(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ツリーハウスの雨漏り防止構造
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20240906BHJP
E04D 1/22 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E04H1/12 Z
E04D1/22
(21)【出願番号】P 2024090315
(22)【出願日】2024-06-03
【審査請求日】2024-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520385331
【氏名又は名称】株式会社ツリーフル
(74)【代理人】
【識別番号】110004244
【氏名又は名称】弁理士法人仲野・川井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 地寅
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第6744644(JP,B1)
【文献】独国実用新案第202009015778(DE,U1)
【文献】FLEX SEAL a treehouse roof - YouTube,2019年04月19日,https://www.youtube.com/watch?v=lbThy_Xnikg
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E04D 1/22
E04H 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹を柱にして建築するツリーハウスの雨漏り防止構造であって、
ツリーハウスの屋根の上部に、幹の外樹皮を一定幅で1周に渡って除去した外樹皮除去部を形成し、該外樹皮除去部の幅に対応したラバーテープを巻き付け、傘型のラバーの上端と該ラバーテープとをシリコン樹脂を全周に渡って配置して接着し、傘型のラバーの下端を前記屋根の上部と接着したことを特徴とするツリーハウスの雨漏り防止構造。
【請求項2】
前記外樹皮除去部は、樹木のコルク形成層を露出させており、該露出したコルク形成層にラバーテープを巻き付けることを特徴とする請求項1記載のツリーハウスの雨漏り防止構造。
【請求項3】
前記ラバーテープが、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のツリーハウスの雨漏り防止構造。
【請求項4】
前記傘型のラバーの上端の上部に、吸水性、排水性の高い不織布を巻き付けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のツリーハウスの雨漏り防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツリーハウスにおける樹木の幹と、設置する屋根との間の雨漏り防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ツリーハウスは、生存している樹木を土台として建築されている。従来このツリーハウスは、東南アジアや南米の熱帯雨林地域において、原住民の住居として利用されてきた。これらの人々がツリーハウスに居住するのは、住居を建築する土地の問題や猛獣や敵対勢力から身を守るためであると考えられている。
一方、近年、趣味、娯楽、レクリエーションや観光を目的としてこのツリーハウスを建築することが注目されている。すなわち、ツリーハウスが観光資源の1種として広く認識されるようになってきている。ツリーハウスに滞在することで、自然環境と一体化した生活をエンジョイすることが好まれている。
【0003】
ところで、枝の少ない針葉樹を用いてツリーハウスを建築する場合、針葉樹は幹が垂直に直立しているため、幹を柱として都合良く建築することができる。しかしながら、設計の必要上、屋根を樹木(幹)に貫通させるため、屋根と幹の間(隙間)から雨水が侵入する雨漏りが不可避的に発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
特許文献1には、
図4に示すように、屋根と幹の隙間から雨水が侵入する雨漏りを防止するため、防水シートと不織布(吸水性と排水性を備えている)の二層からなる二層防水シート(
