(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】陰圧を維持したまま制動粒子を吸引するためのシステム
(51)【国際特許分類】
F16D 65/00 20060101AFI20240906BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F16D65/00 C
B60T17/00 C
(21)【出願番号】P 2021524441
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 FR2019052581
(87)【国際公開番号】W WO2020094950
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514287580
【氏名又は名称】タラノ・テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・アダムザック
(72)【発明者】
【氏名】ティボー・ル・ブレール
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・アスコエット
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-081931(JP,A)
【文献】特表2015-500448(JP,A)
【文献】特開2016-203781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0226442(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/00
F16D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦制動システムから出る制動粒子を吸引するためのシステムであって、前記吸引システムは
少なくとも1つの陰圧源(1)と、少なくとも1つの吸引口(83)と、前記吸引口と前記陰圧源とを接続する少なくとも1つの空気圧回路(3、3´、30)と、制御ユニット(6)と、を備え、
前記吸引システムは、前記空気圧回路上に配置構成されている密閉手段をさらに備え、前記密閉手段は、前記空気圧回路(3)の少なくとも第1の部分を分離することができ、前記制御ユニット(6)は、前記陰圧源の2回の実際の使用の間の所定の段階の期間に前記空気圧回路の前記第1の部分を分離するために、所定の論理に従って前記密閉手段を制御するように構成されており、
前記所定の論理は、少なくとも1つの前記陰圧源(1)が非稼働である間、
前記第1の部分の内部が陰圧に維持され
、
前記密閉手段(51、52)は、前記吸引口の付近に配置構成されている少なくとも第1の弁(51)と、前記陰圧源(1)の付近に配置構成されている少なくとも第2の弁(52)と、を備えることを特徴とする吸引システム。
【請求項2】
吸引された前記粒子を捕集するための少なくとも1つの濾過器(2)をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの濾過器に対して複数の吸引口が設けられ、前記システムは追加の弁(53~55)をさらに備え、各吸引口の付近に弁が設けられる、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の弁(51)および前記第2の弁(52)はソレノイド弁であり
、前記追加の弁は追加のソレノイド弁(53~55)である、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニット(6)は、前記第1および第2のソレノイド弁の各々を個別に制御し、かつ前記追加のソレノイド弁を制御するように構成される、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記陰圧源は、電気モーター(11)によって駆動されるタービン(10)によって形成される、請求項1から
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御ユニット(6)は、前記密閉手段の前記制御と協働する方式で、前記陰圧源を選択的に制御するようにさらに構成される、請求項1から
6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
