(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】新規のリボ核酸、及びそれを基にする薬剤学的組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/117 20100101AFI20240906BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240906BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240906BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240906BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240906BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240906BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240906BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240906BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C12N15/117 Z ZNA
C07K16/28
A61K31/7105
A61K31/713
A61K39/00 Z
A61K39/39
A61K39/395 U
A61P31/04
A61P31/12
A61P35/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091537
(22)【出願日】2023-06-02
(62)【分割の表示】P 2021578257の分割
【原出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2019-0079470
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0153760
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0037711
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522002261
【氏名又は名称】エヌエー ヴァクシン インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン ホ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ミュン ソ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/083962(WO,A1)
【文献】Kabilova TO. et al.,Antiproliferative and interferon-inducing activities of unique short double- stranded RNA,Dokl Biochem Biophys,2011年,Vol. 436,pp. 8-11
【文献】Marques JT. et al.,A structural basis for discriminating between self and nonself double-stranded RNAs in mammalian cells,Nat Biotechnol,2006年,Vol. 24,pp. 559-565
【文献】Shinagawa T. et al.,Generation of Ski-knockdown mice by expressing a long double-strand RNA from an RNA polymerase II promoter,Genes Dev,Vol. 17,2003年,pp. 1340-1345
【文献】Zharkov MI. et al,Molecular Mechanism of the Antiproliferative Activity of Short Immunostimulating dsRNA,Front Oncol,2019年12月20日,Vol. 9:1454
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(30)及び(31)のヘテロ構造リボ核酸(hsRNA)から選択される1又は複数のヘテロ構造リボ核酸である、ヘテロ構造リボ核酸
、またはこのRNase T1による分解物:
(30)配列番号30の塩基配列と、配列番号61の塩基配列とが相補的に結合した結果として形成された二本鎖リボ核酸と、2個の一本鎖リボ核酸オーバーハングとを含むヘテロ構造リボ核酸、
(31)配列番号31の塩基配列と、配列番号62の塩基配列とが相補的に結合した結果として形成された二本鎖リボ核酸と、2個の一本鎖リボ核酸オーバーハングとを含むヘテロ構造リボ核酸。
【請求項2】
請求項
1に記載のhsRNA、
またはこのRNase T1による分解物を含む薬剤学的組成物。
【請求項3】
前記薬剤学的組成物は、ウイルス感染またはバクテリア感染、
または癌を予防または治療するためのものであり、追加のアジュバントまたは免疫源をさらに含むものである、請求項
2に記載の
薬剤学的組成物。
【請求項4】
前記薬剤学的組成物は、
癌を予防または治療するためのものであり、前記癌は、皮膚癌、乳癌、肺癌、大腸癌及び膵臓癌を含むものである、請求項
3に記載の
薬剤学的組成物。
【請求項5】
前記薬剤学的組成物は、OX-40抗体またはPD-1抗体を含むことを特徴とする請求項
4に記載の
薬剤学的組成物。
【請求項6】
活性成分として、請求項
1に記載のhsRN
Aを含み、前記hsRNAは長さが均質である、薬剤学的作用剤。
【請求項7】
活性成分として、請求項
1に記載のhsRN
Aを含
む、癌治療作用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さ非均質性、高い毒性、及び活性の非一貫性のようなPoly(I:C)の問
題点を克服した新規のリボ核酸に関する。具体的には、dsRNA及びssRNAのいず
れもの任意の特定配列と、特定の定められた長さとを有し、真ん中に位置し、その両側3
’末端に、一本鎖リボ核酸(ssRNA)オーバーハングが連結された非ホモポリマー状
二本鎖リボ核酸(dsRNA)を含む、いわゆる、ヘテロ構造リボ核酸(hsRNA:he
tero structured RNA)に関する。前記dRNAは、完全相補性を有し、TLR3リガ
ンドとして作用する一方、ssRNA配列は、望ましくは、TLR7類似リガンドとして
特徴づけられる。前記ヘテロ構造リボ核酸は、長さが高度に均質であり、高い先天免疫活
性及び安定性を有する。
【0002】
前述の開示されたヘテロ構造リボ核酸及び二本鎖リボ核酸は、副作用がほとんどない薬
剤学的作用剤であり、それにより、ウイルス感染または細菌感染、及び癌の予防及び治療
のための組成物の活性成分として有用である。
【背景技術】
【0003】
A)先天免疫活性剤としてのTLR3リガンド
TLR3は、樹枝状細胞(DC:dendritic cell)上、B細胞上、単核細胞由来大食細
胞上、及び多くの腫瘍組織上のエンドソーム(endosome)区画で正常に発現され、dsR
NAを感知する。該dsRNAは、ウイルス、またはウイルス感染された異常な細胞に由
来しうる。TLR3がdsRNAを認識すれば、第I型インターフェロンと炎症誘発性サ
イトカイン(proinflammatory cytokines)との分泌を刺激し、また、抗原エピトープが
MHC-1分子上にローディングされ、ナイーブT細胞に提供されるように、DCが成熟
した抗原提示細胞(APC)に活性化されるように刺激する。TLR3によるDCの活性
化は、微生物病原体に対する先天免疫反応及び適応免疫反応の誘導に寄与するだけではな
く、CD8+ T細胞と自然殺害(NK)細胞とを活性化させる(非特許文献1)。イン
ビトロでTLR3を誘導することができるdsRNAの最小長さは、45merであると
知られている。試験管内内で培養された樹枝状前駆細胞を、前記dsRNAと、FLT3
リガンドまたはGM-CSFとで処理した細胞を対象に、分析が行われたとしても、それ
らの生体内機能寄与は、今のところ明確に理解されていない(非特許文献1)。
【0004】
dsRNA類似体であるPoly(I:C)を、感染及び腫瘍に適用した報告がある(特許
文献1-14)。Poly(I:C)が、DC、NK及びCTL(cytotoxic lymphocyte)を
刺激し、腫瘍の成長を停止させる(非特許文献2)。しかし、長さのはなはだしい不均質
性から内在的に発生する、Poly(I:C)の高い毒性及び均一ではない活性により、Poly
(I:C)の臨床分野に適用することが制限されてきた。Poly(I:C)は、長さによ
って異なる細胞反応を示すが、さらに短い形態は、TLR3を活性化させ、さらに長い形
態は、それぞれTLR3とMDA5との活性を介して先天免疫を活性化させる(非特許文
献1)。
【0005】
B)先天免疫において、TLR7/TLR8リガンドの役割を行うssRNA
グアノシン(G)及びウリジン(U)を含む(望ましくは、「GUU」が反復される配
列を有する)ssRNAは、DC及び大食細胞を刺激し、それは、NF-κB活性化、サ
イトカイン分泌及び先天免疫において、MYD88及びTRAF6を介する炎症反応によ
って媒介される。TLR7及びTLR8は、エンドソームの膜上に存在し、ssRNAを
認識する。TLR7は、グアノシン及びウリジンを含むssRNAに係わる二重受容体で
あるが、結合第1部位は、小さいリガンド(すなわち、G)を優先して感知し、結合第2部
位は、ssRNAのウリジン部分を認識する。
【0006】
C)Poly(I:C)系dsRNAの極端な長さ非均質性、及び毒性
生体内外において、DCを活性化させるdsRNA長を正確に定義する必要がある。い
くつかのリボ核酸誘導体が、ワクチンアジュバント候補物質として提示されたが(特許文
献1-18)、その生産の内在的限界により、同一性及び均質性を保証することができな
い。そのような点のために、Poly(I:C)系dsRNAは、機能及び安全性において、
はなはだしい非均質性を示し、その適用が制限される(特許文献1-14)。前記Poly(
I:C)系物質の製造過程と、それによる問題点は、以下の通りある。
【0007】
Poly(I:C)は、合成dsRNA類似体であり、イノシンホモポリマー鎖(inosine
homopolymer)Poly(I)とシチジルホモポリマー鎖(cytidyl homopolymer)Poly(C)
