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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】炭素質粒体の熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 1/24 20060101AFI20240906BHJP
   F27B 1/21 20060101ALI20240906BHJP
   F27D 15/02 20060101ALI20240906BHJP
   F27B 1/26 20060101ALI20240906BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F27B1/24
F27B1/21
F27D15/02 F
F27B1/26
F27D21/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020080157
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021173507
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591098798
【氏名又は名称】日本電極株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 晋次郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓永
(72)【発明者】
【氏名】蒲 雄一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 信元
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117175(JP,A)
【文献】特開2017-001923(JP,A)
【文献】特開2014-097909(JP,A)
【文献】特開2014-098497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/24
F27B 1/21
F27D 15/02
F27B 1/26
F27D 21/00
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体内部に投入した炭素質粒体に熱処理を行う炭素質粒体の熱処理装置であって、
前記炉体の下方に設けられ、前記炉体内部において熱処理された前記炭素質粒体を冷却する冷却部を備え、
前記冷却部は、
内部を降下する前記炭素質粒体を冷却する円筒状の冷却ジャケットと、
前記冷却ジャケットの下方に設けられ、前記炭素質粒体を支持する底盤と、
前記底盤に設けられる回転軸から放射状に延びる複数の羽根からなる排出装置と、
前記底盤に設けられた排出管と、
を備え、
前記複数の羽根が回転することにより、前記底盤から溢れた前記炭素質粒体は前記排出管へと排出され、
前記底盤内部及び前記複数の羽根の回転軸内部には冷却水の循環路が設けられている、
炭素質粒体の熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却部は、
前記排出管の排出先に設けられ、前記炭素質粒体を外部へと排出する弁部を更に備え、
前記弁部は、ケース内部に弁体を備え、
前記ケース内面と前記弁体は近接し、
前記弁体内部には冷却水の循環路が設けられている、
請求項に記載の炭素質粒体の熱処理装置。
【請求項3】
前記弁体は、ローターであり、
前記ローターは、前記ローターの回転軸から放射状に延びる複数の板状部を備え、
前記ケース内面と前記板状部先端は近接し、
前記ローターの回転軸内部には冷却水の循環路が設けられている、
請求項に記載の炭素質粒体の熱処理装置。
【請求項4】
前記排出装置は、前記弁部の排出先に設けられる重量計と接続され、当該重量計に排出された前記炭素質粒体の重量情報を受信することにより、前記複数の羽根の回転速度を調整する制御部を備える、
請求項またはに記載の炭素質粒体の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質粒体の熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無煙炭粒、コークス粒、炭素質造粒体、金属酸化物と炭素の混合造粒体等の炭素質粒体の物理特性は熱処理温度によって著しく変化するので、電極用原料や炭素質耐火物用の原料、電子材料あるいは電池材料などとして使用する場合には、均一な熱処理が必要である。また、金属酸化物と炭素の混合品を熱処理により還元反応させて各種金属の炭化物を得る場合においても、狙った反応を確実にするためには均一に熱処理することが不可欠である。
【0003】
このような炭素質粒体の熱処理は、比較的高温で行われる。特に、無煙炭粒などの炭素質粒体を縦型電気熱処理炉内に投入し、炭素質粒体に直接通電する場合には、熱処理温度は1500℃~2000℃程度にもなる。さらに、引用文献1には、3000℃程度で均一に連続黒鉛化する方法が開示されている。
【0004】
このように高温で熱処理された炭素質粒体は、炉外へ排出するまでに均一に冷却される必要がある。すなわち、炭素質粒体は、熱処理だけでなく冷却も均一に行われる必要がある。そこで、引用文献2には、炭素質粒体を間欠的に排出することによりマスフロー状態で流下させ、円筒状の冷却部内部を通過する炭素質粒体を均一に冷却する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-167208号公報
