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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240906BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240906BHJP
   G09G 3/3233 20160101ALI20240906BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240906BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G09F9/30 330
G09F9/30 365
G09G3/20 612G
G09G3/20 624B
G09G3/20 642C
G09G3/20 670J
G09G3/20 670K
G09G3/20 670L
G09G3/20 670M
G09G3/20 680G
G09G3/20 680H
G09G3/3233
H10K59/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020100390
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021196397
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】520272868
【氏名又は名称】武漢天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 玄士朗
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-061184(JP,A)
【文献】特開2008-235607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0079317(US,A1)
【文献】特開2005-005252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0140273(US,A1)
【文献】特開2010-153126(JP,A)
【文献】特開2006-059879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0350891(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0211308(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110349533(CN,A)
【文献】中国実用新案第208596507(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/00-9/46
G09G3/00-5/42
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置であって、
樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルム上の発光素子と、
前記樹脂フィルム上の、前記発光素子への電流量を制御する駆動薄膜トランジスタと、
前記樹脂フィルム上の加熱電極と、を含み、
前記加熱電極が発熱している間、前記駆動薄膜トランジスタのチャネルの温度は、前記発光素子の発光領域の温度より高く、
前記加熱電極の少なくとも一部は、絶縁体を挟んで前記駆動薄膜トランジスタのゲート電極と対向し、前記ゲート電極の電位を決める保持容量の一部を構成する、
表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
平面視において、前記駆動薄膜トランジスタのチャネルの少なくとも一部が、前記加熱電極の少なくとも一部と重なる、
表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記加熱電極は、平面視において、前記発光素子の発光領域の外側に形成されている、
表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置であって、
平面視において、前記駆動薄膜トランジスタのチャネルの全領域が、前記加熱電極の少なくとも一部と重なる、
表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記発光素子を含む複数の発光素子及び前記複数の発光素子の画素回路を含む表示領域と、
前記画素回路を制御する制御回路と、
前記表示領域を挟むように配置された第1バス及び第2バスと、
前記加熱電極を含む複数の加熱電極と、
を含み、
前記二つのバスそれぞれは、接続パッドを介して前記制御回路に接続され、
前記複数の加熱電極の各加熱電極は、前記表示領域内を延びており、各加熱電極の一端は前記第1バスに接続し他端は前記第2バスに接続している、
表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記加熱電極が発熱している間、前記駆動薄膜トランジスタのチャネルの温度は80℃以上であり、前記発光素子の発光領域の温度は70℃以下である、
