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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】振動溶着システム及び振動溶着方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20240906BHJP
   B23K 20/10 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B29C65/08
B23K20/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020217406
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102586
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】392035352
【氏名又は名称】株式会社豊電子工業
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大介
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181073(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3140503(JP,U)
【文献】国際公開第2018/043411(WO,A1)
【文献】特開2015-223604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの被接合物を溶着接合するための振動溶着システムであって、
前記2つの被接合物の溶着接合部を振動加熱するホーンユニットを備えるホーン側ロボットと、
前記溶着接合部を保持するアンビルを備えるアンビル側ロボットと、を備え、
前記ホーンユニットは、棒状のホーンを備え、
前記アンビルは、前記溶着接合部を保持する保持面を備え、
前記2つの被接合物を合わせた状態で、前記アンビル側ロボットが、前記溶着接合部を前記2つの被接合物の一方側から前記保持面で保持すると共に、前記ホーン側ロボットが、前記溶着接合部に前記2つの被接合物の他方側から前記ホーンを当接させて、前記ホーンユニットにより前記ホーンを振動させて前記溶着接合部を振動加熱する加熱処理を行い、
前記ホーン側ロボットと前記アンビル側ロボットとは、前記加熱処理時において、前記ホーン及び前記アンビルを前記2つの被接合物に対して進退可能な1軸スライダを備え、前記ホーンと前記アンビルとを、前記2つの被接合物上を移動させながら前記加熱処理を行うことを特徴とする振動溶着システム。
【請求項2】
2つの被接合物を溶着接合するための振動溶着システムであって、
前記2つの被接合物の溶着接合部を振動加熱するホーンユニットを備えるホーン側ロボットと、
前記溶着接合部を保持するアンビルを備えるアンビル側ロボットと、を備え、
前記ホーンユニットは、棒状のホーンを備え、
前記アンビルは、前記溶着接合部を保持する保持面を備え、さらに、前記保持面の形状を変更可能であり、
前記2つの被接合物を合わせた状態で、前記アンビル側ロボットが、前記溶着接合部を前記2つの被接合物の一方側から前記保持面で保持すると共に、前記ホーン側ロボットが、前記溶着接合部に前記2つの被接合物の他方側から前記ホーンを当接させて、前記ホーンユニットにより前記ホーンを振動させて前記溶着接合部を振動加熱する加熱処理を行い、
前記ホーン側ロボットと前記アンビル側ロボットとが、前記ホーンと前記アンビルとを、前記2つの被接合物上を移動させながら前記加熱処理を行うことを特徴とする振動溶着システム。
【請求項3】
前記ホーンは、先端が半球を含む球形状となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の振動溶着システム。
【請求項4】
前記ホーン側ロボット及び前記アンビル側ロボットは、前記ホーン及び前記アンビルの前記2つの被接合物への圧力を測定する力センサを備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の振動溶着システム。
【請求項5】
2つの被接合物の溶着接合部を振動加熱するホーンユニットを備えるホーン側ロボットと、前記溶着接合部を保持するアンビルを備えるアンビル側ロボットと、を備える振動溶着システムを用いて、前記2つの被接合物を溶着接合する振動溶着方法であって、
