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  • 特許-硬化性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20240906BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20240906BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C08F290/00
C08G18/62 004
C08G18/28 015
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020101179
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021195411
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘文
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-054089(JP,A)
【文献】特開2012-197436(JP,A)
【文献】特開2016-125049(JP,A)
【文献】特開2016-179966(JP,A)
【文献】国際公開第2011/075549(WO,A1)
【文献】特開平09-077842(JP,A)
【文献】特開昭53-143669(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044546(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/114776(WO,A1)
【文献】特開2001-310920(JP,A)
【文献】特開2006-052277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F283/00-299/08
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有し且つ分子鎖の一方の末端にヒドロキシ基を有するブロック共重合体と、
3つのイソシアネート基を分子中に有する3官能ポリイソシアネート化合物と、
4つのヒドロキシ基を分子中に有する4官能ポリオール化合物と、
1つの(メタ)アクリロイル基と1つのヒドロキシ基とC~C飽和炭化水素とを分子中に有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、
のウレタン化反応生成物を含む、硬化性組成物であって
前記ブロック共重合体のモル数に対する前記3官能ポリイソシアネート化合物のモル数の比は、3以上7以下であり、
前記ブロック共重合体のモル数に対する前記4官能ポリオール化合物のモル数の比は、1以上6以下であり、
前記ブロック共重合体のモル数に対する前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのモル数の比は、2以上8以下であり、
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の(メタ)アクリロイル基を分子中に複数有する前記ウレタン化反応生成物を含む、硬化性組成物
【請求項2】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の(メタ)アクリロイル基、及び、前記3官能ポリイソシアネート化合物由来の前記イソシアネート基の両方を分子中に有する前記ウレタン化反応生成物を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ウレタン化反応生成物は、前記3官能ポリイソシアネート化合物由来の前記イソシアネート基による反応性を有しない、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体のポリオレフィンブロック構造は、エチレン単位及びプロピレン単位のランダム配列構造を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
飽和環状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
飽和鎖状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記ブロック共重合体のヒドロキシ基のモル数に対する前記3官能ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数の比は、1以上60以下であり、
前記4官能ポリオール化合物のヒドロキシ基のモル数に対する前記3官能ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数の比は、1以上3以下であり、
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのヒドロキシ基のモル数に対する前記3官能ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数の比は、1以上60以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光照射などによって硬化する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光照射によって硬化する硬化性組成物としては、例えば、水添ポリブタジエンジオールまたは水添ポリイソプレンジオールから合成された数平均分子量が1,000~20,000であるウレタンアクリレート(A)と、単官能(メタ)アクリレートモノマー(B)と、380nm以上の波長で吸収帯域を持つ開始剤(C)と、を含む硬化性組成物であって、(C)成分の含有量が(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し10~15重量部である硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の硬化性組成物は、電子回路上に塗布されたうえで、光の照射によって硬化され、電子回路被覆用途において使用される。
特許文献1に記載の硬化性組成物は、LED光源からの光であっても硬化され、良好な防湿性及び電気絶縁性などを有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-024761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の硬化性組成物が硬化した硬化物は、必ずしも十分な絶縁破壊強さを有しない場合がある。従って、硬化された後の硬化物が十分な絶縁破壊強さを有することとなる硬化性組成物が要望されている。