図5参照)を幹に巻き付けて設置することで、雨漏りを防止する雨漏り防止構造が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、樹木の表面(外周)は、外樹皮と呼ばれる組織で覆われており、この外樹皮は凹凸があり、水を通す繊維でできているので、雨水を通してしまう。
上記特許文献1記載の発明では、二層防水シートの不織布側とこの外樹皮を接触させて雨水を吸収することで、ツリーハウス内に雨水が浸入することを防止している。
ところで、樹木は、
図2、
図3に示すように、外周側が外樹皮510、コルク形成層530、内樹皮(師部)540、形成層550で形成されている。
ここで、形成層550は、樹木の生育に不可欠な組織であり、ここを傷つけると樹木の生育(生存)に深刻なダメージを与えてしまうこととなる。
一方、外樹皮510は樹木全体を保護する役割はあるもののこの部分だけを除去しても樹木の生育(生存)への影響は乏しい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ツリーハウスにおいて、樹木の生育に比較的影響の乏しい外樹皮に細工をすることで、樹木の成長を保持しながら雨漏りを防止する雨漏り防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明では、幹を柱にして建築するツリーハウスの雨漏り防止構造であって、ツリーハウスの屋根の上部に、幹の外樹皮を一定幅で1周に渡って除去した外樹皮除去部を形成し、該外樹皮除去部の幅に対応したラバーテープを巻き付け、傘型のラバーの上端と該ラバーテープとをシリコン樹脂を全周に渡って配置して接着し、傘型のラバーの下端を前記屋根の上部と接着したことを特徴とするツリーハウスの雨漏り防止構造を提供する。
請求項2記載の発明では、前記外樹皮除去部は、樹木のコルク形成層を露出させており、該露出したコルク形成層にラバーテープを巻き付けることを特徴とする請求項1記載のツリーハウスの雨漏り防止構造を提供する。
請求項3記載の発明では、前記ラバーテープが、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のツリーハウスの雨漏り防止構造を提供する。
請求項4記載の発明では、前記傘型のラバーの上端の上部に、吸水性、排水性の高い不織布を巻き付けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のツリーハウスの雨漏り防止構造を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹木の幹を柱としたツリーハウスにおいて、通常市販されている材料のみを用いて、効率的に雨漏りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態にかかる雨漏り防止構造の構成を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施形態で用いる樹木内部の構造を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態で用いる樹木内部の構造を説明するための断面図である。
【
図4】二層防水シートを用いた雨漏り防止構造の構成を説明するための図である。
【
図5】雨漏り防止構造で用いる二層防水シートを説明するための図である。
【
図6】本発明の他の実施形態にかかる雨漏り防止構造において、吸水性、排水性の高い不織布を巻き付ける位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(i)実施形態の概要
以下、本発明の好適な実施形態を
図1から
図5を参照して、詳細に説明する。
図1は、本実施形態にかかる雨漏り防止構造の構成を説明するための図である。
この図に示すように、このツリーハウス10の雨漏り防止構造は、樹木(例えば針葉樹)の幹500にツリーハウス10の屋根100が貫通して設置されている。針葉樹は直立性が高く、ツリーハウス10の柱として用いると見栄えがよく、頑強で安全性の高いツリーハウスを建築できるとされている。
この樹木500と屋根100との間は、樹木500の表面(外樹皮)に凹凸があるため、不可避的に隙間200が生じる。そこで、本実施形態では、屋根100の上部に位置する樹木500の一部を外樹皮510のみ例えば5cm程度1周に渡って削除し、外樹皮除去部520を形成する。
【0012】
ここに、例えば幅4cmのラバーテープ600を1周に渡って巻き付ける。その上に傘型のラバー700を巻き付けて他端を屋根100と接着させる。ラバーテープ600と傘型のラバー700の上部には、シリコン樹脂800を約2cmから3cmの幅で配置(塗布)する。この配置されたシリコン樹脂800により、ラバーテープ600と傘型のラバー700を強固に接着し、且つ上部からの雨水の浸入を防止できる。
