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特許7550559走査露光装置、走査露光方法および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】走査露光装置、走査露光方法および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/22 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G03F7/22 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020126729
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023646
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】板橋 宏明
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-192255(JP,A)
【文献】特開2017-053888(JP,A)
【文献】特開2018-010105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光学系による照明領域に対して原版を走査するとともに前記原版の走査に同期して基板を走査しながら前記基板を走査露光する走査露光装置であって、
前記原版のパターンを前記基板に投影する投影光学系と前記基板との間に配置され、前記基板の第1領域の走査露光および前記第1領域と部分的に重複する第2領域の走査露光を行うモードにおいて前記第1領域と前記第2領域との重複領域に照射される露光光の照度分布を調整する第1調整機構と、
前記照明光学系と前記原版との間に配置され、前記照明領域の形状を調整する第2調整機構と、
前記重複領域の全域において露光量が目標露光量を上回るように前記第1調整機構を動作させ前記重複領域の全域において露光量が前記目標露光量の許容範囲に収まるように前記第2調整機構を動作させる制御部と、
を備えることを特徴とする走査露光装置。
【請求項2】
前記第1調整機構は、前記投影光学系と前記基板との間の光路に挿入される遮光部材を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の走査露光装置。
【請求項3】
前記遮光部材は、前記原版および前記基板の走査方向に対して交差する方向に延びたエッジを有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の走査露光装置。
【請求項4】
前記第2調整機構は、前記照明光学系と前記原版との間に配置された可変スリット機構を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の走査露光装置。
【請求項5】
前記可変スリット機構は、前記原版および前記基板の走査方向における前記照明領域の幅を前記走査方向に直交する方向における複数の位置について調整する、
ことを特徴とする請求項4に記載の走査露光装置。
【請求項6】
前記基板が配置される面に照射される光を検出するセンサを更に備え、
前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記第1調整機構および前記第2調整機構を動作させる、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の走査露光装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記センサの検出結果に基づいて、前記原版および前記基板の走査方向と直交する非走査方向に沿った第1露光量分布を前記重複領域について取得し、前記第1露光量分布に基づいて前記第1調整機構を動作させ、その後、前記センサの検出結果に基づいて、前記非走査方向に沿った第2露光量分布を前記重複領域について取得し、前記第2露光量分布に基づいて前記第2調整機構を動作させる、
ことを特徴とする請求項6に記載の走査露光装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1露光量分布が前記重複領域の全域において前記目標露光量を上回っていない場合に前記第1調整機構を動作させる、
ことを特徴とする請求項7に記載の走査露光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の走査露光装置を使って基板を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記基板を現像する現像工程と、
前記現像工程で現像された前記基板を処理する処理工程と、を含み、
前記処理工程で処理された前記基板から物品を得ることを特徴とする物品製造方法。
