(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】第3級アミン医薬組成物の工業化バッチ調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240906BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240906BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240906BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240906BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/4535 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240906BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240906BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240906BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/34
A61K47/18
A61K9/16
A61K9/19
A61K31/522
A61K31/216
A61K31/4535
A61K31/27
A61K31/135
A61K31/485
A61K31/506
A61K31/496
A61K31/407
A61K31/5513
A61K31/517
A61K31/519
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
(21)【出願番号】P 2022540398
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(86)【国際出願番号】 CN2019130833
(87)【国際公開番号】W WO2021134623
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】518208624
【氏名又は名称】広州帝奇医薬技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】頼 樹挺
(72)【発明者】
【氏名】鄭 陽
(72)【発明者】
【氏名】曹 付春
(72)【発明者】
【氏名】連 遠発
(72)【発明者】
【氏名】劉 鋒
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107137375(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106727358(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104013578(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110279675(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108113975(CN,A)
【文献】China Modern Doctor,2017年,55(6) ,pp.36-39,p.46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第3級アミン医薬組成物の工業化バッチ調製方法であって、乳化溶媒揮発法によって調製を実施し、
前記第3級アミン医薬組成物が、20~60wt%の第3級アミン構造を有する薬物、40~80wt%の生体適合性ポリマー材料、および0.05wt%未満の第4級アンモニウム塩不純物を含み、
前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、
前記PLGA中のLAとGAの比が85/15~70/30であり、前記PLGAの分子量が35~55kDaであり、かつ、前記PLGAの固有粘度が0.34~0.57dL/gであり、
(1)ポリビニルアルコールを含む水溶液を調製し、冷却して用意するステップと、
(2)前記第3級アミン構造を有する薬物および前記生体適合性ポリマー材料を塩素化炭化水素に溶解または分散させることによって溶液または懸濁液を形成し、加熱ステップなしに、使用時間を4時間以下、溶液の温度を20±5℃以下とするステップと、
(3)ステップ(2)で得られた溶液または懸濁液を、ポリビニルアルコールを含む水溶液に注入して乳化し、O/WまたはS/O/W型エマルジョンを形成し、加熱または真空ステップなしに、時間を4時間以下、環境温度を25℃以下とするステップと、
(4)機械的攪拌によってステップ(3)の生成物中の塩素化炭化水素を除去して、固化した球形または非球形の粒子を得、加熱または真空ステップなしに、機械的攪拌の継続時間を24時間以下、環境およびシステムの温度を25℃以下とし、得られた粒子の塩素化炭化水素の残留量を1.5wt%以下とするステップと、
(5)ステップ(4)の粒子を洗浄して、粒子表面のポリビニルアルコールを除去するステップと、
(6)ステップ(5)の粒子を凍結乾燥して、前記第3級アミン医薬組成物を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第3級アミン構造を有する薬物は、エンテカビル、オキシブチニン、ラロキシフェン、リバスチグミン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、セレギリン、ブスピロン、ブロナンセリン、アセナピン、オランザピン、ルラシドン、3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-α]ピリミジン-4-オン、6,7,8,9-テトラヒドロ-3-(2-(4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル)エチル)-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン、(±)-3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジン]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4-オキソ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-9-イルパルミテート中のいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3級アミン構造を有する薬物は、3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-α]ピリミジン-4-オンである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第4級アンモニウム塩不純物の構造式は、式(1)に示される構造式である、ことを特徴とする請求項