【0006】
上記の問題点等に鑑み、本発明は、硬化された後の硬化物が十分な絶縁破壊強さを有することができる硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る硬化性組成物は、
ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有し且つ分子鎖の一方の末端にヒドロキシ基を有するブロック共重合体と、
複数のイソシアネート基を分子中に有するポリイソシアネート化合物と、
複数のヒドロキシ基を分子中に有するポリオール化合物と、
1つの(メタ)アクリロイル基と1つのヒドロキシ基とC~C飽和アルキルとを分子中に有するヒドロキシ(メタ)アクリレートと、
のウレタン化反応生成物を含むことを特徴とする。
上記の硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を分子中に有するウレタン化反応生成物を含むことから、これら反応生成物同士が重合して高分子化され得るため、光照射などによって硬化され得る。
また、硬化した後の硬化物が、十分な絶縁破壊強さを有することができる。
【0008】
本発明に係る硬化性組成物は、前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート由来の(メタ)アクリロイル基、及び、前記ポリイソシアネート化合物由来の前記イソシアネート基の両方を分子中に有する前記ウレタン化反応生成物を含んでもよい。
分子中にイソシアネート基をも有するウレタン化反応生成物は、湿気(水分)によっても互いに結合して高分子化され得るため、湿気によっても十分に硬化される。よって、上記の硬化性組成物は、湿気によっても十分に硬化できる。
【0009】
本発明に係る硬化性組成物において、前記ウレタン化反応生成物は、前記ポリイソシアネート化合物由来の前記イソシアネート基による反応性を有しなくてもよい。
【0010】
前記ブロック共重合体のポリオレフィンブロック構造は、エチレン単位及びプロピレン単位のランダム配列構造を含んでもよい。
【0011】
前記ポリイソシアネート化合物は、2以上4以下の前記イソシアネート基を分子中に有してもよい。
【0012】
前記ポリオール化合物は、2以上4以下の前記ヒドロキシ基を分子中に有してもよい。
【0013】
本発明に係る硬化性組成物は、
飽和環状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
飽和鎖状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
をさらに含んでもよい。
上記の硬化性組成物は、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むことから、上記のブロック共重合体の構造を含むウレタン化反応生成物を、硬化性組成物において良好に溶解させることができる。
また、上記の硬化性組成物は、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むことから、硬化された後の硬化物が十分な耐湿性を有することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る硬化性組成物によれば、硬化された後の硬化物が十分な絶縁破壊強さを有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、ウレタン化反応生成物の一例を模式的に示す模式図である。
図2図2は、ウレタン化反応生成物の他の例を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る硬化性組成物の一実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の硬化性組成物は、ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有し且つ分子鎖の一方の末端にヒドロキシ基を有するブロック共重合体と、
複数のイソシアネート基を分子中に有するポリイソシアネート化合物と、
複数のヒドロキシ基を分子中に有するポリオール化合物と、
1つの(メタ)アクリロイル基と1つのヒドロキシ基とC~C飽和アルキルとを分子中に有するヒドロキシ(メタ)アクリレートと、
のウレタン化反応生成物を含む。
【0018】
本実施形態の硬化性組成物は、上記のウレタン化反応生成物を含み、斯かるウレタン化反応生成物は、ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを有するブロック共重合体構造と、上記ポリイソシアネート化合物由来の構造と、上記ポリオール化合物由来の構造と、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基と、を分子中に有するウレタン化反応生成物(以下、単に「主反応生成物」と称する場合がある)を含む。
上記のウレタン化反応生成物は、分子中に、ベンゼン環構造(6つの環状炭素原子で構成された芳香族炭化水素)、及び、飽和シクロアルキル構造(飽和環状炭化水素構造)のいずれも有しないことが好ましい。
【0019】
本実施形態の硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を分子中に有するウレタン化反応生成物を含むため、紫外線などの光の照射によって、これら生成物同士が重合反応を起こす。これら生成物同士が重合することによって、高分子化(硬化反応)が進行し、硬化することとなる。
硬化した硬化物は、十分な絶縁破壊強さを有することができる。
【0020】
本実施形態の硬化性組成物は、必要に応じて、少なくとも1つのイソシアネート基を分子中にさらに有するウレタン化反応生成物(主反応生成物)を含んでもよい。
この場合、主反応生成物が-NCO(イソシアネート基)を分子中に有することから、空気中の湿気によっても、これら生成物の-NCO同士が反応し、これら生成物同士が結合する。この結合によっても高分子化(硬化反応)が進行するため、硬化を十分に進行させることができる。
【0021】
本実施形態の硬化性組成物は、例えば、ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有するブロック共重合体のモノオール(以下、単に<A成分>とも称する)と、複数のイソシアネート基を分子中に有するポリイソシアネート化合物(以下、単に<B成分>とも称する)と、複数のヒドロキシ基を分子中に有するポリオール化合物(以下、単に<C成分>とも称する)と、1つの(メタ)アクリロイル基と1つのヒドロキシ基とC~C飽和アルキルとを分子中に有するヒドロキシ(メタ)アクリレート(以下、単に<D成分>とも称する)と、のウレタン化反応生成物を含む。
