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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20240906BHJP
   E04H 6/06 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/18 603
E04H6/06 W
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020064435
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161748
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】野上 達矢
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-214379(JP,A)
【文献】実開平04-090645(JP,U)
【文献】実開平07-004711(JP,U)
【文献】特開2003-129687(JP,A)
【文献】特開2021-139153(JP,A)
【文献】特開2019-132044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパレットと当該パレットを昇降させる昇降機構を有し、前記パレットに車両を搭載して当該車両を立体的に駐車させる、機械式駐車装置において、
前記昇降機構は、モータによって前記パレットを昇降するものであり、
外部から前記モータに供給される電流又は電圧、あるいは
前記モータが発生する電流又は電圧を
検知する検知手段と、
前記パレットの降下を阻止する
非常降下停止手段と、
前記パレットの昇降を制御する
制御手段と
を有し、
当該制御手段は、異常降下監視制御を実行し、
前記異常降下監視制御は、
前記パレットを上昇又は降下させるための信号が出力された後、
前記検知手段が所定の電流又は電圧を検知しなかった場合に、
前記非常降下停止手段を作動させ、前記パレットの降下を阻止し、
また、パレットストッパを有し、
当該パレットストッパは、突出姿勢と退避姿勢とをとることが可能であり、
前記パレットストッパが前記突出姿勢であるとき、
前記パレットは、
前記パレットストッパが設けられた位置を通過して、
上昇することが可能であるが、
降下することは阻止され、
前記パレットストッパが前記退避姿勢であるとき、
前記パレットは、
前記パレットストッパが設けられた位置を通過して
上昇及び降下することが可能であり、
さらに、前記パレットを上昇させる際に、
前記パレットストッパを突出姿勢にすると共に、又は、
前記パレットストッパを退避姿勢から突出姿勢にすると共に、
前記異常降下監視制御を実行することを特徴とする機械式駐車装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記異常降下監視制御を実行する監視状態と、前記異常降下監視制御を実行しない監視停止状態を切り替えることが可能であり、
前記パレットを降下させる際に、
前記パレットストッパを退避姿勢のまま維持しつつ、又は、
前記パレットストッパが突出姿勢である場合には、
前記パレットストッパを退避姿勢に移行し、また、
移行のための信号出力、又該移行完了を契機として、
前記監視状態に切り替わることを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項3】
縦横の行列状にパレット収容エリアと、前記パレットを横方向にも移動させる横行モータとを有し、
前記制御手段は、当該横行モータを用いて、前記パレットを横方向に移動させて、横方向に並んだ他の収容エリアに当該パレットを移動させることが可能であり、
前記パレットを横方向に移動させるのに先立って、他のパレットを上下方向に退避させる場合、当該退避させるパレットに対して前記異常降下監視制御を実行することを特徴とする請求項1、又は2に記載の機械式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式の駐車装置に関するものであり、特にチェーン等でパレットを昇降させる機構を備えた機械式駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
限られた面積の土地を有効利用し、より多数の自動車を駐車させる装置として、機械式駐車装置が知られている。
機械式駐車装置は、自動車を立体的に駐車させる装置である。代表的な機械式駐車装置は、自動車を載置するパレットと、このパレットを昇降させる昇降装置を有している。
機械式駐車装置では、車両出入り部からパレット収容エリアに自動車を導入し、パレットに自動車を載置し、パレットを昇降して所定の階に自動車を配置する。また、パズル式立体駐車装置と称されるものは、パレットを昇降させるだけでなく、パレットを横行させる機能も備えている。立体駐車装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-214379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1はパズル式立体駐車装置であり、昇降および横行するパレットを備えている。特許文献1には、インバータがトリップを起こした場合の問題点を解決する方法が開示されている。
以下、説明する。
特許文献1に開示された立体駐車装置は、昇降装置のモータとして、電磁ブレーキ付きのモータが採用されている。当該モータは、電磁ブレーキに通電することにより制動が解除され、通電を停止すると制動がかかる。
パレットの上昇時に、インバータがトリップして電動モータの駆動トルクが消失すると、上昇力がなくなってパレットが自重で落下を始め、モータは、パレットの重力降下の作用で強制的に回転される。そして時間の経過とともに、パレットの下降速度が次第に増速することになる。
ここでモータの定格回転数は、例えば1800rpmであるが、重力降下の作用で強制的に回転されることによって、その回転数が、2200rpm以上に達する。
特許文献1に開示された発明では、モータの回転数が、2200rpm以上になると、危険回転領域になり、モータの回転数を検知する検出器が緊急に動作する。
【0005】
検出器は、モータの回転数が危険回転領域に入ると、その信号を制御盤に入力し、制御盤がインバータとモータへの通電を停止する。そして、モータを空転状態にして、電磁ブレーキの通電も解除される。前記した様に、電磁ブレーキは、通電を停止すると制動がかかるものであるから、モータが制動され、パレットの降下が停止する。
