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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240906BHJP
   F16K 31/53 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F16K31/04 B
F16K31/53
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022065323
(22)【出願日】2022-04-11
(65)【公開番号】P2023155781
(43)【公開日】2023-10-23
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湊 祐介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 沙弥佳
(72)【発明者】
【氏名】新谷 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-205927(JP,A)
【文献】特開昭54-082722(JP,A)
【文献】特開平11-325663(JP,A)
【文献】特開2003-247655(JP,A)
【文献】特開2019-143704(JP,A)
【文献】米国特許第04815699(US,A)
【文献】中国特許出願公開第111810655(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
31/00-31/05
31/44-31/62
F25B 31/00-31/02
39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体と、
モータの駆動力により軸線方向に移動する弁体と、
弁座ユニットと、を有し、
前記弁座ユニットは、前記弁体が着座する弁座を備え、前記弁本体に対して少なくとも前記軸線方向に移動可能に保持された弁座部材、及び前記弁座部材と前記弁本体との間に配置された弾性変形可能な弾性体、を有し、
前記弾性体及び前記弁座部材は、前記弁本体の軸線方向に開口する環状凹部に収容され、前記弁座部材の外径より小さな内径を持つストッパリングが前記環状凹部の開口周縁に固定され、
閉弁動作時に、前記弁体が前記弁座に着座した後に、前記ストッパリングに当接する、
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁座部材は、前記弁本体に対して前記軸線方向に直交する方向に移動可能に保持されている、
ことを特徴とする請求項に記載の電動弁。
【請求項3】
前記モータの駆動力が、ギヤ式の減速機構を介して前記弁体に伝達される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動弁は、例えば流体の配管系統の途中に組み付けられて、流体の流路の開閉や流量制御を行うために使用されている(特許文献1参照)。このような電動弁においては、弁本体に装着されたステッピングモータにより弁体を開閉することで、精度良い流量制御と閉弁時の密封性を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-143704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍サイクルの経路内を流れる流体(冷媒)中には、比較的硬度の高い異物(金属粉、削りカス、研磨材、スラッジ等)が含まれている。その異物の多くは経路内に設けたストレーナ等により捕獲されるが、微小な異物の一部は、流体とともに電動弁内に進入し開弁時に弁体と弁座の間を通過することとなる。
【0005】
このような異物が弁体と弁座の間を通過する際に閉弁動作が行われると、異物が弁体と弁座との間に挟み込まれ(異物噛み込みという)て弁座や弁体が変形し、それにより弁体が完全に閉弁位置にあるときでも流体漏れが生じるおそれがある。
【0006】
特に、高い減速比を持つギヤ式の減速機構を備えた電動弁では、ステッピングモータの回転数を減速して弁体の軸線方向移動に変換しているため、閉弁時における弁体と弁座との面圧が過大となる。したがって、弁体と弁座との間に異物が噛み込まれると、弁体または弁座に強く押し付けられ、それにより弁座や弁体の当接面に傷、打痕等の凹部が生じるため、流体漏れがさらに生じやすくなるという傾向がある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、弁体と弁座との間で異物噛み込みが生じにくい電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動弁は、
