(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】歯車
(51)【国際特許分類】
F16H 55/17 20060101AFI20240906BHJP
F16H 48/08 20060101ALI20240906BHJP
F16H 48/40 20120101ALI20240906BHJP
【FI】
F16H55/17 Z
F16H48/08
F16H48/40
(21)【出願番号】P 2019565070
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 GB2018050395
(87)【国際公開番号】W WO2018150175
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-20
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522462041
【氏名又は名称】アドヴァンスト・エレクトリック・マシーンズ・グループ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Advanced Electric Machines Group Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン、アンドルー
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-22156(JP,U)
【文献】国際公開第2015/106962(WO,A2)
【文献】独国特許発明第208002(DE,C)
【文献】米国特許出願公開第2016/0363206(US,A1)
【文献】独国特許出願公告第1116069(DE,B)
【文献】独国特許発明第171033(DE,C)
【文献】米国特許第3226996(US,A)
【文献】米国特許第900700(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝達システムにおいて使用するための歯車であって、
半径方向外側の表面にらせん状に配置された歯車歯を有している外側環状要素と、
前記外側環状要素と同軸に配置された内側支持要素と、
環状空間を形成するように各々が前記外側環状要素から前記内側支持要素まで延びている第1および第2の対向する側壁と
を備えており、
前記第1および第2の側壁の両方が、当該歯車の回転軸に垂直な方向に対して0度よりも大きい角度で前記外側環状要素から延びており、
前記第1および第2の側壁の各々の傾斜の角度が、前記外側環状要素と前記内側支持要素との間のそれぞれの長さにわたって一定であり、前記第1及び第2の側壁の各々が、前記外側環状要素及び前記内側支持要素の各々に堅固に接続され、あるいは、前記外側環状要素及び前記内側支持要素の各々と一体であり、前記第1および第2の側壁は、使用中に、軸方向における歯車負荷力による前記外側環状要素の半径方向の回転に抵抗するように剛性があり、
前記内側支持要素が、前記第1の側壁から前記第2の側壁に軸方向に延びるシャフトである、歯車。
【請求項2】
前記第1および第2の側壁のうちの少なくとも1つが、当該歯車の回転軸に垂直な方向に対して10~50度の間の角度で前記外側環状要素から延びている、請求項1に記載の歯車。
【請求項3】
前記第1および第2の側壁
の各々の前記傾斜の角度は、
互いに同一
の大きさであり、および
、前記第1及び前記第2の側壁が、前記外側環状要素に対して傾斜する向きが、互いに反対向き
である、請求項1又は2に記載の歯車。
【請求項4】
前記第1および第2の側壁の
両方が、円錐台の形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯車。
【請求項5】
前記内側支持要素の軸方向の長さが、前記外側環状要素の軸方向の長さよりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯車。
【請求項6】
前記第1および第2の側壁は、2mm~6mmの間の壁の厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯車。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の歯車を備える伝達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝達システムにおいて使用するための歯車に関する。特には、これに限られるわけではないが、本発明の実施形態は、高速伝達システムに関連する大きな負荷により良好に耐えることができる歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
