(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 15/12 20060101AFI20240906BHJP
H02K 15/085 20060101ALI20240906BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240906BHJP
H02K 3/24 20060101ALI20240906BHJP
H02K 1/32 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H02K15/12 D
H02K15/085
H02K3/34 C
H02K3/24 C
H02K1/32 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019206136
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】10 2018 219 818.7
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルマイダ イー シルバ ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ブランケンバッハ ベルント
(72)【発明者】
【氏名】コックス テリー
(72)【発明者】
【氏名】グラープヘア フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クル ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】メイル ティム
(72)【発明者】
【氏名】ピーセク ピーター
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ マーティン
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-271738(JP,A)
【文献】特開平04-251547(JP,A)
【文献】特開2013-208044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械用のステータ(2)を製造するための方法であって、
a)ステータ巻線(6)を収容するために、ステータ本体(7)の周方向(U)に沿って互いに間隔をあけて配置される複数のステータティース(8a,8b)が突出するリング状のステータ本体(7)を有するステータ(2)を準備し、それぞれ周方向(U)に隣接する2つのステータティース(8)の間に空間(9)が形成され、
b)周方向(U)に隣接する少なくとも2つのステータティース(8)の表面部分(50a,50b)に熱伝導性のプラスチックを第1の射出成形の過程で射出して絶縁層(51)を形成し、
c)空間(9)にステータ巻線(6)とマスキング材(57)を絶縁層(51)の内面から離して配置し、
d)絶縁層(51)とステータ巻線(6)及びマスキング材(57)との間に形成されるエアギャップ(61)と、ステータ巻線(6)とマスキング材(11)との間に形成されるエアギャップ(61)とに、第2の射出成形の過程でプラスチック(11)を射出してギャップ充填材(62)を形成し、このギャップ充填材(62)により、ステータ巻線(6)と、マスキング材(57)の除去後に形成される冷却ダクト(10)とを、両方とも包囲する
方法。
【請求項2】
請求項1において、
少なくとも第1の射出成形に対応し
、さらに第2の射出成形にも対応して、電気絶縁性のプラスチック(11)が用いられる
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
2つのステータティース(8)の間の空間(9)に導入される少なくとも1つのマスキング材(57)が、少なくとも部分的にプラスチックで射出成形され、少なくとも1つのマスキング材(57)で充填される空間(9)の容積内に、この射出成形時に冷却ダクト(10)
を形成できる
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
マスキング材(57)の射出成形が、
第2の射出成形の過程で
2つのステータティース(8)の間の空間(9)にプラスチックを射出することにより行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
少なくとも1つのマスキング材(57)が、空間(9)の径方向内側の端部(56a)また
は径方向外側の端部(56b)の領域に配置され、(第1の)冷却ダクト(10)が、したがって、射出成形に対応して、この径方向内側または外側の端部(56a,56b)にそれぞれ配置される
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1つにおいて、
空間(9)に配置され、空間(9)を径方向内側と径方向外側の部分空間(59a,59b)に分割する少なくとも1つの
相絶縁体(58)が、プラスチック(11)を用いた射出成形の過程で形成され、第1の
相巻線(70a)を構成するステータ巻線(6)の第1の導体要素(60a)を、径方向内側の部分空間(59a)に配置することができ、第1の
相巻線(70a)に対して電気的に絶縁される第2の
相巻線(70b)を構成するステータ巻線(6)の第2の導体要素(60b)を、径方向外側の部分空間(59b)に配置することができる
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6において、
相絶縁体(58)が、ステータティースの
表面への射出成形に応じて、またはステータ巻線(6)の
周囲への射出成形に応じて形成される
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7において、
相絶縁体(58)は、周方向(U)に沿って延び、隣接するステータティース(8a,8b)に配置されるプラスチック(11)の絶縁層(51)を互いに接続する
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1つにおいて、