しかしながら、特許文献1において、モータの回転数が危険領域に達する前までの期間、すなわち正常時の下降速度よりも早く落下するまでの期間では、パレットの停止が行われず、パレットが落下し、危険であるという課題がある。
【0006】
本発明は、従来技術の上記した課題に注目し、異常が発生した場合、より早くその異常を検知し、パレットの落下を防止する機械式駐車装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために開発された本発明の一つの態様は、当該パレットを昇降させる昇降機構を有し、前記パレットに車両を
搭載して、当該車両を立体的に駐車させる機械式駐車装置において、
前記昇降機構は、モータによって前記パレットを昇降するものであり、
外部から前記モータに供給される電流又は電圧、あるいは前記モータが発生する電流又は電圧を検知する検知手段と、前記パレットの降下を阻止する非常降下停止手段と、前記パレットの昇降を制御する制御手段とを有し、
当該制御手段は、前記パレットを上昇又は降下させるための信号が出力された後、前記検知手段が所定の電流又は電圧を検知しなかった場合に、前記非常降下停止手段を作動させ、前記パレットの降下を阻止させる異常降下監視制御を実行することを特徴とする機械式駐車装置である。
【0008】
本態様の機械式駐車装置は、パレットの昇降を制御する制御手段を有している。当該制御手段は、パレットを上昇又は降下させるための信号が出力された後、検知手段が所定の電流又は電圧を検知しなかった場合に、非常降下停止手段を作動させ、パレットの降下を阻止する。
本態様の機械式駐車装置では、パレットが異常な速度で降下しているか、その前兆があることを検知手段が検知すると、非常降下停止手段が作動してパレットの降下を阻止する。そのためパレットが予期しない速度で落下することが防止される。
本態様によれば、例えば、インバータがトリップを起こした場合など、モータに電力が供給されず、モータで制動できなくなり、パレットが自重で落下を始めると、モータの回転数が危険領域に達するまでに非常降下停止手段が作動し、パレットの降下を阻止する。
【0009】
好ましい態様は、前記昇降機構はチェーンを有し、当該チェーンが前記パレットに接続され、前記モータと前記チェーンが動力伝動機構を介して常時係合し、前記チェーンを前記モータによって走行させることによって、前記パレットが昇降する機械式駐車装置である。
【0010】
さらに好ましい態様は、パレットストッパを有し、突出姿勢と退避姿勢とをとることが可能である。前記パレットストッパが前記突出姿勢であるとき、前記パレットは、前記パレットストッパが設けられた位置を通過して上昇することが可能であるが、降下することは阻止され、前記パレットストッパが前記退避姿勢であるとき、前記パレットは、前記パレットストッパが設けられた位置を通過して上昇及び降下することが可能である。
前記パレットを上昇させる際には、前記パレットストッパを突出姿勢にすると共に、又は、前記パレットストッパを退避姿勢から突出姿勢にすると共に、前記異常降下監視制御を実行する機械式駐車装置である。
【0011】
本態様の機械式駐車装置は、パレットストッパを有し、パレットが上昇する際、異常降下監視制御を実行しながら、パレットストッパを突出姿勢とする。その結果、パレットストッパによってパレットの落下が防止されるので、より安全性が高い。
【0012】
さらに好ましい態様は、パレットストッパを有し、当該パレットストッパは、突出姿勢と退避姿勢をとることが可能であり、
前記パレットストッパが前記突出姿勢であるとき、前記パレットは、前記パレットストッパが設けられた位置を通過して上昇することが可能であるが、降下することは阻止され、
前記パレットストッパが前記退避姿勢であるとき、前記パレットは、前記パレットストッパが設けられた位置を通過して上昇及び降下することが可能であり、
前記制御手段は、前記異常降下監視制御を実行する監視状態と、前記異常降下監視制御を実行しない監視停止状態を切り替えることが可能であり、
前記パレットを降下させる際に、前記パレットを降下させる際に、前記パレットストッパを退避姿勢のまま維持させ、又は、前記パレットストッパが突出姿勢である場合には、前記パレットストッパを退避姿勢に移行させ、前記パレットストッパを前記退避姿勢に移行させるための信号出力又は前記退避姿勢への移行完了を契機として、前記監視状態に切り替わる機械式駐車装置である。
【0013】
本態様の機械式駐車装置では、制御手段は、前記異常降下監視制御を実行する監視状態と、前記異常降下監視制御を実行しない監視停止状態を切り替えることが可能であり、前記パレットを降下させる際に、前記パレットストッパを退避姿勢のまま、又は、前記パレットストッパが突出姿勢である場合には、前記パレットストッパを退避姿勢に移行させ、前記パレットストッパを前記退避姿勢に移行させるための信号出力又は前記退避姿勢への移行完了を契機として、前記監視状態に切り替わる。
本態様によれば、パレットを降下させる際にパレットストッパを退避姿勢としたことで、異常降下監視制御を行うため、パレットストッパが解除された後もパレットの落下を抑制でき安全である。
【0014】
さらに好ましい態様は、縦横の行列状にパレット収容エリアと、前記パレットを横方向にも移動させる横行モータとを有し、前記制御手段は、当該横行モータを用いて、前記パレットを横方向に移動させて、横方向に並んだ他の収容エリアに当該パレットを移動させることが可能であり、前記パレットを横方向に移動させるのに先立って、他のパレットを上下方向に退避させる場合、当該退避させるパレットに対して前記検知手段による検知を実施する機械式駐車装置である。
【0015】
本態様の機械式駐車装置は、縦横の行列状にパレット収容エリアと、パレットを横方向にも移動させる横行モータとを有するものであり、パズル式の機械式駐車装置である。
パズル式の機械式駐車装置は、パレットを横行させる際、横行先のパレット収容エリアにパレットがあると、当該横行先のパレットを昇降させて当該収容エリアを空ける必要がある。
本態様の機械式駐車装置は、横行先のパレットを退避させる際に、当該パレットに対して検知手段による異常降下監視制御が実施されるので、横行先のパレットを昇降させる際における安全を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の機械式駐車装置によると、パレットが予期しない速度で落下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の駐車装置の斜視図である。