伝達システムにおける歯車は、伝統的に、剛性の最大化および強度の向上のために、中実歯車である。しかしながら、中実歯車は、歯車システムの重量を著しく増加させ、結果として経済性を低下させる可能性があり、製造が高価につく可能性もあるため、望ましくない場合がある。
【0003】
歯車は、典型的には、使用時に荷重が加わるときに、軸方向の並進および回転作用(すなわち、外リムの曲げ)の両方を被る。これは、隣接する噛合相手の歯車からはすば歯車へと作用する力が、軸方向の成分を含むからである。力の軸方向の成分は、外リムにおいて歯車の曲げを生じさせる可能性がある。この曲げにより、噛合相手の歯車との接触点において、歯車の主回転軸に垂直およびリムの円周に接する軸を中心にして、歯車の外リムの回転が生じる。典型的には、伝達の用途において、微小な回転(歯車の曲がり)でさえも、歯車の歯が隣接する歯車の歯に意図されたとおりに噛み合うことを、不可能にする可能性がある(非共役な噛合)。これにより、歯車の局所的な接触応力、伝達エラー、およびノイズが増加し、歯車の早期故障につながる可能性がある。
【0004】
歯車のリムの純粋な軸方向の並進たわみは、通常は隣接する歯車の噛み合いに有害な影響をもたらすことがないため、歯車のノイズ、局所的な接触応力、または摩耗への影響は最小限である。
【0005】
伝達システムの重量を軽減するために、中空歯車がすでに設計されている。このような中空歯車は、重量を削減し、したがってコストを削減するために、海洋または風力タービンの歯車など、比較的大型の歯車システムにおいて使用されてきた。しかしながら、中空歯車は、中実歯車と比べて歯車の剛性および強度において不利になる可能性があり、したがって上述のホイールリムの回転作用および軸方向の並進の恐れが大きくなる。
【0006】
国際公開第2015/106962号パンフレットが、中空の駆動歯車を有する自動車用の差動歯車装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/106962号パンフレット
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、伝達システムにおいて使用するための歯車が提供され、この歯車は、
半径方向外側の表面に歯車歯を有している外側環状要素と、
外側環状要素と同軸に配置された内側支持要素と、
環状空間を形成するように各々が外側環状要素から内側支持要素まで延びている第1および第2の対向する側壁と
を備え、
第1および第2の側壁のうちの少なくとも1つが、歯車の回転軸に垂直な方向に対して0度よりも大きい角度で外側環状要素から延びている。
【0009】
本発明の特定の実施形態は、歯車が、より高速の伝達システムに関連することが多いより大きな歯車負荷により良好に耐えるという利点を提供する。
【0010】
本発明の特定の実施形態は、既知の歯車と比較して歯車の重量を減らすことができるという利点を提供する。
【0011】
本発明の特定の実施形態は、軸方向の力によって引き起こされる歯車のリムの回転たわみを既知の歯車と比較して低減できるという利点を提供する。
【0012】
本発明の特定の実施形態は、既知の歯車と比較して歯車歯の摩耗が低減され、結果として歯車の寿命が延びるという利点を提供する。
【0013】
本発明の特定の実施形態は、伝達システムにおける歯車ノイズを既知のシステムと比べて低減できるという利点を提供する。
【0014】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、以下でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】差動歯車アセンブリに取り付けられた中空歯車の一例を切断した斜視図である。
【
図5b】側面が平行な中実歯車の軸方向の並進を示す。
【
図6b】側面が平行な中実歯車の半径方向の回転を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面において、同様の参照番号は、同様の部分を指している。
【0017】
図1~
図3は、歯車100の一例を示している。歯車100は、さまざまな伝達システムにおける使用に適している。歯車100は、高速伝達システム、大荷重の伝達システム、または重量を最小限に抑えることが望ましい伝達システムにおいて、特に有用である。例えば、歯車100を、輸送手段(例えば、車、船、ヘリコプタ)の伝達システムにおいて使用することができ、あるいはさまざまな回転速度およびトルクを必要とする固定機械(例えば、風力タービン)において使用することができる。歯車100は、重量および性能がきわめて重要である電気自動車産業において、伝達システムの軽量化に特に有用であり得る。伝達システムは、当業者にとって周知であるため、簡潔にするために詳しくは説明しない。