表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記加熱電極は、前記発光素子の発光期間外において、加熱電力が供給される、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(Organic Light-Emitting Diode)素子は電流駆動型の自発光素子であるため、バックライトが不要となる上に、低消費電力、高視野角、高コントラスト比が得られるなどのメリットがあり、フラットパネルディスプレイの開発において期待されている。
【0003】
アクティブマトリックス(AM)タイプのOLED表示装置は、画素を選択するトランジスタと、画素に電流を供給する駆動トランジスタとを含む。OLED表示装置におけるトランジスタは、TFT(Thin Film Transistor)であり、LTPS(Low Temperature Poly-silicon)TFTや酸化物半導体TFTが使用される。
【0004】
TFTは、閾電圧や電荷移動度にばらつきを持っている。駆動トランジスタは、OLED表示装置の発光強度を決定するので、こうした電気特性にばらつきがあると、問題となる。そこで、一般のOLED表示装置には、駆動トランジスタの閾値電圧のバラツキや変動を補正する補正回路が実装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-266564号公報
【文献】特開2007-81094号公報
【文献】特開平8-211368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂フィルム、特に、ポリイミドフィルム上に形成されるフレキシブルOLED装置において、起動後1~2時間の間に輝度が数%低下する、大きな初期輝度変化が見られる。これは、駆動TFTにおいて大きな電流ドリフトが生じ、この電流ドリフトが、大きな初期輝度変化を引き起こすことがわかった。したがって、駆動トランジスタの電流ドリフトを低減して初期輝度変化を低減できる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の表示装置は、発光素子と、前記発光素子への電流量を制御する駆動薄膜トランジスタと、加熱電極と、を含む。前記加熱電極が発熱している間、前記駆動薄膜トランジスタのチャネルの温度は、前記発光素子の発光領域の温度より高い。
【0008】
本開示の一態様の表示装置は、発光素子と、前記発光素子への電流量を制御する駆動薄膜トランジスタと、加熱電極と、を含む。前記加熱電極の少なくとも一部は、絶縁体を挟んで前記駆動薄膜トランジスタのゲート電極と対向し、前記ゲート電極の電位を決める保持容量の一部を構成する。平面視において、前記駆動薄膜トランジスタのチャネルの少なくとも一部と前記加熱電極の少なくとも一部が重なっている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、自発光素子を含む表示装置における初期輝度変化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】表示装置であるOLED表示装置の構成例を模式的に示す。
図2】ポリイミド基板OLED表示装置の起動からの輝度の時間変化の測定結果を示す。
図3】ポリイミド基板上のTFTの、電流バイアスストレス(CBS)による電流変動の測定結果を示す。
図4】TFTの温度と電流instabilityとの関係を示す図である。
図5】TFT基板の配線レイアウトの例を示す。
図6】実施形態に係る画素回路の構成例を示す。
図7】1フレーム期間において、図6に示す画素回路を制御する信号のタイミングチャートを示す。
図8】駆動トランジスタを含む画素回路のデバイス構造例の平面図を示す。
図9図8における、IX-IX´切断線での断面図を模式的に示す。
図10図8における、X-X´切断線での断面図を模式的に示す。
図11】加熱電極MCHが放熱している間の、駆動トランジスタにおける積層方向の温度分布のシミュレーション結果を示す。
図12】加熱電極MCHが放熱している間の、画素回路における面内方向での温度分布のシミュレーション結果を示す。
図13】加熱電極MCHの両端の加熱電圧と加熱電極を流れる加熱電流との関係のシミュレーション結果を示す
図14図13に示す加熱電圧に対する、駆動トランジスタのチャネル及び有機発光膜OELの温度応答のシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照して実施形態を具体的に説明する。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【0012】
以下において、OLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置のように、駆動電流により発光する発光素子を使用する自発光型表示装置における、駆動電流ドリフトを改善するための技術を開示する。これにより、自発光型表示装置における輝度変化を低減できる。
【0013】