換言すると、本実施形態の硬化性組成物は、例えば、少なくとも<A成分>と<B成分>と<C成分>と<D成分>とをウレタン化反応させたウレタン化反応生成物を含む。
好ましくは、本実施形態の硬化性組成物は、飽和環状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、飽和鎖状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとをさらに含む。
【0022】
上記の硬化性組成物は、例えば、少なくとも<A成分>と<B成分>と<C成分>と<D成分>とをウレタン化反応させることによって得られる。
よって、本実施形態の硬化性組成物は、上述した主反応生成物を含み、ウレタン化反応によって生成した主反応生成物以外の生成物も含む。
また、本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応のために使用された微量のウレタン化反応触媒も含む。
【0023】
<A成分>
A成分は、ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有し且つ分子鎖の一方の末端にヒドロキシ基を有するブロック共重合体である。換言すると、A成分は、ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを有するブロックコポリマーのモノオールである。
詳しくは、上記のブロック共重合体は、分子鎖の両末端部にポリスチレンブロック構造をそれぞれ有し、これらポリスチレンブロック構造の間にポリオレフィンブロック構造を有する。また、上記のブロック共重合体は、分子鎖の片方の末端にヒドロキシ基を有する。
【0024】
ポリオレフィンブロック構造は、エーテル基やエステル基などの極性基を含まず、炭化水素基のみで構成される。斯かる炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。斯かる炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基の両方を含んでいてもよい。ポリオレフィンブロック構造の大半は、飽和炭化水素で構成されていることが好ましい。
なお、本実施形態の硬化性組成物をより硬化させるという点では、ポリオレフィンブロック構造が不飽和炭化水素基を含んでもよく、一方、本実施形態の硬化性組成物の硬化物がより良好な耐熱性や耐候性を有することができるという点では、ポリオレフィンブロック構造における不飽和炭化水素基の割合は少ない方が好ましい。例えば、硬化性組成物の総質量に対して、ポリオレフィンブロック構造の不飽和炭化水素基の割合は、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0025】
ポリオレフィンブロック構造は、構成単位として、エチレン、プロピレン、1,3-ブタジエン(及びその水素添加体)、イソプレン(及びその水素添加体)などの構成単位を有する。ポリオレフィンブロック構造は、通常、飽和結合で構成されているが、不飽和結合を一部に有してもよい。構成単位としては、エチレン、プロピレン、ブチレン(-CHCH(CHCH)―)が好ましい。換言すると、ポリオレフィンブロック構造は、エチレン、プロピレン、及びブチレンのうち少なくとも1種を構成単位として有することが好ましい。
【0026】
ポリオレフィンブロック構造において、各構成単位は、ランダムに配列していてもよい。換言すると、各構成単位は、異なる複数種のモノマーがランダム重合によって分子鎖に組み込まれたものであってもよい。
例えば、ポリオレフィンブロック構造は、エチレン構成単位及びプロピレン構成単位のランダム配列構造を含んでもよい。
【0027】
ポリオレフィンブロック構造における重合度は、例えば、100以上1,000以下である。
【0028】
A成分における各ポリスチレンブロック構造は、構成単位として、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジエチルスチレンなどの構成単位を有する。構成単位としては、これらのうち1種又は複数種を含む。構成単位としては、スチレン、α-メチルスチレンの構成単位が好ましい。換言すると、各ポリスチレンブロック構造は、スチレン又はα-メチルスチレンの少なくとも一方を構成単位として有することが好ましい。
【0029】
各ポリスチレンブロック構造の重合度は、例えば、50以上100以下である。
【0030】
上記のブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンプロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などの片末端にヒドロキシ基を有するものが挙げられる。上記のブロック共重合体としては、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)の片末端にヒドロキシ基を有するものが好ましい。
【0031】
上記のブロック共重合体におけるポリスチレンブロック構造の割合は、10質量%以上50質量%以下であってもよく、20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0032】
なお、上記のブロック共重合体(A成分)は、イソシアネート基やグリシジル基といった反応性基を分子中に含まない。また、上記のブロック共重合体の主鎖中には、ウレタン結合やアミド結合などを構成する窒素(N)、及び、スルホニル基などを構成する硫黄(S)のいずれも含まれていない。
上記のブロック共重合体は、通常、架橋構造を有さず、また、変性されていない。上記のブロック共重合体の分子鎖の末端部は、重合開始剤の残基などであってもよい。
【0033】
上記のごとく分子鎖の片末端にヒドロキシ基を有するブロック共重合体(A成分)の好ましい分子構造を模式的に示すと、下記式(1)で表される。式(1)は、SEEPSの片末端にヒドロキシ基を有する構造を表す。なお、下記式(1)において、pは、50以上100以下、qは、100以上500以下、rは、400以上1,000以下、sは、50以上100以下、mは、500以上1,500以下であってもよい。
【0034】
【化1】
【0035】
上記のブロック共重合体は、例えば10,000以上100,000以下の数平均分子量を有してもよい。
【0036】
A成分としては、市販製品を使用できる。例えば、製品名「セプトン HG252」(クラレ社製)などを使用できる。
【0037】
<B成分>
B成分は、複数のイソシアネート基を分子中に有するポリイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物は、2以上4以下のイソシアネート基を分子中に有することが好ましく、3以上4以下のイソシアネート基を分子中に有することがより好ましい。
【0038】
