(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】研磨用バフ
(51)【国際特許分類】
B24D 13/14 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
B24D13/14 B
(21)【出願番号】P 2022144917
(22)【出願日】2022-09-12
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】391059702
【氏名又は名称】ケヰテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸嗣
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05527215(US,A)
【文献】特開2008-156519(JP,A)
【文献】特開2018-183846(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103817571(CN,A)
【文献】特開2020-203369(JP,A)
【文献】特公昭47-033591(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨面に接触させるための合成樹脂製の研磨部材と、その研磨部材を研磨装置に固定させるための固定部材とを有する研磨用バフであって、
前記研磨部材が、反発弾性率が22%未満でF硬度65以上でE硬度30以下のポリウレタンフォームによって直径が120~170mmの扁平な円柱状に形成されており、13.0~17.0mmの厚みを有しており、表面に、鉛直断面が台形状で周状の溝部を、中心に対して同心円状に設けたものであり、
前記周状の溝部の幅が、12mm以上30mm以下であり、かつ、前記周状の溝部の深さが、研磨部材の厚みの40%以上60%以下であり、なおかつ、
前記周状の溝部の内周・外周の表面際が、曲率半径3~10mmとなるように面取りされているとともに、
ウレタンフォームによって扁平な円板状に形成された緩衝体
である支持部材が、前記研磨部材の背面に同心円状に積層されており、かつ、
前記固定部材が、ポリエステル製の面ファスナーによって扁平な円板状に形成された接合体
であり、前記支持部材の背面に同心円状に積層されていることを特徴とする研磨用バフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の塗装面や樹脂成形品の表面等を研磨するための研磨具に装着されて使用される合成樹脂からなる研磨具(所謂、バフ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の生産のラインや鈑金塗装工場で、塗装時に付着したゴミや塗料の小さな固まり(所謂、ブツ)を除去するために、及び、塗り肌が悪くなった場合にこれを除去して整えるために当てたペーパー目を磨いて消す目的、コーティング加工の前処理として、洗車キズや移動時・保管時に付いたもろもろの傷を磨いて消す目的、販売目的の中古車を陳列する際に、再塗装に至らない状態の塗膜の傷を消してツヤを出す目的等で、回転型ポリッシャー等の研磨装置を用いた塗装面の研磨(所謂、バフ研磨)が広く行われている。かかるバフ研磨は、塗装面の突起や凹部等の欠陥を修正するためのペーパー掛けが行われた後に、そのペーパー掛けにより生じた傷である凹凸(所謂、ペーパー目)を消しながら、表面光沢を付与したり、その他の塗膜の傷やくすみを消してツヤを出すものである。
【0003】
そのようなバフ研磨の際に、研磨装置に装着するバフとしては、タオルバフ、ウールバフ、フェルトバフ、布被覆バフ等の繊維素材からなるバフや、発泡合成樹脂からなるバフ(所謂、スポンジバフ)等が用いられている。また、スポンジバフとしては、特許文献1の如く、ポリウレタンフォーム(発泡ポリウレタン)によって形成されたものが知られており、被研磨面の材質や状態に応じて、硬さや目の粗さが調整される。かかるスポンジバフは、多孔質でありコンパウンドを含有保持する性能にも優れているため、広範に用いられている。
【0004】
繊維素材からなるバフは、その動きに追従して、解すことができる最小単位の各繊維が被研磨面の傷の深部および浅部に全体的に接触して、コンパウンドの砥粒を塗膜表面に接触させる力を直接的に伝えることができるため、主として切削や研磨作業に用いられる。一方、スポンジバフは、トレース能力が良好でないため、被研磨面の傷の深浅差が大きい場合には不向きであり、主としてコンパウンドを緩衝して柔らかく塗膜に接触させるための仕上げ艶出し研磨に利用されている。