そして、傘型のラバー700が、完全に隙間200を覆うため、ツリーハウス10の内部に雨水が浸入せず、雨漏り防止が実現できる。
【0013】
(ii)実施形態の詳細
まず、樹木内部の外側(外周)の組成について、
図2、
図3を参照して説明する。
図2、
図3に示すように、樹木の外側(以下、「樹皮」とする)は、外樹皮510、コルク形成層530、内樹皮(師部)540および形成層550から形成されている(なお、樹木の種類により若干の相違がある)。また、形成層550の内側には、木部570、芯材560が形成されている。
【0014】
ここで、樹木が成長し、幹が太くなるのは、形成層550が自身の円周を広げながら内側に木部570の細胞、外側に内樹皮(師部)540の細胞をつくりだすことによる。ここで、幹が徐々に太くなると、太くなった幹を守るためにコルク形成層530という新たな分裂組織ができ、この組織が厚い細胞壁をもったコルク組織を形成して水分の通過を妨げ、幹500を守る働きをする。
【0015】
よって、樹木の成長(生存)には形成層550が最も重要な働きをし、コルク形成層530は、樹木を保護する働きをしている。
一方、外樹皮510は、樹木を保護する働きをしているものの、樹木の生存に必須の部位ではなく、部分的な削除であれば樹木の生存にとって受容可能である。本実施形態はこのような知見を前提としている。
【0016】
次に、本実施形態にかかる雨漏り防止構造の作成手順を説明する。
まず、ツリーハウス10の屋根100を幹500に貫通させて設ける例で説明する。
幹500には、最外周に外樹皮510があり、この外樹皮510は凹凸があるため、屋根100と幹500の間には不可避的に隙間200が生じる。また、幹500の成長を考慮すると予め若干の隙間200を設けておくことは望ましいことでもある。
一方で、この隙間200は、ツリーハウス10にとって、防水上(雨漏り防止)の弱点でもある。
【0017】
そこで、屋根100が設置された箇所の上部の幹500の外樹皮510を一定幅で1周に渡って除去する。幅は例えば5cmであるが、種々の条件(幹500の太さ、樹木の高さなど)を考慮して適宜設定するようにしてもよい。
除去する深さは、外樹皮510の厚さに対応している。すなわち、コルク形成層530を露出させることが望ましい。このコルク形成層530を傷つけないように極力注意深く作業することが必要である。
この作業に用いる道具は、盆栽や植木用で使用する挿木用の刀である(三木章刃物、小刀、ブラックカービングナイフ、最大長180mm、刃渡り50mm、安来鋼)。
【0018】
外樹皮510を除去すると、コルク形成層530が1周に渡り露出する。これが、外樹皮除去部520である。このコルク形成層530は、樹木の部位の中では柔軟性が優れており、他の部材との接着に都合がよい。
そして、この外樹皮除去部520の露出したコルク形成層530にラバーテープ600を巻き付けて接着する。このラバーテープ600には、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)のテープを用いる。EPDMは、巻き付けた後に、風による樹木の揺れや、樹木の成長にフレキシブルに対応できる素材である。また、耐候性、耐オゾン性、防水性にも優れている。
【0019】
EPDM以外では、天然コルクシートとコルク粉末を用いるようにしてもよい。
このラバーテープ600の幅は、外樹皮除去部520の幅に対応して決定する。例えば、外樹皮除去部520の幅が5cmの場合、5cm以下とする。例えば、4cmである。4cmとすると、
図1に示すように、外樹皮除去部520の下部aが、1cmが露出状態のままとなる。この幅は作業上の利便性のために使用することができる。この露出状態の箇所は外樹皮除去部520の上部に設けるようにしてもよい。また、外樹皮除去部520とラバーテープ600の幅を同一として、露出状態の箇所を設けないようにすることもできる。
このラバーテープ600の厚さは例えば、1mmのものを用いる。1mmのテープが汎用されており、最もフレキシブルだからである。
【0020】
続いて、傘型のラバー700を取り付ける。この傘型のラバー700上端は、外樹皮除去部520に巻き付けられたラバーテープ600に接触して取り付ける。ラバーテープ600は、外樹皮除去部520の深さに対応して、2周、3周と巻き付けるようにしてもよい。