図2図1の駐車装置の正面図である。
図3】(a)は昇降機構の斜視図であり、(b)は柱の拡大図であって、パレットストッパが昇降経路に突出した状態を示し、(c)は柱の拡大図であって、パレットストッパが昇降経路から退避した状態を示す。
図4】(a)は昇降機構の概念図であり、(b)はモータに内蔵された電磁ブレーキが解除された状態を示し、(c)は電磁ブレーキが機能している状態を示す。
図5】(a)は昇降機構の概念図であり、パレットが正常に上昇する場合の動作を示し、(b)はそのときの電磁ブレーキの状態を示す。
図6】(a)は昇降機構の概念図であり、パレットが上昇状態にある場合の動作を示し、(b)はそのときの電磁ブレーキの状態を示す。
図7】(a)は昇降機構の概念図であり、パレットが正常に降下する場合の動作を示し、(b)はそのときの電磁ブレーキの状態を示す。
図8】(a)は昇降機構の概念図であり、切り替えリレーが故障した状態でパレットを降下させようとした場合の動作を示し、(b)はそのときの電磁ブレーキの状態を示す。
図9】(a)は昇降機構の概念図であり、図8に続く動作を示し、(b)はそのときの電磁ブレーキの状態を示す。
図10】昇降機構の動作を示すフローチャートである。
図11】(a)は本発明の第二実施形態の昇降機構の概念図であり、(b)はモータに内蔵された電磁ブレーキが解除された状態を示し、(c)は電磁ブレーキが機能している状態を示す。
図12】(a)は図11の昇降機構の概念図であり、パレットが正常に上昇する場合の動作を示し、(b)はそのときの電磁ブレーキの状態を示す。
図13】(a)は図11の昇降機構の概念図であり、パレットが上昇状態にある場合の動作を示し、(b)はそのときの電磁ブレーキの状態を示す。
図14】(a)は図11の昇降機構の概念図であり、パレットが正常に降下する場合の動作を示し、(b)はそのときの電磁ブレーキの状態を示す。
図15】本発明の他の実施形態の昇降機構の動作を示すフローチャートである。
図16】(a)乃至(d)は、図1の駐車装置の動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下さらに本発明の実施形態の機械式駐車装置1について説明する。
図1の様に、実施形態の機械式駐車装置1(以下 駐車装置1と称する)は、パズル式の立体駐車装置である。駐車装置1は、3階建であり、複数台の自動車(車両)を駐車することができるパレット収容エリアがある。
駐車装置1の一階部分は、実際には図2等の様に地下階となるが、作図の関係上、図1は、あたかも地上に設置した様に図示されている。
【0019】
駐車装置1は、図1の様にフレーム4を有している。フレーム4は、支柱80と図示しない梁等によって構築された構造物であり、3階構造となっている。
そしてフレーム4によって各階にそれぞれ3室のパレット収容エリアが作られている。パレット収容エリアには、パレット支持枠2がある。
パレット収容エリアのパレット支持枠2には、いずれか一つを除いてパレット5が載置されている。
【0020】
駐車装置1は、パレット5を昇降及び横行させるパレット移動機構を備えている。
パレット移動機構は、パレット5が載置された状態のパレット支持枠2を昇降させる昇降機構8と、パレット5を単独で横行させる横行機構によって構成されている。
パレット支持枠2を横行させる横行機構は、パレット5自身に横行車輪(図示せず)を設け、横行レールに横行車輪が載置されたものであり、横行モータ(図示せず)を駆動してパレット5を横方向に移動させるものである。パレット支持枠2を横行させる機構は、公知であるから詳細な説明を省略する。
【0021】
昇降機構8は、例えば図3の様な構造であり4本のチェーン13a,13b,13c,13dを利用している。本実施形態で使用するチェーン13は、ローラチェーンである。
本実施形態の機械式駐車装置1では、図3の様に、パレット支持枠2の四隅にそれぞれチェーン13の一端が接続されており、パレット支持枠2は、4本のチェーン13a,13b,13c,13dで吊り下げられている。
チェーン13a,13b,13c,13dの他端側は、フレーム4の一部に接続されており、中間部には動滑車状のスプロケットを介してバランスウエイト47が吊り下げられている。
4本のチェーン13a,13b,13c,13dは、複数のスプロケットや、チェーンによって構成される動力伝動機構を介して昇降用モータ11と係合している。
本実施形態では、昇降用モータ11は、駆動スプロケット12を含む動力伝動機構を介して各チェーン13a,13b,13c,13dと常時係合している。
そのため、昇降用モータ11を回転すると、各チェーン13a,13b,13c,13dが動き、パレット支持枠2が昇降する。
【0022】
また、本実施形態の機械式駐車装置1では、図3の様に、駐車装置1の支柱80に、パレットストッパ70が設けられている。パレットストッパ70は、パレット支持枠2の下部を保持してパレット支持枠2の降下を阻止するものであり、係合片として機能する。
パレットストッパ70は、図示しないガイドに沿って水平方向に直線移動し、パレット支持枠2の昇降経路上に出没する。
【0023】
パレットストッパ70は、図示しないばねによって昇降経路上に突出する方向に付勢されている。しかしながら昇降経路側から没入方向に押圧されると、昇降経路から退避する。
パレットストッパ70は、図3の様に、上面側が水平面60であり、下面が傾斜面(曲面)56となっている。
そのため、パレットストッパ70の下部側からパレット支持枠2が上昇すると、パレット支持枠2の一部が、パレット支持枠2の上側にあるパレットストッパ70の傾斜面56と接触し、傾斜面56の作用によって、水平方向分力が生じ、パレットストッパ70が支持枠80内に没入する。
従って、パレットストッパ70は、パレット支持枠2の上昇を妨げない。
一方、パレット支持枠2が降下方向に移動すると、パレット支持枠2の一部が、パレットストッパ70の水平面60と当接し、パレット支持枠2の降下を阻止する。
【0024】
また図示しないソレノイド等の強制退避機器によって、パレットストッパ70を強制的に昇降経路から退避させることができる。
パレットストッパ70が、退避した状態を退避位置と称することとする。
パレットストッパ70が退避位置にある時、パレット支持枠2は、パレットストッパ70がある位置を上下方向に通過することができる。
パレットストッパ70は、常時ばねによって突出方向に付勢されているので、強制退避機器の作用が消失すると、元の突出位置に戻り、パレットストッパ70の水平面60(上面)で、パレット支持枠2に間接的に保持することができる姿勢となる。
