IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイザックの特許一覧

<>
  • 特許-移乗移動機 図1
  • 特許-移乗移動機 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】移乗移動機
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20240906BHJP
【FI】
A61G5/04 701
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024090981
(22)【出願日】2024-06-04
【審査請求日】2024-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314000729
【氏名又は名称】株式会社アイザック
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】南 嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】三好 眞夫
(72)【発明者】
【氏名】野口 翔矢
(72)【発明者】
【氏名】村石 正三
(72)【発明者】
【氏名】薬袋 昌三
(72)【発明者】
【氏名】岡部 勝男
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/140560(WO,A1)
【文献】特開2015-037437(JP,A)
【文献】米国特許第05842532(US,A)
【文献】米国特許第05435404(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108992261(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00-5/14
B62D 61/02-61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移乗移動機であって、
利用者が前方を向いて着座するシートと、
前記シートに着座した利用者が足を載せる左右のステップ板と、
前記移乗移動機を任意の方向に移動させるための2つの電動キャスタと、
前記移乗移動機の走行を補助する左右の補助キャスタを備え、
前記2つの電動キャスタは、前記移乗移動機の左右方向における中央の前側及び後側にそれぞれ配置され、
前記左右の補助キャスタは、それぞれ、前記電動キャスタの駆動輪よりも径が小さい補助輪を有し、前記左右のステップ板の下面に設けられることを特徴とする移乗移動機。
【請求項2】
各電動キャスタの間の中間の位置は、前記移乗移動機と前記利用者を含む重量の重心位置にほぼ一致することを特徴とする請求項1に記載の移乗移動機。
【請求項3】
前記補助キャスタは、走行面から受ける力に応じて弾性的に変位し得るように設けられることを特徴とする請求項1に記載の移乗移動機。
【請求項4】
前記シートは、後方からの移乗が可能な形態を有することを特徴とする請求項1に記載の移乗移動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移乗移動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に駆動力を付与する電動の駆動輪と、車体の姿勢を維持する補助輪とを備える電動車椅子が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の電動車椅子では、電動の駆動輪が車椅子の左右に配置され、補助輪が駆動輪の前後に配置される。
【0003】
駆動輪と補助輪は、ほぼ同一円周上に配置される。この円周の中心は、電動車椅子の中央部にほぼ一致する。したがって、左右の駆動輪を相互に逆方向に回転させることによって、電動車椅子の中央部を回転中心として回転させることにより、方向転換を容易に行うことができる。
【0004】
また、2つの駆動輪は、電動車椅子の前後方向における中央部に位置するので、駆動輪の前後に位置する補助輪により、車椅子を安定した状態で前進、後退、方向転換、及び停止させることができる。また、補助輪は、駆動輪とほぼ同一円周上に位置するので、補助輪が方向転換の邪魔になることもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-95855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の電動車椅子によれば、2つの駆動輪が、電動車椅子の前後方向における中央部の左右に位置する。かかる電動車椅子を、後方からも移乗が可能となるように、使用者が座るシートを移乗移動機のものに変更する場合、シートに着座した使用者が足を載せるステップ板を、両駆動輪の内側に配置するか、又は両駆動輪の上方に配置する必要がある。
【0007】
しかしながら、ステップ板を両駆動輪の内側に配置する場合には、ステップ板と駆動輪の駆動機構との干渉を回避するために、駆動機構として特殊な又は複雑なものを採用する必要が生じたり、駆動輪の間隔が左右方向に広がって回転半径が増大したりする恐れがある。
【0008】
一方、ステップ板を駆動輪の上方に配置すると、走行面からのステップ板の位置が高くなる。この場合、シートの形態を、移乗移動機のものに変更しても、移乗がさほど容易にはならない。また、駆動輪の径を小さくしてステップ板の位置を低く設定することも考えられるが、そうすると、走行性能の点で問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、ステップ板の位置が低く、回転半径が小さい移乗移動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の移乗移動機は、利用者が前方を向いて着座するシートと、該シートに着座した利用者が足を載せる左右のステップ板と、該移乗移動機を任意の方向に移動させるための2つの電動キャスタと、該移乗移動機の走行を補助する左右の補助キャスタとを備える。
【0011】
前記2つの電動キャスタは、前記移乗移動機の左右方向における中央の前側及び後側にそれぞれ配置され、前記左右の補助キャスタは、それぞれ、該電動キャスタの駆動輪よりも径が小さい補助輪を有し、前記左右のステップ板の下面に設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2つの電動キャスタが、移乗移動機の左右方向中央の前側及び後側にそれぞれ配置され、電動キャスタの駆動輪よりも径が小さい補助輪を有する補助キャスタが左右のステップ板の下面に設けられるので、移乗移動機の回転半径の最小化を図りつつ、ステップ板を低い位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る移乗移動機を示す斜視図である。
