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特許7550518注入システム、データ作成方法、及びデータ作成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】注入システム、データ作成方法、及びデータ作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240906BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20240906BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20240906BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20240906BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A61B6/03 530C
A61B6/50 511E
A61M5/172
G16H20/10
A61M5/142 530
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020005788
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112344
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】518234173
【氏名又は名称】株式会社サーキュラス
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(72)【発明者】
【氏名】吹越 由美子
(72)【発明者】
【氏名】金高 利雄
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503153(JP,A)
【文献】特開2018-000307(JP,A)
【文献】特開2011-177399(JP,A)
【文献】特開2013-169358(JP,A)
【文献】特開平04-317631(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153801(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
A61B 5/00
A61M 3/00-9/00
A61M 31/00
A61M 39/00-39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を注入する注入装置と、
被写体を撮像している間の音声を検出して、前記音声に基づいて第1データを作成する音声検出装置とを備え、
前記注入装置は、前記第1データを取得するデータ作成部と、前記薬液の注入履歴データを作成する履歴作成部とを備え、
前記データ作成部は、前記第1データを前記注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成する、注入システム。
【請求項2】
前記注入装置は、前記第2データから撮像タイミングを判定する判定部と、前記撮像タイミングと前記注入履歴データとに基づいてタイミング表示画像を作成する画像作成部とをさらに備える、請求項1に記載の注入システム。
【請求項3】
前記第1データは、撮像装置が発する撮像関連音声の特性を示す特性データを含む、請求項1又は2に記載の注入システム。
【請求項4】
前記注入履歴データは、前記薬液の注入開始からの経過時間を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の注入システム。
【請求項5】
薬液の注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータを、コンピューターに作成させるデータ作成方法であって、
被写体を撮像している間の音声を検出し、
前記音声に基づく第1データを取得し、
前記注入履歴データを作成し、
前記第1データを前記注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成する、データ作成方法。
【請求項6】
薬液の注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータを、コンピューターに作成させるデータ作成プログラムであって、
前記コンピューターを、
被写体を撮像している間の音声に基づく第1データを取得するデータ作成部と、
前記注入履歴データを作成する履歴作成部として機能させ、
前記データ作成部は、前記第1データを前記注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成する、データ作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータを作成する注入システム、データ作成方法、及びデータ作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像検査における曝射時間のタイミングデータと、薬液注入の注入履歴データとを取得し、注入履歴データと曝射時間のタイミングデータとが一緒に表示される注入結果グラフを作成して、表示ユニットに表示させるデータ処理装置が知られている(特許文献1)。このデータ処理装置は、撮像装置が作成した曝射時間のタイミングデータを、撮像装置の記憶部又はPACS(Picture Archiving and Communication Systems)から取得する。
【0003】