前記ホーンユニットは、棒状のホーンを備え、
前記アンビルは、前記溶着接合部を保持する保持面を備え、
前記2つの被接合物を合わせた状態で、前記アンビル側ロボットが、前記溶着接合部を前記2つの被接合物の一方側から前記保持面で保持すると共に、前記ホーン側ロボットが、前記溶着接合部に前記2つの被接合物の他方側から前記ホーンを当接させて、前記ホーンユニットにより振動加熱する加熱処理を行い、
前記ホーン側ロボットと前記アンビル側ロボットとが、前記ホーンと前記アンビルとを、前記2つの被接合物上を移動させながら前記加熱処理を行う振動溶着工程を実施し、
前記アンビル側ロボットは、前記ホーン側ロボットによる振動加熱に伴う前記2つの被接合物の溶着接合が完了するまでの間、前記2つの被接合物を一方側から保持し、前記2つの被接合物の溶着接合が完了してから前記アンビルを移動させることを特徴とする振動溶着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動溶着システム及び振動溶着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被接合物同士を接合させるための方法の1つとして、振動溶着が知られている。一般に、振動溶着を行う場合、振動加熱による結合形成時と冷却による接合部位の硬化・安定化の間、型(以下、アンビルという)を用いて被接合物同士を固定して行われる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6488584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているようなアンビル(特許文献1ではホルダー)は、被接合物の形状に合わせて、各被接合物専用のものを用意する必要があることから、多種多様の被接合物等に対応しようとすると、膨大な数のアンビルを用意する必要があり、製造コストの増大が課題となっていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、製造コストの削減ができ、様々な形状の被接合物を溶着接合可能な溶着接合システム及び溶着接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、2つの被接合物を溶着接合するための振動溶着システムであって、2つの被接合物の溶着接合部を振動加熱するホーンユニットを備えるホーン側ロボットと、溶着接合部を保持するアンビルを備えるアンビル側ロボットと、を備え、ホーンユニットは、棒状のホーンを備え、アンビルは、溶着接合部を保持する保持面を備え、2つの被接合物を合わせた状態で、アンビル側ロボットが、溶着接合部を2つの被接合物の一方側から保持面で保持すると共に、ホーン側ロボットが、溶着接合部に2つの被接合物の他方側からホーンを当接させて、ホーンユニットによりホーンを振動させて溶着接合部を振動加熱する加熱処理を行い、ホーン側ロボットとアンビル側ロボットとは、加熱処理時において、ホーン及びアンビルを2つの被接合物に対して進退可能な1軸スライダを備え、ホーンとアンビルとを、2つの被接合物上を移動させながら加熱処理を行うことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、2つの被接合物を溶着接合するための振動溶着システムであって、2つの被接合物の溶着接合部を振動加熱するホーンユニットを備えるホーン側ロボットと、溶着接合部を保持するアンビルを備えるアンビル側ロボットと、を備え、ホーンユニットは、棒状のホーンを備え、アンビルは、溶着接合部を保持する保持面を備え、さらに、保持面の形状を変更可能であり、2つの被接合物を合わせた状態で、アンビル側ロボットが、溶着接合部を2つの被接合物の一方側から保持面で保持すると共に、ホーン側ロボットが、溶着接合部に2つの被接合物の他方側からホーンを当接させて、ホーンユニットによりホーンを振動させて溶着接合部を振動加熱する加熱処理を行い、ホーン側ロボットとアンビル側ロボットとが、ホーンとアンビルとを、2つの被接合物上を移動させながら加熱処理を行うことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、ホーンは、先端部が半球を含む球形状となっていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、ホーン側ロボット及びアンビル側ロボットは、ホーン及びアンビルの2つの被接合物への圧力を測定する力センサを備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、2つの被接合物の溶着接合部を振動加熱するホーンユニットを備えるホーン側ロボットと、溶着接合部を保持するアンビルを備えるアンビル側ロボットと、を備える振動溶着システムを用いて、2つの被接合物を溶着接合する振動溶着方法であって、ホーンユニットは、棒状のホーンを備え、アンビルは、溶着接合部を保持する保持面を備え、2つの被接合物を合わせた状態で、アンビル側ロボットが、溶着接合部を2つの被接合物の一方側から保持面で保持すると共に、ホーン側ロボットが、溶着接合部に2つの被接合物の他方側からホーンを当接させて、ホーンユニットにより振動加熱する加熱処理を行い、ホーン側ロボットとアンビル側ロボットとが、ホーンとアンビルとを、2つの被接合物上を移動させながら加熱処理を行う振動溶着工程を実施し、アンビル側ロボットは、ホーン側ロボットによる振動加熱に伴う2つの被接合物の溶着接合が完了するまでの間、2つの被接合物を一方側から保持し、2つの被接合物の溶着接合が完了してからアンビルを移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ホーン側ロボット及びアンビル側ロボットの一対のロボットによってホーン及びアンビルを移動させながら連続的に振動溶着を実施することで、従来必要であったワーク毎に異なる専用のアンビルが不要となり、製造コストの削減が可能となる。
特に、請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加え、ホーンの先端部を被接合物の溶着接合面に対して斜め方向からも接触させることが可能となるため、2つの被接合物の溶着接合部が複雑な自由曲面である場合、狭小な場合等でも、効率的に溶着接合が可能となる。
特に、請求項4に記載の発明によれば、上記効果に加え、被接合物に対するホーン及びアンビルの圧が、所定の圧力を保持するように調整できる。また、ホーン側ロボット、アンビル側ロボット、ホーンユニット、ホーン及びアンビルに過剰な力が加わって破損することを防止できる。
特に、請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加え、加熱処理後の被接合物が硬化・安定化するために必要な時間によって保持面の面積を変化させることで、ホーン及びアンビルの移動速度、及び生産性に対し、柔軟な対応が可能となる。
特に、請求項5に記載の発明によれば、上記効果に加え、連続的に振動溶着を実施しても、確実に2つの被接合物を溶着接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の振動溶着システムを示す説明図である。
図2】ホーン側ロボットの先端部周辺を示す斜視図である。
図3】ホーンの形状を概説する説明図であって、(a)は従来のホーンを示す説明図、(b)は本発明のホーンを示す説明図である。
図4】本発明のアンビルを示す説明図であって、(a)は保持面を広げた状態を示す側面図、(b)は保持面を閉じた状態を示す側面図である。
図5】本発明の振動溶着システムの作業中の状態を示す説明図であって、(a)はアンビルの保持面を閉じた状態を示す説明図、(b)はアンビルの保持面を広げた状態を示す側面図である。
図6】変形例1のアンビルを示す説明図であって、(a)は保持面を広げた状態を示す側面図、(b)は保持面を閉じた状態を示す側面図である。
図7】変形例2のアンビルを示す説明図であって、(a)は保持面を広げた状態を示す側面図、(b)は保持面を閉じた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の振動溶着システムを示す説明図である。
振動溶着システム1は、図1に示すように、多関節型ロボットであるホーン側ロボット2と、アンビル側ロボット3とを備え、2つの被接合物W1及びW2をホーン側ロボット2とアンビル側ロボット3とで挟持して、所定の溶着接合部Wpの範囲内を移動しながら、2つの被接合物W1とW2とを溶着接合するために使用される。
【0010】
図2は、ホーン側ロボットの先端部周辺を示す斜視図である。図3は、ホーンの形状を概説する説明図であって、図3(a)は従来のホーンを示す説明図、図3(b)は本発明のホーンを示す説明図である。
ホーン側ロボット2は、図2に示すように、先端にホーンユニット40を備え、ホーンユニット40とアーム5との間に力センサ6を備える。