とによって構成され、それらは、相補的に互いに結合し、非天然dsRNAを形成する。
各鎖は、ポリヌクレオチドリン酸化酵素(PNPase:polynucleotide phosphorylase
)を利用し、末端に位置した塩基に、新たな塩基を追加する方式で酵素的に別途に合成さ
れるために、生成されたホモポリマーの長さが非常に多様である。さらに、長いホモポリ
マー配列(例:平均400base Poly(I))に相補的な長いホモポリマー(例:平
均400base Poly(C))を対応させ、アニーリング(annealing)させれば、上部鎖(
すなわち、Poly(I))は、その相補的下部鎖(すなわち、Poly(C))に沿い、どこに
でも結合し(鎖滑り(chain slippage))、両鎖の3’末端または5’末端のどこにも一
本鎖領域を不可避に生成する。さらには、その領域に前記相補的鎖が再び結合すれば、数
十ないし数百kbp以上のきわめて多用な長さを作る(鎖延長(chain extension))。
それだけではなく、鎖延長後、不特定位置に、不特定個数のニック(nick)が存在する。
従って、該ニックが存在する位置を認識して切断するRNase T1を処理すれば、長
さがランダムに短くなる(
図8C)参照)。
【0008】
Poly(I:C)-L-リシン-メチルセルロース(Poly(I:C)-LC)は、Poly(
I:C)誘導体のうち一つであり、血清内において、RNaseによる分解には、あまり
敏感ではないが、製造方式は、Poly(I:C)と本質的に同一である。従って、長さが一
定ではない(特許文献1-14)。Poly(I:C)-LCは、IFN-γ分泌を誘導し、
CTL反応及び抗原特異抗体を増大させる。Poly(I:C)-LCは、多少緩和された毒
性を有する。他のPoly(I:C)誘導体であるPIKAも、長さが一定ではないPoly(I
:C)の形態を有する(非特許文献3及び非特許文献4)。
【0009】
Poly(I:C12U)は、Poly(I)とPoly(C)とによって構成され、Poly(C)の
うちUは、12Cごとに付加され、規則的に分散された不一致を有する不完全なdsRN
Aを形成する。多重ニックにより、Poly(I:C12U)は、Poly(I:C)に比べ、R
Nase T1による分解にさらに敏感であり、さらに短い半減期を有し、さらに少ない
副作用を有し、Myd88よりもTRAFにさらに高い選択性を有する。それにもかかわ
らず、長さは、依然としてきわめて非均質的である。
【0010】
Poly(I:C12U)は、カナダとアルゼンチンとにおいて、ヒトに使用するように承
認され、2000年には、ヨーロッパ連合において、慢性疲労症侯群(CFS)治療のた
めの希少疾病用医薬品(orphan drug)として許可されたが、米国FDAの承認は、なさ
れていない。それら以外にも、Poly(I:C)の合成は、Poly(I:C)よりもさらに均
一な長さを有するように改善されたが、長さ多様性問題は、依然として残っている。Poly
(I:C)(100ないし400)を例に挙げれば、短鎖(例:Poly(I)100につい
て平均108base)を長鎖(例:Poly(C)400について平均344base)に相補結合
させるものが採用される。該方法により、平均長が400bpに近接するdsRNAが製
造されたが、長さ範囲は、00ないし2,000baseと非常に広い。短いホモポリマー配
列(例:Poly(I)100)が、長いホモポリマー(例:Poly(C)400)に相補的に
結合し、鎖滑りと鎖延長とが生じることを防ぐことができなかった。要約すれば、Poly(
I:C)系dsRNA類似体は、一定長を有することができず、dsRNA内部の不特定
位置に、不特定個数のニックが存在しており、RNase T1に対する安定性が非常に
低い(特許文献3、非特許文献2、非特許文献5)。
【0011】
D)癌微細環境における、OX40分子とPD-1分子との役割
先天免疫反応及び適応免疫反応は、いずれも腫瘍の成長と制御とに関与する(非特許文
献7)。免疫機能が腫瘍微細環境(TME)において、一般的に抑制されている。T細胞
抑制受容体に係わる拮抗剤、またはT細胞受容体に係わる刺激剤を使用するさまざまな方
法がT細胞活性を増進させるためにテストされた(非特許文献8)。
【0012】
腫瘍懐死因子受容体スーパーファミリーであるOX40は、ナイーブT細胞においては
、発現されないが、抗原に露出された後、活性化されたT細胞において誘導される(TC
R)(非特許文献9)。それだけではなく、OX40は、活性B細胞、活性樹枝状細胞、
活性好酸球、自然殺害T(NKT)細胞及びNK細胞記憶T細胞、並びに調節T細胞で一
般的に発現される(非特許文献9)。OX40に結合するOX40リガンドであるOX4
0Lは、主に、抗原提示細胞で発現される。OX40-OX40L相互作用は、CD4細
胞及びCD8 T細胞に共同刺激し、細胞増殖、生存、エフェクタ機能及び移動を向上さ
せる。また、OX40は、記憶T細胞の発達及び機能を誘導し、免疫抑制環境を克服させ
る。
【0013】
樹枝状細胞のような抗原提示細胞が成熟されれば、B7ファミリー(例:CD80及び
CD86)及びOX40Lは、APCの表面において増大し、T細胞免疫反応及び記憶分
化を決定するのに一助となる(非特許文献10)。
【0014】
OX40:OX40L結合連繋(相互作用)は、三重価受容体(trimer)を形成し、さ
らに高次的なクラスタリング(clustering)及び後続信号伝達を誘導する(非特許文献1
1)。マウスOX40刺激ラット(rat)由来抗体(anti-mOX40rat agonist Ab
)は、マウスモデルにおいて、腫瘍拒否反応を誘導することができる(非特許文献12、
非特許文献13)。ヒトOX40刺激マウス由来抗体(anti-hOX40 mouse agonist
Ab)も、癌患者において、癌免疫の機能を増進させると示された(非特許文献14)
。OX40:OX40L相互作用は、移植片対宿主疾病(例:臓器移植拒否反応)、喘息
/アトピー、脳脊髄炎、リウマチ性関節炎、大腸カタル/炎症性腸疾患、非肥満糖尿病マ
ウスの糖尿病及び粥状動脈硬化症、ループス、炎症性疾病及び自家免疫疾病、並びに障害
において、免疫反応とも係わっている(非特許文献15)。
【0015】
PD-L1は、多くの癌において、過発現され、折々、好ましくない予後と関連性があ
る(非特許文献16、非特許文献17)。興味深いこととして、腫瘍浸潤性Tリンパ球の
ほとんどは、正常組織及び末梢血液Tリンパ球とは対照的に、PD-1を発現する。T細
胞において、PD-1の上向き調節が、免疫抑制性腫瘍微細環境を構成することができる
(非特許文献18)。本質的には、腫瘍浸潤性T細胞上のPD-1と、腫瘍細胞上のPD
-L1との相互作用は、T細胞機能を弱化させる(非特許文献19、非特許文献20)。
従って、PD-1:PD-L1(または、PD-L2)相互作用の阻害は、免疫抑制性T
MEを破壊してしまう。しかし、最適の治療のためには、そのようなPD-1受容体とリ
ガンドとの相互作用遮断以外にも、さらなる免疫増強療法の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】Double-stranded ribonucleic acid for adjuvants; US 20150307884 A1
【文献】Adjuvant compositions; WO 2003028656 A2: shorter form of Poly(I:C)
【文献】Clinical method for the immunomodulatory and vaccine adjuvant use of poly-ICLC and other dsRNAs; US 7834064 B2
【文献】dsRNAs as influenza virus vaccine adjuvants or immuno-stimulants; US 20070224219 A1
【文献】Process for the maturation of dendritic cells and a vaccine; US 7981673 B2
【文献】Topically active compositions of mismatched dsRNAs; US 5712257 A
【文献】Treatment of hepatitis with mismatched dsRNA; US 5906980 A
【文献】Double-stranded PolyC: Poly (G/I) RNA for immunostimulation and cancer treatment; EP 3083962 A1
【文献】Methods and formulations to achieve tumor targeted double stranded ribonucleic acid mediated cell death; WO 2014165296 A1
【文献】Polyinosinic acid-polycytidylic acid-based adjuvant; US 20070160632 A1
【文献】In-situ cancer autovaccination with intra tumoral stabilized dsRNA viral mimic; US 20090088401 A1
【文献】Novel nucleic acid having adjuvant activity and use thereof; WO 2012014945 A
【文献】Improved treatment of cancer using tlr3 agonists in combination with another therapeutic agent; WO 2009130301 A1
【文献】Double-Stranded Ribonucleic Acid Conjugates And Their Use; US 20170107517 A1
【文献】Double-stranded ribonucleic acids with rugged physico-chemical structure and highly specific biologic activity; WO 2010047835 A2
【文献】Immunization strategy to prevent H1N1 infection; EP 2477652 A4
【非特許文献】
【0017】
【文献】Jelinek I et al., (2011) J Immunol 186 (4):2422-9
【文献】Mian MF et al., (2013) J Leukoc Biol 94 (5):1025-36
【文献】Zhang Y et al., (2016) Virology 489:165-72
【文献】Lau YF et al., (2010) Virology 406 (1):80-7