【0005】
また、研磨時の研磨面の温度上昇を防ぐとともにバフの早期劣化を防ぐ目的で、特許文献2の如く、軟質ウレタンフォームの基材の表層に、熱プレス成形により圧縮して表面に凸部と溝とを設けた軟質ウレタンフォームの表層材を固着した複合スポンジバフも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-244470号公報
【文献】特開平11-300630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の如き、ウレタンフォームからなる従来のスポンジバフは、硬度を低くすると十分な研磨力(研削力)を得ることができないものとなり、反対に、硬度を高くすると、塗膜面に柔軟に追従しなくなり、ごく僅かな面積に集中して接触するため、被研磨面全体に接合しなくなるので、硬度の微調整が難しい、という不具合がある。一方、特許文献2の如き、複数の素材からなる研磨部材を厚み方向に積層してなる複合スポンジバフは、安価に製造することが困難である上、各素材の接合界面から剥がれて損傷し易い、という不具合もある。
【0008】
本発明の目的は、上記従来の研磨用バフ(スポンジバフ、複合スポンジバフ)の問題点を解消し、安価かつ容易に製造できる上、装着した研磨装置(回転型ポリッシャー等)に上方から大きな力を加えることなく、研磨面(自動車の塗装面や樹脂成形品の表面等)を高い研磨力(研削力)で効率良く、かつ、綺麗に研磨することが可能な研磨用バフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、被研磨面に接触させるための合成樹脂製の研磨部材と、その研磨部材を研磨装置に固定させるための固定部材とを有する研磨用バフであって、前記研磨部材が、反発弾性率が22%未満でF硬度65以上でE硬度30以下のポリウレタンフォームによって直径が120~170mmの扁平な円柱状に形成されており、13.0~17.0mmの厚みを有しており、表面に、鉛直断面が台形状で周状の溝部を、中心に対して同心円状に設けたものであり、前記周状の溝部の幅が、12mm以上30mm以下であり、かつ、前記周状の溝部の深さが、研磨部材の厚みの40%以上60%以下であり、なおかつ、前記周状の溝部の内周・外周の表面際が、曲率半径3~10mmとなるように面取りされているとともに、ウレタンフォームによって扁平な円板状に形成された緩衝体である支持部材が、前記研磨部材の背面に同心円状に積層されており、かつ、前記固定部材が、ポリエステル製の面ファスナーによって扁平な円板状に形成された接合体であり、前記支持部材の背面に同心円状に積層されていることを特徴とするものである。なお、本発明においては、上記した反発弾性率が22%未満の発泡合成樹脂(所謂“一般タイプの発泡合成樹脂”および“高弾性タイプの発泡合成樹脂”以外の発泡合成樹脂)を、低反発の発泡合成樹脂という。また、本発明における「周状の溝部」は、一つに繋がったものに限定されず、複数に分割されたものも含まれるが、一つに繋がったものであると、研磨装置に装着して研磨作業をする際に不要な振動が生じにくいので、より好ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の研磨用バフは、低反発の発泡合成樹脂(樹脂フォーム、プラスチックフォーム)からなる研磨部材の表面に特定形状の周状の溝部を設けたものであり、溝なしのものに比べて、底面の表面積が小さく、表面が平坦で溝がない状態では、各部位が互いに他の部位の変化を妨げるが、溝があることで周方向では凸部と凹部が独立しているため互いに他の部位の運動を制限することがないので潰れ易く復元し易いため、装着した研磨装置(回転型ポリッシャー等)に上方から大きな力を加えることなく、凹凸形状を含めた被研磨面に広い面積で接触させることができるので、自動車の塗装面や樹脂成形品の表面等を効率良く綺麗に研磨することができる。
【0013】
請求項1に記載の研磨用バフは、低反発の発泡合成樹脂からなる研磨部材の硬度を特定の範囲に調整したものであるので、自動車の塗装面や樹脂成形品の表面等を非常に効率良く研磨することができる。
【0014】
請求項1に記載の研磨用バフは、低反発の発泡合成樹脂からなる研磨部材の表面に設ける周状溝部が特定の形状に調整されているので、自動車の塗装面や樹脂成形品の表面等をきわめて効率良く研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】研磨用バフを示す説明図である(aは平面図であり、bは底面図であり、cは正面図である)。
【
図2】研磨用バフを示す説明図(
図1におけるA-A線断面図)である。