3に記載の方法。
【化1】
【請求項5】
第3級アミン医薬組成物の工業化バッチ調製方法であって、乳化溶媒揮発法によって調製を実施し、
前記第3級アミン医薬組成物が、20~60wt%の第3級アミン構造を有する薬物、40~80wt%の生体適合性ポリマー材料、および0.05wt%未満の第4級アンモニウム塩不純物を含み、
前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、
前記PLGA中のLAとGAの比が100/0~70/30であり、前記PLGAの分子量が20~55kDaであり、かつ、前記PLGAの固有粘度が0.2~0.57dL/gであり、
前記第3級アミン構造を有する薬物は、エンテカビル、オキシブチニン、ラロキシフェン、リバスチグミン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、セレギリン、ブスピロン、ブロナンセリン、アセナピン、オランザピン、ルラシドン、6,7,8,9-テトラヒドロ-3-(2-(4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル)エチル)-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン、(±)-3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジン]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4-オキソ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-9-イルパルミテート中のいずれか1つを含み、
(1)ポリビニルアルコールを含む水溶液を調製し、冷却して用意するステップと、
(2)前記第3級アミン構造を有する薬物および前記生体適合性ポリマー材料を塩素化炭化水素に溶解または分散させることによって溶液または懸濁液を形成し、加熱ステップなしに、使用時間を4時間以下、溶液の温度を20±5℃以下とするステップと、
(3)ステップ(2)で得られた溶液または懸濁液を、ポリビニルアルコールを含む水溶液に注入して乳化し、O/WまたはS/O/W型エマルジョンを形成し、加熱または真空ステップなしに、時間を4時間以下、環境温度を25℃以下とするステップと、
(4)機械的攪拌によってステップ(3)の生成物中の塩素化炭化水素を除去して、固化した球形または非球形の粒子を得、加熱または真空ステップなしに、機械的攪拌の継続時間を24時間以下、環境およびシステムの温度を25℃以下とし、得られた粒子の塩素化炭化水素の残留量を1.5wt%以下とするステップと、
(5)ステップ(4)の粒子を洗浄して、粒子表面のポリビニルアルコールを除去するステップと、
(6)ステップ(5)の粒子を凍結乾燥して、前記第3級アミン医薬組成物を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記生体適合性ポリマー材料
であるPLGAの含有量が50~70wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第3級アミン医薬組成物は、10~200μmの長径を有する球形または非球形の粒子である、ことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第3級アミン医薬組成物は、抗不安、抗うつ、急性および慢性統合失調症の治療および他の様々な精神病状態の明らかな陽性および陰性症状の治療のためのものである、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(2)およびステップ(3)は連続プロセスであるか、または2つのステップ間の間隔が1時間以下である、ことを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(6)では、凍結乾燥の条件は、
予備凍結:-30~-45℃、4~6時間、一次乾燥:-20~-5℃、8~16時間、100~200mtorr、二次乾燥:30~35℃、18~30時間、100~200mtorrである、ことを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工業化バッチとは、50万投与量以上で、単一バッチ生産周期が1ヶ月/2ヶ月のバッチを指す、ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に属し、具体的に、本発明は、第3級アミン医薬組成物および工業化バッチ調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放性組成物の調製方法のほとんどは、溶媒に溶解または分散する必要があり、例えば、特許文献1に開示されているミクロスフェアの調製方法および特許文献2に開示されているミクロスフェアの調製方法では、有機溶媒を使用して水不溶性ポリマーを溶解することが前提とされている。そのような方法によって調製された徐放性および徐放性組成物については、残留有機溶媒が毒性を引き起こし、放出挙動に影響を与えるというコンセンサスがある。しかし、有機溶剤による不純物や保管中の不純物の増加についての報告はほとんどない。
【0003】
