最小限に抑えることができ、メンテナンスのコストを最小化できる。
【0088】
なお、データ処理装置20で冷却塔の部品のメンテナンス時期を予測し、この予測されたメンテナンス時期の情報を、配信用装置25を通じて冷却塔10に対応する端末装置80に送信し、端末装置80においてメンテナンス時期を表示等で示す以外に、部品の性能劣化度合いに係る情報を、端末装置80の表示部81に表示するようにしてもよい。そして、こうした情報と共に、他の情報として、部品の劣化が進んだ状態と劣化の無い正常状態との各場合における冷却塔の効率の差から算出される、損失コストに係る情報も合わせて表示可能とすることもできる。
【0089】
具体例として、部品の性能劣化度合いに係る情報として、熱交換部やストレーナの詰まり具合を数値化した情報を表示すると共に、前記他の情報としての、熱交換部やストレーナに詰まりがある場合と詰まりが無い正常状態の場合との冷却塔の効率の差から算出される、損失コストに係る情報を表示するようにすれば、これを見た冷却塔の管理者が、可視化された部品の劣化度合いとそれによる影響を問題点として認識しやすく、表示された情報を認識した管理者にメンテナンスの必要性を強く印象付けられ、メンテナンスの実行を促せることとなる。
【0090】
このように、本実施形態に係る冷却塔監視システムにおいては、冷却塔10における監視対象箇所の部品に対応するセンサ11、12、13、14から出力されたデータを、冷却塔10から離れたデータ処理装置20に伝え、データをデータ処理装置20で記録して、センサ出力に基づく時系列データを取得し、これをデータ処理装置20で解析して監視対象箇所の部品の劣化度合いを判定し、この劣化度合いに基づいて部品のメンテナンス時期を事前に予測し、この予測された時期を端末装置80の表示等で示すことから、予測された時期に基づいて部品に対し計画的に洗浄や交換等のメンテナンスを実行できると共に、メンテナンスが不可欠な部品に対し、メンテナンスが必要な状態に達した部品のみを選んで、適切なタイミングでメンテナンスを行え、メンテナンスが直ちに必要ではない部品について、メンテナンス無しで使用する期間を最大限確保して、メンテナンス頻度を減らせるなど、メンテナンスに係る負担を確実に軽減できる。
【0091】
なお、前記実施形態に係る冷却塔監視システムにおいて、冷却塔10は、直交流形とする構成としているが、これに限らず、送風機が冷却塔上部に配設されるものであれば、向流形など他の形式の冷却塔にも適用できる。
【0092】
また、前記実施形態に係る冷却塔監視システムを適用する冷却塔を、開放式冷却塔として、熱交換部30を充填材シート31で形成する構成としているが、これに限らず、循環水を流通させる金属製の管(コイル)と、管周囲に配置されて散布水を案内する充填材とを組み合わせて熱交換部とした、密閉式冷却塔に、上記システムを適用することもできる。同様に、こうした密閉式冷却塔に近い構造を有し、循環使用される熱媒体を熱交換部において外気と熱交換させ、熱媒体に外気から熱を吸収させて、熱媒体の温度を上げるようにする加熱塔(ヒーティングタワー)に、上記システムを適用することもできる。
【0093】
また、前記実施形態に係る冷却塔監視システムにおいては、冷却塔10に、加速度センサ11、12、差圧センサ13、及び圧力センサ14を設けて、これらのセンサから出力されたデータをデータ処理装置20で受け取り、センサ出力に基づく時系列データを取得し解析して、軸受、熱交換部、ストレーナといった部品の劣化度合いを判別可能とし、これら部品のメンテナンス時期を予測する構成としているが、これに限らず、他の物理情報、例えば、温度、騒音、電力、導電率、水位等の物理情報を検出するセンサを設け、センサから出力されるデータを用いて冷却塔の運転状態の監視を行ったり、センサに対応する監視対象箇所の部品についてメンテナンス時期を予測するようにすることもできる。
【0094】
また、前記実施形態に係る冷却塔監視システムにおいて、データ処理部は、ネットワーク100を介して送信部18からのデータを受け取り、この受け取ったデータを記録し解析等処理するサービスを実行するデータ処理装置20とされる構成としているが、これに限らず、データ処理部として端末装置80を用いる構成とすることもできる。
【0095】
この場合、端末装置80は、この端末装置に設けられる、ネットワーク100と接続して通信するための通信手段により、送信部18からデータを受け取ると、前記実施形態同様、受け取ったデータを直接又はFFT等の所定の処理を施した上で記録し、この記録をデータの受け取りごとに繰り返して、センサ出力に基づく時系列データを取得し、さらに、この取得したセンサ出力に基づく時系列データを解析して、冷却塔における監視対象箇所に対応する所定部品の性能劣化度合いを判定し、この判定した劣化度合いに基づいて、前記部品についてのメンテナンス時期を予測することとなる。予測されたメンテナンス時期の情報は、端末装置80の表示部等による表示でそのまま示される仕組みである。
【0096】
こうして端末装置80が、冷却塔における監視対象箇所の部品のメンテナンス時期を予測して示すことで、前記実施形態同様、予測されたメンテナンス時期に基づいて部品に対し計画的にメンテナンスを実行できると共に、メンテナンスが不可欠な部品に対し、適切なタイミングでメンテナンスを行え、過剰な頻度でメンテナンスを行わずに済み、メンテナンスに係る負担を確実に軽減できる。
【0097】
