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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】抗TIGIT抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240906BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240906BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240906BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240906BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P37/04
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023569839
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2022006695
(87)【国際公開番号】W WO2022240159
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0060014
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523425120
【氏名又は名称】メディマブバイオ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDIMABBIO INC.
【住所又は居所原語表記】#721, 54, Changeop-ro, Sujeong-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン ユヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ホンソク
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-513817(JP,A)
【文献】特表2018-532383(JP,A)
【文献】特表2013-531982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド(CDR-H1)、
配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド(CDR-H2)、
配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチド(CDR-H3)、
配列番号7または8のアミノ酸配列からなるポリペプチド(CDR-L1)、
配列番号5のアミノ酸配列からなるポリペプチド(CDR-L2)、および
配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチド(CDR-L3)
を含む、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗TIGIT抗体が、
(1)配列番号9の重鎖可変領域および配列番号15の軽鎖可変領域、
(2)配列番号10の重鎖可変領域および配列番号16の軽鎖可変領域、
(3)配列番号10の重鎖可変領域および配列番号17の軽鎖可変領域、
(4)配列番号10の重鎖可変領域および配列番号18の軽鎖可変領域、
(5)配列番号10の重鎖可変領域および配列番号19の軽鎖可変領域、
(6)配列番号10の重鎖可変領域および配列番号20の軽鎖可変領域、
(7)配列番号11の重鎖可変領域および配列番号16の軽鎖可変領域、
(8)配列番号11の重鎖可変領域および配列番号17の軽鎖可変領域、
(9)配列番号11の重鎖可変領域および配列番号18の軽鎖可変領域、
(10)配列番号11の重鎖可変領域および配列番号19の軽鎖可変領域、
(11)配列番号11の重鎖可変領域および配列番号20の軽鎖可変領域、
(12)配列番号12の重鎖可変領域および配列番号16の軽鎖可変領域、
(13)配列番号12の重鎖可変領域および配列番号17の軽鎖可変領域、
(14)配列番号12の重鎖可変領域および配列番号18の軽鎖可変領域、
(15)配列番号12の重鎖可変領域および配列番号19の軽鎖可変領域、
(16)配列番号12の重鎖可変領域および配列番号20の軽鎖可変領域、
(17)配列番号13の重鎖可変領域および配列番号16の軽鎖可変領域、
(18)配列番号13の重鎖可変領域および配列番号17の軽鎖可変領域、
(19)配列番号13の重鎖可変領域および配列番号18の軽鎖可変領域、
(20)配列番号13の重鎖可変領域および配列番号19の軽鎖可変領域、
(21)配列番号13の重鎖可変領域および配列番号20の軽鎖可変領域、
(22)配列番号14の重鎖可変領域および配列番号16の軽鎖可変領域、
(23)配列番号14の重鎖可変領域および配列番号17の軽鎖可変領域、
(24)配列番号14の重鎖可変領域および配列番号18の軽鎖可変領域、
(25)配列番号14の重鎖可変領域および配列番号19の軽鎖可変領域、または
(26)配列番号14の重鎖可変領域および配列番号20の軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
TIGITタンパク質のアミノ酸残基51-70領域から選択された一つ以上のアミノ酸に結合する、請求項1に記載の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗TIGIT抗体は、動物抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗原結合断片は、前記抗TIGIT抗体のscFv、scFv-Fc、(scFv)2、Fab、Fab’、またはF(ab’)2である、請求項1に記載の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を含む、癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記癌は、固形癌または血液癌である、請求項6に記載の癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
PD-1、PD-L1、またはこれら全てを標的とする薬物を追加的に含む、請求項6に記載の癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を含む、免疫増強用薬学組成物。
【請求項10】
PD-1、PD-L1、またはこれら全てを標的とする薬物を追加的に含む、請求項9に記載の免疫増強用薬学組成物。
【請求項11】
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を含む、感染症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項12】
前記感染症は、ウイルス、細菌、真菌または寄生虫の感染、もしくは感染症によって生じる疾患である、請求項11に記載の感染症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項13】
PD-1、PD-L1、またはこれら全てを標的とする薬物を追加的に含む、請求項11に記載の感染症の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年5月10日付大韓民国特許出願第10-2021-0060014号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
新規な抗TIGIT抗体およびその免疫増強、抗癌および免疫関連疾病の予防および/または治療用途に関するものである。
【背景技術】
【0003】
癌免疫療法は体内免疫作用を用いて癌を治療する方法で、化学療法、外科療法、放射線療法に次いで癌の第4治療法と呼ばれる。癌免疫療法は、免疫系を活性化させて腫瘍細胞に対する認識および反応を増加させるメカニズムを必要とする。免疫系活性化は、抗原-特異的反応の開始に重要な抗原-提示細胞および腫瘍細胞破壊を担当するエフェクター(effector)細胞などのような多様な細胞の機能を伴う複雑なメカニズムである。
【0004】
前記エフェクター細胞の代表的な例として細胞毒性T細胞が挙げられる。
【0005】
一方、TIGIT(T cell immunoglobulin and ITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif) domain)はWUCAM、VSIG9またはVstm3とも称され、NK、CD8+およびCD4+ T細胞だけでなく調節T細胞(regulatory T cell;“Treg”)でも優先的に発現される共同-抑制受容体である。TIGITは、細胞内のITIMドメイン、膜貫通ドメイン、および免疫グロブリン可変ドメインを含む膜貫通タンパク質である。
【0006】
TIGIT発現は、腫瘍浸潤リンパ球(tumour infiltrating lymphocyte、TIL)および感染のような疾病環境で増加される。TIGIT発現は、TIGIT陰性細胞と比較して低いエフェクター機能を有するexhausted T細胞の標識になり得る。また、TIGITを発現するTreg細胞は、TIGIT陰性Treg集団と比較して向上した免疫抑制活性を示す。
【0007】
このような点に基づく時、TIGITに対して拮抗作用を果たす薬物(例えば、拮抗性抗TIGIT抗体など)は免疫系活性化を誘導し癌などの疾病状態での免疫反応を増進させて疾病治療に有利な効果を発揮することと期待される。
【発明の概要】
【0008】
TIGITに結合する抗TIGIT抗体およびその医薬用途が提供される。
【0009】
一例は、TIGITに結合する抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0010】
前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、および配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)を含む重鎖相補性決定領域(Complementarity Determining Regions;CDRs)または前記重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変領域;および
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)を含む軽鎖相補性決定領域または前記軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0011】
一具体例で、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号9、10、11、12、13、または14のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および
配列番号15、16、17、18、19、または20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0012】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む免疫増強剤または免疫増強用薬学組成物を提供する。
【0013】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む免疫関連疾病の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。
【0014】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む抗がん剤または癌の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。
【0015】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫増強を必要とする対象に投与する段階を含む免疫増強方法を提供する。
【0016】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫関連疾病の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む免疫関連疾病の予防および/または治療方法を提供する。
【0017】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を癌の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、癌の予防および/または治療方法を提供する。
【0018】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の免疫増強用途または免疫増強剤製造のための用途を提供する。
【0019】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の免疫関連疾病の予防および/または治療のための用途または免疫関連疾病の予防および/または治療用薬物の製造のための用途を提供する。
【0020】
他の例は、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の癌の予防および/または治療のための用途または癌の予防および/または治療用薬物の製造のための用途を提供する。
【0021】
一例で、本明細書で提供される薬学組成物、方法、および用途において、前記抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、他の免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PD-1、PD-L1、またはこれら全てを標的とする薬物(拮抗剤)と共に併用できる。前記併用可能な薬物は抗-PD-1抗体、抗-PD-L1抗体、またはこれら全てであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0022】
他の例は、抗TIGIT抗体重鎖相補性決定領域、重鎖可変領域または重鎖を暗号化する核酸分子を提供する。
【0023】
他の例は、抗TIGIT抗体の軽鎖相補性決定領域、軽鎖可変領域または軽鎖を暗号化する核酸分子を提供する。
【0024】
他の例は、前記抗TIGIT抗体重鎖相補性決定領域、重鎖可変領域または重鎖を暗号化する核酸分子および抗TIGIT抗体の軽鎖相補性決定領域、軽鎖可変領域または軽鎖を暗号化する核酸分子を一つのベクターに共に含むか、それぞれ別個のベクターに含む組換えベクターを提供する。前記組換えベクターは、前記核酸分子の発現のための発現ベクターであってもよい。
【0025】
他の例は、前記組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0026】
他の例は、前記核酸分子を宿主細胞で発現させる段階を含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の生産方法を提供する。前記核酸分子を宿主細胞で発現させる段階は、前記核酸分子またはこれを含む組換えベクターを含む細胞を培養する段階を含むものであってもよい。前記方法は、前記発現させる段階以後に培地から抗体を分離および/または精製する段階を追加的に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施例による抗TIGIT抗体(7A6)のフローサイトメトリー結果を示すグラフである。
図2】一実施例によるキメラおよびヒト化抗体の配列のアライメントの結果を示す。
図3a】一実施例による抗TIGIT抗体のエピトープマッピング結果を示す。
図3b】TIGITタンパク質の3次構造上のエピトープ位置を示す。
図4】一実施例による抗TIGIT抗体のヒトprimary T cellでのTIGITに対する結合度を示すグラフである。
図5】一実施例による抗TIGIT抗体のTIGIT-PVR遮断効果を示すグラフである。
図6】一実施例による抗TIGIT抗体のヒト末梢血液単核球(PBMCs)でのサイトカイン(IL-2およびIFNガンマ)生産/分泌効果を示すグラフである。
図7a】一実施例による抗TIGIT抗体のT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD4+ T細胞での結果を示す。
図7b】一実施例による抗TIGIT抗体のT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD8+ T細胞での結果を示す。
図8a】一実施例による抗TIGIT抗体のT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD4+ T細胞でのIL-2濃度を示す。
図8b】一実施例による抗TIGIT抗体のT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD4+ T細胞でのIFNガンマ濃度を示す。
図8c】一実施例による抗TIGIT抗体のT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD8+ T細胞でのIL-2濃度を示す。
図8d】一実施例による抗TIGIT抗体のT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD8+ T細胞でのIFNガンマ濃度を示す。