【0018】
歯車100は、外側環状要素102を含む。外側環状要素102は、歯車100の外周を巡って延び、環状リングを形成している。さらに、外側環状要素102は軸方向にも延び、実質的に円筒形の外面を形成している。
【0019】
外側環状要素102の半径方向外側の表面(すなわち、歯車100の外周面)に、複数の歯車歯104が存在する。歯車歯104は、使用時に歯車歯104が隣接する歯車またはピニオンの歯車歯と噛み合うことができるように、外側環状要素102の半径方向外側の表面から半径方向外側に突出している。この例において、歯車歯104は、はすば歯車の歯であり、各々が歯車100の周囲を延びるらせんの一部を形成している。換言すると、歯車歯104は、外側環状要素102の半径方向外側の表面にらせん状に配置されている。歯車歯104は、互いに平行に配置され、歯車100の周囲を巡って等間隔に位置している。
【0020】
この例において、歯車は、直径が約200mmであり、外周における軸方向の厚さが約22mmである。歯車歯104は、環状要素102の半径方向外側の表面から約5mmほど半径方向外側に突出している。歯車歯104は、歯車の軸方向から約15°の角度に配置され、各々の歯は、歯車100の周囲を延びるらせんの一部を形成する。歯車歯104は、等しいピッチで互いに平行に配置され、各々の歯の間のピッチは約7mmである。歯車歯104は、外側環状要素102と一体に形成されている。
【0021】
さらに、歯車100は、内側支持要素106を含む。内側支持要素106は、歯車100の半径方向内側の部分を形成し、歯車の半径方向外側の構成要素(外側環状要素102を含む)を支持するように構成される。内側支持要素106は、内側支持要素106および外側環状要素102の両方が同じ回転軸を共有するように、外側環状要素102と同軸に配置される。
【0022】
内側支持要素106は、この例においては、軸方向に延びるシャフトである。シャフトは、実質的に円筒形であり、この例においては中空穴を有している。他の例においては、中実シャフトを使用してもよい。歯車100の回転軸は、シャフトの中心を通って長手方向に延びる。
【0023】
第1および第2の対向する側壁108、110が、内側環状要素106を外側環状要素102に接続する。各々の側壁108、110は、外側環状要素102から内側支持要素106まで延びている。内側支持要素106、外側環状要素102、ならびに第1および第2の側壁108、110は、歯車100の内側に環状空間112を形成する。
【0024】
断面において、
図2に示されるように、第1および第2の側壁108、110の各々は、角度θで外側環状要素102から延びている。角度θは、90度よりも大きい。角度θは、それぞれの側壁と外側環状要素102の半径方向内側の表面との間の角度である。
【0025】
この例において、外側環状要素102は、実質的に円筒形であり、軸方向に(すなわち、歯車の回転軸に平行な長手方向に)延びている。したがって、角度θを、側壁と軸方向との間の角度と定義することも可能である。
【0026】
第1および第2の側壁108、110は、この例においては、各々が約110°の角度θで外側環状要素102から延びている。この例において、両方の側壁108、110は、外側環状要素102と内側支持要素との間で一定の傾斜を有している。この例において、第1および第2の側壁108、110は、どちらも実質的に円錐台形状である。
【0027】
あるいは、第1および第2の側壁108、110の角度を、歯車100の回転軸(A-B)に垂直な方向に対して測定することもできる。したがって、第1および第2の側壁108、110は、歯車100の回転軸(A-B)に垂直な方向に対して0度よりも大きい角度で外側環状要素102から延びている。
図1~
図3に示した例において、第1および第2の側壁は、歯車100の回転軸(A-B)に垂直な方向に対して約20°の角度で外側環状要素102から延びている。
【0028】
図1および
図2において最もよく見られるように、第1および第2の側壁108、110はそれぞれ、外側環状要素102から内側支持要素106へと向かうにつれて外側へと広がり、したがって歯車100は、外周よりも中央においてより厚い(すなわち、軸方向の長さがより大きい)。すなわち、内側支持要素106の軸方向長さは、外側環状要素102の軸方向長さより大きい。
【0029】
