(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】抗病原体薬剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、病原体処理装置、抗病原体薬剤の製造方法、抗菌方法、ウイルス不活性化方法、及び病原体処理方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/08 20060101AFI20240906BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240906BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20240906BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240906BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240906BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20240906BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240906BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20240906BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20240906BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20240906BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20240906BHJP
A61L 101/10 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
A01N59/08 A
A01P3/00
A01N59/00 A
A01P1/00
A01N25/02
A61L9/00 C
A61L9/01 E
A61L9/015
A61L9/14
A61L2/20 100
A61L2/18 100
A61L101:10
(21)【出願番号】P 2022555589
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2021037342
(87)【国際公開番号】W WO2022075451
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2020171087
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505122944
【氏名又は名称】株式会社 エースネット
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】高森 清人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 剛克
(72)【発明者】
【氏名】古西 清司
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109978(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230743(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0135133(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第104719334(CN,A)
【文献】特開2012-161786(JP,A)
【文献】特開2014-008440(JP,A)
【文献】特開2014-227353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル発生源と、オゾンとを含み、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含み、
前記ラジカル発生源及び前記オゾンは、同時又は別々のタイミングで病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触される、抗病原体薬剤。
【請求項2】
前記亜ハロゲン酸が、亜塩素酸、亜臭素酸、及び亜ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1記載の抗病原体薬剤。
【請求項3】
前記亜ハロゲン酸が、亜塩素酸である、請求項1又は2記載の抗病原体薬剤。
【請求項4】
さらに、ラジカル発生触媒を含み、
前記ラジカル発生触媒は、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を触媒する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤。
【請求項5】
前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方は、同時又は別々のタイミングで霧状に噴霧可能な物質である、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤。
【請求項6】
さらに、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方が、溶媒に溶解している、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤。
【請求項7】
前記オゾンは、オゾンガス及びオゾン水の少なくとも一方である、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤。
【請求項8】
前記病原体が、感染性の病原体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤を含む、抗菌剤。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤を含む、抗ウイルス剤。
【請求項11】
ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤によって病原体を処理する病原体処理装置であって、
オゾン供給機構と、ラジカル発生源収容容器と、放出機構を含み、
オゾン供給機構は、オゾンを供給し、
前記ラジカル発生源収容容器は、ラジカル発生源を収容し、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含み、
前記オゾン供給機構及び前記ラジカル発生源収容容器は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源を、前記放出機構を介して、装置外に放出し、
前記放出機構により放出された前記オゾン及び前記ラジカル発生源を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させ、前記抗病原体薬剤を調製する、病原体処理装置。
【請求項12】
前記亜ハロゲン酸が、亜塩素酸、亜臭素酸、及び亜ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項11記載の病原体処理装置。
【請求項13】
前記亜ハロゲン酸が、亜塩素酸である、請求項11又は12記載の病原体処理装置。
【請求項14】
前記ラジカル発生源収容容器は、さらに、ラジカル発生触媒を収容し、
前記ラジカル発生触媒は、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を促進する触媒である、請求項11から13のいずれか一項に記載の病原体処理装置。
【請求項15】
さらに、ラジカル発生触媒収容容器を含み、
前記ラジカル発生触媒収容容器は、ラジカル発生触媒を収容し、
前記ラジカル発生触媒収容容器は、前記ラジカル発生触媒を、前記放出機構を介して、装置外に放出し、
前記ラジカル発生触媒は、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を促進する触媒である、請求項11から14のいずれか一項に記載の病原体処理装置。
【請求項16】
前記オゾン供給機構は、前記オゾンを前記ラジカル発生源より先に放出する、請求項11から15のいずれか一項に記載の病原体処理装置。
【請求項17】
前記オゾン供給機構及び前記ラジカル発生源収容容器の少なくとも一方は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源の少なくとも一方を複数回放出する、請求項11から16のいずれか一項に記載の病原体処理装置。
【請求項18】
前記オゾン供給機構及び前記ラジカル発生源収容容器の少なくとも一方は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源の少なくとも一方を、同時又は別々に霧状に噴霧して放出する、請求項11から17のいずれか一項に記載の病原体処理装置。
【請求項19】
前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方が、溶媒に溶解している、請求項11から18のいずれか一項に記載の病原体処理装置。
【請求項20】
前記オゾンは、オゾンガス及びオゾン水の少なくとも一方である、請求項11から19のいずれか一項に記載の病原体処理装置。
【請求項21】
前記オゾン供給機構は、オゾン生成機構を含む、請求項11から20のいずれか一項に記載の病原体処理装置。
【請求項22】
ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤の製造方法であって、
オゾンを放出するオゾン放出工程と、
ラジカル発生源を放出するラジカル発生源放出工程と、
前記オゾンと前記ラジカル発生源とを混合して前記抗病原体薬剤を調製する混合工程とを含み、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む、抗病原体薬剤の製造方法。
【請求項23】
前記亜ハロゲン酸が、亜塩素酸、亜臭素酸、及び亜ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項22記載の製造方法。
【請求項24】
前記亜ハロゲン酸が、亜塩素酸である、請求項22又は23記載の製造方法。
【請求項25】
さらに、ラジカル発生触媒放出工程を含み、
前記ラジカル発生触媒放出工程は、ラジカル発生触媒を放出し、
前記混合工程は、さらに、前記ラジカル発生源と前記ラジカル発生触媒とを混合し、
前記ラジカル発生触媒は、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を触媒する、請求項22から24のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項26】
前記オゾン放出工程及び前記ラジカル発生源放出工程の少なくとも一方は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源の少なくとも一方を霧状にして噴霧する、
請求項22から25のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項27】
前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方は、溶媒に溶解している、請求項22から26のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項28】
前記オゾンは、オゾンガス及びオゾン水の少なくとも一方である、請求項22から27のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項29】
さらに、オゾン生成工程を含み、
前記オゾン生成工程は、オゾンを生成し、
前記オゾン放出工程は、前記生成したオゾンを放出する、請求項22から28のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項30】
薬剤製造工程、及び接触工程を含み、
前記薬剤製造工程は、請求項22から29のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤の製造方法であり、
前記接触工程は
、前記調製された抗病原体薬
剤を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方
(ただし、前記病原体を含む対象物及び環境は、人体を除く)に接触させ、前記接触によって抗菌を行うことを特徴とする、抗菌方法。
【請求項31】
接触工程を含み、
前記接触工程は、オゾン及びラジカル発生源を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方(ただし、前記病原体を含む対象物及び環境は、人体を除く)に接触させ、前記接触によって抗菌を行い、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、抗菌方法。
【請求項32】