図9a】一実施例による抗TIGIT抗体の濃度によるT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、9aはCD4+ T細胞でのIL-2濃度を示す。
図9b】一実施例による抗TIGIT抗体の濃度によるT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD4+ T細胞でのIFNガンマ濃度を示す。
図9c】一実施例による抗TIGIT抗体の濃度によるT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD8+ T細胞でのIL-2濃度を示す。
図9d】一実施例による抗TIGIT抗体の濃度によるT細胞でのサイトカイン生産/分泌効果を示すグラフであって、CD8+ T細胞でのIFNガンマ濃度を示す。
図10a】一実施例による抗TIGIT抗体のヒトPBMCでのT細胞増殖効果を示すグラフであって、CFSE assay結果を示す。
図10b】一実施例による抗TIGIT抗体のヒトPBMCでのT細胞増殖効果を示すグラフであって、Ki67 assay結果を示す。
図11】Treg細胞存在下での一実施例による抗TIGIT抗体のT細胞増殖効果を示すグラフである。
図12】一実施例による抗TIGIT抗体および抗-PD1抗体の併用によるTIGIT-PVR/PD-1-PD-L1複合遮断効果を細胞ベースNFATレポーター応答バイオアッセイで分析した結果を示すグラフである。
図13a】一実施例による抗TIGIT抗体および抗-PD1抗体の併用によるTIGIT-PVR/PD-1-PD-L1複合遮断効果を比較抗体との併用時と比較して示すグラフであって、抗-PD1抗体としてペムブロリズマブとの併用結果である。
図13b】一実施例による抗TIGIT抗体および抗-PD1抗体の併用によるTIGIT-PVR/PD-1-PD-L1複合遮断効果を比較抗体との併用時と比較して示すグラフであって、ニボルマブとの併用結果である。
図14a】一実施例による抗TIGIT抗体の単独または抗-PD1抗体との併用時のヒトT細胞のサイトカイン生産結果を示すグラフであって、CD4+細胞での結果を示す。
図14b】一実施例による抗TIGIT抗体の単独または抗-PD1抗体との併用時のヒトT細胞のサイトカイン生産結果を示すグラフであって、CD8+細胞での結果を示す。
図15】A375およびSK-OV3腫瘍細胞株でのTIGITのリガンドであるCD155の発現水準を示すグラフである。
図16】一実施例による抗TIGIT抗体のA375腫瘍(黒色腫)細胞株に対する細胞毒性(細胞死滅率)を示すグラフである。
図17a】一実施例による抗TIGIT抗体のSKOV-3腫瘍(卵巣癌)細胞株に対する細胞毒性(細胞死滅率)を示すグラフである。
図17b】一実施例による抗TIGIT抗体のSKOV-3腫瘍(卵巣癌)細胞株に対する細胞毒性(細胞死滅率)を示すグラフである。
図18】一実施例による抗TIGIT抗体のSKOV-3腫瘍(卵巣癌)細胞株に対する細胞毒性(細胞死滅率)を示すグラフである。
図19】一実施例による抗TIGIT抗体をNK細胞と共培養時のSKOV-3腫瘍(卵巣癌)細胞株に対する細胞毒性(細胞死滅率)を示すグラフである。
図20】一実施例による抗TIGIT抗体の結腸癌に対する生体内(in vivo)抗腫瘍効果を示すグラフである。
図21】一実施例による抗TIGIT抗体と抗-PD1抗体の併用時の結腸癌に対する生体内(in vivo)抗腫瘍効果を単独処理時と比較して示すグラフである。
図22】一実施例による抗TIGIT抗体と抗-PD1抗体の併用による腫瘍微細環境(tumor microenvironment;TME)での免疫細胞に対する効果を試験した結果を示す。
図23】一実施例による抗TIGIT抗体の肝癌患者由来異種移植腫瘍に対する生体内(in vivo)抗腫瘍効果を示すグラフである。
図24】腫瘍微細環境(tumor microenvironment;TME)でのT cell subset上のTIGIT発現水準を示すグラフである。
図25】一実施例による抗TIGIT抗体の肝癌患者由来T細胞でのサイトカイン生産効果を示すグラフである。
図26】一実施例による抗TIGIT抗体の肺癌患者由来T細胞でのサイトカイン生産効果を示すグラフである。
図27】一実施例による抗TIGIT抗体の結腸癌患者由来T細胞でのサイトカイン生産効果を示すグラフである。
図28a】一実施例による抗TIGIT-Fab断片の中枢記憶T細胞の活性化(サイトカイン生産)を示すグラフである。
図28b】一実施例による抗TIGIT-Fab断片の効果器記憶T細胞の活性化(サイトカイン生産)を示すグラフである。
図29】一実施例による抗TIGIT-Fab断片のA375腫瘍細胞に対する細胞毒性(細胞死滅率)を示すグラフである。
図30】T細胞サブセットでのTIGIT発現水準を示すグラフである。
図31a】一実施例による抗TIGIT抗体処理時のTregs、CD4+ T細胞、およびCD8+ T細胞の残存細胞数を示すグラフである。
図31b】同上
図31c】同上
図31d】同上
図32】一実施例による抗TIGIT抗体処理時のTregsおよびNK細胞の細胞数を示すグラフである。
図33】NK細胞存在下で一実施例による抗TIGIT抗体処理時のTregs細胞の残存細胞数を示すグラフである。
図34a】一実施例による抗TIGIT抗体のFcgRIIIA遮断有無によるT細胞でのサイトカイン生産効果を示すグラフである(34a:CD4+ T細胞)。
図34b】一実施例による抗TIGIT抗体のFcgRIIIA遮断有無によるT細胞でのサイトカイン生産効果を示すグラフである(34b:CD8+ T細胞)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で、TIGITに結合する抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片、およびこれらの医薬用途が提供される。抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片はTIGITの作用を封鎖して免疫を活性化(e.g.、エフェクターT細胞機能強化、Treg活性制御、サイトカイン分泌増加など)させる機能を有し、多様な免疫活性化剤および/または免疫治療剤として適用できる。
【0029】
以下、より詳しく説明する。
【0030】
抗体または抗原結合断片
一例は、TIGITに結合する抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0031】
抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H1)、
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H2)、
配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-H3)、
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)、
配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L2)、および
配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L3)
を含むものであってもよい。
【0032】
配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド(CDR-L1)は、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0033】
本明細書において、相補性決定領域(CDR)はkabat systemによるCDR定義を基準にして決定される。
【0034】
一具体例で、本明細書で提供される抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片に含むことができる6個のCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)を下記表1に整理した。
【0035】
【表1】
【0036】
具体例で、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2、および配列番号3のCDR-H3を含む重鎖可変領域、および
配列番号4(例えば、配列番号7または配列番号8)のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2、および配列番号6のCDR-L3を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0037】
より具体的に、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号9、10、11、12、13、または14のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および
配列番号15、16、17、18、19、または20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0038】
一例で、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含むものであってもよい。
【0039】
場合によって(例えば、組換え的に製作時)、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域は、N末端に適切な信号配列を追加的に含むことができる。
【0040】
本明細書で提供される抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片に含むことができる重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を下記表2に例示した。
【0041】
【表2】
【0042】
一例で、本明細書で提供される抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片はTIGITタンパク質、例えば、ヒトTIGITタンパク質(NCBI Reference Sequence NP_776160.2;UniProtKB/SwissProt Q495A1-1)のアミノ酸残基51-70領域(TAQVTQVNWEQQDQLLAICN;配列番号31)の中から選択される一つ以上または2つ以上(例えば、連続して位置する)のアミノ酸に結合するものであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0043】
[ヒトTIGITタンパク質(配列番号30)]
1 MRWCLLLIWA QGLRQAPLAS GMMTGTIETT GNISAEKGGS IILQCHLSST TAQVTQVNWE
61 QQDQLLAICN ADLGWHISPS FKDRVAPGPG LGLTLQSLTV NDTGEYFCIY HTYPDGTYTG
121 RIFLEVLESS VAEHGARFQI PLLGAMAATL VVICTAVIVV VALTRKKKAL RIHSVEGDLR
181 RKSAGQEEWS PSAPSPPGSC VQAEAAPAGL CGEQRGEDCA ELHDYFNVLS YRSLGNCSFF
241 TETG
【0044】
本明細書で「抗体」とは、特定抗原に特異的に結合するタンパク質を総称するものであって、免疫系内で抗原の刺激によって作られるタンパク質またはこれを化学的合成または組換え的に製造したタンパク質であってもよく、その種類は特に制限されない。抗体は、非自然的に生成されたもの、例えば、組換え的または合成的に生成されたものであってもよい。抗体は、動物抗体(例えば、マウス抗体など)、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であってもよい。抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。
【0045】
本明細書で提供される抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片で、先に定義した重鎖CDRおよび軽鎖CDR部位、または重鎖可変領域および軽鎖可変領域を除いた残り部位は全てのサブタイプの免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgM、など)に由来したものであってもよく、例えば、全てのサブタイプの免疫グロブリンのフレームワーク部位、および/または軽鎖定常領域および/または重鎖定常領域に由来したものであってもよい。一例で、本明細書で提供される抗TIGIT抗体はヒトIgG型抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4形態の抗体であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0046】
完全な抗体(例えば、IgG型)は2つの全長(full length)軽鎖および2つの全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖と二硫化結合で連結されている。抗体の定常領域は重鎖定常領域と軽鎖定常領域に分けられ、重鎖定常領域はガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)およびエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を有する。軽鎖の定常領域はカッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを有する。
【0047】
一例で、本明細書で提供される抗TIGIT抗体は重鎖定常領域としてIgGの定常領域、軽鎖定常領域としてカッパ定常領域を含むことができるが、これに制限されるわけではない。
【0048】
一具体例で、IgG(例えば、ヒトIgG1)の定常領域は野生型であってもよい。他の具体例で、IgGの定常領域は、ヒトIgG1を基準にして、S240D(240番目アミノ酸であるSがDに置換される、以下、アミノ酸変異は同一の方式で表現される)、A331L、I333E、N298A、S299A、E334A、K335A、L235A、L236AおよびP330Gからなる群より選択された一つ以上の変異を含む変異型であってもよく、例えば、以下の変異を含む変異型であってもよい。
(1)S240D、A331L、およびI333E;
(2)N298A;
(3)S299A、E334A、およびK335A;または
(4)L235A、L236AおよびP330G。
【0049】
用語、「重鎖(heavy chain)」は、抗原に特異性を付与するために十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVおよび3つの定常領域ドメインCH1、CH2、およびCH3とヒンジ(hinge)を含む全長重鎖およびその断片を全て含む意味として解釈される。また、用語「軽鎖(light chain)」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVおよび定常領域ドメインCを含む全長軽鎖およびその断片を全て含む意味として解釈される。
【0050】
用語、「CDR(complementarity determining region)」は抗体の可変部位中の抗原との結合特異性を付与する部位を意味するものであって、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する。重鎖および軽鎖はそれぞれ3つのCDRを含むことができる(CDRH1、CDRH2、CDRH3およびCDRL1、CDRL2、CDRL3)。CDRは、抗体が抗原またはエピトープに結合することにおいて主な接触残基を提供することができる。一方、本明細書において、用語、「特異的に結合」または「特異的に認識」は当業者に通常公知されている意味と同一なものであって、抗原および抗体が特異的に相互作用して免疫学的反応を行うことを意味する。
【0051】
本明細書に記載された相補性決定領域(CDR)は、kabat systemによるCDR定義を基準にして決定されたものである。
【0052】
本明細書で抗体は、特別な言及がない限り、抗原結合能を保有する抗体の抗原結合断片を含むものと理解できる。
【0053】
用語、「抗原結合断片」は、抗原が結合できる部分(例えば、本明細書で定義された6つのCDR)を含む全ての形態のポリペプチドを意味する。例えば、抗体のscFv、scFv-Fc、(scFv)、Fab、Fab’またはF(ab’)であってもよいが、これに限定されない。
【0054】
抗原結合断片のうち、Fabは軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の定常領域および重鎖の一番目定常領域(CH1)を有する構造で1つの抗原結合部位を有する。
【0055】
Fab’は、重鎖CH1ドメインのC-末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点からFabと差がある。
【0056】
F(ab’)抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を成しながら生成される。Fvは重鎖可変部位および軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体断片で、Fv断片を生成する組換え技術は当業界に広く公知されている。
【0057】