弁本体と、
モータの駆動力により軸線方向に移動する弁体と、
弁座ユニットと、を有し、
前記弁座ユニットは、前記弁体が着座する弁座を備え、前記弁本体に対して少なくとも前記軸線方向に移動可能に保持された弁座部材、及び前記弁座部材と前記弁本体との間に配置された弾性変形可能な弾性体、を有し、
前記弾性体及び前記弁座部材は、前記弁本体の軸線方向に開口する環状凹部に収容され、前記弁座部材の外径より小さな内径を持つストッパリングが前記環状凹部の開口周縁に固定され、
閉弁動作時に、前記弁体が前記弁座に着座した後に、前記ストッパリングに当接する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弁体と弁座との間で異物噛み込みが生じにくい電動弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る電動弁の縦断面図である。
図2図2は、弁座ユニットの周辺を拡大して示す縦断面図である。
図3図3は、第2の実施形態にかかる弁座ユニットの周辺を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動弁の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書では、ロータ側を上方として説明し、弁体側を下方として説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電動弁1の縦断面図である。本実施形態の電動弁1は、例えば冷凍サイクルにおいて冷媒流量を調整するために用いられる。電動弁1の軸線をLとする。
【0013】
本実施形態の電動弁1は、弁室VCの内部に形成された弁本体10と、ベースプレート11を介して弁本体10に固着された有頂円筒形状のキャン3と、キャン3に外挿されるステータ55及びキャン3の内部に装備されるロータ57からなるステッピングモータ5と、ステータ55の周囲を覆うカバー9と、ロータ57の回転トルクを減速して伝達するギヤ式の減速機構6と、弁座部材31の弁座31aに接離して流体の通過量を制御する弁体4と、減速機構6の出力ギヤの回転移動をねじ送り機構27を介して直線移動に変換して弁体4を駆動するねじ駆動部材(出力軸)22と、から構成される。なお、キャンは電動弁の弁本体側に内部が密閉されるように取り付けられた筒状部を有する部材(キャン3は有底の筒状部を有する)をいうものとする。
【0014】
ステッピングモータ5は、ヨーク51、ボビン52、コイル53等からなるステータ55と、キャン3の内部にキャン3に対して回転自在に配置され、ロータ支持部材56がその上部内側に固着されたロータ57と、を有している。ステータ55は、キャン3の外側に嵌合固定され、樹脂製のカバー9により覆われている。
【0015】
有底筒状の弁本体10には、内部の弁室VCに連通する開口が下端に形成されるとともに、その開口側に第1配管T1がロウ付け等により接続され、また弁室VCの側面に形成された開口12に連通するように第2配管T2がロウ付け等により接続されている。第2配管T2の軸線をOとする。軸線Oは、軸線Lと直交する。ここでは、第2配管T2内の圧力は、第1配管T1内の圧力よりも高いものとする。
【0016】
また、弁本体10の弁室VCの上部には、中央下端側に雌ねじ部13aが形成されたねじ軸受部材13が嵌挿され、圧入等により弁本体10に固定されている。
【0017】
減速機構6は、ロータ57の内周側において、ロータ支持部材56に一体に形成された太陽歯車61と、弁本体10の上部に固着された薄肉筒状体66を介して固定された固定リング歯車62と、太陽歯車61と固定リング歯車62との間に配置されてそれぞれに歯合する遊星歯車63と、遊星歯車63を回転自在に支持するキャリア64と、遊星歯車63に歯合する歯を内周に備えた有底筒状の出力歯車部材65とを有し、これらにより不思議遊星歯車減速機構を構成する。固定リング歯車62の歯数は、出力歯車部材65の歯数とは異なるように設定されている。
【0018】
軸部材8は、ロータ支持部材56及び太陽歯車61を貫通して、これらを回転可能に保持しており、その軸部材8の上端は、キャン3の頂部内側に配置された支持部材81により支持されている。
【0019】
出力歯車部材65の底部中央には、ねじ駆動部材22の上部に形成された段付き円筒形状の出力軸部29の上部が圧入され、この出力軸部29の上部開口には、軸部材8の下端が圧入により嵌合している。
【0020】