メンシュトキン反応(Menshutkin reaction)は、第3級アミンとハロゲン化炭化水素により第4級アンモニウム塩を生成する反応である。徐放性製剤に使用されるほとんどの生分解性ポリマー材料(PLGAなど)はハロゲン化炭化水素への溶解度が高いため、徐放性製剤の現在の調製方法(乳化溶媒揮発法など)では、ハロゲン化炭化水素、特にジクロロメタンとクロロホルムが最も一般的な溶媒である。第3級アミン構造を含む薬物の場合、薬物とハロゲン化炭化水素がこのシステムでメンシュトキン反応を起こし、第4級アンモニウム塩の不純物が生成される可能性が非常に高くなる。調製プロセスで生成される不純物はプロセス不純物に属し、ICHガイドラインによると、新薬調製物中の非特異的不純物は0.2wt%未満に制御する必要がある。同時に、第4級アンモニウム塩は一般的に消毒剤や殺菌剤として使用されているが、異なる構造によると、人体に強い副作用や弱い副作用があり、元の薬の有効性、薬理学、毒物学にも大きな影響を与える可能性がある。したがって、第3級アミン薬物とハロゲン化炭化水素の反応によって生成された不純物を制御する必要がある。
【0004】
同時に、本出願者は、第3級アミン構造を有する薬物とハロゲン化炭化水素がメンシュトキン反応によって生成された第4級アンモニウム塩が一定の量を超えると、第4級アンモニウム塩不純物が保管中継続的に増加し、特にハロゲン化炭化水素の残留量が一定の量を超えると、増加の幅がより顕著になり、商品の長期間保管に適さず、投与後副作用を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第0052510号明細書
【文献】米国特許第3976071号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の問題を解決するための第3級アミン医薬組成物を提供することであり、第3級アミン医薬組成物中の第4級アンモニウム塩不純物の含有量、およびハロゲン化炭化水素の残留量を制御することにより、第4級アンモニウム塩不純物が保管中継続的に増加するという問題を解決する同時に、薬品の保管条件もより寛容である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は以下の技術的解決策を採用する。
【0008】
第3級アミン構造を有する薬物、生体適合性ポリマー材料、および第4級アンモニウム塩不純物を含み、前記薬物をハロゲン化炭化水素またはハロゲン化炭化水素を主成分とする混合溶媒またはハロゲン化炭化水素を含有する溶液に溶解または分散させることによって調製され、前記第4級アンモニウム塩不純物は、前記第3級アミン構造を有する薬物と前記ハロゲン化炭化水素の反応によって生成される、第3級アミン医薬組成物であって、前記医薬組成物は、40~80wt%の前記生体適合性ポリマー材料、および20~60wt%の前記第3級アミン構造を有する薬物を含み、前記第4級アンモニウム塩不純物の含有量が0.05wt%未満であり、前記第3級アミン医薬組成物における前記ハロゲン化炭化水素の含有量が1.5wt%未満、好ましくは1.25wt%未満である、第3級アミン医薬組成物である。
【0009】
前記第3級アミン構造を有する薬物は調製プロセスの工程ではハロゲン化炭化水素と直接接触する。さらに、前記第3級アミン構造を有する薬物はハロゲン化炭化水素に完全に溶解するか、部分的に溶解するか、またはわずかに溶解する。完全溶解とは質量濃度xが1%を超えることを意味し、部分的溶解とは質量濃度が0.1%≦x≦1%であることを意味し、わずかな溶解とはx<0.1%であることを意味する。
【0010】
前記第3級アミン構造を有する薬物は、エンテカビル、オキシブチニン、ラロキシフェン、リバスチグミン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、セレギリン、ブスピロン、ブロナンセリン、アセナピン、オランザピン、ルラシドン、3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-α]ピリミジン-4-オン(N1)、6,7,8,9-テトラヒドロ-3-(2-(4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル)エチル)-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン、(±)-3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジン]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4-オキソ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-9-イルパルミテート中のいずれか1つを含む。
【0011】
第4級アンモニウム塩不純物の反応発生原理を考慮して、第4級アンモニウム塩不純物の含有量を一定範囲内に制御し通常保管温度下で不純物が増加しないか、またはゆっくりと増加するために、本発明の技術的解決策は他の第3級アミン構造を有する薬物にも適用可能である。
【0012】
例えば、フェントラミン、アミオダロン、アジスロマイシン、クロラムブシル、ジルチアゼム、テオヒドラミン、ジフェンヒドラミン、エリスロマイシン、メクロロエチルアミン、メルファラン、メタドン、プロポキシフェン、タモキシフェン、テルビナフィン、テトラサイクリン、クロニジン、クロミフェン、ドネペジル、カベルゴリン、セレギリン、スピロサイクロン、ロキサピン、アミスルプリド、アリピプラゾール、デヒドロアリピプラゾール、ビフェヌロール、ゾテピン、ピモジド、プロメタジン、テトラベナジン、ヒドロキシテトラベナジン、カリプラジン、シタロプラム、ガランタミン、イロペリドン、クロザピン、エスシタロプラム、ペロピロン、ジプラシドン、アミトリプチリン、ドキセピン、トリフルプロマジン、トリミプラミン、クロミプラミン、トラフルプロマジン、トリミプラミン、クロミプラミン、イミプラミン、ミニプラミンなどにも適用可能である。
【0013】
前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、他の生体適合性ポリマー材料、例えばPCL、R-PEG-PLGA、PLGA-PEG-PLGA、PCL-PLGA、R-PEG-PLA、PLA-PEG-PLA、PCL-PLAにも適用可能であり、その中で、RはH、OH、Me、NH2、FAまたはOMeである。
【0014】
好ましくは、前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、前記PLGA中のLAとGAの比が100/0~50/50であり、前記PLGAの分子量が20~60kDaであり、前記PLGAの固有粘度が0.2~0.65dL/gである。
【0015】
前記の第3級アミン医薬組成物では、ハロゲン化炭化水素の含有量が1.5wt%以下、好ましくは1.25wt%以下、より好ましくは1wt%以下である。
【0016】