B成分のイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイシシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類が挙げられる。
また、B成分のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート(H-MDI)、水添化キシリレンジイソシアネート(H-XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、L-リシンジイソシアネート(LDI)、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類が挙げられる。
また、B成分のイソシアネート化合物は、例えば、上記のポリイソシアネート化合物の二量体変性体、三量体変性体、イソシアヌレート体、アダクト変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体などであってもよい。また、上記のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基がブロックされたブロックイソシアネート化合物であってもよい。
【0039】
B成分のポリイソシアネート化合物は、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートの、イソシアヌレート体、アダクト変性体、及びビウレット変性体から選択された少なくとも1種であることが好ましい。B成分のポリイソシアネート化合物は、分子中にイソシアネート基を3つ又は4つ有することが好ましい。B成分のポリイソシアネート化合物は、分子中に、ベンゼン環構造(芳香族環構造)及び飽和シクロアルキル構造(環が炭素原子のみで構成される飽和環状構造)のいずれも有さないことが好ましい。
【0040】
B成分としてのイソシアヌレート体は、例えば、上述したヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の三量体であり、分子中にイソシアネート基を3つ有する。
【0041】
B成分としてのアダクト変性体は、例えば、トリメチロールプロパンと、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネート(上述したHMDIなど)との反応物である。斯かるアダクト変性体は、分子中にイソシアネート基を3つ有する。
【0042】
B成分としては、ベンゼン環を含まず硬化後の耐候性が良好であるという点、また、ウレタン化反応において希釈剤を共存させた場合に該希釈剤への溶解性が良好であるという点で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)とトリメチロールプロパンとが反応したアダクト変性体、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート体(三量体)が好ましい。
【0043】
<C成分>
C成分は、複数のヒドロキシ基を分子中に有するポリオール化合物である。ポリオール化合物としては、炭素数が3以上12以下であり、ヒドロキシ基の数が2以上4以下の化合物が好ましい。
なお、ポリオール化合物は、分子中にエーテル結合又はエステル結合などを含んでもよい。また、ポリオール化合物は、分子中にN(窒素)、P(リン)、又はS(硫黄)を含んでもよい。
【0044】
ヒドロキシ基を2つ有するポリオール化合物(ジオール化合物)としては、例えば、エチレングリコール(炭素数2、-OH基数2)、プロピレングリコール(炭素数3、-OH基数2)、ネオペンチルグリコール(炭素数5、-OH基数2)等が挙げられる。
ヒドロキシ基を3つ有するポリオール化合物(トリオール化合物)としては、例えば、グリセリン(炭素数3、-OH基数3)、トリメチロールプロパン(炭素数6、-OH基数3)等が挙げられる。
ヒドロキシ基を4つ有するポリオール化合物としては、例えば、ジトリメチロールプロパン(炭素数12、-OH基数4)、ジグリセリン(炭素数6、-OH基数4)、エリスリトール(炭素数4、-OH基数4)、ペンタエリスリトール(炭素数5、-OH基数4)、D-トレイトール(炭素数4、-OH基数4)等が挙げられる。
ヒドロキシ基を5つ有するポリオール化合物としては、例えば、L-アラビトール(炭素数5、-OH基数5)、リビトール(炭素数5、-OH基数5)、キシリトール(炭素数5、-OH基数5)、ラムニトール(炭素数6、-OH基数5)等が挙げられる。
ヒドロキシ基を6つ有するポリオール化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(炭素数10、-OH基数6)、ソルビトール(炭素数6、-OH基数6)、マンニトール(炭素数6、-OH基数6)、ガラクチトール(炭素数6、-OH基数6)等が挙げられる。
また、ポリオール化合物としては、例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の糖類が挙げられる。
【0045】
<D成分>
D成分は、1つの(メタ)アクリロイル基と1つのヒドロキシ基と、C~C飽和アルキル(炭素数1以上4以下の飽和炭化水素)と、を分子中に有するヒドロキシ(メタ)アクリレートである。
換言すると、D成分は、(メタ)アクリル酸のC~C飽和アルキルエステルであり、アルキル部分のいずれかの炭素に結合した1つのヒドロキシ基を有する。D成分は、ヒドロキシ飽和C~Cアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0046】
D成分としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。光照射による重合性がより良好であるという点で、D成分は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0047】
本実施形態のウレタン化反応生成物を製造するときに、ウレタン化反応におけるA成分のモル数に対するB成分のモル数の比は、0.5以上15.0以下であることが好ましく、3以上7以下であることがより好ましい。
【0048】
ウレタン化反応におけるA成分のモル数に対するC成分のモル数の比は、0.1以上14.0以下であることが好ましく、1以上6以下であることがより好ましい。
【0049】
ウレタン化反応におけるA成分のモル数に対するD成分のモル数の比は、0.5以上16.0以下であることが好ましく、2以上8以下であることがより好ましい。
【0050】
ウレタン化反応におけるA成分のヒドロキシ基のモル数に対する、B成分のイソシアネート基のモル数の比は、1以上60以下であることが好ましく、6以上30以下であることがより好ましい。
【0051】
ウレタン化反応におけるC成分のヒドロキシ基のモル数に対する、B成分のイソシアネート基のモル数の比は、1以上3以下であることが好ましく、1.5以上2.5以下であることがより好ましい。
