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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240906BHJP
   F26B 13/08 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B41J2/01 125
F26B13/08 Z
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020060933
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021160089
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】307015301
【氏名又は名称】武藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 元
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237251(JP,A)
【文献】特開2015-066821(JP,A)
【文献】特開2020-023147(JP,A)
【文献】特開2004-331400(JP,A)
【文献】特開平10-278312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
F26B 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の搬送経路の少なくとも一部を形成し前記印刷媒体を支持する媒体支持部と、
前記媒体支持部で支持された前記印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、
前記印刷媒体を前記搬送経路に沿って順方向及び逆方向に搬送する媒体搬送機構と、
前記搬送経路に設けられた乾燥部と、
前記印刷部で印刷された前記印刷媒体が前記搬送経路に沿って前記順方向及び前記逆方向に搬送されることにより前記乾燥部を複数回通過するように、前記媒体搬送機構を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、印刷動作と追加乾燥動作を制御し、前記追加乾燥動作の対象範囲として、1印刷分、複数印刷分、又は、前記印刷媒体の搬送方向距離を指定可能に構成されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷媒体は長尺状であり、
前記媒体搬送機構は、
前記印刷媒体を前記搬送経路に供給する供給部と、
前記印刷媒体を前記搬送経路から収容する収容部と、
前記供給部と前記収容部との間に設けられ前記印刷媒体を搬送する搬送ローラと、
を有し、
前記制御部は、前記印刷動作時は、前記収容部及び前記搬送ローラを制御して前記印刷媒体を前記順方向に搬送させ、前記追加乾燥動作時は、前記供給部を制御して前記印刷媒体を前記逆方向に搬送させ、前記収容部を制御して前記印刷媒体を前記順方向に搬送させる
請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記乾燥部は、前記印刷部に対して前記順方向の上流側及び下流側に設けられている
請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送ローラは、前記印刷部に対して前記供給部側に設けられ、前記印刷媒体の前記印刷動作時に前記印刷媒体を挟んで前記順方向に駆動する駆動ローラと圧力ローラとを有し、
前記圧力ローラは、前記追加乾燥動作時には、前記駆動ローラから離間する
請求項2記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記印刷媒体の種類、前記印刷媒体に印刷されたインクの種類、及び前記インクの総使用量、の少なくとも一つに基づいて、前記印刷媒体の、搬送方向が反転する回数、前記逆方向への第1搬送距離、及び前記順方向への第2搬送距離、の少なくとも一つを決定する