【文献】Nakano T et al., (2018) Biosci Biotechnol Biochem 82 (11):1889-1901
【文献】Matsumoto M et al., (2015) 6:6280
【文献】Vesely MD et al., (2011) Annu Rev Immunol 29: 235-271
【文献】Mellman I et al., (2011) Nature 480: 480-489
【文献】Sugamura K et al., (2004) Nat Rev Immunol 4: 420-431
【文献】Soroosh P et al., (2006) J Immunol 176: 5975-5987
【文献】Compaan DM et al., (2006) Structure 14: 1321-1330
【文献】Weinberg AD et al., (2000) J Immunol 164: 2160-2169
【文献】Piconese S et al., (2008) J Exp Med 205: 825-839
【文献】Curti BD et al., (2013) Cancer Res 73: 7189-7198
【文献】Croft M et al., (2009) Immunol Rev 229(1): 173-191
【文献】Okazaki T et al., Intern. Immun 2007 19 (7): 813
【文献】Thompson RH et al., Cancer Res 2006, 66 (7): 3381
【文献】Ahmadzadeh M et al., Blood. 2009 Aug 20;114(8):1537-44
【文献】Sharpe et al., Nat Rev 2002
【文献】Keir ME et al., 2008 Annu. Rev. Immunol. 26: 677
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
1)Poly(I:C)型リボ核酸基盤アジュバントが有する極端な長さの非均質性克服
薬学的組成物は、一貫した再現性及び均質性を有さなければならない。dsRNA類似
体であるPoly(I:C)と、その誘導体との適用を、臨床用途において制限する最大の理
由は、極端な長さの非均質性を含め、生産時の再現性不足、予測不可能な薬物動態、一貫
性ない効能(非特許文献3、非特許文献6)及び関節痛、発熱、紅斑及び耐毒素類似ショ
ック(特許文献15及び17)のような症状を起こす深刻な毒性のためである。これまで
、dsRNA類似体は、Poly(I:C)、Poly(I:C)-LC及びPoly(I:C12U
)を含み、いずれも2本の相補的ホモポリマー鎖によって構成される。結果として、それ
ら誘導体の長さは、特定の長さとして定義されえず、きわめて多様である。
【0019】
本発明は、Poly(I:C)が有する極端な長さの非均質性及び毒性、並びに量産製造時
の問題点を解決することができる新規のhsRNAを提供するものである。本発明のhs
RNAは、必要により、RNase T1を処理し、ssRNA領域を除去し、dsRN
A部位のみを選択的に抽出することができる。また、本発明のhsRNAは、正確な全体
長、ssRNAの正確な長さ及び位置、並びにdsRNAの正確な長さと位置とを特定す
ることができる特長点を有し、そのような特性により、既存のPoly(I:C)及びその誘
導体の問題を克服することができるのである。
【0020】
2)ワクチンにおいて抗原の必要な抗原用量の低減
本発明は、要求される抗原量を低減させながら、さらに力強い防御免疫を誘導すること
ができるhsRNAとdsRNAとを提供するものである。現在使用される季節性の三価
ワクチンまたは四価ワクチンの場合、効果的な予防免疫のために予測される1つのウイル
スごとに、ワクチン抗原1回当り最小15μgを必要とする。大量の抗原が毎年必要であ
るために、ワクチン供給不足に係わる潜在的リスクが存在する。FLUADに対し、MF
59(スクアレン水中油エマルジョン)アジュバントが65歳以上の者を対象に米国で承
認された。依然として効能を毀損させずに、抗原量を実質的に低減させることができる承
認されたオズバント添加ワクチンはない。
【0021】
3)抗癌効能が増強された癌ワクチン組成物の提供
本発明は、生体内において、樹枝状細胞を、一貫性あって強力に活性化させ、原発性癌
だけではなく、遠隔転移癌の予防または治療を行うhsRNAと、OX40抗体及び/ま
たはPD-1抗体とを含む癌ワクチン組成物を提供する。
【0022】
本発明のhsRNAは、癌細胞の死滅を促進させ、癌細胞から、癌連関抗原(TAA)
の放出を促進する。そのようにして、OX40アゴニストに対する抗体、またはPPD-
1に対する抗体と組み合わされたhsRNAまたはdsRNAは、TAA依存的免疫反応
を誘発したり、はなはだしくは、相乗作用したりして、癌細胞を破砕(lyse)したりもす
る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
1)本発明は、双方向合成を介し、高度の長さ均質性と安定性とを備えたリボ核酸を提
供する
本発明は、特異的長さ、完璧な塩基ペアリング、及び室温において、高い安定性を有す
る高度に均質的なhsRNA及びdsRNAに係わるものである。
【0024】
本発明のhsRNAを製造する方法は、次の通りである。標的RNAの転写を指示する
ことができるDNA切片が、両5’末端において、T7プロモーターによって結合され(
flank)、任意のプラスミドベクターに挿入される。必要であるならば、TLR7リガン
ド配列、または任意の長さ、及び任意の配列を有した断片が、T7プロモーター配列の5
’末端に付加されうる。
【0025】
前記DNA切片を、T7ポリメラーゼによるインビトロ転写(IVT)ためのテンプレ
ートのためにPCRで増幅した。双方向IVTは、IVTの間、ほとんど同一のモル比で
完璧な相補性を有したヘテロポリマーssRNAの上部鎖と下部鎖とを生成し、室温にお
いて、自発的に高度に純粋なhsRNAを形成する。前記hsRNAまたは前記dsRN
Sは、蛋白質をコーディングしなかったり、選択的に蛋白質をコーディングしたりするこ
とができる。一具現例において、前記ssRNAは、ランダム配列であるか、あるいはG
UU反復配列を含みうるが、それに制限されるものではなく、ssRNAは、RNase
T1処理により、選択的に除去されうる。
【0026】
これまで、生体内において、DC及び免疫系を活性化させるための最小及び最適の長さ
を有するdsRNAは、1つの塩基対長さほど違いのあるdsRNAの合成において、技
術的困難さによって完全に理解されていない。対照的に、本発明の方法は、生体内外にお
いて、TLR3活性化またはTLR7活性化に要求される最適の免疫活性化を示すリボ核
酸の正確な数の長さまたは構造を指定することができる。
【0027】
2)本発明は、感染に対するワクチン抗原必要使用量を低減させることができるリボ核
酸を含む感染予防及び感染治療のワクチン組成物を提供する
本発明は、前記hsRNAまたは前記dsRNAを含むウイルス感染または細菌感染の
予防用または治療用の薬剤学的組成物を提供する。
【0028】
負電荷を強く帯びるリボ核酸は、多くの大型抗原を効果的に受容し、VLP(virus-li
ke particle)に匹敵するほどのナノ複合体を作ることができる。適切な剤形に抗原をカ
プセル化させたナノ複合体は、樹枝状細胞または大食細胞に捕獲され、B細胞及びT細胞
において抗原が提示されることを効果的に誘導する。本発明の、感染予防及び感染治療の
ワクチン組成物は、病原体のタンパク質、組み換えタンパク質、サブユニット(subunit
)、スプリット(split)タンパク質抗原、糖蛋白質、ペプチド、多糖類、脂質多糖類、
ポリヌクレオチド、及びそれらの組み合わせからなる群のうちから選択されたものでもあ
るが、それらに制限されるものではない。
【0029】
3)本発明の前記リボ核酸アジュバントを含む抗癌ワクチン組成物、及び本発明の前記
リボ核酸と、下記のような抗体とを含む疾病予防用または癌治療用の薬学組成物を提供す
る
本発明は、前記hsRNAまたは前記dsRNAを含む疾病予防用または癌治療用の薬
剤学的組成物、及びOX40抗体またはPD-1抗体をさらに含む癌予防用または癌治療
用の薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明のhsRNAは、Poly(I:C)が有する極端な長さの多様性と、組成の非均質
性とを克服し、特定の長さと配列とによって特定されうる長所を提供する。さらには、h
sRNAからssRNAオーバーハングを除去することにより、高度に均質的なdsRN
Aを得ることができる。また、前記hsRNAからssRNAオーバーハングを除去する
場合、本願発明の前記hsRNAは、相補的な配列を有し、改善された免疫反応を誘導す
るdsRNAとして製造されうる。
【0031】
また、本発明のhsRNAと複合体となった抗原は、抗原提示細胞内部に伝達され、T
細胞及びB細胞に抗原を効率的に提示することができる。さらには、本発明の、hsRN
AまたはdsRNAは、必要抗原量を低減させることができ、ウイルス感染または細菌感
染と、癌とに対する防御免疫効果を誘導することができる。
【0032】
結果として、本発明のリボ核酸アジュバントは、(1)抗原に対する適応免疫を強化さ
せ、(2)ワクチンの必要抗原量を低減させ、(3)抗原特異的なTh1極性化された交
差防御反応を向上させ、(4)抗原なしに単独で使用する場合、先天免疫を強化させる活
性を示す。
【0033】
また、本発明の、hsRNAを単独で含むか、あるいはhsRNA、及びOX40抗体
またはPD-1抗体を含む癌ワクチン組成物は、原発性癌及び遠隔性癌のいずれに対する
抗癌効能も示す。また、本発明の癌ワクチン組成物は、PD-1抗体のような免疫チェッ
クポイント抑制剤を単独で処理する場合に反応しない不応性癌を反応性癌に転換させるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、DCを活性化させるリボ核酸基盤物質に係わる生体内(in vivo)活性検証の結果を示す(実施例1)。
図1は、ネクストアジュバント(NAと略され、NVT、VP1、VP10ともされる)が、平均蛍光強度(MFI)によって測定した、CD11c+ DC細胞において、補助刺激因子(CD40、CD86)及びMHCIIの発現が増大することを示す。NA 10μgは、Poly(I:C)100μgに比べ、すぐれていた。
図1は、NAが、Poly(I:C)と比べ、IL-6、IL-12、TNF-αの分泌をさらに強く誘導することを示す。