二重鎖Fv(two-chain Fv)は非共有結合で重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv)は一般にペプチドリンカーを通じて重鎖の可変領域と単鎖の可変領域が共有結合で連結されるかまたはC-末端で直ちに連結されていて二重鎖Fvのようにダイマーのような構造を成すことができる。
【0058】
抗原結合断片はタンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、完全抗体をパパインで制限切断するとFabを得ることができ、ペプシンで切断するとF(ab’)断片を得ることができる)、遺伝子組換え技術を通じて製作することができる。
【0059】
用語「ヒンジ領域(hinge region)」は抗体の重鎖に含まれている領域であって、CH1およびCH2領域の間に存在し、抗体内抗原結合部位の柔軟性(flexibility)を提供する機能を果たす領域を意味する。
【0060】
本明細書で提供される抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、当業界に広く知られた方法通りに製造できる。例えば、ファージディスプレイ技法を用いて製造できる。または、抗体は、通常の方法によって動物(例えば、マウス)由来のモノクローナル抗体から製造できる。
【0061】
一方、典型的なELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)フォーマットを用いてTIGITの受容体結合ドメインとの結合能に基づいて個別モノクローナル抗体をスクリーニングすることができる。結合体に対して分子的相互作用を検定するための競争的ELISA(Competitive ELISA)のような機能性分析またはセルベースアッセイ(cell-based assay)のような機能性分析を通じて阻害活性に対して検定することができる。その後、強い阻害活性に基づいて選択されたモノクローナル抗体メンバーに対してTIGITの受容体結合ドメインに対するそれぞれの親和度(Kd値)を検定することができる。
【0062】
最終選択された抗体は、抗原結合部位を除いた残り部分がヒトの免疫グロブリン抗体化された抗体だけでなく、ヒト化抗体として製造して使用することができる。ヒト化抗体の製造方法は当業界によく知られている。
【0063】
本明細書で提供される抗TIGIT抗体の抗原結合断片は抗TIGIT抗体に由来し抗原(TIGIT)に対する結合力を保有する断片を意味するものであって、抗TIGIT抗体の6つのCDRを含む任意のポリペプチド、例えば、scFv、scFv-Fc、scFv-Ck(カッパ定常領域)、scFv-Cλ(ラムダ定常領域)、(scFv)、Fab、Fab’またはF(ab’)であってもよいが、これに限定されるのではない。一例で、抗原結合断片はscFv、またはscFvが免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4など)のFc部位と融合された融合ポリペプチド(scFv-Fc)または軽鎖の定常領域(例えば、カッパまたはラムダ)と融合された融合ポリペプチド(scFv-CkまたはscFv-Cλ)であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0064】
本明細書で、抗体(例えば、CDR、可変領域、または重鎖/軽鎖、抗原結合断片など)が「特定アミノ酸配列を含む、または特定アミノ酸配列からなるまたは含まれる」とは、アミノ酸配列を必須的に含む場合、およびアミノ酸配列に抗体活性(例えば、抗原親和度、薬理的活性など)に有意な影響がない無意味な変異(例えば、アミノ酸残基の置換、欠失、および/または追加)が導入された場合を全て意味するものであってもよい。
【0065】
本明細書で提供される抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片はTIGIT(e.g.、ヒトTIGIT)に対する結合親和度(KD)が、例えば、表面プラスモン共鳴(Surface plasmon resonance、SPR)で測定された場合を基準にして、10mM以下、5mM以下、1mM以下、0.5mM以下、0.2mM以下、0.1mM以下、0.05mM以下、0.01mM以下、0.005mM以下、または0.001mM以下であってもよく、例えば、0.0001nM~10mM、0.0005nM~10mM、0.001nM~10mM、0.005nM~10mM、0.01nM~10mM、0.05nM~10mM、0.1nM~10mM、0.5nM~10mM、1nM~10mM、0.0001nM~5mM、0.0005nM~5mM、0.001nM~5mM、0.005nM~5mM、0.01nM~5mM、0.05nM~5mM、0.1nM~5mM、0.5nM~5mM、1nM~5mM、0.0001nM~1mM、0.0005nM~1mM、0.001nM~1mM、0.005nM~1mM、0.01nM~1mM、0.05nM~1mM、0.1nM~1mM、0.5nM~1mM、1nM~1mM、0.0001nM~0.5mM、0.0005nM~0.5mM、0.001nM~0.5mM、0.005nM~0.5mM、0.01nM~0.5mM、0.05nM~0.5mM、0.1nM~0.5mM、0.5nM~0.5mM、1nM~0.5mM、0.0001nM~0.2mM、0.0005nM~0.2mM、0.001nM~0.2mM、0.005nM~0.2mM、0.01nM~0.2mM、0.05nM~0.2mM、0.1nM~0.2mM、0.5nM~0.2mM、1nM~0.2mM、0.0001nM~0.1mM、0.0005nM~0.1mM、0.001nM~0.1mM、0.005nM~0.1mM、0.01nM~0.1mM、0.05nM~0.1mM、0.1nM~0.1mM、0.5nM~0.1mM、1nM~0.1mM、0.0001nM~0.05mM、0.0005nM~0.05mM、0.001nM~0.05mM、0.005nM~0.05mM、0.01nM~0.05mM、0.05nM~0.05mM、0.1nM~0.05mM、0.5nM~0.05mM、1nM~0.05mM、0.0001nM~0.01mM、0.0005nM~0.01mM、0.001nM~0.01mM、0.005nM~0.01mM、0.01nM~0.01mM、0.05nM~0.01mM、0.1nM~0.01mM、0.5nM~0.01mM、または1nM~0.01mMであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0066】
他の例で、先に説明した抗TIGIT抗体重鎖相補性決定領域(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、またはこれらの組み合わせ)、軽鎖相補性決定領域(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、またはこれらの組み合わせ)、またはこれらの組み合わせ;または重鎖可変領域、軽鎖可変領域、またはこれらの組み合わせを含むポリペプチド分子が提供される。
【0067】
ポリペプチド分子は、抗体の前駆体として抗体製作に使用できるだけでなく、抗体と類似の構造を有するタンパク質骨格体(protein scaffold;例えば、ぺプチボディー、ナノボディー、など)、二重特異抗体、多重特異抗体の構成成分(例えば、CDRまたは可変領域)として含まれてもよい。
【0068】
用語「ぺプチボディー(peptide+antibody)」はペプチドと抗体のFc部分などの定常部位の全部または一部が融合された融合タンパク質であって、抗体と類似の骨格と機能を有するタンパク質を意味する。ここで、先に説明した1種以上のペプチドが抗原結合部位(重鎖および/または軽鎖CDRまたは可変領域)として作用できる。
【0069】
用語「ナノボディー」は単一ドメイン抗体(single-domain antibody)とも呼ばれ、抗体の単一可変ドメインをモノマー形態で含む抗体断片を意味し、完全な構造の抗体と同様に特定抗原に対して選択的に結合する特性を有する。ナノボディーの分子量は一般に約12kDa~約15kDa程度で、完全な抗体(二つの重鎖と二つの軽鎖を含む)の一般的な分子量(約150kDa~約160kDa)と比較して非常に小さく、場合によってはFab断片やscFv断片より小さい。
【0070】
用語「多重結合抗体」(二重結合抗体を含む意味である)は2つまたはそれ以上の異なる抗原を認識および/または結合するか、同一抗原の互いに異なる部位を認識および/または結合する抗体を意味するもので、多重結合抗体のうちの一つの抗原結合部位が先に説明したTIGITに結合するポリペプチド、抗体、または抗原結合断片を含むものであってもよい。
【0071】
本明細書に提供されるTIGITに結合するポリペプチド、抗体、または抗原結合断片は、有用な重合体、標識物質などからなる群より選択された1種以上と接合された接合体(conjugate)形態で使用できる。
【0072】
有用な重合体は、例えば、ポリペプチド、抗体、および/または抗原結合断片の体内半減期を増加させる、タンパク質以外の重合体であってもよく、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDaまたは40kDaの分子量を有するPEG)、デキストラン、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)などからなる群より選択された1種以上の親水性重合体を例示することができるが、これに制限されない。
【0073】
標識物質は、希土類キレート剤、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム炎標識、オキサレートエステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識、安定な遊離ラジカルなどからなる群より選択された1種以上の蛍光または化学発光性小分子化合物(chemical)、放射性同位元素などであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0074】
医薬用途
本明細書で提供される抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片はTIGITの作用(例えば、TIGITとそのリガンドであるCD155(PVR)との相互作用など)を封鎖して免疫を活性化(例えば、エフェクターT細胞機能強化、Treg活性制御、サイトカイン分泌増加など)させる機能を有する。したがって、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は、免疫増強、免疫関連疾病の予防および/または治療、特に癌の予防および/または治療に有用に適用できる。
【0075】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む免疫増強剤または免疫増強用薬学組成物を提供する。
【0076】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む免疫関連疾病の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。
【0077】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む抗がん剤または癌の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。
【0078】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫増強を必要とする対象に投与する段階を含む免疫増強方法を提供する。免疫増強方法は、投与する段階以前に、免疫増強を必要とする対象を確認する段階を追加的に含むことができる。
【0079】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を免疫関連疾病の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む免疫関連疾病の予防および/または治療方法を提供する。免疫関連疾病の予防および/または治療方法は、投与する段階以前に、免疫関連疾病の予防および/または治療を必要とする対象を確認する段階を追加的に含むことができる。
【0080】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を癌の予防および/または治療を必要とする対象に投与する段階を含む、癌の予防および/または治療方法を提供する。癌の予防および/または治療方法は、投与する段階以前に、癌の予防および/または治療を必要とする対象を確認する段階を追加的に含むことができる。
【0081】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の免疫増強用途または免疫増強剤製造のための用途を提供する。
【0082】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の免疫関連疾病の予防および/または治療のための用途または免疫関連疾病の予防および/または治療用薬物の製造のための用途を提供する。
【0083】
他の例は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の癌の予防および/または治療のための用途または癌の予防および/または治療用薬物の製造のための用途を提供する。
【0084】
本明細書で提供される薬学組成物、方法、および用途において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片は他の免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PD-1、PD-L1、またはこれら全てを標的とする薬物(拮抗剤)と共に併用できる。具体的に、薬学組成物は抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片に加えて、PD-1、PD-L1、またはこれら全てを標的とする薬物を追加的に含むことができる。方法は抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片に加えて、PD-1、PD-L1、またはこれら全てを標的とする薬物を投与する段階を追加的に含むことができる。
【0085】
併用可能な薬物は抗-PD-1抗体、抗-PD-L1抗体、またはこれら全てであってもよいが、これに制限されるわけではない。一例で、抗-PD-1抗体はペムブロリズマブ、ニボルマブなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0086】
本明細書で、用語「免疫増強(または免疫強化)」は抗原に対する初期免疫反応を誘導するか既存の免疫反応を増加させることを意味することができ、免疫刺激、免疫強化、免疫活性化などの用語と同等な意味として互換できる。一例で、免疫増強は免疫細胞(エフェクターT細胞、例えば、細胞毒性T細胞;CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞など)機能強化(活性化)および/または増殖、調節T細胞(Treg)活性抑制および/または消去(depletion)、免疫タンパク質(例えば、サイトカインなど)生産および/または分泌増加などからなる群より選択された一つ以上を意味することができるが、これに制限されるわけではない。
【0087】
本明細書で、用語「免疫関連疾病」は免疫系の障害および/または不充分な活性によって誘発される全ての疾病を包括するもので、例えば、癌、感染疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患などからなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0088】
癌は固形癌または血液癌であってもよく、これに制限されないが、扁平上皮細胞癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌など)、腹膜癌、皮膚癌、黒色腫(例えば、皮膚または眼球内黒色腫など)、直腸癌、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、肝癌、胆管癌、胃癌、膵臓癌、膠芽腫、頚部癌、卵巣癌、膀胱癌、乳癌、大腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌など)、子宮内膜癌、子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、陰門癌、頭頸部癌、脳癌、骨肉腫などからなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0089】
癌の予防および/または治療効果は癌細胞を除去(死滅)する効果、癌細胞の発生および/または成長を抑制する効果、移動(migration)、浸湿(invasion)、転移(metastasis)などによる癌の悪化を抑制する効果などを含む。
【0090】