請求項1記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記印刷媒体の種類、前記印刷媒体に印刷されたインクの種類、及び前記インクの総使用量、の少なくとも一つに基づいて、前記印刷媒体の前記逆方向への第1搬送速度、及び前記順方向への第2搬送速度、の少なくとも一つを決定する
請求項1記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状の印刷媒体を搬送して印刷を行うインクジェットプリンタは、印刷後の印刷媒体も同様にロール状に巻き取って収容する場合がある。そのため巻き取り収容の際、印刷媒体同士が接触して起こるインク移りやインクにじみ等を防止するため、巻き取り収容の前に、搬送経路において乾燥装置等によりインクの乾燥を十分に行う必要がある。
【0003】
インクの乾燥方法として、印刷媒体の搬送経路背面に乾燥用ヒータを配置し、ヒータ近傍を印刷媒体が通過することで印刷媒体を加熱し、インクの乾燥を促進する手段が知られている。他にも、搬送経路近傍に設けた送風機構により印刷媒体に乾燥空気を吹き付ける手段、又は赤外線やマイクロ波等のエネルギーを与えて乾燥を促進する手段等、種々のインク乾燥手段が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載された印刷装置においては、印刷後の印刷媒体に対して搬送経路に設けた送風機構により乾燥空気を吹き付けることで、インクの乾燥を促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6498522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインク乾燥手段は、印刷媒体へインクが吐出された後、印刷媒体が収容部へ搬送される経路において、ヒータや被送風領域を通過するものであった。その場合、印刷媒体が搬送経路に設けられた前記のような乾燥促進機構を通過する回数は、一回限りであった。しかしながら、印刷媒体の種類、インクの種類、及び印刷後のラミネート加工など後処理の有無、等の印刷条件が異なると、必要な乾燥時間も大きく異なってくる。よって、上記特許文献1に開示された印刷装置は、様々な印刷条件において、いつでも十分にインクを乾燥させることが困難である。
【0007】
例えば、樹脂系の印刷媒体に、有機溶剤系のインクで印刷を行った場合、乾燥に要する時間が長くなることがある。その場合、印刷装置における乾燥処理だけでは足りず、更に完全に乾燥するまでの一定時間、媒体を外部に放置する必要が生じる。この場合、インクの乾燥時間を含めた印刷工程終了までに、長時間を要することになる。
【0008】
また、印刷後に印刷媒体の表面にラミネート加工を行い、最終製品形態とする場合がある。従来の印刷装置における乾燥作業だけでは、ラミネート加工を行うには乾燥が不完全な場合がある。乾燥が不完全な状態でラミネート加工を行うと、密閉されたラミネートと印刷媒体の間においてインク溶剤の蒸発が起こり、インクにじみ等が発生して最終製品としての印刷物の品質に劣化が生じる場合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、印刷媒体のインクの乾燥を促進し、乾燥時間を短縮することを可能とする。また印刷後のロール状に巻き取られた印刷物に対してインクの追加の乾燥を行なう事を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る印刷装置は、印刷媒体の搬送経路の少なくとも一部を形成し印刷媒体を支持する媒体支持部と、媒体支持部で支持された印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、印刷媒体を搬送経路に沿って順方向及び逆方向に搬送する媒体搬送機構と、搬送経路に設けられた乾燥部と、印刷部で印刷された印刷媒体が搬送経路に沿って順方向及び逆方向に搬送されることにより乾燥部を複数回通過するように、媒体搬送機構を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷後の印刷媒体のインクの乾燥時間を短縮することを可能とする。