【0025】
パレットストッパ70が係合状態にある場合には、パレット支持枠2の降下が不能となり、パレットストッパ70が係合解除状態にある場合には、パレット支持枠2の降下が可能となる。
本実施形態では、パレットストッパ70は、パレット支持枠2と係合しており、パレット5と間接的に係合する。
パレットストッパ70は、パレット5と直接的に係合するものであってもよい。
【0026】
実施形態の駐車装置1は、前記した様に、地下1階、地上2階の3階建であり、複数台の自動車(車両)を駐車することができるパレット収容エリアがある。駐車装置1のパレット収容エリアには、自動車を載置するパレット(載置台)5が配置されている。より詳細には、各パレット収容エリアのパレット支持枠2にパレット5載置されている。ただし、いずれか一つのパレット支持枠2には、パレット5は無く、空き状態となっている。
【0027】
パレット収容エリアの各パレット5は、前記したパレット移動機構(昇降機構及び横行機構)によって、昇降方向および横行方向にパズル式に移動が可能である。
本実施形態では、駐車装置1の2階部分(地上階)に、自動車を出入りさせる車両出入り部3a~3cが設けられている。
【0028】
駐車装置1には、各車両出入り部3a,3b,3cに、ゲート(駐車場用ゲート)6a,6b,6cが設けられている。
図2は、図1の駐車装置1の正面図である。図2の様に、地下1階部分が地面より下に位置している。駐車装置1の2階部分は、地上階となっている。駐車装置1では、地上階から自動車が出入りする。
【0029】
自動車の入庫時には、パレット移動機構を駆動して、空いているパレット5を、図2の中央部である地上階に移動し、自動車をパレット5上に載置する。
また、自動車の出庫時には、パレット移動機構によって当該自動車が載置されたパレット5を地上階に移動させ、パレット5上の自動車を駐車装置1の外部へ出す(出庫する)。
【0030】
図4は、前記した昇降機構を概念的に表示したものである。
図4の様に示すように、昇降機構10は、パレット5(パレット支持枠2)、昇降用モータ11、駆動スプロケット12、チェーン13を有する。また、昇降用モータ11を制御する電気回路7を有している。
図4に基づいて再度説明すると、駆動スプロケット12が回転可能に設置されている。
チェーン13の一端は、パレット支持枠2に接続され、チェーン13の他端は、支柱80に接続されている。
そして、駆動スプロケット12とチェーン13の他端の間に、動滑車状のスプロケットを介してバランスウエイト47が吊り下げられている。
昇降用モータ11を回転させると、駆動スプロケット12が回転し、チェーン13が走行し、パレット支持枠2が昇降し、パレット支持枠2に載置されたパレット5が昇降する。
【0031】
図4に示すように、昇降機構10は、降下確認センサー22と、上昇確認センサー23を有している。また図1の様に、駐車装置1の近傍に、パレット5の昇降を制御する制御装置(制御手段とも呼ぶ)18があり、制御装置18にテンキー62と、パレット5を動作させる操作スイッチ25がある。操作スイッチ25には、図4の様に、呼び出しスイッチ26と、戻しスイッチ27がある。使用者は、テンキー62を操作して自己が使用するパレット5を特定し、呼び出しスイッチ26を操作して所望のパレット5を呼び出す。
【0032】
パレット5を昇降させる昇降用モータ11には、減速機が接続されている。昇降用モータ11は、公知の三相モータである。昇降用モータ11は、ブレーキ付きモータであり、図4の様に電磁ブレーキ30が内蔵されている。
【0033】
電磁ブレーキ30は、昇降用モータ11の回転軸32に取り付けられたブレーキディスク33と、ブレーキパット35と、ブレーキ用電磁石36及び押圧バネ37によって構成されている。ブレーキパット35は、常時、押圧バネ37によって、ブレーキディスク33に押し付けられている。ブレーキ用電磁石36は、ブレーキパット35の近傍にあり、通電することによって、ブレーキパット35を引きつけ、ブレーキディスク33からブレーキパット35を引き離す。この様に、電磁ブレーキ30は、常時、モータの回転軸32を回転不能に固定するものであり、ブレーキ用電磁石36に通電することによって、回転軸32を開放する。
【0034】
次に、電気回路7について説明する。電気回路7は、インバータ装置40と給電回路を有する。昇降用モータ11は、インバータ装置40から通電される。インバータ装置40は、公知のそれと同様に、周波数を変換することができるものであり、昇降用モータ11に給電する電流の周波数を調整することによって、昇降用モータ11の回転数を変更することができる。
さらにインバータ装置40は、内部で出力相を変更する機能を有し、昇降用モータ11を正回転と逆回転とに切り替えることができる。
【0035】
また、本実施形態で採用するインバータ装置40は、異常検知手段の一つとして、昇降用モータ11のコイルに流れる電流またはコイルにかかる電圧を検知する検知手段51を備えている。検知手段51は、具体的には、電流検知回路51(電圧検知回路51)である。インバータ装置40は電流検知回路51を内蔵しているので、当該インバータ装置40によって、昇降用モータ11に供給される電流や、昇降用モータ11が発生する電圧を検知することができる。この様に、インバータ装置40は、周波数を変換する周波数変換回路50と、昇降用モータ11の回転方向を切り替える回転方向切り替え回路52及び電流検知回路51を備えている。
【0036】
回転方向切り替え回路52は、図4の様なリレーR1乃至R4を含むリレー群42によって構成されている。そしてリレーR1乃至R4を切り替えることによって昇降用モータ11に供給する3相の内、2相が入れ代わり、昇降用モータ11の回転方向が切り替えられる。
本実施形態では、リレーR1、R2を通電状態とし、リレーR3、R4を遮断状態とすることによって、昇降用モータ11は正方向に回転して、パレット支持枠2(パレット5)が上昇する。逆にリレーR1、R2を遮断状態とし、リレーR3、R4を通電状態とすることによって、昇降用モータ11は逆方向に回転して、パレット支持枠2(パレット5)が降下する。
【0037】
また、昇降用モータ11内のブレーキ用電磁石36には、図示しない直流電流が供給される。ブレーキ用電磁石36の給電回路には、ブレーキ解除リレー45が介在されている。ブレーキ解除リレー45が通電状態になれば、ブレーキ用電磁石36に通電され、押圧バネ37に抗してブレーキパット35がブレーキディスク33から離れ、ブレーキが解除される。