【請求項10】
照明光学系による照明領域に対して原版を走査するとともに前記原版の走査に同期して基板を走査しながら前記基板を走査露光する走査露光装置による走査露光方法であって、
前記走査露光装置は、
前記原版のパターンを基板に投影する投影光学系と前記基板との間に配置され、前記基板の第1領域を走査露光した後に前記第1領域と部分的に重複する第2領域を走査露光するモードにおいて前記第1領域と前記第2領域との重複領域に照射される露光光の照度分布を調整する第1調整機構と、
前記照明光学系と前記原版との間に配置され、前記照明領域の形状を調整する第2調整機構と、を備え、
前記走査露光方法は、
前記重複領域の全域において露光量が目標露光量を上回るように前記第1調整機構を動作させ前記重複領域の全域において露光量が前記目標露光量の許容範囲に収まるように前記第2調整機構を動作させる調整工程と、
前記調整工程の後に、前記走査露光装置によって前記基板を走査露光する露光工程と、
を含むことを特徴とする走査露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査露光装置、走査露光方法および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板と原版とを同期して移動させながら投影光学系を介して基板を露光する走査露光装置において、第1ショット領域と第2ショット領域とが部分的に重複するように第1ショット領域および第2ショット領域を露光することが記載されている。ここで、第1ショット領域と第2ショット領域とは、原版および基板の走査方向と直交する非走査方向に配置される。特許文献1の露光方法では、第1ショット領域と第2ショット領域とが重複するつなぎ部の露光量を計測する第1工程と、投影光学系と基板との間に設けられ可動の遮光部材の位置を変えることにより該つなぎ部の露光量を変化させる第2工程とが繰り返される。これにより、つなぎ部(重複領域)の露光量と遮光部材の位置との関係が得られ、この関係に基づいて、第1ショット領域および第2ショット領域の露光量の均一性が遮光部材の位置により調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-053888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
露光装置では、露光領域内の照度分布が均一でない場合が発生しうる。この原因としては、投影光学系の光学部材の表面膜厚の不均一性や汚れにより反射率が不均一になることや、ハエの目レンズなどように露光領域内で照度分布を均一にするための光学部材による補正が不十分なことなどが考えられる。
【0005】
遮光部材の調整によってつなぎ部(重複領域)の露光量を調整した後に原版の照明領域を規定する可変スリット機構によって露光領域内の露光量を均一に調整した場合、可変スリット機構によって調整可能な範囲が不足し、目標露光量が得られない可能性がある。
【0006】
本発明は、基板の第1領域の走査露光および該第1領域と部分的に重複する第2領域の走査露光を行う場合における露光量不足を解決するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、照明光学系による照明領域に対して原版を走査するとともに前記原版の走査に同期して基板を走査しながら前記基板を走査露光する走査露光装置に係り、前記走査露光装置は、前記原版のパターンを前記基板に投影する投影光学系と前記基板との間に配置され、前記基板の第1領域の走査露光および前記第1領域と部分的に重複する第2領域の走査露光を行うモードにおいて前記第1領域と前記第2領域との重複領域に照射される露光光の照度分布を調整する第1調整機構と、前記照明光学系と前記原版との間に配置され、前記照明領域の形状を調整する第2調整機構と、前記重複領域の全域において露光量が目標露光量を上回るように前記第1調整機構を動作させ前記重複領域の全域において露光量が前記目標露光量の許容範囲に収まるように前記第2調整機構を動作させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板の第1領域の走査露光および該第1領域と部分的に重複する第2領域の走査露光を行う場合における露光量不足を解決するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の走査露光装置の構成を模式的に示す図。
図2】第2調整機構(可変スリット機構)の構成を模式的に示す図。
図3】第1調整機構(遮光部材)の構成を模式的に示す図。
図4】第1調整機構(遮光部材)による重複領域における照度分布(露光量分布)の調整を模式的に示す図。
図5】第1調整機構(遮光部材)による重複領域における照度分布(露光量分布)の調整を模式的に示す図。
図6】露光領域拡張モードにおける走査露光装置の動作を例示する図。