【0052】
ウレタン化反応におけるD成分のヒドロキシ基のモル数に対する、B成分のイソシアネート基のモル数の比は、1以上60以下であることが好ましく、6以上30以下であることがより好ましい。
【0053】
上記のウレタン化反応生成物(主反応生成物)が上記ポリイソシアネート化合物由来のイソシアネート基による反応性を有しないように、ウレタン化反応を実施する場合、ウレタン化反応において、A成分、C成分、D成分のヒドロキシ基の総モル数に対する、B成分のイソシアネート基のモル数の比(総モル数の比)は、0.5以上1.0以下であることが好ましく、0.8以上1.0以下であることがより好ましい。
【0054】
一方で、上記のウレタン化反応生成物(主反応生成物)が上記ポリイソシアネート化合物由来のイソシアネート基による反応性を有するように、ウレタン化反応を実施する場合、上記の総モル数の比は、1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.1以上1.3以下であることがより好ましい。
このようにウレタン化反応を実施することによって、硬化性組成物は、ヒドロキシ(メタ)アクリレート由来の(メタ)アクリロイル基、及び、ポリイソシアネート化合物由来のイソシアネート基の両方を分子中に有する反応生成物を含むこととなる。
上記の反応生成物が分子中にイソシアネート基をも有することから、湿気(水分)によって反応生成物同士が結合して高分子化され得るため、硬化性組成物が湿気によっても十分に硬化できる。よって、上記の硬化性組成物は、光照射等によって硬化できるだけでなく、湿気によっても十分に硬化できる。
【0055】
<ウレタン化反応触媒>
ウレタン化反応触媒としては、ジブチルスズジラウレート又はスタナスオクトエートなどの有機スズ触媒、アセチルアセトナート錯体触媒、といった金属系触媒を使用できる。また、ウレタン化反応触媒としては、3級アミン触媒を使用できる。
【0056】
本実施形態の硬化性組成物(硬化用組成物)は、A成分、B成分、C成分、D成分、及び、ウレタン化反応触媒の存在下におけるウレタン化反応によって生成したウレタン化反応生成物を含む。
【0057】
上記のウレタン化反応生成物としては、図1のように表される反応生成物が例示される。なお、B成分として3官能のイシシアネート化合物を用い、C成分として4官能のポリオール化合物を用いて得られた反応生成物の一例が図1に示されている。図1において、mは、通常、1以上30以下である。
なお、ウレタン化反応におけるD成分の量を相対的に減らすことによって、イソシアネート基を有する反応生成物をより多く生成させることができる。
【0058】
上記のウレタン化反応生成物としては、さらに、図2のように表される反応生成物が例示される。なお、B成分として3官能のイシシアネート化合物を用い、C成分として2官能のポリオール化合物を用いて得られた反応生成物の一例が図2に示されている。図2において、nは、通常、1以上100以下である。
【0059】
上記の硬化性組成物は、例えば、反応性基としてイソシアネート基のみ有する反応生成物、また、反応性基として(メタ)アクリロイル基のみ有する反応生成物などを含み得る。
別の観点では、上記の硬化性組成物は、例えば、A成分、C成分、及びD成分のうちいずれか2成分がB成分とウレタン化反応し、残りの1成分がB成分とウレタン化反応しなかった反応生成物などを含み得る。
【0060】
本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応しない光重合性モノマーをさらに含む。このような光重合性モノマーは、ウレタン化反応系における粘度を低下させるべくウレタン化反応前に希釈剤として配合されてもよく、ウレタン化反応後に配合されてもよい。
【0061】
具体的には、本実施形態の硬化性組成物は、飽和環状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー、又は、飽和鎖状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも一方を、ウレタン化反応しない光重合性モノマーとして含んでもよい。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、光照射による重合反応生成物を生じさせる化合物である。
【0062】
飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に8以上15以下の炭素原子を有する飽和脂環式モノマーであることが好ましい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ベンゼン環、並びに、エーテル結合(-CH-O-CH-)、-OH基、及び-COOH基などの極性基のいずれも分子中に含まないことが好ましい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能モノマーであることが好ましい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、飽和シクロアルキル構造は、ヘテロ原子を含まず、4~8の炭素原子で構成された飽和炭化水素構造であってもよい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、単環式、二環式、多環式であってもよい。二環式又は多環式の飽和シクロアルキル構造が、2以上の炭素原子を共有していてもよい。なお、二環式又は多環式の飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーでは、少なくとも1つの環構造が飽和アルキル構造であればよく、例えばすべての環構造が飽和アルキル構造であってもよい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、飽和環状炭化水素構造の炭素には、メチル基又はエチル基がさらに結合していてもよい。
【0063】
具体的には、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート(ノルボルナン構造を含有)、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート(ノルボルナン構造を含有)、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート(ノルボルナン構造を含有)、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(ノルボルナン構造を含有)、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、なかでも、ノルボルナン構造を含むものが好ましい。