プラスチック(11)による空間(9)の射出成形または充填が、それぞれ、射出成形または充填後に空間(9)にエアギャップ(61)が存在しなくなるように行われる
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械用のステータを製造する方法に関する。本発明は、さらに、この方法により製造されたステータと、このようなステータを有する電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械用の従来のステータは、一般に、機械の動作中に通電されるステータ巻線を有する。このような電気機械は、一般に電動機または発電機であり得る。電気機械は、外部ロータとして、または内部ロータとして実現できる。機械の動作中には熱が発生し、この熱は、ステータの過熱、損傷、またはそれに伴う破壊を回避するために放出しなければならない。この目的のため、従来のステータには、ステータ、特に前記ステータ巻線を冷却するための冷却システムを装備することが知られている。このような冷却システムは、冷却剤が流れる1つまたは複数の冷却ダクトを有し、冷却ダクトは、ステータ内でステータ巻線の近くに配置される。ステータ巻線から冷却剤への熱伝達により、熱をステータから放出できる。ステータ巻き線の過熱と、それに伴うステータの損傷または破壊を、このようにして阻止できる。
【0003】
上述の冷却ダクトを設けるための製造コストを抑えておくために、ステータ巻線を支持するステータティースを含むステータ本体をプラスチック構成物で形成するステータの積層体を射出成形することと、射出成形の過程でプラスチック構成物に前記冷却ダクトを形成することが知られている。ステータティースに巻かれたステータ巻線は、射出成形の過程でステータに永久に固定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステータ本体とステータティースに配置される巻き線を射出成形するとき、導電性を有するように構成される巻き線は、一般に導電性のシート金属部品を互いに積層することより形成される導電性のステータ本体に支持されない。しかしながら、ステータ巻線とステータ本体の間の電気的接続は、望ましくない電気的短絡を生じさせる。
【0005】
このことは、ステータ巻線が巻き線を絶縁してすでに製造されているという、実際に一般的な場合にも当てはまる。その理由は、電気機械の動作中に、ステータ巻線を流れる電流により引き起こされる高温のために、ステータ巻線が部分的に損傷するか、または損壊さえし得るためである。
【0006】
同様に、プラスチック構成物を用いた射出成形の過程により冷却ダクトを形成した後に、ステータ巻線が冷却ダクト内へ突出しないことを除外できない。上述のステータ巻線の電気絶縁材が損傷または損壊までした場合、ステータ巻線は、ステータティースの導電性材料と直接接触するだけでなく、冷却剤とも直接接触し得るが、このことは避けなければならない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、冷却ダクトを有するステータを製造するための改良された製造方法を提供し、上述した不都合を大部分、または完全に除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立の請求項の主題により解決される。好ましい実施形態は、従属の請求項の主題である。
【0009】
本発明の基本的な考え方は、プラスチックを用いて、ステータ溝の制限部材として導電性のステータティースを射出成形することと、ステータ溝に配置されるステータ巻線を二回射出成形することである。プラスチックでこのように二重に射出成形することにより、例えば金属などの一般に導電性材料からなるステータの一部としてのステータティースと、これも導電性であるステータ巻線との間に、電気的接続部が形成されるのを事実上排除できる。このことは、特に、ステータの製造に応じてステータ巻線の巻き線絶縁部が損傷する場合に当てはまり、ステータ巻線の導電性の導体要素が露出する。
【0010】
本発明に係る方法は、以下のa)からd)の4つの方法ステップを含む。第1のステップa)では、リング形状のステータ本体を有するステータが準備され、ステータ本体の周方向に沿って互いに間隔をあけて配置された複数のステータティースが、ステータ巻線を収容するために、ステータ本体から好ましくは径方向の内側へ突出する。これによって、前記2つのステータティースによって周方向端が定められ、ステータ本体によって径方向外側端が定められる空間であるステータ溝が、それぞれ、周方向に隣接する2つのステータティースの間に形成される。空間は、径方向の内側が開放されるように形成される。この用の空間は、「ステータ溝」という名称で当業者に知られている。第2のステップb)では、プラスチックを用いて、周方向に隣接する少なくとも2つのステータティースの(第1の)射出成形が行われ、ステータティースは後に熱伝達の機能を果たす。第3の方法ステップc)では、少なくとも1つのステータ巻線が2つのステータティースの間の空間に配置される。第4の方法ステップd)では、プラスチックを用いて、空間に配置されたステータ巻線の(第2の)射出成形が行われ、ステップb)で射出成形されたステータティースと、ステップc)に係る空間にステータ巻線が配置された後のそのステータ巻線との間に形成されるエアギャップ及び/またはエアトラップに、プラスチックが充填される。エアギャップ及び/またはエアトラップが存在する場合、好ましくはそのようなエアギャップ及び/またはエアトラップの複数に、特に好ましくは前記空間に存在するエアギャップ及び/またはエアトラップの全てに充填される。したがって、理想的な場合には、第2の射出成形の後の空間に、エアギャップまたはエアトラップはそれぞれ全く残らない。
【0011】
本発明に係る方法の場合、空間の端を定め、一般的に導電性である構成のステータティースの表面部分もステータ巻線も、プラスチックで射出成形されるため、二重の射出成形の後に、空間内にエアギャップまたはエアトラップのそれぞれが残らず、ステータ巻線の巻き線絶縁部が損傷した場合であっても、ステータ巻線とステータティースとの間で電気的な接触が生じないことを保証できる。
【0012】
プラスチックは空気よりも高い熱伝導率を有するため、空間に存在するエアギャップ/
エアトラップにプラスチックを充填することによって、ステータ巻線からの放熱性を高めることも可能になる。