車両の制動システムから出る摩擦制動粒子を吸引するためのシステムを制御するための方法であって、前記吸引システムは、
少なくとも1つの陰圧源と、少なくとも1つの吸引口(83)と、前記吸引口と前記陰圧源とを接続する少なくとも1つの空気圧回路(3、3´、30)と、前記吸引口の付近に配置構成されている第1の弁および少なくとも第2の弁により、前記空気圧回路(3)の少なくとも第1の部分を選択的に分離するために、前記空気圧回路上に配置構成されている密閉手段と、制御ユニット(6)と、を備え、前記制御ユニット(6)は、
a1-前記第1の弁(51)を閉じ、
a2-前記第2の弁(52)を閉じるステップであって、
前記陰圧源を次に実際に使用するまで、前記空気圧回路の前記第1の部分を分離するための、ステップと、
b-前記陰圧源(タービンまたは他のもの)の稼動を停止するステップと、
z-前記陰圧源を稼動することが必要になる新しい状況が発生するのを待つステップと、
c0-前記陰圧源(タービンまたは他のもの)を稼動するステップと、
c1-前記第1の弁(51)を開くステップと、
c2-前記第2の弁(52)を開くステップと、を実施するように構成されており、
前記ステップは、前記
第1の部分の内部において、前記陰圧源が稼働を停止している間も陰圧が維持される順序で実行される、方法。
【請求項9】
前記第1の弁を開く前記ステップは、前記第2の弁を開く前記ステップに先行しており、言い換えると、ステップc1-およびc2-は、前記陰圧源の稼動中に時間的順序に従って実行される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の弁(51)および前記第2の弁(52)はソレノイド弁であり、それらの開閉は前記制御ユニット(6)によって制御され、ステップc1-に時間的に続いてステップc2-が実行される、請求項
8または
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の弁を閉じる前記ステップは、前記第2の弁を閉じる前記ステップに先行しており、言い換えると、ステップa1-およびa2-は、前記陰圧源の停止前に時間的順序に従って実行される、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦制動システムにおいて制動粒子を吸引するためのシステムに関するものである。そのような摩擦制動システムは、道路車両または鉄道車両に取り付けられ得る。そのような摩擦制動システムは、風力タービンまたは産業用機械などの固定ローター機械にも取り付けられ得る。
【背景技術】
【0002】
そのようなシステムにおいて、たとえば特許文献1といった文書において説明されているように、吸引タービンおよび粒子捕集濾過器が設けられる。したがって、摩耗からの粒子は、捕集濾過器内に徐々に蓄積される。
【0003】
妥当な従来の解決策は、運転者によって、または車両のシステム、もしくはなおいっそう一般的には機械の制御システムによって、摩擦制動が実際にかけられたときのみ吸引タービンを稼動させることである。
【0004】
しかしながら、本発明者らは、導管および吸引口内に所望の陰圧を確立するのに要する時間は無視できず、その結果、制動段階のごく初期には、制動粒子を正しく捕捉するために、陰圧がまだ不十分である可能性があることに気付いた。
【0005】
言い換えると、摩擦制動が始まる瞬間に陰圧源(タービンまたは他の同等の手段)が稼動された場合、陰圧は、ときには確立するのに時間がかかりすぎることがあり、捕捉率が最適ではない。さらに、タービンモーターの消費電力およびタービンの動作によって発生する騒音を考えても、タービンを連続的に制御することは望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許第4240873号明細書
【文献】仏国特許第3057040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、摩擦制動段階のごく初期における捕捉性能に関係する改善された解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、摩擦制動システムから出る制動粒子を吸引するためのシステムが提案され、この吸引システムは
少なくとも1つの陰圧源と、空気圧回路によって陰圧源に接続されている少なくとも1つの吸引口と、制御ユニットと、を備え、