ねじ軸受部材13の雌ねじ部13aには、ねじ駆動部材22の下部に形成された雄ねじ部22aが螺合されている。出力歯車部材65(すなわち、ロータ57)の回転移動は、雄ねじ部22aと雌ねじ部13aとからなるねじ送り機構(変換機構)27により、軸線Lに沿って直線移動に変換される。
【0021】
出力軸部29は、ねじ駆動部材22に一体回転可能に連結され、出力歯車部材65(ロータ57)が回転すれば、出力軸部29とねじ駆動部材22は一体となって回転するとともに、弁本体10に対して軸線Lに沿って相対的に直線移動する。
【0022】
ねじ駆動部材22の直線移動は、ボール23とボール受座24とからなるボール状継手25を介して中間軸7に伝達される。
【0023】
円筒状の中間軸7は、中間基部7aと、中間基部7aの上端に連設された中間鍔部7bとからなる。中間鍔部7bの中央に中間孔7cが形成され、また中間孔7cより大径の拡径開口7dが、中間孔7cにつながり中間基部7aの下端に開口するように形成されている。中間孔7cには、ボール受座24の下端が圧入により嵌合している。
【0024】
円筒状の弁体4は、中間基部7aと外径が略等しい弁体基部4aと、弁体基部4aの上端に連設された弁体小径部4bと、弁体基部4aの下端に連設された弁体大径部4cとからなる。弁体小径部4bは、拡径開口7dに圧入により嵌合している。弁体大径部4cの下部に、弁体円錐面4dが形成される。
【0025】
中間軸7及び弁体4の周囲に配置された筒状のばねケース19は、ケース拡径部19aと、ケース縮径部19bと、ケース拡径部19aの上端から径方向外側に延在する上端フランジ部19cとを連設してなる。上端フランジ部19cが弁本体10の内周段部に係合し、ねじ軸受部材13により固定保持されている。ケース縮径部19bは、弁体基部4aの外周を摺動可能に保持している。
【0026】
圧縮コイルばね26が、ケース拡径部19aとケース縮径部19bの間の段部に下端を当接させ、中間軸7の中間鍔部7bに上端を係合させて、圧縮した状態で配置されており、それにより弁体4を常時開弁方向に付勢している。
【0027】
図2は、弁座ユニット30の周辺を拡大して示す縦断面図である。弁本体10は、弁室VCの底面に、円形の第1開口10aと、第1開口10aより大径の第2開口10bと、第2開口10bより大径の第3開口10cを、この順序で軸線Lに同軸に形成している。第1開口10aの上端が、環状のストッパ部10dを構成する。また、第1開口10aと、第2開口10bと、第3開口10cとにより、弁本体10の軸線方向下方に開口する環状凹部を形成する。なお、環状凹部が貫通孔である場合、一方側の開口面積(ここでは第3開口10cの断面積)が他方側の開口面積(ここでは第1開口10aの断面積)よりも大きいときは、該貫通孔は一方側に向かって「開口している」とみなす。
【0028】
第3開口10cは、下方に突出するカシメ円筒部10e(点線で図示)の内周により形成される。カシメ円筒部10eの径方向外側に、第1配管T1を取り付ける取付開口10fが形成されている。
【0029】
第2開口10bには、リング状の弁座部材31と、樹脂またはゴム製のO-リング(弾性体)32が配置されている。弁座部材31の外径は、第2開口10bの内径よりも所定量小さくなっている。弁座部材31の内周上端が弁座31aを構成する。O-リング32は、例えば、NBR、H-NBR,EPDM,シリコンゴム,フッ素ゴム,ウレタンゴム等からなり、そのヤング率の範囲は0.1~10MPaであると好ましい。
【0030】
第3開口10cには、環状部材33が配置される。環状部材33の内周近傍の上面が突出して、環状凸部33aが形成されている。弁座部材31と、O-リング32と、環状部材33とにより、弁座ユニット30を構成する。
【0031】
弁座ユニット30の組付時には、弁本体10の下方側から、カシメ円筒部10eの内側に、弁座部材31と、O-リング32と、環状部材33を、この順序で挿入し、図2に示すようにカシメ円筒部10eの下端(環状凹部の開口周縁)を内側にカシメ(塑性変形させ)て、環状部材33の外径よりも縮径させる。これにより、環状部材33の上面が第1開口10aと第2開口10bとの段部に当接して、環状部材33は弁本体10に固定されて一体化し、また弁座部材31とO-リング32の抜け止めが行われる。固定された環状部材33によりO-リング32を介して、弁座部材31が上方に付勢され、第1開口10aと第2開口10bとの段部に当接して保持される。かかる状態で、弁座部材31とO-リング32とにより、O-リング32は軸線L方向に圧縮される。環状部材33の環状凸部33aは、O-リング32の内周側に当接して、O-リング32が脱落することを抑制する。弁座ユニット30の構成部品は、すべて弁本体10の下方側から組み付けることができる。
【0032】
(電動弁の動作)