図1は、NAが、Th2サイトカイン(IL-4)及びTh17サイトカイン(IL-17A)ではなく、Th1細胞マーカーT-bet、及びTh1細胞サイトカインであるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)mRNAを誘導することを示すqRT-PCR結果である。各データは、三種の独立した分析の平均値である。
【
図2】
図2は、本発明の、hsRNA長による生体内DCの活性を示す(実施例2)。
図2Aは、人工配列(Backbone Group 1)で製造したhsRNAシリーズ1の試験管内合成結果であり、それぞれ140塩基長hsRNA(NA1001)、190塩基長(NA1501)、240塩基長(NA2001)、340塩基長(NA3001)、440塩基長(NA4001)、540塩基長(NA5001)、640塩基長(NA6001)及び840塩基長(NA8001)を示す。
図2Bは、トマト配列(Backbone Group 2)に由来するhsRNAシリーズ2の試験管内合成結果であり、それぞれ140塩基長(NA1002)、190塩基長(NA1502)、240塩基長(NA2002)、340塩基長(NA3002)、440塩基長(NA4002)、540塩基長(NA5002)、640塩基長(NA6002)、740塩基長(NA7002)及び840塩基長(NA8002)を示す。
図2Cは、
図2Aに表示されたhsRNAそれぞれに係わる、5μg注射時に示されるCD40及びCD86の表面発現のMFIを示している。各データは、3回の独立した分析の平均値である。
図2Dは、
図2Bに表示されたhsRNAそれぞれにつき、5μg注射時に示されるCD40及びCD86の表面発現のMFIを示している。各データは、3回の独立した分析の平均値である。
【
図3】
図3は、本発明のhsRNAの先天免疫活性指標及び免疫反応結果を示す(実施例3)。
図3Aは、本発明のhsRNA(R1ないしR11、VP10、表2参照)を製造した後、長さを確認するために、1%アガロースゲルで電気泳動させた図である。
図3Bは、HEK 293において、
図3AのhsRNAの一次的共移入(cotransfection)に反応したIFN-β増大、及びIFN-βプロモーター駆動ルシフェラーゼを示す。
図3Cは、hsRNAが錯化されたオブアルブミン(OVA)をマウス筋肉内注射し、血清における、Anti-OVA IgG1(Th2極性化)、及び Anti-OVA IgG2a(Th1極性化)を誘導したところを示す。本発明のNAR7(R7)が、R3、R5、R10より、Th1(IgG2a)反応及びTh2(IgG1)反応を強化させた。
【
図4】
図4は、本発明のhsRNAのうち一つであるNA(NVT)の物理化学的特性を示す(実施例4)。
図4Aは、 RNase T1を処理し、大きさ均質性を示すものと共に、NA長がHPLC分析において、単一に一定であることを示し、それは、dsRNA部位が良好に保存されるところを示す。
図4Bは、前記dsRNAが45℃で150日以上安定しているところを示す。
図4Cは、NAが、100%子牛血清(Serum)で10分未満の短い半減期を有するところを示す。
図4Dは、NAと複合体を形成した抗原である場合、有効期間が長いことを示す。
【
図5】
図5は、本発明の、hsRNAとdsRNAとを皮下(s.c.)注射した後、先天免疫活性指標の様相を示す(実施例5)。
図5Aは、hsRNA(NVT4-T1)は、dsRNA(NVT4+T1)よりもさらに低い抗炎症性サイトカイン反応(proinflammatory cytokine response)を誘導するところを示す。NVT4(NVT IV、VP20と同一である;表2参照)が本研究に使用された。
図5Bは、hsRNAの皮下注射が24時間経過後、さらに高いDCを活性化(CD86誘導)を刺激することを示す。
図5Cは、24時間と48時間とが経た後、ドレインリンパ節(dLN)における免疫細胞プロファイルを示す。48時間経過時、dsRNAがhsRNAに比べ、免疫活性度が高いところを示している。
図5Dは、dsRNAがhsRNAに比べ、TNF-α、IFN-β及びIL-6を高く誘導するところを示す。それは、dsRNAがさらに強く先天免疫を誘導する一方、hsRNAは、安全性に有利な物質であるところを示唆する。
【
図6】
図6は、NA(NVT)が錯化されたOVAワクチンが他のアジュバントに比べ、Th1極性化免疫反応をさらに強く誘導するところを示す(実施例6)。
図6Aは、BalB/cマウスに、アジュバントが錯化されているか、あるいは錯化されていないワクチンを、0日及び14日、2回にわたって筋肉内にそれぞれプライミングとブースティングとを行ったところを示す。21日目、末梢血液と脾臓細胞とを抽出し、流式細胞分析をIgG定量を実施した。
図6B及び
図6Cは、NA(NVT)が、Th1反応(IgG2c)は、他のアジュバントより高く活性化させ、脾臓において、IFN-γを分泌するCD8 T細胞とCD4T細胞との数を増加させるが、Th2免疫反応(IgG2)ではないことを示す。
【
図7】
図7は、先天免疫性誘導と適応免疫誘導とにおいて、NA(NVT)とNVT+SE(スクアレンエマルジョン)(NVTII)との比較を示す(実施例7)。
図7Aは、NVTとNVTIIとの筋肉内注射を介する活性検証方法である。
図7Bは、注射後24時間目、NVT及びPBS(リン酸緩衝塩水)に対しし、NVTIIが鼠蹊部リンパ節(iLN)でDC活性を誘導するところを示す。
図7Cは、NVTとNVTIIとが、いずれも血清において、中和抗体を誘導するが、NVTよりNVTIIが2倍以上強く誘導した結果を示す。
【
図8】
図8は、本発明のhsRNAの構造を示す(実施例8)。真ん中にあるヘテロポリマー性dsRNSは、3’末端において、それぞれssRNA オーバーハングによって結合されている。dsRNA及びssRNAは、いずれも単一塩基の違いによって合成されうる。
図8Aは、前記hsRNAの模式図である。hsRNAの真ん中にあるヘテロポリマー性dsRNAは、任意の長さと、完全な相補性を有する任意の配列とを有する。dsRNAの両側3’末端にある2個のssRNA オーバーハングは、潜在的TLR7/8リガンドとして作用することができる相補性のない、任意の特定長を有する。dsRNAは、人工配列でもあり、自然配列でもあるが、タンパク質を暗号化しない。dsRNAにRNaseIIIを処理すれば、平均して、20ないし25bpのdsRNA切片に切断する。dsRNAには、作用せず、ssRNAオーバーハングにだけ作用するRNAse T1を処理すれば、ssRNAオーバーハングは、完全に分解される。本発明は、長さ(>100bp)のdsRNAを、インビトロで、T7 RNA重合酵素を利用し、DNAの両鎖に由来した二種の相補的ssRNAを、類似したモル比で大量合成することができるという利点を提供する。本発明において、ssRNAオーバーハングは、単純なオーバーハングではなく、特定TLR7/8リガンドとして作用することができる特定の長さ及び配列(TLR7リガンド配列であるGUを多数含む配列)によってなることを特徴とする。さらには、ssRNAは、dsRNAの末端が分解されることを防止する機能を有することができる。1つのテンプレートDNAからの双方向転写は、ほとんど同一モル比でもって、2個の相補的な上端ssRNA及び下端ssRNAを生成する。IVTの間、2本の鎖は、その後、自発的アニーリングを行い、真ん中に完璧なdsRNAを有し、両3’末端に2個のssRNA オーバーハングを有したhsRNAを形成する。特に重要には、前記2個のssRNA オーバーハングは、互いに相補的ではないように設計され、塩基対形成(base pairing)または鎖延長が防止される。
図8Bは、hsRNAを、RNase A、RNaseIII及びRNAseIII+RNase T1で消化させた結果物を示す。dsRNA及びssRNAをいずれも分解することができるRNase Aを処理すれば、全てのRNAが分解され(分解された)。dsRNAを、20ないし25bp長さに切断するRNaseIIIを処理する場合、25bpほどの長さを有する切片のバンドが最も多く示された。RNaseIIIは、提供されたhsRNA(NVT4)の ssRNAオーバーハング(それぞれ51,58base)を切断しない。従って、ssRNAオーバーハングは、分解されずに残り、それらは、およそ25bp重なる。RNaseIII及びRNAse T1を同時に処理すれば、前記ssRNA切片(51,58base)が完全に分解されて消え、25bpのバンドだけが鮮明に示される。
図8Cは、NA(533base hsRNA、dsRNA部位424bp)を、DNaseIとRNase T1とで処理する前、及びその処理後、アガロースゲルで分離したものであり、特定の長さに一定の結果物が示されるところを示す図である。IVT後、残存するDNAテンプレートは、DNaseIを処理し、除去(除去され)、hsRNAだけ残る。RNase T1で、hsRNAに存在するssRNAオーバーハングが除去されれば、dsRNA部位だけ残る。もしdsRNA部位内部にニックが1個以上存在すれば、RNase T1がそのニック部位を切断し、2以上のdsRNA切片を生成する。対照的に、ゲルにおける単一バンドは、前記dsRNA部位及びssRNA オーバーハングにニックがないということを証明している。
図8D)他発明の競争薬物であるPoly(I:C)が、極端な長さ多様性により、非均質性を有するところを示し、そのような点は、製造段階から生じるものであり、製造後、分画を終えた後にも克服することができない(非特許文献2)。
図8E)他発明の競争薬物であるPoly(I:C)の基本構造を示したものであり、特定の長さではない平均長だけでもって表示されうる。例えば、平均およそ389baseであるホモポリマーPolyIと、平均344base PolyCとをそれぞれ合成し、互いに相補的にアニーリングさせ、dsRNAが製造される。しかし、予測することができない非特定部位に、相補結合が発生する鎖滑り(ランダム部位塩基対形成)が生じるために、予測することができない位置に多用な間隙を有する複数のニック(nick)の形成は、不可避である。さらには、前記ランダム部位塩基対形成は、5’末端または3’末端に係わりなく、両側位置に、Poly(I)とPoly(C)との特定することができない塩基ストレッチを生成してしまい、そこに、相補的鎖が再び結合し、鎖延長が生じてしまう。従って、その長さが数百kilobase以上に延長される(非特許文献2)(非特許文献5)。さらに、PNPaseが、Poly(I:C)の製造過程に使用されるために、リン酸基(P)が5’末端に常時付着し、それにより、収率は、低い(非特許文献2及び非特許文献5)。対照的に、本発明のhsRNAは、対照的に、Poly(I:C)とその誘導体とにある、鎖延長を防止する互いに相補的配列を有さない特定長を有する両側3’末端にだけあるssRNAテイルのオーバーハングにより、隣接するdsRNAを形成するように設計されうる。
【
図9】