樹脂フィルム、特に、ポリイミドフィルム上に形成されるフレキシブルOLED装置において、起動後1~2時間の間に、輝度が数%低下する大きな初期輝度変化が見られる。フレキシブル基板上のTFT(Thin Film Transistor)とガラス基板上のTFTの比較評価の結果、フレキシブル基板上のTFTでは、電流バイアスを印加し続けると、ガラス基板上のTFTと比較して、大きな電流ドリフトが生じていることが分かった。駆動TFTにおけるこの電流ドリフトが、OLED装置の初期輝度変化を引き起こすことがわかった。
【0014】
本明細書の実施例は、駆動TFTの加熱する発熱電極を表示領域に形成し、駆動TFTを加熱することで、駆動TFTの電流ドリフトを低減する。なお、本明細書の実施例の特徴は、OLED表示装置と異なる種類の自発光表示装置に適用することができる。
[表示装置構成]
【0015】
図1は、表示装置であるOLED表示装置10の構成例を模式的に示す。OLED表示装置10は、OLED素子(発光素子)が形成されるTFT(Thin Film Transistor)基板100と、OLED素子を封止する封止基板200と、TFT基板100と封止基板200とを接合する接合部(ガラスフリットシール部)300を含んで構成されている。TFT基板100と封止基板200との間には、例えば、乾燥窒素などの不活性ガスが封入されており、接合部300により封止されている。
【0016】
TFT基板100の表示領域(アクティブエリアとも呼ぶ)125の外側のカソード電極形成領域114の周囲に、走査回路131、発光制御回路132、ドライバIC134、デマルチプレクサ136が配置されている。ドライバIC134は、FPC(Flexible Printed Circuit)135を介して外部の装置と接続される。走査回路131はTFT基板100の選択線を駆動し、発光制御回路132は発光制御線を駆動する。
【0017】
ドライバIC134は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて実装される。ドライバIC134は、回路131、132に電源及びタイミング信号(制御信号)を与える。さらに、ドライバIC134は、デマルチプレクサ136に、データ信号を与える。
【0018】
デマルチプレクサ136は、ドライバIC134の一つのピンの出力を、d本(dは2以上の整数)のデータ線に順次出力する。デマルチプレクサ136は、ドライバIC134からのデータ信号の出力先データ線を、走査期間内にd回切り替えることで、ドライバIC134の出力ピン数のd倍のデータ線を駆動する。
【0019】
表示領域125は、複数のOLED素子(画素)及び複数の画素それぞれの発光を制御する複数の画素回路を含む。カラーOLED表示装置において、各OLED素子は、例えば、赤、青又は緑のいずれかの色を発光する。複数の画素回路は、画素回路アレイを構成する。
【0020】
後述するように、各画素回路は、駆動TFT(駆動トランジスタ)と、駆動TFTの駆動電流を決める信号電圧を保持する保持容量を含む。データ線が伝送するデータ信号は、補正されて保持容量に蓄積される。保持容量の電圧は、駆動TFTのゲート電圧(Vgs)を決定する。補正されたデータ信号が駆動TFTのコンダクタンスをアナログ的に変化させ、発光階調に対応した順バイアス電流をOLED素子に供給する。なお、本実施例の特徴は補正回路が組み込まれていない画素回路の表示装置にも適用できる。
[TFTの電流instability]
【0021】
本明細書の実施例のOLED表示装置10は、起動後の輝度変化(初期輝度変化)を低減するための駆動TFTを加熱する。図2は、ポリイミド基板OLED表示装置の起動からの輝度の時間変化の測定結果を示す。具体的には、図2は、周囲温度が50°における輝度相対値の時間変化と、周囲温度が室温における輝度相対値の時間変化を示す。X軸は輝度相対値を示し、Y軸は起動からの経過時間を示す。
【0022】
図2における破線の円25において示すように、OLED表示装置10の輝度は、起動後1~2時間の間に低下する。周囲温度50℃において、初期輝度低下は小さいが、周囲温度が室温の場合に、輝度が大きく低下し、起動直後の輝度に対して、2時間後の輝度は3%近く低下している。ポリイミド基板上のTFTでは、電流バイアスが印加され続けると電流ドリフトが生じ、この電流ドリフトがOLED表示装置の初期輝度低下を引き起こす。
【0023】
図3は、ポリイミド基板上のTFTの、電流バイアスストレス(CBS)による電流変動の測定結果を示す。具体的には、図3は、ガラス基板上に形成されたポリイミド膜上のTFTの電流変動207と、ポリイミド膜を形成することなく、ガラス基板上に形成されたTFTの電流変動209とを示す。X軸は電流供給開始からの経過時間を示し、Y軸はドレインソース電流Idsを示す。周囲温度は27°であり、ドレインソース電圧Vdsは、-10.1Vであった。また、電流供給開始時のドレインソース電流Idsは、約29nAであった。
【0024】
ポリイミド膜が形成されていないガラス基板上のTFTは、ドレインソース電流Idsの大きな変化(Instability)を示していない(線209)。一方、ポリイミド層上に形成されたTFTは、ドレインソース電流Idsの大きな増加を示す。
