IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一般社団法人LISPOの特許一覧

<>
  • 特許-ラグビー用スパッツ 図1
  • 特許-ラグビー用スパッツ 図2
  • 特許-ラグビー用スパッツ 図3
  • 特許-ラグビー用スパッツ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ラグビー用スパッツ
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/12 20060101AFI20240906BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A63B71/12 C
A41D13/00 115
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023559920
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2022042040
(87)【国際公開番号】W WO2023085394
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2021183891
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521357065
【氏名又は名称】一般社団法人LISPO
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】北川 俊澄
(72)【発明者】
【氏名】大城 信之
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0032824(US,A1)
【文献】特開2007-23465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0266537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/00-71/16
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショートパンツのインナーとして着用されるラグビー用スパッツであって、
着用者の膝上から大腿部を覆う脚部分の表面に、他の部分よりも摩擦係数が大きい高摩擦領域が設けられており、
前記脚部分の裏面にポケットを有し、当該ポケット内に所要の厚みを有するパッドが装着されることによって、前記着用者の肌を覆う部分の表面の一部が部分的に隆起した隆起部が形成されることを特徴とする、ラグビー用スパッツ。
【請求項2】
前記高摩擦領域は、前記脚部分の前面側および後面側にそれぞれ設けられている、請求項1に記載のラグビー用スパッツ。
【請求項3】
前記ポケットの前記着用者の肌に触れる側の外面にも前記高摩擦領域が設けられている、請求項1に記載のラグビー用スパッツ。
【請求項4】
裾まわりのサイズを調整する調整手段を有する、請求項1に記載のラグビー用スパッツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッツに関し、特に、ラグビーフットボール(以下「ラグビー」という)の競技者が着用するラグビー用スパッツに関する。
【背景技術】
【0002】
ラグビーは、回転楕円体の形状をした1つのボールを2つのチームが奪い合いながら得点を競い合う球技であり、多くの国や地域で愛される国際的な団体競技の一つとして知られている。
【0003】
ラグビーの試合中、ボールがタッチラインの外に出た場合には、ラインアウトによりプレーを再開する。ラインアウトでは、両チームの選手がそれぞれタッチラインに対して直角に一列ずつに並び、その間にボールを投げ入れる。その際、ラインアウトの成功率を高めるべく、近年においては、ジャンプしてボールをキャッチする選手(以下「ジャンパー」という)を2名の選手が下側から支えるようにして補助することが主流となっている。
【0004】
ところで、ジャンパーを補助する選手(以下「リフター」という)が汗で手を滑らせてしまうと、ジャンパーが空中でバランスを崩すといった危険を伴うおそれがある。そのような事態を可能な限り回避するため、ジャンパーの大腿部にテーピングを巻くなどしてグリップ力を高める手法をとるのが一般的である。また、特許文献1には、ジャンパーの大腿部に装着するバンド形状をした補助具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-524080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている補助具は、伸縮性のある弾性素材が使用されており、その弾性力によって装着者の大腿部を締め付けることで、大腿部における装着位置を固定することとしている。そのため、装着者の脚に違和感を与えるおそれがある。ラグビーは、フィールド内を走ることを基本とする競技であり、脚の違和感はパフォーマンスと密接に関連することから、その影響は決して少なくはない。
【0007】
上記した課題に鑑み、本発明は、ラグビー競技において、装着者に違和感を与えることなく、ラインアウト時のグリップ力を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ショートパンツのインナーとして着用されるラグビー用スパッツであって、着用者の膝上から大腿部を覆う脚部分の表面に、他の部分よりも摩擦係数が大きい高摩擦領域が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記構成を有するラグビー用スパッツにおいて、前記高摩擦領域は、前記脚部分の前面側および後面側にそれぞれ設けられているものであってもよい。
【0010】
また、前記着用者の肌を覆う部分の表面の一部が部分的に隆起した隆起部を有するものであってもよい。