上記の硬化性組成物が飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むことによって、硬化後の硬化物の耐湿性を向上させることができる。
【0064】
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、炭素数が8以上15以下の飽和鎖状炭化水素を分子中に有する(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ベンゼン環、並びに、エーテル結合(-CH-O-CH-)、-OH基、及び-COOH基などの極性基のいずれも分子中に含まないことが好ましい。飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有する単官能モノマーであることが好ましい。飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、飽和鎖状炭化水素構造は、C及びH以外の原子を含まず、7~11の炭素原子で構成された飽和鎖状炭化水素構造であってもよい。
上記の硬化性組成物が飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むことによって、硬化性組成物が硬化した硬化物の柔軟性をより向上させることができる。
【0065】
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、飽和鎖状炭化水素構造は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。換言すると、飽和鎖状炭化水素構造は、飽和直鎖状炭化水素構造であってもよく、飽和分岐鎖状炭化水素構造であってもよい。さらに換言すると、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーであってもよく、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、硬化性組成物において上記のウレタン化反応生成物をより十分に溶解させ得るという点で、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。これにより、硬化物を担持する基材、硬化物の厚さ、又は、硬化反応条件などの影響をあまり受けずに、より均一に近い硬化物被膜を得ることができる。
【0066】
本実施形態の硬化性組成物において、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとの合計質量100質量部に対する、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーの割合は、好ましくは90質量部以下である。
これにより、電気絶縁性能と伸び性能とをよりバランス良く兼ね備えた硬化物を得ることができる。
【0067】
飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーの炭化水素構造は、飽和直鎖状アルキル構造であればよい。
具体的には、飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0068】
飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーの炭化水素構造は、飽和分岐鎖状アルキル構造であればよく、iso構造、sec構造、neo構造、又は、tert構造であり得る。
具体的には、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソヘプチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、上記のウレタン化反応生成物との溶解性がより良好である点、また、より均一に近い硬化被膜を得られやすいという点で、イソノニル(メタ)アクリレート、又は、イソデシル(メタ)アクリレートの少なくとも一方が、好ましい。
【0069】
なお、本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応しなかった未反応のA成分、B成分、C成分、及びD成分を含み得る。また、本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応の促進のために配合されたウレタン化反応触媒を含み得る。
このように、本実施形態の硬化性組成物は、様々な反応生成物及び未反応を含む。従って、含有される化合物すべてについて、分子構造を特定することは、およそ実際的ではないといえる。換言すると、本実施形態の硬化性組成物に含まれるすべての化合物について、その構造又は特性を直接特定することは、およそ非実際的であるといえる。ただし、ウレタン化反応させる前の化合物の分子構造が特定されており、ウレタン化反応による生成物が十分に予想できることから、反応生成物(主反応生成物など)の分子構造を予想することは、十分に可能である。
【0070】
本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応後にさらに加えられた、光重合性モノマー、光重合開始剤などを含んでもよい。光重合性モノマーとしては、上述した飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマー以外のウレタン化反応しない光重合性モノマーが挙げられる。
【0071】
ウレタン化反応しない上記の光重合性モノマーとしては、例えば、下記のごとき単官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらモノマーは、1種が単独で、又は、2種以上が組み合わされて使用され得る。
光重合性モノマーとしては、硬化後の硬化物の耐候性がより良好になるという点で、ベンゼン環、並びに、エーテル結合(-CH-O-CH-)、-OH基及び-COOH基などの極性基のいずれも含まないモノマーが好ましい。
【0072】
光重合開始剤は、照射された光(紫外線等)によってラジカルを発生する化合物であれば、特に制限されない。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、市販品を使用することができる。
【0073】
本実施形態の硬化性組成物を光照射だけでなく、大気中の水分(湿気)によっても硬化させる場合、本実施形態の硬化性組成物は、ウレタン化反応後にさらに加えられたイソシアネートモノマーを含んでもよい。
ウレタン化反応後に加えられたイソシアネートモノマーとしては、芳香族ジイソシアネートモノマー、脂環族ジイソシアネートモノマー、脂肪族ジイソシアネートモノマーなどが挙げられる。これらモノマーは、分子中に2~4個のイソシアネート基を有してもよい。
芳香族ジイソシアネートモノマーとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及びトリジンジイソシアネート等の各モノマーが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートモノマーとしては、例えば、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、3-イソシアネートエチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3-イソシアネートエチル-3,5,5-トリエチルシクロヘキシルイソシアネート等の各モノマーが挙げられる
脂肪族ジイソシアネートモノマーとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー等が挙げられる。
なお、イソシアネートモノマーは、上記の少なくともいずれかのモノマーのアダクト変性体、ビウレット変性体、イソシアヌレート体、ポリメリック体であってもよい。
これらモノマーは、1種が単独で、又は、2種以上が組み合わされて使用され得る。
イソシアネートモノマーとしては、硬化後の硬化物の耐候性がより良好になるという点で、ベンゼン環を含まず且つ不飽和結合を含まないモノマーが好ましい。
【0074】
本実施形態の硬化性組成物は、ベンゼン環(6つの環状炭素原子で構成された芳香族炭化水素)を分子中に有する化合物を、ウレタン化反応生成物、光重合性モノマー、イソシアネートモノマーとしては含まないことが好ましい。
【0075】
なお、本実施形態の硬化性組成物は、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光体などを含み得る。
本実施形態の硬化性組成物は、好ましくは、無機粉体又は樹脂粉体といった粉体を含まない。
【0076】
本実施形態の硬化性組成物は、上述したウレタン化反応生成物(ウレタン化反応によって生成した化合物群)を10質量%以上含むことが好ましい。これにより、光照射によって、また、場合によっては湿気によって、より十分に硬化できる。
なお、本実施形態の硬化性組成物は、上述したウレタン化反応生成物を90質量%以下含んでもよい。
本実施形態の硬化性組成物は、上述したウレタン化反応しない光重合性モノマーを10質量%以上含んでもよく、85質量%以下含んでもよい。
本実施形態の硬化性組成物は、湿気によって硬化されるように設計される場合、ウレタン化反応後にさらに加えられたイソシアネートモノマーを2質量%以上含んでもよく、20質量%以下含んでもよい。
【0077】
続いて、本発明に係る硬化性組成物の製造方法の一実施形態について説明する。
【0078】
本実施形態の硬化性組成物の製造方法では、例えば、ポリ(エチレン/エチレン/プロピレン)ブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有し且つ分子鎖の一方の末端にヒドロキシ基を有するブロック共重合体(上記A成分)と、総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト変性体、及びビウレット変性体から選択された少なくとも1種(上記B成分)と、2以上4以下のヒドロキシ基を分子中に有するポリオール化合物(上記C成分)と、ヒドロキシ飽和C~Cアルキル(メタ)アクリレート(上記D成分)と、の存在下におけるウレタン化反応によって、上記のウレタン化反応生成物を含む硬化性組成物を製造する。
【0079】
詳しくは、本実施形態の硬化性組成物の製造方法は、上記のA成分とB成分とC成分とD成分とウレタン化反応触媒との存在下におけるウレタン化反応によって、上記のウレタン化反応生成物を合成する反応工程を備える。
本実施形態の硬化性組成物の製造方法は、反応工程の後に、光重合性モノマーと光重合開始剤とをさらに添加(必要に応じてイソシアネートモノマーをさらに添加)する添加工程をさらに備える。
【0080】
反応工程において使用する、A成分、B成分、C成分、D成分、及び、ウレタン化反応触媒については、上述した通りである。
【0081】
上記の製造方法においては、湿気との反応を防ぐため、通常、反応容器内の空気を窒素で置換したあとに、反応工程を実施する。
【0082】
反応工程では、ウレタン化反応のために適した一般的な反応条件を採用することができる。好ましくは、反応工程では、50℃~90℃の温度を0.5~3時間維持することによって、ウレタン化反応を行う。
【0083】
反応工程において、好ましいA成分、B成分、C成分、及び、D成分の配合量の比(モル比)は、上記の通りである。
【0084】
反応工程では、ウレタン化反応に関与しない化合物であって、光照射によって重合反応生成物を生じさせる化合物をさらに共存させてもよい。斯かる化合物としては、上述した光重合性モノマーが挙げられる。
【0085】
添加工程では、ウレタン化反応のあと、上述した光重合性モノマー、光重合開始剤、必要に応じてイソシアネートモノマー、をさらに添加してもよい。さらに添加する光重合性モノマー、イソシアネートモノマーは、低粘度であることから、上記のウレタン化反応生成物を希釈する溶媒のような役割を担う一方で、それ自身が光や湿気によって硬化するため、硬化物をより十分に硬化させる役割も担う。光重合性モノマーやイソシアネートモノマーをさらに配合する分、硬化させるための硬化性組成物の粘性が低くなり、硬化性組成物を塗工する工程を簡便にすることができる。
【0086】
添加工程では、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光体などをさらに配合してもよい。
【0087】
本実施形態の硬化性組成物は、紫外線などの光の照射によって硬化された硬化物となって使用される。例えば、被覆されることとなる電子回路に、上記の硬化性組成物を塗工した後、紫外線などの光を照射して組成物を硬化させ、硬化物の被覆膜を形成する。
場合に応じて、さらに、数時間~数日間、空気中で放置することによって、空気中の湿気による硬化反応を進める。
【0088】
硬化反応を進めるために照射する光としては、紫外線を使用できる。光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、LEDランプなどを使用できる。照射強度としては、例えば、10~10,000mW/cmを採用できる。
【0089】
湿気による硬化反応をさらに進める場合、放置する空気の温度は、20~40℃であり、空気の湿度は、40~90RH%であることが好ましい。
【0090】
上記の硬化性組成物が塗工されて被覆される対象物としては、例えば、精密機器に使用される実装基板上の電子回路や端子、自動車や自転車や鉄道や航空機や船舶などに搭載する実装基板上の電子回路や端子、モバイル機器(携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に使われる実装基板上の電子回路や端子、屋外機器(給湯器、エアコン室外機等)に利用される基板の電子回路や端子、洗濯機や温水洗浄便座、食器洗い乾燥器等の水周り機器に使用される実装基板上の電子回路や端子等が挙げられる。