【
図3】研磨用バフを研磨装置に装着した状態を示す説明図である。
【
図4】研磨用バフの変更例を示す説明図である(a,bは
図1におけるA-A線断面図であり、cは底面図である)。
【
図5】比較例の研磨用バフを示す説明図(aは底面図であり、bはaにおけるB-B線断面である)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る研磨用バフ(スポンジバフ)は、上記の如く、低反発の発泡合成樹脂(すなわち、樹脂フォーム、プラスチックフォーム、スポンジ)からなる研磨部材の表面に特定形状の周状の溝部を設けたものである。なお、以下の説明においては、“数値A~数値B”の表現は、数値A以上数値B未満を意味するものとする。
【0017】
一般的に、低反発のスポンジからなるバフ(研磨部材)は、硬度が高いゆえに気泡の壁が潰れにくいため、塗膜面に押し付けるだけで、大きな研磨力を発生させることが可能である。また、低反発のスポンジからなるバフは、単位体積当たりの気泡の数が多いため、研磨剤の砥粒を小さくした場合と同様に機能する。したがって、低反発のスポンジからなるバフによれば、突起部分を集中的に被研磨面へ接触させたりしなければ、被研磨面へ新たな傷(筋状の噛み込み傷)が形成されにくいので、高い研磨力と仕上げ能力とを発現させることができる。その反面、低反発のスポンジからなるバフは、通常のスポンジからなるバフと異なり、被研磨面に押圧されて変形した後の形状の復元が遅いため、装着した研磨装置(回転型ポリッシャー等)に上方から大きな力を加え続けなければ、スポンジバフの表面が十分な圧力で被研磨面に接合せず、単位時間当たりの研磨面積が小さくなって十分な研磨力を発揮することができないので、直ちに研磨効率(作業効率)が良いとは言い難い。
【0018】
そのような事情に鑑み、発明者らは、鋭意検討の結果、低反発のスポンジからなる研磨部材の表面に、特定の形状を付与することで、低反発のスポンジの特性である変形および変形後の復元の遅さを払拭し、装着した研磨装置に上方から大きな力を与え続けなくとも、十分な研磨力を発揮し得ることを見出し、本件出願に至ったものである。
【0019】
<研磨用バフの構造>
以下、本発明に係る研磨用バフの一実施形態について、図面に基いて詳細に説明する。
図1、
図2は、研磨用バフを示したものであり、研磨用バフ1は、被研磨表面と接触する研磨部材3と、その研磨部材3を背面から支持するための支持部材5と、研磨部材3を(支持部材5とともに)研磨装置(回転型ポリッシャー等)に固定させるための固定部材2とを有している。
【0020】
研磨部材3は、発泡合成樹脂によって所定の厚みで所定の径の扁平な円柱状に形成されており、表面の中心から所定の距離を隔てた部分に、所定の幅の周状の溝部4が、中心に対して同心円状に設けられている。また、研磨部材3は、外周の表面際の部分、周状の溝部4の内周・外周の表面際の部分が、所定の曲率半径となるように面取りされている。なお、研磨部材3の大きさは、特に限定されないが、直径が80~190mmであると、研磨用バフの研磨効率(作業効率)が良好なものとなるので好ましく、直径が120~170mmであるとより好ましい。また、研磨部材3の厚みも、特に限定されないが、6.0~30mmであると、研磨用バフの研磨効率(作業効率)が良好なものとなるので好ましく、13.0~17.0mmであるとより好ましい。
【0021】
一方、支持部材5は、ウレタンフォームによって所定の厚みで所定の径の扁平な円板状に形成されており、緩衝体として機能するようになっている。また、固定部材2は、ポリエステル製の面ファスナー(雌型)によって所定の厚みで所定の径の扁平な円板状に形成されている。そして、支持部材5は、接着剤を用いて研磨部材3の背面(上面)に同心円状に積層(固着)されており、その支持部材5の背面(上面)に、固定部材2が、接着剤を用いて同心円状に積層(固着)されている。
【0022】
そして、上記の如く構成された研磨用バフ1は、
図3の如く、当該支持部材5を介して、回転型ポリッシャー等の研磨装置Mに装着されて、塗装面の仕上げ(研磨や光沢出し)を行うための部材として使用される。なお、そのように、研磨用バフ1を研磨装置Mに装着する際には、支持部材5の固定部材2が、背面(上面)の雌型突起(ループ)を研磨装置Mの回転盤Rの表面に装着された面ファスナーの雄型突起(先端を鉤状に形成した突起)に係合させることによって、回転体Rに固定(接合)させるための固定手段として機能する。
【0023】