薬剤製造工程、及び接触工程を含み、
前記薬剤製造工程は、請求項22から29のいずれか一項に記載の抗病原体薬剤の製造方法であり、
前記接触工程は
、前記調製された抗病原体薬
剤を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方
(ただし、前記病原体を含む対象物及び環境は、人体を除く)に接触させ、前記接触によってウイルス不活性化を行うことを特徴とする、ウイルス不活性化方法。
【請求項33】
接触工程を含み、
前記接触工程は、オゾン及びラジカル発生源を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方(ただし、前記病原体を含む対象物及び環境は、人体を除く)に接触させ、前記接触によってウイルス不活性化を行い、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、ウイルス不活性化方法。
【請求項34】
ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤によって病原体を処理する病原体処理方法であって、
前記オゾン及び前記ラジカル発生源を同時又は別々に放
出する放出工程と、
前記放出によって前記抗病原体薬剤を調製する調製工程と
、
前記調製された抗病原体薬
剤を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方
(ただし、前記病原体を含む対象物及び環境は、人体を除く)に接触させる接触工程とを含み、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む、病原体処理方法。
【請求項35】
ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤によって病原体を処理する病原体処理方法であって、
前記オゾン及び前記ラジカル発生源を同時又は別々に放出する放出工程と、
前記放出された前記オゾン及び前記ラジカル発生源を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方(ただし、前記病原体を含む対象物及び環境は、人体を除く)に接触させる接触工程とを含み、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む、病原体処理方法。
【請求項36】
前記亜ハロゲン酸が、亜塩素酸、亜臭素酸、及び亜ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項
34又は35記載の病原体処理方法。
【請求項37】
前記亜ハロゲン酸が、亜塩素酸である、請求項
34から36のいずれか一項に記載の病原体処理方法。
【請求項38】
前記放出工程は、前記オゾンを前記ラジカル発生源より先に放出する、請求項
34から
37のいずれか一項に記載の病原体処理方法。
【請求項39】
前記放出工程は、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方を複数回放出する、請求項
34から
38のいずれか一項に記載の病原体処理方法。
【請求項40】
前記放出工程は、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方を霧状に噴霧して放出する、請求項
34から
39のいずれか一項に記載の病原体処理方法。
【請求項41】
前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方は、溶媒に溶解している、請求項
34から
40のいずれか一項に記載の病原体処理方法。
【請求項42】
前記オゾンは、オゾンガス及びオゾン水の少なくとも一方である、請求項
34から
41のいずれか一項に記載の病原体処理方法。
【請求項43】
さらに、オゾンを供給するオゾン供給工程を含む、請求項
34から
42のいずれか一項に病原体処理方法。
【請求項44】
前記オゾン供給工程は、オゾンを生成するオゾン生成工程を含む、請求項
43記載の病原体処理方法。
【請求項45】
さらに、ラジカル発生源をラジカル発生源収容容器に収容するラジカル発生源収容工程を含む、請求項
34から
44のいずれか一項に記載の病原体処理方法。
【請求項46】
前記ラジカル発生源収容工程は、さらに、ラジカル発生触媒を前記ラジカル発生源収容容器に収容し、
前記放出工程は、前記ラジカル発生源と同時に前記ラジカル発生触媒を前記ラジカル発生源収容容器外に放出し、
前記調製工程は、前記放出した前記ラジカル発生触媒により、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を触媒して前記抗病原体薬剤を調製する、請求項
45記載の病原体処理方法。
【請求項47】
さらに、ラジカル発生触媒収容工程を含み、
前記ラジカル発生触媒収容工程は、ラジカル発生触媒をラジカル発生触媒収容容器に収容し、
前記放出工程は、さらに、前記ラジカル発生触媒を放出し、
前記調製工程は、前記放出した前記ラジカル発生触媒により、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を触媒して前記抗病原体薬剤を調製する、請求項
34から
46のいずれか一項に記載の病原体処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗病原体薬剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、病原体処理装置、抗病原体薬剤の製造方法、抗菌方法、ウイルス不活性化方法、及び病原体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌やウイルス等の感染によって引き起こされる病は古くから世界中で問題となっている。現在では、感染を避けるために、細菌やウイルスに抗菌剤やウイルス不活性化剤を噴霧したりして、抗菌及びウイルスの不活性化が行われている。抗菌剤やウイルス不活性化剤としては、現在、種々使用されており、例えば、消毒用エタノールと次亜塩素酸が挙げられる。例えば、特許文献1には、次亜塩素酸を用いてプールの水を抗菌することが記載されている。また、例えば、特許文献2には、オゾンガスを用いてチャンバ内の被処理物を抗菌することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-091063号公報
【文献】特開2017-164260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エタノールは、手などにスプレーして抗菌しようとしても、すぐに揮発してしまうため、抗菌効果が低い。
【0005】
また、次亜塩素酸は、すぐに分解してしまうため、一時的な抗菌効果を有していても、安定して抗菌効果を有さないという問題がある。
【0006】
さらに、オゾンガスは、強い酸化力を有するため、人体に悪影響を及ぼすおそれがある。人体への影響を抑えるために、オゾンガスの濃度を低濃度にする手法もあるが、これでは、抗菌効果が低減するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、安全性が高く、且つ高い抗菌効果及びウイルス不活性化効果を有する抗病原体薬剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、病原体処理装置、抗病原体薬剤の製造方法、抗菌方法、ウイルス不活性化方法、及び病原体処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の抗病原体薬剤は、
ラジカル発生源と、オゾンとを含み、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含み、
前記ラジカル発生源及び前記オゾンは、同時又は別々のタイミングで病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触される、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の抗菌剤は、
本発明の抗病原体薬剤を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の抗ウイルス剤は、
本発明の抗病原体薬剤を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の病原体処理装置は、
ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤によって病原体を処理する病原体処理装置であって、
オゾン供給機構と、ラジカル発生源収容容器と、放出機構を含み、
オゾン供給機構は、オゾンを供給し、
前記ラジカル発生源収容容器は、ラジカル発生源を収容し、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含み、
前記オゾン供給機構及び前記ラジカル発生源収容容器は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源を、前記放出機構を介して、装置外に放出し、
前記放出機構により放出された前記オゾン及び前記ラジカル発生源を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させ、前記抗病原体薬剤を調製する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の抗病原体薬剤の製造方法は、
ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤の製造方法であって、
オゾンを放出するオゾン放出工程と、
ラジカル発生源を放出するラジカル発生源放出工程と、
前記オゾンと前記ラジカル発生源とを混合して前記抗病原体薬剤を調製する混合工程とを含み、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の抗菌方法は、
薬剤製造工程、及び接触工程を含み、
前記薬剤製造工程は、本発明の抗病原体薬剤の製造方法であり、
前記接触工程は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源と、前記調製された抗病原体薬剤との少なくとも一方を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させ、前記接触によって抗菌を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明のウイルス不活性化方法は、
薬剤製造工程、及び接触工程を含み、
前記薬剤製造工程は、本発明の抗病原体薬剤の製造方法であり、
前記接触工程は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源と、前記調製された抗病原体薬剤との少なくとも一方を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させ、前記接触によってウイルス不活性化を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の病原体処理方法は、
ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤によって病原体を処理する病原体処理方法であって、
前記オゾン及び前記ラジカル発生源を同時又は別々に放出しする放出工程と、
前記放出によって前記抗病原体薬剤を調製する調製工程と、
前記放出された前記オゾン及び前記ラジカル発生源と、前記調製された抗病原体薬剤との少なくとも一方を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させる接触工程とを含み、
前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安全性が高く、且つ高い抗菌効果及びウイルス不活性化効果を有する抗病原体薬剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、病原体処理装置、抗病原体薬剤の製造方法、抗菌方法、ウイルス不活性化方法、及び病原体処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の病原体処理装置の一例の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、参考例2において、バブリング後のセル内の吸光度を分光光度計にて測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0019】
本発明において、「病原体」とは、DNAやRNAを有するものであって、生物の疾病の原因となるものであれば、特に制限されない。前記生物は、特に制限されず、動物(ヒト、家畜等)、及び植物等である。具体的に、病原体としは、例えば、コロナウイルス(例えば、SARSの原因ウイルスであるSARS-CoV、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2、MERSの原因ウイルスであるMERS-CoVを含む)、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、ESBL産生菌、淋菌、結核菌、溶血性レンサ球菌、クロストリジウム・ディフィシル、腸内細菌、腸球菌、アシネトバクター、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター、カンジタ、非チフス性サルモネラ菌、チフス菌、赤痢菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、非結核性抗酸菌、スピロヘータ、真菌類等が挙げられる。