【0011】
ここで、前記隆起部は、前記脚部分の裏面にポケットを有し、当該ポケット内に所要の厚みを有するパッドを装着可能に構成されていても構わない。
【0012】
さらに、前記ポケットの前記着用者の肌に触れる側の外面にも前記高摩擦領域が設けられていてもよい。
【0013】
加えて、裾まわりのサイズを調整する調整手段を有するものであっても構わない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ショートパンツのインナーとして着用されるラグビー用スパッツの脚部分の表面に高摩擦領域が設けられているので、ラインアウト時のジャンパーが当該スパッツを着用すれば、リフターは高摩擦領域が設けられている部分に手をあてがってジャンパーを補助することが可能となる。これにより、ラグビー競技において、ラインアウト時のグリップ力を高めることができる。また、この高摩擦領域は、ラグビーの競技者の多くが練習や試合で普段から着用する習慣のあるインナースパッツに設けられているため、着用者となるジャンパーに違和感を与えるおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るラグビー用スパッツの(a)前面図、および(b)後面図である。
図2】上記ラグビー用スパッツの外観を概略的に示した(a)前面図、および(b)後面図である。
図3】(a)脚部分の前面側に設けられた高摩擦領域の部分拡大図、(b)当該高摩擦領域に施されたメッシュ部分の態様を示す概略構成図である。
図4】(a)脚部分の後面側に設けられた高摩擦領域の部分拡大図、(b)当該高摩擦領域に施されたメッシュ部分の態様を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るラグビー用スパッツ(以下、単に「スパッツ」という)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、実施形態に係るスパッツ10は、ラグビーの競技者がショートパンツのインナーとして着用するものであり、基本的には、広く一般に流通しているラグビースパッツと同様の構成を有する。
【0018】
本実施形態のスパッツ10は、いわゆるロングタイプと呼ばれる仕様のものであり、本体部分12と左右の脚部分14L,14Rとを含む。本体部分12は、着用者の股上を覆う部分であり、脚部分14L,14Rの各々は、着用者の股下のうち、特に、膝上から大腿部を覆う部分である。なお、スパッツ10は、全体として一体的な物品を構成しているが、便宜上、本体部分12、脚部分14L,14Rと称して説明することとする。
【0019】
本体部分12および左右の脚部分14L,14Rの各々は、ベース生地として、肌触りがよく、伸縮性のある合成樹脂製の生地(例えば、ポリエステル、ポリウレタンなどの合成繊維素材)を使用している。また、本体部分12の腰回り(ウエストバンド)には弾性を有する帯状をしたゴム材料が用いられている。
【0020】
上記のような基本構成を有するスパッツ10は、ラグビーの競技者のうち、特に、ラインアウト時のジャンパーを担う選手が着用する。このスパッツ10は、ラインアウトの際に有用となる工夫を凝らしたものである。以下、スパッツ10における特徴的な仕様について、図1から図4を適宜参照しながら、詳細に説明する。
【0021】
本実施形態のスパッツ10では、左右の脚部分14L,14Rの表面に、他の部分(例えば、本体部分12)よりも摩擦係数が大きい高摩擦領域16が設けられている。高摩擦領域16には、シリコン樹脂によるプリント加工が施されている。図3および図4に示すように、本実施形態では、外形が方形状をした領域内にシリコン樹脂がメッシュ状にプリントされた方形メッシュ部分(図3(b)および図4(b))によって高摩擦領域16が構成されている(なお、図3(a)および図4(a)では、当該領域を明示するための便宜上、外枠を表示している)。この高摩擦領域16におけるメッシュの線径(シリコン樹脂部分の幅)は、概ね1mm程度、目開き(隣り合うシリコン樹脂部分の間隔)は、概ね2mm程度の寸法で形成されている。また、シリコン樹脂の厚みについては、着用者に違和感を与えることのないように、可能な限り薄く(例えば、0.1mm~0.3mm程度の厚みに)形成されている。
【0022】
本実施形態では、上記のような構成からなる高摩擦領域16が、左右の脚部分14L,14R各々の前面側および後面側にそれぞれ設けられている。それぞれの高摩擦領域16は、ジャンパーの大腿部に巻かれるテーピングと同じ質感を有するものとなるように形成されている。
【0023】
脚部分14L,14Rの前面側の裏面(着用者の肌に触れる側の面)には、それぞれ、ポケット(不図示)が形成されている。本実施形態では、このポケットが、脚部分14L,14Rの前面側に設けられた高摩擦領域16のちょうど裏側に配置されている。このポケット内には、所要の厚みを有するウレタン製のパッドが装着される。パッドの厚みについては、特に限定されないが、リフターの手が触れたときに、引掛りとして機能する程度を厚みが最低限必要となる。一方、装着者に違和感を与えることのないように、パッドの厚みは必要最低限に抑えることが望ましい。パッドの厚みとしては、概ね、5mm~20mm程度である。こうしてパッドが装着されると、脚部分14L,14Rの表面の一部が部分的に隆起した状態となる。すなわち、本実施形態では、ポケットの内側にパッドを装着することによって、隆起部が形成されることとなる。また、ポケットの外面(着用者の肌に触れる面)にも、高摩擦領域16と同様の構成を有する高摩擦領域(不図示)が設けられている。
【0024】
さらに、脚部分14L,14Rの裾回りには、上記した本体部分12の腰回りと同様、ゴム材料が用いられている。また、裾回りの内股部分には、裾回りのサイズを調整する調整手段として、調整ベルト18L,18Rが設けられている。調整ベルト18L,18Rとゴム材料が互いに対向する部分には、それぞれ、面ファスナーのオス・メスが取り付けられている。ゴム材料に取り付けられたメスの面ファスナーに対して、調整ベルト18L,18Rに取り付けられたオスの面ファスナーを付ける位置を調整することにより、裾回りのサイズが調整できるようになっている。