【0038】
また、前記した様に、駐車装置1の近傍に制御手段18があり、制御手段18に降下確認センサー22と、上昇確認センサー23の信号が入力されている。またインバータ装置40の電流検知回路(検知手段)51の検知信号についても制御手段18に入力されている。
制御手段18は、コンピュータであり、パレット5に各種の動作を行わせるプログラムが記憶されている。
即ち、操作スイッチ25の呼び出しスイッチ26をオンすることによって、使用者が使用するパレット5が地上階に呼び出される。また戻しスイッチ27をオンすることにより、自己の車両を載置したパレット5が、所定のパレット収容エリアに戻される。
いずれの場合でも、昇降機構8等が動作することとなる。
例えば、パレット5を上昇させる必要がある場合には、制御装置18からのパレット上昇信号によって、図5の様に切り替えリレー群42を構成するリレーR1、R2が通電状態となり、リレーR3、R4が遮断状態となって昇降用モータ11を正方向に回転させる。また、同時にブレーキ用電磁石36を通電状態とし、電磁ブレーキ30を解除する。その結果、図5の様に、駆動スプロケット12が回転し、矢印の様にパレット支持枠2(パレット5)が上昇する。
【0039】
そして、図6の様に、パレット5が上昇して上端に達し、上昇確認センサー23が、パレット5が上端に達したことを確認すると、切り替えリレー群42が全て遮断状態となって昇降用モータ11が停止し、インバータ装置40からの送電が停止する。
或いは、切り替えリレー群42は、図5の昇降用モータ11を正方向に回転させる接続関係を維持し、周波数変換回路50の出力を停止してインバータ装置40からの送電を停止する。
そして、図6の様に、パレット5が上端に達すると、ブレーキ解除リレー45が遮断状態となり、電磁ブレーキ30が掛かって昇降用モータ11の回転軸32を保持し、外力によって回転軸32が回転することが阻止される(図6(b))。
【0040】
昇降用モータ11は、駆動スプロケット12及びチェーン13を介してパレット5と常時係合しているから、電磁ブレーキ30によって昇降用モータ11の回転が強制的に阻止されることによって、チェーン13は動かず、パレット5は上昇した状態を維持する。
この様に、本実施形態では、昇降用モータ11の電磁ブレーキ30が、パレット5の降下を阻止する上昇時降下阻止手段として機能する。
【0041】
一方、図7の様に、パレット5を降下させる必要がある場合には、制御手段18は、パレット5を下降できるように、パレットストッパ70を退避位置に移動させる。
さらに、制御手段18は、切り替えリレー群42を構成するリレーR1、R2を遮断状態とし、リレーR3、R4を通電状態とし、昇降用モータ11を逆方向に回転させる。
また、同時にブレーキ解除リレー45を通電状態としてブレーキ用電磁石36に通電し、電磁ブレーキ30を解除する。その結果、図7の様に、駆動スプロケット12が逆回転し、矢印の様にパレット支持枠2(パレット5)が降下する。
【0042】
なお、パレット支持枠2(パレット5)が上昇位置にある際に電磁ブレーキ30を解除すると、重力によってパレット支持枠2が降下傾向となる。前記した様に昇降用モータ11は、駆動スプロケット12及びチェーン13を介してパレット支持枠2と常時係合しているから、パレット5の重力降下によって、昇降用モータ11が強制的に回転される状態となる。
【0043】
この状態では、昇降用モータ11は発電機として機能し、昇降用モータ11側からインバータ装置40側に電流が流れる。この電流は、図示しない抵抗で消費される。そのため昇降用モータ11が負荷となって、パレット支持枠2はゆっくりと降下し、最下点に至る。パレット支持枠2が下端に達し、降下確認センサー22が、パレット支持枠2が降下したことが確認すると、切り替えリレー群42が全て遮断状態となってインバータ装置40の送電が停止する。この様に、本実施形態では、昇降用モータ11が回生制動によって制動力を発現し、パレット支持枠2をゆっくりと降下させる。
パレット支持枠2がパレットストッパ70を通過すると、パレットストッパ70は元の位置に戻り、パレットストッパ70は上を向く。
パレットストッパ70の突出・退避位置の把握は、センサ検知でも、指令にもとづくものでもよい。
【0044】
以上は、パレット支持枠2を移動させる各機器が正常に機能した場合の動作を説明したものであるが、切り替えリレー群42に不具合があり、パレット支持枠2を昇降させるべきとき、切り替えリレー群42を構成するリレーR1乃至R4が全て遮断状態となることがあり得る。また、パレット支持枠2を昇降させるべきときには、電磁ブレーキ30が解除される。
この状況下においては、昇降用モータ11の回生制動による制動力は期待できず、パレット支持枠2が落下することが予想される。
【0045】
本実施形態の駐車装置1では、この問題に対処するための安全対策が講じられている。
以下、図8図9及び図10を参照しつつ説明する。
本実施形態では、前記した様にインバータ装置40に、昇降用モータ11のコイルに流れる電流を検知する電流検知回路(検知手段)51が内蔵されている。そのためインバータ装置40によって、昇降用モータ11に供給される電流や、昇降用モータ11が発生する電圧を検知することができる。そしてインバータ装置40の電流検知回路51の検知信号が制御手段18に入力されている。
【0046】
本実施形態では、パレット支持枠2を昇降させる際、制御手段18が昇降用モータ11のコイルに流れる電流を監視し、一定時間の間に渡って電流を検知できなかったり、検知電流が一定未満であったりする場合に、パレット支持枠2を非常停止させる。
「一定時間」は、数秒以内であり、好ましくは、0.5秒程度である。
また、「一定時間」とは、インバータがトリップを起こした場合などで、モータに電力が供給されず、モータで制動できなくなり、パレット5が自重で落下を始めた際、モータの回転数が危険領域に達する前までの期間である。
また、一定時間とは、上昇または下降指令出力開始~出力終了までの期間でもあり、その期間に、検知手段によりモータに通電していないことを検知すると、ブレーキを作動させる。その動作を以下、非常停止制御(異常降下監視制御)と呼ぶ。この非常停止制御により、パレット支持枠2が正常時の下降スピードより速く落下するより前に、パレット支持枠2を停止できる。
【0047】
本実施形態では、パレット支持枠2を降下させる際には、昇降用モータ11をパレット側から回転させて、回生電流を発生させ、この電流を消費することによって制動力を発現させている。