曝射時間のタイミングデータとしては、撮像開始時間のデータと撮像終了時間のデータとがある。そして、造影剤の注入開始時間と撮像開始時間とが一致しないことがあるため、注入結果グラフは、共通の時間データに基づいて作成されることが好ましい。例えば、撮像装置が付与する時間データとして、NTP(Network Time Protocol)サーバの時間データ、NTPサーバに基づいて時間が設定された他のタイムサーバの時間データ、これらのサーバに基づいて時間が設定された所定の機器の時間データ、及びこれらのサーバに基づいて時間が設定された撮像装置の時間データがあり、これらを利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/168216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、NTPサーバを導入している医療機関は少なく、そのために注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータの利用場面が限られていた。一方、注入装置及び撮像装置は、それぞれ時間データを作成している。しかし、時間データを同期しない場合には、注入装置と撮像装置との間における時間のズレが大きい。そのため、注入開始タイミングと撮像タイミングのデータを正確に関連付けて利用することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一例としての注入システムは、薬液を注入する注入装置と、被写体を撮像している間の音声を検出して、前記音声に基づいて第1データを作成する音声検出装置とを備え、前記注入装置は、前記第1データを取得するデータ作成部と、前記薬液の注入履歴データを作成する履歴作成部とを備え、前記データ作成部は、前記第1データを前記注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成する、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係るデータ作成方法は、薬液の注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータを、コンピューターに作成させるデータ作成方法であって、被写体を撮像している間の音声を検出し、前記音声に基づく第1データを取得し、前記注入履歴データを作成し、前記第1データを前記注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係るデータ作成プログラムは、薬液の注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータを、コンピューターに作成させるデータ作成プログラムであって、前記コンピューターを、被写体を撮像している間の音声に基づく第1データを取得するデータ作成部と、前記注入履歴データを作成する履歴作成部として機能させ、前記データ作成部は、前記第1データを前記注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
これにより、注入システムは、薬液の注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータを作成できる。また、当該データに用いることによって、注入履歴データと、撮像タイミングとを、共通の時間データに基づいて利用することができる。
【0010】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】注入システムの概略全体図である。
図2】注入システムの概略ブロック図である。
図3】タイミング表示画像の概略説明図である。
図4】音声信号の振幅を示すグラフである。
図5】データ作成を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。
【0013】
特に言及した場合を除き、造影剤という用語は、造影剤単体と、造影剤に加えて他の溶媒及び添加物を含む薬液との両方を含む。また、以下では、特に言及した場合を除き、画素値という用語には、造影されている撮像部位における、CT値、関心領域(ROI)に含まれる画素のCT値の和若しくは平均値、又は関心領域のSD値(標準偏差値)が含まれる。さらに、画素値は、造影されていない撮像部位における値(例えば、単純CTにおける撮像部位のCT値)を、これらの値から減算して得られた値を含む。関心領域は予め設定されているか、又はユーザが関心領域を選択することができる。
【0014】
[第1実施形態]
図1に示すように、データ作成システム1000は、薬液を注入する注入装置110を有する注入システム100と、注入装置110に有線又は無線で接続され且つ被写体を撮像する医療用の撮像装置150とを備えている。また、データ作成システム1000は、PACS、RIS(Radiology Information System)、及びHIS(Hospital Information System)等の外部記憶装置と、画像生成装置、コンピューター及びワークステーション等のデータ作成装置とをさらに備えていてもよい。
【0015】
撮像装置150としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置等の各種医療用の撮像装置がある。また、注入システム100は、薬液を注入する注入装置110と、被写体を撮像している間の音声を検出して、当該音声に基づいて第1データを作成して注入装置110に送信する音声検出装置190とを備えている。音声検出装置190は、後述する撮像関連音声の一例として、被写体を撮像している間に撮像装置150の制御装置160が発する報知音を検出する。以下では、撮像装置150がCT装置である例について説明する。
【0016】
撮像装置150及び注入装置110は、それぞれLAN(Local Area Network)又は専用回線等を介して有線又は無線接続されており、各種データを互いに送受信することができる。このデータは、デジタル医用画像に関する標準規格であるDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に準拠して作成することができる。注入装置110は、音声検出装置190と有線又は無線接続されている。例えば、注入装置110は、不図示のケーブルを介して音声検出装置190と有線接続されている。代替的に、注入装置110は、Bluetooth(登録商標)の規格に従い音声検出装置190と無線接続されていてもよい。
【0017】