感染性疾患、自己免疫疾患、および炎症性疾患は先に説明した免疫強化(例えば、免疫細胞(エフェクターT細胞、例えば、細胞毒性T細胞;CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞など)機能強化(活性化)および/または増殖、調節T細胞(Treg)活性抑制および/または消去(depletion)、免疫タンパク質(例えば、サイトカイン(IL-2、IFNガンマなど)など)生産および/または分泌増加など)によって治療、緩和、および/または予防可能な全ての感染性疾患、自己免疫疾患、および炎症性疾患のうちから選択されたものであってもよい。例えば、感染性疾患はウイルス、細菌、真菌、寄生虫のように疾病を起こす病原体が生物体(例、人間を含む動物)内に伝播、侵入して発生する疾病を総称するもので、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などからなる群より選択された一つ以上の病原体の感染または感染による疾病(感染症)であってもよい。自己免疫疾患はリウマチ関節炎、1型糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、ベーチェット症候群、ループス、シェーグレン症候群、重症筋無力症、強皮症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、乾癬、白斑症、多発性硬化症、自己免疫性肝炎、自己免疫性腎臓炎、自己免疫性膵臓炎、自己免疫性脳炎、サイトカインストームなどからなる群より選択できるが、これに制限されるわけではない。炎症性疾患は炎症(例、慢性炎症または急性炎症)または炎症による疾病を総称するもので、例えば、心臓炎症(例、冠状動脈疾患、狭心症、心筋梗塞、心臓膜炎、心筋炎など)、血管炎症(例、粥状硬化症、血管炎、播種性血管内凝固(DIC)、免疫性血小板減少紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、貧血など)、上気道炎症(例、急性鼻咽頭炎、アレルギー鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎、喉頭炎など)、下気道および/または肺炎症(例、気管支炎、気管支拡張症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、てんかん性肺疾患、結核など)、上部胃腸管炎症(例、胃炎、食道炎など)、下部胃腸管炎症(例、小腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病、憩室炎、過敏性大腸症候群、虫垂炎、痔瘻など)、肝、胆道および/または膵臓炎症(例、肝炎、脂肪肝、胆管炎、胆嚢炎、膵臓炎、第1型糖尿病など)、腎臓(上部尿路)(例、腎盂腎炎、糸球体腎炎、尿路感染症など)、下部尿路炎症(例、尿路感染症、尿管炎、尿道炎、膀胱炎、前立腺炎/慢性骨盤痛症候群など)、甲状腺および/または副甲状腺炎症(例、甲状腺炎、副甲状腺炎など)、副腎炎症(例、副腎炎など)、生殖器官炎症(例、骨盤内炎症性疾患、卵巣炎、睾丸炎、副睾丸炎など)、骨および/または関節炎症(例、骨関節炎、リウマチ関節炎、骨髄炎、滑膜炎など)、皮膚炎症(例、皮膚:蜂巣炎、丹毒(Erysipelas)、癜風、水虫、にきびなど)、筋肉炎症(例、筋炎など)、脳炎症(例、脳炎、大鬱病性障害など)、神経炎症(例、目、耳など多様な部位の神経炎、複合性局所疼痛症候群、ギランバレー症候群など)、目炎症(例、麦粒腫、ぶどう膜炎、結膜炎など)、耳炎症(例、中耳炎、乳様突起炎など)、口腔炎症(例、口内炎、歯周炎、歯肉炎など)、全身性炎症(例、全身性炎症反応症候群(敗血症など)、代謝症候群関連疾患など)、腹膜炎、再かん流傷害、移植拒絶反応、過敏反応などからなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0091】
本明細書で提供される抗TIGIT抗体、その抗原結合断片、および/またはこれを含む薬学組成物の投与対象は全ての動物または細胞であってもよく、例えば、人間、猿などの霊長類、ラット、マウス、などの齧歯類などを含む哺乳類から選択される動物、または動物に由来する(分離された)細胞、組織、体液(例えば、血清)、またはその培養物であってもよく、例えば、人間または人間から分離された細胞、組織、体液(例えば、血清)であってもよい。
【0092】
薬学的組成物は、有効成分としての抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片に加えて、薬学的に許容可能な担体を追加的に含むことができ、担体はタンパク質薬物の製剤化に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるのではない。薬学的組成物はまた、薬学組成物製造に通常使用される希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などからなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。
【0093】
抗TIGIT抗体、その抗原結合断片および/または薬学組成物の投与は、経口または非経口経路を通じて行うことができる。非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与および直臓内投与などで投与することができる。経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコーティングするか胃での分解から保護されるように剤形化されなければならない。
【0094】
また、抗TIGIT抗体、その抗原結合断片および/または薬学組成物はオイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤または乳化液形態であるか、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤、注射剤などの形態に剤形化でき、剤形化のために分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【0095】
薬学組成物内の有効成分である抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の含有量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、食べ物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に処方できる。薬学組成物の1日投与量は、有効成分(抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片)を基準にして0.00001~1000mg/kg、0.00001~500mg/kg、0.00001~100mg/kg、0.00001~50mg/kg、0.0001~1000mg/kg、0.0001~500mg/kg、0.0001~100mg/kg、0.0001~50mg/kg、0.001~1000mg/kg、0.001~500mg/kg、0.001~100mg/kg、0.001~50mg/kg、0.01~1000mg/kg、0.01~500mg/kg、0.01~100mg/kg、0.01~50mg/kg、0.1~1000mg/kg、0.1~500mg/kg、0.1~100mg/kg、または0.1~50mg/kg範囲であってもよいが、これに制限されるわけではない。1日投与量は単位容量形態で一つの製剤として製剤化されるか、適切に分量して製剤化されるか、多用量容器内に入れて製造できる。また、本明細書で薬学的有効量は有効成分が目的とする薬学的活性を示すことができる有効成分の量を意味するもので、投与量範囲であってもよい。
【0096】
ポリヌクレオチド、発現ベクター、および抗体の製造
他の例は、抗TIGIT抗体の重鎖相補性決定領域、重鎖可変領域または重鎖を暗号化する核酸分子を提供する。
【0097】
他の例は、抗TIGIT抗体の軽鎖相補性決定領域、軽鎖可変領域または軽鎖を暗号化する核酸分子を提供する。
【0098】
他の例は、抗TIGIT抗体重鎖相補性決定領域、重鎖可変領域または重鎖を暗号化する核酸分子および抗TIGIT抗体の軽鎖相補性決定領域、軽鎖可変領域または軽鎖を暗号化する核酸分子を一つのベクターに共に含むか、それぞれ別個のベクターに含む組換えベクターを提供する。組換えベクターは、核酸分子の発現のための発現ベクターであってもよい。
【0099】
他の例は、組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
用語「ベクター(vector)」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。例えば、プラスミドベクター、コスミドベクターおよびバクテリオファージベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクターを含む。組換えベクターとして使用できるベクターは、当業界で時々使用されるプラスミド(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズおよびpUC19など)、ファージ(例えば、λgt4λB、λ-Charon、λΔz1およびM13など)またはウイルス(例えば、SV40など)を操作して製作できる。
【0100】
組換えベクターで、核酸分子はプロモーターに作動可能に連結できる。用語「作動可能に連結された(operatively linked)」は、ヌクレオチド発現調節配列(例えば、プロモーター配列)と他のヌクレオチド配列の間の機能的な結合を意味する。調節配列は、「作動可能に連結(operatively linked)」されることによって他のヌクレオチド配列の転写および/または解読を調節することができる。
【0101】
組換えベクターは、典型的にクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築できる。発現用ベクターは、当業界で植物、動物または微生物で外来のタンパク質を発現するのに使用される通常のものを使用することができる。組換えベクターは、当業界に公知された多様な方法を通じて構築できる。
【0102】
組換えベクターは、原核細胞または真核細胞を宿主にして構築できる。例えば、使用されるベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主にする場合には、転写を行わせることができる強力なプロモーター(例えば、pLλプロモーター、CMVプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合部位および転写/解読終結配列を含むことが一般的である。真核細胞を宿主にする場合には、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製原点はf1複製原点、SV40複製原点、pMB1複製原点、アデノ複製原点、AAV複製原点、およびBBV複製原点などを含むが、これに限定されるのではない。また、哺乳動物細胞のゲノムに由来したプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来したプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、およびHSVのtkプロモーター)が使用でき、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般に有する。
【0103】
組換え細胞は、組換えベクターを適切な宿主細胞に導入させることによって得られたものであってもよい。宿主細胞は組換えベクターを安定的且つ連続的にクローニングまたは発現させることができる細胞として当業界に公知されたいかなる宿主細胞も用いることができ、原核細胞としては、例えば、E.coli JM109、E.coli BL21、E.coli RR1、E.coli LE392、E.coli B、E.coli X1776、E.coli W3110、バチルスサブティリス、バチルスチューリンゲンシスのようなバシラス属菌株、そしてサルモネラティフィムリウム、セラチアマルセッセンス、および多様なシュードモナス種のような臓内菌と菌株などがあり、真核細胞に形質転換させる場合には、宿主細胞として、酵母(Saccharomyce cerevisiae)、昆虫細胞、植物細胞および動物細胞、例えば、Sp2/0、CHO(Chinese hamster ovary) K1、CHO DG44、CHO S、CHO DXB11、CHO GS-KO、PER.C6、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、Huh7、3T3、RIN、MDCK細胞株などが使用できるが、これに制限されるわけではない。
【0104】
核酸分子またはこれを含む組換えベクターの宿主細胞内への運搬(導入)は、当業界に広く知られた運搬方法を使用することができる。運搬方法は例えば、宿主細胞が原核細胞である場合、CaCl方法または電気穿孔方法などを使用することができ、宿主細胞が真核細胞である場合には、微細注入法、カルシウムホスフェート沈殿法、電気穿孔法、リポソーム-媒介形質感染法および遺伝子ボンバードメントなどを使用することができるが、これに限定しない。
【0105】
形質転換された宿主細胞を選別する方法は選択標識によって発現される表現型を用いて、当業界に広く知られた方法によって容易に実施することができる。例えば、選択標識が特定抗生剤耐性遺伝子である場合には、抗生剤が含まれている培地で形質転換体を培養することによって形質転換体を容易に選別することができる。
【0106】
他の例は、核酸分子を宿主細胞で発現させる段階を含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片の生産方法を提供する。核酸分子を宿主細胞で発現させる段階は、核酸分子またはこれを含む組換えベクターを含む細胞を培養する段階を含むものであってもよい。製造方法は、培養する段階以後に、任意に、培養培地から抗体または抗原結合断片を分離および/または精製する段階を追加的に含むことができる。
【0107】
本明細書で提供される抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片はTIGITの作用を封鎖して免疫を活性化(e.g.、エフェクターT細胞機能強化、Treg活性制御、サイトカイン分泌増加など)させる機能を有し、多様な免疫活性化剤および/または免疫治療剤として適用できる。
【0108】
以下では実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限しようとするのではない。下記の実施例は発明の本質的な要旨を逸脱しない範囲で変形できるのは当業者において自明である。
【実施例
【0109】
実施例1:抗TIGIT抗体の製作
1.1.抗TIGITモノクローナル抗体の生成
5匹のBALB/cマウスにMMB designed免疫原(Ag1585_IMM)およびヒトTIGITタンパク質(aa22-138;sino biologics、UniProtKB/SwissProt Q495A1-1)を19日間5回連続交差注入して免疫化させた。5匹マウスからリンパ球を収集しこれを集めて精製した後、SP2/0骨髄腫細胞と融合させた。融合された細胞はHAT選択的一段階クローニング培地(HAT selective single-step cloning media)で増殖させ、得られた1896個のハイブリドーマクローンを96-ウェルプレートに移して培養した。
【0110】
免疫原として使用されたペプチドAg1585_IMMは親タンパク質内の折りたたみおよび近接性に基づく関連性をよく反映するようにモデリングされたもので、免疫原性タンパク質の潜在力を最大化して全長タンパク質内の対応エピトープに対する完全な活性を有する抗体を作ることに有用であることと期待される。ペプチドAg1585_IMMはヒトTIGITの51番目アミノ酸残基(T)から70番目アミノ酸残基(N)までの20個のアミノ酸を含むように合成した。ペプチドAg1585_IMMの情報を下記表3に要約した。
【0111】
【表3】
【0112】
上記表3は、モデリングされたAg1585_IMMの構造的特徴およびTIGIT構造(PDB:5V52)とアライメントした結果を示す。低いRMSDスコアはよくアライメントすることを示す。ペプチドは、対応する免疫原配列に基づいて合成した。
【0113】
間接(indirect)ELISAを用いて、免疫化抗原であるAg1585_IMMおよび組換えヒトTIGIT(His)(sino biologics)に対して効果を有するハイブリドーマ組織培養液の上清液をスクリーニングした。効果を有するクローン(Positive clones)に対してスクリーニング抗原(組換えヒトTIGIT Fcキメラタンパク質(R&D systems、9464-TG))および細胞に対するindirect ELISAを追加的に行ってIg分泌および特異性を確認した。CHO-K1(ATCC、CCL-61細胞株を陰性対照群として使用した。
ELISAは、以下のような条件下で行った。
-ELISAプレートは0.1μg/ウェルの組換えヒトTIGIT(rhTIGIT)タンパク質をCarbonate Coatingバッファー(pH9.6)O/Nに100μL/ウェル濃度で含むコーティング液で4℃でコーティング。
-PBSに含まれている3% スキムミルク粉末で1時間室温で遮断。
-PBS-Tweenに含まれている二次抗体1:10000 ヤギ抗マウス/M(H+L)-HRP(100uL/ウェル)を1時間処理(37℃、振盪下)。
-全ての洗浄段階は、PBS-Tweenで3分間行う。
-TMB基質を50uL/ウェル濃度で添加、暗条件下に置いて(5~10mins)、同量の1M HClで終了させる。
【0114】
アイソタイピング(isotyping)によって、IgM発現クローンを分離して除去し、IgG発現クローンを収集した。
【0115】
収集された陽性クローンをサブクローニングして安定的な発現クローンを確認した。選択されたクローンを含む培養上清液をProtein Aカラムに流しながら溶出させ、バッファーをPBSに交替した。スクリーニング抗原(組換えヒトTIGIT(T103) Fc キメラタンパク質;R&D systems)および陰性対照群抗原(Hisペプチド)に対する間接的ELISAを行って精製された抗体を試験した。