【文献】特開2001-26413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱処理装置が工業的生産を目的とする規模になると、冷却部も大型化してしまい、炭素質粒体を均一に冷却することができないおそれがある。具体的には、円筒状の冷却部の内径が大きくなると、内壁付近を降下している炭素質粒体に比べ、中心部を降下しているものは十分に冷却されず、冷却の程度に不均一が生じるおそれがある。また、炭素質粒体が十分に冷却されずに熱処理装置から排出されると、外気と接触した際に酸化してしまい、炭素質粒体が熱処理されてなる熱処理品の特性の劣化や収率を落とすおそれがある。
【0007】
このように、十分に冷却されていない炭素質粒体が円筒状の冷却部を通過してしまうと、その熱の影響により冷却部の下方に設けられた排出部や弁部などが熱変形や熱膨張することにより、歪みや近接する機構同士の競り合いを引き起こし、本来の能力を発揮できないばかりか、最悪の場合は亀裂や破壊を引き起こす。また、これら排出部や弁部などの機械部分やこれらを制御する電子部品に不具合が生じる。そうすると、排出量の制御が不十分になり、これにより冷却がさらに不十分になるという悪循環が生まれ、最悪の場合これらの機械部分が故障してしまい、熱処理装置の稼働停止にまで追い込まれるおそれがある。
【0008】
一方、従来技術においても炭素質粒体を十分に冷却するために、単位時間当たりの排出量を減らすという解決手段が考えられる。しかしながら、排出量の減少は生産量の減少に他ならないため、上述したような工業的生産を目的とした大規模な熱処理装置においてはこのような手段を採用することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、単位時間当たりの排出量を減らすことなく、熱処理された炭素質粒体を均一に冷却することを可能とする炭素質粒体の熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の炭素質粒体の熱処理装置は、次のような構成を備える。
(1)炉体内部に投入した炭素質粒体に熱処理を行う炭素質粒体の熱処理装置である。
(2)前記炉体の下方に設けられ、前記炉体内部において熱処理された前記炭素質粒体を冷却する冷却部を備える。
(3)前記冷却部は、内部を降下する前記炭素質粒体を冷却する円筒状の冷却ジャケットと、前記冷却ジャケットの下方に設けられ、前記炭素質粒体を支持する底盤と、前記底盤に設けられる回転軸から放射状に延びる複数の羽根からなる排出装置と、前記底盤に設けられた排出管と、を備える。
(4)前記複数の羽根が回転することにより、前記底盤から溢れた前記炭素質粒体は前記排出管へと排出される。
(5)前記底盤内部及び前記複数の羽根の回転軸内部には冷却水の循環路が設けられている。
【0012】
(2)前記冷却部は、前記排出管の排出先に設けられ、前記炭素質粒体を外部へと排出する弁部を更に備え、前記弁部は、ケース内部に弁体を備え、前記ケース内面と前記弁体は近接し、前記弁体内部には冷却水の循環路が設けられていても良い。
【0013】
(3)前記弁体は、ローターであり、前記ローターは、前記ローターの回転軸から放射状に延びる複数の板状部を備え、前記ケース内面と前記板状部先端は近接し、前記ローターの回転軸内部には冷却水の循環路が設けられていても良い。
【0014】
(4)前記排出装置は、前記弁部の排出先に設けられる重量計と接続され、当該重量計に排出された前記炭素質粒体の重量情報を受信することにより、前記複数の羽根の回転速度を調整する制御部を備えていても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、単位時間当たりの排出量を減らすことなく、熱処理された炭素質粒体を均一に冷却することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る炭素質粒体の熱処理装置を示す側面図。
図2】第1の実施形態に係る投入部を示す平面図。
図3】第1の実施形態に係る投入部を示す側面図。
図4】第1の実施形態に係るチャージングホッパー及びスカートを示す側面図。
図5】第1の実施形態に係る排出部を示す側面図。
図6】第1の実施形態に係る排出部の一部を示す側面図。
図7】第1の実施形態に係る弁部を示す側面図。
図8】第1の実施形態に係る炭素質粒体の熱処理装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.第1の実施形態]
[1-1.構成]
[炭素質粒体]
まず、第1の実施形態に係る炭素質粒体の熱処理装置に用いる炭素質粒体Aについて説明する。炭素質粒体Aは、無煙炭粒、コークス粒、及びこれらの混合物からなる造粒体、金属酸化物と炭素の混合物の造粒体などの粒体を使用することが可能である。また、無煙炭やコークスとしては、カルサイン(仮焼)していないものを含んでも良く、コークスには石油コークス、石炭コークス、フルードコークス、ニードルコークスなどがある。無煙炭粒、コークス粒は、塊状の無煙炭やコークスを粉砕してなる例えば10mm~20mm程度の粒体である。造粒体は、例えば無煙炭やコークス由来の炭素粉、人造黒鉛粉、金属酸化物などの原料にバインダーや水を混合し、例えばディスクペレッタなどの造粒機によって形成され、さらに乾燥処理を経て硬化した粒体である。バインダーは、例えばでんぷん粉末、特にαコーンスターチ粉を使用することが出来る。硬化、炭化処理できるものであれば、バインダーには、ピッチやフェノール樹脂、他の合成高分子化合物、水溶性多糖類などを使用することもできる。本実施形態の炭素質粒体Aは、表面が滑らかな円柱状で、直径は10mm程度、高さは10mm~15mmの造粒体である。本実施形態では、炭素質粒体Aが直接通電されることによりジュール熱を発生し、熱処理される。