図9は、本発明のNA(NVT)に錯化された不活化インフルエンザ全ワクチン(iPR8+NVT)またはNA(NVT)に錯化されていない不活化インフルエンザ全ワクチン(iPR8)またはNVT単独を、鼻腔(i.n.)内に投与した後の免疫反応を示した (実施例9)。
図9Aは、試験方法を図式化した図である。
図9Bは、NVT、iPR8及びiPR8+NVT処理群のマウスからの肺胞洗浄液において、肺胞大食細胞、好中球、自然殺害細胞のプロファイルを示す。
図9Cは、24時間経過後、IL-6、IL-12、TNF-αの際立った増加を示す。
図9Dは、7日目に、縦隔洞リンパ節(mLN)において、GCB(germinal center B)細胞とT
FH(follicular helper T cell)の増加を示す。
図9Eは、iPR8+NV群において、21日が経た後、血清Anti-iPR8 IgGが増加することを示す。
図9Fは、21日目、鼻腔洗浄液におけるIgA増加を示す。
【
図10】
図10は、本発明のhsRNAであるNA(NVT)による商業的インフルエンザワクチン(4IV(Vaxigrip))の効能及び抗原容量節減に対する本発明のアジュバントの効果に係わる(実施例10)。
図10Aは、試験方法を図式化した図である。
図10Bは、NA(NVT)アジュバントまたはNA+SE(NVTII)アジュバントが、IgGを誘導するのに必要な抗原使用量をそれぞれ約1/5以下と約1/25以下とに低下させた。Vaxigrip(2018/2019季節的四価インフルエンザワクチン4IIV)がモデル抗原として使用された。
図10Cは、ワクチン接種後、17週まで、NVTI群及びNVTII群において、総IgG量が多く維持されるところを示す。
図10Dは、中和抗体の量と比例し、17週目に至るまで、ヘマグルチン阻害力価(HAI)が40以上に高く維持されているところを示す。HAI 40以上は、ワクチン接種された個体の50%以上が保護される保護相関性(correlate of protection、COP)である。
【
図11】
図11は、本発明の、NVTIIが錯化された脳髄膜炎菌ワクチン(Menactra、Sanofi)に対し、抗体IgG誘導を示す(実施例11)。
図11Aは、試験方法を図式化した図である。
図11B及び
図11Cは、プライミング以後、それぞれ14日と21日とにおいて総錯化された抗原(Menactra)及び抗原A型に対する抗体を示す。
【
図12】
図12は、前記NVTIIアジュバントの免疫原性復元効能を示す(実施例12)。
図12Aは、試験方法を図式化した図である。Vaxigripが、37℃において5週間熱処理し、かつNVTIIまたはPBSで錯化し、その後、IgG反応のために、筋肉内ワクチン接種スケジュールを遂行した。
図12Bは、NVTIIがIgG抗体レベルによって検査されたように、Vaxigripの免疫原性を回復させるということを示す。Vaxigrip単独は、前記免疫原性を完全に喪失させたことに留意する。
図12Cは、NVTII-媒介されたIgGレベルは、18週でIAV H1N1及びIBVに対するHAI力価50以上において、上昇と相関している。
【
図13】
図13は、本発明のリボ核酸単独が、黒色腫成長中止に及ぼす影響を示す(実施例13)。
図13Aは、試験方法の図式的図面である。7週齢のメスC57BL/6マウスに、B16F10-OVA黒色腫細胞を移植した後、6,8,10日目NA(NVT)を、筋肉内経路に投与した後、腫瘤重量及びマウス生存を測定した。
図13Bは、本発明のhsRNAが黒色腫成長を顕著に停止させるということを示す。
図13Cは、hsRNAが生存率を上昇させるということを示す。
【
図14】
図14は、本発明のリボ核酸単独が、大腸癌と肺癌との成長中止に及ぼす影響を示す(実施例14)。
【
図15】
図15は、本発明のリボ核酸単独が、三重陰性乳癌(TNBC)の成長中止及び転移に及ぼす影響を示す(実施例15)。
図15Aは、試験方法を図式化した図である。7週齢のメスC57BL/6マウスに、4T1三重陰性乳癌(TNBC)細胞株を、乳腺脂肪組織皮下に移植した。8日目から、2日に1回ずつ総9回にわたり、腫瘍内(i.t.)にNA(NVT)リボ核酸を投与し、指定された日に腫瘤重量を測定した。
図15Bは、NA(NVT)が原発性乳癌の成長を60%に中止させることを示す。
図15Cは、NVT原発性乳癌の肺への転移を抑制するということを示す。
【
図16】
図16は、hsRNAが錯化されたOVA癌抗原ワクチンの腹腔内投与時、黒色腫細胞の転移に対する抑制効果を示す(実施例16)。
図16Aは、試験方法を図式化した図である。
図16Bは、18日目に、脾臓及び肝臓の形態を示す図であり、肝臓における大きさ及び転移結節を明確に見ることができる。
図16Cは、8日目に脾臓及び肝臓の重量平均を示す。
図16Dは、肝臓に転移された腫瘍結節の数を示す。NA単独またはNA+OVAの処理群においては、肝臓への転移が顕著に抑制された。
【
図17】
図17は、hsRNA及びOX40抗体を含む癌ワクチン組成物が、原発性癌及び遠隔性癌成長に及ぼす抑制効果を示す(実施例17)。
図17Aは、試験方法を図式化した図である。黒色腫細胞株B16F10OVAを、7週齢メスC57BL/6マウスの左側脇腹に皮下移植した。移植6日後、指示された投与計画(regimen)(すなわち、IR+NVT+OX40Ab)を2日ごとに4回投与した(原発癌)。15日目に、同一マウスは、右側脇腹に、B16F10-Ova細胞またはEG7/Ova細胞を受け(遠隔癌)、その後、指定された日に腫瘍重量を測定した。
図17Bは、照射された癌細胞(IR:irradiated cancer)+NVT+OX40Ab組成物が、原発癌の成長を相当に抑制したところを示す。
図17Cは、IR cellなしに、NVT+OX40Abが、原発黒色腫成長を完全に阻害するということを示す。
図17D及び
図17Eは、NVT+OX40Abだけでも、原発癌と同一なB16F10/OVA遠隔癌と、それと異質的なEG7/OVA遠隔癌を完全に阻害することを示す。
【
図18】
図18は、PD-1抗体またはOX40抗体と複合体化された前記hsRNAが、黒色腫成長に対する抑制効果を示す(実施例18)。
図18Aは、試験方法を図式化した図である。
図18Bは、NA+PD-1組成物の腫瘍阻害効果が、NA+OX40Ab組成物と大方類似している結果を示す。
図18Cは、2つの組成物が、遠隔癌の腫瘍に対し、類似している阻害効果を有するところを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照し、本発明が属する技術分野において当業者が容易に実施するこ
とができるように、本願の実施態様及び実施例について詳細に説明する。しかし、本願は
、さまざまな形態に具現され、ここで説明する実施態様及び実施例に限定されるものでは
ない。
【0036】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、それは、特
別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさら
に含んでもよいということを意味する。
【0037】
本発明は、その両側3’-末端のssRNAによって隣接された真ん中に位置するds
RNAを含み、dsRNAとssRNAとのいずれもが、任意の特定配列を有した特定さ
れた長さを有することができるhsRNA(140-1682塩基)を提供する。前記d
sRNA2個の完全に相補的なヘテロポリマー鎖によって構成された特定長を有すると定
義される。前記ssRNAテールは、TLR7類似リガンドまたはTLR8類似リガンド
として作用することができ、TLR7リガンドとして作用する非相補的G/U配列、望ま
しくは、GUU反復配列を有することができ、10base以上、望ましくは、15ないし8
0base以上、望ましくは、17ないし75塩基の長さを有することができる。
【0038】
本発明のヘテロ構造リボ核酸(hsRNA)は、目的とする長さに均一に製造され、高
い安定性を有する。
【0039】
前記hsRNAと対照的に、Poly(I:C)及びその誘導体は、ホモポリマー鎖間の鎖
滑り及び鎖延長により、特定の構造重量(formula weight)に定義されえない。
【0040】
また、本発明は、下記の段階を含むヘテロ構造リボ核酸の製造方法を提供する:
1)両側5’位置にT7プロモーター配列が添加されたテンプレートDNA切片を任意
のプラスミドベクターに挿入する段階;
2)T7RNA重合酵素を利用し、テンプレートDNAからのRNAの双方向インビトロ
転写(IVT)を行い、ほとんど同一のモル比で、2本のヘテロポリマー相補鎖を生成し
、IVTの間、自発的鎖・鎖アニーリングにより、hsRNAを形成する段階;
3)テンプレートDNAを除去する段階;及び
4)前記hsRNAを得て精製する段階。
【0041】
必要な場合、追加配列が、前記プロモーター配列の5’末端にも添加される。本発明
は、また次のように、他の配列を添加する方法を提供する:
1)前記プロモーター配列の5’末端に、意のTLR7/8リガンド類似配列を挿入
する段階;及び
2)T7ポリメラーゼを使用し、テンプレートDNAから双方向IVTを遂行する段階
であり、IVTの間、ssRNAの2個の相補的な上端鎖及び下端鎖がほぼ同一モル比に
生成され、続いて、アニーリングされてhsRNAを形成する段階。
【0042】
本発明のhsRNAは、TLR3リガンドとして作用することができ、140ないし1
,682baseの塩基長を有することができ、望ましくは、200ないし1,500base、
さらに望ましくは、300ないし1,000base、一層望ましくは、400ないし900
base、最も望ましくは、600ないし900baseでもあるが、それらに限定されるもので
はない。
【0043】
hsRNAの効果は、塩基の長さが長いほど、高い樹枝状細胞活性化レベルを示す傾向
を有する。しかしながら、塩基の長さが長くなるほど、大量製造コストも上昇する。
【0044】
同様に、本発明のdsRNA部分の塩基長は、106ないし1,648bpでもあり、
望ましくは、200ないし1,500bp、さらに望ましくは、300ないし1,000
bp、一層望ましくは、400ないし900bp、最も望ましくは、600ないし900
baseであるが、それらに限定されるものではない。
【0045】
前記hsRNAまたは前記dsRNAの塩基長は、20%範囲内において、増減されう
る。
【0046】
本発明は、配列番号63ないし93からなる群のうちから選択されるいずれか1つの塩
基配列を含み、TLR3リガンドとして作用することを特徴とするdsRNAを提供する
。前記dsRNAの塩基長は、106、156、206、306、319、397、40
6、424、466、506、588、606、664、706、733、806、82
2、885、1,032、1,153または1,648bpであってもよい。