撮像装置150は、被写体の透視画像を撮像するために患者にX線を曝射する撮像部151と、撮像部151に接続された制御装置160と、制御装置160に接続されたディスプレイ159とを備えている。撮像部151は、被写体を載せる寝台153と、被写体にX線を照射するX線源(不図示)と、被写体を透過したX線を検出するX線検出器(不図示)とを有している。そして、撮像部151は、被写体にX線を曝射し、被写体を透過したX線に基づいて被写体の体内を逆投影することで、被写体の透視画像を撮像する。なお、制御装置160とディスプレイ159とは、一体的に構成することもできる。
【0018】
注入装置110は、薬液(例えば、造影剤及び生理食塩水)がそれぞれ充填された二つのシリンジ(不図示)が搭載される注入ヘッド111と、注入ヘッド111を制御する注入制御装置であるコンソール120とを備えている。このコンソール120は、操作部及び薬液の注入状況等が表示される表示部として機能するタッチパネル129を備えている。そして、コンソール120と注入ヘッド111は、メタルケーブル及び光ケーブル等を介して有線接続されている。なお、コンソール120と注入ヘッド111は、無線接続されてもよく、例えば2.4GHz~5GHzの周波数帯を使用する無線方式で接続されてもよい。また、ハンドスイッチ等の遠隔操作装置(不図示)を、注入ヘッド111又はコンソール120に有線又は無線接続することもできる。
【0019】
注入ヘッド111は、キャスタースタンド112に搭載されており、撮像装置150の寝台153の近傍に移動して配置することができる。注入ヘッド111の電源は、注入ヘッド111又はコンソール120に設けることができる。また、注入ヘッド111から独立した電源を別途設けることもでき、当該電源をバッテリーに代えることもできる。なお、キャスタースタンド112に代えて天吊部材を設け、この天吊部材を介して天井から注入ヘッド111を天吊することもできる。
【0020】
また、注入ヘッド111には、前進ボタン、加速ボタン、後退ボタン、チェックボタン、及びスタートボタン等の操作ボタンが設けられている。そして、オペレーターは、操作ボタンを操作して、注入ヘッド111を手動で操作できる。具体的には、オペレーターが前進ボタンを押している間は注入ヘッド111の押圧部が前進して、オペレーターが後退ボタンを押している間は押圧部が後退する。また、オペレーターがチェックボタンを押すと、注入ヘッド111は注入可能な状態で待機する。その後、オペレーターがスタートボタンを押すと、注入ヘッド111は押圧部を前進させて薬液の注入を開始する。また、操作ボタンは、コンソール120のタッチパネル129にも表示される。オペレーターは、タッチパネル129を操作して、注入ヘッド111を操作することもできる。
【0021】
注入ヘッド111は、不図示の駆動機構を有する。例えば、駆動機構は、モーターのシャフトに接続された伝達機構と、伝達機構に接続されたネジ軸と、ネジ軸に取り付けられた台形ネジナットと、台形ネジナットに接続されたアクチュエーターとを含む。伝達機構は、シャフトに接続されたピニオンギアと、ネジ軸に接続されたスクリューギアとを含む。そして、伝達機構は、モーターからの回転をネジ軸に伝達する。これにより、モーターのシャフトの回転は、ピニオンギア及びスクリューギアを介してネジ軸に伝達される。そのため、ネジ軸が伝達された回転に従って回転して、台形ネジナットはネジ軸の回転に伴い前進方向又は後進方向に摺動する。この台形ネジナットの摺動に伴い、押圧部が前進又は後進する。
【0022】
注入ヘッド111に搭載されるシリンジには、シリンジ内において摺動可能であるピストンが取り付けられている。このシリンジは、薬液が充填されているシリンジ及び薬液が充填されていない空シリンジのいずれであってもよい。そして、ピストンの後端が押圧部に当接した状態でモーターが正転すると、押圧部がピストンを前進方向に押すことになる。ピストンが前進すると、シリンジ内の薬液が押し出され、シリンジ先端に接続される延長チューブ等を介して被写体の体内に注入される。一方、モーターが逆転すると、押圧部がピストンを後退方向に引くことになる。なお、薬液が充填されているシリンジには、予め薬液が充填されているプレフィルドシリンジ、オペレーターが手動で空のシリンジに薬液を充填して得られたシリンジ、及びオペレーターが吸引器若しくは充填器で空のシリンジに薬液を充填して得られたシリンジが含まれる。また、空のシリンジを注入装置110に搭載した場合、オペレーターは、注入装置110、吸引器又は充填器により薬液をシリンジに充填することができる。
【0023】
シリンジには、RFID(Radio Frequency Identifier)又はバーコードといったデーターキャリアを設けることができる。このデーターキャリアには、充填された薬液の情報等が記録されている。そして、注入装置110は、注入ヘッド111を介してデーターキャリアから記録された情報を読み取り、薬液の注入圧力等を制御できる。例えば、コンソール120は、読み取った薬液の情報(例えば、ヨード量又はガドリニウム含有量)に基づいて、体重当たりの最適な注入量を計算してタッチパネル129に表示できる。
【0024】
薬液を注入する場合、オペレーターは注入装置110の電源をオンにし、注入ヘッド111にシリンジを搭載して注入準備を完了させる。そして、オペレーターは、タッチパネル129又は注入ヘッド111の操作ボタンを操作して、注入プロトコルの作成に必要なデータをコンソール120に入力する。例えば、必要なデータは、体重、身長、体表面積、心拍数及び心拍出量等の被写体の身体的データ、及び薬液の種類のデータ等である。なお、オペレーターは、シリンジを搭載した後に、注入装置110の電源をオンしてもよい。また、オペレーターは、注入プロトコル及び薬液のデータ等を、外部の記憶媒体からコンソール120に入力してもよい。
【0025】
コンソール120は、注入速度、注入量、注入時間及び注入最大圧力(注入圧力リミット値)等の基本注入プロトコルと、薬液のデータとを予め記憶している。そして、コンソール120は、入力されたデータと予め記憶されているデータに応じて、個別の被写体に適した個別注入プロトコルを決定する。また、コンソール120は、注入速度、注入量及び注入時間等の所定のデータを、タッチパネル129に表示する。オペレーターは、決定された注入プロトコルの内容を確認し、必要であれば内容を変更できる。なお、注入プロトコルは、第三者が変更できないように、パスワードによりロックされていてもよい。