【0020】
本発明において、「抗菌」とは、微生物の増殖を抑制することに限らず、殺菌、除菌、消毒、滅菌、及び静菌等を含めて、最も広義に解釈されるべきであり、如何なる意味においても限定されない。殺菌とは、微生物を死滅させることを意味する。除菌とは、微生物を取り除いて減らすことを意味する。消毒とは、ヒト等の動植物に対して病原性のある微生物を死滅させたり、病原性のある微生物の能力を減退させることで、無害化させることを意味する。滅菌とは、全ての微生物を死滅させることを意味する。静菌とは、微生物の増殖を阻害あるいは阻止することを意味する。
【0021】
本発明において、「抗ウイルス」とは、ウイルスの感染力の低下、ウイルスの感染予防、ウイルスの不活性化、及びウイルスの増殖阻止等を含めて、最も広義に解釈されるべきであり、如何なる意味においても限定されない。
【0022】
なお、本発明において、化合物(例えば、後述するアンモニウム等)に互変異性体又は立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体及び光学異性体)等の異性体が存在する場合は、特に断らない限り、いずれの異性体も本発明に用いることができる。また、本発明において、物質(例えば、後述する亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン、ラジカル発生触媒等)が塩を形成し得る場合は、特に断らない限り、前記塩も本発明に用いることができる。前記塩は、酸付加塩でも良いが、塩基付加塩でも良い。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、及び過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸及び酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミン及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記化合物に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。
【0023】
(1.抗病原体薬剤)
前述のとおり、本発明の抗病原体薬剤は、ラジカル発生源と、オゾンとを含む。本発明における抗病原体薬剤において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。以下において、本発明の抗病原体薬剤を「本発明の薬剤」という場合がある。
【0024】
本発明の薬剤は、安全性が高く、且つ抗菌効果やウイルス不活性化効果が高い。このため、本発明の薬剤は、例えば、抗菌、消臭などに幅広く使用できる。また、本発明の薬剤は、例えば、オゾンにより、細菌及びウイルスを直接破壊・分解できるため、耐性菌及び耐性ウイルスを生じにくい。
【0025】
本発明者らは、検討の結果、オゾンと亜ハロゲン酸等のラジカル発生源とを反応させることにより、前記オゾンが酸素になり、毒性がなくなることを見出した。一般的に、オゾンは人体にとって有害であるため(下記参考文献1及び2参照)、オゾンの使用後は、換気が必要となる。しかし、本発明によれば、前述のように、オゾンを無害化することができるため、安全に用いることができる。また、本発明者らは、ラジカル発生源が、前記オゾンによって酸化され、二酸化塩素となり、抗菌・抗ウイルス効果を示すことを見出した。したがって、本発明によれば、前記オゾンと前記ラジカル発生源とを同時のタイミングで、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方(以下、対象物等)に接触させる場合は、前記オゾンはすぐに無害化され、且つ前記ラジカル発生源が二酸化塩素となり、前記二酸化塩素による抗菌・抗ウイルス効果を得ることができる。すなわち、この場合は、オゾンを抗菌剤・抗ウイルス剤として用いるのではなく、酸化剤として使用しているともいえる。一方で、前記オゾンを前記対象物に接触させた後に、前記ラジカル発生源を前記対象物等に接触させる場合は、前記オゾンによる抗菌・抗ウイルス効果と前記ラジカル発生源に基づいて生成された二酸化塩素による抗菌・抗ウイルス効果との2つにより、高い抗菌・抗ウイルス効果を得ることができる。
参考文献1:Hidetomo Himuro, “The Effect of Ozone on Colonic Epithelial Cells” Kurume Medical Journal, 2017, Vol.64, p.75-81
参考文献2:Nathalie Dyane Miranda Slompo and Gustavo Henrique Ribeiro da Silva, “Disinfection of anaerobic/aerobic sanitary effluent using ozone: Formaldehyde formation” Water environment research, (United States), 2019, Vol.91, No.9 p. 898-905
【0026】
前記ラジカル発生源は、例えば、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つである。前記亜ハロゲン酸は、例えば、亜塩素酸、亜臭素酸、及び亜ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つを含んでもよい。特に、前記亜ハロゲン酸は、例えば、亜塩素酸であることが好ましい。前記ラジカル発生源は、例えば、用途に応じて、ラジカル種の反応性の強さ等を考慮し、適宜選択しても良い。また、前記ラジカル発生源は、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0027】
本発明の薬剤において、前記ラジカル発生源(例えば、亜ハロゲン酸等)の含有率は、特に限定されないが、例えば、0.00001質量%以上、0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0、1質量%以上、及び10質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下等である。濃度が低い方が、安全性が高いと考えられるため、濃度は低い方が好ましい。ただし、低すぎると殺菌効果などが得られなくなるおそれがある。殺菌効果等の観点からは、前記ラジカル発生源の濃度は特に限定されず、高いほど良い。
【0028】
本発明の薬剤において、前記ラジカル発生源が、亜ハロゲン酸塩の形態である場合、前記亜ハロゲン酸塩は、特に制限されず、無機塩でも有機塩でも良い。前記無機塩及び前記有機塩は、特に制限されないが、その具体例は、例えば、前述のとおりである。
【0029】
本発明の薬剤において、前記ラジカル発生源(例えば、亜ハロゲン酸等)は、例えば、液体でも、気体でも、固体でもよい。
【0030】
本発明の薬剤において、前記オゾンは、例えば、液体でも、気体でも、固体でもよい。具体的に、前記オゾンは、例えば、オゾンガスでもよいし、オゾン水でもよい。前記オゾンガスは、オゾンを含有する気体であればよく、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、例えば、酸素、窒素、二酸化炭素等である。前記オゾン水は、前記オゾンガスを水に溶解させた溶液であればよく、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、例えば、前記オゾンガスにおけるその他の成分と同様である。また、本発明の薬剤における前記オゾンは、例えば、前記オゾンガスと前記オゾン水の双方を含んでもよい。本発明の薬剤において、前記オゾンは、例えば、前記オゾンガス及び前記オゾン水等の複数種類を併用してもよいし、一種類のみ用いてもよい。
【0031】
本発明の薬剤において、前記オゾンの含有率は、特に限定されないが、例えば、0を超え、100ppm以下、50ppm以下、25ppm以下、15ppm以下、10ppm以下等である。濃度が低い方が、安全性が高いと考えられるため、濃度は低い方が好ましい。ただし、低すぎると殺菌効果などが得られなくなるおそれがある。殺菌効果等の観点からは、前記オゾンの濃度は特に限定されず、高いほど良い。
【0032】
本発明の薬剤は、例えば、さらに、ラジカル発生触媒を含み、前記ラジカル発生触媒は、例えば、前記オゾンの存在下において、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を触媒する物質であってもよい。ただし、本発明の薬剤は、前記ラジカル発生触媒を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。以下、前記ラジカル発生触媒を「本発明のラジカル発生触媒」ということがある。
【0033】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、有機物質でも無機物質でもよい。前記有機物質は、例えば、アンモニウム、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、リン脂質、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記無機物質は、金属イオン及び非金属イオンの一方又は両方を含んでいても良い。前記金属イオンは、典型金属イオン及び遷移金属イオンの一方又は両方を含んでいても良い。前記無機物質は、例えば、アルカリ土類金属イオン、希土類イオン、Mg2+、Sc3+、Li+、Fe2+、Fe3+、Al3+、ケイ酸イオン、及びホウ酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つであっても良い。アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はラジウムのイオンが挙げられ、より具体的には、例えば、Ca2+、Sr2+、Ba2+、及びRa2+が挙げられる。また、「希土類」は、スカンジウム21Sc、イットリウム39Yの2元素と、ランタン57Laからルテチウム71Luまでの15元素(ランタノイド)の計17元素の総称である。希土類イオンとしては、例えば、前記17元素のそれぞれに対する3価の陽イオンが挙げられる。
【0034】
また、前記ラジカル発生触媒は、例えば、CaCl2、MgCl2、FeCl2、FeCl3、AlCl3、AlMeCl2、AlMe2Cl、BF3、BPh3、BMe3、TiCl4、SiF4、及びSiCl4からなる群から選択される少なくとも一つであっても良い。ただし、「Ph」はフェニル基を表し、「Me」はメチル基を表す。
【0035】
前記ラジカル発生触媒は、例えば、0.4eV以上であるルイス酸でもよい。また、前記ラジカル発生触媒は、例えば、ブレーンステッド酸としての酸解離定数pKaが5以上であるブレーンステッド酸でもよい。前記pKaの上限値は、特に限定されないが、例えば、50以下である。
【0036】
なお、本発明のラジカル発生触媒において、前記ラジカル発生触媒は、目的に応じて、反応性の強さ、酸性度の強さ、安全性等を考慮して適宜選択することができる。
【0037】
本発明において、アンモニウム、アミノ酸、ペプチド、及びリン脂質等がラジカル発生触媒として機能する理由は明らかではないが、前記アンモニウム、アミノ酸、ペプチド、及びリン脂質等がルイス酸としての機能を有するためであると推測される。なお、本発明において、「ルイス酸」は、例えば、前記ラジカル発生源に対してルイス酸として働く物質をいう。
【0038】
本発明のラジカル発生触媒のルイス酸性度は、例えば、0.4eV以上、0.5eV以上、又は0.6eV以上である。前記ルイス酸性度の上限値は、特に限定されないが、例えば、20eV以下である。本発明において、前記ルイス酸性度が前記数値以上又は以下であることの判断基準としては、例えば、後述する「ルイス酸性度の測定方法(1)」又は「ルイス酸性度の測定方法(2)」のいずれか一方による測定値が前記数値以上又は以下であればよい。
【0039】
前記ルイス酸性度は、例えば、Ohkubo, K.; Fukuzumi, S. Chem. Eur. J., 2000, 6, 4532、J. AM. CHEM. SOC. 2002, 124, 10270-10271、又はJ. Org. Chem. 2003, 68, 4720-4726に記載の方法により測定することができ、具体的には、下記の「ルイス酸性度の測定方法(1)」により測定することができる。
【0040】
(ルイス酸性度の測定方法(1))