なお、研磨部材3に装着する支持部材5や固定部材2は、上記した態様に限定されず、素材、大きさや形状を必要に応じて適宜変更することができる。また、研磨用バフは、上記の如く、研磨部材3と支持部材5と固定部材2とからなるものに限定されず、支持部材5を有しておらず固定部材2が直接的に研磨部材3の背面に積層(固着)されたものや、支持部材5や固定部材2以外の部材が研磨部材3の背面に積層されたもの等でも良い。
【0024】
また、研磨部材(3)を形成するための発泡合成樹脂としては、スポンジと称される発泡させたポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリエステル等の各種の合成樹脂からなる多孔質の素材を用いることができるが、ポリウレタンを発泡させたウレタンフォームを用いると、密度や発泡倍率等を調整することによって硬度等の特性を容易に調整することが可能となるので好ましい。
【0025】
また、発泡合成樹脂は、JIS K 6400に準拠した方法で測定した反発弾性率が22%未満の所謂、低反発フォームであることが必要であり、反発弾性率が12%未満のものであると、より好ましい。反発弾性率が22%以上のものであると、十分な研磨効果(研磨力・光沢付与力)を奏さないので好ましくなく、反対に、反発弾性率が5%未満のものであると、被研磨面に押し付けた後の形状の復元のレスポンスが悪くなり、十分な研磨効果を奏さないので好ましくない。発泡合成樹脂の反発弾性率は、5%以上20%未満であるとより好ましく、9%以上20%未満であると特に好ましい。
【0026】
さらに、発泡合成樹脂は、F硬度65以上でE硬度30以下のものであると好ましい。発泡合成樹脂のF硬度が65未満であると、柔らかすぎて十分な研磨効果を奏さないので好ましくない。反対に、発泡合成樹脂のE硬度が30を上回ると、被研磨面が凹凸を有している場合に非常に大きな力を加えなければ被研磨面の形状に追従させることができないため、研磨効率が悪くなるので好ましくない。加えて、発泡合成樹脂は、F硬度70以上でE硬度25以下のものであるとより好ましい。
【0027】
さらに、研磨用バフは、
図1の如く、発泡合成樹脂製の研磨部材の表面に、中心に対して同心円状の周状の溝部が設けられていることが必要である。本発明に係る研磨用バフは、当該周状の溝部が存在することによって、装着された研磨装置に上方から多大な力を加えなくても、非常に良好な研磨効率を発現させることができる。
【0028】
また、周状の溝部の幅は、特に限定されないが、半径の20%以上45%以下であると、より良好な研磨効率を発現させることが可能となるので好ましく、半径の25%以上40%以下であるとより好ましい。また、周状の溝部の深さも、特に限定されないが、厚みの25%以上75%以下であると、より良好な研磨効率を発現させることが可能となるので好ましく、厚みの30%以上70%以下であるとより好ましく、厚みの40%以上60%以下であると一段と好ましい。
【0029】
加えて、研磨用バフは、外周の表面際、周状の溝部の内周・外周の表面際を所定の曲率半径となるように面取りしたものであると、非常に良好な研磨効率を発現させることが可能となるのでより好ましい(
図1(c)参照)。加えて、上記の如く、外周の表面際、周状の溝部の内周・外周の表面際を面取りする場合には、面取り部分の曲率半径が3~10mmとなるように調整すると、被研磨面にソフトに接触するため、特定の部分が集中して被研磨面に当たる事態が生じないので、擦過傷(噛み込み傷)が発生したりせず、研磨効率がきわめて良好なものとなるので特に好ましい。なお、上記の如く外周の表面際、周状の溝部の内周・外周の表面際等を面取りした場合には、本発明における研磨用バフの「周状の溝部の幅」は、当該面取り部分を除いた溝部の最大幅を意味するものとする。
【0030】
なお、研磨部材に設ける周状の溝部は、
図4(a)の如く、内周および/または外周を面取りしていないもの(14)でも良いし、
図4(b)の如く、鉛直断面(研磨部材の径方向に沿った鉛直断面)の形状が台形状のもの(24)でも良い。また、研磨部材に設ける周状の溝部は、
図4(c)の如く、二重のもの(34a,34b)でも良い。
【実施例】
【0031】
以下、実施例・比較例によって本発明に係る研磨用バフについて詳細に説明するが、本発明の研磨用バフは、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することが可能である。また、実施例および比較例における特性の評価方法は以下の通りである。
【0032】
<硬度>