【0026】
また、コンソール120は、ポータブルディスプレイ又はタブレット型コンピューター等の外部デバイスに、注入プロトコルを表示してもよい。これらのデバイスは、注入ヘッド111又はコンソール120とBluetooth(登録商標)又はWi-Fi等の規格に従い無線接続され、注入ヘッド111のヘッドディスプレイとして利用できる。
【0027】
オペレーターは、注入準備を完了して注入プロトコルを確認すると、注入ヘッド111又はタッチパネル129のチェックボタンを押す。これにより、注入ヘッド111は、注入可能な状態で待機する。その後、オペレーターは、注入ヘッド111若しくは遠隔操作装置のスタートボタン、又はタッチパネル129に表示されたスタートボタンを押して注入を開始する。その後、注入ヘッド111は、注入プロトコルに従って自動的に薬液を注入する。なお、注入ヘッド111がヘッドディスプレイを有する場合、オペレーターは、ヘッドディスプレイに表示されたスタートボタンを押して注入を開始することもできる。
【0028】
また、注入システム100は、被写体を撮像している間に撮像装置150が発する撮像関連音声を検出して、当該撮像関連音声に基づく第1データを注入装置110に送信する音声検出装置190を備えている。当該音声検出装置190は、例えば検出した音声をデジタル形式の音声信号として送信するマイクロフォン、又は音声を検出したタイミングで検出信号を送信する音センサー等である。そして、音声検出装置190は、注入装置110と有線又は無線接続されており、例えば、注入装置110とケーブル(不図示)を介して有線接続されている。また、音声検出装置190は、撮像関連音声として、撮像装置150の制御装置160が発する報知音を検出する場合には、検査室に隣接する操作室に配置される。この場合、音声検出装置190は、制御装置160の近くに配置することもできる。また、音声検出装置190は、撮像装置150の撮像部151が発する動作音、又は検査室内に流される案内音声を検出する場合には、検査室に配置される。代替的に、音声検出装置190は、音声検出機能を有するコンピューター装置、例えば、パーソナルコンピューター、又はタブレット型端末のようなモバイル端末装置であってもよい。以下では、音声検出装置190がマイクロフォンである例について説明する。
【0029】
[撮像装置]
図2に示すように、撮像装置150は、論理的装置としての撮像制御部161と、撮像記憶部162とを有している。これらは、いずれもコンピューターである制御装置160に設けられている。撮像制御部161は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、及びドライブ回路等を有している。そして、撮像制御部161は、制御装置160のハードウェア資源と、ソフトウェア資源としての制御プログラムとの組合せによる論理的装置として実現される。なお、撮像装置150及び注入装置110は、不図示のインターフェースを介して相互に通信できる。
【0030】
例えば、撮像制御部161は、透視画像に識別情報(画像ID)を付与すること、透視画像に曝射時間のタイミングデータを付与すること、透視画像データを外部(例えば、注入装置110)に送信すること、曝射時間のタイミングデータを外部に送信すること、曝射量データを外部に送信すること、実施した撮像の識別情報を外部に送信すること、及びパーフュージョン検査用の撮像動作のタイムシーケンスデータを外部に送信すること、ができる。また、撮像制御部161は、透視画像データ及び曝射時間データ等を撮像記憶部162に記憶する。なお、制御装置160は、データの入力装置として機能するユーザーインターフェース(不図示)を備えている。
【0031】
撮像記憶部162は、CPUが動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、制御プログラム又はシステムソフトウェア等が格納されるROM(Read Only Memory)、及びハードディスクドライブ等を有している。
【0032】
撮像装置150が作成する曝射の時間データには、例えば曝射開始の時間データ、曝射終了の時間データ、及び曝射の開始から終了までの経過時間の時間データが含まれる。この曝射の時間データは、NTPサーバの時間データ、NTPサーバに基づいて時間が設定された他のタイムサーバの時間データ、これらのサーバに基づいて時間が設定された所定の機器の時間データ、及びこれらのサーバに基づいて時間が設定された撮像装置150の時間データを基準に作成できる。さらに、撮像装置150は、関心領域であるROI(Region of Interest)の画素値を監視するために予備スキャンを行うことができる。その後、撮像装置150は、関心領域の画素値が予め設定された閾値に達した時に本スキャンを行う。また、撮像装置150は、一回の検査で複数回の撮像を行う場合には、それぞれの曝射の時間データを作成する。
【0033】
[注入装置]
注入装置110は、コンピューターであるコンソール120の筐体内に配置された注入制御部121及び注入記憶部122を備えている。さらに、注入装置110は、コンソール120の筐体外面に配置され、所定の画像を表示すると共に、操作パネルとして機能するタッチパネル129を有している。注入制御部121は、CPU、FPGA、及びドライブ回路等を有している。また、注入記憶部122は、CPUが動作するためのシステムワークメモリであるRAM、制御プログラム又はシステムソフトウェア等が格納されるROM、及びハードディスクドライブ等を有している。
【0034】