下記化学反応式(1a)中のコバルトテトラフェニルポルフィリン、飽和O2及びルイス酸性度の測定対象物(例えば金属等のカチオンであり、下記化学反応式(1a)ではMn+で表される)を含むアセトニトリル(MeCN)を、室温において紫外可視吸収スペクトル変化の測定をする。得られた反応速度定数(kcat)からルイス酸性度の指標であるΔE値(eV)を算出することができる。kcatの値は大きいほど強いルイス酸性度を示す。また、有機化合物のルイス酸性度は、量子化学計算によって算出される最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位からも、見積もることができる。正側に大きい値であるほど強いルイス酸性度を示す。
【0041】
【0042】
なお、上記測定方法により測定(算出)されるルイス酸性度の指標となる、ルイス酸存在下におけるCoTPPと酸素の反応速度定数の例を以下に示す。下記表中において、「kcat,M-2s-1」で表される数値が、ルイス酸存在下におけるCoTPPと酸素である。「LUMO, eV」で表される数値が、LUMOのエネルギー準位である。また、「benzetonium chloride」は塩化ベンゼトニウムを表し、「benzalkonium chloride」は塩化ベンザルコニウムを表し、「tetramethylammonium hexafluorophosphate」はヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム塩を表し、「tetrabutylammonium hexafluorophosphate」はヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム塩を表し、「ammonium hexafluorophosphate」はヘキサフルオロリン酸アンモニウム塩を表す。
【0043】
【0044】
また、本発明において、ルイス酸性度の測定は、ルイス酸性度の測定方法(1)において、酸素分子(O2)に代えてユビキノン1(Q1)を用い、ユビキノン1を還元してユビキノン1のアニオンラジカルを生成させることにより行なってもよい。このようなルイス酸性度の測定方法を、以下において、「ルイス酸性度の測定方法(2)」という場合がある。ルイス酸性度の測定方法(2)において、測定は、酸素分子(O2)に代えてユビキノン1(Q1)を用いること以外はルイス酸性度の測定方法(1)と同様にして行うことができる。また、ルイス酸性度の測定方法(2)においては、ルイス酸性度の測定方法(1)と同様に、得られた反応速度定数(kcat)からルイス酸性度の指標であるΔE値(eV)を算出することができる。ルイス酸性度の測定方法(2)は、例えば、Ohkubo, K.; Fukuzumi, S. Chem. Eur. J., 2000, 6, 4532に記載されており、同文献に記載された方法にしたがって、又はそれに準じて行うことができる。
【0045】
前記ルイス酸性度の測定方法(2)は、下記化学反応式(1b)に対する反応速度定数(k
cat)を測定することにより行うことができる。
【数1b】
前記化学式(1b)中、
M
n+は、前記ラジカル発生触媒を表し、
CoTPPは、コバルト(II)テトラフェニルポルフィリンを表し、
Q1は、ユビキノン1を表し、
[(TPP)Co]
+は、コバルト(III)テトラフェニルポルフィリンカチオンを表し、
(Q1)
・-は、ユビキノン1のアニオンラジカルを表す。
【0046】
本発明のラジカル発生触媒のルイス酸性度は、例えば、前記化学反応式(1b)に対する反応速度定数(kcat)すなわち「ルイス酸性度の測定方法(2)」により測定される前記反応速度定数(kcat)の測定値(Kobs)が、例えば、1.0×10-5S-1以上、2.0×10-5S-1以上、3.0×10-5S-1以上、4.0×10-5S-1以上、5.0×10-5S-1以上、6.0×10-5S-1以上、7.0×10-5S-1以上、8.0×10-5S-1以上、9.0×10-5S-1以上、1.0×10-4S-1以上、2.0×10-4S-1以上、3.0×10-4S-1以上、4.0×10-4S-1以上、5.0×10-4S-1以上、6.0×10-4S-1以上、7.0×10-4S-1以上、8.0×10-4S-1以上、9.0×10-4S-1以上、1.0×10-3S-1以上、2.0×10-3S-1以上、3.0×10-3S-1以上、4.0×10-3S-1以上、5.0×10-3S-1以上、6.0×10-3S-1以上、7.0×10-3S-1以上、8.0×10-3S-1以上、9.0×10-3S-1以上、1.0×10-2S-1以上、2.0×10-2S-1以上、3.0×10-2S-1以上、4.0×10-2S-1以上、5.0×10-2S-1以上、6.0×10-2S-1以上、7.0×10-2S-1以上、8.0×10-2S-1以上、又は9.0×10-2S-1以上であってもよく、1.0×10-1S-1以下、9.0×10-2S-1以下、8.0×10-2S-1以下、7.0×10-2S-1以下、6.0×10-2S-1以下、5.0×10-2S-1以下、4.0×10-2S-1以下、3.0×10-2S-1以下、2.0×10-2S-1以下、1.0×10-2S-1以下、9.0×10-3S-1以下、8.0×10-3S-1以下、7.0×10-3S-1以下、6.0×10-3S-1以下、5.0×10-3S-1以下、4.0×10-3S-1以下、3.0×10-3S-1以下、2.0×10-3S-1以下、1.0×10-3S-1以下、9.0×10-4S-1以下、8.0×10-4S-1以下、7.0×10-4S-1以下、6.0×10-4S-1以下、5.0×10-4S-1以下、4.0×10-4S-1以下、3.0×10-4S-1以下、2.0×10-4S-1以下、1.0×10-4S-1以下、9.0×10-5S-1以下、8.0×10-5S-1以下、又は7.0×10-5S-1以下であってもよい。
【0047】
本発明のラジカル発生触媒において、前記アンモニウムは、例えば、4級アンモニウムでも良いし、3級、2級、1級又は0級のアンモニウムでも良い。また、前記アンモニウムは、特に限定されず、例えば、核酸塩基等でもよいし、後述するアミノ酸、ペプチド等であってもよい。
【0048】
また、本発明のラジカル発生触媒は、例えば、陽イオン界面活性剤でも良く、第4級アンモニウム型陽イオン界面活性剤であっても良い。第4級アンモニウム型陽イオン界面活性剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウ、スフィンゴミエリン、ガングリオシドGM1、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、ベタレイン、レシチン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、及びコリン類(ベンゾイルコリンクロリド、及びラウロイルコリンクロリド水和物などのコリンクロリド、ホスホコリン、アセチルコリン、コリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及び重酒石酸コリンなど)が挙げられる。ただし、本発明のラジカル発生触媒において、前記第4級アンモニウムは、界面活性剤のみには限定されない。
【0049】
本発明のラジカル発生触媒において、前記アンモニウムは、例えば、下記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩であっても良い。
【0050】
【0051】
前記化学式(XI)中、
R11、R21、R31、及びR41、は、それぞれ水素原子もしくは芳香環であるか、又はアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよく、R11、R21、R31、及びR41は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R11、R21、R31、及びR41のうち2つ以上が一体化し、それらが結合するN+とともに環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
X-は、アニオンである。X-は、例えば、ペルオキソ二硫酸イオンを除くアニオンである。
R11、R21、R31、及びR41において、前記芳香環は、特に限定されず、例えば、ヘテロ原子を含んでいても含んでいなくても良く、置換基を有していても有していなくても良い。ヘテロ原子を含む前記芳香環(ヘテロ芳香環)としては、例えば、含窒素芳香環、含硫黄芳香環、含酸素芳香環等があげられる。ヘテロ原子を含まない前記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等があげられる。ヘテロ芳香環としては、例えば、ピリジン環、チオフェン環、及びピレン環等があげられる。含窒素芳香環は、例えば、正電荷を有していなくてもよいし、有していてもよい。正電荷を有しない含窒素芳香環としては、例えば、ピロリン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、3,4-ベンゾキノリン環、5,6-ベンゾキノリン環、6,7-ベンゾキノリン環、7,8-ベンゾキノリン環、3,4-ベンゾイソキノリン環、5,6-ベンゾイソキノリン環、6,7-ベンゾイソキノリン環、7,8-ベンゾイソキノリン環等があげられる。正電荷を有する含窒素芳香環としては、例えば、ピロリニウム環、ピリジニウム環、ピリダジニウム環、ピリミジニウム環、ピラジニウム環、キノリニウム環、イソキノリニウム環、アクリジニウム環、3,4-ベンゾキノリニウム環、5,6-ベンゾキノリニウム環、6,7-ベンゾキノリニウム環、7,8-ベンゾキノリニウム環、3,4-ベンゾイソキノリニウム環、5,6-ベンゾイソキノリニウム環、6,7-ベンゾイソキノリニウム環、7,8-ベンゾイソキノリニウム環等があげられる。含酸素芳香環又は含硫黄芳香環としては、例えば、前記ヘテロ原子を含まない芳香環又は含窒素芳香環の炭素原子又は窒素原子の少なくとも一つを、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方で置き換えた芳香環があげられる。
R11、R21、R31、及びR41において、前記アルキル基又は前記芳香環が置換基を有する場合、前記置換基は、特に限定されず、任意であるが、例えば、スルホ基、ニトロ基、ジアゾ基等があげられる。
【0052】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩であっても良い。
【0053】
【0054】
前記化学式(XII)中、
R1111は、炭素数が5~40のアルキル基であり、エーテル結合、ケトン(カルボニル基)、エステル結合、若しくはアミド結合、置換基、又は芳香環が含まれていてもよく、
R21及びX-は、前記化学式(XI)と同じである。
R1111において、前記芳香環は、特に限定されず、例えば、ヘテロ原子を含んでいても含んでいなくても良く、置換基を有していても有していなくても良い。R1111において、前記芳香環の具体例は、特に限定されないが、例えば、前記化学式(XI)のR11、R21、R31、及びR41と同様である。
R1111において、前記アルキル基又は前記芳香環が置換基を有する場合、前記置換基は、特に限定されず、任意であるが、例えば、前記化学式(XI)のR11、R21、R31、及びR41と同様である。
【0055】
前記化学式(XII)中、
R21は、例えば、メチル基又はベンジル基でも良く、前記ベンジル基は、ベンゼン環の水素原子の1以上が任意の置換基で置換されていても置換されていなくても良く、前記任意の置換基は、例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ基(-OH)、メルカプト基(-SH)、又はアルキルチオ基(-SR、Rはアルキル基)であっても良い。
【0056】
前記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XIII)で表されるアンモニウム塩であっても良い。
【0057】
【0058】
前記化学式(XIII)中、
R1111及びX-は、前記化学式(XII)と同じである。
【0059】
前記アンモニウムは、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウム、スフィンゴミエリン、ガングリオシドGM1、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、ベタレイン、レシチン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、及びコリン類からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記アンモニウムは、例えば、塩化ベンゼトニウムであってもよい。
【0060】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XIV)で表されるアンモニウム塩であってもよい。
【0061】
【化XIV】
前記化学式(XIV)中、
R
100は、環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
R
11及びX
-は、前記化学式(XI)と同じである。
【0062】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XV)で表されるアンモニウム塩であってもよい。
【0063】
【0064】
前記化学式(XV)中、
