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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/00 20060101AFI20240906BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F24F3/00 Z
F24F5/00 K
F24F5/00 L
F24F5/00 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018239981
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020101325
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】592147790
【氏名又は名称】株式会社インターセントラル
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左 勝旭
(72)【発明者】
【氏名】村下 和紀
(72)【発明者】
【氏名】袴田 洸平
(72)【発明者】
【氏名】大角 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】山北 聡
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】水野 治彦
【審判官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-267613(JP,A)
【文献】特開2001-193206(JP,A)
【文献】特開平5-157280(JP,A)
【文献】特開2003-120958(JP,A)
【文献】特開2009-97740(JP,A)
【文献】特開2006-280311(JP,A)
【文献】特開2014-1885(JP,A)
【文献】特開2005-325576(JP,A)
【文献】特開2017-129289(JP,A)
【文献】特開平10-103693(JP,A)
【文献】特開平9-229388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が床側、下面が天井側となるコンクリートスラブと、
前記コンクリートスラブの上面に載置されて接着剤で固定され、熱媒体が流通し内部に蓄熱材を収納しない配管が埋設され、前記コンクリートスラブを冷却又は加温すると共に前記コンクリートスラブに蓄熱する載置場所が変更可能なマットエレメントと、
を有する空調システム。
【請求項2】
前記コンクリートスラブの上面側には二重床が形成され、
室内から吸い込まれた空気が冷却又は加温されて床下空間に供給され、更に前記床下空間で前記マットエレメントによって冷調又は温調されて、前記床下空間から空調された空気が室内へ吹き出される、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記マットエレメントで冷却又は加温された前記コンクリートスラブによって前記室内を前記天井側から放射空調される放射空調領域のゾーニングと、
冷却又は加温された空気を前記床下空間から吹き出して前記室内を前記床側から吹出空調する吹出空調領域のゾーニングと、
が共通のゾーニングとされている、
請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記マットエレメントは、
前記コンクリートスラブの上面に載置され下面を構成する平坦な下板と、
前記下板の上に固定され、前記配管が収容された複数の収容溝が設けられた仕切部と、
前記仕切部の上部に固定された平坦な上板と、
を備えている、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記下板、前記仕切部及び前記上板は、炭素シートで構成されている、
請求項4に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内を空調する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物のフロアにペルチェ素子を使用したヒートポンプを埋設する空調システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-304372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような空調システムにあっては、ヒートポンプをスラブに埋設する構造のため、将来的なレイアウト変更やヒートポンプの交換作業が困難となる。
【0005】
本発明は、レイアウト変更や交換作業が容易な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様は、上面が床側、下面が天井側となるコンクリートスラブと、前記コンクリートスラブの上面に載置され熱媒体が流通する配管が埋設されたマットエレメントと、を有する空調システムである。