ホーンユニット40は、ホーンユニット40の先端に向けて突出するホーン41と、ホーン41に超音波振動運動を含む任意の振動運動を生じさせる振動溶着機42と、ホーン41及び振動溶着機42をホーン41の突出方向に移動可能とする1軸スライダ43とを備える。
従来、振動溶着に用いられるホーンは、図3(a)に示すように、先端が平坦に形成されたものが使用され、被接合物の溶着接合面に対し、鉛直方向からホーンを接触させる必要があった。一方、本発明のホーン41は、図3(b)に示すように、先端部41aが半球を含む球形状に形成される。これにより、ホーン41は、先端部41aを被接合物の溶着接合部Wpに対して斜め方向からも接触させることが可能となるため、2つの被接合物W1及びW2の溶着接合部Wpが複雑な自由曲面である場合、狭小な場合等でも、溶着接合が可能となる。
【0011】
図4は、本発明のアンビルを示す説明図であって、図4(a)は保持面を広げた状態を示す側面図、図4(b)は保持面を閉じた状態を示す側面図である。
アンビル側ロボット3は、図1に示すように、先端にアンビル7を備え、アンビル7の取付部にアンビル7の突出方向へ移動可能な1軸スライダ8と、力センサ9とを備える。
アンビル7は、図4(a)に示すように、保持面10として、中央保持面10aと、中央保持面10aの周囲に4つの扇形保持面10bとを備える。また、アンビル7は、軸11を備え、軸11には移動部12が軸11の軸方向に移動可能に設けられる。また、移動部12と各扇形保持面10bとは、アングル13により連結されており、図4(b)に示すように、扇形保持面10bは、アングル13を介して移動部12の移動と連動し、回動可能となっている。このような扇形保持面10bの回動により、アンビル7は、被接合物W1又はW2を保持するための保持面10の形状を変更することができる。
また、アンビル7は、軸11を介してアンビル側ロボット3に取り付けられるが、取り付けには、既存のATC(Automatic Tool Changer,自動工具交換)装置等の取付機構を利用可能であり、自動又は手動で、容易に交換が可能である。
【0012】
図5は本発明の振動溶着システムの作業中の状態を示す説明図であって、図5(a)はアンビルの保持面を閉じた状態を示す説明図、図5(b)はアンビルの保持面を広げた状態を示す側面図である。
続いて、本発明の振動溶着システム1を用いた被接合物W1及びW2の溶着接合について説明する。
まず、任意の固定手段によって、被接合物W1及びW2を、被接合物W1及びW2それぞれの所望の溶着接合部Wpを重ね合わせた状態で固定する。
【0013】
次に、アンビル側ロボット3が、図5(a)に示すように、被接合物W1の溶着接合部Wpに、被接合物W2と接していない側から閉じた状態のアンビル7の扇形保持面10bを接触させて被接合物W1及びW2を保持する。被接合物W1及びW2の保持には、溶着接合部Wpの形状、位置等によって中央保持面10aを用いても良い。このとき、被接合物W1へのアンビル7の接触圧は、アンビル側ロボット3に設けられた力センサ9によって計測され、1軸スライダ8及びアンビル側ロボット3の少なくとも何れかによってアンビル7を被接合物W1に対して進退させることで、所定の圧力を維持するように調整される。また、図5(b)に示すように、アンビル7の保持面10の形状を変化させることで、被接合物W1及びW2の形状、アンビル側ロボット3の姿勢等に合わせて、被接合物W1及びW2の保持を柔軟に行うことができる。
そして、被接合物W2の溶着接合部Wpであってアンビル7に保持された部位に、被接合物W2の被接合物W1と接していない側から、ホーン側ロボット2が、ホーン41の先端部41aを当接させる。このとき、被接合物W2へのホーン41の当接圧は、ホーン側ロボット2に設けられた力センサ6によって計測され、1軸スライダ43及びホーン側ロボット2の少なくとも何れかによってホーン41を被接合物W2に対して進退させることで、所定の圧力を維持するように調整される。
また、アンビル側ロボット3の力センサ9及びホーン側ロボット2の力センサ6によって、アンビル7の被接合物W1への接触圧及びホーン41の被接合物W2への当接圧を計測し、各1軸スライダ8,43によって各圧力を調整することで、アンビル側ロボット3、ホーン側ロボット2、振動溶着機42、ホーン41及びアンビル7に過剰な力が加わって破損することを防止できる。