吸引システムは、空気圧回路上に配置構成されている密閉手段をさらに備え、密閉手段は、空気圧回路の少なくとも第1の部分を分離することができ、制御ユニットは、陰圧源の2回の実際の使用の間の所定の段階の期間に空気圧回路の第1の部分を分離するために、所定の論理に従って密閉手段を制御するように構成されることを特徴とする。
【0009】
「密閉手段」という用語は、注目する配置において回路内の空気の可能な進行を遮断するための任意の好適な手段、すなわち空気圧弁、機械弁、電磁弁、またはサーボ弁を意味すると理解されるべきである。
【0010】
「空気圧回路の少なくとも第1の部分を分離する」という言い回しは、空気圧回路のこの第1の部分を外部大気圧から、吸引口側と濾過器側(または陰圧源側)との両方で、分離することを意味すると理解されるべきである。
【0011】
「吸引口を陰圧源に接続する空気圧回路」という言い回しについては、これは、吸引口から直接的に、または濾過器を通して、のいずれかでタービンに至る流体導管を意味すると理解されるべきである。第1の導管は、粒子の経路内の吸引口の下流に配置され、これは吸引口から濾過器に至り、タービンは、濾過器の下流に配置構成され得るか、またはその逆もあり得る。タービンの下流にある部分が陽圧を受けていることを除外することなく、第1の導管は、全体としてまたは部分的に、陰圧がかかっている(タービンの下流にある濾過器)。
【0012】
上で述べた配置構成により、陰圧源の2回の実際の稼動の間の時間間隔において、空気圧回路の第1の部分内の陰圧を維持することが可能である。これは、有利には、新しい摩擦制動段階の一番最初の開始時に陰圧源を再稼動するのに要する時間の間、待たないようにできる。実際、陰圧源の完全な稼動を待つことなく、空気圧回路の第1部分内に行き渡っている陰圧が吸引口と連通している。
【0013】
システムに関係する本発明の様々な実施形態においてさらに、次の配置構成のうちの1つ以上を、個別にまたは組み合わせて使用することもあり得る。
【0014】
一オプションにより、システムは、吸引された粒子を捕集するための少なくとも1つの濾過器を備え得る。
【0015】
1つの好ましいオプションにより、密閉手段は、吸引口の付近に配置構成されている少なくとも第1の弁(51)と、陰圧源の付近に配置構成されている少なくとも第2の弁(52)と、を備える。この方式で、吸引口を濾過器に接続する空気圧回路の大部分が分離され、この部分は一定の長さを有することができ、タービンは陰圧源として起動および目標回転速度への到達の時間を要するのでその内部空間の陰圧の維持はよりいっそう有利である。
【0016】
1つのオプションにより、注目している空気圧回路(3、30)は、粒子捕集濾過器を含む。
【0017】
代替的オプションにより、選択的分離を受ける空気圧回路の第1の部分は、粒子捕集濾過器を含まない。
【0018】
1つのオプションにより、第2の弁は、(陰圧源の付近ではなく)濾過器の付近に配置構成されることもあり得る。
【0019】
1つのオプションにより、少なくとも1つの濾過器に対して複数の吸引口が設けられ、システムは追加の弁(53~55)をさらに備え、各吸引口の付近に弁が設けられる。この方式で、複数の吸引口に接続されている、集中化された濾過器およびタービンがある。この方式で、完全な解決策のコストが最適化される。それに加えて、特に集中型システム(centralized system)では、配管の長ささらには内部に閉じ込められた空気の量が大きくなり得るので、空気圧回路内の陰圧を維持する利点が高められる。
【0020】
1つのオプションにより、前記第1の弁(51)および前記第2の弁(52)はソレノイド弁であり、好ましくは、追加の弁は追加のソレノイド弁(53~55)である。したがって、密閉手段の開閉を電気的に制御することを可能にする非常に柔軟で迅速な解決策が得られる。
【0021】
1つのオプションにより、制御ユニット(6)は、第1および第2のソレノイド弁の各々を個別に制御し、適切な場合に、追加のソレノイド弁を個別に制御するように構成される。この方式で、以下に示されるように、第1のソレノイド弁を制御するタイミングと、第2のソレノイド弁を制御するタイミングと、を交互にすることが可能であり、またはより一般的には、ソレノイド弁の数および構成に応じて任意の時間での順番を有することが可能である。
【0022】