【0018】
[熱処理装置]
次に、第1の実施形態に係る炭素質粒体の熱処理装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る熱処理装置1の構成を示す側面図である。熱処理装置1は、炭素質粒体Aの熱処理を行う炉体21を備える。本実施形態の炉体21としては、直接通電することにより加熱処理を行う直接通電加熱方式や、外周部に熱源を備え、外側から炉芯管や加熱容器を加熱し熱処理する間接加熱方式などを用いることができる。以下では、炉体21は直接通電加熱方式の縦型電気熱処理炉であるものとして説明する。熱処理装置1は、炉体21の上方から投入された炭素質粒体Aが炉体21内部を徐々に降下する間に通電することにより、炭素質粒体Aの熱処理を連続的に行う。この熱処理装置1は、炭素質粒体Aを炉体21に投入する投入部10と、投入された炭素質粒体Aを熱処理する熱処理部20と、熱処理した炭素質粒体Aを冷却するための冷却部30と、を備える。投入部10、熱処理部20及び冷却部30は、炉体21の上方から下方に向けて順次設けられる。また、炉体21は熱処理部20の一部を構成する。炭素質粒体Aは、炉体21内部、及び投入部10と冷却部30内部の少なくとも一部を満たしているものとする。なお、本明細書において、上方とは重力に逆らう方向を指し、下方とは重力に従う方向を指すものとする。
【0019】
[投入部]
図2乃至4を参照しつつ、投入部10について説明する。投入部10は、炭素質粒体Aを炉体21内部に上方から投入するものであって、炭素質粒体Aの投入経路に従って、架台11、分配ホッパー12、フィーダー13、原料ビン14、チャージングホッパー15、スカート16を備える。
【0020】
架台11は、投入部10の上部に設けられ、クレーンなどによって持ち上げられたフレコンバッグを載置するための台である。このフレコンバッグには熱処理対象となる炭素質粒体Aが入っており、このフレコンバッグから炭素質粒体Aが分配ホッパー12へと投入される。分配ホッパー12は、投入された炭素質粒体Aを底面に設けられた孔から分配する容器である。本実施形態の分配ホッパー12は、例えば、概略矩形の底面の四隅にそれぞれ1つの孔が設けられている。これら4つの孔には、当該孔の縁から下方へと漏斗状に伸びてなるコーン部121がそれぞれ設けられている。各コーン部121の下端は、いずれも開口している。分配ホッパー12に投入された炭素質粒体Aは、これら4つの孔からコーン部121内部を降下し、当該コーン部121の下端の開口直下にそれぞれ設けられたフィーダー13上に吐き出される。
【0021】
フィーダー13は、分配ホッパー12から原料ビン14へと炭素質粒体Aを送り出す機構及び経路である。フィーダー13は、炭素質粒体Aに含まれる微粉末を除去する機能を具備する。本実施形態では、フィーダー13の経路上には、例えば目開き4mm以上の篩が設けられている。篩は、例えば金属製のメッシュやパンチングメタルである。すなわち、フィーダー13は、炭素質粒体Aを送り出す過程において、当該炭素質粒体Aに含まれる微粉末を除去することが出来る。さらに、フィーダー13は、例えば電磁振動方式などによる振動機能を具備する振動フィーダーであってもよい。フィーダー13が振動フィーダーである場合、当該フィーダー13上で炭素質粒体Aを振動させながら送り出すことが出来るので、経路上に設けられた篩からより効果的に微粉末を除去することが出来る。また、フィーダー13と原料ビン14は、例えばゴム管やゴム板、磁製板などからなる絶縁体13aを介して互いに対向している。熱処理装置1の稼働時には、フィーダー13と原料ビン14がこの絶縁体13aを介して接続され、外部からの埃などの侵入を防ぐ構造とすることが好ましい。
【0022】
原料ビン14は、炭素質粒体Aを収容する容器である。原料ビン14の材質は、耐久性、耐食性に優れた材質であることが好ましい。特に、原料ビン14の材質が鋼材である場合、鋼材の錆などが炉内に混入する虞がある。そのため、原料ビン14の材質は、例えば耐熱ステンレス、特にSUS310Sが好適である。原料ビン14は、フィーダー13から炭素質粒体Aを受け取る円筒状の円筒部141と、その下部に設けられ、下方へ向けて窄まるコーン部142とからなる。円筒部141とコーン部142は内部で繋がっており、コーン部142の下部は開口しているので、フィーダー13から送り出された炭素質粒体Aは、原料ビン14内部を降下することが出来る。原料ビン14内部には、図示しない満量計や流量計、または同様の機能を有するセンサ類が設置されており、原料ビン14内部における炭素質粒体Aの量や流量と、フィーダー13の稼働、停止を連動させてフィーダー13から送り出す量を調整することで、原料ビン14内部における炭素質粒体Aを任意の量あるいは流量に保つことができる。コーン部142の下部には、開口を開閉する図示しない開閉ダンパーが設けられており、炭素質粒体Aの種類を切り替える時やトラブルの際などは炭素質粒体Aの降下をここで一時停止することが出来る。コーン部142のコーン角は、例えば30°以下であり、特に好ましくは15°以下である。