また印刷後のロール状に巻き取られた印刷媒体に対し、製品で使用されている構造をそのまま用いてインク乾燥を追加で行なう事を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る印刷装置を概略的に示す模式図である。
図2】同装置の制御部を含む制御系統を示すブロック図である。
図3】同装置の印刷動作を示すフローチャートである。
図4】同装置の乾燥動作を示すフローチャートである。
図5】同装置の乾燥動作を示す模式図である。
図6】同装置の乾燥動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る印刷装置を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
[第1の実施形態]
[装置構成]
図1は、第1の実施形態に係る印刷装置を概略的に示す模式図である。図2は、第1の実施形態に係る印刷装置の制御部を含む制御系統を示すブロック図である。なお、以下の実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されたり、一部の構成要素が省略されて示されたりする場合がある。
【0015】
第1の実施形態に係る印刷装置1は、例えば、図示しない外部コンピュータ装置とインターフェースを介して接続される。印刷装置1は、外部コンピュータ装置から出力される画像データに基づいて、印刷媒体Mへとインク液滴を吐出することにより印刷を行うインクジェットプリンタ装置である。図1に示す通り、印刷装置1は、印刷装置部2と印刷装置制御部3を含む。
【0016】
印刷装置部2は、印刷媒体Mを供給する供給部10と、印刷媒体Mを支持する媒体支持部20と、印刷媒体Mの未印刷領域Maを加圧して印刷部40へ対面する位置へと搬送する搬送ローラ30と、印刷媒体Mにインクを印刷する印刷部40と、印刷媒体Mの既印刷領域Mbのインクを乾燥させる乾燥部50と、印刷後の印刷媒体Mを収容する収容部60と、を備える。
【0017】
印刷媒体Mは、例えば長尺用の紙、布、樹脂シート等の媒体である。印刷前においては、印刷媒体Mは、未印刷領域Maを含む長尺シート状の媒体がロール状に巻かれた印刷媒体ロールM1として、供給部10にセットされる。印刷後においては、印刷媒体Mは、既印刷領域Mbを含む媒体がロール状に巻かれた既印刷媒体ロールM2として、収容部60にセットされる。印刷媒体Mは、供給部10と収容部60との間において、印刷のされていない未印刷領域Maと、印刷のされている既印刷領域Mbを含む。
【0018】
供給部10は、例えば供給ローラであって、収容部60の駆動に従動して印刷媒体Mを搬送経路へ供給する機能、及び印刷媒体Mを搬送経路から巻き取る機能を有する。供給部10は、例えば、印刷媒体ロールM1、及び印刷媒体ロールM1を保持する供給軸11を備える。
【0019】
媒体支持部20は、支持台21に支持され、供給部10と収容部60との間に設けられる。媒体支持部20は、印刷媒体Mの搬送経路の少なくとも一部を形成すると共に印刷媒体Mが順方向及び逆方向に搬送される際に印刷媒体Mを支持するプラテン等の支持部である。なお、ここで「順方向」とは、印刷媒体Mが供給部10から収容部60へ向かう方向を言う。また、「逆方向」とは、印刷媒体Mが収容部60から供給部10へ向かう方向である。
【0020】
搬送ローラ30は、媒体支持部20において、印刷部40の近傍の供給部10側の位置に設けられる。搬送ローラ30は、駆動ローラ31及び加圧ローラ32を含む。加圧ローラ32は駆動ローラ31に対して昇降駆動される。加圧ローラ32がONされた際には、加圧ローラ32が下降して駆動ローラ31との間で印刷媒体Mを挟み込んだ状態で、駆動ローラ31が回転動作することにより、印刷媒体Mを順方向に搬送する。加圧ローラ32は、印刷動作時にはONとなり印刷媒体Mを順方向に搬送するが、後述する追加乾燥動作時にはOFFとなり駆動ローラ31から離間して印刷媒体Mの加圧及び搬送を行わない。
【0021】
印刷部40は、供給部10と収容部60の間において、媒体支持部20に対面する位置に設けられる。印刷部40は、印刷媒体Mへ画像を印刷する機能を有する。印刷部40は、例えば、印刷ヘッド41、及びYレール42を含む。
【0022】