図7】露光領域拡張モードにおける重複領域における照度分布(露光量分布)の調整を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1には、一実施形態の走査露光装置EXPの構成が模式的に示されている。走査露光装置EXPは、照明光学系10と、投影光学系50と、原版保持部41と、原版駆動機構42と、基板保持部81と、基板駆動機構82と、第1調整機構AMAと、第2調整機構AMBと、センサ70と、制御部90とを備えうる。照明光学系10は、原版保持部41によって保持された原版40のうち照明領域内の領域を照明する。投影光学系50は、原版40のうち照明領域内領域のパターンを基板保持部81によって保持された基板80に投影する。投影光学系50は、例えば、折り曲げミラー14、凹面ミラー12および凸面ミラー15を含みうる。
【0012】
原版駆動機構42は、原版保持部41によって保持された原版40を走査方向(Y方向に平行な方向)に走査する。基板駆動機構82は、基板保持部81によって保持された基板80を駆動する。基板駆動機構82による基板80の駆動には、基板80を原版40と同期して走査方向に走査する駆動が含まれる。走査露光装置EXPは、照明光学系10による照明領域に対して原版40を走査するとともに原版40の走査に同期して基板80を走査しながら基板80を走査露光する。
【0013】
走査露光装置EXPは、基板80の第1領域の走査露光および該第1領域と部分的に重複する第2領域の走査露光を行うモード(以下、露光領域拡張モード)を備えうる。露光領域拡張モードでは、原版40のパターンが第1領域および第2領域を含む露光領域に転写される。このような露光領域拡張モードは、1回の走査露光によって露光可能な範囲より大きい露光領域に対して原版40のパターンを転写するために有利である。露光領域拡張モードは、隣り合う部分領域間で重複する重複領域が設けられるように定義された複数の部分領域で構成される露光領域に対して原版のパターンを転写するように実行されてもよい。上記の第1領域および第2領域は、複数の部分領域の例である。
【0014】
第1調整機構AMAは、露光領域拡張モードにおいて、第1領域と第2領域との重複領域に照射される露光光の照度分布を調整しうる。第2調整機構AMBは、照明光学系10による原版40の照明領域の形状を規定しうる。センサ70は、基板80が配置される面に投影光学系50を介して照明光学系10によって照射される露光光を検出する。センサ70は、例えば、基板保持部81に搭載されうる。制御部90は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0015】
図2(a)、(b)には、第2調整機構AMBの構成例が示されている。第2調整機構AMBは、可変スリット機構20を含みうる。可変スリット機構20は、スリット(開口部)21の形状を調整する機能を有する。照明光学系10からの光のうちスリット21を通過した光が原版40を照明する。よって、第2調整機構AMBあるいは可変スリット機構20は、投影光学系50の物体面(原版40が配置される面)のうち照明光学系10によって照明される照明領域を規定する。
【0016】
可変スリット機構20は、例えば、原版40および基板80の走査方向に直交する非走査方向(X方向)に配列された複数の駆動機構22と、該複数の駆動機構22によって走査方向における位置がそれぞれ制御される複数の開口規定部材23とを含みうる。これにより、可変スリット機構20は、原版40および基板80の走査方向(Y方向)における照明領域の幅を走査方向に直交する方向(X方向)における複数の位置について調整できる。可変スリット機構20は、スリット21を通過した光が投影光学系50の有効領域(基板80の露光のために使用できることが保証されている領域)24に収まるように構成される。複数の駆動機構22による開口規定部材23の駆動量によってスリット21の形状が規定される。複数の駆動機構22は、制御部90からの指令に従って複数の開口規定部材23のそれぞれの位置を制御し、これによりスリット21の形状が制御される。
【0017】
図2(c)には、スリット21を通過した光が投影光学系50の凹面ミラー12に入射する領域が模式的に示されている。複数の駆動機構22を走査方向(Y方向)に移動させると、凹面ミラー12に入射する光の領域の大きさは、図2(c)中の矢印のように変化する。可変スリット機構20および凹面ミラー12は、スリット21を通過した光が凹面ミラー12の有効領域からはみ出さないように設計される。
【0018】
図3には、第1調整機構AMAの構成例および動作が模式的に示されている。第1調整機構AMAは、投影光学系50と基板80との間の光路に挿入される遮光部材60L、60Rを含みうる。遮光部材60L、60Rは、例えば、金属で構成されうる。遮光部材60L、60Rは、基板80に対する露光光ELの照射領域における非走査方向(X方向)の端部を規定するように配置される。遮光部材60L、60Rは、原版40および基板80の走査方向(Y方向)に対して交差する方向に延びたエッジEを有しうる。