実施例・比較例で用いた研磨部材の形成用の発泡合成樹脂(ウレタンフォーム)を測定試料として、タイプFデュロメータ?(ゴム硬度計)によってF硬度を測定し、タイプEデュロメータ?によってE硬度を測定した。また、タイプEデュロメータ?による測定においては、硬度計を測定試料片の中央において押し付けた直後に計測値を読み取った。一方、タイプFデュロメータ?による測定においては、押し付けた後の数秒(約5秒)経過後に計測値を読み取った。そして、各発泡合成樹脂の厚さを増加させて各厚さにおける硬度測定を行い、厚さの増加にかかわらず変化しなくなった一定の硬度の値を採用した。
【0033】
<反発弾性率>
JIS K 6400に準拠した方法にて測定した。すなわち、手動計測試験機を用いて、規定の高さから試験片に鋼球を落下させ、跳ね返った最大の高さを読み取った。そして、一分間以内に3回の測定を行い、その中央値を求め、初期高さに対する跳ね返り高さの比率(%)を算出し、反発弾性率とした。
【0034】
<研磨性能評価>
[研磨力]
被研磨面として、特殊変性ポリエステル樹脂塗料(ロックペイント株式会社製「プロタッチ」黒色)の上にクリヤ(ロックペイント株式会社製の2液型アクリルウレタンクリヤ塗料)を塗布し、塗装鋼板表面温度を60℃に設定した遠赤外線ヒーターにて1時間乾燥させて塗装面を形成した。そして、その塗装面をサンドペーパーを用いてペーパー掛けして、塗装面にペーパー目を発生させた後に、実施例・比較例で得られた研磨用バフを取付けた回転型ポリッシャーを用いて当該塗装面の研磨を行った。そして、その際に、何番手のサンドペーパーよるペーパー目を消去できたかを調べ、そのペーパーの番手によって、研磨力を下記の3段階で官能評価した。
○:♯1,500番手(およびそれ以上の番手)のペーパーによるペーパー目を消去可能
△:♯1,500番手のペーパーによるペーパー目を消去できないが、♯2,000番手のペーパーによるペーパー目を消去可能
×:♯2,000番手のペーパーによるペーパー目も消去不可
【0035】
[被研磨面の研磨状態]
上記の如く、ペーパー目を消した後の被研磨面の状態を、ルーペ(約5倍)を用いて拡大して目視によって観察し、下記の3段階で官能評価した。
○:被研磨面に擦過噛み込み傷(筋状の噛み込み傷)がなく綺麗に研磨されている
△:被研磨面にわずかな擦過噛み込み傷が認められる
×:被研磨面に多くの擦過噛み込み傷が存在する
【0036】
[被研磨面のツヤ(光沢付与)の状態(被研磨面の状態)]
測色計を用いて、塗装後乾燥させた後に手を触れていない状態の塗膜面(ブランク塗装面)におけるL*a*b*表色系の数値(L*a*b*表色系における位置(座標))を測定し、C0(ブランク塗装面の色)とした。さらに、ブランク塗装面にペーパー掛けした後、実施例・比較例で得られた研磨用バフを取付けた回転型ポリッシャーを用いてペーパー目消し研磨を行い、しかる後、ペーパー目消し研磨後の塗装面におけるL*a*b*表色系の数値を測定し、Ct(研磨後の塗装面の色)とした。そして、L*a*b*表色系におけるC0(ブランク塗装面の色)からCt(研磨後の塗装面の色)までの距離(色差 ΔE*ab)を、次の計算式(1)を用いて算出した。
ΔE*ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2 ・・(1)
そして、算出された色差(ΔE*ab)により、被研磨面のツヤ・仕上がりの状態を、下記の3段階で評価した。すなわち、色差が小さいほど、ペーパー掛けしない塗装面と変わらないように綺麗に研磨されているものとして評価した(株式会社ジェイシーレゾナンス 2016年10月25日発行 カーディテイリングニュース121号 「塗膜研磨における綺麗を考える 第20回」参照)。
○:色差が0.25未満
△:色差が0.25以上0.5未満
×:色差が0.5以上
【0037】
[研磨効率]
上記の如く研磨力を測定した際に、ペーパー目が残らないように研磨するために、研磨作業者がどの程度の力(上方から研磨装置(研磨用バフを装着した回転型ポリッシャー)に加える力)を要したかを、下記の3段階で官能評価した。
○:上方から研磨装置に加える力はほとんど不要(回転型ポリッシャーの自重程度で研磨可)
△:上方から約7~15kg/(研磨部材の面積)の力を研磨装置に加える必要あり
×:上方から約15kg/(研磨部材の面積)以上の力を研磨装置に加える必要あり
【0038】
[実施例1]
反発弾性率が約18%の低反発のポリウレタンフォームによって、
図1の如き形状を有する厚み15.0mmで直径150mmの研磨部材を作成した。なお、当該低反発のポリウレタンフォームは、F硬度=70であり、E硬度=20であった。また、研磨部材3の表面には、中心から35.0mm~59.0mmの位置に24.0mm幅(研磨部材3の半径に対する割合=32%)で、深さ7.5mm(研磨部材3の厚みに対する割合=50%)の周状の溝部4を形成した。さらに、外周の表面際の部分、周状の溝部4の内周・外周の表面際の部分を、所定の曲率半径(約5.0mm)となるように面取りした。