【0025】
続いて、本実施形態のスパッツ10を着用することの利点について説明する。ジャンパーがスパッツ10を着用しているとき、リフターは高摩擦領域16が設けられている部分に手をあてがってジャンパーを補助することが可能となる。これにより、ラグビー競技において、ラインアウト時のグリップ力を高めることができ、その結果、リフターが汗で手を滑らせて、ジャンパーが空中でバランスを崩すといった危険を可能な限り回避することができる。また、この高摩擦領域16は、ラグビーの競技者の多くが練習や試合で普段から着用する習慣のあるインナースパッツに設けられているため、着用者となるジャンパーに違和感を与えるおそれもない。
【0026】
また、高摩擦領域16には、ジャンパーの大腿部に巻かれるテーピングと同じ質感を有するものとなるような材料を選定している。そのため、仮に、公式戦などの試合でスパッツ10の着用が認められない場合であっても、普段の練習中にスパッツ10を着用しておけば、試合で使用するテーピングと同じ感覚で練習を行うことができ、試合でも違和感が少ない仕様となっている。また、試合の感覚に合わせて練習でも大腿部にテーピングをわざわざ巻く必要がなくなるので、テーピングを無駄に消費する必要がなくなり、経済的な面でも利点が得られる。
【0027】
さらに、ポケット内にパッドを装着した仕様とすれば、リフターの指に引掛りができるため、ジャンパーの補助をより一層安定させることができる。これにより、ジャンパー、リフターの双方にとっての安全面においても利点が得られることとなる。
【0028】
加えて、裾回りのサイズ調整手段、および、ポケット外面の高摩擦領域により、ラインアウトの際、着用者との間にずれが生じにくい仕様となっている。このことは、安全面における利点であると同時に、着用者にとっての快適な競技環境に資するといった観点でも有用である。
【0029】
以上、本発明に係るラグビー用スパッツを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態で実施されても構わない。
【0030】
<変形例>
(1)上記実施形態で説明した高摩擦領域の態様は、好ましい一例を示したにすぎず、その他の態様を採用しても勿論構わない。例えば、上記実施形態では、左右の脚部分各々の前面側および後面側に高摩擦領域がそれぞれ設けられていたが、前面側と後面側の間の側面部分にも高摩擦領域を設けてもよい。その場合、脚部分の前面側から後面側にわたって連続して高摩擦領域を設けることとしても構わない。これにより、プリント加工の工数を低減することができ、ひいては、製品全体の製作コスト低減を図ることが可能となる。また、裾回りのゴム材料の部分にも高摩擦領域が設けられていても構わない。その場合、脚部分に設けられた高摩擦領域と連続するような位置に設けるとより望ましい。あるいは、スパッツの本体部分、脚部分それぞれを構成する生地パーツの形状に応じて、高摩擦領域を複数の領域に分割して設けることとしても構わない。例えば、前面側または後面側の高摩擦領域が縫い目を避けて2分割されたような態様であってもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、高摩擦領域の外形が方形状であったが、ある一定以上の面積を有する限り、その外形形状については特に限定されるものではない。例えば、外形線に曲線を含む形状や、人の手形や指を模した形状などであっても構わない。
【0032】
さらに、高摩擦領域を構成するシリコン樹脂のメッシュの形態についても、上記実施形態で示したものに限定されるものではない。例えば、メッシュの線径を太くするとともに目開きも大きくした粗目のメッシュ態様を採用してもよい。あるいは、グリップ力を高める機能が所期する程度で発揮される限り、目の細かいメッシュ態様を採用することとしても構わない。
【0033】
加えて、高摩擦領域は、必ずしもメッシュ状である必要はない。例えば、長手方向に対して逆方向へ交互に連続して折れ曲がったジグザグ状の直線が一定間隔をあけて並列に並んだような態様であってもよい。また、高摩擦領域の全域にシリコン樹脂がプリントされた態様であっても構わない。この場合、シリコン樹脂の厚みは、その全域にわたって一様なものであってもよいし、部分的に凹凸をつけてメッシュやジグザグの凹凸パターンを形成することとしてもよい。
【0034】
(2)上記実施形態では、いわゆるロングタイプ仕様のスパッツを例示したが、脚部分の丈は任意に変更可能である。例えば、脚部分の丈がさらに長い仕様(膝下から足首までを覆うレギンス仕様や、膝下からつま先までを覆うタイツ仕様)のスパッツにも本発明を適用することができる。要は、ラインアウトの際にジャンパーを補助するリフターの手が触れる位置に高摩擦領域が設けられていればよいのである。
【0035】
(3)本体部分および左右の脚部分の材質と高摩擦領域を構成する部分の材質についても特に限定はない。少なくとも、高摩擦領域の摩擦係数が本体部分および左右の脚部分よりも大きい仕様であればよい。また、スパッツに使用されている材料のうち高摩擦領域の摩擦係数が最も大きい必要もない。
【0036】
(4)上記実施形態では、裏面に形成されたポケット内にパッドを装着することによって隆起部を形成することとされていたが、例えば、スパッツ10の生地に直接パッドを縫い付けるようにしても構わない。あるいは、あて布などでパッドを覆う形で取り付けるようにしてもよい。さらに言えば、本発明は、上記したような隆起部を有しない形態で実施することも勿論可能である。
【0037】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 ラグビー用スパッツ
12 本体部分
14L 脚部分
14R 脚部分
16 高摩擦領域
18L 調整ベルト
18R 調整ベルト

図1
図2
図3
図4