具体的な実施形態では、前記第3級アミン構造を有する薬物は、N1、N2またはN3中のいずれか1つであり、前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、ハロゲン化炭化水素はクロロホルムまたはジクロロメタンの少なくとも1つを含む溶媒であり、前記第4級アンモニウム塩不純物の含有量が0.04wt%未満であり、ジクロロメタンまたはトリクロロメタンの含有量が1.25wt%以下、好ましくは1wt%以下、より好ましくは0.7wt%以下である。
【0017】
ここで、前記PLGA中のLAとGAの比が100/0~70/30であり、前記PLGAの分子量が20~55kDaであり、前記PLGAの固有粘度が0.2~0.57dL/gである。
【0018】
別の実施形態では、前記第3級アミン構造を有する薬物はN1であり、含有量が30~50wt%であり、前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、含有量が50~70wt%であり、不純物の構造式が式(1)に示され、
【化1】
不純物の含有量が0.03wt%未満であり、前記不純物のマススペクトルが
図1に示される。
【0019】
好ましくは、前記の第3級アミン医薬組成物では、マススペクトルが
図1に示されるように不純物の含有量が0.02wt%未満、より好ましくは0.01wt%未満である。
【0020】
ここで、前記PLGA中のLAとGAの比が95/05~70/30であり、前記PLGAの分子量が25~50kDaであり、前記PLGAの固有粘度が0.24~0.52dL/gである。好ましくは、上記第3級アミン医薬組成物では、ジクロロメタン含有量が1.1wt%以下、好ましくは0.9wt%以下、より好ましくは0.7wt%以下である。
【0021】
本発明は、N1とジクロロメタンの反応によって生成された不純物のHPLC検出方法をさらに提供し、具体的には、
(1)クロマトグラフィーカラム:アジレント ZORBAX SB-C18 150×4.60mm、5μmまたは同等クロマトグラフィーカラム、
(2)移動相:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸:水=20:0.15:80(pH3.0)
(3)流量:1.5mL/min
(4)カラム温度:35℃
(5)検出波長:275nm
【0022】
このような検出条件下で、前記不純物RRTは1.5である。
【0023】
このような検出条件下で、N1の組合物では既知の不純物U1、U2およびU3が存在する可能性があり、RRTはそれぞれ0.7、1.6および1.7である。研究によると、これらの不純物の生成および変化は、ハロゲン化炭化水素の存在および含有量に直接関係していないことを示している。
【0024】
上記第3級アミン医薬組成物は、ブロック状、ストリップ状、粒子状であり、好ましくは、ナノスケール粒子、サブミクロン粒子、マイクロスケール粒子またはナノメートルスケール粒子であり、好ましくは、10~200μmの長径を有する球形または非球形の粒子であり、より好ましくは25~150μmの長径を有する球形または非球形の粒子である。
【0025】
本発明は、前記の第3級アミン医薬組成物の、抗不安、抗うつ、急性および慢性統合失調症の治療および他の様々な精神病状態の明らかな陽性と陰性症状の薬物の調製における使用をさらに提供し、ここで、第3級アミン構造を有する薬物は、ブスピロン、ロキサピン、アミトリプチリン、アリピプラゾール、デヒドロアリピプラゾール、ビフェニロン、ブナンセリン、クロペンチキソール、タンドスピレノン、フルフェナジン、ハロペリドール、クエチアピン、レモプリド、ゾテピン、プロメタジン、テトラベナジン、ヒドロキシテトラベナジン、アセナピン、カリプラジン、イロペリド、ジプラシドン、アミトリプチリン、ドキセピン、イミプラミン、トリフルフェナジン、トリミプラミン、クロザピンミプラミン、ミアンセリン、ミルタザピン、リタンセリン、トラゾドン、ベンラファキシン、N1、N2、またはN3から選択され、抗不安、抗うつ、急性および慢性統合失調症の治療および他の様々な精神病状態の明らかな陽性と陰性症状に使用される。
【0026】
いくつかの実施例では、前記球形または非球形の粒子の第3級アミン医薬組成物は、投与のために溶媒に分散または懸濁され、皮下注射または筋肉注射によって投与される。前記溶媒には、非イオン性界面活性剤(または安定剤)(ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、セルロース増粘剤、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、デキストリン、デンプンなど)、等張剤(塩化ナトリウム、マンノースアルコール、グリセロール、ソルビトール、ラクトース、キシリトール、マルトース、ガラクトース、スクロース、グルコースなど)、pH調整剤(炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リン酸、塩酸、または炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどのこれらの酸の塩など)、保存剤(パラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸、ホウ酸など)という成分が含まれる。上記成分を水溶液にした後凍結乾燥法、減圧乾燥法、噴霧乾燥法などによって固化し、使用前に注射用の水で再び溶解すればよい。
【0027】
前記溶媒の粘度範囲が20~45mPa.sであり、pH値範囲が6.5~7.5であり、浸透圧が270~290mOsmol/kgである。
【0028】
前記の第3級アミン医薬組成物は、体液をシミュレートするインビトロまたはインビボで、2週間、4週間、8週間、12週間など、連続的かつゆっくりと放出することができる。
【0029】
上記第3級アミン医薬組成物は、常温または低温の凍結噴霧乾燥法、乳化溶媒揮発法、相分離法および超臨界流体法のいずれかによって調製することができる。
【0030】
本発明は、上記の第3級アミン医薬組成物の工業化バッチ調製方法をさらに提供する。工業化バッチとは、一定期間または最小量を超える商業供給ニーズを満たす生産バッチを指し、これは、単一バッチの生産サイクルに関連するか、患者数に関連するか、または投与方法に関連するか、またはサプライチェーンの能力に関連する。本発明の徐放性効果を有する第3級アミン薬物組合物の工業化バッチとは、単一バッチ(製造、包装、検査、品質管理など、上場前に必要なプロセスをカバーする)の1ヶ月/2ヶ月、50万投与量以上、好ましくは100万投与量以上、より好ましくは500万投与量以上のバッチを指す。