図2図1の移乗移動機を別の方向から見た様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る移乗移動機を、それぞれ前側及び後側から見た様子を示す。図1図2に示すように、この移乗移動機1は、シャーシとして機能するベースプレート2と、ベースプレート2に立設されるピラー3と、ピラー3の前側及び左右を覆う樹脂カバー4とを備える。
【0015】
ベースプレート2は、前後方向に延びて断面が上方に凸状の形状を有する凸部5、及び凸部5の左右下端縁からそれぞれ左右に延在する左右のステップ板6を備える。ピラー3は、下端部がベースプレート2の凸部5の前側に固定される。ピラー3には、利用者が前方を向いて着座するシート7が固定される。ステップ板6の上側の面は、シート7に着座した利用者が足を載せる左右両側のステップ面8を構成する。
【0016】
左右のステップ板6及びステップ面8は、移乗移動機1の左右方向に垂直な対称面について対称である。ベースプレート2の凸部5の内側の前端部及び後端部には、それぞれ移乗移動機1を駆動する2つの電動キャスタ9が設けられる。2つの電動キャスタ9の駆動輪10は、ほぼ上記の対称面上に位置する。
【0017】
左側のステップ板6の左側縁部における裏面の前後に離れた位置には、補助キャスタ11が1つずつ設けられる。右側のステップ板6の裏面の右側縁部における前後に離れた位置には、補助キャスタ11が1つずつ設けられる。これら4つの補助キャスタ11は、移乗移動機1の駆動に際して移乗移動機1の姿勢を維持しつつ走行を補助する機能を有する。
【0018】
ピラー3の上端部には、移乗移動機1の各電動キャスタ9に利用者が指示を与えるための操作部12及び利用者が腕を預けるためのアームレストARが設けられる。操作部12は、移乗移動機1の進行開始や進行方向などを指示するためのジョイスティック13、及びその他の指示を与えるための操作パネル14を含む。操作部12で生成される操作信号は、ピラー3を覆う樹脂カバー4の内側に設けられる信号線を介して、各電動キャスタ9に伝達される。
【0019】
4つの補助キャスタ11と2つの電動キャスタ9は、走行面に対する接地点がほぼ同一平面上に位置するように、移乗移動機1に取り付けられる。ただし、補助キャスタ11の取付けは、上下方向に付与される力に応じて、上下方向に変位し得るように行われる。すなわち、補助キャスタ11は、走行面から付与される力に応じて上下方向に弾性的に変位する機能を有する。
【0020】
具体的には、補助キャスタ11は、ゴムやばね等の弾性体を介してステップ板6の裏面に取り付けられる。これにより、補助キャスタ11が走行面の凹凸に応じて上下動し、電動キャスタ9の適切かつ確実な接地が図られる。
【0021】
各補助キャスタ11は、電動キャスタ9の駆動輪10よりも径が小さい補助輪15を有する。補助輪15が接地する接地面からステップ板6までの高さは、補助輪15の径が小さいことに応じて、低く設定される。
【0022】
電動キャスタ9は、与えられる指示に応じて、駆動輪10を車軸の周り、及び鉛直方向に延びた旋回軸の周りに回転する機能を有する(特開2020-24033号公報参照)。このような電動キャスタ9としては、例えば、日本精工社のアクティブキャスタ(商品名)を用いることができる。
【0023】
シート7は、前後方向にやや伸びて後方からの移乗が容易となる形状を有する。すなわち、シート7は、その周縁部に移乗を妨げるような凹凸部がないシート面を有する。ベースプレート2の凸部5の後方側の上面、すなわちシート7の下方には、各電動キャスタ9のモータに電力を供給するバッテリ21が設けられる。
【0024】
この構成において、ジョイスティック13が操作されると、操作に応じて、バッテリ21から供給される電力に基づき、各電動キャスタ9の制御部によって制御された駆動電流が各電動キャスタ9のモータに供給され、各電動キャスタ9が駆動する。
【0025】
このとき、ジョイスティック13の操作位置に応じて各電動キャスタ9が適切に動作することにより、移乗移動機1は、任意の方向に併進移動、又は回転移動する。なお、回転移動には、回転軸が移乗移動機1の外側に位置する場合の回転移動である旋回移動も含まれる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、2つの電動キャスタ9を移乗移動機1の左右方向における中央の前側及び後側にそれぞれ配置し、補助輪15の径が小さい補助キャスタ11を左右両側のステップ板6の下面に設けたので、移乗移動機1の回転半径の最小化を図りつつ、ステップ板6をより低い位置に配置することができる。
【0027】
また、各電動キャスタ9の旋回軸間の中間の位置は、移乗移動機1と利用者を含む重量の重心位置にほぼ一致するので、移乗移動機1の回転移動や併進移動を安定したスムーズな動作で行うことができる。
【0028】
また、補助キャスタ11は、走行面から受ける力に応じて上下方向に弾性的に変位し得るように設けられるので、電動キャスタ9が走行面に付与する摩擦力を適切に維持し、電動キャスタ9による移乗移動機1の駆動を支障なく実施することができる。
【0029】
また、利用者が着座するシート7は、後方からの移乗が可能な形態を有するので、上記のステップ板6の低位置への配置と相俟って、利用者は、ベッドなどからの後方からの移乗を容易に行うことができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、補助キャスタ11の数は4つに限らず、2つや5つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…移乗移動機、2…ベースプレート、3…ピラー、4…樹脂カバー、5…凸部、6…ステップ板、7…シート、8…ステップ面、9…電動キャスタ、10…駆動輪、11…補助キャスタ、12…操作部、13…ジョイスティック、14…操作パネル、15…補助輪、21…バッテリ、AR…アームレスト。
【要約】
【課題】ステップ板の位置が低く、回転半径が小さい移乗移動機を提供する。
【解決手段】移乗移動機1は、利用者が前方を向いて着座するシート7と、シート7に着座した利用者が足を載せる左右のステップ板6と、移乗移動機1を任意の方向に移動させるための2つの電動キャスタ9と、移乗移動機1の走行を補助する左右の補助キャスタ11とを備える。2つの電動キャスタ9は、移乗移動機1の左右方向における中央の前側及び後側にそれぞれ配置され、左右の補助キャスタ11は、それぞれ、電動キャスタ9の駆動輪10よりも径が小さい補助輪15を有し、左右のステップ板6の下面に設けられる。
【選択図】図1
図1
図2