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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】種シート製造装置及び種シート
(51)【国際特許分類】
   A01C 1/04 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
A01C1/04 U
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022567725
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045441
(87)【国際公開番号】W WO2022123621
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000145378
【氏名又は名称】株式会社秀峰
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 貢治
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-91816(JP,A)
【文献】米国特許第5073401(US,A)
【文献】特開平3-297306(JP,A)
【文献】特開平1-171404(JP,A)
【文献】実開昭53-27030(JP,U)
【文献】特開平2-156810(JP,A)
【文献】特開平11-313511(JP,A)
【文献】特開平4-112705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子と流動体が混合されたペーストを貯留するペースト溜まりと、
前記ペースト溜まりの上方に配置された版シリンダと、
前記版シリンダの表面に付着した前記ペーストの一部を掻き取るドクターブレードと、
前記版シリンダに対向し、前記版シリンダの表面との隙間に台紙を通過させる様に配置された圧着ローラーと、
前記隙間に前記台紙を送り出す供給部と、
前記隙間を通過した前記台紙を回収する回収部と、を備える、種シート製造装置。
【請求項2】
前記版シリンダの表面は、
凹みであるセルが形成されている、請求項1に記載の種シート製造装置。
【請求項3】
前記台紙の表面に付着した前記ペーストを硬化させる定着機を更に備える、請求項1又は2に記載の種シート製造装置。
【請求項4】
台紙と、前記台紙の表面に所定のパターンで配置されたペーストを硬化して形成された複数の印刷要素と、を備え、
前記ペーストは、
少なくとも糊を含む流動体と種子とを混合して形成され、
前記複数の印刷要素のうち少なくとも2つの印刷要素は、
それぞれ異なる種類の種子を内部に含む、種シート。
【請求項5】
前記ペーストは、
薬品又は肥料を含む、請求項4に記載の種シート。
【請求項6】
前記台紙の長手方向に沿って位置決め孔が複数並べられている、請求項4又は5に記載の種シート。
【請求項7】
前記複数の印刷要素は、
複数の層から形成される、請求項4~の何れか1項に記載の種シート。
【請求項8】
前記複数の印刷要素は
所定の絵柄を形成している、請求項4~の何れか1項に記載の種シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷方式による種シート製造装置及び種シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種シートとして、シート状の紙等でできた基材に必要な大きさの接着剤を塗布し、その接着剤によって植物の種子を基材に固定したものが知られている。種シートは、種シート製造装置により製造される。種シート製造装置は、長尺の台紙を供給する台紙供給部と、台紙の一面に接着剤を適用させる接着剤適用部と、一面に種子を載置する種子載置部と、付着しなかった種子を除去する除去部と、種子固定部と、を備える。種子固定部は、一対のローラーにより台紙を挟みローラーの圧力により台紙に凹部を形成し、種子がその凹部の中に埋設されることにより、種子を台紙に固定する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6647585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている種シートは、水に分解可能な薄い台紙に接着剤と種とを配置する工程と、ロールにより圧力を加えて圧着させる工程とを経て製造されている。そのため、製造速度を上げると台紙に張力が掛かり、台紙が破損し、工程が多く複雑になるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、製造速度を上げることができる種シート製造装置及び種シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る種シート製造装置は、種子と流動体が混合されたペーストを貯留するペースト溜まりと、前記ペースト溜まりの上方に配置された版シリンダと、前記版シリンダの表面に付着した前記ペーストの一部を掻き取るドクターブレードと、前記版シリンダに対向し、前記版シリンダの表面との隙間に台紙を通過させる様に配置された圧着ローラーと、前記隙間に前記台紙を送り出す供給部と、前記隙間を通過した前記台紙を回収する回収部と、を備える。