【0031】
具体的には、前記工業化バッチ調製方法は、具体的に
乳化溶媒揮発法によって調製され、以下のステップを含む。
(1)界面活性剤を含む水溶液を調製し、冷却して用意し、ここで、溶液温度が5±3℃である。
(2)第3級アミン構造を有する薬物および生体適合性ポリマー材料をハロゲン化炭化水素に溶解または分散させることによって溶液または懸濁液を形成し、加熱ステップなしに、使用時間を4時間以下、溶液の温度を20±5℃以下とする。
(3)ステップ(2)で得られた溶液または懸濁液を、界面活性剤を含む水溶液に注入して乳化し、O/WまたはS/O/W型エマルジョンを形成し、加熱または真空ステップなしに、時間を4時間以下、環境温度を25℃以下とする。
(4)機械的攪拌によってステップ(3)の生成物中のハロゲン化炭化水素を除去して、固化した球形または非球形の粒子を得、加熱または真空ステップなしに、機械的攪拌の継続時間を24時間以下、環境およびシステムの温度を25℃以下とし、得られた粒子のハロゲン化炭化水素の残留量が2.0wt%以下である。
(5)ステップ(4)の粒子を洗浄して、粒子表面の界面活性剤を除去する。
(6)ステップ(5)の粒子を凍結乾燥して、第3級アミン医薬組成物を得る。
【0032】
好ましくは、ステップ(2)およびステップ(3)は連続プロセスであるか、または2つのステップ間の間隔が1時間以下である。
【0033】
好ましくは、ステップ(5)中、10℃以下の5倍体積の注射用水でステップ(4)の粒子を洗浄して粒子表面のポリビニルアルコールを除去する。
【0034】
具体的に、ステップ(6)では、凍結乾燥の条件は以下のとおりである。
予備凍結:-30~-45℃、4~6時間、一次乾燥:-20~-5℃、8~16時間、100~200mtorr、二次乾燥:30~35℃、18~30時間、100~200mtorr、得られた粒子のハロゲン化炭化水素の残留量が1.5wt%以下である。
【0035】
第3級アミン構造を有する薬物をジクロロメタンに溶解して分散すると、直接接触し、反応の条件が提供される。生産バッチでは、ポリマー用量がキログラムレベルに達し、加熱できないため、ステップ(2)の溶解には一定の時間がかかり、溶解液の容量は数百リットルで、ろ過にも一定の時間がかかり、乳化中OとWは比例して高速ホモジナイザーに入り乳化し、乳化ステップ全体も一定時間かかる。したがって、ステップ(2)および(3)の時間と温度を制御して、薬物とハロゲン化炭化水素の反応を低減または回避し、反応不純物の生成を低減する必要がある。
【0036】
ジクロロメタンの含有量をある程度減らすと、薬物とジクロロメタンの反応を低減または回避し、ステップ(4)はジクロロメタンの組成物での残留量に影響を与え、このステップの継続時間に関連する。一定範囲内で、時間が長いほど、ジクロロメタンの含有量が低くなり、組成物中の第3級アミン構造を有する薬物との反応可能性が低くなり、不純物が少なくなる。
【0037】
前記N1組成物については、N1含有量が36wt%で、単回投与量が50~100mgであり、収率が80%で、N1濃度が10%である場合、50万投与量バッチとし、ステップ(2)の溶液体積が約500~1000Lであり、高速ホモジナイザーステップでは、O相とW相の流量が1:100であり、W相は50000~100000Lである。文献報告によると、同等の条件下で、流量が小さいほど、乳化効果が良好であり、粒子径分布が狭くなるため、流量が大きいほど、溶液とホモジナイザーヘッドとの接触時間が短くなり、ホモジナイザー効果が低下し、エマルジョンの粒子径分布が広くなる。
【0038】
ミクロスフェア製剤の調製のための市販の高速ホモジナイザー(IKNERS2000、Shanghai Yiken Machinery Equipment Co.Ltd.、3000rpm以上のモデルの流量範囲が300~20000L/h、IKA ULTRA-TURRAX UTL2000、IKA(広州)Instrument Equipment Co.Ltd.、3000rpm以上のモデルのスループットが50~40000L/h)によれば、全負荷で乳化プロセスを完了するのに2.5~5時間かかる。最適化された条件がフローの50%の場合、5~10時間かかり、最適化されたフローが小さいほど、総乳化時間は長くなる。バッチが100万投与量以上に増加する場合、単一の生産ラインの全体の乳化時間は10時間以上である必要がある。ただし、乳化時間が長くなり、薬物とハロゲン化炭化水素との接触時間が長くなるほど、より多くの不純物が生成される。したがって、バッチが多い場合、複数の高速ホモジナイザーが同時に乳化操作を実行してプロセス時間を短縮する必要があり、これはまた、より高い設備コストおよびプロセス安定性の研究内容につながる。
【0039】
ここで、前記界面活性剤はポリビニルアルコールである。
【0040】
具体的な実施形態では、本発明は第3級アミン医薬組成物の工業化バッチ調製方法を提供し、ここで、第3級アミン構造を有する薬物はN1であり、この方法は以下のステップを含む。
【0041】
(1)0.1~1.5wt%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、5±3℃に冷却して用意する。
(2)ステップ(1)が完了した後、機械的攪拌によってN1とPLGAをジクロロメタンに完全に溶解して、0.2μmの濾過膜で濾過する。
(3)ステップ(2)の溶液をステップ(1)の溶液にゆっくりと注入し高速ホモジナイザーで乳化してO/W型エマルジョンを形成する。
(4)ステップ(3)のエマルジョンを機械的攪拌してジクロロメタンを除去し、濾過して固化した球形または非球形の粒子を得る。
(5)10℃以下の5倍体積の注射用水でステップ(4)の粒子を洗浄して粒子表面のポリビニルアルコールを除去する。
(6)ステップ(5)の粒子を凍結乾燥して組成物を得る。
ここでは、
ステップ(2)では使用時間が3時間以下であり、溶液温度が20℃以下であり、加熱ステップがない。
ステップ(3)中のO相とW相の流量比が1:100であり、乳化総時間が4時間以下であり、環境温度が25℃以下であり、加熱または真空ステップがない。
ステップ(2)とステップ(3)は連続プロセスである。
ステップ(4)の継続時間が36時間以上であり、環境およびシステムの温度が25℃以下であり、加熱または真空ステップがなく、得られた粒子のハロゲン化炭化水素の残留量が1.5wt%以下である。