【0116】
収集された陽性クローンのうちの先導抗体として選別されたクローン(7A6)の結合をフローサイトメトリーで測定した。CHO-K1(ATCC、CCL-61)およびヒトTIGIT発現CHO-K1(CHO-K1 TIGIT)(Genscript、M00542)細胞にトリプシンを処理し、計数し、2×10細胞/mlの濃度で再懸濁させ、Fc block(BD Bioscience 564220)と共に30分間培養した。培養後、細胞を96ウェルに入れ、添加された抗体(1点)を段階希釈した(8点、5μg/mLから始まって3倍ずつ希釈する)。CHO-K1細胞(陰性対照群)の場合、CHO-K1 TIGIT細胞に対して行われた滴定での最も高濃度に相当する5μg/mLの単一濃度で試験した。30分培養後、抗マウス IgG(H+L) Alexa Fluor647抗体(Sigma A21236)4μg/mL(遮光下)を使用して抗体結合を測定した。フローサイトメトリーはAccuriC6 フローサイトメーターを使用して行い、データはFlowJoで分析した。得られた結果を図1に示した。
【0117】
安定的発現クローンに該当するハイブリドーマ細胞ペレットを溶解させ、mRNAを抽出し、重鎖および軽鎖の可変領域DNAをシーケンシングベクターにクローニングして重鎖および軽鎖DNA配列を分析した。マウス抗TIGITクローン(7A6)の配列を分析した結果を下記の表4に記載した。
【0118】
【表4】
【0119】
1.2.マウス抗TIGITクローンのヒト化
抗体構造および結合に重要なアミノ酸残基を確認するために、モノクローナル抗体可変領域(mAb V regions)のタンパク質構造モデルを分析した。このような情報をヒト抗体構造の仮想(in silico)設計と共に使用して、7A6のヒト化変異体製造に使用可能な大規模予備配列断片を選別し、ヒトMHCクラスIIアレルに対するペプチド結合を分析した。可能な場合、ヒトMHCクラスIIに対して有意味な非ヒト生殖細胞系列結合体(germline binders)と確認された配列断片は廃棄した。これによって断片セットが減少し、これら組み合わせを方法で再び分析して、断片の間の接合部が潜在的T細胞エピトープを含まないことを確認した。有意味なT細胞エピトープを含まないか減少した完全な可変領域(V region)が生成されるように、選別された配列断片を組み立てて、潜在的T細胞エピトープ認識を回避するヒト可変領域を設計した(脱免疫化;deimmunization)。
【0120】
遺伝子合成および哺乳類細胞での発現に使用するために、5個重鎖(VH1~VH5)および5個軽鎖(Vκ1~Vκ5)配列を選択した。
【0121】
一つのキメラ(VH0/Vκ0)および25個ヒト化変異体を含む一過性形質導入によって生産された安定したIgG抗体(‘○’表示)を下記の表5に要約した。
【0122】
【表5】
【0123】
表4の組み合わせの7A6クローンに表5の組み合わせを適用したキメラ抗体(VH0xVκ0)およびヒト化抗体の配列を表6、表7、および図2に示した。表6、表7、および図2で、Kabat定義によってアミノ酸配列ナンバリングおよびCDR部位を決定し、図2にのように決定されたCDRおよび親配列(VH0またはVκ0)で変更されたアミノ酸残基を陰影で表示した。
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
【0126】
製作された抗体中で、7A6 VH3/Vk5 hIgG1抗体の重鎖のFc領域に以下の点変異を導入してFc組換え変異体を製作した。
(1)S240D、A331L、およびI333E(DLE変異):7A6 VH3/Vk5-DLE;
(2)N298A:7A6 VH3/Vk5 N298A;
(3)S299A、E3334AおよびK335A(AAA変異):7A6 VH3/Vk5 AAA;または
(4)L235A、L236AおよびP330G(LALAPG変異):7A6 VH3/Vk5 LALAPG
【0127】
Fc組換え変異体を含む抗体の重鎖および軽鎖配列を表8に記載した。
【0128】
【表8-1】
【0129】
【表8-2】
【0130】
1.3.キメラおよびヒト化IgG1抗体の一過性発現(Transient expression)
VH0/Vκ0キメラ抗体コーディングDNAおよびヒト化重鎖および軽鎖コーディングDNAの組み合わせ(総25個ヒト化ペアリング)を6-ウェルプレートでPEIトランスフェクション方法でHEK293 EBNA接着細胞(LGC Standards、Teddington、UK)に一過性トランスフェクションさせた後、7日間培養した。サンプルを収集し、ヒトIgG1抗体を基準にして、Protein A biosensors(Molecular Devices、Wokingham、Berkshire、UK)を使用してOctet QK384上で抗体濃度を測定した。
【0131】
得られた結果を下記の表9に示した:
【0132】
【表9】
【0133】
上記表9は、キメラ抗体(VH0/Vκ0)および多様な組み合わせのヒト化抗体のHEK細胞での発現後の上澄み液内のIgG濃度(μg/mL)を示す。
【0134】
表9に示されているように、試験された全ての抗体がよく発現し、特にVH5Vκ1およびVH5Vκ5を除いた全てのヒト化変異体はVH0/Vk0キメラ抗体よりよく発現した。
【0135】
1.4.キメラおよびヒト化変異体のシングルサイクルカイネティクス分析
ヒトTIGIT抗原に対する全ての変異体の結合を評価しキメラ抗体(VH0Vκ0)に最も近い親和力を有する先導ヒト化IgG抗体を選択するために、形質感染した細胞の培養物の上澄み液上でシングルサイクルカイネティクス分析(cartoon)を行った。動力学試験は、25℃でBiacore T200 Control software V2.0.1およびEvaluation software V3.0を実行するBiacore T200(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)を使用して行った。
【0136】
参照表面に対する非特異的結合を減少させるために、1% BSA w/v(Sigma、Dorset、UK)が補充されたHBS-P+(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)をランニングバッファーとして使用し、リガンドと分析物の希釈にも使用した。IgGを含む上澄み液をランニングバッファーで1μg/mLまで希釈した。各サイクルの開始時に、抗体を抗ヒトセンサチップ(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)上のFc2、Fc3およびFc4にローディングした。IgG抗体を10μl/min流速でキャプチャーして固定化水準(immobilization level;RL)が~208RUになるようにした。その後、表面が安定化されるように置いた。
【0137】
潜在的質量伝達効果(mass transfer effects)を最少化するために40μl/min流速で注入された組換えヒトTIGIT(Sino Biological)を分析物(analyte)として使用してシングルサイクルカイネティクスデータを得た。抗原はランニングバッファーに1.25nM~10nM濃度範囲で2倍ずつ希釈(4つ地点)し、各濃度の間に再生しないようにして使用した。抗原濃度が増加する4個地点のそれぞれの注入に対して210秒間のassociation phasesをモニタリングし、最後の抗原注入以後、900秒間のsingle dissociation phaseを測定した。3M MgClの単一注入によってセンサーチップ表面を再生させた。
【0138】
二重参照センサグラムをLangmuir(1:1)結合モデルと共に装着し、この時、モデルに対するデータの適合性は実験的に得られた曲線およびフィット曲線(fitted curve;観察および予想)間偏差を説明するChi自乗値(Chi square value)を使用して評価した。フィッティングアルゴリズムはChi自乗値を最少化しようとする。1:1モデルフィット曲線から決定された運動定数を表10に示した。
【0139】
【表10】
【0140】
表10は、Biacore T200を使用して測定されたヒトTIGIT抗原に結合するキメラ抗体(VH0/Vκ0)およびヒト化変異体(細胞培養上澄み液で試験)のシングルサイクルカイネティクスのパラメーターを示す。相対Kはヒト化変異体のKを同一実験で分析されたVH0/Vκ0キメラ抗体のKで割って計算した。
【0141】
表10に示されているように、試験された全てのヒト化変異体(抗体)のヒトTIGITに対する結合と関連したK値はVH0/Vk0と比較して2.55倍以内に高く示された。相対的発現水準、ヒト化のパーセンテージ、および相対K値(上澄み液に対するBiacoreのシングルサイクルカイネティクス分析で得られる)を考慮して、6個ヒト化変異体(VH2/Vκ5、VH3/Vκ4、VH3/Vκ5、VH4/Vκ4、VH4/Vκ5およびVH5/Vκ5)を選択して以後熱安定性分析に使用した。
【0142】
1.5.熱安定性評価(Thermal Stability assessment)
本来状態から変性状態にアンフォールディング(unfolding)される温度から抗体の熱安定性情報を得るために、温度勾配安定性試験(Thermal ramp stability experiment)(TmおよびTagg)を行った。このようなアンフォールディング過程は狭い温度範囲で発生し、このような転移の中間地点を‘溶融温度’または‘Tm’という。この時、タンパク質が形態的変化を経るので、Sypro Range(タンパク質の露出された疎水性領域に結合する)の蛍光を測定して、タンパク質の溶融温度を決定した。
【0143】
サンプルをPBSで最終試験濃度である0.5mg/mlまで希釈し、SyproTM Orange(160xストック溶液;Sigma-Aldrich)を20x溶液の最終濃度で添加した。各サンプル混合物は9μLずつUNiマイクロキュベットに二回ずつローディングした。サンプルに対して15~95℃の温度勾配を実施した(勾配速度が0.3℃/分、励起が473nm)。250~720nmで全体放出スペクトルを測定し、510-680nmの間の曲線下面積を使用して転移曲線の変曲点(TonsetおよびTm)を計算した。473nmで静的光散乱法(SLS)をモニタリングしてタンパク質凝集を検出し、Tagg(凝集開始)は結果SLSプロファイルから計算した。データ分析はUNcleTM software version 4.0(ABZENA)を使用して行った。
【0144】
得られた結果を下記の表11に示した:
【0145】
【表11】
【0146】
上記表11は、UNcle biostability platformを使用して得られた熱安定性数値を示す。表11に示されているように、試験された全てのヒト化抗体はキメラ抗体と類似の水準の熱安定性を示した。
【0147】
1.6.マルチサイクル動力学的解析を用いたヒト化変異体の親和度測定
キメラ抗体と6個先導ヒト化変異体(VH2/Vκ5、VH3/Vκ4、VH3/Vκ5、VH4/Vκ4、VH4/Vκ5およびVH5/Vκ5)のヒトTIGIT抗原に対する結合親和度を測定するために、精製されたタンパク質(抗体)に対するマルチサイクル動力学的解析(multi-cycle kinetic analysis)を行った。動力学的実験は、25℃でBiacore T200 Control software V2.0.1およびEvaluation software V3.0を実行するBiacore T200(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)を使用して行った。
【0148】
1% BSA w/v(Sigma、Dorset、UK)が補充されたHBS-P+(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)をランニングバッファーとして使用し、リガンドと分析物の希釈にも使用した。精製された先導抗体をランニングバッファーで1μg/mLまで希釈し、各サイクルの開始時に、抗ヒト IgG CM5センサーチップ(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)上のFc2、Fc3およびFc4にローディングした。抗体を10μl/分の流速でキャプチャーして固定化水準(RL)が約150RUになるようにした。その後、表面が安定化されるように置いた。
【0149】
潜在的物質移動効果を最少化するために50μl/min流速で注入された組換えヒトTIGIT(acrobiosystems、China)を分析物として使用してマルチサイクル動力学的データを得た。抗原(TIGIT)はランニングバッファーに0.406nM~30nM濃度範囲で2倍ずつ希釈(7個地点)した。各濃度の間に再生がないようにして使用した。各濃度で、240秒間の会合相をモニタリングし、900秒間の解離相を測定した。3M MgClを2回注入してサイクルの間にセンサーチップ表面再生を行った。動力学的サイクルにわたって表面と分析物全ての安定性を確認するために、ブランクの多回反復および単一濃度の分析物の反復を動力学的ランにプログラミングした。
【0150】
得られた結果のうちのキメラ抗体(VH0/Vκ0)とVH3/Vκ5抗体に対する結果を代表として表12に示した。
【0151】
【表12】
【0152】
上記表12は、1:1モデルmodel fitted curvesから決定されたkinetic constantsを示す。表12に示されているように、ヒトTIGITタンパク質に対する結合親和度(KD)は、抗体7A6 VH0/Vκ0の場合、77pMであり、抗体VH3/Vκ5の場合、86.7pMで、互いに類似の水準を示した。
【0153】
1.7.エピトープマッピング
ペプチド質量フィンガープリント(Peptide mass fingerprint)およびH/D交換(hydrogen/deuterium exchange)を通じて抗体のエピトープを確認した。
【0154】
TIGITおよびTIGITと抗体7A6 Vh3/Vk5の混合物で重水素原子の導入(incorporation)を検出するために、サンプルのペプチド質量フィンガープリント(Peptide mass fingerprint;PMF)を最適化した。タンパク質分解およびクロマトグラフィー中に発生できる重水素原子の逆交換を制限するためのクエンチ(quenched)条件下でタンパク質サンプルのペプシンタンパク質分解を行った。
【0155】
TIGIT(配列番号30;NCBI Reference Sequence NP_776160.2;UniProtKB/SwissProt Q495A1-1)(15μM、150μl)溶液およびTIGITとVh3Vk5の混合物TIGIT:Vh3Vk5=(15μM:30μM、150μl)を準備した。タンパク質サンプル4μlを、交換実験用として標識バッファー(5mM KHPO;5mM KHPO、DO pH6.6)56μlと混合し、対照実験用として平衡化バッファー(5mM KHPO;5mM KHPO、pH7.0)56μlと混合した。15X希釈された溶液(60μl、TIGIT:Vh3Vk5;1μM:2μM)を15秒、60秒、180秒、600秒、1800秒、および7200秒間培養し、クエンチ溶液(50mM KHPO;50mM KHPO;GuCl 2.0M、TCEP 200mM、pH2.3、0℃)50μlをタンパク質サンプルに20秒培養時間添加した。培養後、クエンチングしたタンパク質溶液80μlを15℃で5分間タンパク質分解性ペプシンカラムに直ちに注入した。タンパク質分解後、MSe Xevo-G2-XS分析前に、C18クロマトグラフィー(HDX Manager Waters)を使用して生成されたペプシンペプチドを液体クロマトグラフィーで分析した。これら試験は3回繰り返して行った。
【0156】
DynamX3.0 softwareを使用してH/D交換ペプチドを分析した。重水素水準は高い信頼度および中間信頼度の全ての結果の平均を考慮して決定した。重水素化(deuteration)水準は実験的同位元素クラスタの重心に基づいて計算した。
【0157】
HDX-MS分析結果で、TIGITタンパク質を7A6 VH3/Vk5と共にまたは単独で培養時のTIGIT内の重水素導入間相当な差が確認された。重水素導入における主要差は7A6 Vh3Vk5のエピトープ領域であるアミノ酸残基51-70(TAQVTQVNWEQQDQLLAICN;配列番号31)で観察された。
【0158】
結果を図3aおよび図3bに示した。図3aは得られたHDX-MS分析結果を示し(TIGITの51-70(TAQVTQVNWEQQDQLLAICN;配列番号31)部位の重水素導入水準が高く示された)、図3bはTIGITリボン構造を模式的に示すもので、上側は平面図(topview)、下側は側面図であり、エピトープ部位は矢印で表示されている。
【0159】
1.8.一過性抗体発現および先導ヒト化抗体の精製