注入制御部121は、注入記憶部122に記憶された制御プログラム等に基づいて、注入装置110全体を制御すると共に、後述するデータ作成処理を含む各種処理についても統括的に制御する。すなわち、注入制御部121は、注入記憶部122に記憶された制御プログラムに従って、種々の演算、制御及び判別等の処理動作を実行できる。そして、注入制御部121と、注入制御部121が有する各機能部とは、コンソール120のハードウェア資源と、ソフトウェア資源としての制御プログラムとの組合せによる論理的装置として実現される。なお、注入制御部121は、CD(Compact Disc)、又はインターネット上のサーバ等の外部記憶媒体に記憶されたプログラムに従って制御を行うこともできる。
【0035】
また、注入制御部121は、薬液の注入履歴データを作成する履歴作成部124と、音声検出装置190から受信した第1データを取得するデータ作成部125とを備えている。ここで、第1データは、デジタル信号に変換された状態でデータ作成部125に取得される。また、履歴作成部124は、作成した注入履歴データを注入記憶部122に記憶させる。この注入履歴データは、少なくとも薬液の注入開始からの経過時間を含んでいる。また、注入履歴データは、注入速度及び注入量を含んでいてもよい。さらに、注入履歴データは、経過時間と注入圧力(推定値を含む)との関係を示す圧力グラフ、経過時間と注入速度との関係を示す注入速度グラフ、経過時間と注入量との関係を示す注入量グラフ、注入時間(注入継続時間)、注入圧力、薬液種類、造影剤のヨード量、薬液を注入した身体区分又は撮像部位、薬液注入を識別するための識別情報、被写体の識別情報、及び設定した注入プロトコル等のデータを含んでいてもよい。
【0036】
各グラフは、数値データであっても画像データであってもよく、その形式は特に限定されない。一例として、薬液注入を識別するための識別情報には、検査のシリアルナンバー、注入作業ID及び注入日時が含まれる。また、被写体の識別情報には、氏名、被写体ID及び生年月日が含まれる。また、薬液を注入した身体区分には、例えば頭部、胸部及び腹部等の体の一部が含まれる。また、撮像部位には、身体区分内の、例えば心臓、肝臓及び血管等の撮像箇所が含まれる。
【0037】
データ作成部125は、第1データを注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成して、注入記憶部122に記憶させる。共通の時間データとしては、注入装置110において予め設定されている時間データが利用できる。例えば、データ作成部125は、注入開始からの経過時間又は注入開始時間のデータを共通の時間データとして利用できる。一例として、データ作成部125は、第1データのうち注入開始時間以降のデータを、注入開始からの経過時間と関連付けられたデータとして作成する。そして、データ作成部125は、当該データを第2データとして、注入記憶部122に記憶させる。代替的に、データ作成部125は、第1データの取得時刻と、注入開始時刻とを関連付けたデータを、第2データとして注入記憶部122に記憶させてもよい。
【0038】
また、注入制御部121は、第2データから撮像タイミングを判定する判定部126と、撮像タイミングと注入履歴データとに基づいてタイミング表示画像170(図3)を作成する画像作成部127とを備えている。例えば、判定部126は、第2データから撮像開始タイミングを特定して撮像タイミングとして判定する。さらに、判定部126は、第2データから撮像終了タイミングを特定して撮像タイミングとして判定してもよい。
【0039】
一例として、判定部126は、単位時間(例えば10~90msec)における音声信号の平均値が所定の閾値を上回った区間が所定時間(例えば2sec)連続した場合に、当該連続する区間が開始するタイミングを撮像開始タイミングと判定する。さらに、判定部126は、撮像開始タイミングが検出された後、音声信号の平均値が閾値を下回った区間が所定時間(例えば100msecから1sec)連続した場合に、当該連続する区間が開始するタイミングを撮像終了タイミングと判定する。代替的に、判定部126は、音声信号の信号強度が所定値以上となったタイミング、可聴周波数帯域における音量が所定値以上となったタイミング、又は音声信号の周波数が所定の周波数となったタイミングを、撮像タイミングとして判定してもよい。
【0040】
そして、判定部126は、撮像タイミングを注入履歴データと共通の時間データに関連付けて、注入記憶部122に記憶させる。この共通の時間データとしても、注入装置110において予め設定されている時間データが利用できる。例えば、判定部126は、注入開始からの経過時間を共通の時間データとして利用する。この場合、判定部126は、撮像タイミングが注入開始からどの程度の時間が経過した時であるのかを示す情報を注入記憶部122に記憶させる。また、判定部126は、注入開始時刻のデータを共通の時間データとして利用してもよい。この場合、判定部126は、注入開始時刻と対比できる形式で、撮像タイミングの時刻を注入記憶部122に記憶させる。
【0041】
画像作成部127は、一例として、図3に示すようなタイミング表示画像170を作成する。この場合、画像作成部127は、注入履歴データに基づく経過時間を示す経過時間バーTに、撮像タイミングを示すインジケータPS,FS1,FS2を合成する。そして、タイミング表示画像170を作成すると、画像作成部127は、タイミング表示画像170を注入記憶部122に記憶すると共に、タッチパネル129に表示させる。タイミング表示画像170の横軸は、薬液の注入開始タイミングを基準(ゼロ)とする経過時間(sec)を示している。画像作成部127は、経過時間を示す経過時間バーTと、注入プロトコルを示すプロトコル表示欄Pとをタイミング表示画像170に含めている。
【0042】
図3に示すプロトコル表示欄Pには、造影剤を注入する第1フェーズにおいて、注入速度が5.0mL/secであり且つ注入量が47mLであることが示されている。また、造影剤を注入する第2フェーズにおいて、注入速度が3.5mL/secであり且つ注入量が20mLであることが示されている。さらに、生理食塩水を注入する第3フェーズにおいて、注入速度が2.5mL/secであり且つ注入量が20mLであることが示されている。また、図3は、5回のテストスキャン(予備撮像)と、1回の本スキャン(本撮像)を行った例を示している。この例では、注入開始から10.0secを経過した時に1回目のテストスキャンが行われている。そして、5回目のテストスキャンを行ったときに関心領域の画素値が所望の値に到達したため、撮像装置150は、注入開始から25.0secを経過した時に本スキャンを開始している。なお、テストスキャンにおいては、連続的に曝射を行ってもよく、極短時間(例えば、0.5sec)の間隔をおいて間欠的に曝射を行ってもよい。