各Zは、それぞれ、CH又はNであり、同一でも異なっていてもよく、CHの場合は、Hは置換基で置換されていてもよく、
R11及びX-は、前記化学式(XI)と同じである。
【0065】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XVI)で表されるアンモニウム塩であってもよい。
【0066】
【0067】
前記化学式(XVI)中、
R101、R102、R103、及びR104は、それぞれ水素原子又は置換基であり、R101、R102、R103、及びR104は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R101、R102、R103、及びR104のうち2つ以上が一体化し、それらが結合するN+とともに環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
Zは、CH又はNであり、CHの場合は、Hは置換基で置換されていてもよく、
R11及びX-は、前記化学式(XI)と同じである。
【0068】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XVII)で表されるアンモニウム塩であってもよい。
【0069】
【0070】
前記化学式(XVII)中、
R111~R118は、それぞれ水素原子又は置換基であり、R111~R118は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R111~R118のうち2つ以上が一体化して環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、
芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
Zは、CH又はNであり、CHの場合は、Hは置換基で置換されていてもよく、
R11及びX-は、前記化学式(XI)と同じである。
【0071】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、及び塩化テトラブチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも一つであっても良い。また、前記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩が、塩化ベンゼトニウムであることが特に好ましい。
【0072】
なお、塩化ベンゼトニウム(Bzn
+Cl
-)は、例えば、下記化学式であらわすことができる。また、塩化ベンザルコニウムは、例えば、前記化学式(XIII)中、R
1111が炭素数8~18のアルキル基であり、X
-が塩化物イオンである化合物として表すことができる。
【化Bzn】
【0073】
なお、前記化学式(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)及び(XVII)中、X-は、任意のアニオンであり、特に限定されない。また、X-は、1価のアニオンに限定されるものではなく、2価、3価等の任意の価数のアニオンでも良い。アニオンの電荷が2価、3価等の複数の場合、例えば、前記化学式(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)及び(XVII)中のアンモニウム(1価)の分子数は、アニオンの分子数×アニオンの価数(例えば、アニオンが2価の場合、アンモニウム(1価)の分子数は、アニオンの分子数の2倍)となる。X-としては、例えば、ハロゲンイオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
【0074】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、前記化学式(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)及び(XVII)に限定されず、芳香環を含む任意の構造のアンモニウムでもよい。前記芳香環としては、特に限定されないが、例えば、前記化学式(XI)のR11、R21、R31、及びR41において例示した芳香環があげられる。
【0075】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、スルホン酸系アミン又はそのアンモニウムでもよい。前記スルホン酸系アミンとは、例えば、分子中にスルホ基(スルホン酸基)を有するアミンである。前記スルホン酸系アミンとしては、例えば、タウリン、スルファミン酸、3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、スルファミン酸、p-トルイジン-2-スルホン酸、o-アニシジン-5-スルホン酸、ダイレクト ブルー 14、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、アミノメタンスルホン酸、3-スルホプロピルアミン、2-アミノベンゼンスルホン酸、R(+)-3-アミノテトラヒドロフラン トルエン、4-アミノ-5-ヒドロキシ-1,7-ナフタレンジスルホン酸、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸、4’-アミノ-3’-メトキシアゾベンゼン-3-スルホン酸ナトリウム、Lapatinib ditosylate、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸、8-アミノ-1,3,6-ナフタレントリスルホン酸二ナトリウム水和物、1-アミノナフタレン-2-スルホン酸、(2S,3S)-3-アミノ-2-メチル-4-オキソ-1-アゼチジンスルホン酸、3-(1-ナフチルアミノ)プロパンスルホン酸ナトリウム、3-メチル-4-アミノベンゼンスルホン酸、3-シクロヘキシルアミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸 ナトリウム、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸 ナトリウム、4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、スルファミン酸ナトリウム、トリカイン、スルファニル酸 ナトリウム、1,4-フェニレンジアミン-2-スルホン酸、p-アニシジン-2-スルホン酸、6-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、3,4-ジアミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4-クロロベンゼンスルホン酸、3-[(4-アミノ-3-メチルフェニル)アゾ]ベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4-ヒドロキシ-5-ニトロベンゼンスルホン酸、5-アミノ-6-ヒドロキシ-3-ニトロベンゼンスルホン酸、4-アセトアミド-2-アミノベンゼンスルホン酸水和物、2-アミノフェノール-4-スルホン酸、1-アミノ-2-メトキシ-5-メチル-4-ベンゼンスルホン酸、ダンシル酸、Sulfamic acid [(1S,2S,4R)-4-[4-[[(1S)-2,3-dihydro-1H-inden-1-yl]amino]-7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-7-yl]-2-hydroxycyclopentyl]methyl ester、5-スルホ-4’-ジエチルアミノ-2,2’-ジヒドロキシアゾベンゼン、2-アミノナフタレン-6,8-ジスルホン酸、2-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-エタンスルホン酸ナトリウム、3-アセチル-2-(メチルアミノスルホニル)チオフェン、4-アミノ-2-クロロトルエン-5-スルホン酸ナトリウム、5-(3-AMINO-5-OXO-2-PYRAZOLIN-1-YL)-2-PHENOXYBENZENESULFONIC ACID、スルファミン酸カリウム、P-AMINOAZOBENZENE MONOSULFONIC ACID、3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]-2-hydroxy-1-propanesulfonate、3-アミノ-2,7-ナフタレンジスルホン酸一ナトリウム、3-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム塩、二(アミド硫酸)コバルト(II)、3-(4-アミノ-3-メトキシフェニルアゾ)ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸ニッケル(II)四水和物、2,4-ジアミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、5-アミノ-2-クロロトルエン-4-スルホン酸、2,5-ジクロロスルファニル酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、APTS(アミノピレントリスルホン酸)、4’-アミノアゾベンゼン-3-スルホン酸、ポンタシル カルミン 2B、p-アニシジン-3-スルホン酸、4,4’-ビス(4-アミノ-1-ナフチルアゾ)-2,2’-スチルベンスルホン酸、3-AMINONAPHTHALENE-8-HYDROXY-4,6-DISULFONIC ACID、4-アミノ-1,5-ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、4-アミノアゾベンゼン-4’-スルホン酸ナトリウム、5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホン酸、7-アミノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、アリザリンサフィロールSE、7-アミノ-2-ナフタレンスルホン酸 ナトリウム、6-アミノ-5-ブロモピリジン-3-スルホン酸、2-アミノエタンチオールp-トルエンスルホン酸塩、2-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸ナトリウム、6-アミノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム水和物、N,N,N’,N’-テトラエチルスルファミド、5-アミノ-2-エトキシベンゼンスルホン酸、3,5-ジアミノ-2,4,6-トリメチルベンゼンスルホン酸、7-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、スルファミン酸 グアニジン、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸、ジアミド硫酸ニッケル(II)、4-アミノ-4’-ニトロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸二ナトリウム、アニリン-2,5-ジスルホン酸一ナトリウム、5-アミノ-1-ナフトール-3-スルホン酸水和物、2,5-ジクロロスルファニル酸 ナトリウム、6-アミノヘキサン酸ヘキシルp-トルエンスルホナート、rac-(R*)-2-(4-クロロフェニル)-3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、2-(N,N-ジプロピル)アミノ アニソール-4-スルホン酸、2-アミノ-4-クロロフェノール-6-スルホン酸、6-アミノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸、5,10,15,20-テトラキス〔4-(トリメチルアンモニオ)フェニル〕-21H,-23H-ポルフィンテトラトシレート、5-アミノ-2-[(4-アミノフェニル)アミノ]ベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-クロロベンゼンスルホン酸、2-アミノベンゼンスルホン酸フェニルエステル、4-アセチルアミノ-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ジナトリウム、(S)-3-AMINO-2-OXETANONE P-TOLUENESULFONIC ACID SALT、5-アセチルアミノ-4-ヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、2-フェニルアミノ-5-アミノベンゼンスルホン酸、4-オクタデシルアミノ-4-オキソ-2-[(ソジオオキシ)スルホニル]ブタン酸ナトリウム、3,5-ジアミノ-4-メチルベンゼンスルホン酸等があげられる。
【0076】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、ニコチン系アミン又はそのアンモニウムでもよい。前記ニコチン系アミンとは、例えば、分子中に、環状構造を有し、かつ、前記環状構造がニコチン骨格を含むアミンである。前記ニコチン系アミンとしては、例えば、ニコチンアミド、アルカロイド等があげられる。