他の例において、外側環状要素112から延びる各々の側壁108、110の角度θは、適切には、90°~140°の間、100°~130°の間、100°~120°の間、または105°~115°の間であってよい。すなわち、第1および第2の側壁108、110は、適切には0°~50°の間、10°~40°の間、10°~30°の間、または15°~25°の間である歯車100の回転軸(A-B)に垂直な方向に対する角度で、外側環状要素102から延びてよい。
【0030】
適切には、第1および第2の側壁108、110の両方が、同じ角度で外側環状要素102から延びる(すなわち、第1および第2の側壁108、110はそれぞれ、同一および反対向きの傾斜の角度を有する)。
【0031】
適切には、側壁108、110のうちの少なくとも一方は、外側環状要素102と内側支持要素106との間で一定の傾斜を有し、したがって側壁108、110は、180°から角度θを引いた角度に等しい角度αで内側支持要素に出会う。例えば、角度θが110°である場合、角度αは70°である。
【0032】
第1および第2の側壁108、110のそれぞれの傾斜の角度は、適切には、外側環状要素102と内側支持要素106との間のそれぞれの長さに沿って一定である。
【0033】
第1および第2の側壁108、110のそれぞれの厚さは、中実歯車と比べて軽い重量を維持しながら、歯車100の剛性を最適化するように構成される。例えば、自動車の用途に使用することができる直径200mmの歯車は、壁の厚さが2mm~6mmの間である第1および第2の側壁108、110を有することができる。適切には、壁の厚さは、約4mmである。
【0034】
第1および第2の側壁108、110は、(例えば、溶接部を介して)内側支持要素106および外側環状要素102に堅固に接続される。他の例においては、内側支持要素106、外側環状要素102、ならびに第1および第2の側壁108、110を、一体的に形成(例えば、金型内で形成、または製造物から機械加工)してもよい。他の例においては、側壁を、取り付け具によって所定の場所に嵌まり込み、および/または保持されるように、熱膨張または熱収縮させることができる。
【0035】
この例における歯車100の構成要素(内側支持要素106、第1および第2の側壁108、110、外側環状要素102、ならびに歯車歯104を含む)は、いずれも鋼から形成されている。他の例においては、外側環状要素102を歯車鋼から製作し、他の構成要素106、108、および110を、より安価な鋼または他の材料から製作することができる。別の例においては、歯車の各々の構成要素を、非金属または他の任意の適切な材料から製作することができる。
【0036】
歯車100を、内側支持要素106、外側環状要素102(歯車歯104を含む)、ならびに第1および第2の側壁108、110の各々を最初に形成することによって製造することができる。これらの構成要素の各々を、適切な道具を使用して適切な鋼から鋳造、鍛造、または機械加工することができる。次に、第1および第2の側壁108、110が、内側支持要素106および外側環状要素102の各々へと溶接部を介して堅固に取り付けられ、環状空間112を有する歯車100が形成される。あるいは、外側環状要素102、1つの側壁108、および内側支持要素106を、1つの構成要素として1つの塊から機械加工することができる。最後に、残りの壁110を所定の場所に溶接することができる。いくつかの例においては、側壁108および110にアクセス穴、切り欠き、または何らかの他の局所的な造作を設けることもできる。
【0037】
使用時に、歯車100は、1つ以上の隣接する歯車と噛み合うように伝達システム内に配置される。したがって、歯車には、隣接する歯車からの歯車負荷力が作用する。上述のように、これらの力は、一般に、歯車の環状要素102の軸方向のたわみおよび半径方向の回転を引き起こす可能性がある。
【0038】
以下の表1が、さまざまな歯車の種類について、軸方向の半径方向の回転の相違を示している。第1の歯車は、平行な側壁を備えた典型的な中実歯車であり、歯車のリムの幅(すなわち、外周における厚さ)は22mmである。第2の歯車は、円錐台形の側面を有するように形作られた中実歯車であり、やはり歯車のリムの幅は22mmである。表に示されているように、側面が円錐形の中実歯車は、側面が平行な中実歯車よりも大幅に重い。第3の歯車は、
図1~
図3に関連して上述した本発明の実施形態のように円錐台形の側壁によって形作られた中空歯車である。この側面が円錐形の中空歯車は、やはりリムの幅が22mmであり、側面が平行な中実歯車よりも質量が約43%小さい。
【0039】
【0040】