【0023】
本実施形態の原料ビン14は、分配ホッパー12が炭素質粒体Aを分配する分配数すなわち4つの孔に対応して4つ設けられている。4つの原料ビン14は、その下方に設けられる炉体21の中心軸の概略同心円上に等間隔に配置されている。すなわち、4つの原料ビン14は、この中心軸を中心とした円周上に90°の円周角ごとに設けられている。なお、概略同心円上とは、各構成の寸法誤差及び組み立てに係る誤差程度であれば、同心円上とするという意味である。
【0024】
図2及び3に示すように、本実施形態の分配ホッパー12は、4つの原料ビン14の真上には配置されていない。換言すると、分配ホッパー12は、その下方に設けられる炉体21の中心軸から、前記炉体21の外周方向に離間した位置に設けられている。これに伴い、複数のフィーダー13は、分配ホッパー12と原料ビン14とを繋ぐ方向、本実施形態では概略水平方向に延伸して設けられている。すなわち、分配ホッパー12が4つの原料ビン14の真上から離間するほど、フィーダー13はその経路長が長くなる。なお、図2に示すように、各フィーダー13の経路長は互いに異なるが、最も短いものであっても十分に微粉末を除去することができる。最も短いフィーダー13の長さは、例えば70cmである。
【0025】
図4に示すように、原料ビン14の下方に設けられるチャージングホッパー15は、その上下端にそれぞれ開口部151、152が設けられた円錐台状の容器であり、下方へ向けて内径が窄まっている。チャージングホッパー15の下部に設けられるスカート16は、その上下端にそれぞれ開口部161、162が設けられた下方へ向けて内径の窄まった円錐台状または円筒状の案内部材である。チャージングホッパー15の開口部152とスカート16の開口部161は連続して設けられている。また、チャージングホッパー15及びスカート16は、いずれも炉体21の中心軸と同軸上に設けられている。
【0026】
チャージングホッパー15及びスカート16は、断熱性を有する二重構造の容器または案内部材であることが好ましい。断熱性を有する二重構造とすることによって、熱処理部20からの輻射熱や伝熱を緩和することが出来る。チャージングホッパー15及びスカート16の材質は、耐久性、耐食性に優れた材質であることが好ましい。特に、チャージングホッパー15及びスカート16の材質が鋼材である場合、鋼材の錆などが炉内に混入する虞がある。そのため、チャージングホッパー15及びスカート16の材質は、例えば耐熱ステンレス、特にSUS310Sが好適である。また、当該二重構造の内部空間は、そのまま空洞として空気層としても良いが、空気や冷却ガスを吹き入れても良く、さらに断熱材を埋め込んでも良い。
【0027】
チャージングホッパー15及びスカート16は、原料ビン14から吐き出された炭素質粒体Aを一時的に貯留し、熱処理部20へと投入するが、図1に示すように、チャージングホッパー15及びスカート16内部には、後述の上部電極22が貫通している。
【0028】
[熱処理部]
熱処理部20は、炉体21と、上部電極22と、スカート16から投入された炭素質粒体Aを一時的に貯蔵する燃焼室23と、燃焼室23の下部に設けられ、炭素質粒体Aにその内部を降下させる管状構造体24と、管状構造体24の下部に設けられ、炭素質粒体Aにその内部を降下させる下部電極25と、炉体21の内周面と管状構造体24及び下部電極25の外周面との間に存在する断熱層26と、を備える。すなわち、熱処理部20における炭素質粒体Aは、燃焼室23、管状構造体24、下部電極25の順に降下する。
【0029】
炉体21は、図示しない耐火物で内張りされた円筒状の炉殻である。耐火物は、例えば耐火レンガである。炉体21の中心軸上には、炭素質粒体Aに直接通電する円柱状の上部電極22が設けられる。上部電極22は、炉体21の上方に設けられているチャージングホッパー15及びスカート16内部、さらに燃焼室23内部を貫通し、管状構造体24の内部にまで伸びている。
【0030】
炉体21の内部には、上部電極22を囲うように燃焼室23が設けられている。燃焼室23は、上述の投入部10のスカート16から投入された炭素質粒体Aを一時的に貯蔵する円筒状の空間である。燃焼室23の内部空間は、その側面を炉体21の内周面によって、その上面をスカート16の外周と炉体21の内周上部とを繋いでなる炉蓋211によって、その底面を管状構造体24の外周面に存在する断熱層26の上面によって、画成されている。炉蓋211は、例えば、耐熱ボードで構成されているが、キャスターや耐火物で内張りされた鋼材で構成しても良い。断熱ボードは、例えば耐熱繊維からなる成形体を用いても良い。また、図4に示すように、スカート16は、燃焼室23の上面を貫通して当該燃焼室23内部に突出し、スカート16の下端に設けられた開口部162は、燃焼室23の底面と所定の距離だけ上下方向に離間している。この所定の距離は、例えば30~100cmであり、好ましくは50~80cmである。この所定の距離とスカート16の開口部162の径を調整することによって、炭素質粒体Aは、開口部162から燃焼室23の底部まで錘状に連続して存在するように堆積する。
【0031】