不図示の制御装置から所定パルス数の閉弁制御信号をステータ55に給電することにより、ステッピングモータ5のロータ57を一方向に回転駆動させたとき、太陽歯車61から減速機構6に回転数が入力され、さらに減速機構6により減速された回転数が出力軸部29を介して、ねじ駆動部材22に伝達される。ねじ駆動部材22が一方向に回転すると、雌ねじ部13aと雄ねじ部22aとが相対螺動し、その回転数に応じて、ねじ駆動部材22が軸線L方向下方に移動する。このねじ駆動部材22の推力により、ボール状継手25を介して中間軸7が下方に付勢され、中間軸7は圧縮コイルばね26の付勢力に抗して下降する。
【0033】
中間軸7の下降とともに弁体4が下降し、弁体円錐面4dが弁座部材31の弁座31aに着座して第2開口10bが閉じられる(図2参照)。これにより弁室VCを挟んで配管T2、T1との間で、流体の流れが中断する。
【0034】
ここで、不図示の制御装置からステッピングモータ5に入力される閉弁制御信号は、駆動経路のガタなどを考慮して、弁体円錐面4dが弁座31aに着座したのち、さらに一定角度でロータ57が回転させる分のパルス数を含む。このため、弁体円錐面4dが弁座31aに着座したのちも、弁体4はさらに下降し続ける。
【0035】
仮に弁座31aが弁本体10と一体である場合、当接後においても弁体円錐面4dが弁座31aに向かって付勢されるため、両者間に高い面圧が作用する。特に、電動弁1がギヤ式の減速機構6を有している場合、弁体円錐面4dと弁座31aとの面圧は過大となる。かかる状況で、弁体円錐面4dと弁座31aとの間に硬い異物が介在した場合、弁体円錐面4dと弁座31aの少なくとも一方に圧痕やキズなど生じるため、これにより閉弁時に流体漏れが生じる恐れがある。
【0036】
本実施形態によれば、弁体円錐面4dが弁座31aに着座したのち、弁体4の下降に応じてO-リング32が弾性変形するため、弁座31aは弁体円錐面4dに当接したまま下降する。O-リング32が弾性変形することにより発生する弾性力は、弁座31aと弁体円錐面4dとが押圧されるように付勢されるが、かかる弾性力は弁体4が受ける駆動力よりも相当に小さい。このため、弁体円錐面4dと弁座31aとの面圧は比較的小さくなり、たとえ弁体円錐面4dと弁座31aとの間に硬い異物が介在した場合にも、圧痕やキズなどが生じることが抑制され、それにより閉弁時における流体漏れを抑制することができる。
【0037】
また、弁座部材31の外径は、第2開口10bの内径よりも小さいため、弁座部材31は第2開口10b内で軸線直交方向に移動しうる。このため、弁体4と弁座部材31の軸線がずれていたとしても、下降する弁体円錐面4dに合わせて弁座部材31が自動的に調心され、それにより部品の組付公差を高めることなく適切な着座位置が確保され、流体漏れを抑制できる。
【0038】
下降する弁体4は、弁体円錐面4dが弁座31aに着座したのち、弁体円錐面4dがストッパ部10dに当接することで係止されるため、ロータ57の過回転による弁座ユニット30の損傷などを抑制できる。
【0039】
一方、不図示の制御装置から開弁制御信号をステータ55に給電することにより、ステッピングモータ5のロータ57を他方向に回転駆動させると、減速機構6及びねじ送り機構27を介して、ねじ駆動部材22が軸線L方向上方に移動する。これにより、中間軸7は圧縮コイルばね26の付勢力に従って上昇する。
【0040】
中間軸7とともに弁体4が上昇すると、弁座部材31は、圧縮されたO-リング32の弾性力で上方に付勢されているため、弁体4に追従して上昇するが、第1開口10aと第2開口10bとの段部に当接した時点で、その上昇が停止する。さらに弁体4が上昇することで、弁体円錐面4dが弁座31aから離間して、第2開口10bが開放される。これにより第2配管T2から、流体が弁室VCを通って第1配管T1と流れる。
【0041】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る弁座ユニット30Aの周辺を拡大して示す縦断面図である。第1の実施形態に対し、本実施形態は、弁本体10A及び弁座ユニット30Aの構成が異なる。それ以外の構成は、上述した実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。弁本体10A及び弁座ユニット30Aも、図1に示す電動弁1に取り付け可能である。
【0042】
弁本体10Aは、弁室VCの底面に、円形の第1開口10Aaと、第1開口10Aaより小径の第2開口10Abとを、この順序で軸線Lに同軸に形成している。第1開口10Aaと、第2開口10Abとにより、弁本体10Aの軸線方向上方に開口する環状凹部を構成する。第1開口10Aa内には、真鍮などにより形成されたストッパリング33Aが固定されている。ストッパリング33Aの上端内周が、環状のストッパ部33Aaを構成する。