【0047】
本発明で使用するリボ核酸の名称と基本情報は、下記表1及び下記表2に示した。表2
に示されているように、本発明において、同一の長さと配列とを有するが、さまざまな名
称で記載されてもいるが、NA、NVT(next adjuvantの略語)、VP1、VP10、
VP11がその例である。ただし、VP11は、VP10hsRNAをRNase T1
で処理したdsRNAである。また、NVTIV(NVT4)とVP20は、同一リボ核酸
を意味する。
【0048】
本発明は、hsRNAからssRNAを除去することによって得られる均質なdsRN
Aを提供する。
【0049】
前記hsRNAまたは前記dsRNAは、下記表1に示した配列番号の塩基配列によっ
てなるものでもある。下記表1は、本発明の実施例に記載されたそれぞれのhsRNAま
たはdsRNAと、配列との対応関係を示したものである。
【0050】
【0051】
前記hsRNAまたは前記dsRNAは、樹枝状細胞、好中球、B細胞、大食細胞、T
細胞、肥満細胞及び自然殺害細胞を含む免疫細胞を活性化させることができる。
【0052】
本発明は、真ん中に位置するヘテロポリマーdsRNA、及び両側3’末端の2個ss
RNAオーバーハングを含み、dsRNA及びssRNAのいずれも、任意の特定配列を
有した任意の定義された長さを有することができる薬剤学的組成物を提供する。
【0053】
本発明は、hsRNAからssRNAを除去することによって得られる均質なdsRN
Aを含む薬剤学的組成物を提供する。前記dsRNAは、配列番号63ないし93によっ
てなる群のうちから選択された任意の1つの塩基配列とその相補的配列とを含む。
【0054】
本発明は、前記hsRNAまたはdsRNAを含むワクチンアジュバントを提供する。
【0055】
本発明は、前記hsRNAまたはdsRNAを含む均質な薬剤学的作用剤を提供する。
【0056】
本発明は、前記hsRNAまたはdsRNAを含む癌治療的作用剤を提供する。
【0057】
本発明は、前記hsRNAまたはdsRNAを含む抗癌作用剤を提供する。
【0058】
本発明は、前記hsRNAまたは前記dsRNAを含み、及び追加のアジュバントまた
は免疫源をさらに含むことを特徴とする、ウイルス感染または細菌感染、癌または癌関連
疾病の予防用または治療用の薬剤学的組成物を提供する。前記「薬剤学的組成物」は、イ
ンフルエンザウイルスまたは脳髄膜炎球菌のような、ウイルス感染またはバクテリア感染
の予防用または治療用ワクチン組成物を含む。
【0059】
前記免疫源は、三価季節性インフルエンザワクチン、四価季節性インフルエンザワクチ
ン、不活化インフルエンザワクチン、または脳髄膜炎球菌(Neisseria meningitidisグル
ープA,C,Y及びW-135)ワクチンでもある。前記免疫源は、同種または異種亜型
のウイルスに対する防御効果を示すことができる。
【0060】
前記ウイルス感染または細菌感染の予防用または治療用のワクチン組成物は、前記hs
RNAまたは前記dsRNAがないワクチン組成物と比べ、免疫源(抗原)の必要使用量
を低減させることができる。前記必要使用量は、例えば、1/2以下、1/3以下、1/
5以下、1/10以下、1/25以下、1/50以下または1/100以下まで低減され
うる。
【0061】
前記ウイルス感染または細菌感染の予防用または治療用のワクチン組成物は、免疫源の
抗原性を増強させるか、あるいは維持または復元させることができる。
【0062】
前記ウイルス感染または細菌感染の予防用または治療用のワクチン組成物は、さらなる
アジュバントを含んでもよい。前記さらなるアジュバントは、水中油エマルジョンアジュ
バント、アルミニウム塩、フロイントアジュバント(Freund adjuvant)及びDOTAP
(1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane)からなる群のうちから選択され
る1以上でもあり、前記水中油エマルジョンアジュバントは、スクアレン(squalene)水
中油エマルジョンでもある。
【0063】
本発明は、前記hsRNAまたは前記dsRNAを含み、追加のアジュバントまたは免
疫源をさらに含みうることを特徴とする、癌または癌関連疾病を予防したり治療したりす
るための薬剤学的組成物を提供する。「薬剤学的組成物」は、癌を予防したり治療したり
するためのワクチン組成物を含む。
【0064】
本発明は、前記hsRNAまたはdsRNA、及び免疫源を含む、癌を予防したり治療
したりするためのワクチン組成物を提供する。
【0065】
前記免疫源は、ペプチド、全蛋白質抗原、蛋白質 抗原のドメイン、不活性化または生
弱毒化された個体、細胞に由来したもの、不活性化された癌組織、癌細胞質、癌関連抗原
、または免疫決定基(エピトープ)のDNAまたはmRNAをコーディングする蛋白質か
らなる群のうちから選択されうるが、それらに限定されるものではない。
【0066】
前述の癌予防用または癌治療用のワクチン組成物は、前記hsRNAまたは前記dsR
NAがないワクチン組成物と比べ、免疫源の必要使用量を低減させることができる。前記
必要使用量は、例えば、1/2倍以下、1/3以下、1/5以下、1/10以下、1/25以下、1/
50以下または1/100以下まで低減されうる。
【0067】
前述の癌予防用または癌治療用のワクチン組成物は、免疫源の抗原性を増強させたり、
維持または復元させたりすることができる。
【0068】
前述の癌予防用または癌治療用のワクチン組成物は、さらなるアジュバントを含んでも
よい。前記さらなるアジュバントは、水中油エマルジョンアジュバント、アルミニウム塩
、フロイントアジュバント、及びDOTAP(1,2-dioleoyl-3-trimethylammoniu
m-propane)からなる群のうちから選択される1以上でもあり、前記水中油エマルジョン
アジュバントは、スクアレン水中油エマルジョンでもある。
【0069】
前記癌は、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞種及び肉腫を含むが、それらに制限される
ものではない。癌のさらに具体的な例としては、扁平細胞癌腫、骨髄腫、皮膚癌、肺癌、
小細胞肺癌、非小細胞肺癌、大腸癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫
、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸管癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リ
ンパ芽細胞性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、
甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形成膠芽細胞腫、子宮頸部癌、
脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌腫、頭頸部癌、またはそれらの転移癌が含
まれるが、それらに制限されるものではない。
【0070】
前述の癌予防用または癌治療用のワクチン組成物は、癌転移抑制効果を示すことができ
る。
【0071】
本発明は、前記hsRNAまたは前記dsRNA、及びOX40抗体またはPD-1抗
体を含む癌予防用または癌治療用の薬学組成物を提供する。
【0072】
前記OX40抗体は、OX40アゴニスト抗体でもあり、PD-1抗体は、PD-1拮
抗剤抗体でもある。また、前記OX40抗体は、OX40と特異的に結合するモノクロー
ナル抗体、またはその抗原結合性断片でもある。PD-1抗体は、PD-1と特異的に結
合するモノクローナル抗体、またはその抗原結合性断片でもあり。前記OX40抗体また
はPD-1抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体またはマウス抗体でもあり、ヒト
不変領域を含んでもよい。前記ヒト不変領域は、IgG1,IgG2,IgG3及びIg
G4不変領域からなる群のうちから選択され、望ましくは、IgG1不変領域またはIg
G4不変領域である。一実施態様において、前記抗原結合性断片は、Fab,Fab’-
SH,F(ab’)2,scFv及びFv断片からなる群のうちから選択される。前記P
D-1拮抗剤抗体としても使用される特異的ヒトPD-1モノクローナル抗体の例として
は、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、ニボルマブ(nivolumab)、アベルマブ(avel
umab)、ピディルリズマブ(pidilizumab)などを含むあ、それらに制限されるものでは
ない。
【0073】
本発明の実施例で使用された4種の異なるバックボーンのベクターに由来するhsRN
Aを表2に列挙した。以下の実施例においては、各hsRNAをそれぞれの名称と称する
。
【0074】
【0075】
以下、実施例を介し、本発明についてさらに詳細に説明するが、下記の実施例は、単に
説明の目的のためのものであり、本願発明の範囲を限定するものではない。実施例のほと
んど、全部ではないところにおいて、RNase T1処理されたdsRNA、例えば、
NA(別称として、NVT、VP1、VP10)がテストされた。NAは、別途に、hs
RNAとして言及されなければ、dsRNAを示す。
【実施例1】
【0076】
hsRNA基盤ネクストアジュバントの生体内樹枝状細胞(DC)活性化
本実施例は、前記hsRNA基盤ネクストアジュバント(NAと略称する)のC57B
L/6マウスの腹腔内投与の生体内先天免疫活性を証明する。(
図1)。
【0077】
本発明のNAの一例(別称して、NVTまたはVP10)は、Poly(I:C)100μ
gと同等であるか、あるいはそれ以上のレベルに樹枝状細胞マーカー(CD40、CD8
6、MHC-II)の分化を誘導した(
図1)。前記NAは、ナイーブCD4T細胞をTh
1CD4T細胞側への偏り(skewness)に係わる1型インターフェロンベータ(IFN-
β)及びIL-6及びIL-12の分泌を誘導した(
図1)。また、NAは、T-bet
(Th1細胞マーカー)及びIFN-γを誘導したが、Th2サイトカイン(IL-4)
及びTh17サイトカイン(IL-17A)は、誘導しなかった(
図1)。前記NAは、
前記Poly(I:C)陽性対照群に比べ、DCを強力に活性化させる。
【実施例2】
【0078】
生体内DC活性化は、hsRNAの配列ではない長さに依存する
前記hsRNAは、2個の独立したバックボーンから、dsRNA領域が106-80
6bpに変わる、さまざまな長さに準備されたが、ssRNAオーバーハングは、本実施
例2において、両末端において、17塩基で一定し(
図2A及び
図2B)、マウスにおい