煙突231は、燃焼室23に設けられる。特に、円筒状の燃焼室23の周方向に等間隔に複数設けられることが好ましい。周方向に等間隔に複数設けるとは、例えば2つ設けるのであれば180°ごとに、3つ設けるのであれば120°ごとに、4つ設けるのであれば90°ごとに、燃焼室23の中心軸を中心として複数の煙突231を設けるという意味である。本実施形態では、煙突231は180°ごとに2つ設けられている。
【0032】
燃焼室23の下部には、上部電極22の少なくとも一部を囲うようにして導電性の管状構造体24が設けられている。管状構造体24は、例えば人造黒鉛からなる。管状構造体24は、その上下端にそれぞれ開口部241、242を備え、開口部241によって燃焼室23と、開口部242によって管状構造体24の下部に設けられる下部電極25内部と、それぞれ連通している。下部電極25は、管状構造体24の下部に、上部電極22に対向し且つ所定の距離だけ下方に離間して設けられる円筒状の電極である。下部電極25は、その上下端にそれぞれ開口部251、252を備える。下部電極25の上端に設けられた開口部251は、下部電極25の上端を囲うように設けられたツバブロック253を介して、管状構造体24の下端に設けられた開口部242と電気的に接続されている。従って、上部電極22及び下部電極25が通電されると、管状構造体24の開口部241から下部電極25の開口部251にかけて加熱帯が形成されることになる。換言すると、炭素質粒体Aは、上部電極22及び下部電極25が通電されることによって管状構造体24内部で熱処理される。なお、熱処理部20の上部電極22、燃焼室23、管状構造体24、開口部241、242、下部電極25、開口部251、252は、全て炉体21の中心軸と同軸上に設けられることが好ましい。
【0033】
管状構造体24及び下部電極25の外周面と炉体21の内周面との間には、例えばカーボンブラックからなる断熱層26が設けられている。この断熱層26は、管状構造体24及び下部電極25周辺に発生する熱を外部と遮断している。
【0034】
[冷却部]
図5乃至7を参照しつつ、冷却部30について説明する。冷却部30には、円筒状の冷却ジャケット31と、排出部32と、弁部33が設けられている。冷却ジャケット31は、炭素質粒体Aがその内部を降下する内部ケーシングの周囲を外部ケーシングで覆う二重ケーシング構造となっており、この二重ケーシング構造内部には冷却水の循環路が設けられている。二重ケーシング構造内部における冷却水の循環路は、例えば図示しないポンプ及び冷却器と接続されており、この循環路を冷却水が循環している。冷却水の循環路は、例えば、二重ケーシング構造内部に設けられた配水管であって、この排水管に冷却水を循環させることで、冷却ジャケット31内の炭素質粒体Aを効率的に冷却することができる。これにより、冷却ジャケット31は、その内部を降下する炭素質粒体Aの熱を内部ケーシング越しに吸収し、炭素質粒体Aを冷却する。なお、熱処理装置1を工業的生産を目的とする規模の装置とすると、冷却ジャケット31の内径、すなわち内部ケーシングの内径を少なくとも50cm以上、より生産性を高めるためには70cm以上とすることが好ましい。
【0035】
また、冷却ジャケット31の上端部付近には下部電極25及び管状構造体24内部へとアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込むガス吹込み孔311が設けられている。ガス吹込み孔311は、冷却ジャケット31の周方向に等間隔に複数設けられることが好ましい。周方向に等間隔に複数設けるとは、例えば2つ設けるのであれば180°ごとに、3つ設けるのであれば120°ごとに、4つ設けるのであれば90°ごとに、冷却ジャケット31の中心軸を中心として複数のガス吹込み孔311を設けるという意味である。本実施形態のガス吹込み孔311は、例えば90°ごとに4つ設けられている。ガス吹込み孔311からアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスが注入されることにより、炉体21内部の炭素質粒体Aが内側から酸化することや燃焼することを防ぐことが出来る。
【0036】
図5に示すように、排出部32は、排出室321と、スカート322と、底盤323と、排出装置324と、排出管325と、を備える。排出部32は、冷却ジャケット31からスカート322を介して降下し、底盤323が支持する炭素質粒体Aを、排出装置324により排出管325から弁部33へと送り出す。
【0037】
排出室321は、冷却ジャケット31において冷却された炭素質粒体Aを冷却及び排出するための空間である。排出室321の内部空間は、その上面において冷却ジャケット31内部と、その底面において当該底面を構成する底盤323の周縁付近に開口した排出管325内部と、それぞれ連通している。すなわち、排出室321は、冷却ジャケット31及び弁部33へと炭素質粒体Aを排出するための排出管325以外に開口がないような構造となっており、その側壁には圧力測定センサ321aが設けられている。この圧力測定センサ321aによって排出室321内部の圧力を測定することが出来る。排出室321内部と炉体21外部との気圧差が-25~200Paであると、炉体21の外部から空気を炉内に吸い込むおそれが低減される。
【0038】