【0007】
本発明に係る種シートは、台紙と、前記台紙の表面に所定のパターンで配置されたペーストを硬化して形成された複数の印刷要素と、を備え、前記ペーストは、少なくとも糊を含む流動体と種子とを混合して形成され、前記複数の印刷要素のうち少なくとも2つの印刷要素は、それぞれ異なる種類の種子を内部に含む
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、台紙に種及び接着剤等が混合されたペーストを印刷要素として印刷された構造であるため、種シート製造装置上で台紙に力を加える箇所を少なくすることができ、台紙の破損を抑制することができる。また、本発明は、印刷により台紙に種を固定するため、種シートの製造速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る種シート製造装置100の主要部の模式図である。
図2】実施の形態1に係る種シート10の断面構造の模式図である。
図3図2の種シート10を台紙表面11a側から見た平面図である。
図4】実施の形態2に係る種シート製造装置200の主要部の模式図である。
図5】実施の形態2に係る種シート210の断面構造の模式図である。
図6図5の種シート210を台紙表面11a側から見た平面図である。
図7】実施の形態3に係る種シート製造装置300の主要部の模式図である。
図8】実施の形態3に係る種シート製造装置300により製造された種シート310を台紙表面11a側から見た平面図である。
図9図8の種シート310を再度種シート製造装置300に通した後の種シート310aの台紙表面11a側から見た平面図である。
図10】実施の形態3に係る種シート製造装置300により製造された種シート310の変形例である種シート310bを台紙表面11a側から見た平面図である。
図11図10の種シート310を再度種シート製造装置300に通した後の種シート310cの台紙表面11a側から見た平面図である。
図12】種シート310bを再度種シート製造装置300に通した後の種シート310b1の台紙表面11a側から見た平面図である。
図13】種シート310b1を再度種シート製造装置300に通した後の種シート310b2の台紙表面11a側から見た平面図である。
図14】実施の形態4に係る種シート410aの断面構造の説明図である。
図15】実施の形態4に係る種シート410aの変形例である種シート410bの断面構造の説明図である。
図16】実施の形態4に係る種シート410aの変形例である種シート410cの断面構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明に係る種シート及び種シートの製造装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図において同じ部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各図は模式的に描かれたものであって、本発明は図示された形状のみに限定されるものではない。
【0011】
<種シート製造装置100>
図1は、実施の形態1に係る種シート製造装置100の主要部の模式図である。図2は、実施の形態1に係る種シート10の断面構造の模式図である。図3は、図2の種シート10を台紙表面11a側から見た平面図である。種シート製造装置100は、植物の種子57が混合されたペースト50を台紙11の表面に印刷する装置である。つまり、種シート製造装置100は、印刷対象物である台紙11の表面に、ペースト50により形成される印刷要素56を形成し、印刷物である種シート10を得るためのものである。ペースト50は、通常の印刷においてはインクに相当し、印刷要素56は、通常の印刷においてインクで形成される文字や画像を構成する1ドットに相当する。種シート製造装置100は、例えばグラビア印刷機と同様な構成を有する。即ち、種シート製造装置100は、版シリンダ20と、圧着ローラー30と、を備える。そして、版シリンダ20の表面には凹みであるセル22が形成されている。種シート製造装置100は、台紙11を版シリンダ20の表面に押しつけることにより、セル22に充填されたペースト50を台紙表面11aに転写するものである。
【0012】
種シート製造装置100は、台紙11を版シリンダ20の表面に押しつける圧着ローラー30を備える。圧着ローラー30は、表面が版シリンダ20の表面に対向し、圧着ローラー30の表面30aと版シリンダ20の表面24との間に、台紙11が挟まれるように配置されている。台紙11は、連続的に圧着ローラー30と版シリンダ20との隙間40に送りこまれる。