1つのオプションにより、陰圧源は、電気モーター(11)によって駆動されるタービン(10)によって形成される。これは、車両の他の空気圧システムから独立した解決策を形成し、それに加えて、この解決策には、自由度の高い制御が得られるという利点があるが、それは、特にタービンを、オン、オフで、または任意の回転速度で、制御することが可能であるからである。
【0023】
代替的オプションにより、陰圧源は、車両内に予め存在する陰圧源によって形成され、特に自動車部門の場合は、車両のエンジンの動作によって誘導される陰圧源、たとえば空気取り入れ口からのバイパス、またはさもなければ、たとえばガス、たとえば排気ガスの出て行く流れに対するベンチュリー効果の利用によって、形成される。鉄道部門の場合、陰圧源は、空気圧式制動システムまたは鉄道車両の他の何らかの補助システムに由来するものであってもよい。
【0024】
1つのオプションにより、制御ユニット(6)は、ソレノイド弁の制御と協働する方式で、陰圧源を選択的に制御するようにさらに構成される。したがって、陰圧源(たとえばタービン)の制御、および2つの制動シーケンスの間で陰圧を維持するために空気圧回路を閉じることを可能にするソレノイド弁の制御に関して正確で繰り返し可能なシーケンシングを有することが可能である。
【0025】
1つのオプションにより、吸引段階における所定の陰圧設定点は、周囲圧力より20から40ミリバール低い範囲内で選択される。有利には、これは、システムの要素に対する妥当な、費用のかからない、サイジングおよび適度の寸法を維持しながら制動粒子を効率的に捕捉するための最適な範囲である。
【0026】
有利には、ソレノイド弁の制御の賢明なシーケンシングによって、設定点に少なくとも等しい2つの実際の制動段階の間の陰圧レベル(DPR2)を維持することが可能である。
【0027】
本発明は、車両の制動システムから摩擦制動粒子を吸引するためのシステムを制御する方法にも関係し、吸引システムは、少なくとも1つの陰圧源(タービンまたは同様のもの)と、少なくとも1つの吸引口と、吸引口および陰圧源を接続する少なくとも1つの空気圧回路(3、30)と、吸引口の付近に配置構成されている第1の弁、および少なくとも第2の弁により空気圧回路の少なくとも第1の部分を選択的に分離するために空気圧回路上に配置構成されている密閉手段と、制御ユニットであって、
a1-第1の弁(51)を閉じ、
a2-第2の弁(52)を閉じるステップであって、
陰圧源を次に実際に使用するまでに空気圧回路の第1の部分を分離するための、ステップと、
b-陰圧源(タービンまたは他のもの)の稼動を停止するステップと、
z-陰圧源を稼動することが必要になる新しい状況が発生するのを待つステップと、
c0-陰圧源(タービンまたは他のもの)を稼動するステップと、
c1-第1の弁(51)を開くステップと、
c2-第2の弁(52)を開くステップと、を実装するように構成されている制御ユニットと、を備える。
【0028】
これらの配置構成により、陰圧源の2回の実際の稼動の間の時間間隔において空気圧回路の第1の部分内の陰圧を維持することが可能である。これは、有利には、新しい摩擦制動段階の一番最初の開始時に陰圧源を再稼動するのに要する時間の間、待たないようにできる。実際、陰圧源の完全な稼動を待つことなく、空気圧回路の第1部分内に行き渡っている陰圧が吸引口と連通している。
【0029】
この方法に関係する本発明の様々な実施形態において、さらに、次の配置構成のうちの1つ以上を、個別に、または組み合わせて、使用することもあり得る。
【0030】
1つのオプションにより、第1の弁を開くことは、第2の弁を開くことに先行しており、言い換えると、ステップc1-およびc2-は、陰圧源の稼動中に時間的順序に従って実行される。吸引口側に配置されている端部が最初に開かれる場合、第2のソレノイド弁およびタービンがまだ通電されていないとしても、その位置で空気圧回路内に存在する陰圧によって粒子が吸引される傾向がある。
【0031】
1つのオプションにより、前記第1の弁(51)および前記第2の弁(52)はソレノイド弁であり、それらの開閉は制御ユニット(6)によって、好ましくは上述の確立された時間的順序に従って交互するタイミングでステップc1-およびc2-を実行できる個別の制御により、制御される。したがって、プログラム可能な、または結果としてパラメータ較正から得られる、交互するタイミングを与えることが可能である。したがって、システムの微調整およびその適応機能が円滑にされる。