【0025】
このように、TFTの下にポリイミド層が存在しない場合、ドレインソース電流のInstability(Ids増加)が見られないため、TFTの電流のInstability(Ids増大)は、ポリイミド層が原因であることが分かる。これは、水分を吸収したポリイミド膜に電界が印加されることで、ポリイミド膜中に負電荷が誘起され、これによりTFTのVth(閾値電圧)がシフトしていると推定される。
【0026】
また、画素回路内の補正回路(Vth補正回路)は、駆動TFTのVthの変化を補償するように、映像信号に応じた駆動TFTのゲートソース電圧を決定する。Vthのシフトに対して、補正回路が、Ids電流の増加を加味してVthを補正するので、映像信号に応じた駆動TFTのゲートソース電圧が減少し、OLED素子に供給される電流が低下する。その結果、OLED表示装置10の輝度が低下する。実際に、補正回路を含む特定の画素回路のシミュレーション結果は、20%の駆動TFTのドレインソース電流の増大により、OLED素子の発光電流が約2%低下することを示した。
【0027】
発明者らの研究から、TFTを加熱して高温にすることで、電流instabilityを一時的に抑制できることが分かった。具体的には、TFTのチャネル温度を80℃以上にすることで、電流instabilityを実質的に一時的に消失させることができる。また、加熱電極MCHからの放熱の間、OLED素子の表示領域を70℃以下に維持することで、加熱電極からの放熱によるOLED素子の発光への悪影響を防ぐことができる。
【0028】
図4は、TFTの温度と電流instabilityとの関係を示す図である。グラフ211は、加熱前の初期状態におけるTFTのドレインソース電流の時間変化を示す。グラフ213は、TFTを120°で加熱した後の、TFTのドレインソース電流の時間変化を示す。グラフ215は、加熱後に145時間放置した後の、TFTのドレインソース電流の時間変化を示す。
【0029】
グラフ213から理解されるように、TFTを加熱することで、電流instabilityを消失させることができる。しかし、グラフ215が示すように、加熱後、ある程度の時間放置すると、電流Instabilityが再現する。従って、OLED表示装置10の製造工程における加熱エージング処理はTFTの電流Instabilityに対する十分な対策にならず、OLED表示装置10内に駆動TFTの加熱機能を組み込むことが重要である。
[OLEDパネルの配線レイアウト]
【0030】
図5は、TFT基板100の配線レイアウトの例を示す。ポリイミド基板SUB上に、表示領域125が形成されている。なお、本実施形態の加熱機構は、フレキシブル基板としてのポリイミド層を含む表示装置の他、例えば、ガラス基板と駆動トランジスタとの間にポリイミド層を含む表示装置にも適用できる。
【0031】
表示領域125は、マトリックス状に配置された複数の画素PXを含む。表示領域125の外側、図5において左側に、二つのシフトレジスタVSR1及びVSR2が形成されている。シフトレジスタVSR1及びVSR2は、走査回路131に含まれる。シフトレジスタVSR1は、X軸に沿って延び、Y軸に沿って配列された選択線S1を順次選択して、選択信号を与える。シフトレジスタVSR2はX軸に沿って延び、Y軸に沿って配列された選択線S2を順次選択して、選択信号を与える。
【0032】
シフトレジスタVSREは、発光制御回路132に含まれる。シフトレジスタVSREは、X軸に沿って延び、Y軸に沿って配列された発光制御線EMIを順次選択して、発光制御信号を与える。
【0033】
画素回路に電源電圧を与える電源線PVDのパターンは、表示領域125の周囲を囲む線と、Y軸に沿って延び、X軸に沿って配列され、表示領域125を通過する複数の線とを含む。電源線PVDは、画素回路それぞれに一定の電源電位を与える。一定の電源電位が、接続パッドPD1及びPD2を介してドライバIC134から、電源線PVDに対して供給される。
【0034】
加熱電位供給バスVH1は、表示領域125の左側において、Y軸に沿って延びている。加熱電位供給バスVH2は、表示領域125の右側において、Y軸に沿って延びている。第1の加熱電位が、接続パッドPD3を介して外部回路から、加熱電位供給バスVH1に与えられる。接続パッドPD4から、第1の加熱電位と異なる第2の加熱電位が加熱電位供給バスVH2に与えられる。
【0035】
表示領域125内をX軸に沿って延び、Y軸に沿って配列された加熱電極MCHが、加熱電位供給バスVH1及びVH2の間に配置されている。各加熱電極MCHは、加熱電位供給バスVH1及びVH2に接続し、それら間の電圧で決まる加熱電力(加熱電流)が与えられる。加熱電力が与えられている間、各加熱電極MCHは放熱し、対応する画素回路それぞれの駆動TFTを加熱する。
【0036】
データ線VDATAは、Y軸に沿って延び、X軸に沿って配列されている。ドライバIC134は、各データ線VDATAに対して、選択されているOLED素子(画素又は副画素)の輝度を規定するデータ信号を与える。リセット線VRSTは、表示領域125内をX軸に沿って延び、Y軸に沿って配列されている。一定のリセット電位が、ドライバIC134から、接続パッドPD5及び表示領域125の左右の配線を介して、リセット線VRSTに対して供給される。