【0013】
種シート製造装置100は、送りローラー31、32、33、34を備える。送りローラー31、32、33、34は、長尺のシートである台紙11を支持するものである。送りローラー31、32、33、34は、数量及び配置を適宜変更することができる。
【0014】
種シート製造装置100は、台紙11を供給する供給部(図示なし)及び種シート10を巻き取って回収する回収部36を備える。種シート10の台紙11は、例えば紙、織物又はフィルムがロール状になっているものである。なお、台紙11として、不織紙、不織布又は水溶性フィルムを用いることができる。供給部にはロール状の台紙11が設置され、ロールから台紙11が送り出される。印刷後の台紙11は、回収部36において巻き取られ、ロール状の種シート10として回収される。ただし、供給部及び回収部36は、必ずしもロール状になっているものに限定されるものではない。例えば、種シート10は、回収部36において所定の長さに切断されて、複数の種シート10として回収されても良い。
【0015】
種シート製造装置100は、ペースト溜まり51を備える。ペースト溜まり51は、内部にペースト50が充填され、版シリンダ20の下部がペースト50に浸るように構成されている。版シリンダ20は、ペースト溜まり51においてペースト50を表面24に付着させる。表面24に付着したペースト53は、版シリンダ20の表面24の凸部21及びセル22の上に載置された状態で圧着ローラー30側へ移動する。なお、版シリンダ20は、直接ペースト50に浸されていなくとも良い。例えば、ペースト溜まり51のペースト50に浸されたローラー(図示なし)を介して間接的に版シリンダ20の表面24にペースト50を付着させても良い。
【0016】
版シリンダ20の上部には、ドクターブレード23が当接する。ドクターブレード23は、版シリンダ20が回転し、版シリンダ20の表面24が圧着ローラー30に近づく前の位置において、表面24の余分なペースト50を掻き取るように配置されている。ドクターブレード23は、凸部21の表面上のペースト50を掻き取り、セル22にペースト54を残す。これにより、版シリンダ20の表面24が隙間40に至るときには、版シリンダ20の表面24のセル22にのみペースト50が配置されている。
【0017】
版シリンダ20の表面24において、セル22は、配置及び形状を適宜変更することができる。例えば、種子57を配置する間隔に応じて、セル22の間隔を適宜変更しても良い。また、所定の図柄になる様にセル22を配置することにより、種子57を所定の図柄になる様に配置できる。そして、種シート10を土壌表面にそのまま敷設することにより、例えば種子57から育った植物の花で所定の図柄を形成することも容易に行える。
【0018】
版シリンダ20と圧着ローラー30との隙間40において、台紙11は、版シリンダ20の表面24に押しつけられる。セル22内のペースト54は、台紙表面11aに付着する。つまり、版シリンダ20から台紙11にペースト54が転写される。
【0019】
版シリンダ20及び圧着ローラー30と回収部36との間には、定着機35が配置されている。定着機35は、印刷要素56を固化させて台紙表面11aに固定するためのものである。定着機35は、例えば乾燥機であり温風により印刷要素56の表面を固化させる。又は、定着機35は、表面温度の高いローラーを押しつけて印刷要素56を固化しても良い。なお、種シート製造装置100は、定着機35を備えず、自然乾燥により印刷要素56を固化しても良い。
【0020】
以上のように、実施の形態1に係る種シート製造装置100は、種子57と流動体58が混合されたペースト50を貯留するペースト溜まり51と、ペースト溜まり51の上方に配置された版シリンダ20と、版シリンダ20の表面に付着したペースト50であり凹部からはみ出しているペースト53を掻き取るドクターブレード23と、版シリンダ20の表面24との間に台紙11を挟んで通過させる圧着ローラー30とを備える。また、種シート製造装置100は、台紙11を隙間40に供給する供給部と、隙間40を通過した台紙11を回収する回収部36と、を備える。この構成により、種シート製造装置100は、種子57を含む流動体58を、隙間40において台紙11に転写することにより種シート10を製造することができる。種シート製造装置100は、版シリンダ20と圧着ローラー30との隙間40において面方向に挟まれるだけで、台紙11に力が加わる工程が最小限に構成されている。よって、種シート製造装置100は、台紙11が破損しにくく、台紙11の送り速度を増加させることができる。
【0021】
また、版シリンダ20の表面24は、凹みであるセル22が形成されている。この構成により、セル22に種子57を含む印刷要素56が配置され、台紙表面11aに転写される。そのため、種シート10は、所定の間隔に種子57が配置される。セル22の間隔を適宜変更することにより、種シート10は、様々な環境に応じて容易に種子57を配置することができる。