表1の歯車の各々には、典型的および同一の歯車負荷が加わっている。表1に示されるように、円錐形の側面を有する中空歯車においては、平行な側面を有する中実歯車と比較して半径方向の回転が75%減少し、円錐形の側面を有する中実歯車と比較して半径方向の回転が50%減少する。
図5aおよび
図5bは、円錐形の側面を有する中空歯車および平行な側面を有する中実歯車のそれぞれの軸方向のたわみ作用を示している。
図6aおよび
図6bは、円錐形の側面を有する中空歯車および平行な側面を有する中実歯車のそれぞれの半径方向の回転作用を示している。
図6aおよび
図6bに、円錐形の側面を有する中空歯車は、平行な側面を有する中実歯車よりも半径方向の回転が著しく少ないことが、明瞭に示されている。
【0041】
歯車の回転たわみにより、各々の歯車歯が隣接する歯車歯を通過するときにずれてしまい、歯の通過の頻度において、望ましくない早すぎる歯の衝突が発生する。これは、多くの場合、より高い周波数のノイズを引き起こし、歯車の寿命にも有害な影響を及ぼす。
【0042】
円錐形の側面を有する中空歯車の半径方向の回転のこの軽減は、隣接する歯車歯のずれを小さくすることで、非共役の局所的な接触応力、伝達エラー、およびノイズを減少させ、したがって歯車の摩耗が減少し、結果として歯車の寿命が長くなる。
【0043】
円錐形の側面を有する中空歯車においては軸方向のたわみがわずかに増加するが、これは、一般に、直線的な平行移動は隣接する歯車歯のずれを引き起こすことがなく、したがって歯車のノイズまたは摩耗に大きくは影響しないため、重要でない。
【0044】
したがって、表1からわかるように、円錐形の側面を有する中空歯車は、伝統的な平行な側面を有する中実歯車に対して大幅な重量軽減の利点を示すとともに、半径方向の回転(たわみ)が大幅に少ない。同様の効果は、第1および第2の側壁の少なくとも一方が外側環状要素から90度よりも大きい角度で延びている本明細書に記載の他の例の歯車(すなわち、第1および第2の側壁が歯車の回転軸に垂直な方向に対して0度より大きい角度で外側環状要素から延びている歯車)においても見られる。
【0045】
いくつかの例において、歯車100は、差動歯車アセンブリの一部を形成することができる。
図4は、内側支持要素として差動歯車シャフト構成要素406を有する差動歯車ハウジングアセンブリを含む歯車400を示している。この例において、第1および第2の側壁は、差動歯車を収容する差動シャフト構成要素406につながっている。歯車400の他の構成要素は、
図1から
図3に関連して説明した歯車100と同様に構成することができるため、再度の詳細な説明は省略する。
【0046】
上述の例において、歯車は、はすば歯車歯を含んでいるが、歯車について意図される用途に応じて、他の適切な歯車歯を設けることができる。例えば、歯車歯は、半径方向に突出し、平歯車を形成するように軸方向に延びてもよい。
【0047】
上述の例においては、第1および第2の両方の側壁の各々が、同一および反対向きの傾斜の角度を有しているが、他の例においては、第1および第2の側壁の各々が異なる傾斜の角度を有してもよい。例えば、第1の側壁が、歯車100の回転軸に垂直な角度で外側環状要素102と内側支持要素106との間に延在できる一方で、第2の側壁は、90°よりも大きい(すなわち、歯車の回転軸に垂直な方向に対して0度よりも大きい)角度で外側環状要素102から延びることができる。別の例においては、第1および第2の両方の側壁が、90°より大きい異なる角度で外側環状要素から延びてもよい。例えば、第1の側壁を、外側環状要素から約100°(すなわち、歯車の回転軸に垂直な方向に対して約10度)の角度で延ばすことができる一方で、第2の側壁を、外側環状要素から約110°(すなわち、歯車の回転軸に垂直な方向に対して約20度)の角度で延ばすことができる。
【0048】
いくつかの例において、第1および第2の側壁は、完全な円錐台形でなくてもよい。例えば、側壁の一方または両方が、円錐台形状を中断させる追加の造作を含んでもよい。追加の造作は、例えば、異なる傾斜の角度を有する側壁の一領域、あるいは側壁の表面の溝または突起を含むことができる。他の例においては、第1および第2の側壁の少なくとも一方が、傾斜の角度における連続的な勾配(例えば、外側環状要素における100°の角度から始まり、内側支持要素における110°の傾斜の角度まで徐々に増加する)を有してもよい。
【0049】
上述の例において、内側支持要素はシャフトであるが、代わりに、内側支持要素は、別の支持構造であってもよい。例えば、内側支持要素は、
図4に一例が示される差動歯車アセンブリのハウジングであってもよい。
図4に示される例において、第1および第2の側壁は、それぞれ異なる傾斜の角度を有する。しかしながら、(同一および反対向きの傾斜の角度を含む)