印刷ヘッド41は、画像データに応じたインクを吐出して、印刷媒体Mに対して印刷を行う。印刷ヘッド41のインク吐出面は、媒体支持部20に載置された印刷媒体Mの印刷面に水平に対向配置されている。
【0023】
Yレール42は、印刷ヘッド41がX軸方向と直交するY軸方向へ移動するためのガイドレールである。印刷ヘッド41による印刷は、印刷媒体Mが搬送ローラ30によって媒体支持部20の上面で主走査方向(図中X方向)に搬送されつつ、印刷ヘッド41がYレール42に沿って副走査方向(図中Y方向)に駆動されることにより、所定の印刷範囲に対して実行される。
【0024】
乾燥部50は、供給部10と収容部60の間において、搬送経路近傍に配置される。乾燥部50は、印刷媒体Mを昇温し、印刷媒体Mのインクの乾燥を促進させる。乾燥部50は、例えば、供給側ヒータ51、収容側ヒータ52、送風機構用ヒータ53、送風機構54を含む。
【0025】
供給側ヒータ51は、媒体支持部20における印刷ヘッド41に対面する位置と、供給部10と、の間に位置し、媒体支持部20の媒体支持面に設けられる。供給側ヒータ51は、後述する追加乾燥動作の際に、印刷媒体Mを昇温し、印刷媒体Mのインクの乾燥を促進させる。
【0026】
収容側ヒータ52は、媒体支持部20における印刷ヘッド41に対面する位置と、収容部60と、の間に位置し、媒体支持部20の媒体支持面に設けられる。収容側ヒータ52は、印刷動作の際、及び後述する追加乾燥動作の際に、印刷媒体Mを昇温し、既印刷領域Mbのインクの乾燥を促進させる。
【0027】
送風機構用ヒータ53及び送風機構54は、搬送経路の近傍に設けられ、搬送経路に対して温風を供給する。例えば、送風機構用ヒータ53は、送風機構54と、搬送経路の間に設けられる。送風機構用ヒータ53及び送風機構54は、印刷動作の際、及び後述する追加乾燥動作の際に、既印刷領域Mbのインク溶媒の揮発を促進し、印刷媒体Mのインクの乾燥を促進させる。
【0028】
収容部60は、例えば巻取ローラであり、印刷媒体Mを搬送経路から巻き取って収容する機能、及び供給部10の駆動に従動して印刷媒体Mを媒体支持部20へ供給する機能を有する。収容部60は、例えば、既印刷媒体ロールM2、及び既印刷媒体ロールM2を保持する収容軸61を備える。
【0029】
なお、本実施形態における供給部10、搬送ローラ30及び収容部60は、印刷媒体Mの搬送に関わる媒体搬送機構を構成する。
【0030】
印刷装置制御部3は、これらの各部を駆動制御する機能を有する。図2は、印刷装置制御部3とその制御対象からなる制御体系を示すブロック図である。印刷装置部2には、印刷装置制御部3によって制御されるX軸方向駆動部101、Y軸方向駆動部102、供給軸駆動部103、収容軸駆動部104、印刷ヘッド駆動部105、供給側ヒータ駆動部106、収容側ヒータ駆動部107、送風機構用ヒータ駆動部108及び送風機構駆動部109が備えられている。これらはそれぞれ、X軸モータ33、Y軸モータ43、供給軸モータ12、収容軸モータ62、印刷ヘッド41、供給側ヒータ51,収容側ヒータ52,送風機構用ヒータ53及びファン(送風機構54)をそれぞれ駆動する。X軸モータ33は、駆動ローラ31を駆動する。Y軸モータ43は、印刷ヘッド41をYレール42に沿って駆動する。
【0031】
印刷装置制御部3は、画像データに基づき、印刷媒体Mへの印刷動作を制御する。印刷媒体Mへの印刷は、印刷ヘッド41と印刷媒体Mとの相対的な位置関係を変化させながら、印刷ヘッド41がインク液滴を吐出することによって行われる。印刷ヘッド41と印刷媒体Mとの相対的位置関係の制御は、印刷装置制御部3によって指示されたX軸方向駆動部101及びY軸方向駆動部102が、それぞれX軸モータ33及びY軸モータ43を駆動し、それにより駆動ローラ31及び印刷ヘッド41を駆動することにより行われる。印刷ヘッド41へのインク液滴の吐出制御は、印刷装置制御部3の制御のもと、印刷ヘッド駆動部105を駆動して行われる。また、供給軸駆動部103及び収容軸駆動部104をそれぞれ制御することにより、印刷媒体Mを緩み無く収容部60側又は供給部10側に適宜搬送する。
【0032】