そして、ホーン側ロボット2は、ホーンユニット40の振動溶着機42によりホーン41に超音波振動を生じさせ、これにより、溶着接合部Wp内の被接合物W1及びW2のホーン41が当接している部位近傍を振動加熱する加熱処理を行う。
【0014】
振動溶着システム1による被接合物W1及びW2の溶着接合は、溶着接合部Wpの範囲内をホーン41とアンビル7とを所定の軌道で移動させながら連続的に上記の加熱処理を行うことで実施される。
以下、加熱処理を、ホーン41とアンビル7とを図5(a)に矢印で示す方向へ移動させて行う場合について詳説する。
【0015】
ホーン側ロボット2は、被接合物W2にホーン41を一定圧力で当接させたまま、図5に矢印で示す方向へホーン41を移動させる。
一方、アンビル側ロボット3は、被接合物W1にアンビル7を一定圧力で接触させ、被接合物W1及びW2を保持したまま、図5に矢印で示す方向へアンビル7を移動させる。溶着接合は、振動加熱による被接合物同士の接触表面の軟化に伴って被接合物間での融合結合が生じ、一定の冷却期間を経て、融合結合した被接合物同士が硬化・安定化することで実現する。そのため、アンビル7は、被接合物W1及びW2への加熱処理が行われてホーン41が移動した後も、被接合物W1及びW2が硬化・安定化するまで、それらの保持を継続する必要がある。従って、アンビル7は、ホーン41の移動に追従すると共に、ホーン41による振動加熱に伴う被接合物W1及びW2の溶着接合が完了するまでの間、ホーン41の移動に合わせて揺動しながら被接合物W1及びW2の保持を継続し、被接合物W1及びW2の溶着接合が完了後、ホーン41に追従してアンビル7が移動する。この時、被接合物W1及びW2の材質、形状等によって、ホーン41及びアンビル7の移動速度の調整が必要となる。また、アンビル7は、図5(b)に示すように、保持面10の形状が可変であるため、ホーン41及びアンビル7の移動速度、及び生産性を鑑み、加熱処理後の被接合物W1及びW2が硬化・安定化するために必要な時間によって保持面10の形状を変化させることで、柔軟な対応が可能となる。
このように、被接合物W1及びW2の溶着接合部Wpの範囲内をホーン41とアンビル7とを所定の軌道で移動させながら連続的に加熱処理を行う振動溶着工程によって、振動溶着システム1による被接合物W1及びW2の溶着接合は実施される。
【0016】
上記形態の振動溶着システム1は、2つの被接合物W1及びW2を溶着接合するものであって、2つの被接合物W1及びW2の溶着接合部Wpを振動加熱するホーンユニット40を備えるホーン側ロボット2と、溶着接合部Wpを保持するアンビル7を備えるアンビル側ロボット3と、を備え、ホーンユニット40は、棒状のホーン41を備え、アンビル7は、溶着接合部Wpを保持する保持面10を備え、2つの被接合物W1及びW2を合わせた状態で、アンビル側ロボット3が、溶着接合部Wpを2つの被接合物W1及びW2の被接合物W1側から保持面10で保持すると共に、ホーン側ロボット2が、溶着接合部Wpに2つの被接合物W1及びW2の被接合物W2側からホーン41を当接させて、ホーンユニット40によりホーン41を振動させて溶着接合部Wpを振動加熱する加熱処理を行い、ホーン側ロボット2とアンビル側ロボット3とが、ホーン41とアンビル7とを、2つの被接合物W1及びW2上を移動させながら加熱処理を行う。
このようにして構成される振動溶着システム1によれば、ホーン側ロボット2及びアンビル側ロボット3の一対のロボットによってホーン41及びアンビル7を移動させながら連続的に振動溶着を実施することで、従来必要であったワーク毎に異なる専用のアンビルが不要となり、製造コストの削減が可能となる。
【0017】
また、ホーン41は、先端部41aが半球を含む球形状となっている。
よって、ホーン41の先端部41aを被接合物W2の溶着接合部Wpに対して斜め方向からも接触させることが可能となるため、2つの被接合物W1及びW2の溶着接合部Wpが複雑な自由曲面である場合、狭小な場合等でも、効率的に溶着接合が可能となる。
【0018】
また、ホーン側ロボット2及びアンビル側ロボット3は、加熱処理時において、ホーン41及びアンビル7を2つの被接合物W1及びW2に対して進退可能な1軸スライダ43及び8を備える。
よって、被接合物W1及びW2に対するホーン41及びアンビル7の当接圧及び接触圧が、所定の圧力を保持するように調整できる。また、ホーン側ロボット2、アンビル側ロボット3に過剰な力が加わって破損することを防止できる。
【0019】