図1の例に関して上述したとおりの任意の傾斜の角度を使用することも可能である。
【0050】
上述の例は特定のサイズの歯車に関するが、歯車は、用途に応じてさまざまなサイズであってよい。例えば、歯車の直径は、50mm~4000mmの範囲であってよい。第1および第2の側壁の適切な傾斜の角度は、異なるサイズの歯車間で異なってよく、すべてのサイズについて上述した範囲内である。しかしながら、歯車の直径が大きくなるにつれて、側壁の厚さを大きくすることができ、歯車歯の形状も変わる。
【0051】
例えば、風力タービンでの使用に適した歯車は、0.5~4mの間の直径を有することができる。このサイズの歯車の第1および第2の側壁は、5~100mmの間であってよく、適切には約40mmであってよい。歯車歯は、歯車の外周面から歯車のリムを巡って突出し、歯車のモジュールの必要な増加に比例した間隔で位置することができる。
【0052】
上述の例において、歯車は中実歯車と比べて軽量であるため、製造に必要な材料のコスト、燃費に関連するコスト(例えば、車両に使用される場合)、ならびに輸送および設置コストを削減することができる。軽量な歯車は、特には軽量化によって性能を大幅に改善することができる電気自動車または航空宇宙産業における高速伝達システムにおける使用にもさらに好適である。
【0053】
歯車の大幅な軽量化にもかかわらず、歯車の特には側壁の構成により、重要な軸を中心とする歯車の剛性は、中実歯車と同じに保たれ、あるいはさらに大きい。歯車の剛性の向上は、使用中の負荷力に抵抗し、歯車の半径方向の回転を低減または最小化する。歯車のリムの半径方向の回転の減少は、隣接する歯車の歯に対する歯車歯のずれが減少するという重要な利点を有する。これにより、隣接する歯車の歯が互いに噛み合うときの非共役な歯の衝突が防止され、あるいは大幅に減少する。結果として、局所的な接触応力、伝達エラー、ならびに歯車のノイズおよび摩耗が、すべて軽減される。
【0054】
歯車の第1および第2の側壁の配置は、特には軸方向の歯車負荷力への抵抗に役立ち、歯車のリムの半径方向の回転への抵抗に役立つ。これは、歯車の歯を隣接する歯車に対してずれないようにすることに役立ち、それにより歯車の歯の接触を減らし、歯車の局所的な接触応力、伝達エラー、およびノイズを減らし、したがって歯車の早期摩耗を軽減する。
【0055】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通して、用語「・・・を備える」および「・・・を含む」ならびにこれらの変形は、「・・・を含むが、・・・に限定されない」を意味し、他の部分、添加物、構成要素、完全体、またはステップを除外しようとする(さらには、除外する)ものではない。本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通して、単数形は、そうでないことを文脈が必要としていない限り、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、そうでないことを文脈が必要としていない限り、複数性および単数性を想定していると理解されるべきである。
【0056】
本発明の特定の態様、実施形態、または例に関連して説明された特徴、完全体、特性、化合物、化学部分または基は、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態、または例に、それらと矛盾しない限りにおいて適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示されたすべての特徴、および/またはそのように開示された任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせにて組み合わせることが可能である。本発明は、上述のいかなる実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示された特徴からの任意の新規な特徴または任意の新規な組み合わせ、あるいはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップからの任意の新規なステップまたは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0057】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時または本明細書よりも先に提出され、本明細書と共に公衆の閲覧に開放されたすべての論文および文書に向けられており、そのような論文および文書のすべての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。