ステップ(6)で得られた粒子のハロゲン化炭化水素の残留量が1.25wt%以下であり、凍結乾燥方法は以下のとおりである。
【表1-1】
【0042】
好ましくは、ステップ(4)の固化中、粒子を等比率でろ過し、同量の注入用室温水を2~3回交換する。
【0043】
前記N1組成物は、4週間または1ヶ月に1回、50~100mgの投与量で投与される。いくつかの実施例では、前記N1組成物は、8週間または2ヶ月に1回、100~200mgの投与量で投与される。
【0044】
単純な製剤(錠剤など)の場合、大部分は室温または低温条件であり、複雑な製剤(生物学的製剤、長時間作用型注射など)の場合、それらのほとんどは冷蔵や凍結などの過酷な条件下で保管する必要がある。安全性の高い医薬品の場合、保管・輸送条件を大きく変えることはできないため、保管・輸送条件が複雑になると、冷蔵保管やプロのコールドチェーン輸送などの莫大な費用が発生し、薬価、そして最終的には薬の使用者の負担を増やすことがよく知られている。薬物の安定性の問題を克服できれば、従来の単純な棚と輸送条件の使用は、薬物使用者に大きな利益をもたらす。本発明の第3級アミン医薬組成物の保管条件は、5±3℃、または20±5℃、または25±5℃である。好ましくは20±5℃である。
【0045】
前記N1組成物の保管条件は5±3℃、または20±5℃である。いくつかの実施例では、前記N1組成物の保管条件は5±3℃であり、保管時間が36ヶ月以上である。いくつかの実施例では、前記N1組成物の保管条件は20±5℃であり、保管時間が24ヶ月以上である。
【0046】
本発明は、第3級アミン医薬組成物およびその工業化バッチ調製方法を提供し、第3級アミン構造を有する薬物とハロゲン化炭化水素の反応によって生成した不純物の含有量がICH要件を満たし、通常の条件下で保管してもこの不純物の含有量が増加しない、またはゆっくりと増加するか、または表示有効期間内にICH要件を超えない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】N1とジクロロメタンとの反応によって生成された不純物のマススペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、第3級アミン構造を有する薬物、生体適合性ポリマー材料、および第4級アンモニウム塩不純物を含む第3級アミン医薬組成物を提供し、医薬組成物は薬物をハロゲン化炭化水素またはハロゲン化炭化水素を主成分とする混合溶媒またはハロゲン化炭化水素を含有する溶液に溶解または分散させることによって得られ、第4級アンモニウム塩不純物は、第3級アミン構造を有する薬物とハロゲン化炭化水素の反応によって生成された、第3級アミン構造薬物、とハロゲン化炭化水素の反応によって生成された不純物である。本出願の研究は、第3級アミン医薬組成物中の第4級アンモニウム塩不純物の含有量およびハロゲン化炭化水素の残留含有量を制御することにより、通常の条件下で保管中この不純物の含有量が増加しない、またはゆっくりと増加するか、または表示有効期間内にICH要件を超えないことを発見した。
【0049】
下記の実施例はN1をモデル薬物として、ジクロロメタンをハロゲン化炭化水素として、本発明の解決策を詳細に説明する。N1とジクロロメタンの反応により生成された不純物の構造は、
【化2】
であり、そのマススペクトルが
図1に示され、液相検出によるこの不純物RRTが1.5であり、ここで、不純物の検出条件は以下のとおりである。
(1)クロマトグラフィーカラム:アジレント ZORBAX SB-C18 150×4.60mm、5μmまたは同等クロマトグラフィーカラム、
(2)移動相:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸:水=20:0.15:80(pH3.0)
(3)流量:1.5mL/min
(4)カラム温度:35℃
(5)検出波長:275nm
【0050】
このような検出条件下で、N1組合物中に既知の不純物U1、U2およびU3が存在する可能性があり、RRTはそれぞれ0.7、1.6、および1.7である。
【0051】
実施例1 N1を含有する組成物の調製:
10~50万の投与量バッチ(試験パラメータに基づいて各バッチの具体的なバッチを決定)のN1の組成物の調製レシピプロセスは下記の表に示され、調製方法は以下のとおりである。
(1)0.1~1.5wt%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、5±3℃に冷却し、用意する。
(2)機械的攪拌によりN1(40wt%)とPLGA(60wt%)を約4倍(V/w)のジクロロメタンに完全に溶解した後、0.2μmの濾過膜で濾過し、温度が20℃以下である。
(3)ステップ(2)が完了した後、溶液をステップ(1)の溶液にゆっくりと注入し高速ホモジナイザーで乳化してO/W型エマルジョンを形成し、流量比が1:100であり、環境温度が25℃以下である。
(4)ステップ(3)のエマルジョンを機械的攪拌してジクロロメタンを除去し、濾過して固化した球形または非球形の粒子を得、途中同じ時間で2回濾過、水交換(室温、等体積)する。
(5)10℃以下の5倍体積の注射用水でステップ(4)の粒子を洗浄して粒子表面のポリビニルアルコールを除去する。
(6)ステップ(4)の粒子を凍結乾燥して、組成物を得、凍結乾燥方法は以下のとおりである。
【表1-2】
(7)ステップ(5)の組成物を単位投与量50mg(N1として計算)で、ゴム栓で密封したバイアルに充填した後、密封して防湿アルミホイルバッグに保管する。
ここで、ステップ(2)とステップ(3)での時間を調整し、ステップ(4)の継続時間を制御し、環境およびシステムの温度を調整および制御して、異なるハロゲン化炭化水素の残留量を有する薬物粒子を得、組成物中のRRT1.5含有量制御に対するこれらの指標の影響を調べる。
【表1-3】
【0052】
実施例2
実施例1で得られた異なるバッチの製品結果を研究することにより、ステップ(2)とステップ(3)の使用時間のRRT1.5含有量に対する影響を検討し、結果を表2に示す。
【表2】
【0053】
表2のデータから分かるように、他の条件を変更せずに、ステップ(2)またはステップ(3)の使用時間が減少することに従って、RRT1.5不純物の含有量も顕著に減少する。
【0054】
実施例3
ステップ(4)の継続時間、環境およびシステムの温度のRRT1.5含有量に対する影響をさらに研究し、結果を表3に示す。
【表3】
【0055】