また、印刷装置制御部3は、印刷条件データ又はユーザ入力情報に基づき、追加乾燥動作を制御する。追加乾燥動作は、乾燥部50を動作させた状態で、印刷媒体Mの既印刷領域Mbを、搬送経路内で往復搬送させる動作である。追加乾燥動作は、印刷媒体Mの既印刷領域Mbが、乾燥部50の乾燥対象領域を繰り返し通過するように動作させることで、既印刷領域Mbの乾燥を促進する。
【0033】
[印刷動作]
次に、印刷装置1の印刷動作について図3を用いて説明する。図3は、第1の実施形態に係る印刷装置の印刷動作を示すフローチャートである。
【0034】
まず、ステップS1において、印刷媒体Mとして、例えば、印刷用紙のセットを行う。用紙のセットは、印刷媒体ロールM1を供給軸11にセットし、印刷媒体ロールM1から引き出した印刷媒体Mを、媒体支持部20を経由させた後、収容部60の収容軸61へと巻き付けることによって行う。
【0035】
次に、ステップS2において、加圧ローラ32をONにする。これにより、加圧ローラ32が駆動ローラ31に向かって下降し、媒体支持部20上の印刷媒体Mが、駆動ローラ31と加圧ローラ32とで挟持され、搬送ローラ30による印刷媒体Mの搬送が可能になる。
【0036】
次に、ステップS3において、供給部10の動作をOFF(フリー状態)にし、収容部60の動作をONにし、印刷媒体Mが順方向へ搬送可能な状態に準備する。
【0037】
次に、ステップS4において、収容側ヒータ52をONにし、既印刷領域Mbが通過する収容側ヒータ52近傍の媒体支持部20の媒体支持面を昇温する。このとき、供給側ヒータ51は、OFFとする。
【0038】
次に、ステップS5において、送風機構54及び送風機構用ヒータ53をONにし、搬送経路に対して温風の送風を開始する。
【0039】
次に、ステップS6において、外部コンピュータ装置から送信される画像データに基づいて、印刷を開始する。印刷装置制御部3は、印刷ヘッド41と印刷媒体Mとの相対的な位置関係の制御と、それと協調した印刷ヘッド41の制御を行う。印刷ヘッド41は、当該位置をY軸方向に移動させながら、印刷媒体Mへインク液滴を吐出する動作を開始する。
【0040】
次に、ステップS7において、搬送ローラ30により、順方向へ所定の移動量で印刷媒体Mを搬送する。即ち、印刷媒体Mを、印刷ヘッド41に対して正のX軸方向に所定の移動量で移動させる。正のX軸方向への移動の後、再び印刷ヘッド41をY軸方向に移動させながらインクの吐出を行う。以上の動作の繰り返しにより、搬送方向である順方向において、設定範囲の印刷を行う。
【0041】
ステップS7に応じて、既印刷領域Mbは順方向へ搬送され、収容側ヒータ52の近傍で加熱されインクの乾燥が行われる。また、更に順方向へ搬送された部分においては、送風機構54の近傍を通過し、送風によりインクの乾燥動作が行われる。
【0042】
このとき、ステップS8に示すように、ステップS6のインク吐出及びステップS7の乾燥動作に伴い、フリー状態の供給部10からは印刷媒体Mが供給される。また同時に収容部60を動作させ、印刷媒体Mの巻き取りと収容動作を行っても良い。
【0043】
次に、ステップS9において、受信した1つ、又は複数の画像データの印刷を終了する。
【0044】
次に、ステップS10において、収容部60による印刷媒体Mの巻き取り収容を開始する。なお、ステップS10の時点で、既印刷領域Mbの乾燥が完了しており、後述する追加乾燥機能を動作させない場合は、既印刷領域Mbの後端部まで印刷媒体Mを収容部60に巻き取り、そのまま収容部から印刷媒体Mの取り外しを行っても良い。
【0045】
次に、ステップS11において、供給部10及び収容部60の動作をOFFし、印刷媒体Mの搬送を停止する。
【0046】
次に、ステップS12において、収容側ヒータ52をOFFにし、搬送経路の昇温を停止する。供給側ヒータ51は、この時点でもOFFのままとする。
【0047】
次に、ステップS13において、送風機構用ヒータ53、及び送風機構54をOFFにし、搬送経路に対する温風の送風を停止する。
【0048】
次に、ステップS14において、印刷動作を終了する。
【0049】
[追加乾燥動作]