また、ホーン側ロボット2及びアンビル側ロボット3は、ホーン41及びアンビル7の2つの被接合物W1及びW2への圧力を測定する力センサ6,9を備える。
よって、被接合物W1及びW2に対するホーン41及びアンビル7の当接圧及び接触圧が、所定の圧力を維持するように調整できる。また、アンビル側ロボット3、ホーン側ロボット2、振動溶着機42、ホーン41及びアンビル7に過剰な力が加わって破損することを防止できる。
【0020】
また、アンビル7は、溶着接合部Wpを保持可能な保持面10の形状を変更可能である。
よって、加熱処理後の被接合物W1及びW2が硬化・安定化するために必要な時間によって保持面10の形状を変更することで、ホーン41及びアンビル7の移動速度、及び生産性に対し、柔軟な対応が可能となる。
【0021】
また、アンビル側ロボット3は、ホーン側ロボット2による振動加熱に伴う2つの被接合物W1及びW2の溶着接合が完了するまでの間、2つの被接合物W1及びW2を被接合物W1側から保持し、2つの被接合物W1及びW2の溶着接合が完了してからアンビル7を移動させる。
よって、連続的に振動溶着を実施しても、確実に2つの被接合物W1及びW2を溶着接合させることができる。
【0022】
図6は、変形例1のアンビルを示す説明図であって、図6(a)は保持面を広げた状態を示す側面図、図6(b)は保持面を閉じた状態を示す側面図である。
変形例1のアンビル7aは、図6(a)に示すように、保持面10として、第1保持面10cと、第1保持面10cの周囲に4つの第2保持面10dと、4つの第3保持面10eとを備える。また、アンビル7aは、軸11を備え、軸11には移動部12が軸11の軸方向に移動可能に設けられる。また、移動部12と第3保持面10eとは、アングル13により連結されており、第3保持面10eは、アングル13を介して移動部12の移動と連動し、さらに第2保持面10dと第3保持面10eとが連動する。これにより、図6(b)に示すように、移動部12が移動することで、第2保持面10d及び第3保持面10eは、第1保持面10cの下方で出し入れ可能となっている。第2保持面10d及び第3保持面10eを出し入れすることで、アンビル7aは、被接合物W1又はW2を保持するための保持面10の形状を変更することができる。
【0023】
図7は、変形例2のアンビルを示す説明図であって、図7(a)は保持面を広げた状態を示す側面図、図7(b)は保持面を閉じた状態を示す側面図である。
変形例1のアンビル7bは、図7(a)に示すように、保持面10として、第1保持面10fと、第1保持面10fの下方に設けられる第2保持面10gと、第2保持面10gの下方に設けられる第3保持面10hとを備える。また、アンビル7bは、軸11aを備え、軸11aと、第1保持面10f、第2保持面10g及び第3保持面10hとは、アングル13aにより連結され、軸11aを中心に回転可能となっている。これにより、図7(b)に示すように、第2保持面10g及び第3保持面10hを回動することで、アンビル7bは、被接合物W1又はW2を保持するための保持面10の形状を変更することができる。
【0024】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。
例えば、ホーン側ロボット及びアンビル側ロボットは、被接合物の溶着接合が可能であれば、多関節ロボット以外にも、他の既存のロボットを利用可能である。
また、ホーンの形状は、先端部が半球を含む球形状となっていれば良く、剛性等を考慮してホーンの径を増大させる等、任意の形状に変更可能である。
また、振動溶着機がホーンに生じさせる振動は、任意の周波数の振動であって良い。
また、力センサは、1軸スライダに設けられても良い。この場合、ホーン側ロボット及びアンビル側ロボットが力センサを備えていなくても良い。
また、ホーン及びアンビルの移動速度は、任意に調整可能である。
また、アンビルの形状変化のための機構は、限定されない。なお、アンビルは、形状変化しないものであっても良い。
また、被接合物の素材は、限定されず、金属でも樹脂でも良いし、それらの組み合わせであっても良い。
【符号の説明】
【0025】
1・・振動溶着システム、2・・ホーン側ロボット、3・・アンビル側ロボット、40・・ホーンユニット、41・・ホーン、41a・・先端部、43・・1軸スライダ、6・・力センサ、7・・アンビル、8・・1軸スライダ、9・・力センサ、10・・保持面、W1,W2・・被接合物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7