【0013】
したがって、ここに取り入れた方法によって製造されたステータの場合、それぞれの空間に配置されたステータ巻線は、ステータ巻線で生じた廃熱の移送によって、特にその軸方向端部において非常に効果的に冷却され、その冷却は、空間に存在するダクトを冷却するために空間に射出されたプラスチックによって行われる。廃熱は、冷却ダクトを通って案内される冷却剤によって吸収される。
【0014】
上述のプロセスは、複数のステータティースと複数のステータ巻線に適用することが好ましい。特に、上述のプロセスは、ステータ本体の中に存在する全てのステータティースと、ステータティースに配置される全てのステータ巻線に適用することが好ましい。
【0015】
好ましい実施形態の場合、少なくとも第1の射出成形に対応して、好ましくはさらに第2の射出成形にも対応して、電気絶縁性プラスチックが使用される。本発明に必要なプラスチックは、熱伝達に使用できるだけでなく、このように電気絶縁にも使用できる。ステータ巻線と、空間内に形成されてプラスチックにより区画される冷却ダクトとの間の、または冷却ダクトを通って流れる冷却材との間の不要な電気的短絡が、このようにして回避される。ステータ巻線と、一般的に導電性材料からなるステータティースまたはステータ本体のそれぞれとの間の不要な電気的短絡が、同様に回避される。
【0016】
マスキング材の射出成形は、第2の射出成形の過程で効果的に行える。この選択肢は、第2の射出成形に関して冷却ダクトを区画するために使用されたプラスチック材料が変更されない場合に望ましい。そうでなければ、別の方法ステップでマスキング材の射出成形を行うのが望ましい。この場合、ステータ巻線の第2の射出成形用とは異なるプラスチック材料をマスキング材の射出成形のために使用できる。
【0017】
マスキング材は、空間の径方向内側の端部または/及び径方向外側の端部の領域に配置するのが都合がよい。したがって、冷却ダクトは、射出成形に対応して、径方向内側または外側の端部にそれぞれ配置される。
【0018】
さらに別の有利な発展例によれば、空間に配置され、軸方向に直角な断面で(第1の)冷却ダクトを少なくとも部分的に、好ましくは完全に制限または包囲する保護コーティングが、プラスチックでマスキング材を射出成形することによって形成される。前記保護コーティングにより、冷却ダクトを通って案内される冷却剤が、空間に配置されたステータ巻線とも、空間を制限するステータティースとも、電気的な接触が生じ得ないことが保証される。
さらに別の有利な発展例によれば、保護コーティングは、少なくとも1つの冷却ダクトを、軸方向に直角の断面で径方向の内側または/及び径方向の外側で制限できる。空間内で冷却ダクトの径方向外側または径方向内側にそれぞれ配置されるステータ巻線に対する、冷却ダクト、または冷却ダクトを通って案内される冷却剤のそれぞれの電気的な絶縁が、このようにして保証される。
【0019】
さらに別のさらに有利な発展例の場合、保護コーティングは、軸方向に直角な断面において、ステータの周方向に少なくとも1つの冷却ダクトを制限できる。導電性のステータティースに対する冷却ダクトの、または冷却ダクトを通って案内される冷却材のそれぞれの電気的絶縁は、このようにして保証される。他の有利なさらに別の発展例の場合、第1及び第2のマスキング材が空間に導入され、第1及び第2の冷却ダクトが2つのマスキング材の射出成形によって形成される。このさらに別の発展例の場合、第1冷却ダクトが径方向内側の端部に配置され、第2の冷却ダクトが径方向外側の端部に配置される。
【0020】
有利なさらに別の発展例の場合、ステップb)に係るステータティースの射出成形の過程で空間を定める隣り合う2つのステータティースの表面部分にプラスチックが射出される。一般に金属、従って導電性材料で形成されるステータ巻線とステータティースとの間の不要な電気的接触は、このようにして回避できる。
【0021】
さらに有利なさらに別の発展例(このさらに別の発展例では、ステータは、ステータティースが径方向内側へ突出するステータ本体を有する)の場合、ステップb)に係るステータティースの射出成形の過程で空間を制限するステータ本体の表面部分にプラスチックが塗布される。一般に金属、従って導電性材料で形成されるステータ巻線とステータ本体との間の不要な電気的接触は、このようにして回避できる。
【0022】
有利なさらに別の発展例によれば、空間または/及びステータ本体を制限する隣り合う2つのステータティースの表面部分を覆う電気絶縁性の絶縁層は、表面部分に射出されるプラスチックによって形成される。一般に金属、したがって導電性材料で形成されるステータ巻線とステータティースまたはステータ本体それぞれの不要な電気的接触は、このようにして回避される。
【0023】
有利なさらに別の発展例の場合、空間を径方向内側と径方向外側の部分空間に分ける少なくとも1つの相絶縁体が、プラスチックを用いた射出成形の過程で形成される。第1位相の巻き線を形成するステータ巻線の第1の導体要素を、このようにして径方向内側の部分空間に配置できる。そのため、第1位相の巻き線に対して電気的に絶縁される第2位相の巻き線を形成するステータ巻線の第2導体要素は、径方向外側の部分空間に配置できる。したがって、互いに電気的に絶縁されるステータ巻線の導体要素を、2つの部分空間に配置できる。そして、このことにより、位相絶縁によって互いに電気的に絶縁される2つの導体要素に、互いに電気的に分離しなければならない2つの異なる電気の位相を、割り当てることができる。本発明のさらに別の発展例では、このような複数の相絶縁体を空間に設けることも考えられる。プラスチックの相絶縁体を径方向に測定した直径は、1mmと3mmとの間であることが好ましい。
【0024】
相絶縁体は、ステータティースの射出成形に対応して、もしくはステータ巻線の射出成形に対応して、または別の方法ステップで形成される。この選択肢は、特に製造コストを低減することにつながる。
【0025】
相絶縁体は、射出成形の過程で、周方向に延び、互いに隣り合うステータティースに配置されるプラスチックの2つの絶縁層と接続されるように形成するのが好ましい。このように、形成された2つの部分空間は、好ましくは電気絶縁性のプラスチックにより完全に区画される。
【0026】