【0022】
さらに、種シート製造装置100は、印刷要素56を硬化させる定着機35を備える。この構成により、印刷要素56は、より確実に台紙表面11aに固定される。また、定着機35が迅速に印刷要素56を硬化させることにより、種シート10の製造速度を増加させることができる。
【0023】
<種シート10>
以上のように、種シート製造装置100は、台紙11に種子57を含むペースト50を印刷することにより、種子57を台紙表面11a上に所定のパターンに配置することができる。図2及び図3は、種シート10の一部の構造を示している。台紙表面11aには、所定のパターンに配置された印刷要素56が載置されている。台紙表面11aに配置された複数の印刷要素56は、流動体58と種子57とから構成されている。流動体58は、ペースト50に含まれる水、糊、デンプンなどから構成されており、図2及び図3に示される種シート10が完成した状態においては、固化しており、流動しない。
【0024】
印刷要素56は、それぞれ少なくとも1つの種子57を内部に含んでいる。なお、それぞれの印刷要素56は、複数の種子57を含んでいてもよい。また、実際には台紙表面11a上に配置された複数の印刷要素56のうち一部は、種子57が含まれてない場合もあり得る。
【0025】
ペースト50は、例えば水糊及び種子57を混合して形成される。ペースト50には、更に水、デンプン、肥料及び薬品などが含まれていても良い。ペースト50は、版シリンダ20の表面24及び台紙表面11aに付着できる程度の粘度を有する。種子57は、ペースト50に所定の密度で分布しており、セル22内に種子57が配置されるような密度に調整してペースト50に混合される。種子57の大きさにより、セル22の大きさは適宜調整される。
【0026】
通常、花、芝生及び苔などの植物の種子57は、土壌に蒔かれて生育される。また、米は、一般的に苗に育てられた状態で田に植えられるが、近年は種を直接田に植える場合もある。上記において説明した種シート10は、印刷要素56が所定のパターンに配置されており、土壌に貼り付けるだけで、種子57を所定の間隔に配置することができる。種シート10の台紙表面11aに印刷された印刷要素56は、例えば大部分が糊で構成されており、土壌に種シート10が配置された後に水を撒くことにより水分を含み、種子57を発芽させることができる。
【0027】
種シート10は、シート形状であるため、種子57を粒のままにしておくよりも取り扱いが容易である。また、種シート10の印刷要素56は、肥料を含ませることにより、種子57を発芽させた後の養分とすることができる。
【0028】
実施の形態2.
実施の形態2に係る種シート製造装置200及び種シート210について説明する。種シート製造装置200は、実施の形態1に係る種シート製造装置100に対し版シリンダ20の形状を変更したものである。なお、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図4は、実施の形態2に係る種シート製造装置200の主要部の模式図である。図5は、実施の形態2に係る種シート210の断面構造の模式図である。図6は、図5の種シート210を台紙表面11a側から見た平面図である。実施の形態2に係る種シート製造装置200においては、版シリンダ220は、セル22を有しておらず、表面224が1つの連続した円筒面として形成されている。変形例においても、版シリンダ220は、下部がペースト溜まり51内のペースト50に浸されており、所定の厚さのペースト50が付着する。そして、ドクターブレード23は、版シリンダ220の表面224に付着したペースト253を、所定の厚さのペースト254に調整する。台紙11と版シリンダ220の表面224との隙間は、ペースト254の厚さよりも狭くなる様に設定されており、ペースト254は、台紙表面11aに付着する。そして、台紙表面11aには、種子57を含む印刷要素256の層が均一に形成される。
【0030】
実施の形態2に係る種シート製造装置200においては、種シート210は台紙表面11aに均一に印刷要素256の層を形成する。種子57がペースト50の内部に均一分散するように混合することにより、台紙表面11aに固定された印刷要素256は、例えば図3に示される様に全体的には均一な密度で種子57含む。印刷要素256内に含まれる種子57同士の間隔は、ペースト50の流動体58の量に対する種子57の数の比により調整される。つまり、流動体58の単位量当たりの種子57の数が少なければ、種子57同士の間隔の平均値は大きくなり、多ければ種子57同士の間隔の平均値は小さくなる。ただし、種シート210において、種子57の配置は不規則である。
【0031】
種シート210は、印刷要素256が1つの層として台紙表面11aに固定されているため、台紙11の単体強度が低くても比較的強度が高くなる。また、印刷要素256は、種子57以外の糊や肥料などの成分を多く含むことができるという利点がある。
【0032】
実施の形態3.