【0091】
本実施形態の硬化性組成物、該組成物の製造方法は上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の硬化性組成物、該組成物の製造方法に限定されるものではない。
即ち、一般的な硬化性組成物、該組成物の製造方法において用いられる種々の形態が、本発明の効果を損ねない範囲において、採用され得る。
【実施例
【0092】
次に実験例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
以下のようにして、(A)~(D)を混合してウレタン化反応を行い、ウレタン化反応生成物を含む硬化性組成物を製造した。
【0094】
<反応工程における原料>
(A)分岐鎖状のポリオレフィンジオール
・スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体のモノオール(SEEPS-OH と表記)
製品名「セプトン HG252」(クラレ社製)
(スチレン28質量%含有、数平均分子量55,000)
:分子鎖の片末端に-OH基を有する
(B)イソシアネート基を分子中に3つ有する3官能のポリイソシアネート化合物
・ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート誘導体
製品名「DURANATE TPA-100:イソシアネート基含有率23質量%」旭化成社製
(C)-OH基を分子中に4つ有する4官能ポリオール化合物(多価アルコール)
・ジトリメチロールプロパン(市販品)
(D)ヒドロキシ飽和C~Cアルキル(メタ)アクリレート
・2-ヒドロキシエチルアクリレート(市販品)
(その他)
・光重合性モノマーA(反応溶媒/希釈剤 下記参照)
・ウレタン化反応触媒(ジラウリン酸ジブチルスズ 市販品)
【0095】
<添加工程における原料>
・光重合性モノマーA
飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー
(イソボルニルアクリレート 市販品)
・光重合性モノマーB(希釈剤)
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマー
(イソノニルアクリレート 市販品)
・光重合開始剤 製品名「IRGACURE 907」 IGMResins社製
・光増感剤(2,4-ジエチルチオキサントン)
製品名「KAYACURE DETX-S」日本化薬社製
【0096】
(実施例1)
表1に示す配合量で、上記の(A)、(B)、(C)、(D)、並びに、触媒の存在下において80℃で3時間、ウレタン化反応を行い、反応工程を実施した。
次に、表1に示す配合量で、反応工程後の組成物に上記の原料を添加して80℃で1時間混合し、添加工程を実施した。
このようにして、硬化性組成物を製造した。
【0097】
(実施例2)
添加工程において、表1に示す配合組成に変更した点以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を製造した。
【0098】
(比較例)
反応工程を実施せずに表1に示す量のA成分を用いた点以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0099】
実施例1及び2、比較例の硬化性組成物を製造するための配合組成を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
以下に示すようにして、実施例及び比較例で製造した各硬化性組成物を評価した。詳しくは、製造した各硬化性組成物の粘度、並びに、硬化物の引張伸び率、引張弾性率、体積抵抗、及び、絶縁破壊強さを調べた。
なお、一般的には、体積抵抗及び絶縁破壊強さが高いほど、硬化がより十分に進行したことを示す。
【0102】
<硬化>
硬化後の硬化物の厚さが100μmとなるように、0.3×130×180mmのブリキ板に各組成物を塗工した。500WのUVランプによって積算光量が3000mJ/cmの光強度となるように紫外線を照射した。
【0103】
<硬化物の引張伸び率>
離型処理されたPETフィルム上に、上記の硬化処理と同様にして硬化物を形成した。次に、膜状の硬化物からPETフィルムを剥離して、硬化物皮膜をJISダンベル2号形状に切断した。そして、チャック間距離:20mm、クロスヘッド速度:300mm/分の測定条件で引張伸び率を測定した。
なお、伸び率(%)を下記式によって算出した。
伸び率(%)= (破断伸び量(mm)-20)/20×100
【0104】
<硬化物の引張弾性率>
上記のごとき硬化処理によって形成した硬化物について、引張強度(N)/変異伸び量(mm)が最大となる傾きSをもとめ、以下の式によって引張弾性率を算出した。
引張弾性率(MPa)=
S(引張強度(N)/変異伸び量(mm))/(厚み(mm)×幅(mm)×20
【0105】
<硬化物の体積抵抗率>
上記のようにしてブリキ板上で硬化させた各硬化物上に、ペースト状の銀の導電性塗料を円状(直径30mm)に塗布した。60℃で30分間乾燥して上側電極を形成した。一方、基材として使ったブリキ板を下側電極とした。DC100Vの電圧を印加して60秒後の抵抗値を求めた。そして、電極面積に抵抗値を乗じ、硬化物(硬化膜)の厚さで除して、体積抵抗率を求めた。
【0106】
<硬化物の絶縁破壊電圧(BDV)>
JIS C2110-1に記載の球-平板電極の球を、上記ブリキ板上に形成した硬化物上に載せて、上部電極とした。一方、ブリキ板を下部電極とした。60Hzの交流電圧をかけ、10~20秒で絶縁破壊が起こるように昇圧して、絶縁破壊電圧値を測定した。測定は、油中で実施した。さらに、得られた値を硬化物(硬化膜)の厚さで割って、0.1mm当たりの絶縁破壊値(kV/0.1mm)を求めた。
【0107】
硬化後の硬化物を上記のごとく評価した結果を表2に示す。なお、表2におけるウレタン化反応生成物の含有割合は、上記反応工程におけるウレタン化反応の収率が100%であることを確認したうえで、配合比率から算出した値である。
【0108】
【表2】
【0109】
表2に示された評価結果から把握されるように、実施例の硬化性組成物は、比較例の硬化性組成物よりも、より高い絶縁破壊強さを有する硬化物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の硬化性組成物は、例えば、電子回路を硬化物で被覆するために、電子回路に塗布された後、光照射されて硬化され、硬化物となって好適に使用される。本発明の硬化性組成物は、例えば、絶縁被膜用硬化性組成物として好適に使用される。
図1
図2