この方法で製造された電気機械では、後の動作中に電源の2つの異なる位相に接続される場合、ステータ巻線の第1の導体要素をステップc)の径方向内側の部分空間に配置し、電源の共通の第1位相に接続するために第1の導体要素を互いに電気的に接続することが提案される。この接続は、空間またはステータ溝のそれぞれの外側で行える。ステータ巻線の第2導体要素は、同様に、ステップc)で径方向外側の部分空間に配置でき、電源の共通の第2位相に接続するために互いに電気的に接続できる。この電気的接続は、空間またはステータ溝のそれぞれの外で行うこともできる。
【0027】
好ましい実施例の場合、少なくとも1つの第1または/及び第2の導体要素、好ましくは全ての第1または/及び第2の導体要素が、それぞれ、ステップd)に係る第2の射出成形後に、軸方向に直角な断面においてプラスチックで包囲され、取り囲まれる。このようにして、個々のステータ巻線と冷却ダクトを通って流れる冷却剤との間で、不要な電気的短絡が生じないことが保証される。
【0028】
第1または/及び第2導体要素は、導電性材料の巻き線ロッドとして形成すると都合がよい。これらの導体要素は、機械的に硬質であるように形成することが特に好ましい。特に機械的に硬質の材料の巻き線ロッドのような導体要素の実施形態では、電気機械を組み立てるために、ステータティースの空間に導体要素を容易に導入できる。
【0029】
特に好ましい実施形態の場合、少なくとも1つの巻き線ロッドは、空間に配置した後に、軸方向に直角な断面において、2つの狭い側面と2つの広い側面を有する長方形の形状を有する。このことは、空間に配置されるすべての巻き線ロッドに適用されることが好ましい。
【0030】
保護コーティングは、使用されるプラスチック材料に応じて、ステータティースの射出成形に対応して、もしくはステータ巻き線の射出成形に対応して、または別の方法ステップで形成するのが望ましい。
【0031】
好ましい実施形態の場合、空間の径方向内側端部または/及び外側端部の領域に創り出される冷却ダクトは、相絶縁体によってプラスチックから形成される径方向内側または外側の部分空間のそれぞれに形成される。この実施形態の場合、径方向外側または内側の端部の領域に創出される第2の冷却ダクトが、その代わりに、またはそれに追加して、相絶縁体によってプラスチックから形成される径方向外側または内側の部分空間のそれぞれに形成される。
【0032】
本発明に係る方法の特に好ましい実施形態の場合、少なくとも1つのエアギャップまたは/及び少なくとも1つのエアトラップが、ステータティースの表面部分に配置される少なくとも2つの導体要素と電気絶縁層の間の少なくともある領域に形成される。この実施形態の場合、前記エアギャップまたはエアトラップは、それぞれ、プラスチックで満たされ、すなわち、ギャップ充填材を形成することにより、特に好ましくは完全にプラスチックで満たされる。このような複数のエアギャップまたは/及びエアトラップが存在する場合は充填するのが好ましく、空間に存在するエアギャップまたは/及びエアトラップの全てに充填することが特に好ましい。したがって、理想的な場合、エアギャップまたはエアトラップは、第2の射出成形の後に空間の中に残らない。ステータ本体に対するステータ巻線の最適な電気絶縁が、このようにステータティースによって実現できる。
【0033】
少なくとも1つの第1導体要素は、相絶縁体によって、少なくとも1つの第2導体に対して電気的に絶縁し得ることが特に好ましい。電源の異なる電流位相に接続される2つの導体要素の間の不要な電気的短絡は、このようにして回避できる。
【0034】
好ましい実施形態の場合、少なくとも1つの第1導体要素が径方向内側の部分空間に配置され、少なくとも1つの第2導体要素が径方向外側の部分空間に配置される。この実施形態は、それぞれの空間にわずかな配置が可能な場合、及び電気機械が2相で動作する場合に特に適している。
【0035】
空間は、軸方向に直角な断面で、台形、好ましくは長方形の形状を有することができるのが好ましい。
【0036】
さらに別の好ましい実施形態の場合、ステータティースの表面部分に射出されるプラスチックは、電気絶縁性の第1のプラスチック材料によって形成される。少なくとも1つの相絶縁体を具体化するプラスチックは、第2のプラスチック材料によって形成できる。さらに、第1または/及び第2の保護コーティングを具体化するプラスチックは、第2プラスチック材料、または第2のプラスチック材料とは異なる第3のプラスチック材料によって形成できる。
【0037】
好ましい実施形態の場合、第2のプラスチック材料は電気絶縁性または導電性である
ものとして具体化される。
【0038】
さらに好ましい実施形態の場合、第3のプラスチック材料は、電気絶縁性または導電性であるものとして具体化される。
【0039】
さらに好ましい実施形態の場合、第1プラスチック材料または/及び第2プラスチック材料または/及び第3プラスチック材料は、熱可塑性にすることができる。
さらに好ましい実施形態の場合、第1プラスチック材料または/及び第2プラスチック材料または/及び第3プラスチック材料は、熱硬化性にすることができる。
【0040】
第1または/及び第2または/及び第3のプラスチック材料は、同一の熱伝導率を有することが好ましい。第1または/及び第2または/及び第3のプラスチック材料は、その代わりに、またはそれに加えて、異なる熱伝導率を有していてもよい。
【0041】
第1または/及び第2または/及び第3のプラスチック材料は、同一の材料であることが好ましい。第1または/及び第2または/及び第3のプラスチック材料は、その代わりに、またはそれに加えて、同様に異なる材料にしてもよい。
【0042】
特に好ましい実施形態の場合、空間をプラスチックで射出成形または充填することは、それぞれ、エアギャップもエアトラップも射出成形または充填の後に空間に存在しないように行われる。
【0043】
本発明は、さらに、上述の方法によって製造されたステータに関する。 したがって、本発明に係る方法に関する上述の効果は、本発明に係るステータにも当てはめることができる。
【0044】