【0007】
すなわち、コンクリートスラブの上面にマットエレメントを載置することで、マットエレメントに埋設された配管を流通する熱媒体でコンクリートスラブが冷却又は加温される。これにより、コンクリートスラブを天井とする下部階の部屋が放射冷房又は放射暖房される。
【0008】
また、熱媒体が流通する配管をコンクリートスラブに埋設する構成と比較すると、施工が容易である。さらに、空調対象領域を変更する際には、マットエレメントを載置する場所を変えるだけでよい。
【0009】
第二態様は、前記コンクリートスラブの上面側には二重床が形成され、床下空間から空調された空気が室内へ吹き出される第一態様に記載の空調システムである。
【0010】
これにより、天井からの放射熱と床からの空調空気で室内を効率よく冷暖房することができる。
【0011】
第三態様は、前記マットエレメントで天井面から放射空調される放射空調のゾーニングと、前記二重床からの空気で空調される吹出空調のゾーニングとが共通のゾーニングとされている第二態様に記載の空調システムである。
【0012】
これにより、マットエレメントによる放射空調を二重床からの空気による空調で補うことができる。
【0013】
また、二重床からの空気による空調を併用することで、温度変化に対する応答性を高めると同時に、室温の立上り時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本態様によれば、レイアウト変更や交換作業が容易な空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る空調システムを備えた建物を示す模式断面図である。
図2】本実施形態に係る空調システムを示す要部の断面図である。
図3】マットエレメントを示す拡大断面図である。
図4】本実施形態の空調システムのゾーニングを示す平面図である。
図5】本実施形態のマットエレメントが接続されて状態を示す説明図である。
図6】本実施形態の空調システムの制御回路図である。
図7】本実施形態の空調システムで空調する居室空間を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る空調システム10を図面に従って説明する。
【0017】
図1は、空調システム10を備えた建物12を示す図であり、空調システム10は、天井面の表面温度を利用する放射空調14と、温調された空気を利用する吹出空調16とを備えている。
【0018】
この建物12の上部階と下部階とは、鉄筋コンクリート製のコンクリートスラブ18で区画されている。コンクリートスラブ18は、上面18Aが上部階の床側を構成するとともに、下面18Bが下部階の天井側を構成する。コンクリートスラブ18の下面18Bには、天井パネルが設けられておらず、コンクリートスラブ18の下面18Bが下部階の天井面を構成する。
【0019】
(放射空調)
コンクリートスラブ18の上面18Aには、図2にも示すように、長方形状のマットエレメント20が載置されており(形状は図5参照)、マットエレメント20は、図3に示すように、下面が接着剤22でコンクリートスラブ18に固定されている。このマットエレメント20には、熱媒体24が流通する配管26が埋設されており、配管26は、一例としてポリプロピレン(PP)で形成されている。
【0020】
マットエレメント20は、図3に示すように、下面を構成する平坦な下板30と、下板30上に固定された仕切部32と、仕切部32の上部に固定された平坦な上板34とを備えている。下板30、仕切部32、及び上板34は、高熱伝導シートで構成されており、高熱伝導シートは、一例として炭素シートで構成することができる。
【0021】
仕切部32には、配管26が収容された複数の収容溝36が長さ方向に延設されており、収容溝36の底面36Aは、下板30に固定されている。収容溝36の壁面36Bは、山折りにされた山折り部36Cで構成されており、山折り部36Cによって隣接した収容溝36が区画されている。山折り部36Cの天面36Dは、平坦に形成されており、上板34に固定されている。
【0022】
各収容溝36に収容された各配管26は、幅方向に並列に配置されており、収容溝36の端より延出した各配管26の端部は、図示しない接続管によって互いに接続されている。
【0023】
これにより、マットエレメント20の一端側の接続管の流入部20A(図6参照)より流入した熱媒体24を、各収容溝36に収容された配管26を通して、他端側の接続管の流出部20B(図6参照)より流出することができ、熱媒体24が通過する領域で熱の移動が行われる。
【0024】
図4は、空調されるフロアを示す平面図であり、第一室38から第六室48の天井面を構成するコンクリートスラブ18の部位にマットエレメント20が配置されている。
【0025】
このフロアには、第一室38及び第二室40の天井に設けられたマットエレメント20で第一放射空調領域50が形成されており、第三室42及び第四室44の天井に設けられたマットエレメント20で第二放射空調領域52が形成されている。第五室46及び第六室48の天井に設けられたマットエレメント20で第三放射空調領域54が形成されている。