表3のデータから分かるように、ステップ(2)、ステップ(3)が好ましい条件の場合、ステップ(4)の継続時間の増加、RRT1.5不純物の含有量変化が顕著ではないが、有機溶媒残留が時間の経過とともに顕著に低減し、ステップ(2)、ステップ(3)、ステップ(4)の継続時間が好ましい条件の場合、ステップ(4)の環境およびシステムの温度の低下に従って、RRT1.5不純物の含有量も顕著に低減する。
【0056】
実施例4
N1を含有する組成物の調製:
10~50万投与量バッチ(試験パラメータに基づいて各バッチの具体的なバッチを決定)のN1の組成物の調製レシピが表4に示され、調製方法は実施例1と同様であり、同時に、プロセスパラメータを調整して異なるRRT1.5不純物の含有量およびハロゲン化炭化水素の含有量のN1組成物を得る。
【表4】
【0057】
実施例5
5±3℃の保管条件下で、ハロゲン化炭化水素の残留量が約1%であり、ハロゲン化炭化水素の残留量によるRRT1.5不純物の保管中の変化への影響は表5に示すようになる。
【表5】
【0058】
表5のRRT1.5不純物変化状況から分かるように、RRT1.5不純物の初期含有量が0.05%を超えると、18ヶ月保管した後0.2%以上増加し、RRT1.5不純物の初期含有量が0.05%未満の場合、24ヶ月保管した後いずれも0.2%未満であり、かつRRT1.5不純物の初期含有量が小さいほど、増加が遅く、RRT1.5不純物の初期含有量が0.02%未満の場合、24ヶ月以内に顕著な増加がない。
【0059】
実施例6
20±5℃保管条件下で、ハロゲン化炭化水素の残留量が約1%であり、ハロゲン化炭化水素の残留量によるRRT1.5不純物の保管中の変化への影響が表6に示すようになる。
【表6】
【0060】
表6のRRT1.5不純物変化状況から分かるように、5±3℃保管条件下で、RRT1.5不純物初期含有量が0.05%超えると、20±5℃保管中の増加がより顕著になり、6ヶ月後に0.2%を超え、RT1.5不純物の初期含有量が0.03%未満の場合、24ヶ月以内に依然として0.2%未満であり、RRT1.5不純物の初期含有量が0.02%未満の場合、24ヶ月以内の増加速度が相対的に遅い。
【0061】
実施例7
20±5℃保管条件下で、RRT1.5不純物初期含有量が0.04%であり、ハロゲン化炭化水素の残留量の不純物の変化への影響は、表7に示すようになる。
【表7】
【0062】
表7のRRT1.5不純物変化状況から分かるように、ハロゲン化炭化水素の含有量が1.5%を超えると、RRT1.5不純物の20±5℃保管中の増加がより顕著になり、9ヶ月後に0.2%を超え、RRT1.5不純物の初期含有量が1.1%未満の場合、24ヶ月以内に依然として0.2%未満であり、RRT1.5不純物の初期含有量が0.70%未満の場合、24ヶ月以内の増加速度が顕著ではない。
【0063】
実施例8
5±3℃と20±5℃保管条件下での、ハロゲン化炭化水素の含有量のU1、U2、U3不純物に対する影響を表8に示す。
【表8】
【0064】
表8のデータから分かるように、N1組成物では、U1、U2およびU3の3つの不純物は保管中ほとんど変化せず、組成物中のハロゲン化炭化水素の含有量に有意な関連がない。
【0065】
実施例9
実施例1の調製方法によって、エンテカビル、オキシブチニン、ラロキシフェン、リバスチグミン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、セレギリン、ブスピロン、ブロナンセリン、アセナピン、オランザピン、ルラシドン、N2、N3の徐放性ミクロスフェアを調製し、組成が表9に示される。ミクロスフェアの粒子径範囲を30~120μmとし、第4級アンモニウム塩不純物が0.05%未満であり、ハロゲン化炭化水素の含有量が約0.69~0.9%であり、5±3℃と20±5℃下で12ヶ月、24ヶ月および36ヶ月保管した後の第4級アンモニウム塩の不純物の変化状況を調べ、結果を表9に示す。
【表9】
【0066】
【0067】
表9の各組成物の第4級アンモニウム塩不純物の変化状況から分かるように、ハロゲン化炭化水素の含有量が0.9%以下であり、第4級アンモニウム塩不純物の初期値が0.04%以下である場合、組成物が2種類の温度で保管された第4級アンモニウム塩の不純物の含有量が依然として0.2%よりも小さい。同時に、ハロゲン化炭化水素の含有量が多いほど、または第4級アンモニウム塩不純物の初期値が高いほど、2種類の温度での保管中の第4級アンモニウム塩不純物の含有量の増加の幅が大きくなっている。
【0068】
(付記)
(付記1)
第3級アミン構造を有する薬物、生体適合性ポリマー材料、および第4級アンモニウム塩不純物を含み、前記薬物をハロゲン化炭化水素またはハロゲン化炭化水素を主成分とする混合溶媒またはハロゲン化炭化水素を含有する溶液に溶解または分散させることによって調製され、前記第4級アンモニウム塩不純物は、前記第3級アミン構造を有する薬物とハロゲン化炭化水素の反応によって生成される、第3級アミン医薬組成物であって、前記医薬組成物は、40~80wt%の前記生体適合性ポリマー材料、および20~60wt%の前記第3級アミン構造を有する薬物を含み、前記第4級アンモニウム塩不純物の含有量が0.05wt%未満であり、前記第3級アミン医薬組成物における前記ハロゲン化炭化水素の含有量が1.5wt%未満である、ことを特徴とする第3級アミン医薬組成物。
【0069】
(付記2)
前記第3級アミン構造を有する薬物は、エンテカビル、オキシブチニン、ラロキシフェン、リバスチグミン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、セレギリン、ブスピロン、ブロナンセリン、アセナピン、オランザピン、ルラシドン、3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-α]ピリミジン-4-オン、6,7,8,9-テトラヒドロ-3-(2-(4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル)エチル)-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン、(±)-3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジン]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4-オキソ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-9-イルパルミテート中のいずれか1つを含む、ことを特徴とする付記1に記載の第3級アミン医薬組成物。