7A6 VH3/Vk5重鎖および軽鎖可変領域配列をクローニングベクター構築用側面制限酵素部位と共に合成した。合成配列の重鎖および軽鎖を適切な制限酵素(重鎖:Mlu I and Sal I(New England Biolabs);軽鎖:BssH II and BamH I(New England Biolabs))で処理し、同一の制限酵素で処理されたヒトのIgG1定常領域を含む発現ベクターにライゲーションさせた。重鎖および軽鎖cDNA構造体の全てシーケンシングした。CHO細胞で一過性形質導入のためのDNAを準備するためにGiga prepを行った。Giga prepはPureLinkTM HiPure Expi Plasmid Gigaprep Kit(Thermo Fisher Scientific、K210009XP)を使用して行い、Gigaprep KitはプラスミドDNAをE.coliで増幅させた後、アニオン交換クロマトグラフィーを用いて精製するキットである。動物成分含まないおよび血清含まない培地(CD CHO Medium、Thermofisher)を使用してCHO細胞(Evitria)を培養し、生産された抗体をMabSelectTMSuReTMを使用してProtein A精製法で培養上澄み液から精製した。SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)精製を連続的に実施して95%以上の純度を達成した。精製された抗体は280nmでの吸光度測定およびSDS-PAGEで特性確認した。
【0160】
1.9.ヒト初代T細胞でのTIGITに対する特異性および結合度
APEXTM抗体標識キット(Invitrogen)を使用して製造者指針によって、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体をAlexa Fluor(登録商標)488(AF488)と接合させた。磁性ビード(EasySepTM)を使用してヒトPBMCsからT細胞を分離し、多様な濃度の標識された抗TIGIT抗体(抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体;50、250、750、1250および2500ng/ml)と共に培養した。結合はフローサイトメトリー器(CytoFLEX、Beckman Coulter)で測定し、得られたデータはFlowjo software(TreeStar、Inc)を使用して分析した。抗TIGIT抗体の結合をCD3、CD4およびCD8 T細胞上で確認した。
【0161】
得られた結果を図4に示した。図4に示されているように、試験された抗TIGIT抗体はprimary T cellに結合し、(細胞当たりの)TIGIT分子に対する結合は抗TIGIT抗体濃度が増加するほど増加した。
【0162】
参照例: 参照抗体(reference antibodies)の準備
下記実施例に比較のために使用された参照抗体(Reference antibodies)をそれぞれ対応する特許に記載された配列情報に基づいて作製するか製造会社から入手した。各抗体の対応特許または製造会社を以下に要約した。
22G2(BMS):US2016/0176963 A1、
31C6(Merck):WO2016/028656 A1、
4.1D3(Genentech):WO2017/053748 A2、
TIG1(Arcus):WO2017/152088 A1、
313M32(Mereo):US2016/0376365 A1、
チラゴルマブ(Roche):CrownBioから入手、
10A7(Genentech):Creative Biolabsから入手、
MBSA43:eBioscienceから入手、
ペムブロリズマブおよびニボルマブ:InvivoGenから入手。
【0163】
実施例2.抗TIGIT抗体の細胞ベースのレポーターアッセイによる生物学的活性測定
抗TIGIT抗体のTIGITとそのレセプターであるポリオウイルス受容体(PVR)との相互作用に対する遮断効果(TIGIT-PVR blocking effect)を細胞ベースのNFATレポーター応答バイオアッセイ(Promega)で分析した。TIGITエフェクター細胞(Promega)を細胞アッセイバッファー(90% RPMI 1640/10% FBS)に添加し、TIGITエフェクター細胞を含む細胞懸濁液を37℃で16時間培養した。抗TIGIT抗体(7A6 VH3/Vk5)または比較抗体をPBSバッファーに準備し、予め-培養された細胞懸濁液に添加した。CD155 aAPC/CHO-K1細胞(Promega)を細胞と抗体含有混合物に添加し、37℃で6時間培養した。PromegaTM GloMax(登録商標)プレートリーダーで発光程度を測定した。曲線フィッテイング用のソフトウエア(GraphPad Prism(登録商標) software)を使用して抗体反応のEC50値を測定した。
【0164】
得られた結果を図5に示した。図5に示されているように、抗TIGIT 7A6VH3/Vk5抗体のTIGIT-PVR遮断によってT細胞活性化信号が増加した。本願の抗TIGIT 7A6VH3/Vk5抗体は、BMS(22G2)、Arcus(TIG1)、Genentech(4.1D3)、およびMereo(313M32)のような比較抗体と比較して非常に高い効果(非常に低いEC50数値)を示した。
【0165】
実施例3:抗TIGIT抗体のサイトカイン生産効果
3.1.ヒトPBMCおよび腫瘍浸潤リンパ球の準備
末梢血液単核細胞(PBMC)は成人(全血白血球コーン、NHS Blood and Transplant、UK)から得るか、STEMCELL Technologiesから購入した。肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;HCC)患者および健康な正常供与者に対して“Centre for Liver and Gastrointestinal Research、University of Birmingham、UK”の適切な倫理検討および事前同意後、本実施例の試験を行った。HCC患者から得られた肝組織からPBMCと肝由来リンパ球を準備した。0.5~1cmの肝臓針生検から肝浸潤リンパ球(Liver-infiltrating lymphocytes)を分離した。その後、組織をDounce組織粉砕機を使用してダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(GIBCO)2~3ml内で均質化させた。黒色腫、卵巣癌、CRC(大腸癌)、HCC、NSCLC(非小細胞肺癌)、膵臓癌患者のPBMCをCureline,Inc.から入手した。のように得られた癌患者の肝浸潤リンパ球とPBMCに対して以下の分析を行った。
【0166】
3.2.ヒトPBMCでのサイトカイン生産測定
3.2.1.抗TIGIT抗体によるヒトPBMCのサイトカイン分泌増加確認
PBMCsを抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体(2μg/mlおよび10μg/ml)存在下で抗-CD3抗体と共に培養した。抗TIGIT抗体を処理していない群を対照群とした。培養後、サンプルを400xgで10分間遠心分離し、上澄み液を取って多重免疫アッセイに使用した。サイトカイン濃度はBio-Plexサイトカインアッセイ(IFNガンマ、IL-2を含むヒトサイトカインの分析)で測定した。全ての分析は製造者指針に従って行い、結果はBio-Plex 200 array reader(Bio-Rad)を使用して読んだ。
【0167】
得られた結果(IFNガンマおよびIL-2濃度)を図6に示した。図6に示されているように、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体はヒトPBMCsでのTh1/Tc1サイトカイン分泌を有意味な水準で誘発した。本明細書および図面で異なって記載されない限り、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5-IgG1を抗TIGIT 7A6抗体または抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体と表示されている。
【0168】
3.2.2.抗TIGIT抗体によるヒトT細胞でのサイトカイン生産の増加確認
ヒトT細胞(CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞)でのサイトカイン生産を測定した。細胞(500,000細胞/反応)を抗TIGIT 7A6VH3/Vk5抗体の存在下で抗-CD3モノクローナル抗体(BD Biosciences、cat no.555336;0.2μg/ml)および抗-CD28モノクローナル抗体(BD Biosciences、cat no 555725;1μg/ml)と共に培養した。培養後、細胞を4℃で10分間400xgでスピンダウンし、T細胞内のサイトカイン濃度を測定した。このために次の方法で細胞内サイトカインを染色した:細胞をZombie Aqua固定死細胞染色溶液(Biolegend)で染色し、30分間氷の上でCD4+ and CD8+ T細胞表面マーカに対するフルオロフォア(fluorophore)-接合抗体で標識した。この時使用された抗-CD3抗体、抗-CD4抗体、抗-CD8抗体(以上、CD4+およびCD8+ T細胞表面染色に使用される)、抗-IL-2抗体、抗-IFNg抗体、および抗-TNFa抗体は全てBiolegendから入手した。
【0169】
eBioscienceTM Foxp3/Transcription Factor Fixation/Permeabilization Concentrate and Diluent kit(eBiosciences)を使用して製造者指針に従って細胞を固定化し浸透化させた(permeabilized)。細胞を細胞内IL-2、IFNγおよびTNFαに対するフルオロフォア-接合抗体(Biolegend)で染色した。細胞をフローサイトメトリー器(CytoFLEX、Beckman Coulter)で分析し、データはFlowjo software(BD Biosciences)で分析した。
【0170】
結果を図7a(CD4+ T細胞)および7b(CD8+ T細胞)に示した。図7aおよび7bに示されているように、本願の抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体はT細胞内でのTh1/Tc1サイトカイン(IL-2、IFNガンマ)生産増加させ、これを通じて免疫反応を強化させることを確認した。得られた結果は、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体が強力で容量-依存的なエフェクターT細胞機能増進効果を有することを示唆する。
【0171】
3.3.抗TIGIT抗体と比較抗体間の効能比較
3.3.1.抗TIGIT抗体の抗-PD1薬物と比較して増進された免疫強化効果確認
サイトカイン生産に対する抗TIGIT抗体の免疫学的効果を実施例3.2.2に記載された方法で測定した。比較のために、比較抗体として抗-PD1抗体であるペムブロリズマブ(‘Pem analog’と表示)およびニボルマブ(‘Niv analog’と表示)を使用した。分析は、抗TIGIT抗体または抗-PD1抗体を処理した後、フローサイトメトリーを行って実施した。抗-PD-1抗体と抗TIGIT抗体はそれぞれ10μg/mlずつ使用した。
【0172】
得られた結果を図8a(CD4+ T細胞でのIL-2濃度)、8b(CD4+ T細胞でのIFNガンマ濃度)、8c(CD8+ T細胞でのIL-2濃度)および8d(CD8+ T細胞でのIFNガンマ濃度)に示した。図8a-dに示されているように、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体は、ペムブロリズマブまたはニボルマブと比較して、高い水準でCD4+およびCD8+ T細胞活性化を誘導した。
【0173】
3.3.2.抗TIGIT 7A6抗体の抗TIGIT比較抗体と比較して増進されたTh1/Tc1サイトカイン生産効果確認
T細胞を多様な濃度(2μg/ml、5μg/ml、10μg/ml)の抗TIGIT抗体と共に培養した後、実施例3.2.2に記載された方法でサイトカイン生産を測定した。比較のために使用された抗TIGIT比較抗体は先に説明した通りである。
【0174】
得られた結果を図9a(CD4+ T細胞でのIL-2濃度)、9b(CD4+ T細胞でのIFNガンマ濃度)、9c(CD8+ T細胞でのIL-2濃度)および9d(CD8+ T細胞でのIFNガンマ濃度)に示した。図9a-dに示されているように、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体はTh1/Tc1 IFNガンマおよびIL-2サイトカイン生産増加させ、これを通じて免疫反応を強化させることを確認した。抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体は、抗TIGIT比較抗体と比較して、より強力なサイトカイン生産増加効果を示した。
【0175】
実施例4.抗TIGIT抗体のT細胞増殖効果
4.1.抗TIGIT抗体のヒトPBMCでのT細胞増殖効果確認
抗TIGIT抗体(7A6 VH3/Vk5-IgG1または7A6 VH3/Vk5-IgG4)10μg/mlをプレート結合抗CD3抗体(BD Biosciences)(0.2μg/ml)、PBMCs(500,000細胞/反応)およびCytostim activator(Miltenyi Biotec)と共に共培養した。培養後、Incucyte(登録商標)生細胞分析システム(Satorius)上でCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)測定およびフローサイトメトリー器上でKi67測定をそれぞれ行った。
【0176】
得られた結果を図10a(CFSEアッセイの結果)および10b(Ki67アッセイの結果)に示した(No Stim:cytostim activatorと抗体全て無処理;対照:抗体無処理)。図10aおよび10bに示されているように、本願の抗TIGIT抗体である7A6 VH3/Vk5-IgG1および7A6 VH3/Vk5-IgG4は全てT細胞の増殖を誘導し、これは抗TIGIT抗体によって誘導される免疫反応が長期間持続できることを示唆する。
【0177】
4.2.抗TIGIT抗体のCD8+ T細胞増殖に対するT調節細胞抑制遮断効果確認
ヒトCD8+ T細胞単離キット(Miltenyi Biotec 130-096-495)およびCD4+ CD25+ CD127-dim reg T細胞単離キッII(130-094-775)を使用してCD8+ T細胞およびTregs(T regulatory cells)を分離した。分離されたCD8+ T細胞を細胞tracker violet増殖キット(Thermo Fisher)で染色し、CD8:Treg比率が4:1になるように細胞を播種した。細胞をCD3/CD28ダイなビーズ(ThermoFisher)で活性化させ、抗TIGIT 7A6 VH3/Vκ5抗体10μg/mlを適切なウェルに添加した。3日目に、ビードを洗浄しIL-2(50ng/ml)を添加した。7日目に、生/死(ThermoFisher LIVE/DEADTM Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit)、CD3、CD8、CD4に対する表面マーカ抗体(全てBiolegendから入手)で細胞を染色し、フローサイトメトリー装置(CytoFlex、Beckman Coulter)上で分析した。
【0178】
得られた結果を図11に示した。図11に示されているように、Tregs添加時、CD8+ T細胞増殖が減少するが、このようなCD8+ T細胞増殖抑制は抗TIGIT抗体によって遮断された。これは、抗TIGIT抗体がTregs-媒介CD8+ T細胞増殖抑制を遮断することを意味する。
【0179】
実施例5.抗TIGIT抗体と抗-PD1薬物との併用による上昇效果
5.1.細胞ベースのレポーターアッセイを通じた抗TIGIT/抗-PD1抗体の生物学的特性評価
抗TIGIT抗体と抗-PD抗体(ペムブロリズマブまたはニボルマブ)の併用による上昇效果を試験した。抗TIGIT抗体と抗-PD抗体のTIGIT-PVR/PD-1-PD-L1複合遮断効果を細胞ベースNFATレポーター応答バイオアッセイ(Promega)で分析した。PD-1+TIGIT+エフェクター細胞(Promega;1×10細胞/反応)を細胞アッセイバッファー(90% RPMI 1640/10% FBS)に添加し、PD-1+TIGIT+エフェクター細胞含有細胞懸濁液を37℃で16時間培養した。PD-L1+CD155 aAPC/CHO-K1細胞(Promega;4×10細胞/反応)を細胞回収培地(90% Ham’s F-12、10% FBS)に添加して準備した。抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体とペムブロリズマブまたはニボルマブの抗体混合物をPD-1+TIGIT+エフェクター細胞(1×10細胞/反応)およびPD-L1+CD155 aAPC/CHO-K1(4×10細胞/反応)含有細胞懸濁液に入れ、37℃で6時間培養した。抗TIGIT抗体または抗-PD1抗体のうちの一つのみ単独処理した場合を対照群とした。単独処理時、抗体使用量は0.02048、0.512、1.28、3.2、8、20(μg/ml)とし、併用処理時には抗TIGIT抗体の使用量は0.02048、0.512、1.28、3.2、8、20(μg/ml)、抗-PD-1抗体(ペムブロリズマブ or ニボルマブ)の使用量は0.02048、0.512、1.28、3.2、8、20(μg/ml)とした。
【0180】
培養後、Bio-Glo Reagentを入れ周囲温度(常温)で10分間培養した。発光程度は、PromegaTM GloMax(登録商標)プレートリーダーで測定した。curve fitting software(GraphPad Prism(登録商標) software)を使用して抗体反応のEC50値を決定した。
【0181】
得られた結果を図12に示した。図12に示されているように、抗TIGIT抗体とペムブロリズマブまたはニボルマブの併用による上昇效果が示された。