【0032】
1つのオプションにより、第1の弁を閉じることは、第2の弁を閉じることに先行しており、言い換えると、ステップa1-およびa2-は、陰圧源の停止前または停止中に時間的順序に従って実行される。この方式で、第2のソレノイド弁を閉じる直前に陰圧を増大させることが可能である。これは、次回第1のソレノイド弁が再び開かれるときに効率的な吸引を引き起こすために有益である。
【0033】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、非限定的な例として与えられている、本発明の一実施形態の次の説明を読むことで明らかになるであろう。本発明は、添付図面を参照することで、さらに、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】車輪または車軸に対する、制動粒子を吸引するための局所システム(localized system)の機能図である。
【
図3】いくつかの車輪または車軸上の、制動粒子を吸引するための集中型システムの機能図である。
【
図4】制動粒子を吸引するためのシステムの機能ブロック図である。
【
図5】システムの少なくとも1つの機能を例示するタイミング図である。
【
図6】制動粒子を吸引するためのシステムのコンポーネントを示す物理イラストである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
様々な図において、同じ参照記号は、同一の、または類似の要素を示す。表現をわかりやすくするために、いくつかの要素は、必ずしも縮尺通りに表されていない。
【0036】
図1は、摩擦制動部材の概略を表す。例示されている場合において、車輪(または全車両用の車軸)と一体となって回転するように作られることを意図されているブレーキディスク9が表されている。ディスク9は、軸Aを中心に回転する。従来技術により、ディスクを跨ぎ、キャリパーブラケットに装着されているキャリパー7がある。それに加えて、キャリパーは、摩擦パッドに作用しディスクを挟むように構成されているピストンを備える。摩擦パッド(図示略)は、バックプレートまたはソールプレート上に装着され、このすべてがそれ自体知られており、ここでは詳細に説明しない。
【0037】
ディスクブレーキの図が表されているが、本発明は、ドラムブレーキに、またはブレーキパッドがホイールリムに直接付けられるシステムにさえも適している。
【0038】
摩擦パッドの配置において、漏出する粒子を捕捉するためのデバイス8が設けられている。より具体的には、吸引口83が、摩擦パッドの各々に設けられ得る。一例は、たとえば本願出願人の特許文献2という文書に記載されており、そこでは、粒子が摩擦材料内に形成された溝に捕捉される。吸引口は、溝によって形成されるものとしてよく、溝は、次いで、摩擦ライニングのソールプレート内の貫通孔に接続され、下流の通路(濾過器に向かう)と連通する。
【0039】
吸引口83は、空気圧回路によって陰圧源に接続されている。空気圧回路は、第1の導管3と第2の導管30とを備え得る。
【0040】
一般に、吸引口は、粒子がパッドと回転部材(ディスク、ドラム、リムなど)との間の界面を出るときの粒子の経路内にあり得る。良好な捕捉に寄与するのは、この配置で生じる陰圧または流れである。
【0041】
他の構成では、カウリングが設けられてよく、この場合、吸引口は、前記カウリングで覆われた空間からの出口によって形成される。
【0042】
したがって、本発明は、吸引口83の構成に関係なく適用できることが理解されるべきである。
【0043】
典型的には、ディスクブレーキ構成について、
図1に示されているように、ディスクの各側に吸引口83がある。
【0044】
吸引口(または場合によっては複数の吸引口)は、
図2に例示されているように、空気圧回路3の導管によって濾過器2に接続される。空気圧回路3は、部品(たとえば、キャリパーの本体部)を通るトンネルの形態の通路を除外することなく、配管として形成され得る。空気圧回路は、長くても短くてもよく、この長さは、
図3に図示されているような集中型濾過構成において、数十センチメートル、たとえば50cmから数メートルの範囲内であってよい。
【0045】
これは、陰圧源に頼るために設けられている。
【0046】