本発明は、さらに、本発明に係る方法によって製造される上述のステータを備えた電気機械に関する。したがって、本発明に係る方法に関する上述の利点は、本発明に係る電気機械にも適用できる。ステータに加えて、電気機械も、ステータに対する回転軸の周りで回転可能なロータを備える。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、本発明に係る電気機械の例を、ステータの回転軸に沿った縦断面図で示す。
【
図2】
図2は、
図1に係る電気機械のステータをロータの回転軸に直角の断面で示す。
【
図3】
図3は、周方向に隣接する2つのステータディースの間の空間の領域における
図2のステータの詳細図を示す。
【
図4】
図4は、付加的な第2の冷却ダクトを備える、
図3に係る例のさらに別の展開例を示す。
【
図5】
図5は、ステータ巻線が、巻線ロッドによってではなく、プラスチック構成物に形成された巻線によって形成された場合の、
図3に係る例のオプションを示す。
【
図6】
図6は、本発明に係る方法の順序を表す図を示す。
【
図7】
図7は、本発明に係る方法の順序を表す図を示す。
【
図8】
図8は、本発明に係る方法の順序を表す図を示す。
【
図9】
図9は、本発明に係る方法の順序を表す図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明のさらに別の重要な特徴および効果は、従属請求項、図面、及び図面に基づいた対応する図の説明から理解される。
【0047】
上述の特徴および以下に説明する特徴は、それぞれで特定された組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせまたは単独で使用できることは言うまでもない。
【0048】
本発明の好ましい例示的な実施形態を図面に示し、以下でより詳細に説明する。
【0049】
各図は概略図である。
【0050】
図1は、本発明に係る電気機械1の例を断面図で示す。電気機械1は、車両、好ましくは道路車両で使用できるように寸法設定されている。
【0051】
電気機械1は、
図1に概略的にのみ示すロータ3と、ステータ2とを備える。明確にするため、ステータ2の、
図1の断面線II-IIに沿った回転軸Dに直角の断面を、別の図である
図2に示す。
図1によれば、ロータ3はロータ軸31を有し、複数の磁石を有することができ、これらの磁石は
図1により詳細には示されておらず、その磁気分極は円周方向Uに沿って交互に変わる。ロータ3は、回転軸Dの周りで回転でき、その位置は、ロータ軸31の長手方向の中心軸Mによって定められる。回転軸Dは、回転軸Dと平行に延びる軸方向Aを定める。半径方向Rは、軸方向Aと直角である。周方向Uは、回転軸Dの周りを回る。
【0052】
図1に示されているように、ロータ3はステータ2の中に配置されている。したがって、ここに示されている電気機械1は、いわゆる内部ロータである。しかしながら、いわゆる外部ロータとして実現することも考えられ、その場合、ロータ3はステータ2の外側に配置される。ロータ軸31は、回転軸Dの周りを回転できるように、第1軸受32aと、そこから軸方向へ間隔をあけて配置された第2軸受32bとで、ステータ2に支持されている。
【0053】
知られているように、ステータ2はさらに複数のステータ巻線6を含み、これらは磁界を発生するように通電することができる。ロータ3は、ロータ3の磁石によって生成される磁界と、導電性のステータ巻線6によって生成される磁界との磁気相互作用によって回転し始める。
【0054】
図2の断面より、ステータ2は、例えば鉄製のリング状のステータ本体7を有し得ることが分かる。ステータ本体7は、特に、軸方向Aに沿って互いに積み重ねられ、互いに接着された複数のステータ本体プレート(図示せず)から形成できる。軸方向Aに沿って延び、ステータ本体7から径方向内側に突出し、そして周方向Uに沿って互いに間隔を空けて配置される複数のステータティース8は、ステータ本体7の径方向内側に成形される。各ステータティース8はステータ巻線6を支持する。個々のステータ巻線6が一緒になって、巻線の配置がなされる。ステータ巻線6によって形成される磁極の数に応じて、巻線配置の全体のうちの個々のステータ巻線6を適切な方法で電気的に配線接続できる。
【0055】
機械1の動作中、通電されたスタータ巻線6は廃熱を発生し、廃熱は、過熱及び損傷を回避し、さらにはそれに伴う機械1の損壊も回避するために、機械1から放出しなければならない。したがって、ステータ巻線6は、冷却剤Kが、ステータ2を通って案内され、ステータ巻線6によって生成される廃熱を熱伝達によって吸収することに補助されて冷却される。
【0056】
ステータ2を通して冷却剤Kを案内するために、機械1は冷却剤分配室4を備え、冷却剤Kを冷却剤分配室4の中に冷却剤入口33を介して導入できる。冷却剤収集室5が、冷却剤分配室4から軸方向Aに沿って距離をあけて配置されている。冷却剤分配室4は、複数の冷却ダクト10によって冷却剤収集室と流体的に連通し、
図1ではそのうちの1つのみを見ることができる。図には示されていない軸方向Aに直角の断面において、冷却剤分配室4と冷却剤収集室5は、それぞれ、リング状の形状を有し得る。リング状の冷却剤分配室4からリング状の冷却剤収集室5までそれぞれが軸方向Aに沿って延びる複数の冷却ダクト10は、周方向Uに沿って互いに間隔をあけて配置される。したがって、冷却剤入口33を介して冷却剤分配室4に導入される冷却剤Kは、個々の冷却ダクト10に分配できる。冷却剤Kは、冷却ダクト10を通って流れ、ステータ巻線から熱を吸収した後に、冷却剤収集室5に集められ、ステータ2に設けられた冷却剤出口34を介して機械1から再び排出される。
【0057】
図1および
図2から分かるように、ステータ巻線6及び冷却剤ダクト10は、それぞれ、周方向Uに隣り合う2つのステータティース8の間に形成される空間9に配置される。前記空間9は、ステータティース8と同様に、軸方向Aに沿って延びる、いわゆる「ステータ溝」または「ステータスロット」として、当業者に知られている。
【0058】
図3について以下に説明する。
図3は、周方向Uに隣り合う2つのステータティース8(以下、ステータティース8a、8bとも称する)の間に形成される空間9を詳細に示す。
【0059】
図3に示すように、空間9は径方向内側に開口部52を有し、したがって径方向内側に開口するように形成される。
図3の例では、冷却ダクト10は、空間9またはステータ溝54の径方向内側端部56aの領域に、したがって開口部52の領域に配置されている。