このラバーテープ600により、表面の平滑性を得ることができ、他の部材との接合を行い易くすることができる。
一方、下端は屋根100に取り付ける。取り付け方法は、接着でもよいが、釘などで固定してもよい。上端も下端も雨水が浸入しないように、隙間なく固定する。また、風により飛ばされないように強固に固定する。
【0021】
図1に示すように、傘型のラバー700の上端には、傘型のラバー700を取り付けるためにシリコン樹脂800を1周に渡って塗布する。シリコン樹脂800は、シリコンを原料として人工的に作られた有機化合物であり、耐水性、耐熱性、電気絶縁性、表面張力に優れている。
このように、シリコン樹脂800を塗布することで、ラバーテープ600と傘型のラバー700との接着をより強固にし、耐水性があるためより確実に雨水の浸入を防止することができる。
【0022】
このシリコン樹脂800は、外樹皮除去部520の幅が5cm、ラバーテープ600の幅が4cmの場合、2~3cmの幅で塗布するのが好ましい。ラバーテープ600と傘型のラバー700上端を完全に覆い、両者を強固に接着し、雨水の侵入を完全に遮断する。
シリコン樹脂800の上端は、
図1に示すように外樹皮除去部520を若干残してもよいし、丁度同じ位置にしてもよい。また、若干外樹皮除去部520を越えて、外樹脂510と接触するようにしてもよい。
このように、シリコン樹脂800を配置することで、傘型のラバー700が形成する区間が完全に密閉され、雨水の浸入を遮断することができる。また、密閉されているため、雨水だけでなく、虫や蚊の侵入も防止できる。
【0023】
次に、他の実施形態を説明する。
図5は、特許文献1記載の発明で用いた二層防水シートを示した図である。この二層防水シート50は、防水シート60と吸水性と排水性の高い不織布70とを貼り合わせて形成されている。この不織布70は、不織布70の上端部より雨水が吸水され、下端部より排水される。
この二層防水シート50を
図5に示すように円錐状に形成し、傘型のラバー700の上部に設置する。すなわち、二層防水シート50を上部に付加することで、更に防水性を高めることができる。
また、吸水性、排水性の高い不織布を
図6のXで示す箇所に巻き付けて設置してもよい。傘型のラバー700まで流れる雨水を減少させることができ、より確実に防水(雨漏り防止)を達成できる。
なお、二層防水シート50を幹500に巻き付けて固定する際、上記実施形態と同様に、外樹皮除去部520を形成し、そこにラバーテープ600を巻き付け、該箇所に二層防水シート50を接着して固定するようにしてもよい。
【0024】
上記実施形態において、傘型のラバー700に換えて、防水性のある布を用いることができる。
また、ラバーテープ600に換えて、伸縮性があるシリコン樹脂で代用することもできる。
【0025】
また、他の実施形態として、上記傘型のラバー700に換えて、二層防水シート50を使用するようにしてもよい。
【0026】
なお、本発明の実施形態および各変形例は、必要に応じて各々を組み合わせる構成にしてもよい。
【0027】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができる。そして、本発明が当該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0028】
10 ツリーハウス
50 二層防水シート
60 防水シート
70 不織布
100 屋根
200 隙間
500 幹(樹木)
510 外樹皮
520 外樹皮除去部
530 コルク形成層
540 内樹皮(師部)
550 形成層
560 芯材
570 木部
600 ラバーテープ
700 傘型のラバー
800 シリコン樹脂
【要約】
【課題】ツリーハウスにおいて、樹木の生育に比較的影響の乏しい外樹皮に細工をすることで、樹木の成長を保持しながら雨漏りを防止する雨漏り防止構造を提供すること。
【解決手段】屋根100の上部に位置する樹木500の一部を外樹皮510のみ1周に渡って削除し外樹皮除去部520を形成する。ここにラバーテープ600を1周に渡って巻き付ける。その上に傘型のラバー700を巻き付けて他端を屋根100と接着させる。ラバーテープ600と傘型のラバー700の上部には、シリコン樹脂800を2cmの幅で配置する。このシリコン樹脂800により、ラバーテープ600と傘型のラバー700を強固に接着し、上部からの雨水の浸入を防止できる。傘型のラバー700が、完全に隙間200を覆い、ツリーハウス10の内部に雨水が浸入せず、雨漏り防止が実現できる。
【選択図】
図1