図8の様に、電磁ブレーキ30が解除したにも係わらず、昇降用モータ11のコイルに電流が無い場合は、パレット支持枠2が何かに引っ掛かって降下しないか、あるいは昇降用モータ11や切り替えリレー群42に不具合が生じて、昇降用モータ11が制動力を発現していないかのいずれかである。
【0048】
そこで、本実施形態では、安全性を確保するため、パレット支持枠2を降下させる際、昇降用モータ11のコイルに流れる電流を監視し、いずれかの段階で、一定時間の間に渡って電流を検知できなかったり、検知電流が一定未満であったりする場合は、パレット支持枠2を非常停止させる。
具体的には図9の様に、ブレーキ解除リレー45を遮断状態として電磁ブレーキ30を復活させ、電磁ブレーキ30によって昇降用モータ11の回転を強制的に停止させる。その結果、落下しかけたパレット支持枠2は、中途の位置で停止する。なお実際には、パレット支持枠2の降下距離は、数センチ以内であり、実質的にパレット支持枠2(パレット5)は動いたようには見えない。
この様に本実施形態では、昇降用モータ11の電磁ブレーキ30が、パレット5の降下を中途で阻止する非常降下停止手段としても機能する。
【0049】
図10のフローチャートに沿って説明すると、ステップ1において、使用者によって、呼び出しスイッチ26又は戻しスイッチ27が操作され、パレット5を上昇又は降下させる指示信号を待つ。
パレット5を降下させる指示信号があれば、ステップ2に移行し、インバータ装置40に電流が供給され、インバータ装置40が駆動する。また、ステップ3に移行し、切り替えリレー群42を構成するリレーR1、R2が遮断状態となり、リレーR3、R4が通電状態となり、昇降用モータ11に対して逆回転する方向に駆動電流が出力される。
これと並行して、ステップ4では、ブレーキ解除リレー45を通電状態としてブレーキ用電磁石36に通電し、電磁ブレーキ30を解除する。
【0050】
続いてステップ5に移行し、制御手段18が昇降用モータ11のコイルに流れる電流を監視し、回生電流が発生しているか否かを確認する(監視状態)。
昇降用モータ11のコイルに一定値以上の電流が流れていることがステップ5で確認されれば、ステップ6に移行し、パレット5が、所定の端位置に到達したか否かが確認される。
即ちステップ5で昇降用モータ11が回生電流を発生していることが確認できた場合は、昇降用モータ11は、パレット5の重力落下によって強制的に回転させられており、パレット5は、ゆっくりと降下を続けている。
そのため一定時間後には、パレット5は所定の端位置に到達する筈であるから、ステップ6でパレット5の端位置への到達を待つ。
ステップ6に移行して、パレット5が未だに端位置に到達していなければ、ステップ5に戻り、昇降用モータ11のコイルに流れる電流を監視し続ける。
降下確認センサー22によって、パレット5が所定の端位置へ到達したことが確認されるとステップ7に移行し、インバータ装置40を停止して駆動電流の供給を停止する。
【0051】
一方ステップ5で、一定以上の電流を検知できなかった場合は、ステップ8に移行し、一定時間が経過したか否かを確認する。そしてステップ5とステップ8の間を往復し、一定時間の間、昇降用モータ11に流れる電流を監視し、この間に電流が検知できればステップ5に移行する。
【0052】
一定時間の間監視したけれどもその間に昇降用モータ11に電流が流れていることが確認できなかった場合には、ステップ9に移行し、ブレーキ解除リレー45を遮断状態として昇降用モータ11の電磁ブレーキ30を作動させ、昇降用モータ11の回転を強制的に停止する。その結果、図9の様にパレット5がその場で停止する。
その後、ステップ7に移行し、インバータ装置40を停止して駆動電流の供給を停止する。そして、昇降用モータ11のコイルに流れる電流を監視するのを停止する(監視停止状態)。
【0053】
また本実施形態の駐車装置1では、パレット5を上昇させる指示信号があり、パレット支持枠2が上昇している際にも、昇降用モータ11のコイルに流れる電流等を監視し、非常停止制御が行われる。またレット支持枠2が上昇する際には、パレットストッパ70は、突出位置を維持する。
このことにより、パレット5が上昇し、パレットストッパ70からわずかに離れた状態のときに、モータの非通電を検知した場合、昇降用モータ11が非通電となったときからブレーキ発現までの間のパレット5の落下もパレットストッパ70で抑制できる。
また、下降動作の際には、パレットストッパ70を退避位置のまま、または、退避位置に移動させた状態で、パレット5を下降させた。
本実施形態の駐車装置1では、パレットストッパ70の退避位置への指令出力、または、退避完了を検知したら、非常停止制御を開始する。
このことにより、パレットストッパ70が退避したことで、非常停止制御を行うため、パレットストッパ70が解除された後もパレット支持枠2(パレット5)の落下を抑制でき、安全である。
また、本実施形態では、一定時間の間、昇降用モータ11に流れる電流を監視し、この間に電流が検知できなければ電磁ブレーキ30を作動させ、昇降用モータ11の回転を強制的に停止した。
他の方法としては、パレット支持枠2(パレット5)を降下させる信号が発せられてから一定時間(設定時間)経過後に、電流検知手段が所定の電流を検知しなかった場合に、電磁ブレーキ30を作動させ、昇降用モータ11の回転を強制的に停止させてもよい。
図15は、この方策を採用した場合の制御の流れを示すフローチャートである。
【0054】
以上説明した実施形態では、インバータ装置40内に昇降用モータ11の回転方向を切り替える回転方向切り替え回路52を設け、インバータ装置40内で昇降用モータ11の回転方向が切り替わる様に結線したが、インバータ装置40の内部又は外部で、昇降用モータ11のコイルを回生電量が発生する様に切り替えてもよい。
図11乃至図14に示す昇降機構10は、昇降用モータ11のコイルを回生電量が発生する様に切り替えるものである。なお、図11乃至図14に示す第二実施形態の昇降機構10における、先の実施形態と同一の部材は、同一の番号を付して重複する説明を省略する。
【0055】
図11乃至図14に示す昇降機構10では、インバータ装置40内に昇降用モータ11のコイルを通電状態から短絡状態に短絡切り替え回路55を設けている。短絡切り替え回路55はコイルを短絡するバイパス配線61を有し、バイパス配線61を断続するバイパスリレーR10、R11を設けている。またインバータ装置40から昇降用モータ11に給電する回路を断続する断続リレーR12、R13、R14が設けられている。
【0056】