【0043】
第2開口10Abの下端内周から、上方に向かって延在する内側円筒部10Acが形成されており、このため内側円筒部10Acの外周と第2開口10Abの内周との間に、環状溝10Adが形成される。
【0044】
弁座部材31Aは、厚肉円筒部31Aaと、薄肉円筒部31Abとを連設してなり、厚肉円筒部31Aaと薄肉円筒部31Abの外径は等しく、これらは第2開口10Abの内径より所定量小さい。また薄肉円筒部31Abの内径は、内側円筒部10Acの外径より所定量大きい。このため、薄肉円筒部31Abは、O-リング32Aとともに環状溝10Ad内に配置されたとき、軸線直交方向に移動しうる。
【0045】
厚肉円筒部31Aaの内径は、ストッパリング33Aの内径より小さく、薄肉円筒部31Abの内径より小さい。厚肉円筒部31Aaの内径と第2開口10Abの内径は略等しいと好ましい。厚肉円筒部31Aaの上端内周が、弁座31Acを構成する。また、弁座部材31A,O-リング32A,ストッパリング33Aにより、弁座ユニット30Aを構成する。
【0046】
弁座ユニット30Aの組付時には、弁本体10Aの上方側から、環状溝10AdにO-リング32Aを挿入したのち、その上から弁座部材31Aの薄肉円筒部31Abを挿入する。その後、第1開口10Aa(環状凹部の開口周縁)に、ストッパリング33Aを圧入や溶接などにより固定して弁本体10Aと一体化する。これにより、弁座部材31Aの抜け止めを行うことができる。弁座ユニット30の構成部品は、すべて弁本体10Aの上方側から組み付けることができる。
【0047】
弁座ユニット30Aを弁本体10Aに組み付けた状態で、弁座部材31Aの厚肉円筒部31Aaの下面と、内側円筒部10Acの上端との間に隙間がある。開弁時には、弁座部材31Aは、O-リング32Aの弾性力で上方に付勢され、ストッパリング33Aの下面に当接して保持される。
【0048】
(電動弁の動作)
図1を参照して、ステッピングモータ5のロータ57を一方向に回転駆動させたとき、中間軸7の下降とともに弁体4が下降し、弁体円錐面4dが弁座部材31Aの弁座31Acに着座して第2開口10Abが閉じられる(図3参照)。これにより弁室VCを挟んで配管T2、T1との間で、流体の流れが中断する。
【0049】
本実施形態によれば、弁体円錐面4dが弁座31Acに着座したのち、弁体4の下降に応じて弁座部材31Aが下方に押されてO-リング32Aが弾性変形するため、弁座31Acは弁体円錐面4dに当接したまま下降する。O-リング32Aが弾性変形することにより発生する弾性力は、弁座31Acと弁体円錐面4dとが押圧されるように付勢されるが、かかる弾性力は弁体4が受ける駆動力よりも相当に小さい。このため、弁体円錐面4dと弁座31Acとの面圧は比較的小さくなり、たとえ弁体円錐面4dと弁座31Acとの間に硬い異物が介在した場合にも、圧痕やキズなどが生じることが抑制され、それにより閉弁時における流体漏れを抑制することができる。
【0050】
また、弁座部材31Aは、第2開口10Ab内で軸線直交方向に移動しうるため、弁体4と弁座部材31Aの軸線がずれていたとしても、下降する弁体円錐面4dに合わせて弁座部材31Aが自動的に調心され、それにより部品の組付公差を高めることなく適切な着座位置が確保され、流体漏れを抑制できる。ただし、弁座部材31Aを第2開口10Ab内で軸線方向にのみ摺動可能に保持してもよい。
【0051】
下降する弁体4は、弁体円錐面4dがストッパ部33Aaに当接することで係止されるため、ロータ57の過回転による弁座ユニット30の損傷などを抑制できる。
【0052】
一方、不図示の制御装置から開弁制御信号をステータ55に給電することにより、中間軸7とともに弁体4が上昇すると、弁座部材31Aは、圧縮されたO-リング32Aの弾性力で上方に付勢されているため、弁体4に追従して上昇するが、ストッパリング33Aの下面に当接した時点で、その上昇が停止する。さらに弁体4が上昇することで、弁体円錐面4dが弁座31Acから離間して、第2開口10Abが開放される。これにより第2配管T2から、流体が弁室VCを通って第1配管T1と流れる。
【符号の説明】
【0053】
1 電動弁
10,10A 弁本体
3 キャン
4 弁体
5 ステッピングモータ
53 コイル
55 ステータ
57 ロータ
6 減速機構
8 軸部材
9 カバー
30,30A 弁座ユニット
31,31A 弁座部材
32,32A O-リング(弾性体)
33 環状部材
33A ストッパリング
VC 弁室
T1 第1配管
T2 第2配管
L 軸線

図1
図2
図3