一般に、吸引口と陰圧源との間の空気圧回路によって形成される流体接続(挟装される濾過器を有するか、または有しない)は、1つ以上の分岐、T字接続、Y字接続などを備え得る。
【0047】
吸引口と濾過器2との間の流体接続は、剛体部分と可撓性ホース部分とを備え得る。
【0048】
吸引口、濾過器、および陰圧源の間では、様々な構成を見ることができる。各吸引口に(最大限に分散された構成)、または吸引口の各対にさえ1つの濾過器があってよいが(
図2)、吸引口の複数の対に対して単一の濾過器(
図3)(いわゆる集中型構成)を有するか、または車両全体に対して単一の濾過器を有することすら可能である。この選択は、車両のタイプ、目詰まりを起こすまでに濾過器に要求される耐用年数、車両内の設置に関する様々な制約条件などによって決定され得る。
【0049】
有利には、本発明により、空気圧回路の少なくとも一部を選択的に分離することができる密閉手段が設けられる。
【0050】
ここで
図2に示されている例により、密閉手段は、第1の弁51と、空気圧回路上の第1の弁の下流に配置構成される第2の弁52とを備える。
【0051】
第1の弁51は、吸引口83の付近に配置構成される。一例において、第1の弁51は、2つの吸引口、たとえばディスクの各側に1つずつある吸引口に共通しており、2つの吸引口83を分離する。
【0052】
第2の弁52は、陰圧源1の付近に配置構成される。
【0053】
有利には、注目している弁は完全開/完全閉の弁であり、静止状態では開いているタイプ(ノーマルオープン)である。言い換えると、励起がない場合には、弁は空気回路内を空気が通るのを停止しない。
【0054】
典型的な例により、注目している弁はソレノイド弁であり、電気励起によって制御され得る。好ましくは、これらの弁は完全開/完全閉のソレノイド弁である。好ましくは、これらの弁はノーマルオープンのソレノイド弁である。したがって、電気回路または制御回路が故障した場合、ソレノイド弁は開いたままであり、吸引機能が温存される。
図9は、このようなノーマルオープンのソレノイド弁の概略を示している。制御コイル58は、後で説明される制御ユニット6によって制御される。
【0055】
サイズが小さいソレノイド弁、言い換えると、小型ソレノイド弁が好ましくは選ばれる。
【0056】
例示的な一実施形態により、第1のソレノイド弁51は、キャリパーおよび/またはキャリパーブラケットのアセンブリに組み込まれる。
【0057】
例示的な一実施形態により、第2のソレノイド弁52は、陰圧源に組み込まれ得る。ソレノイド弁の他の位置は除外されない。
【0058】
図2および
図6において、外部周囲圧力に関して陰圧になる濾過器を通して粒子を吸引する第1の導管3と陰圧源1との間に、濾過器が挟装されている陰圧構成が示されている。しかしながら、
図8に示されている構成では、陰圧源(ここではタービン1)は、第1の導管3と濾過器との間に挟装されるものとしてよく、この場合、タービンは粒子を吸引し、次いでタービンは3´で表される下流の導管を介して濾過器内に粒子を吹き込む。この場合、濾過器2は陰圧ではなく陽圧になる。
【0059】
典型的な実施形態において、濾過器2は、紙または他のタイプの濾過材を備えるものとしてよく、空気が通過し、吸引口から来る流れに含まれる小さな粒子を捕捉することを可能にする。
【0060】
「濾過器」という用語はここでは広い意味で理解されるべきであり、この用語は、遠心式濾過器解決手段(「サイクロン」タイプ)、電磁トラップ技術を用いた濾過器解決手段、静電トラップ技術を用いた濾過器解決手段を含む。「濾過器」という用語は、また、粒子が、客室の空気濾過器などの既存の濾過器、または触媒コンバータの濾過器に向けられる解決手段も含む。
【0061】
粒子濾過器2は、マイクロメートルまたはミリメートルの寸法の固体粒子を運ぶ吸引口から来る空気を濾過するように構成される、言い換えると、空気が濾過材を通過し、粒子は濾過材を通過せず、そこに捕捉される。
【0062】
図示されている例において、陰圧源1は、電気モーター11によって駆動される吸引タービン10によって形成される。
【0063】
図示されている例において、電気モーターを備えるタービンは、濾過器とは別の実体を形成する。これらの状況下では、第2の空気圧流体導管30が、タービンを濾過器に接続するために設けられる。
【0064】
タービンおよび濾過器を単一の実体とする構成も可能であることに留意されたい。
【0065】