【0182】
5.2.抗-PD1/比較抗体組み合わせと抗TIGIT/抗-PD1抗体との生物学的活性比較
TIGIT-PVR/PD-1-PD-L1遮断のための抗TIGIT抗体および抗-PD1抗体の併用効果を細胞ベースNFATレポーター応答バイオアッセイ(Promega)で分析した。抗TIGIT抗体(7A6)または抗TIGIT比較抗体を実施例5.1を参照してペムブロリズマブまたはニボルマブと共培養した。比較のために、比較抗体を細胞混合物と培養し同様な方法で処理した。単独処理時、抗体使用量は0.013、0.032、0.082、0.204、0.512、1.28、3.2、8、20(μg/ml)とし、併用処理時には抗TIGIT抗体の使用量は0.013、0.032、0.082、0.204、0.512、1.28、3.2、8、20(μg/ml)、抗-PD-1抗体(ペムブロリズマブ又はニボルマブ)の使用量は0.013、0.032、0.082、0.204、0.512、1.28、3.2、8、20(μg/ml)とした。
得られた結果を図13a(ペムブロリズマブと併用)および13b(ニボルマブと併用)に示した。図13aおよび13bに示されているように、ペムブロリズマブおよびニボルマブと併用した抗TIGIT抗体は全て抗-PD1抗体と抗TIGIT比較抗体が併用された場合と比較して高い上昇効果を示した。
【0183】
5.3.免疫T細胞に対する抗TIGIT/抗-PD1抗体の免疫学的効果
抗TIGIT/抗-PD1抗体の併用または単独処理時のヒトT細胞のサイトカイン生産を測定した。抗TIGIT抗体7A6 VH3/Vk5(2μg/ml)をペムブロリズマブ(2μg/ml)またはニボルマブ(2μg/ml)と予め混合し、細胞培養物に添加した。実施例3.2.2を参照して細胞内サイトカイン染色を行った。
【0184】
得られた結果を図14a(CD4+細胞)および14b(CD8+細胞)に示した。結果から確認されるように、抗TIGIT 7A6VH3/Vk5抗体と抗-PD1抗体との併用によってヒト初代T細胞でのTc1/Th1サイトカイン生産による抗-腫瘍活性が強化された。
【0185】
実施例6:抗TIGIT抗体の腫瘍細胞に対する細胞毒性評価
6.1.腫瘍細胞でのTIGITリガンドであるPVR(CD155)の発現水準評価
標的になる腫瘍細胞(A375およびSK-OV3細胞)(ATCC)に対して1:25希釈された抗-CD155 PE-Cy7(Biolegend)を使用してCD155(PVR)染色を行い、フローサイトメトリー器で分析した。
【0186】
得られた結果を図15に示した。図15に示されるように、A375およびSK-OV3腫瘍細胞はTIGITのリガンドであるCD155を相当な水準で発現した。
【0187】
6.2.抗TIGIT抗体のA375黒色腫細胞に対する細胞毒性確認
抗TIGIT抗体(7A6 VH3/Vk5および7A6 VH3/Vk5-DLE)10μg/mlをPBMC(250,000細胞/反応)およびCytostim(Milteni Biotec)の存在下で72時間A375細胞株(メラノーマ)(2.5×10e4 細胞/反応)と抗体を共培養してA375腫瘍細胞に対する細胞毒性を試験した。抗TIGIT10A7比較抗体(Genentech)を比較例として使用した。また、操作された抗TIGIT抗体(7A6 VH3/Vk5-DLE)に対しても腫瘍細胞に対する死滅能をテストした。腫瘍細胞数はIncucyte(登録商標)生細胞分析システム(Satorius)で測定した。
【0188】
得られた結果を図16に示した。図16に示されるように、本願の抗TIGIT抗体である7A6 VH3/Vk5および7A6 VH3/Vk5-DLEの両方とも増加された腫瘍細胞死滅効果を示した。
【0189】
6.3.抗TIGIT抗体の卵巣癌細胞に対する細胞死滅能1
SKOV-3腫瘍(卵巣癌)細胞株に対する抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体の細胞死滅能を確認するために、抗TIGIT抗体(10μg/ml)または比較抗体(10μg/ml)の存在または不在下でSKOV-3細胞(35k 細胞/ウェル)をPBMCsおよびCytoStim(1/50)と共に共培養した。エフェクター細胞とターゲット細胞の比率(E:T)は6:1とした。比較抗体として抗TIGIT抗体Mereo/313M32、BMS/22G2、Genetech/4.1D3、およびArcus/TIG1を使用した(参照例参考)。得られたデータはIncucyte(登録商標生細胞分析システム(Satorius)およびIncuCyte native softwareを使用して分析した。
【0190】
得られた結果を図17a(培養時間による細胞死滅率)および17b(84日培養後細胞死滅率)に示した。図17aおよび17bに示されるように、抗TIGIT 7A6VH3/Vk5抗体の腫瘍細胞死滅能増加が観察され、このような腫瘍細胞死滅能は比較抗体と比較して顕著に高く示された。
【0191】
6.4.抗TIGIT抗体の卵巣癌細胞に対する細胞死滅能2
抗TIGIT抗体(抗TIGIT 7A6VH3/Vk5および7A6VH4/Vk4)(それぞれ10μg/ml)の存在または不在下でSKOV-3cells(35k細胞/ウェル)を分離されたCD8+ T細胞およびCytostimと共に108日間共培養して、抗TIGIT抗体のSKOV-3卵巣癌細胞に対する細胞毒性を試験した。エフェクター細胞とターゲット細胞の比率(E:T)は3:1として分析した。ペムブロリズマブを同様な方法で処理した群は対照群とした。データはIncuCyte native softwareを使用して分析した。
【0192】
得られた結果を図18に示した。結果から確認されるように、抗TIGIT 7A6VH3/Vk4抗体の腫瘍細胞死滅能増加が観察され、このような腫瘍細胞死滅能はペムブロリズマブと比較して顕著に高く示された。
【0193】
6.5.TIGIT-CD155(PVR)遮断によるNK細胞のSKOV3腫瘍細胞に対する細胞毒性増加確認
分離されたNK細胞を48時間IL-15(5ng/ml)を使用するかまたは使用せずに予備刺激を行った。NK細胞はNK単離キット(Miltenyi Biotec製のNK細胞単離キット(cat.No.130-092-657))を使用して製造者指針に従ってヒト PBMCから分離した。培養後、NK細胞(250,000細胞/反応)を抗TIGIT抗体(7A6 VH3/Vk5、7A6 VH4/Vk4、7A6 VH3/Vk5-DLE)(それぞれ10μg/ml)の存在下でE:Tを10:1としてSKOV3細胞(2.5×10e4 細胞/反応)と共に48時間共培養した。腫瘍細胞個数はIncucyte(登録商標)生細胞分析システム(Satorius)を使用して測定した。
【0194】
得られた結果を図19に示した。結果から確認されるように、試験された全ての抗TIGIT抗体はNK細胞のSKOV3腫瘍細胞死滅能を非常に増加させた。
【0195】
実施例7:生体内(in vivo)抗癌効果試験
7.1.MC38結腸癌モデルでの抗TIGIT抗体の生体内効能試験
ヒトPVR発現MC38(MC38-hPVR)腫瘍細胞(CrownBio)を37℃および5%CO2大気条件で10%FBS(ウシ胎仔血清)が補充されたDMEM+4μg/mlピューロマイシン培地に体外(in vitro)保管した。対数増殖期(exponential growth phase)の細胞を収穫し、腫瘍細胞接種前に細胞計数器で定量化した。
【0196】
C57BL6 hTIGIT knock-in マウス(GemPharmatech Co., Ltd)の右側後方脇腹部分に準備された腫瘍細胞溶液(0.1mLのPBS溶液中の2×10腫瘍細胞)を皮下接種し腫瘍を成長させた。腫瘍平均大きさ(体積)が80-100mmになった時、無作為化(randomization)を行った。本試験に総15匹のマウスを使用し、これらを無作為に3個群に分けた(5匹のマウス/群)。
【0197】
腫瘍細胞接種後、動物の病的状態および死亡率を毎日チェックし、無作為化後、1週に3回ずつ体重増加/減少を測定した。死亡率と観察された臨床的症状を各動物別に毎日記録した。腫瘍大きさ(体積)は無作為化後、1週に3回ずつカリパスを使用して2次元で測定し、下記の数式で計算した。
V(mm)=(L×W×W)/2
[Vは腫瘍体積(mm)、Lは腫瘍長さ(腫瘍の長軸長さ)、Wは腫瘍広さ(Lの垂直のうちの最も長い長さ)]。
【0198】
投与と腫瘍大きさおよび体重測定は、Laminar Flow Cabinetで行った。体重と腫瘍大きさはStudyDirectorTM software(version3.1.399.19)を用いて測定した。
【0199】
グルーピング直後、抗体またはビヒクル処理を行った。PBS溶液をビヒクルとして使用し(対照群;グループ1)、CHO細胞で生産された7A6 VH3/Vk5およびチラゴルマブはそれぞれ20mg/kg容量で処理した(それぞれグループ2およびグループ3)(表13参照)。
【0200】
【表13】
【0201】
抗体の投与群(グループ2および3該当;20mg/kgの容量、i.p.投与)の全ては試験期間中に体重減少が観察されなかった。
【0202】
のように測定されたマウスの腫瘍大きさを図20に示した。
【0203】
図20に示されるように、抗体処理後21日目に、7A6 VH3/Vk5抗体は対照群(PBS)と比較して顕著な腫瘍成長抑制効果を示した。試験群間のMC38腫瘍大きさを適応した日にに対応のないt検定で分析すると、対照群と比較して7A6 VH3/Vk5抗体による腫瘍成長抑制効果は9日目(p値、0.029)および21日目(p値、0.007)に特に顕著に示された。7A6 VH3/Vk5抗体(グループ2)はまた比較抗体であるチラゴルマブ(グループ1)と比較しても優れた抗腫瘍効果を示した(例、21日目、p値、0.013)。
【0204】
腫瘍成長抑制(ΔTGI)は、Δ阻害の平均%として計算した。
ΔTGI(Δ阻害の平均%)=((平均(C)-平均(C0))-(平均(T)-平均(T0)))/(平均(C)-平均(C0))*100%、
[T:試験群の測定時点の腫瘍大きさ、
T0:試験群の最初腫瘍大きさ、
C:対照群の測定時点の腫瘍大きさ、
C0:対照群の最初腫瘍大きさ。]
【0205】
7A6 VH3/Vk5抗体の腫瘍成長抑制(TGI)は67.9%であり、チラゴルマブ(TGI=55.2%)と比較して上昇した抑制効果を示した。
【0206】
7.2.CT26結腸癌モデルでの抗TIGIT抗体と抗-PD1抗体の併用処理による上昇した体内抗癌効能試験
CT-26腫瘍細胞(CrownBio)を37℃および5% CO大気条件で10% FBSが補充されたRPMI1640培地に体外(in vitro)保管した。対数増殖期(exponential growth phase)の細胞を収穫し、腫瘍細胞接種前に細胞計数器で定量化した。
【0207】
BALB/c hPD-1/hTIGIT2重ノックインマウス(GemPharmatech Co.,Ltd)の右側後方脇腹部分に準備された腫瘍細胞溶液(0.1mLのPBS溶液中の5×10腫瘍細胞)を皮下接種し腫瘍を成長させた。腫瘍接種日を“Day0”とした。腫瘍平均大きさ(体積)が70-100mmになった時、無作為化(randomization)を行った。本試験に総30匹のマウスを使用し、これらを無作為に5個群に分けた(6匹のマウス/群)。
【0208】
腫瘍細胞接種後、動物の体重を測定した。
【0209】
PBS溶液をビヒクルとして使用し(対照群;グループ1)、7A6 VH3/Vk5および7A6 VH3/Vk5-DLEをそれぞれ20mg/kg容量で処理(それぞれグループ3およびグループ4)、抗-PD1抗体Keytruda(ペムブロリズマブ;Merck)を5mg/kg容量で処理(グループ4)、および7A6 VH3/Vk5 20mg/kgおよびKeytruda 5mg/kgを併用処理(グループ5)した。
【0210】
ビヒクル処理群(対照群)の平均腫瘍変位量(tumor burden)が25日目に3000mmになった時に試験を終了した(表14参照)。
【0211】
【表14】
【0212】
TGI%は次の数式で計算した: TGI(%)=100×(1-T/C)
(TおよびCはそれぞれ特定日の試験群(T)および対照群(C)の平均腫瘍体積(または重量)。
【0213】
得られた結果を表15および図21に示した:
【0214】
【表15】
【0215】
表15および図21に示されているように、25日目に、7A6 VH3/Vk5処理群(グループ3)およびKeytruda処理群(グループ2)の両方ともでそれぞれTGI 51.43%と55.91%の腫瘍成長減少が観察された。Keytrudaと7A6 VH3/Vk5の併用処理群(グループ5)でTGI 78.98%で腫瘍形成遅延および腫瘍成長抑制効果が最も顕著に示された。25日目の7A6 VH3/Vk5処理群、Keytruda処理群、およびKeytruda+7A6 VH3/Vk5併用処理群の腫瘍成長抑制効果は、対照群と比較して統計的に有意味に高く示された(p-value<0.05)。7A6 VH3/Vk5処理群(1匹)とKeytruda+7A6 VH3/Vk5併用処理群(2匹)で完全な腫瘍除去が観察された。抗体を処理した全ての試験群で有意味な体重差はなかった。
【0216】
また、腫瘍微細環境(tumor microenvironment;TME)での免疫細胞に対する効果を試験して、その結果を図22に示した。
【0217】
FACS分析のために、安楽死させたマウスから収集された腫瘍を切除し、ヒーター付きの弱いMACSTMOcto解離器(Gentle MACSTM Octo Dissociator with Heaters)および多重組織解離キット1(Miltenyi biotech)を使用して単一細胞に解離した。細胞を次の表面マーカ(抗マウス CD45 FITC(Biolegend)、抗マウス CD3-BUV395(BD)、抗マウス CD4-BV421(Biolegend)、抗マウス CD8-PE-eFluor610(eBiosciences)、抗マウス CD335(eBiosciences)、生/死-APC-eF780(eBiosciences)に対する蛍光標識された抗体で染色した。追加的に固定化/透過濃縮物及び希釈液キット(ThermoFisher)を使用して細胞固定および透過化させた後、抗マウス Foxp3(eBiosciences)で染色処理した。フローサイトメトリー(LSRFortessa X-20、BD)で細胞を分析し、データはflowJo data analysis softwareで分析した。
【0218】
図22に示されているように、抗TIGIT抗体と抗-PD1抗体の併用投与によって腫瘍内のTregs頻度が減少しながら、CD3、CD4、およびCD8+ T細胞は増加した(図22)。
【0219】
7.3.抗TIGIT抗体の患者由来腫瘍異種移植(PDX)されたヒト化肝癌マウスモデルでの生体内効能試験
三人の供与者(Jackson Laboratory、USA)の臍帯血から得られたヒトCD34造血幹細胞(hematopoietic stem cells;HSC)を移植した免疫欠乏性NSGマウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)(Jackson Laboratory、USA)をin vivo分析に使用した。癌患者の切除手術後の手術標本から肝胆管癌LIXFC 2479(Charles river)腫瘍細胞を得た。継代(passage)1の免疫欠乏マウスに腫瘍断片を移植し、安定的な成長パターンが確立されるまで腫瘍異種移植片を継代した。ヌードマウスから連続継代を通じて異種移植片から腫瘍断片を得た。腫瘍を供与者マウスから除去した後、切片(縁長さ3~4mm)に切断し、10%ペニシリン/ストレプトマイシンが含有されているPBSに入れた。授与者マウスの一方の脇腹に皮下移植し、これを患者-由来腫瘍異種移植(PDX)モデルと称した。
【0220】
動物をそれぞれ6匹のマウスから構成された二つのグループに分配し、各グループで二匹ずつのマウスに3人の各供与者のHSCで再構成(reconstituted)し、同時に開始時類似グループ腫瘍体積中央値50-150mmおよび体重を保証した。無作為化遂行日を“Day0”とした。対照群としてPBSを使用した(グループ1)。グループ2のマウスは7A6 VH3/Vk5を20mg/kg容量で処理した。試験物質は4週間、毎週2回腹腔内注射を通じて投与し、28日目に実験が終了するまで腫瘍大きさをモニタリングした。細部事項は下記表16に示された通りである:
【0221】
【表16】
【0222】
得られた結果(腫瘍大きさ)を図23に示した。図23に示されるように、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体は対照群に比べて腫瘍成長を顕著に抑制した。TGI評価のために、28日目に抗TIGIT抗体処理群と対照群の間で腫瘍大きさを比較した。7A6 VH3/Vk5抗体の腫瘍成長抑制(ΔTGI)は76.6%と示され、これは抗体が合成マウスモデルよりヒト癌に対する生理学的関連性が大きいと見なされる肝癌PDX腫瘍モデルで相当な抗癌効果を有するのを示す。
【0223】
実施例8:ヒトPBMCおよび腫瘍浸潤T細胞での抗TIGIT抗体の抗腫瘍効能
8.1.腫瘍微細環境(tumor microenvironment;TME)でのT細胞サブセット上のTIGIT発現確認