【0019】
第1調整機構AMAは、遮光部材60L、60RをY方向に駆動する駆動機構(不図示)を有し、遮光部材60L、60RをY方向に駆動することによって、基板80に対する光ELの照射領域の非走査方向における端部の照度を変更することができる。図3には、遮光部材60L、60Rの位置に関して、状態S1と状態S2とが示されている。
【0020】
図4(a)には、図3の状態S1で右側の遮光部材60Rによって形成される基板上の照度分布IL1(x)と、図3の状態S1で左側の遮光部材60Lによって形成される基板上の照度分布IL2(x)とが示されている。また。図4(a)には、照度分布IL1(x)による重複領域の露光と照度分布IL2(x)による重複領域の露光とによって実現される積算照度分布IL(x)が示されている。
【0021】
図4(b)は、図3の状態S2で右側の遮光部材60Rによって形成される基板上の照度分布IL1(x)と、図3の状態S3で左側の遮光部材60Lによって形成される基板上の照度分布IL2(x)とが示されている。また。図4(b)には、照度分布IL1(x)による重複領域の露光と照度分布IL2(x)による重複領域の露光とによって実現される積算照度分布IL(x)が示されている。状態S2によって実現される重複領域における積算照度は、状態S1によって実現される重複領域における積算照度より大きいことが分かる。
【0022】
図5には、非走査方向に隣り合うとともに重複した重複領域603を有する第1領域601、第2領域602をそれぞれ走査露光することで原版40のパターンを第1領域601、第2領域602を含む露光領域604に露光する方法が模式的に示されている。ここで、第1領域601が走査露光された後に第2領域602が走査露光されてもよいし、第2領域602が走査露光された後に第1領域601が走査露光されてもよい。
【0023】
第1領域601は、(a1)のように重複領域603の照度分布(露光量分布)を遮光部材60Rによって制御しながら走査露光され、これにより(b1)のような照度分布IL1(x)に従う露光量分布で第1領域601に原版40のパターンが転写される。第2領域602は、(a2)のように重複領域603の照度分布(露光量分布)を遮光部材60Lによって制御しながら走査露光され、これにより(b2)のような照度分布IL2(x)に従う露光量分布で第2領域602に原版40のパターンが転写される。第1領域601および第2領域602の露光によって、第1領域601および第2領域602で構成される露光領域604には、(d)のような照度分布IL(x)に従う露光量分布で原版40のパターンが転写される。
【0024】
図6には、露光領域拡張モードにおける走査露光装置EXPの動作が例示されている。この動作は、制御部90によって制御されうる。工程S601~S605は、キャリブレーション動作であり、工程S605は、キャリブレーション動作後に実行される露光動作である。
【0025】
工程S601では、制御部90は、センサ70の検出結果に基づいて、原版40および基板80の走査方向(Y方向)と直交する非走査方向(X方向)に沿った第1露光量分布を重複領域603について取得する第1計測動作を実行する。具体的には、制御部90は、第1領域601の走査露光における重複領域603の露光量分布E1(x)および第2領域602の走査露光における重複領域603の露光量分布E2(x)を計測する。そして、制御部90は、露光量分布E1(x)および露光量分布E2(x)に基づいて、第1領域601の走査露光および第2領域602の走査露光によって重複した露光される重複領域603の露光量分布E(x)を求める。ここで、E(x)=E1(x)+E2(x)である。図7(a)には、図6の工程S601で得られる重複領域603の露光量分布E(x)が例示されている。工程S601は、第2調整機構AMBによって規定される照明領域が最も大きい状態(走査方向における照明領域の幅が最も大きい状態)で実行されうる。
【0026】
露光量布E1(x)の計測では、制御部90は、センサ70を重複領域603内の任意の位置(x=xi)に配置し、重複領域603における照度分布を第1調整機構AMAの遮光部材60Rで制御しながら基板保持部81を走査方向に走査する。これは、基板80の走査露光と同様に、センサ70を走査露光することを意味する。これにより、重複領域603内のx=xiにおける露光量(xi)が得られる。制御部90は、このような動作を、xiを変更しながら複数回にわたって実行する。これにより、遮光部材60Rによって制御された露光量分布E1(x)が得られる。
【0027】