この他、こうしてデータ処理部として端末装置を用いる構成とする場合に、端末装置をデータ変換部15と有線接続又は送信部18を通じた無線接続とした上で、端末装置を冷却塔10の近傍や冷却塔の制御盤内に設け、冷却塔の使用者が端末装置にアクセスしてメンテナンス時期をはじめとする情報を入手可能とすることもできる。
【0098】
また、前記実施形態に係る冷却塔監視システムにおいては、加速度センサ11、12で定格運転時の送風機70の複数の軸受部の振動加速度を検出し、データ処理装置20で、加速度センサから出力されたデータを受け取ってセンサ出力に基づく時系列データを取得し、これを解析して、軸受の性能劣化度合いやその変化傾向を得て、軸受についてのメンテナンス時期を予測する構成としているが、この他、加速度センサから出力されたデータに対し、軸受部についての解析用とは別途に、データ処理部で軸受部以外の振動の特徴がより現れるようにする所定のデータ処理を施して、軸受部以外の冷却塔所定箇所の不具合に起因する振動成分を明確化した第二のデータを新たに生成し、この第二のデータを繰り返し記録してセンサ出力に基づく時系列データを取得し、これについても解析して、軸受部以外の所定箇所の劣化度合いを判定可能にする構成とすることもできる。
【0099】
この場合、冷却塔における軸受部以外の箇所についても、劣化状態が振動の形であらわれるもの、例えば、冷却塔塔体の不具合や送風機羽根の不具合等により生じる振動を捉え、その時間的な変化を解析することでその正確な劣化度合いを判定でき、軸受以外に対してもそのメンテナンス時期の予測が可能となり、計画的にメンテナンスを実行できると共に、メンテナンスが必要となったタイミングで適切にメンテナンスを行え、メンテナンス頻度を減らしてメンテナンスに係る負担の軽減が図れる。
【0100】
さらに、前記実施形態に係る冷却塔監視システムにおいては、冷却塔10に設けた加速度センサ11、12、差圧センサ13、及び圧力センサ14から出力されたデータをデータ処理装置20で受け取り、データ処理装置20で各センサ出力に基づく時系列データを取得し解析して、各部品ごとにその劣化度合いを判定し、部品ごとに独立したメンテナンス時期をそれぞれ予測する構成としているが、この他、データ処理装置20が、各センサから出力されたデータに基づいて、部品の劣化度合いをそれぞれ判定し、部品ごとに劣化度合いに応じたメンテナンス時期を予測する際に、軸受、熱交換部、及びストレーナのそれぞれのメンテナンス時期が近くなる場合は、各部品の劣化度合いが部品を継続使用できない状態には達しない範囲内でメンテナンス時期を調整して、一つに統合したメンテナンス時期を提案可能な構成とすることもできる。
【0101】
詳細には、データ処理装置20において、各センサ出力データの解析から、監視対象箇所の各部品のメンテナンス時期の予測、例えば、軸受のメンテナンス時期予測、熱交換部のメンテナンス時期予測、ストレーナのメンテナンス時期予測がそれぞれ実行されて、予測された各メンテナンス時期が出揃った段階で、データ処理装置20は、それぞれのメンテナンス時期が所定の期間内(例えば、一ヶ月以内)に含まれるか否かを判定する。
【0102】
各メンテナンス時期が前記期間内に含まれる場合、データ処理装置20は、いずれかのメンテナンス時期に一致するか、各時期のちょうど中間となる、新たなメンテナンス時期を仮設定する。そして、この場合に、メンテナンス時期がより後ろにずれる、部品のメンテナンスについて、さらなる解析で、その新たなメンテナンス時期より前に、劣化度合いが冷却塔の運転に支障を来す危険レベルに到達すると予測されるか否かを判定する。
【0103】
求められた対象箇所の劣化度合いが前記危険レベルに到達しないと見込める場合、データ処理装置20は、仮設定した新たなメンテナンス時期を正式な各部品のメンテナンス時期に認定して、この新たなメンテナンス時期の情報を配信用装置25を通じて端末装置80に送信し、これを端末装置80における表示部81での表示等により示すことで、この新たなメンテナンス時期を冷却塔の管理者に提案する。
【0104】
一方、メンテナンス時期がより後ろにずれる部品の劣化度合いが、前記危険レベルに到達すると予測される場合、この後にずれるメンテナンスについては、メンテナンス時期の統合を行わず、先に予測されたメンテナンス時期をそのまま設定する。
【0105】
このように、データ処理装置20で複数の部品同士で重複するメンテナンス時期を算出し、このメンテナンス時期を端末装置80から示して、一つのメンテナンス機会にメンテナンス担当者が複数の部品のメンテナンスをまとめて行うようにすることができ、部品ごとに異なるメンテナンス時期に冷却塔まで出向いてメンテナンスを実行する手間を削減可能となり、メンテナンス担当人員の派遣コストを抑えて、冷却塔のメンテナンスに係るコスト削減が図れる。
【符号の説明】
【0106】
1 冷却塔監視システム
10 冷却塔
11、12 加速度センサ
13 差圧センサ
14 圧力センサ
15 データ変換部
15a 入力部
15b 出力部
15c マルチプレクサ
18 送信部
20 データ処理装置
25 配信用装置
30 熱交換部
31 充填材シート
40 上部水槽
50 下部水槽
51 支持枠
57 ストレーナ
60 排水管路
70 送風機
71 羽根車
71a 回転軸
75 電動機
75a 出力軸
76 駆動側プーリ
77 従動側プーリ
78 ベルト
79 インバータ制御部
80 端末装置
81 表示部
95 循環管路