【0060】
ステータ巻線6によって生成される廃熱の、冷却ダクト10を流れる冷却液Kへの熱伝達を改善するために、冷却ダクト10と固定子巻線6に加えて、電気絶縁性で熱伝導性のプラスチック11が
図3に示すように空間9に配置される。
【0061】
プラスチック11は、射出成形によって空間9に導入するのが好ましい。
【0062】
図3に示すように、プラスチック11は、周方向Uに隣接し、一緒にスペース9を画定する2つのステータティース8の表面部分50a、50b、50c上に配置されている。空間9に配置された冷却ダクト10も、同じ空間9に配置されたステータ巻線6も、それぞれ、電気絶縁性のプラスチック11により、ステータティース8に対して電気的に絶縁される。さらに、ステータ巻線6は、冷却ダクト10にプラスチック11を介して熱を伝達するように接続されているため、ステータ巻線6内で、または固定子巻線6によって発生する廃熱を、冷却ダクト10を通って流れる冷却剤Kにプラスチック11を介して伝達でき、したがって、ステータ巻線6から放出できる。
【0063】
周方向Uに隣接し、開口部52と径方向に対向して位置する2つのステータティース8a、8bの表面部分50a(これを以下「第1表面部」と定め、参照符号50aを付与する)は、空間9により形成されるステータ溝54のいわゆる溝底を形成する。周方向Uに空間9を制限する、隣り合う2つのステータティース8のうちの第1のステータティースの第1のフロント側(以下、8aで特定される)は、第2の表面部分50bを形成する。円周方向Uに空間9を制限する、隣り合う2つのステータティース8のうちの第2のステータティースの第2のフロント側(以下、8bで特定される)は、第2の表面部分50bと周方向Uに対向して位置する第3の表面部分50cを形成する。
【0064】
3つの表面部分50a、50b、50c上に配置されるプラスチック11は、表面部分50a、50b、50cを覆う電気絶縁性で熱伝導性の絶縁層51を形成する。絶縁層51の1つの層の厚さdは、例えば、0.2mmと0.5mmの間にすることができる。
【0065】
このように、プラスチック11は、電気絶縁層51だけでなく第1の保護コーティング75も形成し、空間9に配置されて冷却ダクト10を取り囲んで区画することが分かる。したがって、冷却ダクト10を流体密に制限するための管体などを設けることによって冷却剤Kが漏れ得ないようにすることは不必要である。
【0066】
図3の例では、第1の保護コーティング75は、開放されるように形成された空間9、ないしはステータ溝54の開口部52をそれぞれ閉鎖する。
図3からさらに分かるように、ステータ巻線6は、冷却ダクト10に対して、第1の保護コーティング75を形成するプラスチック11を介して電気的に絶縁されているだけでなく、熱を伝達するように接続されているので、ステータ巻線6の内部で、またはステータ巻線6の近くで発生する廃熱を、冷却ダクト10を通って流れる冷却剤Kに、第1の保護コーティング75を介して伝達できる。
【0067】
図3によれば、プラスチック11は、第1の保護コーティング75および絶縁層51を形成できるだけでなく、その代わりにまたはそれに追加して、空間9または固定子溝54にそれぞれ配置される
相絶縁体58も形成できる。
相絶縁体58は、空間9を径方向内側の部分空間と径方向外側の部分空間59a,59bに分割する。
【0068】
相絶縁体58は、周方向Uに沿って延びると有利である。相絶縁体58は、第2の表面部分50bを第3の表面部分50cに接続するのが好ましい。
【0069】
径方向内側の部分空間59aには第1の導体要素60aが配置され、径方向外側の部分空間59bには第2の導体要素60bが配置される。
【0070】
径方向内側端部54aの領域に配置された第1の冷却ダクト10は、相絶縁体58によってプラスチック11で形成された径方向内側の部分空間59aに配置される。
【0071】
図3から分かるように、空間9に配置されたステータ巻線6は、空間9内で径方向Rに沿って互いに隣接し、且つ互いに距離をあけて配置された第1導体要素60aおよび第2導体要素60bを含む。好ましくは円周方向Uに沿って延びることができるエアギャップ61は、径方向Rに沿ってそれぞれ隣接する2つの導体要素60、60bの間に形成される。これにより、プラスチック11がギャップ充填材62を形成し、それによってエアギャップ61が完全に満たされる。
【0072】
好ましくは径方向Rに沿って延びることができるエアギャップ61は、第1及び第2の導体要素と、ステータティース8,8a,8bの表面部50a,50b,50cに配置された電気絶縁層51との間に同様に形成される。これにより、プラスチック11がギャップ充填材62を形成し、それによりエアギャップ61が完全に満たされる。
【0073】
したがって、すべての第1および第2の導体要素60a、60bは、
図3に示されるように、軸方向Aに直角の断面において電気絶縁性かつ熱伝導性のプラスチック11によって包囲される。
【0074】
それぞれが第1または第2の巻線ロッド65a、65としての第1および第2の導体要素60a、60bは、導電性を有し且つ機械的に硬質の材料で形成される。
【0075】
第1および第2の巻線ロッド65a,65bは、それぞれ、軸方向Aに直角の断面において、2つの狭い側面67および2つの広い側面68を含む長方形66の形状を有する。隣り合う2つの巻線ロッド65aまたは65bの2つの広い側面68は、それぞれ、径方向Rに関して互いに対向して位置することで、径方向Rにおけるそれぞれのエアギャップ61の端を定める。
【0076】
図4は、
図3の例のさらに別の発展例を示す。
図4の例は、冷却ダクト10が、空間9またはステータ溝54のそれぞれの径方向外側の端部56aの領域に配置され、空間9の径方向Rに関して径方向内側の端部56aと対向して位置する点で、
図3の例とは異なる。
【0077】
図4の例では、プラスチック11は、冷却剤10の第1の保護コーティング75と同様に、第2の保護コーティング75を形成し、第2の保護コーティング75は、空間9に配置され、追加の冷却ダクト10の端を定めて包囲する。
図4に示されているように、径方向外側の端部56bに配置される追加の冷却ダクト69は、空間9またはステータ溝54のそれぞれの径方向外側の部分空間59bに配置され、部分空間59bは、プラスチック11で形成される