スカート322は、下方へ向けて内径の窄まった円錐台状または円筒状の案内部材である。スカート322は、排出室321内部において、冷却ジャケット31の出口付近から下方に突出し、その先端が底盤323の上面に設けられた排出装置324と対向するように設けられている。スカート322の先端から底盤323の上面までの距離は、スカート322の端部から底盤323上面までに存在する炭素質粒体Aの安息角が、当該炭素質粒体Aの材質によって相違することや、炭素質粒体Aの排出速度を増減させることに対応できるように、適宜調整できる。具体的にはスカート322を上下方向にスライドさせて底盤323上面までの距離を調整し、その距離は、例えば10mmから200mmの範囲で調整することができる。また、スカート322の材質としては、例えば耐熱ステンレス、特にSUS310Sが好適である。
【0039】
底盤323は、冷却ジャケット31及びスカート322内部を降下してきた炭素質粒体Aを受け止める排出室321の底面を構成する部材である。すなわち、底盤323は、その上面において炉内を満たす炭素質粒体Aを支えている。図6に示すように、底盤323内部には冷却水の循環路が設けられている。この冷却水の循環路は、例えば図示しないポンプ及び冷却器と接続されており、この循環路を冷却水が循環している。図中の矢印は、底盤323内部を循環する冷却水の流れを例示している。これにより、底盤323は、受け止めた炭素質粒体Aの熱を上面越し、すなわち排出室321の底面越しに吸収することで、炭素質粒体Aを冷却する。
【0040】
排出装置324は、熱処理部20及び冷却ジャケット31における炭素質粒体Aの単位時間当たりの流量及び排出量を一定に保ちつつ、炭素質粒体Aを排出管325へと排出する。本実施形態の排出装置324は、底盤323の中央付近を貫通する回転軸3241に設けられ、この回転軸を中心に放射状に設けられた複数の羽根3242を回転させる旋回翼式定量排出装置である。回転軸3241には図示しないモータが接続され、モータが駆動することにより複数の羽根3242が回転する。本実施形態の羽根3242は、板状の翼面を回転軸3241と平行な方向に向けた状態で、回転軸3241を中心に90°毎に1枚ずつ計4枚設けられる。各羽根3242の間は離間している。排出装置324は底盤323の直上に設けられているので、スカート322から降下してきた炭素質粒体Aは、一部が羽根3242に支持されるが、大半は羽根3242間の隙間を縫って底盤323に支持される。炭素質粒体Aが底盤323上面に支持された状態でこの複数の羽根3242がスカート322の端部と底盤323上面の間で回転することにより、炭素質粒体Aが底盤323の中心から周縁へと押し出され、炭素質粒体Aの一部が底盤323から溢れて排出管325へと排出される。この炭素質粒体Aが、排出管325の先に設けられた弁部33から排出される。
【0041】
また、排出装置324は、図示しない制御部を備える。この制御部は、弁部33の排出先に設けられた図示しない重量計、例えばロードセルに接続され、弁部33から排出された炭素質粒体Aの重量情報を、弁部33の排出先に設けられたこのロードセルから受信する。排出装置324の制御部は、重量情報の変化に応じて羽根3242の回転速度を調整し、以て炭素質粒体Aの排出量を調整することが出来る。この調整は、予め設定された重量計測間隔に従って、例えば1分ごとに行われる。
【0042】
回転軸3241の内部には冷却水の循環路が設けられており、この冷却水の循環路は、例えば図示しないポンプ及び冷却器と接続されている。例えば、図6に示すように、回転軸3241は、中空構造になっており、内部に冷却水を循環させるための配水管が挿入されている。図中の矢印は、回転軸3241内部を循環する冷却水の流れを例示している。すなわち、冷却水は、ポンプにより配水管を上昇して上端の開口から溢れ、溢れたものが回転軸3241の内部と配水管の外部との隙間を通って冷却器へと排水され、再びポンプによって配水管を上昇することにより、回転軸3241内部を循環することが出来る。これにより、回転軸3241は、炭素質粒体Aの熱を吸収し、炭素質粒体Aを冷却する。なお、回転軸3241の内部は、冷却水で満たされることが好ましい。
【0043】
弁部33は、ケース内部で弁体が駆動することにより、排出部32から排出された炭素質粒体Aを熱処理装置1から排出するバルブである。また、弁部33は、ケース内面に弁体が近接して設けられることにより、その内部に気密な空間を備えるので、所謂エアロックとしての役割を果たすことができる。なお、ここでいうところの気密とは、弁部33によって排出部32内部と外部との圧力分離ができる程度の気密性を指し、完全な密閉状態でない場合も含む。
【0044】
図7に示すように、本実施形態の弁部33は、ロータリーバルブである。すなわち、弁部33は、弁体であるローター331と、ローター331を収容する円筒状のケース332と、排出管333と、を備える。ローター331は、回転軸3311と、この回転軸3311を中心に放射状に設けられた複数の板状部3312と、を備える。回転軸3311には図示しないモータが接続され、モータが駆動することにより複数の板状部3312が回転する。なお、弁部33からの炭素質粒体Aの単位時間当たりの排出量は、排出装置324からのそれと等しく設定され、この設定に基づいてローター331の回転速度が定まる。本実施形態の板状部3312は、その翼面を回転軸3311の回転方向に向けた状態で、回転軸3311を中心に60°毎に1枚ずつ計6枚設けられる。すなわち、複数の板状部3312は、ケース332内部で辛うじて回転可能な程度にケース332の内面に対して近接して配置され、ケース332内部を6つの空間に区分けしている。この6つの空間が、複数の板状部3312の回転により、順次上述の気密な空間となる。また、円筒状のケース332の内部は、その上部において排出管325の内部と、その下部において排出管333の内部と、それぞれ連通している。より詳細には、回転軸3311を中心に複数の板状部3312が回転すると、この6つの空間のうち1つまたは2つの空間が排出管325の内部と、他の1つまたは2つの空間が排出管333の内部と、それぞれ連通することになる。