【0077】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、亜硝酸系アミン又は亜硝酸系アンモニウムでもよい。前記亜硝酸系アミン又は亜硝酸系アンモニウムとは、例えば、アミンと亜硝酸又は亜硝酸誘導体とを反応させて得られる化合物である。前記亜硝酸系アミン又は亜硝酸系アンモニウムとしては、例えば、ジアゾ化合物、ジアゾニウム塩、N-ニトロソ化合物、C-ニトロソ化合物等があげられる。
【0078】
また、本発明のラジカル発生触媒において、前記アンモニウムは、1分子中にアンモニウム構造(N+)を複数含んでいても良い。さらに、前記アンモニウムは、例えば、π電子相互作用により複数の分子が会合し、二量体又は三量体等を形成していても良い。
【0079】
本発明のラジカル発生触媒において、前記アミノ酸は、特に限定されない。前記アミノ酸は、例えば、分子中に、アミノ基又はイミノ基と、カルボキシ基との両方を、それぞれ少なくとも1つずつ含んでいればよい。前記アミノ酸は、例えば、α-アミノ酸でもよく、β-アミノ酸でもよく、γ-アミノ酸でもよく、それら以外のアミノ酸でもよい。前記アミノ酸は、例えば、タンパク質を構成するアミノ酸でもよく、具体的には、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リシン、ヒドロキシリシン、アルギニン、システイン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、及び4-ヒドロキシプロリンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0080】
本発明のラジカル発生触媒において、前記ペプチドは、特に限定されない。前記ペプチドは、例えば、前記アミノ酸分子が2個以上、ペプチド結合により結合したものであればよい。前記ペプチドは、例えば、酸化型グルタチオン(GSSG)及び還元型グルタチオン(GSH)の少なくとも一方であってもよい。
【0081】
本発明のラジカル発生触媒において、前記リン脂質は、特に限定されない。前記リン脂質は、例えば、分子中にリン原子を含む脂質であればよく、例えば、分子中にリン酸エステル結合(P-O-C)を含む脂質であってもよい。前記リン脂質は、例えば、分子中に、アミノ基、イミノ基、アンモニウム基、及びイミニウム基の少なくとも一つを有していてもよいし、有していなくてもよい。前記リン脂質は、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、及びカルジオリピンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0082】
本発明の薬剤中における本発明のラジカル発生触媒の含有率は、特に限定されないが、本発明の薬剤の全質量に対し、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、25質量%以上、又は50質量%以上であってもよく、例えば、90質量%以下、75質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。また、本発明のラジカル発生触媒は、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0083】
本発明の薬剤において、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方は、例えば、溶媒に溶解していてもよい。また、前記ラジカル発生触媒が、例えば、前記溶媒に溶解していてもよい。前記溶媒は、例えば、水及び有機溶媒の少なくとも一方を含んでもよい。本発明の薬剤は、例えば、前記溶媒として、水を用いることが、安全性、コスト等の観点から好ましい。前記水は、特に制限されないが、例えば、精製水、イオン交換水又は純水であることが好ましい。前記有機溶媒としては、例えば、アセトン等のケトン、アセトニトリル等のニトリル溶媒、エタノール等のアルコール溶媒、酢酸溶媒、硫酸溶媒等が挙げられ、これら溶媒は単独で使用しても二種類以上併用しても良い。前記酢酸溶媒及び硫酸溶媒は、例えば、酢酸又は硫酸を水に溶かしたものでも良く、これらは、例えば、溶媒であると同時にルイス酸又はブレーンステッド酸として機能する。前記溶媒の種類は、例えば、溶質(例えば、前記ラジカル発生触媒、前記ラジカル発生源等)の溶解性等に応じて使い分けても良い。また、前記溶媒は、例えば、水と有機溶媒との混合物であってもよい。ただし、本発明の薬剤は、水及び有機溶媒の少なくとも一方を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0084】
本発明の薬剤は、前記ラジカル発生触媒、前記水、及び前記有機溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の物質としては、特に限定されないが、例えば、pH調整剤、緩衝剤等があげられ、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。本発明の薬剤中における前記その他の成分の含有率は、特に限定されないが、本発明の薬剤の全質量に対し、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、10質量%以上、25質量%以上、又は50質量%以上であってもよく、例えば、90質量%以下、75質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。
【0085】
本発明の薬剤において、前記ラジカル発生源及び前記オゾンは、同時又は別々のタイミングで病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方(以下、対象物等ともいう)に接触される物質である。前記接触の手法は、特に制限されず、例えば、噴霧、塗布等の手法により、前記ラジカル発生源及び前記オゾンと前記対象物等とが接触すればよい。前記対象物とは、特に制限されず、例えば、日用品、医療器具、洋服等の布製品、アクセサリー等の装飾品、壁、床、テーブル等の家具、車内(医療用車)手術室、病室、病棟、汚染物処理施設、処理用車(ゴミ、汚物、血液など)食肉工場、上水、下水処理施設、遺体安置所等である。例えば、ウイルスや菌等の感染症による死亡者の遺体は、感染防止のため、遺族と面会謝絶であった。しかしながら、本発明によるウイルスや菌等の不活性化を行えば、遺族との面会が可能になる。前記環境とは、例えば、空間、水中、土中等である。また、前記接触は、前記ラジカル発生源及び前記オゾンを含む水溶液へ前記対象物を浸漬させることにより実施してもよい。前記接触は、例えば、前記オゾンを前記対象物等に接触させた後に、前記ラジカル発生源を前記対象物等に接触させることが好ましい。これにより、前述のように、効率よく前記オゾンを無害化することができる。また、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方は、例えば、複数回接触させてもよい。具体的には、例えば、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの双方を複数回させてもよいし、前記ラジカル発生源及び前記オゾンを交互に複数回させてもよいし、前記ラジカル発生源又は前記オゾンのいずれか一方のみを複数回接触させてもよい。より具体的に、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方は、例えば、同時又は別々のタイミングで霧状に噴霧して接触させることが好ましい。前記オゾンがオゾンガスの場合には、例えば、前記オゾンガスの存在下で、前記ラジカル発生源を噴霧してもよい。また、前記オゾンがオゾン水の場合には、例えば、前記オゾン水と前記ラジカル発生源とを同時又は別々のタイミングで噴霧してもよい。前記オゾン水と前記ラジカル発生源とを前記別々のタイミングで噴霧する場合は、例えば、前述のように、前記オゾン水を噴霧した後に、前記ラジカル発生源を噴霧することが好ましい。
【0086】
前記病原体は、特に制限されないが、例えば、感染性の病原体である。感染性とは、微生物やウイルスが宿主内で安定して増殖する性質をいう。前記微生物は、例えば、原核生物の細菌、真核生物の菌類等を意味する。前記感染性の病原体の例は、例えば、前述の病原体の例と同様である。
【0087】
本発明の薬剤のpHは、特に限定されないが、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、7以上、9以上、10以上であってもよい。また、本発明の薬剤のpHは、例えば、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下であってもよい。
【0088】
本発明の薬剤は、例えば、液状でも、固体状でも、半固体状でもよい。また、本発明の薬剤は、酸性でも、酸性でなくても良く、塩基性でも、塩基性でなくても良く、中性でも、中性でなくても良い。
【0089】
本発明の薬剤は、前述のとおり、安全性が高く、且つ高い抗菌・抗ウイルス効果を有する。また、本発明の薬剤は、例えば、後述のように消臭作用等を発揮し得る。このため、本発明の薬剤は、例えば、QOL(クォリティ・オブ・ライフ)の向上等に有用である。本発明の薬剤は、例えば、予防の目的で使用されてもよい。
【0090】
エタノールは、前述したように、すぐに揮発してしまうため、噴霧して使用するには適さない。次亜塩素酸は、有毒な塩素ガスが発生するため、噴霧して使用すると、人等の生物がその塩素ガスを吸引してしまう恐れがある。しかしながら、本発明によれば、噴霧して使用する場合であっても、安全に用いることができる。また、本発明は、オゾンのみを用いて特定の環境(例えば、手術室)を抗菌及びウイルス不活性化した場合と比較して、前記特定の環境への立ち入り可能にする時間を大幅に短縮できる。
【0091】
(2.抗病原体薬剤の製造方法等)
本発明の抗病原体薬剤の製造方法は、前述の通り、ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤の使用方法であって、オゾン放出工程と、ラジカル発生源放出工程と、混合工程とを含む。本発明における抗病原体薬剤の使用方法において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。また、前記抗病原体薬剤におけるその他の構成及び条件は、特に制限されず、具体的に、例えば、前述した本発明の抗病原体薬剤である。以下において、本発明の抗病原体薬剤の製造方法を「本発明の製造方法」という場合がある。
【0092】
本発明の製造方法は、まず、前記オゾン放出工程により、オゾンを放出する。前記オゾンは、例えば、前述と同様であり、オゾンガスでもよいし、オゾン水でもよい。また、本発明の製造方法は、例えば、前記オゾン放出工程の前に、オゾンを生成するオゾン生成工程を含んでもよい。オゾンガスの生成は、例えば、放電法、電解法、紫外線ランプ法等の公知の手法を用いることができる。また、オゾン水の生成は、例えば、気泡溶解法、隔膜溶解法、充填層溶解法等の公知の手法を用いることができる。前記オゾン生成工程は、例えば、前記オゾンガスと前記オゾン水の双方を生成してもよい。
【0093】
前記オゾン生成工程により生成される前記オゾンの含有率は、特に制限されない。
【0094】
前記オゾン放出工程により放出されるオゾンの放出量は、特に制限されない。放出する間隔も特に限定されない。放出を継続する期間も特に限定されない。
【0095】
次に、ラジカル発生源放出工程により、ラジカル発生源を放出する。前記ラジカル発生源は、例えば、前述と同様である。具体的に、前記ラジカル発生源は、亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸イオン及び亜ハロゲン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【0096】
前記ラジカル発生源放出工程により放出されるラジカル発生源の放出量は、特に制限されない。放出する間隔も特に限定されない。放出を継続する期間も特に限定されない。
【0097】
前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方は、例えば、溶媒に溶解していることが、反応性等の観点から好ましい。前記溶媒は、前述と同様である。
【0098】
前記オゾン放出工程及び前記ラジカル発生源放出工程の少なくとも一方は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源の少なくとも一方を霧状にして噴霧することで、放出してもよい。具体的には、例えば、前述と同様である。
【0099】
そして、前記混合工程により、前記オゾンとラジカル発生源とを混合して前記抗病原体薬剤を調製する。
【0100】
本発明の製造方法は、例えば、さらに、ラジカル発生触媒放出工程を含んでもよい。前記ラジカル発生触媒放出工程は、ラジカル発生触媒を放出する工程である。前記ラジカル発生触媒は、例えば、前述と同様である。本発明の製造方法が、前記ラジカル発生触媒放出工程を含む場合、前記混合工程は、さらに、前記ラジカル発生源と前記ラジカル発生触媒とを混合する。具体的に、例えば、前記ラジカル発生源と前記ラジカル発生触媒との混合は、前記オゾンと前記ラジカル発生源との混合に先立って実行されることが好ましい。
【0101】