[画素回路]
【0037】
図6は、実施形態に係る画素回路の構成例500を示す。画素回路500は、駆動トランジスタを加熱するための加熱電極を含む。加熱電極からの放熱により駆動トランジスタを加熱することで、OLED表示装置10の起動後の初期輝度の低下を抑制できる。なお、加熱機構は、本例と異なる画素回路に適用でき、閾値電圧補正機能を有していない画素回路にも適用できる。
【0038】
画素回路500は、ドライバIC134から供給されるデータ信号を補正し、その補正したデータ信号によりOLED素子の発光を制御する。画素回路500は、ゲート、ソース及びドレインを持った7つのトランジスタ(TFT)M1~M7を含む。本例において、トランジスタM1~M7はP型TFTである。なお、本実施形態の加熱機構は、N型半導体トランジスタや酸化物半導体を使用する画素回路にても適用できる。
【0039】
トランジスタM3は、OLED素子E1への電流量を制御する駆動トランジスタである。駆動トランジスタM3は、電源線PVDからOLED素子E1に与える電流量を、保持容量Cstが保持する電圧に応じて制御する。OLED素子E1のカソードは、カソード電源線VEEに接続されている。保持容量Cstは、駆動トランジスタM3のゲートソース間電圧(単にゲート電圧とも呼ぶ)を保持する。
【0040】
トランジスタM1及びM6は、OLED素子E1の発光の有無を制御する。トランジスタM1は、ソースが電源線PVDに接続され、ドレインに接続された駆動トランジスタM3への電流供給をON/OFFする。トランジスタM6は、ソースが駆動トランジスタM3のドレインに接続され、ドレインに接続されたOLED素子E1への電流供給をON/OFFする。トランジスタM1及びM6は、それぞれ、発光制御線EMIからゲートに入力される発光制御信号により制御される。
【0041】
トランジスタM7は、OLED素子E1のアノードへのリセット電位の供給のために動作する。トランジスタM7は、選択線S1からの選択信号によりONにされると、リセット線VRSTからリセット電位をOLED素子E1のアノードへ与える。
【0042】
トランジスタM5は、駆動トランジスタM3のゲートへのリセット電位の供給の有無を制御する。トランジスタM5は、選択線S1からゲートに入力される選択信号によりONにされると、リセット線VRSTからリセット電位を駆動トランジスタM3のゲートに与える。なお、OLED素子E1のアノードへのリセット電位と駆動トランジスタM3のゲートへのリセット電位は異なっていてもよい。
【0043】
トランジスタM2は、データ信号を供給する画素回路500を選択するための選択トランジスタである。トランジスタM2のゲート電位は、選択線S2から供給される選択信号により制御される。選択トランジスタM2は、ONのとき、データ線VDATAを介して供給されるデータ信号を、駆動トランジスタM3のゲート(保持容量Cst)に与える。
【0044】
本例において、選択トランジスタM2(ソース及びドレイン)は、データ線VDATAと駆動トランジスタM3のソースとの間に接続されている。さらに、トランジスタM4は、駆動トランジスタM3のドレインとゲートとの間に接続されている。
【0045】
トランジスタM4は、駆動トランジスタM3の閾値電圧を補正するために動作する。トランジスタM4がONであるとき、駆動トランジスタM3はダイオード接続状態のトランジスタを構成する。データ線VDATAからのデータ信号は、ONである選択トランジスタM2、駆動トランジスタM3及びトランジスタM4のチャネル(ソース及びドレイン)を介して、保持容量Cstに与えられる。
【0046】
保持容量Cstは、駆動トランジスタM3の閾値電圧Vthに応じて補正されたデータ信号(ゲートソース間電圧)を保持する。図6の例において、保持容量Cstの一方の電極は駆動トランジスタM3のゲートに接続され、他方の電極は加熱電極MCHに含まれる。このように、保持容量Cstの一つの電極を加熱電極として構成することで、効率的に駆動トランジスタを加熱する機構を画素回路に含めることができる。
【0047】
図7は、1フレーム期間において、図6に示す画素回路500を制御する信号のタイミングチャートを示す。図7は、N番目の行を選択し、データ信号を画素回路500に書き込むためのタイミングチャートを示す。以下において、説明の容易のため、信号を伝送する線又はノードと同様の符号により、信号又は電位を識別する。具体的には、図7は、発光制御線EMIの信号(発光制御信号EMI)、選択線S1の信号(選択信号S1)、選択線S2の信号(選択信号S2)、そして図6に示すノードN1における電位(ノード電位N1)の、1フレームにおける変化を示す。ノードN1の電位は、駆動トランジスタM3のゲート電位と同一である。
【0048】
時刻T1において、発光制御信号EMIがLowからHighに変化する。これに応じて、時刻T1において、トランジスタM1及びM6はOFFとなる。時刻T1において、選択信号S1及びS2はHighである。これら制御信号に応じて、トランジスタM2、M4、M5及びM7は、OFFである。時刻T1の後の時刻T2まで、これらのトランジスタ状態が維持される。ノード電位N1は、前回フレームの信号電位にある。