次に、印刷装置1の追加乾燥動作について、図4図6を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係る印刷装置の乾燥動作を示すフローチャートである。図5及び図6は、第1の実施形態に係る印刷装置の乾燥動作を示す模式図である。
【0050】
まず、ステップS101において、加圧ローラ32をOFFする。加圧ローラ32のOFFに伴い、図5及び図6に示す通り、加圧ローラ32は駆動ローラ31から遠ざかる方向に上昇して停止する。これにより、媒体支持部20上の印刷媒体Mの上面が加圧ローラ32と接しない様、印刷媒体Mと加圧ローラ32の間に一定の空間を設ける。
【0051】
次に、ステップS102において、追加乾燥機能をONにし、印刷媒体Mの既印刷領域Mbの追加乾燥動作を開始する。
【0052】
次に、ステップS103において、追加乾燥動作の対象範囲を設定する。対象範囲として、1つの画像データに基づく1印刷分、複数の画像データ又は繰り返し印刷に基づく複数印刷分、又は、印刷媒体Mの搬送方向距離(長さ)、等を指定しても良い。
【0053】
次に、ステップS104において、印刷媒体Mが順方向及び逆方向へと搬送方向を反転して搬送経路を往復する回数を設定する。往復回数は、ユーザにより回数の入力を行っても良い。また、印刷装置制御部3が、必要乾燥時間に関する複数のパラメータから自動で決定した往復回数を設定しても良い。なお、必要乾燥時間に関する複数のパラメータとして、印刷媒体Mの種類、インクの種類、画像印刷に要したインク総量、ラミネート加工等の後処理の方法、等を用いても良い。
【0054】
また、ステップS104において、印刷媒体Mが搬送経路を往復する際に、乾燥部50を通過する際の通過速度を設定しても良い。通過速度は、ユーザにより通過速度の入力を行っても良い。また、印刷装置制御部3が、必要乾燥時間に関する複数のパラメータから自動で決定した通過速度を指定しても良い。なお、必要乾燥時間に関する複数のパラメータとしては、前述した往復回数と同様のものを用いても良い。
【0055】
次に、ステップS105において、供給側ヒータ51及び収容側ヒータ52をONにし、供給側ヒータ51及び収容側ヒータ52近傍の媒体支持部20をそれぞれ昇温する。
【0056】
次に、ステップS106において、送風機構54及び送風機構用ヒータ53をONにし、搬送経路に対して温風の送風を開始する。
【0057】
次に、ステップS107において、供給部10の動作をONにし、収容部60の動作をOFFにし、印刷媒体Mが逆方向へ搬送可能な状態に準備する。
【0058】
次に、ステップS108において、印刷媒体Mの逆方向への搬送を開始する。逆方向への搬送は、供給部10の巻き取り動作によって行う。このとき、搬送ローラ30はOFFのため、加圧ローラ32に、乾燥が完了していない既印刷領域Mbのインクが色移りすることは防止される。逆方向への搬送により、図5に示す様に、既印刷領域Mbが収容部60の方へ搬送され、既印刷領域Mbが送風機構54、収容側ヒータ52、及び供給側ヒータ51により再び乾燥処理される。
【0059】
次に、ステップS109において、印刷媒体MがステップS103で設定した設定範囲分について、逆方向への搬送が完了したかについて判定を行う。搬送が完了していない場合は、ステップS108の逆方向への搬送を継続する。搬送が完了した場合は、ステップS110へと進む。なお、ステップS109において、既印刷領域Mbが逆方向へ搬送されて、未乾燥のまま供給部10にて巻き取られないよう、供給部10に達する前に逆搬送を停止する様に、追加の判定処理を行っても良い。
【0060】
次に、ステップS110において、印刷媒体Mの搬送方向を順方向へ再度反転させる。
【0061】
次に、ステップS111において、供給部10の動作をOFFにし、収容部60の動作をONにし、印刷媒体Mが再度、順方向へ搬送可能な状態に準備する。
【0062】
次に、ステップS112において、収容部60の巻き取り動作を開始し、印刷媒体Mの順方向への搬送を開始する。図6に示す通り、印刷媒体Mは再び順方向へ搬送され、供給側ヒータ51、収容側ヒータ52、及び送風機構54の送風対象領域を再び通過し、既印刷領域Mbの乾燥が促進される。
【0063】