前記ラジカル発生触媒放出工程により放出されるラジカル発生触媒の放出量は、特に制限されない。放出する間隔も特に限定されない。放出を継続する期間も特に限定されない。
【0102】
前記ラジカル発生触媒の濃度は、特に限定されず、例えば、反応物(原料)及び目的生成物の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0103】
前記混合工程により得られる混合物(抗病原体薬剤)は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源以外の任意の物質を、さらに含んでも良いし、含まなくても良い。前記混合物は、例えば、気体である。具体的には、例えば、二酸化塩素等である。特に、二酸化塩素は、生体に対して為害作用はないが、抗菌・抗ウイルス作用があることが報告されている(下記参考文献3及び4参照)。また、二酸化塩素は、消臭作用等があることも知られている。
参考文献3:Norio Ogata. et al., “Generation and Measurement of Chlorine Dioxide Gas at Extremely Low Concentrations in a Living Room: Implications for Preventing Airborne Microbial Infectious Diseases” Pharmacology,(Switzerland), 2017, Vol.99, p.114-120
参考文献4:Norio Ogata. et al., “Inactivation of Airborne Bacteria and Viruses Using Extremely Low Concentrations of Chlorine Dioxide Gas” Pharmacology,(Switzerland), 2016, Vol.97, p.301-306
【0104】
本発明の薬剤の使用方法は、特に制限されないが、例えば、効率よく除菌するため、ある一定の空間内で、加湿器、撒布器、及び噴霧器等を用いて霧状に噴霧して使用することが好ましい。また、本発明の薬剤は、例えば、人間用に限定されず、人間以外の動物用としても使用できる。具体的には、例えば、動物の消臭用、及び、鳥インフルエンザ・豚インフルエンザなどの感染症予防用に使用できる。また、人間以外の動物用の用途としては、例えば、前述した人間用(人体用を含む)の用途として列挙した用途と同様の用途があげられる。さらに、本発明の薬剤は、例えば、畜産用薬剤としての用途がある。前記農畜産用薬剤は、例えば、農業用薬剤、畜産業用薬剤などとして使用できる。前記農業用薬剤は、例えば、農業用殺菌剤、農業用抗ウイルス剤、農業用消臭剤、農業用殺虫剤、農業用忌避剤、農業用土壌改良剤等として使用できる。また、前記畜産業用薬剤は、例えば、畜産業用殺菌剤、畜産業用抗ウイルス剤、畜産業用消臭剤、畜産業用殺虫剤、畜産業用忌避剤、畜産業用土壌改良剤等として使用できる。前記農畜産用薬剤は、例えば、一種類の用途に使用してもよいし、二種類以上の用途に使用してもよい。
【0105】
(3.抗菌剤及び抗菌方法)
本発明の薬剤は、例えば、抗菌剤として用いることができる。
【0106】
また、本発明の抗菌方法は、前述のように、本発明の製造方法及び接触工程を含む。前記接触工程は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源と、前記調製された抗病原体薬剤との少なくとも一方を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させる工程である。本発明の抗菌方法は、前記接触によって、抗菌を行うことができる。
【0107】
従来、抗菌剤として用いられているものは種々あるが、抗菌効果が十分でない。濃度を高くすることにより抗菌効果を高めることができるものもあるが、安全性に問題がある。本発明の薬剤を含む抗菌剤及び本発明の抗菌方法は、濃度が低くても十分な殺菌効果を有し、安全性が高い。
【0108】
(4.抗ウイルス剤及びウイルス不活性化方法)
本発明の薬剤は、例えば、抗ウイルス剤として用いることができる。
【0109】
また、本発明のウイルス不活性化方法は、前述のように、本発明の製造方法及び接触工程を含む。前記接触工程は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源と、前記調製された抗病原体薬剤との少なくとも一方を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させる工程である。本発明のウイルス不活性化方法は、前記接触によって、ウイルス不活性化を行うことができる。
【0110】
従来、抗ウイルス剤として用いられているものは種々あるが、抗ウイルス効果が十分でない。濃度を高くすることにより抗ウイルス効果を高めることができるものもあるが、安全性に問題がある。本発明の薬剤を含む抗ウイルス剤及び本発明のウイルス不活性化方法は、濃度が低くても十分な殺ウイルス効果を有し、安全性が高い。
【0111】
(5.消臭剤及び消臭方法)
本発明の薬剤は、例えば、消臭剤として用いることができる。本発明の消臭方法は、本発明の製造方法及び接触工程を含む。前記接触工程は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源と、前記調製された抗病原体薬剤との少なくとも一方を、対象物及び環境の少なくとも一方に接触させる工程である。本発明の消臭方法は、前記接触によって、消臭を行うことができる。なお、前記対象物及び環境には、病原体が含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。一般的に抗菌剤として用いられているエタノールなどの抗菌剤は、消臭効果を有していない。オゾンには、消臭効果があるが、安全性が極めて低い。また、他に販売されている商品の中には、抗菌及び消臭効果を有すると記載されているものもある。例えば、衣類に直接、又は室内、トイレ内、若しくは車内などで薬剤をスプレーして、抗菌及び消臭効果を謳う商品が存在する。このような商品の抗菌成分は、通常、第四級アンモニウム塩が用いられている。しかし、一般に用いられている第四級アンモニウム塩は、ラジカル発生源(例えば亜ハロゲン酸等)を併用していないために、高濃度としないと十分な抗菌効果が得られないことが多く、使用後にべとつく等の問題がある。また、第四級アンモニウム塩には、消臭効果がないので、別途、消臭成分が混合されている。消臭成分としては、シクロデキストリンが通常用いられているが、シクロデキストリンは、悪臭の原因となる成分を分解する能力はなく、悪臭の原因となる成分を単にマスキングしているだけであり、悪臭そのものを除去することができない。これに対し、本発明の薬剤を含む消臭剤及び本発明の消臭方法は、前述の作用機序を有することにより、例えば、高い抗菌効果を有し、且つ、例えば、悪臭の元となる物質を分解することができ、高い消臭効果を有する。
【0112】
(5.病原体処理装置及び病原体処理方法)
図1(A)及び(B)に、本発明の抗病原体薬剤の病原体処理装置1の一例の構成を示す。以下において、本発明の抗病原体薬剤の病原体処理装置を「本発明の病原体処理装置」という場合もある。
図1に示すように、本発明の病原体処理装置1は、ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤によって病原体を処理する病原体処理装置であって、オゾン供給機構10と、ラジカル発生源収容容器20と、放出機構30(図中では30a、30b、又は30c)とを含む。前記抗病原体薬剤は、特に制限されないが、例えば、前述した本発明の抗病原体薬剤である。
図1(A)は、オゾン供給機構10とラジカル発生源収容容器20とのそれぞれに対応する放出機構30a及び30bを含む一例であり、
図1(B)は、オゾン供給機構10とラジカル発生源収容容器20とが1つの放出機構30cを共有している一例である。オゾン供給機構10と、ラジカル発生源収容容器20とは、
図1(A)に示すように、それぞれが独立した装置であってもよいし、
図1(B)に示すように、一体成形型の装置であってもよい。以下にオゾン供給機構10、ラジカル発生源収容容器20、放出機構30について具体的に説明するが、これらの形態は、以下の形態に制限されない。
【0113】
オゾン供給機構10は、オゾンを供給する。具体的に、オゾン供給機構10は、例えば、オゾン生成機構の少なくとも一方を含んでもよい。
【0114】
前記オゾン生成機構は、オゾンを生成する。具体的に、前記オゾン生成機構は、例えば、前述の手法によりオゾンガス及びオゾン水等を生成可能な装置である。本発明の病原体処理装置1は、例えば、オゾンガスを生成する前記オゾン生成機構と、オゾンを生成する前記オゾン生成機構との双方を含んでもよい。
【0115】
ラジカル発生源収容容器20は、ラジカル発生源を収容する容器である。前記ラジカル発生源は、例えば、前述と同様である。ラジカル発生源収容容器20の材質は、ラジカル発生源を収容できればよく、特に制限されない。具体的には、例えば、樹脂製の遮光ケミカルタンク、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂製の容器等が挙げられる。また、ラジカル発生源収容容器20の大きさは、特に制限されず、例えば、室内に設置可能な大きさであることが好ましい。また、ラジカル発生源収容容器20の形状は、特に制限されず、例えば、四面体、六面体、八面体等の多面体、円柱、円錐、三角錐等がある。
【0116】
ラジカル発生源収容容器20は、例えば、さらに、ラジカル発生触媒を収容してもよい。前記ラジカル発生触媒は、例えば、前述と同様である。前記ラジカル発生触媒は、例えば、放出機構30を介して、前記ラジカル発生源と同時にラジカル発生源収容容器20から放出される。一方で、本発明の病原体処理装置1が、例えば、さらに、ラジカル発生触媒収容容器(図示せず)を含み、前記ラジカル発生触媒収容容器が、前記ラジカル発生触媒を収容してもよい。前記ラジカル発生触媒収容容器の材質は、前記ラジカル発生触媒を収容できればよく、特に制限されない。具体的には、例えば、樹脂製の遮光ケミカルタンク、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂製の容器等が挙げられる。また、前記ラジカル発生触媒収容容器の大きさは、特に制限されず、例えば、室内に設置可能な大きさであることが好ましい。また、前記ラジカル発生触媒収容容器の形状は、特に制限されず、例えば、四面体、六面体、八面体等の多面体、円柱、円錐、三角錐等がある。そして、前記ラジカル発生触媒収容容器は、前記ラジカル発生触媒を、後述の放出機構30を介して、病原体処理装置1外に放出する。
【0117】
オゾン供給機構10、ラジカル発生源収容容器20、及び前記ラジカル発生触媒収容容器の材質、大きさ、形状等は、異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0118】
前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方が、例えば、溶媒に溶解していてもよい。前記溶媒は、例えば、前述と同様である。
【0119】
オゾン供給機構10と、ラジカル発生源収容容器20とは、前記オゾン及び前記ラジカル発生源を、放出機構30を介して、病原体処理装置1外に放出する。そして、本発明の病原体処理装置1は、放出機構30により放出された前記オゾン及び前記ラジカル発生源を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させ、前記抗病原体薬剤を調製する。放出機構30は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源を放出できればよく、例えば、パイプ、ノズル、ファン等が挙げられるが、これに限定されない。具体的に、
図1(A)の場合は、例えば、前記オゾンは、放出機構30aを介して、病原体処理装置1外に放出される。また、
図1(A)の場合において、前記ラジカル発生源は、例えば、放出機構30bを介して、病原体処理装置1外に放出される。このように、オゾン供給機構10及びラジカル発生源収容容器20がそれぞれ異なる放出機構30を含む場合、放出機構30は、例えば、放出機構30の放出口が他の放出機構30の放出口と向かい合うように配置されてもよい。これにより、前記オゾン及び前記ラジカル発生源を効率良く反応(接触)させることが出来る。
【0120】
一方で、
図1(B)の場合は、例えば、前記オゾン及び前記ラジカル発生源は、放出機構30cを介して、病原体処理装置1外に放出される。本発明の病原体処理装置1は、例えば、抗菌・抗ウイルス効果を高めるために、前記オゾンを前記ラジカル発生源より先に放出することが好ましい。また、オゾン供給機構10及びラジカル発生源収容容器20は、前記オゾン及び前記ラジカル発生源の少なくとも一方を複数回放出してもよい。前記放出の形態は、特に制限されないが、例えば、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方は、同時又は別々に霧状に噴霧して放出してもよい。
【0121】