即ち、パレット5を上昇させる際には、図12の様にバイパスリレーR10、R11を遮断状態とし、断続リレーR12、R13、R14を通電状態として昇降用モータ11を正方向に回転させる。
また、同時にブレーキ解除リレー45を通電状態とし、電磁ブレーキ30を解除する。その結果、図12の様に、駆動スプロケット12が回転し、矢印の様にパレット支持枠2(パレット5)が上昇する。
【0057】
パレット5を上昇して上昇確認センサー23が、パレット5を検知すると、図13の様に、断続リレーR12、R13、R14が遮断状態となって昇降用モータ11が停止する。或いは各リレーは図12の昇降用モータ11を正方向に回転させる接続関係を維持し、周波数変換回路50の出力を停止してインバータ装置40からの送電を停止する。
また、図13の様に、パレット5が上端に達すると、断続リレーR12、R13、R14が遮断状態となり、電磁ブレーキ30が掛かって昇降用モータ11の回転軸32を保持し、外力によって回転軸32が回転することが阻止される。
【0058】
パレット5を降下する際には、図14の様に、バイパスリレーR10、R11を通電状態とする。また、同時にブレーキ解除リレー45を通電状態としてブレーキ用電磁石36に通電し、電磁ブレーキ30を解除する。その結果、図14の様に、駆動スプロケット12が逆回転し、矢印の様にパレット支持枠2(パレット5)が降下する。
【0059】
本実施形態においても、電流検知回路51の検知信号が制御手段18に入力されている。本実施形態では、降下スイッチ27をオンにした後、制御手段18が昇降用モータ11のコイルに流れる電流を監視し、一定時間の間に渡って電流を検知できなかったり、検知電流が一定未満であったりする場合に、パレット5を非常停止させる。
【0060】
即ち、本実施形態においても、パレット5を降下させる際には、昇降用モータ11をパレット5側から回転させて、回生電流を発生させ、この電流を消費することによって制動力を発現させている。
降下スイッチ27をオンして電磁ブレーキ30が解除したにも係わらず、昇降用モータ11のコイルに電流が流れ無い場合は、ブレーキ解除リレー45を遮断状態として電磁ブレーキ30を復活させ、電磁ブレーキ30によって昇降用モータ11の回転を強制的に停止させる。その結果、落下しかけたパレット5は、中途の位置で停止する。
【0061】
以上の説明は、呼び出し対象のパレット5を昇降させる際の動作であるが、呼び出し対象外のパレット5を横行させるのに伴って他のパレット5を昇降する場合にも、同様の監視が行われる。
即ち、パズル式の駐車装置では、移動対象のパレット5の移動先を空ける必要がある。例えば、移動対象のパレット5を横行させる場合、横行先のパレット収容エリアに他のパレット5がある場合には、当該移動先のパレット5を上方又は下方に退避させる必要がある。
本実施形態の駐車装置では、この様な場合においても、前記した監視が行われる。
【0062】
上記した実施形態の駐車装置1はパズル式の機械式駐車装置であり、前記した様に、パレット5を横行させる機能も備えている。
そのため、横行用モータについても、昇降用モータ11と同様の安全対策が採用されることが望ましい。
即ち、横行用モータに昇降用モータ11と同様のブレーキ付きモータを採用する。また横行用モータの回路として、昇降用モータ11と同様の電気回路7を採用する。
具体的には、横行用モータには、インバータ装置40から通電する。横行用モータのインバータ装置40は、異常検知手段の一つとして、横行用モータのコイルに流れる電流や電圧、またはコイルにかかる電流や電圧を検知する検知手段51を備えている。検知手段51は、具体的には、電流検知回路51(電圧検知回路51)である。
【0063】
そして、パレット5を横行させる際、制御手段18が横行用モータのコイルに流れる電流等を監視し、一定時間の間に渡って電流を検知できなかったり、検知電流が一定未満であったりする場合に、ブレーキを作動させてパレット5を非常停止させる。
【0064】
次に、図16を用いて、3階部分(地上2階)にある特定のパレット5を2階(地上1階)に下す際の一連の動作について説明する。
図16は、図1の正面図で、3行×3列の駐車装置1である。説明の便宜上、パレット収容エリアに番号をつける。左下から右に順番に、1番~3番目のパレット収容エリア、1段上がって、4番~6番目のパレット収容エリア、さらに1段上がって、7番~9番目のパレット収容エリアと番号を付与する。各々のパレット収容エリアのパレット5、図示しないモータにより、上下左右に移動可能である。図16には、9番目のパレット収容エリアにはパレット5が無く、車両が空いており、それ以外のパレット収容エリアにはパレット5があって、車両、8台が駐車している。
【0065】
一例として、7番のパレット収容エリアにあるパレット5(左列最上段)を下の4番のパレット収容エリアの位置に移動させる動作について、説明する。
まず、テンキー62(図1)を操作して呼び出し対象のパレット5を特定し、その後、呼び出しスイッチ26が押される。
呼び出しスイッチ26が押されると、例えば、制御手段18は信号を受信し、対象のパレット5の現在位置(ここでは、7番)をセンサなどで把握して、現在位置(7番)から入出庫階の出庫位置(4番)までの動作を把握する。そして、パレット4の上昇・下降・横行指令を各モータに送信する。
図16(a)に示すように、6番のパレットについて、制御手段18から上昇指令が出力され、昇降用モータ11に通電されると共に、ブレーキ解除リレー45がONされ、昇降用モータ11のブレーキを解除する。その結果、6番のパレット収容エリアの位置にあったパレット5が、1段上の9番目のパレット収容エリアの位置に上昇する。このとき、昇降用モータ11のコイルに流れる電流等が監視される。
【0066】
次に、図16(b)に示すように、4番目と5番目のパレット収容エリアを動作させるモータに、制御手段18から横行指令が出力され、横行用モータ通電リレー(図示せず)がONされ、横行用モータに通電されると、横行用モータのブレーキ解除リレーがONされ、横行用モータのブレーキを解除する。その結果、4番目と5番目にあったパレット5が右に1列に移動する。その結果、4番のパレット収容エリアが空く。
【0067】
最後に、図16(c)に示すように、7番のパレット支持枠2に、制御手段18から下降指令が出力され、昇降用モータに通電されると、ブレーキ解除リレー45がONされ、昇降モータのブレーキを解除する。その結果、7番の位置にあったパレット5が1段下の4番のパレット収容エリアに下降する。最終的に、図16(d)に示すように、4番目のパレット収容エリアに車両が駐車し、7番目のパレット収容エリア位置が空いている状態となる。