【0039】
そして、その研磨部材3の裏面に、ウレタンフォームによって厚み=3.0mmで直径=140mmの扁平な円板状に形成された緩衝体2aと、ポリエステル製の面ファスナー(雌型)によって厚み=2.0mmで直径=130mmの扁平な円板状に形成された接合体2bとを同心円状に積層してなる支持部材5を、同心円状に積層することによって研磨用バフ1を得た。なお、支持部材5を装着する際には、支持部材5によって支持される部分の総面積が、研磨部材3の背面の面積の約75%になるように調整した。そして、当該研磨用バフを用いて、上記した方法によって研磨性能を評価した。実施例1の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0040】
[実施例2]
実施例1と同様な反発弾性率が約18%の低反発のポリウレタンフォームからなる研磨部材(厚み=15.0mm、直径=150mm)の表面に、中心から35.0mm~47.0mmの位置に12.0mm幅(研磨部材の半径に対する割合=16%)で、深さ7.5mm(研磨部材の厚みに対する割合=50%)の周状の溝部を形成した。そして、形成された研磨部材に、実施例1と同様な方法で、支持部材を積層することによって実施例2の研磨用バフを得た。そして、得られた実施例2の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。実施例2の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0041】
[実施例3]
実施例1と同様な反発弾性率が約18%の低反発のポリウレタンフォームからなる研磨部材(厚み=15.0mm、直径=150mm)の表面に、中心から35.0mm~65.0mmの位置に30.0mm幅(研磨部材の半径に対する割合=40%)で、深さ7.5mm(研磨部材の厚みに対する割合=50%)の周状の溝部を形成した。そして、形成された研磨部材に、実施例1と同様な方法で、支持部材を積層することによって実施例3の研磨用バフを得た。そして、得られた実施例3の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。実施例3の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0042】
[実施例4]
実施例1と同様な反発弾性率が約18%の低反発のポリウレタンフォームからなる研磨部材(厚み=15.0mm、直径=150mm)の表面に、中心から35.0mm~59.0mmの位置に24.0mm幅(研磨部材の半径に対する割合=32%)で、深さ3.0mm(研磨部材の厚みに対する割合=20%)の周状の溝部を形成した。そして、形成された研磨部材に、実施例1と同様な方法で、支持部材を積層することによって実施例4の研磨用バフを得た。そして、得られた実施例4の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。実施例4の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0043】
[実施例5]
実施例1と同様な反発弾性率が約18%の低反発のポリウレタンフォームからなる研磨部材(厚み=15.0mm、直径=150mm)の表面に、中心から35.0mm~59.0mmの位置に24.0mm幅(研磨部材の半径に対する割合=32%)で、深さ11.5mm(研磨部材の厚みに対する割合=77%)の周状の溝部を形成した。そして、形成された研磨部材に、実施例1と同様な方法で、支持部材を積層することによって実施例5の研磨用バフを得た。そして、得られた実施例5の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。実施例5の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0044】
[実施例6]
反発弾性率が約20%で、F硬度=65、E硬度=15の低反発のポリウレタンフォームによって、厚み15.0mmで直径150mmの研磨部材を作成した。また、その研磨部材の表面に、実施例1と同様な形状の周状の溝部を形成した。そして、形成された研磨部材に、実施例1と同様な方法で、支持部材を積層することによって実施例6の研磨用バフを得た。そして、得られた実施例6の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。実施例6の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0045】