【0049】
時刻T2において、選択信号S1は、HighからLowに変化する。時刻T2において、発光制御信号EMI及び選択信号S2はHighである。選択信号S1の変化に応じて、トランジスタM5及びM7がONとなる。トランジスタM1、M2、M4、M6は、OFFである。
【0050】
トランジスタM5がONとなることで、ノード電位N1は、リセット線VRSTからのリセット電位に変化する。リセット電位は、時刻T2から時刻T3までノード電位N1として与えられる。1フレーム毎にノード電位N1がリセット電位となることで、駆動トランジスタのゲート電位も毎フレーム同じ電位になる。これにより、駆動トランジスタM3が持つ履歴効果による影響を低減することができる。トランジスタM7がONとなることで、OLED素子E1のアノードにリセット線VRSTからリセット電位が与えられる。
【0051】
時刻T3において、選択信号S1は、LowからHighに変化する。時刻T3において、発光制御信号EMI及び選択信号S2はHighである。選択信号S1の変化に応じて、トランジスタM5及びM7がOFFとなる。時刻T3から時刻T4まで、トランジスタM1、M2、M4~M7は、OFFである。
【0052】
時刻T4において、選択信号S2は、HighからLowに変化する。時刻T4において、発光制御信号EMI及び選択信号S1はHighである。選択信号S2の変化に応じて、トランジスタM2、M4がONとなる。トランジスタM1、M5M6及びM7はOFFである。
【0053】
ランジスタM4がONであるため、駆動トランジスタM3はダイオード接続されている。トランジスタM2はONであるため、データ線VDATAからのデータ信号は、トランジスタM2、M3及びM4を介して、保持容量Cstに書き込まれる。
【0054】
保持容量Cstに書き込まれる電圧は、データ信号に対して駆動トランジスタM3の閾値電圧Vthに対する補正がなされた電圧である。時刻T4から時刻T5までの期間において、画素回路500へのデータ信号の書き込み及びそのVth補正がなされる。
【0055】
時刻T5において、選択信号S2は、LowからHighに変化する。時刻T5において、発光制御信号EMI及び選択信号S1はHighである。選択信号S2の変化に応じて、トランジスタM2、M4がOFFとなる。トランジスタM1、M2、M4~M7はOFFである。時刻T5から時刻T6まで、制御信号及びトランジスタの状態は、維持される。
【0056】
時刻T6において、発光制御信号EMIがHighからLowに変化し、トランジスタM1及びM6がOFFからONに変化する。選択信号S1及びS2はHighであり、トランジスタM2、M4、M5及びM7はOFFのままである。駆動トランジスタM3は、保持容量Cstに保持されている補正されたデータ信号に基づき、OLED素子E1に与える駆動電流を制御する。つまりOLED素子E1が発光する。
[デバイス構造]
【0057】
以下において、駆動トランジスタの加熱機構を含む画素回路のデバイス構造例を説明する。図8は、駆動トランジスタM3を含む画素回路のデバイス構造例の平面図を示す。ポリシリコン膜p-Siの駆動トランジスタM3と対向する部分が、駆動トランジスタM3のチャネルを構成する。ゲート電極GMは、コンタクトCONT2により、金属膜MT2を介して、トランジスタM5のソース/ドレインに接続される。駆動トランジスタM3のゲート電極GMと加熱電極MCHとの間に、保持容量Cstが形成される。
【0058】
図8は、二つのOLED素子の有機発光膜OELを示す。図8における下側の有機発光膜OELは、駆動トランジスタM3により駆動電流が供給されるOLED素子の有機発光膜である。このOLED素子のアノード電極は、コンタクトCONT4において金属膜に接続され、当該金属層はトランジスタM6のドレインに接続されている。
【0059】
図8は、Y軸に沿って延びる2本のデータ線VDATA及び1本の電源線PVDを示す。右側のデータ線VDATAは、駆動トランジスタM3へのデータ信号を伝送する。右側のデータ線VDATAは、コンタクトCONT1によって、トランジスタM2のソース/ドレインに接続される。電源線PVDは、駆動トランジスタM3を介して、駆動電流をOLED素子に与える。
【0060】
図8は、X軸に沿って延びる選択線S1、S2、リセット線VRST及び発光制御線EMIを示す。選択線S1は、トランジスタM5及びM7のゲートを含み、それらへの選択信号S1を伝送する。選択線S2は、トランジスタM2及びM4のゲートを含み、それらへの選択信号S2を伝送する。リセット線VRSTは、コンタクトCONT3によって、トランジスタM5のソース/ドレインに接続される。
【0061】
上述のように、駆動トランジスタM3のゲート電極GMと加熱電極MCHとの間に、保持容量Cstが形成される。加熱電極MCHは、駆動トランジスタM3のチャネル及びゲートと対向する部分が幅広(Y軸に沿って長い)である。加熱電極MCHは、画素回路内の駆動トランジスタM3に対向する幅広部と、それらの間の幅狭部(Y軸に沿って短い)とを含む。加熱電極MCHが、保持容量Cstの一部を構成することで、画素回路のデバイス構成を簡便化できる。
【0062】