【0045】
回転軸3311の内部には冷却水の循環路が設けられており、この冷却水の循環路は、例えば図示しないポンプ及び冷却器と接続されている。例えば、回転軸3311は、中空構造になっており、回転軸3311内部の冷却水は、ポンプにより回転軸3311の一端から他端へ向けて流れ、冷却器を介して再び回転軸3311の一端から他端へ向けて流れるように循環する。これにより、回転軸3311は、炭素質粒体Aの熱を吸収し、炭素質粒体Aを冷却する。
【0046】
[1-2.作用]
本実施形態の熱処理装置1の動作について、図8のフローチャートを参照しつつ説明する。最初に、クレーンなどによって炭素質粒体Aの入ったフレコンバッグを持ち上げ、投入部10の上部に設けられた架台11に載置する(ステップS01)。フレコンバッグに入った炭素質粒体Aは、分配ホッパー12に投入される。投入された炭素質粒体Aは、分配ホッパー12の四隅に設けられた4つの孔及び4つのコーン部121から下方へと降下し、これら4つのコーン部121の出口の直下にそれぞれ設けられたフィーダー13へと吐き出される。各フィーダー13上の炭素質粒体Aは、対応する原料ビン14へと送り出される。この時、フィーダー13が炭素質粒体Aを送り出す過程において、炭素質粒体Aに含まれる微粉末は、当該フィーダー13の経路上に設けられた篩を介して分級され、図示しない経路から除去される。この微粉末は、炭素質粒体Aを運搬する過程で生じるものであるが、熱処理する炭素質粒体Aからは可能な限り除去することが望ましい。この微粉末が炭素質粒体Aの隙間に入り込んだ状態で熱処理部20に入ると、炉体21内部の充填度や流動性が局所的に変化し、電気比抵抗を不均一にさせるため、本明細書の課題で述べたような炉内閉塞や通電時の偏流を惹起する虞があるためである。
【0047】
微粉末が除去された炭素質粒体Aは、原料ビン14内部を降下する。このように、炭素質粒体Aは、分配ホッパー12、フィーダー13、原料ビン14において、4つに分配されて降下する(ステップS02)。
【0048】
4つの原料ビン14から吐き出された炭素質粒体Aは、チャージングホッパー15及びスカート16内部を降下することにより、スカート16の開口部162から熱処理部20の燃焼室23へと投入される。より詳細には、チャージングホッパー15及びスカート16内部には、後述の上部電極22が貫通しているので、炭素質粒体Aは、チャージングホッパー15及びスカート16の内周面と上部電極22の外周面との間を縫って降下し、燃焼室23へと投入される(ステップS03)。
【0049】
スカート16の開口部162と燃焼室23の底面は所定の距離だけ上下方向に離間しているので、スカート16の開口部162から投入された炭素質粒体Aは、上部電極22を中心に据えて燃焼室23内部で例えば安息角を成して錘状に堆積し、その一部が管状構造体24内部へと降下する。より詳細には、上部電極22は管状構造体24内部を貫通しているので、炭素質粒体Aは上部電極22の外周面と管状構造体24の内周面との間を縫って降下する。(ステップS04)。
【0050】
上部電極22及び下部電極25に通電することにより、管状構造体24内部を降下する炭素質粒体Aは直接通電され、当該炭素質粒体Aに発生するジュール熱により熱処理される(ステップS05)。この熱処理によって、炭素質粒体Aは黒鉛化する。熱処理された炭素質粒体Aは、下部電極25内部を降下し、開口部252から冷却部30へと排出され、冷却部30の冷却ジャケット31で冷却される(ステップS06)。
【0051】
冷却ジャケット31で冷却された炭素質粒体Aは、排出部32のスカート322から排出室321内部へと降下し、底盤323上面に支持される。この時、スカート322の端部と底盤323上面の間で錘状に拡がる炭素質粒体Aは、底盤323及び回転軸3241内部を循環する冷却水によって冷却される(ステップS07)。底盤323及び回転軸3241によって冷却された炭素質粒体Aは、羽根3242が回転することにより底盤323から溢れて排出管325へと排出される(ステップS08)。排出管325内部の炭素質粒体Aは、弁部33における複数の板状部3312が回転することにより、回転軸3311内部を循環する冷却水により冷却されながら排出管333へと排出される(ステップS09)。
【0052】
以上のステップS01~S09により、投入部10から投入された炭素質粒体Aは、熱処理部20において熱処理された後、冷却部30において冷却され、最終的に熱処理装置1から排出される。
【0053】
[1-3.効果]
(1)本実施形態の熱処理装置1は、冷却部30を備える。冷却部30は、その内部を降下する炭素質粒体Aを冷却する冷却ジャケット31と、冷却ジャケット31の下方に設けられ、冷却ジャケット31内部を降下してきた炭素質粒体Aを支持する底盤323を備え、底盤323内部には冷却水が循環している。これにより、冷却ジャケット31の中心部分を降下してきたために十分に冷却されないおそれのある炭素質粒体Aについても、確実に冷却することが出来る。
【0054】