【0043】
画像作成部127は、経過時間の進行に応じてタイミング表示画像170を変化させる。具体的に画像作成部127は、タイミング表示画像170として、経過時間バーTが経過時間の進行に応じて長くなるようにタイミング表示画像170を変化させる。例えば、図3の例では、ゼロから表示されていた経過時間バーTが、注入開始から26sec経過した時点まで変化した状態を示している。さらに、画像作成部127は、テストスキャンが開始すると、それぞれのテストスキャンの撮像開始タイミングがインジケータPSによって示されるようにタイミング表示画像170を変化させる。さらに、画像作成部127は、本スキャンが開始すると、本スキャンの撮像開始タイミングがインジケータFS1によって示されるようにタイミング表示画像170を変化させる。そして、画像作成部127は、本スキャンが終了すると、本スキャンの撮像終了タイミングがインジケータFS2によって示されるようにタイミング表示画像170を変化させる。
【0044】
代替的に、画像作成部127は、本スキャンの撮像開始タイミングのみ、又は本スキャンの撮像開始タイミング及び撮像終了タイミングのみをタイミング表示画像170に含めてもよい。すなわち、画像作成部127は、テストスキャンの撮像タイミングをタイミング表示画像170に含めなくともよい。なお、インジケータPS,FS1,FS2の形状は、逆三角形、円形、楕円形、上向き三角形、矩形、多角形又は星形であってもよい。また、撮像開始タイミングは、図形ではなく時間を示すテキスト(例えば「10.0」のような文字列)であってもよい。さらに、撮像開始タイミングは、タイミング表示画像内の配色とは異なる所定の色で撮像時間を示す領域を塗り潰すことによって表示してもよい。
【0045】
[音声検出装置]
音声検出装置190は、撮像装置150が発する音である撮像関連音声を検出する。また、撮像関連音声を検出すると、第1データとして音声信号を作成して注入装置110へ送信する。すなわち、音声検出装置190は、入力された音声を音声信号に変換して得られた第1データを注入装置110に送信する。この撮像関連音声は、例えば、制御装置160が撮像のタイミングを報知するために発する報知音、撮像装置150が撮像時に発する動作音、及び撮像装置150が撮像時に発する案内音声等である。報知音とは、撮像の開始から終了までの間に制御装置160が発する音であり、主に操作室内において検出される。動作音とは、撮像時に撮像装置150の撮像部151が発する音であり、主に検査室内において検出される。案内音声とは、例えば、造影剤が注入された後に流される「息を止めて下さい」等の音声ガイダンスであり、主に検査室内において検出される。音声ガイダンスは、撮像装置151が発する電子音声、予め録音されている音声、又は操作室にいるオペレーターが発する音声である。撮像装置150は、当該音声ガイダンスの直後に曝射を行う。
【0046】
音声検出装置190は、注入装置110の注入制御部121から受信した検出開始命令に従って、音声の検出と第1データの送信とを開始してもよい。薬液の注入開始と同時に注入制御部121が検出開始命令を送信することにより、注入履歴データと第1データとの時間を、注入開始タイミングを基準に同期させることができる。これにより、データ作成部125は、注入開始タイミングを基準に音声がいつ検出されたのかを示す第2データを作成できる。
【0047】
第1データは、撮像装置150が発する撮像関連音声の特性を示す特性データを含んでいてもよい。例えば、特性データは、音声の音量又は音圧レベル、及び周波数等の特性を示している。一例として、図4は、音声検出装置190が送信する音声信号の振幅をグラフとして示している。図4において、横軸は時間(sec)を示し、縦軸は音声信号の振幅を示している。ここで、音声信号の振幅は音量(又は音圧レベル)に対応している。図4においては、注入が開始されてから10.0secを経過する前は略無音状態になっており、音声検出装置190は、撮像を報知する報知音を検出していない。そして、音声検出装置190は、経過時間10.0sec、経過時間13.0sec、経過時間16.0sec、経過時間19.0sec、経過時間22.0sec、経過時間25.0secのタイミングで1回目から6回目の報知音を検出している。
【0048】
[データ作成]
図5のフローチャートを参照して、注入装置110が行うデータ作成について説明する。まず、オペレーターは、注入装置110の電源を投入して、音声検出装置190を起動させる。その後、オペレーターは、注入準備が完了すると、注入ヘッド111のスタートボタンを押して注入を開始する。オペレーターの操作に応じて、注入制御部121は、注入プロトコルに従って注入ヘッド111に薬液を注入させる。
【0049】
データ作成部125は、注入を開始すると同時に、音声検出装置190から第1データを取得する(S101)。当該取得に先行して、音声検出装置190は、検出した音声を音声信号に変換して第1データとして注入装置110に送信している。データ作成部125は、受信した第1データを注入履歴データと共通の時間データに関連付けて第2データを作成する(S102)。そして、データ作成部125は、作成した第2データを注入記憶部122に記憶させる。代替的に、音声検出装置190は、注入制御部121からの検出開始命令を受信したときに検出を開始してもよい。この場合、音声検出装置190は、第1データを記憶すると共に、検出開始命令の受信から所定時間が経過した時に第1データを注入装置110へ送信してもよい。
【0050】
撮像制御部161は、予め設定された所定の撮像プランに従って、被写体の撮像部位を撮像部151に撮像させる。すなわち、撮像制御部161は、注入開始から所定時間が経過して、造影剤が撮像部位に到達したタイミングで撮像部151に被写体を撮像させる。そして、撮像制御部161は、撮像部位の透視画像データを得ると共に、透視画像データを撮像記憶部162に記憶する。また、撮像制御部161は、透視画像のデータを外部記憶装置に記憶してもよい。なお、撮像制御部161は、撮像開始タイミングの時間データと撮像終了タイミングの時間データとを撮像記憶部162又は外部記憶装置に記憶させることもできる。