次に、ステップS113において、ステップS109と同様に、印刷媒体Mが設定範囲分について、順方向への搬送が完了したかについて判定を行う。搬送が完了していない場合は、ステップS112の、用紙の順方向への搬送を継続する。順方向への搬送が完了した場合は、ステップS114へと進む。
【0064】
次に、ステップS114において、印刷媒体Mの往復搬送が、ステップS104で設定した往復回数分行われたかどうかの判定を行う。往復回数が、設定往復回数に達していない場合は、ステップS107へ戻り、再度、印刷媒体Mを逆方向へと搬送するステップから繰り返す。設定往復回数分の搬送が完了した場合は、ステップS115へ進む。
【0065】
次に、ステップS115において、収容部60による巻き取り動作を行い、収容部60位置まで、印刷後の印刷媒体Mの後端部を搬送し、既印刷領域Mbを既印刷媒体ロールM2に収容する。
【0066】
次に、ステップS116において、供給側ヒータ51及び収容側ヒータ52をOFFにし、搬送経路の昇温を停止する。
【0067】
次に、ステップS117において、送風機構用ヒータ53、及び送風機構54をOFFにし、搬送経路への送風を停止する。
【0068】
次に、ステップS118において、供給部10及び収容部60の動作をOFFし、印刷媒体Mの搬送を停止する。
【0069】
次に、ステップS119において、追加乾燥機能をOFFにし、追加乾燥動作を終了する。
【0070】
[第1の実施形態の効果]
インクの乾燥に要する時間は、印刷媒体Mの種類、インク種、使用インク総量、ラミネート等の後処理の有無、様々な要因によって異なる。短時間の乾燥時間で乾燥できる条件おいては、追加乾燥機能を要することなく乾燥が可能な場合もあるが、長時間の乾燥時間を要する印刷条件の場合は、印刷終了後にさらに長時間の放置による自然乾燥等が必要となる。
【0071】
本実施形態においては、印刷装置制御部3の搬送方向反転制御により、乾燥部50を動作させた状態で印刷媒体Mを往復搬送し、乾燥部50の乾燥対象領域を繰り返し通過させることで、インクの乾燥を促進することができる。特に、長時間の乾燥時間を要する印刷条件において、乾燥時間を大幅に短縮することが可能となる。また印刷を終了した後に
追加の乾燥機能を使用することができるので、印刷だけを先に行いその後に乾燥だけを実施することが可能である。そのため印刷装置で印刷したものを一度外した後に再度設置して乾燥だけを行うことも可能であるため、用途に合わせての対応が可能である。
【0072】
また、本実施形態における追加乾燥機能は、搬送経路近傍に配置された乾燥部50を利用するため、新たな乾燥機構を付加する必要がない。よって、追加乾燥機能の追加による装置の大型化、製造コスト増加を招くことなく、短時間で良品質の印刷物を製造する印刷装置を提供することが可能となる。また加圧ローラ32は追加乾燥動作時にONとしても良いが、OFFとすることで印刷された表面を搬送により傷つけることをなくしている。
追加乾燥機能は動作を1回以上行うと良いが、必ずしも収容側にて終了させる必要はなく、問題がなければ供給側に戻す動作で終了をさせてもよい。その場合には供給側に印刷後の印刷媒体が巻き戻されているので、その状態で外すと印刷された順番にて印刷結果を引き出すことも可能である。
【0073】
[その他の実施形態]
その他、図示は省略するが、本発明に係る印刷装置部2については、例えば、供給側ヒータ51、及び収容側ヒータ52が、搬送経路近傍に複数設けられていてもよい。また、乾燥部50として、第1の実施形態においてはヒータ及び送風機構を例示したが、乾燥部50が、赤外線加熱機構、マイクロ派加熱機構など、複数の乾燥促進機構を他に含んでいても良い。また印刷媒体の搬送において印刷媒体にテンションを付加して搬送を行うテンションバーを使用する構造等を設けてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 印刷装置
2 印刷装置部
3 印刷装置制御部
10 供給部
20 媒体支持部
30 搬送ローラ
40 印刷部
50 乾燥部
51 供給側ヒータ
52 収容側ヒータ
53 送風機構用ヒータ
54 送風機構
60 収容部
M 印刷媒体
Ma 未印刷領域
Mb 既印刷領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6