相絶縁体58によって形成される。
【0078】
プラスチック11が熱的な過負荷により割れたり、その他の理由で損傷したりした場合、このように、ステータ本体7またはステータティース8,8a,8bのそれぞれの材料(一般に鉄または他の適切な導電性材料)により、ステータ巻線6が望まれずに電気的に短絡するのを回避できる。
【0079】
図5は、
図3の例の選択肢を示す。
図5の例では、プラスチックはプラスチック構成物を形成し、その中にステータ巻線が埋め込まれている。
図5の例では、ステータ巻線6の導体要素65は、分布巻線の一部である巻線72によって形成されている。
【0080】
再び
図1を参照する。
図1によれば、ステータ本体7およびステータティース8を備えるステータ2は、第1および第2のエンドシールド25a、25bの間に軸方向に配置される。
【0081】
図1に見られるように、冷却剤分配室4の一部は第1のエンドシールド25aに配置され、冷却剤回収室5の一部は第2のエンドシールド25bに配置される。したがって、冷却剤分配室4および冷却剤収集室5は、それぞれ、一部が、プラスチック11に設けられる中空空間41a、41bによって形成される。第1のエンドシールド25aに形成される中空空間42aにより、冷却剤分配室4を形成するように第1の中空空間41aが補われる。したがって、第2のエンドシールド25bに形成される中空空間42bにより、冷却剤収集室5を形成するために第2の中空室41bが補われる。したがって、上述の実施形態の選択肢の場合、冷却剤分配室4も冷却剤収集室5も、プラスチック11により、少なくとも部分的に端が定められる。
【0082】
図1に示すように、第1のエンドシールド25aの外側に、特に円周方向の外側に設けられた冷却剤分配室4を冷却剤入口33に流体的に接続する冷却剤供給部35を、第1のエンドシールドにさらに形成することができる。それに対応して、
図1に示すように、エンドシールド25bの外側に、特に周方向の外側に設けられた冷却剤出口34に冷却剤収集室5を流体的に接続する冷却剤排出部36を、第2のエンドシールド25bに形成できる。このことにより、冷却剤分配室4または冷却剤収集室5は、ステータ巻線6の第1または第2端部14a、14bのそれぞれの径方向外側、及びこれらの端部14a、14bの軸方向Aに沿った延長部分の径方向外側に、それぞれ配置される。機械1の動作中に特に熱負荷がかかるステータ巻線6の端部14a、14bは、この構成により、特に効果的に冷却される。
【0083】
図1によれば、プラスチック11は、ステータ本体7の外周側30にも配置でき、したがって、外周側面30にプラスチックコーティング11.1を形成できる。したがって、一般には導電性のステータプレートで形成されるステータ2のスタータ本体7を、周囲の領域に対して電気的に絶縁できる。したがって、ステータ本体7を収容するための別個のハウジングを設けることを不要にできる。
【0084】
以下、本発明に係る方法を例示的な方法で説明する。
【0085】
図6によれば、周方向Uに隣接する2つのステータティース8a、8bと、これら2つのステータ歯8a、8bによって区画される空間9を備えるステータ2が、第1のステップa)において準備される。
【0086】
第2のステップb)によれば、周方向Uに隣接する2つのステータティース8a、8bが、電気絶縁性で熱伝導性のプラスチック11を用いて射出成形される。ステータティース8a,8bの射出成形の過程で、電気絶縁性プラスチック11が、空間9の端を定める2つの隣接するステータティース8a,8bの表面部分50a,50bに射出される。空間9の境界を定める2つの隣接するステータティース8a、8bの表面部分50b、50cを覆う電気絶縁性の絶縁層51は、ステータティース8a,8bの表面部分50b,50cに射出されるプラスチック11によって形成される。絶縁層51は、同様に、空間9の径方向外側の境界を定めるステータ本体7の表面部分50aを覆う。
【0087】
さらに
図6に示すように、空間9を径方向内側および径方向外側の部分空間59a、59bに分割する
相絶縁体58を、プラスチック11の射出成形の過程で、またはプラスチック11による射出成形によって、それぞれ空間9に形成できる。第1位相の巻線70aを形成するステータ巻線6の第1の導体要素は、その後に径方向内側の部分空間59aに配置できる。それに対応して、第1位相の巻線70aに対して電気的に絶縁された第2位相の巻線70bを形成するステータ巻線6の第2の導体要素は、径方向外側の部分空間59bに配置できる。
【0088】
相絶縁体58は、隣接するステータティース8a、8bに配置されたプラスチック11の2つの絶縁層51を互いに接続するように、ステータ2の周方向Uに沿って延びることが望ましい。
【0089】
さらに、第3の方法ステップc)では、ステータ巻線6がステータティース8、8a、8b上に配置される。これは、
図7に示すように、少なくとも1つのステータ巻線6が空間9に部分的に配置されることを意味する。
【0090】
図7に示されるように、空間9に配置されるステータ巻線6は、第1の導体要素60a及び第2の導体要素60bを有する。第1及び第2の導体要素60a、60bは、それぞれ、ステータ2またはステータ本体7の径方向Rに沿って空間9内で互いに隣り合い、且つ互いに間隔を空けて配置される。
【0091】
ステップc)では、ステータ巻線6の第1の導体要素60aが径方向内側の部分空間59aに配置され、ステータ巻線6の第2の導体要素60bが径方向外側の部分空間59bに配置される。したがって、第1の導体要素60aは、電源(図示せず)の共通の第1の位相に接続するために、互いに電気的に接続できる。第2の導体要素60bは、それに対応して、電源の共通の第2の位相に接続するために、互いに電気的に接続できる。
【0092】
第1及び第2の導体要素60a、60bは、導電性材料の巻線ロッド65a、65bとして構成され、機械的に強固である。空間9内に配置した後に、巻線ロッド65a、65bは、軸方向Aに直角の断面において、2つの狭い側面67と2つの広い側面68を含む長方形66の形状を有する。
【0093】
冷却ダクト10の実施形態では、マスキング材57を、2つのステータティース8a、8bの間の空間4、すなわち、例えば