て、脾臓DC活性化のために腹腔でテストされた。
【0079】
CD40とCD86との誘導によって検査されたように、DC活性化レベルは、リボ核
酸の長さが長いほど上昇し、400~900baseで高い活性を示す(
図2C及び
図2D)
。
【0080】
また、全てのhsRNAは、陽性対照群であるPoly(I:C)より、さらにすぐれた活
性を示した。
【0081】
全てのssRNAオーバーハングは、各末端において、非相補的17塩基であり、総3
4塩基であるために、hsRNAからのDC活性化において、違いは、dsRNA長が長
くなることにより、生じなければならない。従って、前述の約406ないし806bpの
範囲を有するdsRNAが高い活性を示した。
【0082】
高い活性を示す540hsRNA(506bp dsRNA)を多様な濃度(0.5~
20μg)で再検査した結果、10μgにおいて、最大活性を示した。前記活性は、生体
内において、Poly(I:C)と比較し、10倍ないし20倍高い活性を示した。
【実施例3】
【0083】
抗原-特異的抗体反応は、hsRNAの長さに依存する
広範囲のさらに多くのRNA(353~1,682base)は、実施例2に示された最初
の2つのベクターとは異なる3番目バックボーンベクターに由来する(
図3A)。
【0084】
IFN-βプロモーター駆動ベクターと共に、それらRNAをHEK293に共移入(
co-transfection)した後、先天免疫活性化の代理レポーター(surrogate reporter)を
決定した(
図3B)。前記IFN-βプロモーター活性は、hsRNAとdsRNAとの
長さに比例して増大し、406bpないし806bpの範囲で最大に達した。注目すべき
こととして、前記活性は、RNAの特異的配列に独立しており、それは、実施例2と一貫
している。
【0085】
それらのうちいくつか(R3、R5、R7、R10)は、モデル抗原OVAと複合体化
され、抗OVAIgGの誘導につき、マウス生体内で試験された。
【0086】
前述のところと一貫し、抗OVA IgG1、及びTh1媒介された抗OVA IgG2
の高レベルは、R5(dsRNA長664bp)の近傍で観察された(
図3C)。
【0087】
総合すれば、hsRNA(140ないし1682base)及びdsRNA(106ないし
1648bp)は、先天性及び適応反応にすぐれた効果を示した。
【0088】
従って、本発明は、前述のところで試験されたそれぞれのhsRNA(140ないし1
682bp)から20%範囲において、短くなったり長くなったりするhsRNA(11
2~2,018base)を請求する。また、本発明は、配列番号63ないし93から選択さ
れたそれぞれのdsRNA以外にも、それらの20%範囲において、短くなったり長くな
ったりするdsRNA(85~1,977bp)を含む。
【実施例4】
【0089】
hsRNA及びdsRNAの物理化学的特性分析
HPLC分析及びアガロースゲル電気泳動は、本発明の高度に均質な大きくによってな
るhsRNA及びdsRNAを証明し(
図4A)、それは、Poly(I:C)と対照される
(
図8C)。
【0090】
前記NAは、は、45℃で150日以上安定している(
図4B)、RNAseが多く存
在する血清が補充された培地においては、非常に短い半減期を有するが(
図4C)、それ
は、ターゲッティングの可能な方式として、ヒットエンドランを反映させるものである。
前記NAに複合体化された抗原は、室温において、延長された時間の間、保存が可能であ
った(
図4D)。
【実施例5】
【0091】
hsRNAとdsRNAと間の共通及び区別される免疫プロファイリング
(i)RNase T1を処理していないhsRNA(NVT4-T1)、(ii)RN
ase T1を処理したdsRNA(NVT4+T1)を、BalB/Cマウスに皮下(
s.c.)処理した後、先天性免疫指示子をNVT4(VP20)を使用し、24,48
時間が経た後、生体内で比較した。
【0092】
hsRNAとdsRNAとのいずれも、DC活性化を強く誘導したが、dsRNAがh
sRNAに比べ、さらに多くの免疫細胞(特に、B細胞及び好中球)を増加させ、それは
、TNF-α、IFN-β及びIL-6も、それと比例し、増加と相関す(
図5)。総合
すれば、RNAがさらに強く先天免疫を誘導する。hsRNAが、低いレベルに、好中球
、IL-6及びTNF-αを誘導し、安全性問題に有利であろう。
【実施例6】
【0093】
NAと、他のアジュバントとのうちのTh1極性化免疫反応の比較
前記OVAを、NA、Alum、スクアレン(SE)、IFA、Poly(I:C)に複合
体化させた後、筋肉に投与し(
図6A)、免疫反誘導を比較した。
【0094】
Th2免疫反応(IgG1)の活性は、類似しているが、他のものよりさらに高いTh
1反応(IgG2c)は、NAアジュバントされたOVAから生じた(
図6B)。脾臓に
おいて、IFN-γを分泌するさらに多くの脾臓CD8T細胞と脾臓CD4T細胞が、N
AアジュバントされたOVAワクチンフォーマットに対する反応として増殖した(
図6C
)。鼻腔に投与したときにも、他のアジュバントより、NAが体液(涙、鼻腔及びドレナー
ジ)及び血清において、さらに強力に粘膜IgAと粘膜IgGとを誘導した(データは、
示されていない)。
【実施例7】
【0095】
hsRNAと、hsRNAプラス追加アジュバントとの先天性及び抗原特異的な抗体反
応
(i)NVT:dsRNA(NA)、
(ii)NVTII:NVT(NA)+SE(スクアレンエマルジョン)の2個剤形を準備し
た(
図7A)。BalB/Cマウスに筋肉内注射した後、DC活性をフローサイトメトリ
ーによって測定した。鼠蹊部リンパ節(iLN)においてDC刺激は、NVTにおいて、
さらにNVTIIでさらに高かった(
図7B)。
【0096】
また、(i)OVA、(ii)OVA+NVT、(iii)OVA+NVTIIを含む、モデ
ルワクチンを準備し、抗OVA IgG1(Th2反応)及び抗OVA IgG2a(Th
1反応)につき、同一マウスで試験した。
【0097】
その結果、OVA+NVTは、OVA単独より約100倍さらに強い抗体反応を誘導し
た。OVA+NVTIIは、OVA+NVTより2倍以上さらに強い抗体反応を誘導した(
図7C)。
【実施例8】
【0098】
hsRNAの構造及び長さの均質性
本発明のhsRNAは、真ん中に位置するdsRNA、及び両側3’末端において、2
個ssRNAオーバーハングを有する。2つのdsRNA及びssRNAは、非ホモポリ
マー配列を有し、正確な長さでもって定義され、ホモポリマー媒介の鎖滑り及び鎖延長を
防止することができる。
【0099】
dsRNA領域は、任意の特定長と、任意の特定配列とを有し、完全に相補的である。
前記配列は、人工配列でもあり、自然配列でもあるが、タンパク質を暗化しない。前記d
sRNAの2つのい3’末端において、前記2つのssRNAは、暫定的TLR7/8類
似リガンドとして作用する、任意の特定長と、任意の特定配列とを有する。前記2つのs
sRNAテールは、相補的ではないために、2つのオーバーハング配列内、及び2つのオ
ーバーハング配列間に塩基対形成が起こらず、内在的に鎖延長を遮断するが、TLR7/
8暫定的リガンドに該当する(
図8A)。
【0100】
2つの末端において、前記2つのssRNAは、RNase T1処理によって除去さ
れ、ブラント末端dsRNAを生成することができる。真ん中に位置する前記dsRNA
の存在は、RNaseIII処理によって確認された。前記dsRNAは、短時間、RNa
seIIIにより、平均20ないし25bpの切片に切断される。前記dsRNAのさらに
長い処理は、12bp以下の長さを有する切片を生成する。前述の結果は、多様なRNa
seの作用方式と一貫する。両側3’末端に、51baseと58baseとのssRNAオーバ
ーハングを有するhsRNAにRNAseIIIを処理すれば、20ないし25bpのds
RNA切片と、約50baseのssRNA切片とが確認されると予測される。同一の前記h
sRNAに、RNAseIII及びRNAseT1を処理する場合、ssRNAは、分解さ
れ、20ないし25bpのdsRNA切片だけが残った。RNaseAを処理すれば、全
てのRNAが分解された(
図8B)。
【0101】
また、hsRNAにRNase T1を処理する場合、前記dsRNAの部位の相補性
及び安全性は、処理前後において、アガロースゲル上の単一から確認された(
図8C)。
【0102】
任意の特定hsRNAは、単一塩基単位まで極めて高い長さ均質性を有する(
図2A、
図3A及び
図4A)。
【0103】
他の具的例として、ポリウリジン(U)基を含む任意の特定一本鎖(17base)が、d
sRNAの両側に追加されうる。また、ヘアピン構造や回文環構造のような内部dsRN
Aを形成するように、特定配列を追加し、安定性を有したり、TLR7類似リガンドとし
て作用したりするように、一本鎖をデザインすることができる。
【0104】
それと対照的に、競争薬物であるPoly(I:C)は、極端な長さ多様性を有し、一定長
に製造されえない。代わりに、それは、内部に特定することができないニックを有し、d
sRNAの3’末端のような特定された部位において、ssRNAテールを有さない人工
ホモポリマーdsRNAである。Poly(I:C)の長さ多様性は、鎖滑りと鎖延長とによ
って引き起こされる。その結果、dsRNA部位の特定することができない部位に複数ニ
ックが形成され、それらは、RNase T1により、多様な長さに切断される(
図8D
)。さらに、dsRNAを形成する前述の上部鎖及び下部鎖の数は、Poly(I:C)内の
制御されない鎖延長によって特定されえない。従って、Poly(I:C)は、RNase
T1によって消化されやすい。Poly(I:C)の極端的非均質性は、原記事のうち一つに
公開されている(非特許文献2)(
図8D左側)。
【0105】
Poly(I:C)-L(long species)のRNAseIII消化は、Poly(I:C)-S(s
hort species)と類似した小さい種を生成する(
図8D)(非特許文献2)。その極端な
非均質性は、短いPolyC(平均100塩基のP100)を、長いPolyI(平均400塩基
のP400)に、相補的結合を介する鎖延長を低減させることにより、部分的に改善され
る。それにもかかわらず、前記長さは、100bpから100kbpまで多様な範囲にお
いて変わる(非特許文献5)。
【0106】
本発明のリボ核酸は、既存発明とは、次の事項において本質的な違いを有する。
【0107】
Poly(I:C)と対照的に、本発明のリボ核酸は、1)高い長さ均質性を有し、配列の
非同型重合であり、完全な相補性により、dsRNAにニックを有さず、2)TLR3リ
ガンド及びTLR7類似リガンドとして作用することができる。
【0108】
siRNAと比較し、本発明のリボ核酸は、1)合成されるsiRNAと比較し、製造