(2)本実施形態の冷却部30は、底盤323に設けられた回転軸3241を中心に回転する複数の羽根3242を備える排出装置324を備える。回転軸3241は中空構造になっており、内部を冷却水が循環している。これにより、冷却ジャケット31の中心部分を降下してきたために十分に冷却されないおそれのある炭素質粒体Aについても、より確実に冷却することが出来る。また、回転軸3241が炭素質粒体Aの熱の影響を受けて故障し、排出装置324が稼働しなくなるといったトラブルの発生を防ぐことが出来る。
【0055】
(3)本実施形態の冷却部30は、ロータリーバルブである弁部33を備え、弁部33の回転軸3311は、中空構造になっており、内部を冷却水が循環している。これにより、炭素質粒体Aを確実に冷却することが出来る。また、回転軸3311が炭素質粒体Aの熱の影響を受けて故障し、弁部33が稼働しなくなるといったトラブルの発生を防ぐことが出来る。さらに、回転軸3311を中心に回転する複数の板状部3312は、ケース332内部で辛うじて回転可能な程度にケース332の内面に対して近接して配置される。このような場合であっても、炭素質粒体Aの熱は回転軸3311に吸収されるので、例えば板状部3312が熱膨張してケース332の内面と競り合い、板状部3312が回転しなくなるおそれが低減される。
【0056】
(4)本実施形態の排出装置324は、制御部を備え、この制御部は、弁部33の排出先に設けられる重量計と接続され、この重量計からの重量情報を受信することによって、複数の羽根3242の回転速度を調整する。これにより、冷却ジャケット31内部を一定の速度で炭素質粒体Aが降下するので、均一な冷却が可能となる。
【0057】
[2.他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0058】
(1)冷却水の循環路は、上述の実施形態の態様に限られない。上述の実施形態では、底盤323の内部に冷却水の循環路を設けたが、例えば底盤323の表面に配水管を露出させ、この配水管に冷却水を循環させても良い。また、冷却ジャケット31は、二重ケーシング構造の内部に冷却水の循環路として配水管を備えたが、さらに炭素質粒体Aが降下する冷却ジャケット31内部に格子状に配水管を設け、この配水管にも冷却水を流しても良い。炭素質粒体Aはこの格子の目を通過しながら降下するので、冷却効率が高まる。
【0059】
(2)上述の実施形態では、排出装置324を回転軸から放射状に延びる複数の羽根からなるものとしたが、これに限られない。例えば、底盤323の中央付近に設けられ、所定の間隔で開閉するゲートバルブであっても良い。この場合、排出管325は、ゲートバルブの直下に設けられる。また、ゲートバルブが炭素質粒体Aの熱の影響を受けないように、ゲートバルブ自身またはその付近に冷却水の循環路を設けても良い。
【0060】
(3)上述の実施形態では、弁部33をロータリーバルブとしたが、ダブルダンパーやトリプルダンパーとしても良い。他にも、複数のバタフライバルブの組み合わせなど、弁部33内部に気密な空間を構成するように各種バルブを採用することが出来る。弁体がローター以外の場合にも、弁体内部に冷却水の循環路を設けることにより、弁体が熱膨張して弁部33のケース332内面と競り合うことを防ぐことが出来る。また、弁体において冷却水の循環路が設けられる個所は、弁体の回転軸に限られない。
【0061】
(4)上記の実施形態の弁部33においては回転軸3311の内部には冷却水の循環路が設けられているものとしたが、さらにケース332内部に冷却水を循環させても良い。この場合、ケース332は、炭素質粒体Aがその内部を降下する内部ケーシングの周囲を外部ケーシングで覆う二重ケーシング構造であり、この二重ケーシング構造内部には冷却水の循環路が設けられている。二重ケーシング構造内部における冷却水の循環路は、例えば図示しないポンプ及び冷却器と接続されており、この循環路を冷却水が循環している。
【0062】
(5)上述の実施形態では、ローター331の回転速度を排出装置324の単位時間当たりの排出量に基づいて定めたが、排出装置324の排出量に拘わらずローター331の回転速度を一定としても良い。この場合、ローター331の回転速度は、排出装置324の単位時間当たりの最大排出量を許容できる速度とする。
【0063】
(6)上述の実施形態では、羽根3242の枚数を4枚、板状部3312の枚数を6枚としたが、これに限られない。例えば、羽根3242の枚数を2枚、板状部3312の枚数を8枚としても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 熱処理装置
10 投入部
11 架台
12 分配ホッパー
121 コーン部
13 フィーダー
13a 絶縁体
14 原料ビン
141 円筒部
142 コーン部
15 チャージングホッパー
151、152 開口部
16 スカート
161、162 開口部
20 熱処理部
21 炉体
211 炉蓋
22 上部電極
23 燃焼室
231 煙突
24 管状構造体
241、242 開口部
25 下部電極
251、252 開口部
253 ツバブロック
26 断熱層
30 冷却部
31 冷却ジャケット
311 ガス吹込み孔
32 排出部
321 排出室
321a 圧力測定センサ
322 スカート
323 底盤
324 排出装置
3241 回転軸
3242 羽根
325 排出管
33 弁部
331 ローター
3311 回転軸
3312 板状部
332 ケース
333 排出管
A 炭素質粒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8