放出機構30の材質は、特に制限されない。また、放出機構30の大きさは、特に制限されず、例えば、室内に設置可能な大きさであることが好ましい。また、放出機構30の形状は、特に制限されず、例えば、四面体、六面体、八面体等の多面体、円柱、円錐、三角錐、等がある。オゾン供給機構10及びラジカル発生源収容容器20がそれぞれ異なる放出機構30を含む場合、各放出機構30の材質、大きさ、形状等は、異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0122】
本発明の病原体処理装置1は、例えば、前記オゾン及び前記ラジカル発生源を効率良く放出するために、ファン等の送風装置を含んでもよい。前記送風装置は、例えば、オゾン供給機構10、ラジカル発生源収容容器20、及び排出機構30の少なくとも一方に設けられていてもよい。また、本発明の病原体処理装置1は、例えば、前記オゾン及び前記ラジカル発生源の放出を制限するゲートを設けていてもよい。前記ゲートは、例えば、オゾン供給機構10及びラジカル発生源収容容器20と、排出機構30とが接する面に配置しもよいし、排出機構30内部に設置してもよい。
【0123】
本発明の病原体処理装置1において、オゾン供給機構10、ラジカル発生源収容容器20、排出機構30の数は、特に制限されず、1つでもよいし、2つ以上あってもよい。
【0124】
次に、本発明の抗病原体薬剤の病原体処理方法について説明する。以下において、本発明の抗病原体薬剤の病原体処理方法を「本発明の病原体処理方法」という場合もある。本発明の病原体処理方法は、例えば、
図1の病原体処理装置1を用いて、次のように実施する。なお、本発明の病原体処理方法は、
図1の病原体処理装置1の使用には限定されない。
【0125】
本発明の病原体処理方法は、ラジカル発生源と、オゾンとを含む抗病原体薬剤によって病原体を処理する病原体処理方法であって、放出工程、調製工程、及び接触工程を含む。前記抗病原体薬剤は、特に制限されないが、例えば、前述した本発明の抗病原体薬剤である。本発明の病原体処理方法は、まず、前記放出工程として、前記オゾン及び前記ラジカル発生源を同時又は別々に放出する。前記オゾン及び前記ラジカル発生源は、例えば、前述と同様である。前記放出工程は、例えば、前記オゾンを前記ラジカル発生源より先に放出することが好ましい。また、前記放出工程は、例えば、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方を1回放出してもよいし、複数回放出してもよい。具体的には、例えば、前述と同様である。さらに、前記放出工程は、例えば、前記ラジカル発生源及び前記オゾンの少なくとも一方を霧状に噴霧して放出してもよい。
【0126】
次に、調製工程として、前記放出によって前記抗病原体薬剤を調製する。具体的には、例えば、前記オゾン及び前記ラジカル発生源が反応して、反応生成物(例えば、二酸化塩素等)を生成することをいう。
【0127】
次に、接触工程として、前記放出された前記オゾン及び前記ラジカル発生源を、病原体を含む対象物及び環境の少なくとも一方に接触させる。前記接触工程は、例えば、前記調製工程と並行して実施されてもよい。すなわち、本発明の病原体処理方法は、例えば、前記オゾン及び前記ラジカル発生源を前記対象物等と接触しながら、且つ前記調製を実施する。
【0128】
本発明の病原体処理方法は、例えば、さらに、オゾンを供給するオゾン供給工程を含んでもよい。前記オゾン供給工程は、例えば、前記放出工程の前に実行される。前記オゾン供給工程は、例えば、オゾンを生成するオゾン生成工程を含む。オゾンの生成は、例えば、前述と同様である。前記オゾン生成工程は、例えば、オゾンガスを生成してもよいし、オゾン水を生成してもよいし、オゾンガスとオゾン水の双方を生成してもよい。
【0129】
本発明の病原体処理方法は、例えば、さらに、ラジカル発生源をラジカル発生源収容容器20に収容するラジカル発生源収容工程を含んでもよい。前記ラジカル発生源収容工程は、例えば、前記放出工程の前に実行される。前記オゾン供給工程と前記ラジカル発生源収容工程は、並行して実行してもよいし、順番に実行してもよい。前記順番は、特に制限されない。前記収容は、特に制限されず、ラジカル発生源収容容器20内に前記ラジカル発生源を収めることができればよい。
【0130】
また、前記ラジカル発生源収容工程において、さらに、前記ラジカル発生触媒を前記ラジカル発生源収容容器に収容してもよい。この場合、本発明の病原体処理方法は、前記放出工程において、前記ラジカル発生源と同時に前記ラジカル発生触媒をラジカル発生源収容容器20外に放出する。そして、本発明の病原体処理方法は、前記調製工程において、前記放出した前記ラジカル発生触媒により、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を触媒して前記抗病原体薬剤を調製する。
【0131】
一方で、本発明の病原体処理方法は、例えば、さらに、ラジカル発生触媒収容工程を含んでもよい。前記ラジカル発生触媒収容工程は、前記ラジカル発生触媒を前記ラジカル発生触媒収容容器に収容する工程である。この場合、本発明の病原体処理方法は、前記放出工程において、さらに、前記ラジカル発生触媒を放出する。前記ラジカル発生触媒の放出は、例えば、前記ラジカル発生源と同時、前記ラジカル発生源の放出直前、及び前記ラジカル発生源の放出直後の少なくとも一つであることが好ましい。そして、本発明の病原体処理方法は、前記調製工程において、前記放出した前記ラジカル発生触媒により、前記ラジカル発生源からのラジカル発生を触媒して前記抗病原体薬剤を調製する。
【0132】
本発明の病原体処理装置及び本発明の病原体処理方法は、安全性が高く、且つ高い抗菌・抗ウイルス効果を有する本発明の薬剤を供給することができる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例には限定されない。
【0134】
[参考例1]
本参考例では、室内空間において、オゾンガスの噴霧後にラジカル発生源を噴霧することで、オゾンが分解されることを確認した。
【0135】
まず、ラジカル発生源を含む薬剤の調整方法について説明する。亜塩素酸ナトリウム5gを精製水に溶かし100mLとし、4万ppmの亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た(A液)。ベンゼトニウムクロリド0.1gを精製水100mLに溶かし、1000ppm水溶液100mLを作った(B液)。0.1Mリン酸・NaOHバッファー(pH=9.5)を準備した。pH7の精製水600mLに10倍に希釈したA液20mL、及びバッファー80mLを入れた後、B液80mLを入れ、精製水を加え800mLとし、ラジカル発生源を含む薬剤を得た。この薬剤は、NaClO2及び塩化ベンゼトニウムを含む水溶液であった。この薬剤に、pH緩衝液を加えてpH5.35に調整した。以下、前記ラジカル発生源を含む薬剤をMA-Tともいう。
【0136】
次に、オゾンガスとMA-Tとを接触させる方法について説明する。まず、20m2の広さの室内に、オゾン発生器(メーカー名:ジェネテック合同会社、メーカー型番:AZ291(EASY-30)、ブランド名:OzoneTechnologies)を設置し、3分間稼働させた。オゾン発生器の稼働から3分後における前記室内のオゾン濃度を、ガス検知管(光明理化学工業(株)製の北川式ガス検知管(検知管名:182U オゾン、測定範囲:0.025~3.0ppm))を用いて測定したところ、2~2.5ppmであった。なお、前記室内は、常温常圧である。次に、前記室内に噴霧器を配置し、前記噴霧器によりMA-Tを5分間噴霧した。前記MA-Tの噴霧後、前記室内のオゾン濃度を、ガス検知管(光明理化学工業(株)製の北川式ガス検知管(検知管名:182U オゾン、測定範囲:0.025~3.0ppm))を用いて測定した。
【0137】
測定した結果、前記MA-Tの噴霧後の前記室内のオゾン濃度は、0.2ppmであった。
【0138】
[参考例2]
本参考例では、水溶液中において、オゾンガスとラジカル発生源とを反応させることで、オゾンが分解されることを確認した。前記ラジカル発生源としては、前記参考例1に記載のMA-Tを使用した。
【0139】
まず、セルに亜塩素酸水溶液(250ppm)を4ml入れた。次に、ドラフト内に設置した発泡スチロールの箱内でオゾン発生器より発生させたオゾンを25mlシリンジで20ml取り出した。そして、亜塩素酸水溶液(250ppm)が入っている前記セル内で、前記オゾンが入っている前記シリンジによるバブリングを行った。前記バブリング後の前記セル内の吸光度を分光光度計にて測定した。
【0140】
吸光度の結果を
図2に示す。
図2のグラフにおいて、縦軸は、吸光度を意味し、横軸は、波長を意味する。
図2に示すように、二酸化塩素の発生が確認された。すなわち、水溶液中において、亜塩素酸がオゾンを還元し、亜塩素酸は二酸化塩素になったことが確認された。
【0141】
[実施例1]
オゾンガスとラジカル発生源とを反応させて、発生した二酸化塩素が抗菌・抗ウイルス効果、消臭効果を奏することを確認した。
【0142】
(実験例1)
実験例1では、菌A含有体を用いて、二酸化塩素による殺菌作用を調べた。菌Aは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli MV1184)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、う蝕菌(Streptcoccus mutans)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、トレポネーマデンチコーラ(Treponema denticola)、タネレラ・フォーサイセンシス(Tannerella fosythensis)、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、溶連菌、枯草菌、カンジタ(Candida albicans)のうちのいずれか一種である。前記菌A含有体は、液体培地又は寒天培地である。前記菌Aは、バイオフィルムを形成してもよい。
【0143】
前記菌A含有体にオゾンガスとラジカル発生源とを接触させて発生した二酸化塩素を接触させた。オゾンガスとラジカル発生源との接触は、参考例1又は2と同様に行った。前記接触後、前記菌A含有体を培養した。その結果、前記二酸化塩素は、前記菌Aに作用し、殺菌効果を示すことが確認された。
【0144】
(実験例2)
実験例2では、タバコ由来の煙を用いて、脱臭性能試験を行った。脱臭性能試験は、日本電機工業会規格JEM1467「家庭用空気清浄機」に準拠して行った。測定は、内容積1m3のアクリル容器(縦1m×横1m×奥行1m)内で、攪拌機を作動させ、タバコを燃焼させ、煙を充満させた。全てのタバコの燃焼が終了した後、攪拌機を停止、噴霧器を稼働させてオゾンガスとラジカル発生源と噴霧し、容器内のアンモニア、アセトアルデヒド、及び酢酸の3成分の濃度について一定時間毎に2時間測定し、濃度変化を追跡した。同様に、アクリル容器にホルムアルデヒド蒸気を注入し、容器内のホルムアルデヒド濃度について一定時間毎に2時間測定し、濃度変化を追跡した。なお、噴霧器は‘Manual’で運転した。悪臭成分の測定は、検知管(ガステック社製)により実施した。脱臭性能試験の結果、オゾンガスとラジカル発生源との噴霧による脱臭効果が確認された。
【0145】
(実験例3)
噴霧器でオゾンガスとラジカル発生源とを噴霧して、タバコ臭の脱臭性能を測定した。まず、広さ6畳相当の室内でタバコを燃焼させ、煙を充満させて一定濃度とした。次に、噴霧器を配置し、稼働前、稼働1時間後、稼働2時間後の3回、部屋の臭気強度を測定した。噴霧器の配置は部屋の壁際であり、臭気の採取は部屋中央の高さ1mの位置とした。部屋には撹拌用ファンを2台設置し、常時撹拌状態とした。なお、噴霧器は‘Manual’で運転した。臭気強度を測定した結果、オゾンガスとラジカル発生源との噴霧による脱臭効果が確認された。
【0146】
(実験例4)
噴霧器でオゾンガスとラジカル発生源とを噴霧して、浮遊菌(一般細菌、真菌)の除去性能を測定した。まず、広さ6畳相当の室内に噴霧器を配置し、稼働前、稼働1時間後、稼働2時間後の3回、空気中の浮遊菌の濃度を測定した。噴霧器の配置は部屋の壁際であり、浮遊菌の採取は部屋中央の高さ1mの位置とした。部屋には撹拌用ファンを2台設置し、常時撹拌状態とした。浮遊菌の測定は、メンブランフィルタによる濾過捕集法により実施した。なお、噴霧器は‘Manual’で運転した。浮遊菌(一般細菌、真菌)の除去性能を測定した結果、オゾンガスとラジカル発生源とを噴霧すると、浮遊菌の数が減少することが確認された。
【0147】
(実験例5)
機器分析実施マニュアル;検知管法,ガスクロマトグラフィー法((社)繊維評価技術協議会 消臭加工繊維製品認証基準 準用)の記載に従って、オゾンガスとラジカル発生源とを接触させて発生した二酸化塩素を用いて消臭試験を行った。その結果、前記二酸化塩素による消臭効果が確認された。
【0148】
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0149】
この出願は、2020年10月9日に出願された日本出願特願2020-171087を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、安全性が高く、且つ高い抗菌効果及び抗ウイルス効果を有する抗病原体薬剤を提供することができる。本発明の抗病原体薬剤の用途は、特に限定されず、広範な用途に利用可能である。