実施の形態3に係る種シート製造装置300及び種シート310について説明する。種シート製造装置300は、実施の形態1に係る種シート製造装置100に対し版シリンダ20の形状を変更したものである。なお、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図7は、実施の形態3に係る種シート製造装置300の主要部の模式図である。実施の形態3に係る種シート製造装置300は、実施の形態1に係る種シート製造装置100に対し版シリンダ20のセル22の配置を変更したものである。種シート製造装置300の版シリンダ320は、セル22のピッチが実施の形態1に係る版シリンダ20のセル22よりも広く設定されている。
【0034】
図8は、実施の形態3に係る種シート製造装置300により製造された種シート310を台紙表面11a側から見た平面図である。種シート310は、実施の形態1の種シート製造装置100により製造された種シート10と比較して、台紙11の送り方向における各ペーストのピッチが広く形成されている。
【0035】
図9は、図8の種シート310を再度種シート製造装置300に通した後の種シート310aの台紙表面11a側から見た平面図である。種シート製造装置300により印刷要素56が印刷された種シート310は、台紙11の送り方向における印刷要素56の間隔が広い。その種シート310を再度種シート製造装置300に通すことにより、種シート製造装置300は、1回目に印刷された印刷要素56の間に印刷要素56aを配置する。印刷要素56aは、印刷要素56に含まれる種子57とは異なる種子57aを含む。
【0036】
2回目の印刷要素56aを台紙11に印刷する際に、印刷要素56aを印刷要素56の間に配置させるために、台紙11は、位置決め孔12を複数備える。位置決め孔12は、例えば台紙11の幅方向の両端に等間隔に設けられている。種シート製造装置300は、版シリンダ320、圧着ローラー30又は送りローラー31~34に位置決め孔12に挿入されるピンを備えることにより、印刷要素56及び56aの台紙表面11aに配置される位置を制御することができる。なお、印刷要素56aの配置の制御は、位置決め孔12とピンとを用いて制御する形態に限定するものではない。例えば、センサー等を用いて台紙11の送り速度を制御しても良い。
【0037】
図9において種シート310は、2種類の種子57及び57aが隣り合って配置されているが、さらに多くの種類の種子が配置されるようにすることも可能である。
【0038】
図10は、実施の形態3に係る種シート製造装置300により製造された種シート310の変形例である種シート310bを台紙表面11a側から見た平面図である。種シート310bは、実施の形態1の種シート製造装置100により製造された種シート10と比較して、台紙11の送り方向だけでなく幅方向においても各ペーストのピッチが広く形成されている。例えば、版シリンダ320に設けられたセル22の回転方向の間隔を広げるだけでなく、セル22の幅方向の間隔も広げることにより、種シート製造装置300は、さらに多くの種類の種子を配置できる。
【0039】
図11は、図10の種シート310を再度種シート製造装置300に通した後の種シート310cの台紙表面11a側から見た平面図である。種シート310cは、異なる種子57、57a、57b及び57cをそれぞれ含む印刷要素56、56a、56b及び56cが単位区画あたりに一つずつ配置されている。例えば、種子57、57a、57b及び57cは、それぞれが開花する時期が異なる花の種子である。このように、単位区画あたりに異なる種類の種子を配置することにより、一つの種シート310bを花壇などの地面に配置することにより、時期ごとに異なる花が開花する花壇を容易に設置することが可能となる。
【0040】