図7に示すように、空間9の径方向内側端部56aの領域に導入できる。
【0094】
図7に見られるように、特にプラスチック11が存在しないそれぞれのエアギャップ61を、第1及び第2の導体要素60a、60bを含むステータ巻線6を空間9に配置した後に、それぞれ隣接する2つの導体要素60a、60bの間に作成することができる。このエアギャップ61は、導体要素60a、60bと、表面部分50a、50b、50c上に配置された絶縁層51との間に形成することもできる。エアギャップ61の代わりに、1つまたは複数のエアトラップ(図示せず)の実施形態も考えられる。
【0095】
図8によれば、さらに射出プロセスが行われる。第4の方法ステップd)に係る第2の射出成形の過程で、空間9に配置され、第1および第2の導体要素60a、60bを含むステータ巻線6が、プラスチック11を用いて射出成形され、その結果、空間9に存在する少なくとも1つのエアギャップ61、好ましくはすべてのエアギャップとエアトラップとが、プラスチック11で満たされる。プラスチック11のギャップ充填材62をエアギャップ61に充填した後、第1及び第2の導体要素60a、60bは、それぞれ、軸方向Aに直角の断面において電気絶縁性及び熱伝導性プラスチックによって完全に囲まれる。プラスチック11による空間9への射出成形または充填は、それぞれ、特に、射出成形または充填のそれぞれの後に、エアギャップ11またはエアトラップが、空間9の中にもはや存在しなくなるように行われる。
【0096】
図8によれば、マスキング材57の射出成形は、第2の射出成形の過程で行うこともできる。マスキング材57は、この射出成形の過程において、マスキング材57によって満たされる空間9の容積に、この射出成形時に冷却ダクト10を自由に形成できるように、プラスチック11で成形される。1つの選択肢では、マスキング材57の射出成形を別個の方法ステップで実行することが考えられる。
【0097】
マスキング材57を除去した後に、
図9に示されているように、目的とする冷却ダクト10が形成される。
【0098】
この例の1つの選択肢では、マスキング材57を、径方向内側の端部56aの領域に配置するのではなく、空間9の径方向外側の端部56bの領域に配置できる(
図8,9には図示せず)。次に、冷却ダクト10が、径方向外側の端部56b(
図8,9には図示せず)に応じて作成される。
【0099】
図10によれば、径方向内側及び径方向外側の端部56a、56bにおける2つのマスキング材57を組み合わせて使用することも考えられるので、それに対応する2つの冷却ダクト10が作成され、その結果、第1の冷却ダクト10が径方向内側の端部56aに作成され、第2の冷却ダクト10が径方向外側の端部56bに作成される。したがって、第1の冷却ダクト10は、第1の導体要素60aを含む径方向内側の部分空間59aに配置される。それに対応して、第2の冷却ダクト10は、第2の導体要素60bを含む径方向外側の部分空間59bに配置される。
【0100】
相絶縁体58(
図6を参照)は、ステータティース8,8a,8bの射出成形に応じて、またはその代わりにステータ巻線6の射出成形に応じて、またはその代わりに、別の方法ステップで形成できる。
【0101】
ステータティース8a,8bまたはステータ巻線6のそれぞれに対して冷却ダクト10の最適な電気的絶縁性を確保するために、空間9に配置され、且つ軸方向Aに直角の断面において冷却ダクト10の境界をそれぞれ定め、または冷却ダクト10をそれぞれ囲む保護コーティング75を、
図11に係るさらに他の発展例において、プラスチック11を用いてマスキング材57をさらに射出成形することによって実施できる。
【0102】
保護コーティング75は、軸方向Aに直角の断面において、径方向内側および径方向外側の少なくとも1つの冷却ダクト10の端を定めることが好ましい。前記保護コーティング75は、軸方向Aに直角の断面において、ステータ2の周方向Uに冷却ダクト10の境界を定める場合にも、同様に好ましい。
【0103】
保護コーティング75は、ステータティースの射出成形に応じて、またはステータ巻線の射出成形に応じて、または
図11の場合は別の方法ステップで、形成することができる。
【0104】
空間9は、軸方向Aに直角の断面において、台形、好ましくは長方形の形状を有し得る。
【0105】
ステータティース8a、8bの表面部分50a、50b、50cに射出されるプラスチック11は、第1のプラスチック材料K1によって形成される。相絶縁体58を構成するプラスチック11は、第3のプラスチック材料K3によって形成される。第1及び第2のギャップ充填材62を構成するプラスチックは、第2のプラスチック材料K2によって形成される。保護コーティング75を構成するプラスチック11は、第2のプラスチック材料K2によって、または第3のプラスチック材料K3によって形成される。
【0106】
3つのプラスチック材料K1,K2,K3は、同一の材料にすることができる。しかしながら、2つのプラスチック材料K1,K2,K3の少なくとも2つを、したがって3つのプラスチック材料K1,K2,K3の全てを、異なる材料にすることも考えられる。ある例では、第1のプラスチック材料も第2のプラスチック材料の第3のプラスチック材料も、電気絶縁性であるように具体化される。3つのプラスチック材料K1、K2、K3のそれぞれは、一般には、熱可塑性または熱硬化性にすることができる。3つのプラスチック材料K1,K2,K3は、また、同一の熱伝導性を有してもよい。その代わりに、2つのプラスチック材料K1,K2,K3の少なくとも2つは、そして3つのプラスチック材料K1,K2,K3の全ては、異なる熱伝導率を有してもよい。さらに、3つのプラスチック材料K1、K2、K3は、同一の材料にしてもよい。その代わりに、3つのプラスチック材料K1,K2,K3の少なくとも2つを、そして3つのプラスチック材料K1,K2,K3の全てを、それぞれ異なる材料にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明したように、本開示は、電気機械について有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 電気機械
2 ステータ
7 ステータ本体
6 ステータ巻線
8 ステータティース
9 空間
10 冷却ダクト
11 プラスチック