加熱電極MCHは、平面視において、駆動トランジスタM3のゲート電極GM及びチャネルと対向する。駆動トランジスタM3のゲート電極GMの少なくとも一部及びチャネルの少なくとも一部は、平面視において、加熱電極MCHの少なくとも一部と重なる。図8の例において、ゲート電極GM及びチャネルの全領域が、平面視において、加熱電極MCHに重なる(対向する)。加熱電極MCHとチャネルとの上記位置関係により、駆動トランジスタM3のチャネルを効率的に加熱することができる。
【0063】
一方、加熱電極MCHは、平面視において、OLED素子の発光領域に重なる(対向する)ことなく、分離されている。図8の構成例において、加熱電極MCHは、平面視において、有機発光膜OELから分離されている。発光領域は、有機発光膜OELがアノード電極と接触している一部の領域である。
【0064】
このように、加熱電極MCHが、平面視において、OLED素子の発光領域の外側に形成されていることで、加熱電極MCHによる発熱による発行領域の温度上昇を抑制でき、OLED素子の発光への影響を低減できる。
【0065】
加熱電極MCHが特定の形状及び配置を有することで、加熱電極MCHが発熱している間、駆動トランジスタM3のチャネルの温度は、OLED素子の発光領域の温度より高くなる。加熱電極MCHによって駆動トランジスタM3のチャネルを選択的に加熱することで、駆動トランジスタの閾値電圧の変化によるOLED表示装置の輝度低下を抑制しつつ、熱によるOLED素子の輝度変化を抑制できる。
【0066】
他の例において、加熱電極MCHは、保持容量Cstの一方電極と兼用されず、保持容量Cstとは別の要素として組み込まれてもよい。加熱電極MCHは、平面視においてチャネル領域と全く重なることなく、分離されていてもよい。加熱電極MCHの一部は、OLED素子の表示領域と、平面視において重なっても(対向しても)よい。
【0067】
図9は、図8における、IX-IX´切断線での断面図を模式的に示す。ポリイミド基板SUB上に、下地膜UCが形成されている。ポリシリコン膜p-Siが、下地膜UC上に積層されている。さらに、ゲート絶縁膜GIが、ポリシリコン膜p-Siを覆うように積層されている。下地膜UC及びゲート絶縁膜GIは、例えば、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、又はこれらの積層等の無機膜である。
【0068】
ゲート電極GMは、ゲート絶縁膜GI上に積層されている。本例において、駆動トランジスタM3は、トップゲート構造を有する。なお、本明細書の加熱機構は、ボトムゲート構造のトランジスタを含む画素回路にも適用できる。
【0069】
ゲート電極GMは、例えばMo、W、Nb、MoW、MoNb、Al、Nd、Ti、Cu、Cu合金、Al合金、Ag、Ag合金からなる群より選択される一つの物質の単一層又は異なる物質の積層で構成される。金属層間誘電膜IMDが、ゲート電極GMを覆うように積層されている。金属層間誘電膜IMDは、例えば、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、又はこれらの積層等の無機膜である。
【0070】
加熱電極MCHは、金属層間誘電膜IMD上に積層されている。加熱電極MCHの一部は、金属層間誘電膜IMDを挟んでゲート電極GMと対向し、保持容量Cstを構成している。加熱電極MCHは、例えば、ゲート電極GMと同様の材料で構成することができる。加熱電極MCHは、ゲート電極GMよりも高抵抗の材料、例えば、ITOで形成し、発熱効率を高めてもよい。
【0071】
パッシベーション膜PASが加熱電極MCHを覆うように積層されている。パッシベーション膜PASは、例えば、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、又はこれらの積層等の無機膜である。パッシベーション膜PAS、加熱電極MCH及び金属層間誘電膜IMDを貫通するコンタクトホールが形成され、金属膜MT2がゲート電極GMと接触している。金属膜MT2のコンタクトホール内の部分が、コンタクトCONT2を構成する。金属膜MT2は、例えば、Ti/Al/Ti等の構造を有する。
【0072】
坦化膜PLNが、図9に示す素子全体を覆うように形成されている。平坦化膜PLNは、例えば、有機膜である。
【0073】
図10は、図8における、X-X´切断線での断面図を模式的に示す。ゲート電極GMと同一の金属層は、選択線S2及び発光制御線EMIを含む。加熱電極MCHは、OLED素子の有機発光膜OEL及びアノード電極ANから、平面視において(図10における上下方向において見て)分離されている。
【0074】
金属膜MT2と同一の金属層は、トランジスタM6のドレイン(ポリシリコン膜p-Siの一部)と、アノード電極ANとを接続するためのコンタクトを含む金属膜MT3、を含む。金属膜MT3は、アノード電極と同一層に含まれ、アノード電極ANにつながるコンタクトCONT4と接触している。コンタクトCONT4は、平坦化膜PLNに形成されたコンタクトホール内に形成されている。
【0075】