図11に示されている種シート310cを作る手順としては、製造された図10の種シート310bを種シート製造装置300に複数回通すことにより製造される。種シート製造装置300は、複数台直列に並べられ、種シート310が複数台の種シート製造装置300を順次通過するように構成され、連続的に印刷要素56、56a、56b及び56cを配置しても良い。又は、一台の種シート製造装置300の設定を変更して異なるペーストをシートに配置できるようにし、種シート310を同じ種シート製造装置300に複数回通すことにより種シート310cを製造しても良い。
【0041】
図12は、種シート310bを再度種シート製造装置300に通した後の種シート310b1の台紙表面11a側から見た平面図である。種シート310bに配置された印刷要素56に対し、台紙の送り方向に一つ分だけずらして印刷要素56aを配置すると種シート310b1が出来上がる。種シート310b1は、位置決め孔12を用いて印刷要素56aの配置を決めることができる。印刷要素56及び印刷要素56aの配置の間隔は等しいため、種シート製造装置300は、版シリンダ320を変更することなく、台紙を送り込む最初の位置決めをすることにより、印刷要素56aを印刷要素56に対しずらして配置することができる。
【0042】
図13は、種シート310b1を再度種シート製造装置300に通した後の種シート310b2の台紙表面11a側から見た平面図である。種シート310b2においては、さらに印刷要素56bが印刷要素56及び56aに対し台紙送り方向にずらして配置されている。種シート製造装置300は、版シリンダ320を変更することなく、台紙を送り込む最初の位置決めをすることにより、印刷要素56bを印刷要素56及び56aに対しずらして配置することができる。
【0043】
以上のように、種シート製造装置300によれば、種シート310の表面の単位区画あたりに複数の異なる種類の種が少なくとも一つずつ配置された種シート310cを製造することができる。また、種シート310の表面の単位区画当たりに同じ種類の複数の種が配置されていても良い。さらに、台紙11の長手方向に沿って位置決め孔12が複数並べられており、この位置決め孔12により印刷要素56、56a、56b及び56cの配置を制御することができる。位置決め孔12の配置は、印刷要素56等の配置に応じて適宜変更することができる。位置決め孔12は、台紙にあらかじめ設けられているものでなくともよく、台紙11を版シリンダ320や送りローラー31~34に通されることにより開けられたものであっても良い。
【0044】
図10図13を用いて説明した印刷要素56、56a、56b及び56cの配置は、一例であり、配置パターン及び配置されるペーストの種類を変更することができる。種シート製造装置300は、版シリンダ320に設けられているセル22のパターンを変更することにより、さらに複雑なペーストの配置を実現できる。
【0045】
例えば、実施の形態3において印刷要素56、56a、56b及び56cを構成する流動体58が着色されており、種シート310の印刷要素56、56a、56b及び56cの配置により所定の絵柄を形成する様に構成されていても良い。つまり、種シート製造装置300は、複数の種類の印刷要素56を台紙11上に自在に配置することが可能となっているため、複数の種類の印刷要素56の配置を調整することにより絵柄を自由に形成することができる。
【0046】
種シート310に絵柄を形成する場合、まず種シート製造装置300に台紙11を通し、印刷要素56を所定の位置に配置する。このとき版シリンダ320に形成されるセル22に応じて印刷要素56の位置は自在に調整できる。次に表面に印刷要素56が配置された台紙を種シート製造装置300に通し、印刷要素56とは異なる色に着色された印刷要素56aを配置する。この種シート製造装置300に台紙11を通す工程を任意の回数繰り返すことにより、複数の異なる色の印刷要素が台紙11上に配置され、所定の絵柄を形成することができる。なお、種シート310は、複数の種シート製造装置300により製造されても良いし、同一の種シート製造装置300に複数回通されて製造されても良い。
【0047】
実施の形態4.