【0070】
(付記3)
前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、前記PLGA中のLAとGAの比が100/0~50/50であり、前記PLGAの分子量が20~60kDaであり、前記PLGAの固有粘度が0.2~0.65dL/gである、ことを特徴とする付記1に記載の第3級アミン医薬組成物。
【0071】
(付記4)
前記第3級アミン構造を有する薬物は、3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-α]ピリミジン-4-オン、6,7,8,9-テトラヒドロ-3-(2-(4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル)エチル)-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン、(±)-3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジン]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4-オキソ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-9-イルパルミテート中のいずれか1つであり、前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、前記ハロゲン化炭化水素はクロロホルムまたはジクロロメタンの少なくとも1つであり、前記第4級アンモニウム塩不純物の含有量が0.04wt%未満である、ことを特徴とする付記1に記載の第3級アミン医薬組成物。
【0072】
(付記5)
前記PLGA中のLAとGAの比が100/0~70/30であり、前記PLGAの分子量が20~55kDaであり、前記PLGAの固有粘度が0.2~0.57dL/gである、ことを特徴とする付記3に記載の第3級アミン医薬組成物。
【0073】
(付記6)
前記第3級アミン構造を有する薬物は、3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-α]ピリミジン-4-オンであり、かつ含有量が30~50wt%であり、前記生体適合性ポリマー材料はPLGAであり、かつ含有量が50~70wt%であり、前記不純物の構造式が式(1)に示され、かつ含有量が0.03wt%未満である、ことを特徴とする付記1に記載の第3級アミン医薬組成物。
【化3】
【0074】
(付記7)
前記PLGA中のLAとGAの比が95/05~70/30であり、前記PLGAの分子量が25~50kDaであり、前記PLGAの固有粘度が0.24~0.52dL/gである、ことを特徴とする付記6に記載の第3級アミン医薬組成物。
【0075】
(付記8)
前記第3級アミン医薬組成物は、10~200μmの長径を有する球形または非球形の粒子である、ことを特徴とする付記1~7のいずれか1つに記載の第3級アミン医薬組成物。
【0076】
(付記9)
ブスピロン、ブロナンセリン、アセナピン、オランザピン、ルラシドン、3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4H-ピリド[1,2-α]ピリミジン-4-オン、6,7,8,9-テトラヒドロ-3-(2-(4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジニル)エチル)-9-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン、(±)-3-[2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンジソキサゾール-3-イル)-1-ピペリジン]エチル]-6,7,8,9-テトラヒドロ-2-メチル-4-オキソ-4H-ピリド[1,2-a]ピリミジン-9-イルパルミテート中のいずれか1つである付記1~7のいずれか1つに記載の第3級アミン医薬組成物の、抗不安、抗うつ、急性および慢性統合失調症の治療および他の様々な精神病状態の明らかな陽性および陰性症状の薬物の調製における使用。
【0077】
(付記10)
付記1~7のいずれか1つに記載の第3級アミン医薬組成物の工業化バッチ調製方法であって、乳化溶媒揮発法によって調製を実施し、
(1)界面活性剤を含む水溶液を調製し、冷却して用意するステップと、
(2)前記第3級アミン構造を有する薬物および前記生体適合性ポリマー材料をハロゲン化炭化水素に溶解または分散させることによって溶液または懸濁液を形成し、加熱ステップなしに、使用時間を4時間以下、溶液の温度を20±5℃以下とするステップと、
(3)ステップ(2)で得られた溶液または懸濁液を、界面活性剤を含む水溶液に注入して乳化し、O/WまたはS/O/W型エマルジョンを形成し、加熱または真空ステップなしに、時間を4時間以下、環境温度を25℃以下とするステップと、
(4)機械的攪拌によってステップ(3)の生成物中のハロゲン化炭化水素を除去して、固化した球形または非球形の粒子を得、加熱または真空ステップなしに、機械的攪拌の継続時間を24時間以下、環境およびシステムの温度を25℃以下とし、得られた粒子の前記ハロゲン化炭化水素の残留量が2.0wt%以下であるステップと、
(5)ステップ(4)の粒子を洗浄して、粒子表面の界面活性剤を除去するステップと、
(6)ステップ(5)の粒子を凍結乾燥して、前記第3級アミン医薬組成物を得るステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【0078】
(付記11)
ステップ(2)およびステップ(3)は連続プロセスであるか、または2つのステップ間の間隔が1時間以下である、ことを特徴とする付記10に記載の方法。
【0079】
(付記12)
ステップ(6)では、凍結乾燥の条件は、
予備凍結:-30~-45℃、4~6時間、一次乾燥:-20~-5℃、8~16時間、100~200mtorr、二次乾燥:30~35℃、18~30時間、100~200mtorr、得られた粒子のハロゲン化炭化水素の残留量が1.5wt%以下である、ことを特徴とする付記10に記載の方法。
【0080】
(付記13)
前記工業化バッチとは、50万投与量以上で、単一バッチ生産周期が1ヶ月/2ヶ月のバッチを指す、ことを特徴とする付記10に記載の方法。