過程において本質的違いを有し、2)siRNAが有する特定遺子を標的阻害する機能を
有さず、3)siRNAの範囲が21ないし25bpと短く、TLR3を刺激することが
できないのに反し、本発明のリボ核酸の長さは、45bp以上であるので、十分な活性を
示すTLR3リガンドとして作用することができ(非特許文献1)、4)siRNA末端
において、非常に短い3’オーバーハングは、機能がない単純な残存配列に該するが、本
発明のssRNAは、特定長以上(例えば、17base以上)の特定配列を有し、TLR7
/8類似リガンドの役割を行う。ssRNAを有する前記hsRNAは、dsRNAと比
較し、インビトロで低い毒性指標を示した(実施例5)。
【実施例9】
【0109】
鼻腔投与を介するdsRNAにアジュバントされた不活化インフルエンザ全ワクチン(
iPR8)に対する免疫反応
BalB/cマウスに、NA(NVT)をiPR8と共に投与する場合、24時間が経
た後、縦隔洞リンパ節において、mDC細胞とrDC細胞との数が増加し、DC(CD8
0、CD86)が活性化されていて、96時間後、基底レベルに低下した(データは、示
されていない)。また、iPR8と共にNVTを処理すれば、肺胞洗浄液においても、総
細胞、肺胞大食細胞、好中球及び自然殺害細胞が増加し(
図9B)、それは、IL-6、
IL-12及びTNF-αの増加と比例し、NVT単独も、そのような抗炎症性サイトカインの上昇に肯定的効果を示した(
図9C)。そのような先天免疫指標の増加は、GCB(germinal center BB)細胞及びT
FH(follicularhelper T cell)、並びに血清及び鼻腔洗浄液におけるIgGとIgAとの増加と同伴している(
図9D及び
図9E)。
【0110】
前記NA アジュバント単独でも、抗原なしに致死量生ウイルス感染に対する防御効果
を有した。前記NAがマウスに鼻腔に何回か投与された場合、寿命は、平均4日以上延長
され、ウイルス感染(viremia)に係わる死亡率は、約20%低下した(データは、示さ
れていない)。また、抗原なしに、本発明の前記NAアジュバント単独は、ロバストな免
疫増強作用を示した。
【実施例10】
【0111】
hsRNAによる商業用インフルエンザスプリットワクチン抗原低減効果
商業的ワクチン抗原において、アジュバント役割を試験した。試験されたワクチンは、
(i)四不活性化インフルエンザワクチン(4IIV,Vaxigrip,Sanofi Pasteur)、(
ii)4IIV+NVT(NA)、(iii)4IIV+NVTII(NA+SE)を含む。メ
スBalb/cマウスに、2週間隔で、筋肉内(i.m.)へのプライミング及びブースティング後、IgGレベル及びヘマグルチン化阻害力価(HAI)を、プライミング後の18週にわたって決定した(
図10A)。
【0112】
その結果、抗原用量は、非アズバント抗原を単独に接種した場合と比較し、NVTアズ
バントされたグループにおいては、約1.5レベルであり、NVTIIアズバントされたグ
ループにおいては、約1/25に低減された(
図10B)。そのような効果は、注射後、
最小17週まで持続した(
図10C)。本発明のNAアジュバントは、抗原用量を節減す
ることができ、必要な免疫を確保するのに必要なワクチン抗原の量を、かなり低減させる
ことができた。
【0113】
前記結合抗体の増加は、血球凝集阻害能(HAI:hema agglutination inhibition)
力が40以上増大することと密接に関連しており、それは、チャレンジまたは感染された
個体の50%に十分な防御免疫を提供することができるような、インフルエンザウイルスに対する防御の相関関係(COP:correlate of protection)である。2つのアジュバントがHAI力価をかなり増大させたとしても、NVTIIは、インフルエンザAウイルス(IAVサブタイプH1N1)及びインフルエンザBウイルス(IBV)のいずれについても、3倍ないし5倍のHAI力価を特に誘導した(
図10D)。
【実施例11】
【0114】
hsRNAによる商業用脳髄膜炎ワクチンの抗原用量低減効果
マウスに、メナクトラワクチンを投与しながら、アジュバントとしてNAを使用した(
図11A)。
【0115】
メナクトラワクチンは、脳髄膜炎球菌(Meningococcus)であるNeisseria meningitidi
sグループ(A、C、Y及びW-135)に対するCRM197接合体ワクチンである。
具体的には、ワクチン抗原は、ジフテリア毒素由来キャリア蛋白質CRM197に、共有
して連結されている。本発明のNVTIIアジュバントされたメナクトラは、メナクトラ特
異抗体を5倍以上強く誘導した(
図11B及び
図11C)。
【実施例12】
【0116】
NVTIIの免疫原性復元効果
インフルエンザワクチン(2018/2019 QIV Vaxigrip)を、37℃で5週間
処理し、免疫原性を消失させた後、NVTIIとアジュバント化させ、筋肉内(i.m.)
注射した。プライミング18週まで、指定された時間点において、IgG ELISA及びHA
Iアッセイを行った(
図12A)。
【0117】
その結果、結合抗体が格段に増加し、免疫原性が復元されたように見えた(
図12B)
。また、最小10倍の抗原節減効果があった。18週目、H1N1とIBVとに対するH
AI力価が40以上に増大したのは、中和抗体の増加と関連がある(
図12C)。
【0118】
他の実験において、VaxigripをNVTIIと事前混合し、37℃で5週間放置すれば、抗
原性が完全に維持され、HAI力価も、40以上に増大した(データは、示されていない
)。
【実施例13】
【0119】
hsRNAのインビボ黒色腫成長に対する抗腫瘍効果
7週齢のメスC57BL/6マウスに、B16F10-OVA黒色腫細胞を皮下移植し
た後、6日目からNAを、腫瘍内(i.t.)または筋肉内に2日間隔で3回にわたって
投与した(
図13A)。
【0120】
対照群に比べ、NAを投与したマウスにおいて、腫瘍成長が遅延され、さらに長く生存
した(
図13B及び
図13C)。
【実施例14】
【0121】
hsRNAのインビボ大腸癌と肺癌との成長に及ぼす阻害効果
7週齢のメスC57BL/6マウスに、CT26大腸癌とLL/2肺癌とを皮下移植し
た後、2日に1回総8回にわたり、NVT単独で、皮下、腫瘍組織内(i.t.)または
筋肉内(i.m.)に投与した。
【0122】
マウスにおいて、大腸癌と肺癌の成長は、前記NA処理によって遅延された(
図14)
。
【実施例15】
【0123】
hsRNA単独のインビボ三重陰性乳癌(TNBC)成長と肺転移に対する阻害効果
7週齢のメスC57BL/6マウスに、4T1三重陰性乳癌(TNBC)細胞株を、乳
腺脂肪組織皮下移植後、8日目からNA単独で、腫瘍内(i.t.)に、2日間隔で9回
投与した(
図15A)。
【0124】
その結果、原発性乳癌が60%遅延され(
図15B)、そのような成長中止(arrest)
は、肺への遠隔転移における格段な低減と一致した(
図15C)。
【実施例16】
【0125】
インビボhsRNA単独、またはhsRNA-複合体化のTAAワクチンの肝臓に対す
る抗-転移
ワクチン(i)PBS,(ii)OVA,(iii)NA,(iv)OVA+NAを、0日に
腹膜内投与した。3日後、同一ワクチンを腹膜内投与した後、脾臓から肝臓への転移程度
を調査した(
図16A)。
【0126】
NA処理された群と、OVA+NA処理された群とにおいて、転移は、非処理群または
OVA単独処理群よりもさらに低かった(
図16B及び
図16C)。18日目、肝
臓への転移は、NA単独において、約50%、及びOVA+NA群において、90%以上
ほど低かった(
図16D)。生存につき、全てのマウスは、全ての他の群において、14
日から始まって18日以内に死亡し、OVA+NA処理群において、マウスは、24日か
ら始まって28日以内に死亡した。
【実施例17】
【0127】
hRNAアジュバントされたOX40抗体複合体の原発性及び遠隔性の黒色腫成長の抑
制効果
B16F10/OVA黒色腫細胞を、7週齢メスC57BL/6マウスの左側脇腹に皮
下移植し、腫瘍を移植した後、2日間隔で、4回(6日、8日、10日及び12日)原発
癌組織に、癌ワクチン(i)PBS,(ii)PD-1Ab,(iii)IR細胞(放射線を
照射した癌細胞),(iv)IR細胞+NA+OX40Abをそれぞれ投与した(
図17A
)。各癌の成長は、22日目まで測定した。
【0128】
その結果、原発性癌成長は、前述のPD-1抗体及びIR細胞においてのみ、約50%
ほど及び20%ほどそれぞれ抑制され、90%成長中止が、IR+NVT+OX40Ab
群で観察された(
図17B)。
【0129】
また、IR細胞のない、NA+OX40抗体は、原発性癌の成長を、前述のところとほ
ぼ同一程度に抑制し、前記ワクチン組成物において、前記TAAを必要としない(
図17
C)。
【0130】
15日目、反側右側腹部に、同種(allogeneic origin)由来の2つの癌(B16F1
0/OVA)及びT細胞リンパ腫(EG7/OVA))を第2部位に移植した。その後、
それ以上治療用ワクチンを投与せず、16日間、癌組織の成長程度を測定した。
【0131】
その結果、本発明の、NA+OX40Ab注射された全てのマウスは、第2部位癌にお
いて、ほとんど成長しなかった。対照的に、NA+イソタイプ抗体群の全てのマウスは1
1日前に死亡した。従って、腫瘤塊の大きさは、に表示していない(
図17D及び
図17
E)。
【0132】
以上の結果をまとめれば、原発性黒色腫の成長は、IRと係わりなく、NA+OX40
抗体により、90%以上阻害された。さらに、他の部位に移植された遠隔癌は、NA+O
X40抗体によってまた中止された。
【実施例18】
【0133】
hsRNAアジュバントされたPD-1抗体またはOX40抗体複合体の原発性及び遠
隔性黒色腫の阻害効果
B16F10/OVA黒色腫細胞を、7週齢メスC57BL/6マウスの右側及び左側の
脇腹(flank)に皮下移植した後、癌ワクチン(i)PBS,(ii)NA,(iii)NA+
OX40抗(OX40 Ab)(clone OX-86、Rat IgG1、InvivoGen)及び(iv
)NA+PD-1抗(PD-1Ab)(clone RMP1-14、Rat IgG2a/λ、In
vivoGen)を腫瘍移植した後、2日に1回ずつ4回(6日、8日、10日及び12日)、
左側原発性癌組織に腫瘍内投与した。左側脇腹側(ワクチン接種された腫瘍)及び右側(
遠隔腫瘍)において、癌成長を20日まで測定した(
図18A)。
【0134】
その結果、原発性癌に対するNA+PD-1抗体の阻害効果は、NA+OX40 Ab
のそれと類似しているか、あるいはそれよりすぐれていた。同一結果が、非ワクチン接種
の遠隔腫瘍で観察された(
図18B及び
図18C)。
【配列表】