【0026】
各放射空調領域50~54を形成するマットエレメント20は、例えば図5に示すように、長さ方向に複数配置され、一方のマットエレメント20の流出部20Bと他方側のマットエレメント20の流入部20Aとがホース56で直列接続されている。また、複数のマットエレメント20が直列接続された直列ユニット58は、並列配置されており、一方の直列ユニット58の終端の流出部20Bと他方の直列ユニット58の始端の流入部20Aがホース56で並列接続されている。
【0027】
そして、一方の直列ユニット58の始端の流入部20Aに接続されたホース56から熱媒体24を流入するとともに、他方の直列ユニット58の終端の流出部20Bに接続されたホース56から熱媒体24が流出される。これにより、マットエレメント20による温調領域が長さ方向及び幅方向に広げられている。
【0028】
図6は、空調システム10の放射空調14を示す制御回路図であり、空調システム10は、図示しない温調装置で温調された熱媒体24が電磁弁60を介して供給される熱交換器62を備えている。
【0029】
熱交換器62で熱交換された熱媒体24は、三方弁63、バルブ64、継手66、バルブ68を備えた往路70を介して、各放射空調領域50~54の始端のマットエレメント20の流入部20Aへ流入される。
【0030】
また、各放射空調領域50~54の終端のマットエレメント20の流出部20Bから流出された熱媒体24は、バルブ72、継手74、バルブ76、ポンプ78を備えた復路80を介して、熱交換器62へ戻される。ポンプ78からの熱媒体24の一部は、三方弁63の入力ポートに供給されている。
【0031】
往路70において熱交換器62と三方弁63との間の熱媒体24の温度は、第一温度センサ82で検出され、三方弁63とバルブ64との間の熱媒体24の温度は、第二温度センサ84で検出される。マットエレメント20が配置されたコンクリートスラブ18の内部温度は、第三温度センサ86で検出され、マットエレメント20が配置されたコンクリートスラブ18の下面18Bの温度は、第四温度センサ88で検出される。
【0032】
各温度センサ82~88による検出結果は、制御装置90に入力されており、制御装置90は、検出結果に基づいて、電磁弁60の開度を制御し温調された熱媒体24の熱交換器62の通過量を調整する。また、制御装置90は、検出結果に基づいて、三方弁63を制御し復路80より戻された熱媒体24の往路70への戻し量を調整する。さらに、制御装置90は、検出結果に基づいて、ポンプ78を制御し、熱交換器62での熱交量を調整する。
【0033】
これにより、制御装置90は、マットエレメント20に供給される熱媒体24の温度が目標温度となるように制御することで、コンクリートスラブ18の下面18Bの温度を制御する。
【0034】
具体的に説明すると、放射空調14を暖房として利用する場合、制御装置90は、マットエレメント20に供給される熱媒体24の目標温度が一例として22℃以上30℃以下となるように制御する。また、放射空調14を冷房として利用する場合、制御装置90は、マットエレメント20に供給される熱媒体24の目標温度が一例として14℃以上16℃以下となるように制御する。
【0035】
図7は、マットエレメント20が配置されたコンクリートスラブ18の下面18Bを天井面とする下部階の部屋と上部階の部屋とを示す模式図である。
【0036】
コンクリートスラブ18の下面18B側に面する表面92の温度の平均値を室内表面平均温度とした場合、マットエレメント20を用いた放射空調14による能力は、コンクリートスラブ18の下面18Bの温度と、室内表面平均温度との温度差によって定まる。
【0037】
(吹出空調)
コンクリートスラブ18の上面18A側には、二重床100が形成されており、二重床100は、所謂OAフロアを構成する。二重床100には、吹出しグリル102が設けられており、空調された空気が床下空間104から上部階の室内106へ吹き出される。
【0038】
具体的に説明すると、図1に示したように、吹出空調16で空調される部屋には、室内106の空気を吸い込む吸込装置108が設けられている。吸込装置108で吸い込まれた空気は、往路110を介して、屋上に設置されたデシカント外調機112へ送られ、デシカント外調機112によって外気と熱交換されるとともに除湿される。
【0039】
デシカント外調機112から復路114を介して送られた空気は、供給バルブ116及びファンモータ118を介して床下空間104へ供給され、二重床100の吹出しグリル102より室内106へ吹き出される。これにより、床下空間104から吹出される空気によって対象となる部屋を空調する吹出空調16が構成されている。
【0040】
床下空間104に供給される空気の温度は、目標温度となるように制御されている。
【0041】
具体的に説明すると、吹出空調16を暖房として利用する場合、床下空間104に供給される空気の目標温度は、一例として30℃に設定されている。
【0042】