実施の形態4に係る種シート410aについて説明する。種シート410aは、種シート製造装置100により製造されるものであり、実施の形態1に係る種シート10に対し印刷要素56が多層で形成されていることが変更点である。実施の形態4については、実施の形態1~3に対する変更点を中心に説明し、同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図14は、実施の形態4に係る種シート410aの断面構造の説明図である。種シート410aの表面に配置された印刷要素56は、それぞれ多層構造を有している。印刷要素56の最下層である第1層456aは、実施の形態1及び3に示される印刷要素56、56a、56b及び56cと同じ構造に形成されており、その上に第2層456bが載置されている。第2層456bを形成する流動体458は、例えば除草剤などの薬品が混合されたペースト、肥料が含まれるペースト、又は装飾用の色が付いたペーストであっても良い。また、種シート410aは、さらに多くの層から形成されていても良い。なお、各層が積み重ねられる順番は、図14の形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0049】
種シート410aは、実施の形態1及び3と同様な種シート製造装置100又は300により製造することができる。種シート製造装置100及び300は、適宜版シリンダ20及び320を交換しながら、種シート410aを複数回通して印刷要素56を多層にする。または、種シート製造装置100及び300は、複数の種シート製造装置100及び300を直列に接続して、連続的に第1層456a及び第2層456bを印刷しても良い。
【0050】
図15は、実施の形態4に係る種シート410aの変形例である種シート410bの断面構造の説明図である。種シート410bの印刷要素56は、種シート410aと同じく多層構造に形成されているが、各印刷要素が分離して配置されているのではなく、台紙表面11a上に単一の印刷要素456が配置されており、その印刷要素456が多層構造になっている。つまり、実施の形態2に係る種シート210の印刷要素256を多層にしたものである。
【0051】
図16は、実施の形態4に係る種シート410aの変形例である種シート410cの断面構造の説明図である。種シート410cは、第1層456aが分離して配置されているが、第2層456bが単一のペーストとして形成されている。第2層456bは、分離した複数の印刷要素で形成された第1層456aの上を覆う様に配置されている印刷要素である。なお、図16において、第2層456bの表面は直線的に表示されているが、第1層456aにより形成される凹凸形状に応じて表面が凹凸に形成されていても良い。また、図16において第1層456a同士の間には空間が表示されているが、実際には第2層456bを構成する流動体458で埋められていてもよい。
【0052】
また、図16で示される第1層456aと第2層456bとは、上下逆に配置されていても良い。さらに、第1層456a及び第2層456bのそれぞれの配置パターンは、適宜変更することができる。つまり、種シート410cは、台紙表面11a上に配置された複数の印刷要素で形成された第1層456aを有し、その第1層456aを覆う1つの印刷要素で形成された第2層456bを備えていても良い。また、1つの第1層456aの上に複数の第2層456bが配置されていても良い。さらに、種シート410cは、第1層456a及び第2層456bをそれぞれ複数備えていても良い。
【0053】
図14に示されている第2層456bの表面は、台紙11を平面視したときに特定の絵柄を形成するように構成されている。つまり、着色された第2層456bが集合して、例えば所定の模様などの絵柄を形成する。これにより、種シート410aは、種子57が発芽する前においても見栄えが良く、配置したときに周囲の美観を向上させる効果を有する。また、図14及び図16に示される第2層456bの表面が所定の絵柄を備えていても良い。
【0054】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、各実施の形態及び各変形例同士を組み合わせることもでき、また別の公知の技術と組み合わせることも可能である。さらに、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 種シート、11 台紙、11a 台紙表面、20 版シリンダ、21 凸部、22 セル、23 ドクターブレード、24 表面、30 圧着ローラー、30a 表面、31 送りローラー、32 送りローラー、33 送りローラー、34 送りローラー、35 定着機、36 回収部、40 隙間、50 ペースト、51 ペースト溜まり、53 ペースト、54 ペースト、56 印刷要素、56a~56c 印刷要素、57 種子、58 流動体、100 種シート製造装置、200 種シート製造装置、210 種シート、220 版シリンダ、224 表面、253 ペースト、254 ペースト、256 印刷要素、300 種シート製造装置、310 種シート、310a 種シート、310b 種シート、310b1 種シート、310b2 種シート、310c 種シート、320 版シリンダ、410a 種シート、410b 種シート、410c 種シート、456 印刷要素、456a 第1層、456b 第2層、458 流動体。
図1
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