ヒト腫瘍微細環境での抗TIGIT抗体の潜在的効果を測定するために、HCC(hepatocellular carcinoma;間細胞癌腫)患者とHFE(hemochromatosis;血色素症)供与者の肝でTIGIT発現を確認した。HFE(hemochromatosis)は正常的な肝機能を有する免疫学的に健康な状態と見なされる。T細胞サブセットのTIGIT発現を調査するために、正常供与者およびHCC癌患者に由来する腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes)を準備した(実施例3.1参照)。細胞に対して細胞表面マーカ(CD3、CD4、CD8、CD127、CD25、TIGIT)を染色し(CD3、CD4、CD8、CD127、およびCD25抗体はBiolegendから入手、TIGIT抗体はR&D Systemsから入手)、フローサイトメトリーおよびFlowjoソフトウェアで分析した。各T細胞サブセットでのTIGITの平均蛍光強度(Mean Fluorescence Intensity;MFI)をFlowjo software(BD Biosciences)を使用して測定した。
【0224】
得られた結果を図24に示した。図24に示されるように、HCC患者での腫瘍浸潤T細胞上のTIGIT発現は正常供与者に比べてさらに高く示された。TIGITは、HCC患者の腫瘍浸潤T細胞において、CD4+およびCD8+ T細胞と比較して、Treg細胞で最も高い比率で発現した。このような結果は、Treg細胞が抗TIGIT抗体の抑制活性において好ましい標的であることを示唆する。
【0225】
8.2.肝癌患者由来T細胞でのサイトカイン生産
TIGITを発現する免疫細胞は癌患者で機能障害を起こし、抗TIGIT抗体処理によってHCC患者の免疫反応を回復するか向上させることができるかを試験した。
抗TIGIT抗体によって媒介されるT細胞からのサイトカイン生成を測定するために、肝細胞癌腫(HCC)患者または健康な供与者から得られたヒトPBMCを抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体(抗TIGIT 7A6)(10μg/ml)または同一容量の比較抗体(抗TIGIT 10A7、22G2)存在下で抗-CD3および抗-CD28抗体と共に培養した。細胞内サイトカイン生成を測定した(実施例3.2.2参照)。
【0226】
得られた結果を図25に示した。比較抗体である抗TIGIT抗体10A7(Genentech)および22G2(BMS)と比較して、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体処理時、HCC患者のPBMCでCD4+およびCD8+ T細胞のサイトカイン生産が高い水準で増加することを確認した。IL-2およびIFN-γはNKおよびT細胞の増殖および死滅活性を増加させて免疫系の核心的機能を有するサイトカインであるので、得られたデータはHCC患者に対する抗TIGIT 7A6抗体処理による効能を示す。
【0227】
8.3.肺癌患者のT細胞に対する抗TIGIT抗体の効能
非小細胞肺癌(non-small-cell lung carcinoma;NSCLC)患者に由来したヒトPBMCの免疫細胞での抗TIGIT抗体処理(それぞれ10μg/ml)によるサイトカイン生産を試験した(実施例3.2.2参照)。
【0228】
得られた結果を図26に示した。比較抗体である抗TIGIT抗体10A7(Genentech)および22G2(BMS)と比較して、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体はNSCLC患者のPBMC内のCD4+およびCD8+ T細胞からサイトカイン生成をさらに高い水準で増加させた。このような結果は、抗TIGIT 7A6抗体のNSCLC患者に対する効能を立証する。
【0229】
8.4.大腸癌患者のT細胞に対する抗TIGIT抗体の効能
TIGIT発現免疫細胞は癌患者で機能障害を起こし、抗TIGIT抗体処理によって大腸癌患者の免疫反応を回復または向上させることができるか試験した。大腸癌(colorectal cancer;CRC)患者に由来したヒトPBMCの免疫細胞での抗TIGIT抗体処理(それぞれ10μg/ml)によるサイトカイン生産を試験した(実施例3.2.2参照)。
【0230】
得られた結果を図27に示した。比較抗体である抗TIGIT抗体10A7(Genentech)および22G2(BMS)と比較して、抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体は大腸癌患者のPBMCでCD4+およびCD8+ T細胞からのサイトカイン生産をさらに高い水準で増加させ、このような結果は抗TIGIT 7A6抗体の大腸癌患者に対する効能を示唆する。
【0231】
実施例9:抗TIGITFab断片のTIGIT-PVR相互作用遮断を通じたT細胞活性化試験
9.1.中枢記憶T細胞およびエフェクター記憶T細胞での抗TIGIT Fab断片の免疫学的効果
抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体によるTIGIT/PVR経路の特異的遮断効果を検証するために、抗体の抗TIGIT-Fab断片(7A6_VH3可変領域および7A6_VK5可変領域がジスルフェート結合で連結される)をHEK293細胞で生産し、固定化金属親和性クロマトグラフィーで精製した。抗TIGIT Fab断片は、Fc-誘導効果なく特異的遮断機能のみを示すために使用した。
【0232】
抗TIGIT Fab断片を使用して癌に対する長期間の強力な細胞毒性保護作用を果たすTIGITタンパク質に対する特異的結合を通じた中枢記憶T細胞[Tcm](図28a)および効果器記憶T細胞[Tem](図28b)の活性化を評価した。具体的に、500,000PBMC細胞をanti-CD3(0.2μg/ml)(BD Biosciences)と抗CD28抗体(1μg/ml)(BD Biosciences)で活性化させた後、抗TIGIT Fab断片(10μg/ml)を48時間処理した。Brefeldin A(Sigma)とMonensin(Sigma)を各ウェルに最終濃度1/1000になるように加えた後、4時間さらに処理した。セントラルメモリーT細胞とエフェクターメモリーT細胞の染色のために細胞をウォッシュ後、常温で10分間次の抗体で染色処理した:生/死(ThermoFisher LIVE/DEADTM Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit、633又は635nmの励起用)、抗CD3-APC(Biolegend)、抗CD8-PerCP(Biolegend)、抗CD45RA-Brillant Violet 421(Biolegend)、抗CCR7-Brilliant Violet 510(Biolegend)。染色後にセントラルメモリーT細胞およびエフェクターメモリーT細胞のサイトカインレベルを以下のように測定した。Foxp3/転写因子固定化/透過濃縮及び希釈キット(ThermoFisher)を使用して製造者指針に従って細胞を固定化し透化させた(permeabilized)。細胞を細胞内IL-2、IFNγ、TNFa(全てBiolegend)に対するフルオロフォア-接合抗体で染色した。細胞をフローサイトメトリー装置(CytoFLEX、Beckman Coulter)で分析し、データはFlowjo software(BD Biosciences)で分析した。
【0233】
得られた結果を図28a(中枢記憶T細胞)および28b(エフェクター記憶T細胞)に示した。結果に示されるように、抗TIGIT-Fab断片は向上した水準のTcmおよびTem活性化を誘導し、これは抗TIGIT(7A6 VH3/Vk5)抗体が癌で長期間持続する免疫反応を媒介する特異的遮断活性を有するということを立証する。
【0234】
9.2.抗TIGIT Fab断片によって媒介されるA375腫瘍細胞に対する細胞毒性増加確認
A375腫瘍細胞(35k細胞/ウェル)をSyto-9染料で染色し、抗TIGITヒト化抗体から生成されたFab断片(Fab 7A6 VH0/Vk0、3VH3/Vk5、VH4/Vk4)(それぞれ10μg/ml)の存在下でPBMCおよびCytoStim(1/50)と共培養した。腫瘍細胞数は、Incucyte(登録商標)Live-Cell analysis system(Satorius)を使用して測定した。
【0235】
得られた結果を図29に示した。試験された全ての抗TIGIT Fab断片VH0/Vk0、VH3/Vk5およびVH4/Vk4はTIGIT-CD155(PVR)相互作用を遮断し、A375腫瘍細胞に対する細胞毒性を増加させた。このような結果は、抗TIGIT 7A6ヒト化抗体がTIGIT-CD155(PVR)経路を効果的に遮断し、強化された免疫機能を誘導するということを確認させる。
【0236】
実施例10.抗TIGIT抗体の調節T細胞およびNK細胞の免疫調節効果
10.1.TIGITのT調節細胞(regulatory T cells;Tregs)上での高い水準発現確認
健康な供与者のPBMCでT細胞サブセットおよびTIGITタンパク質に対するマーカを染色した(抗CD3-APC(Biolegend)、生/死(ThermoFisher LIVE/DEADTM Fixable Near-IR Dead Cell Stain Kit)、抗CD8-PerCP(Biolegend)、抗CD4-Alexa Fluor700(Biolegend)、抗CD127-PE(Biolegend)、抗CD25-Brilliant Violet 421(Biolegend)、抗TIGIT-PeCy7(Biolegend))。染色後、細胞をスピンダウンさせ、フローサイトメトリーで分析した。
【0237】
結果を図30に示した。TIGITは、非Tregs CD4+およびCD8+ T細胞と比較して、調節T細胞(regulatory T cells;Tregs)でより高い水準で発現した。
【0238】
10.2.抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体のTreg消去(depletion)活性
抗-CD3抗体(BD Biosciences)および抗-CD28抗体(BD Biosciences)の存在下で抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体(10μg/ml)をヒトPBMCと共培養した。対照群として抗TIGIT 10A7(Genentech)を使用した。Tregs、CD4+ TおよびCD8+ T細胞の頻度をフローサイトメトリーで評価した。
【0239】
得られた結果を図31a(Tregs)、31b(CD4+ T細胞)、31c(CD8+ T細胞)、および31dに示した。抗TIGIT 7A6VH3/Vk5抗体はCD4+およびCD8+ T細胞比率は変化させないながらTreg細胞を特異的にターゲッティングした。また、抗TIGIT抗体は対照群抗TIGIT抗体(10A7)に比べて高い水準でTregを枯渇させた(図31d)。
【0240】
10.3.NK細胞によって媒介される抗TIGIT 7A6 VH3/Vk5抗体のTreg消去(depletion)活性確認
TregおよびNK細胞を抗TIGIT抗体7A6 VH3/Vk5またはVH3/Vk5-DLE(それぞれ10μg/ml)の存在または不在下で一晩共に共培養した。翌日、TregおよびNK細胞の残存細胞数をフローサイトメトリーで測定した。Treg細胞はMiltenyi kits(CD4+CD25+CD127-dim reg T細胞単離キットII、cat no.130-094-775)を使用し、NK細胞はMilteny kits(NK細胞単離キット、cat no.130-092-657)を使用して、製造者指針に従ってヒトPBMCから分離した。
【0241】
得られた結果を図32に示した。Treg細胞数は抗TIGIT 7A6VH3/Vk5抗体およびVH3/Vk5-DLE抗体処理によって減少した反面、NK細胞数は変わらなかった。このような結果は、試験された抗TIGIT抗体がNK細胞と共に抗体依存的細胞細胞毒性によってTregを効率的に枯渇させるのを示す。
【0242】
一方、抗TIGIT抗体によるNK細胞媒介Treg消去(枯渇;depletion)にFc受容体結合が必要かどうかを試験した。
【0243】
TregおよびNK細胞を抗TIGIT抗体7A6 VH3/Vk5-DLE(10μg/ml)の存在下で一晩共に共培養した。Treg細胞はMiltenyi kits(CD4+ CD25+ CD127-dim reg T細胞単離キットII、cat no.130-094-775)を使用し、NK細胞はMilteny kits(NK細胞単離キット、cat no.130-092-657)を使用して、製造者指針に従ってヒトPBMCから分離した。Fcブロッキング抗体CD16およびヒト TruStain FcXTM(BioLegend)を処理してFc受容体を遮断した。翌日、TregおよびNK細胞の残存細胞数をフローサイトメトリーで測定した。
【0244】
得られた結果を図33に示した。抗TIGIT抗体はTregsを有意に減少させ、ブロッキング抗体によってFcRが遮断されるとTregs減少が抑制された。このような結果は、抗TIGIT抗体によるNK細胞媒介Treg枯渇にFc受容体結合が必要であるのを示す。
【0245】
10.4.Fc-依存的T細胞活性化
FcgRIIIAを事前遮断させるか事前遮断なくヒトT細胞(CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞)でのサイトカイン生産を測定した。500,000PBMC細胞をFcgRIIIA(Biolegend cat no.422302)抗体と5分間常温でプレインキュベートした。その後、PBMC細胞を抗TIGIT 7A6VH3/Vk5(10μg/ml)またはアイソタイプ対照抗体(10μg/ml)の存在下で0.2μg/ml抗-CD3(BD Biosciences)および1μg/ml抗-CD28(BD Biosciences)モノクローナル抗体と共に培養した。培養後、細胞を4℃で10分間400xgでスピンダウンし、T細胞内のサイトカイン濃度を測定した。このために、次の方法で細胞内サイトカインを染色した:細胞をZombie Aqua固定死細胞染色溶液(Biolegend)で染色し、30分間氷の上でCD4+ and CD8+ T細胞表面マーカに対するCD3、CD4、 and CD8+フルオロフォア(fluorophore)転写因子固定化/透過濃縮及び希釈キット(ThermoFisher)を使用して製造者指針に従って細胞を固定化し透化させた(permeabilized)。細胞を細胞内IL-2(Biolegend)とIFNγ(Biolegend)に対するフルオロフォア-接合抗体で染色した。細胞をフローサイトメトリー器(CytoFLEX、Beckman Coulter)で分析し、データはFlowjo software(BD Biosciences)で分析した。
【0246】
結果を図34a(CD4+ T細胞)および34b(CD8+ T細胞)に示した。FcgRIIIA遮断によってCD4+およびCD8+ T細胞の両方ともでサイトカイン生産を有意に減少させ、これは抗TIGIT抗体がT細胞活性化のためのFcgR相互作用を必要とし、Tregを枯渇させるということを示唆する。抗TIGIT抗体はFcgRの結合(engagement)によってさらに向上したT細胞反応を示す。
【0247】
統計処理
統計的有意性はGraphPad Prism 9 software(GraphPad Software、USA)を使用して、通常の一元ANOVA、対応あり又は対応無しのスチューデントのt検定で評価した。データは、平均±SEMで表示した。図の凡例に記載したように、****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05、ns=有意性無し。
【配列表フリーテキスト】
【0248】
配列番号1: 合成_CDR-H1
配列番号2: 合成_CDR-H2
配列番号3: 合成_CDR-H3
配列番号4: 合成_CDR-L1、但しXはK又はR
配列番号5: 合成_CDR-L2
配列番号6: 合成_CDR-L3
配列番号7: 合成_CDR-L1
配列番号8: 合成_CDR-L1
配列番号9: 合成_重鎖可変領域
配列番号10: 合成_重鎖可変領域
配列番号11: 合成_重鎖可変領域
配列番号12: 合成_重鎖可変領域
配列番号13: 合成_重鎖可変領域
配列番号14: 合成_重鎖可変領域
配列番号15: 合成_軽鎖可変領域
配列番号16: 合成_軽鎖可変領域
配列番号17: 合成_軽鎖可変領域
配列番号18: 合成_軽鎖可変領域
配列番号19: 合成_軽鎖可変領域
配列番号20: 合成_軽鎖可変領域
配列番号21: 合成_重鎖定常領域
配列番号22: 合成_軽鎖定常領域
配列番号23: 合成_7A6重鎖可変領域をコードするDNA
配列番号24: 合成_7A6軽鎖可変領域をコードするDNA
配列番号25: 合成_7A6VH3/Vk5-DLE重鎖
配列番号26: 合成_VH3/Vk5N298A重鎖
配列番号27: 合成_7A6VH3/Vk5AAA重鎖
配列番号28: 合成_7A6VH3/Vk5LALAPG重鎖
配列番号29: 合成_7A6VH3/Vk5変異体の軽鎖
配列番号30: 合成_ヒトTIGIT
配列番号31: 合成_ヒトTIGITのエピトープ領域
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図11
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
図15
図16
図17a
図17b
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28a
図28b
図29
図30
図31a
図31b
図31c
図31d
図32
図33
図34a
図34b
【配列表】
0007550494000001.app