図2に例示されている例により、選択的分離を受ける空気圧回路の部分は、第1の導管3、第2の導管30、および捕集濾過器2を含むことに留意されたい。
【0066】
したがって、濾過器の内部容積は、陰圧源の励起を伴う制動システムの2回の稼動の間に陰圧のままであるゾーンの一部を形成する。
【0067】
図3は、複数の吸引口が単一の濾過器およびタービン配置構成によって使用される集中型構成を例示している。これらの状況の下で、第1の配管31は、吸引口の近くの、すでに述べた第1のソレノイド弁を備える制動システムに使用され、第2の配管32は、55で表される補助ソレノイド弁を備える車輪制動システムに使用され、第3の配管33は、53で表される補助ソレノイド弁を備える車輪制動システムに使用され、第4の配管34は、54で表される補助ソレノイド弁を備える車輪制動システムに使用される。配管の長さが実質的な長さになり得ることに留意されたい。
【0068】
補助(追加)ソレノイド弁53~55は、典型的には、第1および第2のソレノイド弁と同じタイプのもの、すなわち「ノーマルオープン」タイプの完全開/完全閉のソレノイド弁である。
【0069】
図4を見るとわかるように、上で説明されているソレノイド弁の制御を任される制御ユニット6が設けられる。1つの可能性によれば、この制御ユニット6は、陰圧源がタービンで形成されているときにタービンを駆動する電気モーター11を制御することも任される。コマンドは、パワートランジスタによる典型的な方式で実装され得るが、ただし、リレー解決手段は除外されない。
【0070】
制御ユニット6は、車両上にオンボードで存在するセンサおよび/または他のユニットから情報を受信し、これにより、吸引シーケンスが稼動されなければならないことを決定し、稼動が開始しなければならない時間および稼動が停止しなければならない時間を決定する。
【0071】
システムは、車両の運転者によって作動されることを意図されたブレーキペダル41をさらに備える。いくつかの構成において、単純に、ブレーキペダル41と相互作用するバイナリオン/オフスイッチ48がある。このスイッチは、情報91を吸引システムの制御ユニット6に直接配信してもよい。別の実施形態では、スイッチ48は、制動機能のための制御ユニット61、たとえばABS機能を管理するユニットに接続され、これは、1つ以上の情報項目を(有線接続または多重化バスを介して)吸引制御ユニット6に伝送する。
【0072】
制御ユニット6は、圧力センサ22から発信される情報を、92で表されるリンクを介して受信することができる。この圧力センサは、第1の空気圧導管に行き渡っている圧力P3を知ることを可能にし、これは、第1および第2のソレノイド弁の適切な動作を診断することを可能にする。実際、ソレノイド弁のうちの1つが故障した場合、第1の導管内の結果として生じる圧力は、公称条件で予想される圧力とは異なる。
【0073】
他の構成では、制御ユニット6は、車両上にオンボードで存在する他の要素、特に上述の摩擦制動を制御する制動アクチュエータから発信される、情報を受信し得る。制動アクチュエータは、全車両または関係する車両のタイプ(自動車、鉄道など)に応じて、ペダルまたはマニピュレータであってもよい。
【0074】
制御ユニット6は、現在の車速情報VVも使用する。これは、特定のセンサによって配信され得るか、または1つ以上のオンボードコンピュータによって利用可能にされ得る。
【0075】
本発明は、風力タービンまたは産業用機械などの固定ローター機械における応用にも適している。この場合、摩擦制動の稼動に関するタイミング情報は、吸引システムの制御ユニット6によって受信される。
【0076】
図5は、タイミング図の助けを借りて、動作ロジックおよび関連する制御方法の一例を示している。
【0077】
時刻T0において、摩擦制動段階を稼動するための条件が満たされる(たとえば、運転者がブレーキペダルを踏むか、もしくはマニピュレータを引くか、または制御システム側で判断する)。次いで、制御ユニット6は、時刻T1でタービン11の制御を稼動し、時刻T1´で第1のソレノイド弁51を開く動作を誘発し(同時にまたは少し遅れて)(またはすでに開いていた場合には開いたままにし)、タービン11の制御を稼動する。
【0078】
同時に、またはその直後の時刻T2において、制御ユニット6は、次いで、第2のソレノイド弁52が開く動作を誘発する(またはすでに開いていた場合は開いたままにする)。