【0051】
データ作成部125は、注入開始又は注入終了から所定時間(例えば、60sec)を経過した後に第1データの取得を停止するか、又は第2データの作成を停止する。これは、注入開始又は注入終了から所定時間が経過して造影剤が撮像部位に到達すると撮像が行われ、その後は撮像が行われないためである。そのため、当該所定時間は、造影剤が撮像部位に到達するのに十分な時間が予め設定されている。代替的に、データ作成部125は、注入開始又は注入終了から所定時間を経過するまでの第1データを注入記憶部122に記憶させ、所定時間が経過した後に第2データを作成してもよい。
【0052】
注入装置110の履歴作成部124は、薬液注入中、薬液注入後、もしくはその両方において、薬液の注入履歴データを作成する。例えば、注入履歴データは、注入開始時間、注入終了時間、及び注入開始からの経過時間等の時間データと、注入開始からの経過時間毎の注入圧力を示す注入圧力データ(又は圧力グラフ)、注入開始からの経過時間毎の注入量を示す注入量データ(又は注入量グラフ)、及び注入開始からの経過時間毎の注入速度を示す注入速度データ(又は注入速度グラフ)を含む。そして、履歴作成部124は、作成した注入履歴データを注入記憶部122に記憶させる。
【0053】
判定部126は、データ作成部125が作成した第2データから撮像開始タイミングを判定する(S103)。具体的に、判定部126は、音声信号の平均値が所定の閾値を上回った区間が所定時間に渡って連続していれば(S104でYES)、当該連続する区間が開始するタイミングを撮像開始タイミングと判定する。そして、判定部126は、撮像開始タイミングが検出された後、音声信号の平均値が閾値を下回った区間が所定時間に渡って連続した場合に、当該連続する区間が開始するタイミングを撮像終了タイミングと判定する(S105)。一方、音声信号の平均値が所定の閾値を上回った区間が所定時間に渡って連続していなけれれば(S104でNO)、判定部126は、第2データの他の区間が撮像開始タイミングであるか否かを判定する。なお、第1データ及び第2データが、撮像関連音声の特性を示す特性データを含んでいない場合、例えば、データ作成部125が第1データとして検出信号を取得する場合、判定部126は、第1データを受信したタイミングが撮像開始タイミングであると判定する。また、判定部126は、第1データを受信しなくなったタイミングが撮像終了タイミングであると判定する。
【0054】
そして、判定部126は、撮像タイミングとして、撮像開始タイミング及び撮像終了タイミングを注入記憶部122に記憶させる(S106)。画像作成部127は、判定部126が判定した撮像タイミングと、履歴作成部124が作成した注入履歴データとを、注入記憶部122から取得する(S107)。そして、データ作成部125は、撮像タイミングを注入履歴データに合成してタイミング表示画像170を作成する(S108)。その後、データ作成部125は、作成したタイミング表示画像170を注入記憶部122に記憶し、データ作成が終了する。なお、注入制御部121は、データ作成部125が作成した第2データ及びタイミング表示画像170の少なくとも一方を、被写体及び透視画像等を識別する情報と関連付けてPACS等の外部記憶装置に記憶させてもよい。一例として、透視画像、注入プロトコル、及び曝射タイミングを一画面に表示させることにより、透視画像の評価に資する情報として利用できる。さらに、テストスキャンの曝射タイミングを同一画面に表示させることによって、関心領域の設定が適切であったか否かを判定することができる。また、注入状況のシミュレーション結果の評価に利用することもできる。
【0055】
そして、画像作成部127は、タイミング表示画像170をタッチパネル129に表示させ、経過時間の進行に応じてタイミング表示画像170を変化させる。なお、画像作成部127は、注入履歴データとして、経過時間及び注入プロトコルの他に、被写体ID、被写体氏名、被写体性別、被写体年齢、検査日時、薬液名、撮像部位、及び注入圧力等の各種データを含むタイミング表示画像170を作成してもよい。
【0056】
タイミング表示画像170によって、オペレーターは、注入開始を基準とする撮像開始タイミングを正確に把握できる。そのため、オペレーターは、透視画像を評価することによって、注入開始から撮像部位に造影剤が到達するまでの時間を把握することができる。特に、造影剤の到達時間は、被写体によって大きく異なるため、被写体毎の到達時間を把握することにより、優れた状態の画像を撮像することができる。さらに、注入履歴データと撮像タイミングとが一つのタイミング表示画像170に含まれて表示されるので、オペレーターは、被写体に対する注入状況及び撮像タイミングと、透視画像との相関関係を確認することができる。従って、所望の透視画像が得られなかった場合であっても、オペレーターは、その原因(例えば、造影剤の到達時間が早いこと)を判断できる。また、第2データは、注入状況のシミュレーション、注入結果又は透視画像の良否判定、及び多変量解析等の様々な用途に利用することができる。
【0057】
[プログラム]
第1実施形態の注入記憶部122には、制御プログラムの一部としてデータ作成プログラムが記憶されている。このデータ作成プログラムに対応して注入制御部121が各種処理を実行することにより、注入制御部121では、履歴作成部124、データ作成部125、判定部126、及び画像作成部127が各種機能として論理的に実現される。このデータ作成プログラムは、薬液の注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータを、コンピューターに作成させるデータ作成プログラムである。そして、データ作成プログラムは、コンピューターを、被写体を撮像している間の音声に基づく第1データを取得するデータ作成部125と、注入履歴データを作成する履歴作成部124として機能させる。また、当該データ作成部125は、第1データを前記注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成する。