【0068】
また、上に位置する上パレットが落下し、(i)下に位置する下パレットある場合、または、(ii)下パレットに車両が乗っている場合、上パレットがいつ何に接触するか不安で危険な状況がある。従来技術では地面との接触を防ぐようにしていたが、下の車両と接触してしまう恐れがある。
本願発明では、異常降下監視制御を実行するので、パレットと下の車両との接触さえも防ぐことができる。
また、パレットがレール(又はガイドなど)に支持されている場合、パレットとレールとが強く擦られて、パレットの一部とレールとが摩擦力で固着し、パレットが停止する場合がある。この場合、4点吊りのパレットは、不均衡にくり出されて、パレットが斜めになり、ストッパに当たらず落下してしまう恐れがある。
本願発明では、異常降下監視制御を実行するので、パレットの落下を防ぐことができる。
また、パレットが落下する際、パレットに車両がある場合と、パレットに車両がない場合とで、昇降機構のくり出される負荷が変動し、落下スピードも変化する。本願発明は、異常降下監視制御を実行するので、落下スピードに依らず、すぐパレットを停止することができる。
また、落下したパレットに車両があると、ある程度落下してからブレーキをかけてしまうと、急ブレーキとなり、その衝撃で車両に上下方向の衝撃が伝わり、ステアリング等が損傷する恐れもある。
本願発明では、異常降下監視制御を実行するので、急ブレーキを防ぐことができる。
【0069】
以上説明した実施形態では、制御手段18は、操作スイッチ25の信号をトリガーとして非常停止制御を開始した。
これに対して、パレット5が下降動作する際、パレットストッパ70の退避位置への指令出力、または、パレットストッパ70の退避完了を検知したら、非常停止制御を開始してもよい。このことにより、パレットストッパが退避したことで、非常停止制御を行うため、パレットストッパ70が解除された後もパレット5の落下を抑制でき、安全である。
以上説明した実施形態では、パレット5(図16における、例えば、5番に位置するパレット)の横行先にパレット5a(図16における、例えば、6番に位置するパレット)がある場合、横行先のパレット5aを上昇させた後、パレット5をパレット5aの下に移動させる。本実施形態の駐車装置1では。パレット5aを上昇する際、非常停止制御を行う。非常停止制御により、パレット5が、パレット5aの落下から守られ、安全である。
以上説明した実施形態では、非常停止制御は、横行の場合も行われる。具体的には、検知手段51により横行モータが通電していないことを検知すると、非常停止手段を作動させる。このことにより、横行動作中に横行モータが非通電となり、慣性で横行するのを抑制できる。
以上説明した実施形態では、パズル方式の駐車場装置としたが、パレットを昇降移動のみの単純昇降式など他の方式でもよい。
以上説明した実施形態では、入出庫階を地上階としたが、入出庫階はどこでもよく、最下位置、最上位置でもよい。
【0070】
以上説明した実施形態では、パレット5は地面から浮いた所定の高さに位置していたが、パレット5は最下段で接地していてもよい。この場合、パレット5は、これ以上落下しない。また、パレット5が接地状態で、上昇開始時にモータ非通電となった場合でも、パレット5のチェーン13がその自重で繰り出されることを抑制できる。
【0071】
以上説明した実施形態では、横行動作中に非常停止制御を行ったが、横行動作中に、横行パレットの非常停止制御は行わなくてもよい。この場合、制御装置18から上昇(下降)指令が出力されていることを条件として、制御を行う。
以上説明した実施形態では、パレットの昇降・横行動作の把握はセンサーを用いたが、パレットの昇降・横行動作の把握は、制御手段18自体の出力する指令により把握してもよいし、別にセンサを設けてパレットの位置検知により把握してもよい。
以上説明した実施形態では、昇降用モータ11にブレーキ付きモータを採用し、昇降用モータ11の外力による回転を内蔵する電磁ブレーキ30で強制的に停止させることによってパレット5の落下を阻止する構成を採用した。
本実施形態によると、昇降用モータ11の電磁ブレーキ30が、パレット5が上昇位置にあるときにパレット5の降下を阻止する非常降下停止手段としても機能する。
【0072】
パレット5の降下を阻止する方策(請求項の非常降下停止手段)としては、パレット5が降下する方向に物理的な障害物を設ける方法と、チェーン等の駆動を阻止する方法が考えられる。
従来技術の様な落下防止ピンを突出させるのは、パレット5が降下する方向に物理的な障害物を設ける方法の一つであり、非常降下停止手段として採用可能である。
【0073】
また、落下防止ピンを高さ方向に複数設置し、パレット5が落下せんとする際に、全ての落下防止ピンを突出させ、または、いずれかの落下ピンでパレット5を阻止することも考えられる。この方法によると、落下防止ピンによって非常降下停止手段を構成することができる。但し、複数の落下防止ピンを設ける高さの位置は、パレット5の落下速度が正常な下降速度未満で当接する位置に設ける。このため、落下防止ピンは、異なる高さ位置に複数設けるのがよい。
また、幅方向に拡張する部材をパレット5に設け、パレット5が嵌合するレールやガイドの間で摩擦力を発生させてパレット5の落下を阻止することも可能である。
【0074】
また、駆動スプロケット12にブレーキを設けたり、チェーン13を強制的に保持しtarたりしてパレット5が降下を阻止してもよい。
【0075】
以上説明した実施形態では、昇降機構として、昇降用モータ11は、駆動スプロケット12及びチェーン13を介してパレット5と直接的にまたは間接的に係合しているが、これに代わってプーリとワイヤによって昇降用モータ11とパレット5を係合させてもよい。
また、ラックアンドピニオンや送りネジを利用して昇降用モータ11とパレット5を係合させてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 機械式駐車装置(駐車装置)
2 パレット支持枠
5 パレット
10 昇降機構
11 モータ
12 駆動スプロケット
13 チェーン
18 制御手段
20 パレット収納エリア
22 降下確認センサー
23 上昇確認センサー
26 呼び出しスイッチ
27 戻しスイッチ
30 電磁ブレーキ(非常降下停止手段)
40 インバータ装置
42 切り替えリレー群
45 ブレーキ解除リレー
51 電流検知回路(検知手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16