【0079】
この瞬間から、陰圧源、ここではタービン、が空気圧回路内に陰圧を発生させ、ライニングの摩耗から放出される粒子を吸引する能動的吸引段階に入る。この段階で、第1の導管3およびP3で表される吸引口に行き渡っている圧力が低下したことが観察される(陰圧DPR1、大気圧から下方に逸脱する曲線)。
【0080】
時刻T3において、摩擦制動段階を停止するための条件が満たされ、制御ユニット6は、第1のソレノイド弁51を閉じ、タービンの励起を、同時にまたはわずかに遅れて停止させる。タービンの速度がゼロにまで下がると、時間経過とともに変化する陰圧を示すP3で表される曲線を見るとわかるように、空気圧導管内の陰圧が上昇する傾向がある。T3から少し後の時刻T4において、制御ユニット6は、第2のソレノイド弁52を閉じる。
【0081】
次いで、第1の導管3内に行き渡っている圧力はさらに低下している(陰圧DPR2はDPR1よりも顕著であり、曲線は大気圧からさらに下方に離れてすらいる)。
【0082】
この瞬間から、また2つの制動シーケンスの間の時間間隔全体にわたって、第1のソレノイド弁と第2のソレノイド弁との間に挟装されている空気圧回路は分離されたままである。この分離があるため、これは、第2のソレノイド弁52が閉じられたときに行き渡っていた陰圧を保つ。
【0083】
したがって、第1のソレノイド弁と第2のソレノイド弁とを閉じることで、空気圧回路の少なくとも一部の分離が可能になる。
【0084】
時刻T5において、摩擦制動段階を稼動するための条件が再び満たされる。次いで、制御ユニット6は、第1のソレノイド弁51を開く動作を誘発し、タービン11の制御を稼動する。ここで、空気圧導管内に維持されていた陰圧は、タービンの速度が上がっているときに制動粒子を吸引するために利用される。
【0085】
T5から少し後の時刻T7において、制御ユニット6は、第2のソレノイド弁52を開く。この瞬間以降、すでに上で説明されているように、吸引段階の従来の空気圧回路を有している。
【0086】
時刻T6は、タービンに対する目標回転速度の確立に対応している。
【0087】
時刻T8は、タービンの制御の中断に対応している。
【0088】
P3で表されている曲線は、第1の導管3の内側に行き渡っている圧力(言い換えると、実質的に、第1のソレノイド弁51が開いているときに吸引口83に印加される吸引圧力)を表している。本発明により規定された配置構成がない場合の吸引口83に印加される圧力も、より小さい点線P30で表されている。
【0089】
1つの可能なオプションにより、タービンを停止し、ソレノイド弁を閉じるシーケンスが、摩擦制動の実際の中断(延長時間)に関して延期されるように規定され得る。
【0090】
ソレノイド弁の制御とタービンの制御との間のタイミングを交互にするために、次のオフセットを選択することができる。
T0-T1オフセット:0msから300msの間
T1-T1´オフセット:0msから300msの間
T1´-T2オフセット:10msから300msの間
T3-T4オフセット:10msから300msの間
【0091】
規模を示すために、タービン10およびその電気モーター11によって消費される電力は、約30ワットから数キロワットまでの範囲内とすることができ、実際には、この電力は、利用される吸引口の数に応じて、またわずかな圧力低下を引き起こす、配管の長さにも応じて、[30W~800W]の範囲内に収まり得る。
【0092】
一構成において、タービンの速度は、0から12,000rpmの範囲内とすることができる。
【0093】
一構成において、タービンの速度は、0から30,000rpmの範囲内とすることができる。
【0094】
ゼロから設定点の速度に達するまでのタービンの応答時間は、典型的には、100msから700msの間であり、自動車用途では400msから600msの間であることが最も多い。
【符号の説明】
【0095】
1 陰圧源
2 濾過器
3、3´、30 空気圧回路
6 制御ユニット
7 キャリパー
8 デバイス
9 ブレーキディスク
10 吸引タービン
11 電気モーター
22 圧力センサ
31 第1の配管
32 第2の配管
33 第3の配管
34 第4の配管
41 ブレーキペダル
48 バイナリオン/オフスイッチ
51 第1の弁
52 第2の弁
53~55 ソレノイド弁
58 制御コイル
61 制御ユニット
83 吸引口
91 情報
92 リンク