【0058】
以上説明した第1実施形態によれば、注入システム100は、薬液の注入履歴データと共通の時間データに関連付けたデータを作成できる。すなわち、撮像装置150から時間データを取得しなくとも、注入システム100は、第1データを注入履歴データと共通の時間データに関連付けた第2データを作成できる。これにより、注入システム100は、注入装置110の時間データと同期された撮像タイミングを注入履歴データに合成して、タイミング表示画像170を作成できる。このタイミング表示画像170によれば、注入開始から撮像開始までの時間を視覚的に理解できる。
【0059】
また、注入開始後に所定の遅延時間をおいて撮像する場合には、先に行った撮像時のタイミング表示画像170及び透視画像を参照して、撮像開始タイミングを設定できる。これにより、被写体の個体差に合わせて撮像開始タイミングを適正化できる。さらに、適正なタイミングで撮像を開始することにより、必要な造影剤量を低減することができる。これにより、副作用のリスク及びコストを低減することができる。また、いわゆるリアルプレップを行う必要がなくなるため、被ばく量を低減することもできる。
【0060】
[変形形態]
音声検出装置190は、第1データとして、所定の条件を満たした音声の検出開始及び検出終了の少なくとも一方を示すデータを注入装置110に送信してもよい。例えば、当該音声検出装置190は、音声を検出するマイクロフォンと、検出制御部として機能するプロセッサとを有している。そして、検出制御部は、検出された撮像関連音声から検出開始及び検出終了を判断する。さらに、検出制御部は、検出開始と判断すると、検出開始を示すデータをシリアル通信で注入装置110に送信する。また、検出制御部は、検出終了と判断すると、検出終了を示すデータをシリアル通信で注入装置110に送信する。図4の6回目の報知音を例に挙げて説明すると、音声検出装置190は、経過時間25.0secのタイミングで検出開始を示す信号を注入装置110に送信する。さらに、音声検出装置190は、経過時間34.7secのタイミングで検出終了を示す信号を注入装置110に送信する。一例として、検出制御部は、音圧レベルが所定レベルを超えた場合に所定の条件が満たされたと判断する。
【0061】
さらに、注入装置110の判定部126は、検出開始を示すデータを取得すると、撮像開始タイミングであると判定して、注入履歴データと共通の時間データに関連付けて、注入記憶部122に記憶させる。そして、判定部126は、検出終了を示すデータを取得すると、撮像終了タイミングであると判定して、撮像終了タイミングを注入履歴データと共通の時間データに関連付けて、注入記憶部122に記憶させる。さらに、判定部126は、撮像開始タイミングから撮像終了タイミングまでの時間が所定時間を超えた場合に、本スキャンが行われたと判定する。そして、判定部126は、本スキャンの撮像開始タイミング及び撮像終了タイミングを、注入履歴データと共通の時間データに関連付けて、注入記憶部122に記憶させる。一例として、所定時間は、2secから5secの間で設定されており、好ましくは2secが設定されている。注入装置110の画像作成部127は、テストスキャン及び本スキャンのそれぞれの撮像開始タイミング及び撮像終了タイミングを、インジケータによって示すように、タイミング表示画像を作成する。
【0062】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0063】
例えば、注入装置110の外部のコンピューターが、判定部126及び画像作成部127の少なくとも一つを備えていてもよい。外部のコンピューターが判定部126を備える場合、判定部126は、音声検出装置190から第1データを取得するか、または注入装置110から第2データを取得する。また、外部のコンピューターが画像作成部127を備える場合、画像作成部127は、注入装置110から注入履歴データを取得する。
【0064】
また、注入システム100は、予め設定された所定のタイミングでデータ作成を行ってもよい。例えば、注入システム100は、注入開始と同時にデータ作成を開始してもよく、注入開始から所定時間を経過したタイミングでデータ作成を開始してもよい。また、音声検出装置190は、作成した第1データを外部又は内部の記憶装置に一時的に記憶させてもよい。第1データが当該記憶装置に記憶されている場合、データ作成部125は、記憶装置から第1データを取得してもよい。また、データ作成部125は、注入装置110の外部の記憶装置に、第2データを記憶させてもよい。第2データが外部記憶装置に記憶されている場合、判定部126は、外部記憶装置から第2データを取得してもよい。
【0065】
また、注入装置110は、注入ヘッド111又は注入ヘッド111の近傍に設けられた、サブディスプレイを備えていてもよい。さらに、注入装置110は、判定部126が判定した撮像タイミングを、検査中及び/又は検査後にサブディスプレイに表示してもよい。これにより、オペレーター又は被写体は、検査中及び/又は検査後に撮像タイミングを確認できる。この場合、撮像タイミングは、撮像時刻をテキスト形式で表示してもよく、又はグラフで表示してもよい。
【0066】
なお、音声検出装置190とコンソール120とは、一体的に構成することができる。また、音声検出装置190と注入ヘッド111とは、一体的に構成することができる。例えば、音声検出装置190は、コンソール120の筐体又は注入ヘッド111の筐体に取り付けることができる。さらに、音声検出装置190は、注入開始と同時に起動して音声の検出を開始し、且つ注入開始から所定時間が経過した時に音声の検出を終了するように構成してもよい。この場合、音声検出装置190は、起動した後に検出した第1データを注入装置110に送信する。
【符号の説明】
【0067】
100:注入システム、110:注入装置、124:履歴作成部、125:データ作成部、126:判定部、127:画像作成部、190:音声検出装置
図1
図2
図3
図4
図5