同様に、露光量分布E2(x)の計測では、制御部90は、センサ70を重複領域603内の任意の位置(x=xi)に配置し、重複領域603における照度分布を第1調整機構AMAの遮光部材60Lで制御しながら基板保持部81を走査方向に走査する。これは、基板80の走査露光と同様に、センサ70を走査露光することを意味する。これにより、重複領域603内のx=xiにおける露光量E2(xi)が得られる。制御部90は、このような動作を、xiを変更しながら複数回にわたって実行する。これにより、遮光部材60Lによって制御された露光量分布E2(x)が得られる。
【0028】
上記の例では、露光量分布E1(x)、E2(x)をそれぞれ得るために複数の位置のそれぞれにセンサ70を配置し、各位置において走査露光がなされる。しかしながら、非走査方向に複数の画素が配置されたラインセンサを用いることによって、露光量分布E1(x)、E2(x)をそれぞれ1回の走査露光によって得ることができる。
【0029】
工程S602では、制御部90は、工程S601で得た露光量分布E(x)における露光量が重複領域603の全域において目標露光量を上回っているかどうかを判断する。そして、制御部90は、工程S601で得た露光量分布E(x)が重複領域603の全域において目標露光量を上回っている場合には工程S604に進む。一方、制御部90は、工程S601で得た露光量分布E(x)における露光量が重複領域603の全域において目標露光量を上回っていない場合は、工程S603に進む。例えば、図7(a)では、重複領域603の一部において露光量が目標露光量を下回っている。
【0030】
工程S603では、制御部90は、図7(b)に例示されるように、重複領域603の全域において露光量が目標露光量を上回るように第1調整機構AMAを動作させる第1調整動作を実行する。これは、図3に状態S2として示されているように、遮光部材60L、60Rによる遮光量が減る方向に遮光部材60L、60Rを駆動することによってなされうる。工程S603は、第2調整機構AMBによって規定される照明領域が最も大きい状態(走査方向における照明領域の幅が最も大きい状態)で実行されうる。
【0031】
工程S604では、制御部90は、センサ70の検出結果に基づいて、原版40および基板80の走査方向(Y方向)と直交する非走査方向(X方向)に沿った第2露光量分布を重複領域603について取得する第2計測動作を実行する。工程S604における第2計測動作は、工程S601における第1計測動作と同様の方法で実行可能である。
【0032】
工程S605では、制御部90は、工程S604で得られた第2露光量分布に基づいて、図7(d)に例示されるように、重複領域603における露光量(露光量分布)が目標露光量の許容範囲に収まるように第2調整機構AMBを制御する。この調整は、可変スリット機構20における複数の開口規定部材23の位置を、重複領域603における露光量(露光量分布)が目標露光量の許容範囲に収まるように調整することを含みうる。工程S605は、第2調整機構AMBを動作させた後に、重複領域603における露光量が目標露光量の許容範囲に収まっているかどうか確認する工程を含んでもよい。この場合、重複領域603における露光量(露光量分布)が目標露光量の許容範囲に収まるまで、第2調整機構AMBによる調整が繰り返されうる。工程S605では、第2調整機構AMBは、第2調整機構AMBによって規定される照明領域の走査方向における幅が縮小される方向に調整を行いうる。即ち、工程S605は、重複領域603の全域において露光量が十分な状態で開始される。よって、第2調整機構AMBによる露光量(露光量分布)の調整によって露光量不足が生じることはない。
【0033】
工程S606では、制御部90は、工程S601~S605で調整された走査露光装置EXPにより基板80の露光を露光する。図6では、工程S606の前に工程S601~S605が実行されるように記載されているが、工程S601~S605は、任意に実行されうる。
【0034】
以下、上記の走査露光装置を使って実施されうる物品製造方法を例示的に説明する。該物品製造方法は、例えば、デバイス(半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子など)、カラーフィルターなどの物品を製造するのに好適である。該物品造方法は、上記の走査露光装置を用いて、感光剤が塗布された基板を露光する露光工程と、該露光工程で露光された基板を現像する現像工程と、該現像工程で現像された基板を処理する処理工程とを含みうる。また、該製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。該物品製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0035】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0036】
EXP:走査露光装置、10:照明光学系、AMA:第1調整機構、AMB:第2調整機構、60L、60R:遮光部材、20:可変スリット機構、40:原版、80:基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7