有機発光膜OELは、画素定義層PDL内に形成された穴において、アノード電極ANと接触している。画素定義層PDLは、OLED素子それぞれの発光領域(画素又は副画素)を規定する穴を有する。画素定義層PDLは、例えば、有機樹脂膜である。アノード電極ANは、例えば、ITO、IZO、ZnO、In2O3等の透明導電層、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr等の金属又はこれらの金属を含む合金の反射層、前記した透明導電層の3層を含む。有機発光膜OEMは、下層側から、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層によって構成される。有機発光膜OEMの積層構造は設計により決められる。
【0076】
有機発光膜OELの上にカソード電極CAが形成されている。カソード電極CAは、表示領域125の全面を覆う形状を有する。トップエミッション型の画素構造において、アノード電極ANは光を反射し、カソード電極CAは光透過性をもっている。カソード電極CAは、例えば、Al、Mg等の金属又はこれらの金属を含む合金で形成される。
【0077】
カソード電極CA上に、薄膜封止TFEが接触して形成されている。薄膜封止TFEは、例えば、下層から、無機絶縁物(例えばSiNx、AlOx)層、有機平坦化膜、無機絶縁物(例えばSiNx、AlOx)層を含む。無機絶縁物層は、信頼性向上のためのパッシベーション層である。さらに、薄膜封止FET上に、λ/4板及び偏光板を外光の反射防止のために配置してもよい。
【0078】
図11及び12は、加熱電極MCHが放熱している間の、駆動トランジスタ及び有機発光膜の温度のシミュレーション結果を示す。図11は、駆動トランジスタにおける積層方向の温度分布を示す。図11のグラフにおいて、X軸は、画素回路内の所定の高さ位置から基板SUBに向かう方向の距離を示す。Y軸は温度を示す。図11は、加熱電極、ゲート電極及びチャネルに対応する領域を、それぞれ、符号MCH、GM、及びp-Siで指示している。図11のシミュレーション結果は、加熱電極、ゲート電極及びチャネルの温度が略一定であることを示す。
【0079】
図12は、画素回路における面内方向での温度分布を示す。X軸は駆動トランジスタの中間から有機発光膜OELに向かう距離を示す。Y軸は温度を示す。有機発光膜OELの端における温度は、薄膜トランジスタの温度から十分に低下していることが示されている。本実施形態に係る加熱電極により、発光領域の温度上昇を抑えつつ、駆動トランジスタのチャネルを効果的に加熱することができる。
[加熱制御]
【0080】
以下において、加熱制御方法を説明する。一例において、ドライバIC134は、電源OFF又はスタンバイ状態等の表示停止からの起動後に、所定の電位を加熱電位供給バスVH1及びVH2それぞれに与え、一定電圧を加熱電極MCHに与え続ける。これにより、簡便な制御によって、常に駆動トランジスタのチャネルを高温の維持することができる。
【0081】
他の一例において、ドライバIC134は、OLED素子の発光期間外(非発光期間)において、加熱電極MCHに電力を供給して放熱させ、OLED素子の発光期間において加熱電極MCHへの電力の供給を停止する。これにより、加熱電極MCHの放熱による表示画像への影響を低減することができる。
【0082】
例えば、ドライバIC134は、OLED表示装置10の起動から映像を表示する前の期間において、全ての加熱電極MCHに電力を供給する。電力共有を停止した後、次の起動まで、加熱電極MCHへの電力供給を停止されている。他の例において、ドライバIC134は、画素行の連続するフレームに対応する発光期間の間のブランキング期間において、対応する加熱電極MCHに電力を供給する。画素が発光している期間において、対応する加熱電極への電力供給は停止される。
【0083】
図13は、加熱電極MCHの両端の電圧(加熱電圧:バスVH1とVH2との間の電位差)と加熱電極MCHを流れる電流(加熱電流)との関係のシミュレーション結果を示す。加熱電流は、加熱電圧の変化に即時に応答して変化している。図14は、図13に示す加熱電圧に対する、駆動トランジスタのチャネル及び有機発光膜OELの温度応答のシミュレーション結果を示す。図14に示すように、チャネル温度は、加熱電圧の変化と略同時に変化している。シミュレーション結果からわかるように、短いブランキング時間であっても、効果的に駆動トランジスタのチャネルを加熱電極MCHにより加熱することができる。
【0084】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 OLED表示装置、100 TFT基板、114 カソード電極形成領域、125 表示領域、131 走査回路、134 ドライバIC、136 デマルチプレクサ、200 封止基板、500 画素回路、Cst 保持容量、EMI 発光制御線、GI ゲート絶縁膜、GM ゲート電極、IDL 層間絶縁膜、IMD 金属層間誘電膜、M1-M7 トランジスタ、MCH 加熱電極、N1 ノード、p-Si ポリシリコン膜、PNL 平坦化膜、PV パッシベーション膜、SUB 基板、UC 下地膜、VRST リセット線、PVD 電源線、VDATA 信号線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14