[実施例7]
反発弾性率が約25%で、F硬度=70、E硬度=20の低反発のポリウレタンフォームによって、厚み15.0mmで直径150mmの研磨部材を作成した。また、その研磨部材の表面に、実施例1と同様な形状の周状の溝部を形成した。そして、形成された研磨部材に、実施例1と同様な方法で、支持部材を積層することによって実施例7の研磨用バフを得た。そして、得られた実施例7の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。実施例7の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0046】
[実施例8]
反発弾性率が約15%で、F硬度=70、E硬度=20の低反発のポリウレタンフォームによって、厚み15.0mmで直径150mmの研磨部材を作成した。また、その研磨部材の表面に、実施例1と同様な形状の周状の溝部を形成した。そして、形成された研磨部材に、実施例1と同様な方法で、支持部材を積層することによって実施例8の研磨用バフを得た。そして、得られた実施例8の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。実施例8の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0047】
[比較例1]
実施例1と同様な反発弾性率が約18%の低反発のポリウレタンフォームからなる研磨部材(厚み=15.0mm、直径=150mm)に、周状の溝部を形成することなく、支持部材を積層することによって比較例1の研磨用バフを得た。そして、得られた比較例1の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。比較例1の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0048】
[比較例2]
反発弾性率が約35%で、F硬度=70、E硬度=20の低反発のポリウレタンフォームによって、厚み15.0mmで直径150mmの研磨部材を作成した。また、その研磨部材の表面に、実施例1と同様な形状の周状の溝部を形成した。そして、形成された研磨部材に、実施例1と同様な方法で、支持部材を積層することによって比較例2の研磨用バフを得た。そして、得られた比較例2の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。比較例2の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0049】
[比較例3]
実施例1と同様な反発弾性率が約18%の低反発のポリウレタンフォームからなる研磨部材(厚み=15.0mm、直径=150mm)に、
図5の如く、直径方向に沿った直線状で幅2.4mm×深さ7.5mmの3本の溝部54,54・・を形成した。そして、その研磨部材53に、実施例1と同様に、支持部材5を積層することによって比較例3の研磨用バフ51を得た。そして、得られた比較例3の研磨用バフを用いて、実施例1と同様な方法によって研磨性能を評価した。比較例3の研磨用バフの研磨性能の評価結果を研磨用バフの特性とともに表1に示す。
【0050】
【0051】
表1から、低反発のポリウレタンフォームによって形成されているとともに研磨部材の表面に周状の溝部を設けた実施例1~8の研磨用バフは、研磨性能に優れている(研磨力が高い)とともに、研磨効率が良好であることが分かる。一方、低反発ポリウレタンフォームによって形成されているものの研磨部材の表面に周状の溝部が設けられていない比較例1の研磨用バフは、研磨効率が不良であり、通常の(低反発ではない)ポリウレタンフォームによって形成された比較例2の研磨用バフ(研磨部材の表面に周状の溝部を設けたもの)は、研磨性能が不良であることが分かる。また、低反発ポリウレタンフォームによって形成されているものの研磨部材の表面に直線状の溝部が設けられた比較例3の研磨用バフも、研磨効率が不良であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る研磨用バフは、上記の如く優れた効果を奏するものであるため、自動車の塗装面や樹脂成形品表面等を研磨するための部材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,11,21,31,41,51・・研磨用バフ
2・・固定部材
3、13,23,33,43,53・・研磨部材
4,14,24,34,44,54・・周状の溝部
5・・支持部材
M・・研磨装置(回転型ポリッシャー)
R・・回転体