また、吹出空調16を冷房として利用する場合、床下空間104に供給される空気の目標温度は、一例として18℃に設定されている。この目標温度は、マットエレメント20に供給される熱媒体24の目標温度との温度差が大きくならないように設定されており、その温度差は、マットエレメント20の配管26に結露が生じない温度とされている。
【0043】
吹出しグリル102からの空気の吹出し量は、供給バルブ116及びファンモータ118を制御することで可変することができ、供給バルブ116の開度及びファンモータ118の回転数は、図示しない操作パネルへの入力によって制御することができる。
【0044】
この吹出空調16は、図4に示したように、各室38~48に設けられており、第一室38には第一床吹出空調領域120が、第二室40には第二床吹出空調領域122が設定されている。また、第三室42には第三床吹出空調領域124が、第四室44には第四床吹出空調領域126が設定されており、第五室46には第五床吹出空調領域128が、第六室48には第六床吹出空調領域130が設定されている。
【0045】
各室38~48を空調する吹出空調16は、対応する室38~48に設けられた操作パネルによって吹出しグリル102からの空気の吹出し量を個別に制御できるように構成されており、各室38~48毎に温度調整が可能とされている。
【0046】
そして、マットエレメント20で天井面から放射空調される第一放射空調領域50のゾーニングと、二重床100からの空気で吹出空調される第一床吹出空調領域120及び第二床吹出空調領域122のゾーニングとは、共通のゾーニングとされている。
【0047】
また、第二放射空調領域52のゾーニングと、第三床吹出空調領域124及び第四床吹出空調領域126のゾーニングとは、共通のゾーニングとされている。さらに、第三放射空調領域54のゾーニングと、第五床吹出空調領域128及び第六床吹出空調領域130のゾーニングとは、共通のゾーニングとされている。
【0048】
(作用・効果)
以上の構成に係る本実施形態の作用を説明する。
【0049】
コンクリートスラブ18の上面18Aにマットエレメント20を載置することで、マットエレメント20に埋設された配管26を流通する熱媒体24でコンクリートスラブ18が冷却又は加温される。これにより、コンクリートスラブ18を天井面とする下部階の部屋を、夏場には放射冷房するとともに、冬場には放射暖房することができる。
【0050】
そして、マットエレメント20からの熱をコンクリートスラブ18に蓄熱することができる。このため、コンクリートスラブ18をベースロードとして利用することができる。
【0051】
また、熱媒体24が流通する配管26をコンクリートスラブ18に埋設する構成と比較すると、施工が容易である。さらに、空調対象領域を変更する際には、マットエレメント20を載置する場所を変えるだけでよい。
【0052】
したがって、各室38~48のレイアウト変更や、マットエレメント20の交換作業が容易な空調システム10となり得る。
【0053】
また、コンクリートスラブ18の上面18A側には、二重床100が形成され、床下空間104から空調された空気が室内106へ吹き出される。
【0054】
これにより、天井からの放射熱と床からの空調空気とで室内106を効率よく冷暖房することができる。
【0055】
そして、この二重床100は、コンクリートスラブ18に載置されたマットエレメント20の上に設けられている。このため、マットエレメント20からの熱で温調又は冷調された空気を吹出すことができ、マットエレメント20からの熱を有効利用することができる。
【0056】
また、マットエレメント20で天井面から放射空調される第一放射空調領域50のゾーニングと、二重床100からの空気で吹出空調される第一床吹出空調領域120及び第二床吹出空調領域122のゾーニングとは、共通のゾーニングとされている。
【0057】
さらに、各放射空調領域52、54のゾーニングと、各床吹出空調領域124~130のゾーニングとが共通のゾーニングとされている。
【0058】
これにより、マットエレメント20による放射空調14を、二重床100からの空気による吹出空調16によって補うことができる。
【0059】
また、二重床100からの空気による吹出空調16を併用することで、温度変化に対する応答性を高めると同時に、室温の立上り時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 空調システム
14 放射空調
16 吹出空調
18 コンクリートスラブ
18A 上面
18B 下面
20 マットエレメント
24 熱媒体
26 配管
50 第一放射空調領域
52 第二放射空調領域
54 第三放射空調領域
100 二重床
102 グリル
104 床下空間
106 室内
120 第一床吹出空調領域
122 第二床吹出空調領域
124 第三床吹出空調領域
126 第四床吹出空調領域
128 第五床吹出空調領域
130 第六床吹出空調領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7