(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】導波管装置
(51)【国際特許分類】
H01P 3/12 20060101AFI20240906BHJP
H01P 3/123 20060101ALI20240906BHJP
H01P 5/12 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01P3/12
H01P3/123
H01P5/12 A
(21)【出願番号】P 2020142229
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 崇
(72)【発明者】
【氏名】井島 喬志
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-044248(JP,A)
【文献】特開昭61-281602(JP,A)
【文献】特開平09-260906(JP,A)
【文献】特開2001-345602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0091577(US,A1)
【文献】国際公開第2017/203568(WO,A1)
【文献】特開2005-105414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0366800(US,A1)
【文献】国際公開第2006/098054(WO,A1)
【文献】特開平10-173407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/12
H01P 3/123
H01P 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含有する金属で構成され、一端の断面が矩形を呈し、管状部を有する導波管装置であって、前記管状部の内壁にめっき層が形成され、前記内壁の面粗度が予め設定された数値範囲内であり、
前記不純物は前記金属を化学研磨する化学研磨液で化学研磨されず、前記金属を溶解しない薬液に前記不純物が溶解することを特徴とする導波管装置。
【請求項2】
前記化学研磨液および前記薬液により化学研磨された前記内壁に前記めっき層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導波管装置。
【請求項3】
前記内壁の面粗度は、前記管状部に伝搬される電磁波の周波数に基づいて決定される数値範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の導波管装置。
【請求項4】
前記内壁の面粗度は、前記管状部に伝搬される電磁波の挿入損失に基づいて決定される数値範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の導波管装置。
【請求項5】
前記内壁の面粗度の数値範囲は、2μm以上4μm以下であることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の導波管装置。
【請求項6】
前記導波管装置は、前記管状部の一側面側から前記管状部の中心に向かって突出する凸部が、前記導波管装置が延在する方向に沿って複数個配置され、前記各凸部の一側面から先端までの長さが互いに異なり、かつ、前記一側面と対向する側面に前記一側面と同一形状の凸部が配置されることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の導波管装置。
【請求項7】
前記導波管装置は、前記管状部の一側面側から前記管状部の中心に向かって突出する凸部が、前記導波管装置が延在する方向に沿って周期的に複数個配置され、前記各凸部の一側面から先端までの長さが一定であり、かつ、前記一側面と対向する側面に前記一側面と同一形状の凸部が配置されることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の導波管装置。
【請求項8】
前記導波管装置は、前記管状部に、前記導波管装置の延在する方向に沿って、前記管状部を分割する仕切り壁が配置されることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の導波管装置。
【請求項9】
前記仕切り壁は、前記導波管装置の延在する方向に対して複数個に分割された構成であることを特徴とする請求項
8に記載の導波管装置。
【請求項10】
前記導波管装置は、前記管状部が、前記導波管装置の延在する方向とは異なる方向に分岐する構造を有することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の導波管装置。
【請求項11】
前記導波管装置は、前記管状部が、前記導波管装置の延在する方向に対して対称な二つの方向に分岐する構造を有することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の導波管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、導波管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な三次元造形物の製造方法として、例えば、特許文献1に開示されるように、エポキシ系樹脂を層状に積層する方法がある。このような製造方法で造形された三次元造形物は、製品の試作目的だけでなく、製品そのものとして使用される場合もある。すなわち、かかる製造方法は、製品の製造手段としても用いられる。製品の作製に当たっては、三次元造形物の表面を保護するために皮膜の形成が要求される製品のニーズもある。かかる目的のため、三次元造形物の表面にめっき層を形成する方法が適用されている。
【0003】
三次元造形物の一態様である管状造形物の製造方法として、3Dプリンタを用いた三次元造形による製造方法が有効である。従来の製造方法では製造が困難であった管状内部の複雑な構造が容易に形成できるという利点があるからである。管状造形物が適用される製品の一例として、三次元形状の高周波回路、すなわち、伝送線路である導波管装置が挙げられる。導波管装置には、例えば、特許文献2に開示されるように、高周波回路の構成のために、管状内部の内壁の形状が平坦でない構造が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-218604号公報
【文献】特開2004-48486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の三次元造形の製造方法は、エポキシ系樹脂を層状に積層する樹脂製の三次元造形物の製造には好適であるが、導波管装置のような金属からなる三次元造形物の製造方法には適用できないという課題があった。
【0006】
一方、特許文献2に開示された管状内部の内壁の形状が複雑な構造の導波管では、製造上の制約から導波管を分割された部品で構成する必要があり、部品間の接合強度の問題あるいは複数の部品の接合によって生じる設計誤差の発生があった。
【0007】
三次元造形の製造方法により、三次元造形物の一態様である金属製の管状造形物を作製しても、管状部の内壁の面粗度の影響で、管状造形物を導波管装置として使用した場合に、挿入損失が大きいという課題があった。したがって、上述の分割された部品の問題を解決すべく三次元造形を適用して内部構造の複雑な管状造形物を形成できたとしても、挿入損失の小さい導波管装置は実現できないという課題があった。
【0008】
本開示は、上記のような課題を解消するためになされたもので、不純物を含有する金属からなり、挿入損失が低減された導波管装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の導波管装置は、不純物を含有する金属で構成され、一端の断面が矩形を呈し、管状部を有する導波管装置であって、前記管状部の内壁にめっき層が形成され、前記内壁の面粗度が予め設定された数値範囲内であり、前記不純物は前記金属を化学研磨する化学研磨液で化学研磨されず、前記金属を溶解しない薬液に前記不純物が溶解することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示される導波管装置によれば、導波管装置の管状部の内壁の面粗度が予め設定された数値範囲内に制御され、管状部の内壁にめっき層が形成されているので、挿入損失が低減された導波管装置が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1による三次元造形物の製造方法の処理ステップを示すフローチャート図である。
【
図2】実施の形態1による三次元造形物の製造方法によって製造される実施の形態1による三次元造形物である導波管装置の概観図である。
【
図3】実施の形態1による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である導波管装置の一例の断面図である。
【
図4】実施の形態1による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である導波管装置の一例の断面図である。
【
図5】実施の形態1による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である導波管装置の一例の断面図である。
【
図6】実施の形態1による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である導波管装置の一例の断面図である。
【
図7】実施の形態1による三次元造形物の製造方法のうち、化学研磨工程の処理ステップを示すフローチャート図である。
【
図8】化学研磨工程における各ステップにおける導波管本体の内壁の表面状態を表す模式図である。
【
図9】三次元造形物である導波管装置における挿入損失と面粗度の関係を示す図である。
【
図10】三次元造形物である導波管装置における三次元造形物である導波管装置における挿入損失と使用周波数の関係を示す図である。
【
図11】実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法の処理ステップを示すフローチャート図である。
【
図12】三次元造形物である導波管装置における三次元造形物である導波管装置における挿入損失と使用周波数の関係を示す図である。
【
図13】実施の形態3による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である導波管装置の一例の断面図である。
【
図14】実施の形態3による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である導波管装置の一例の断面図である。
【
図15】実施の形態3による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である導波管装置の一例の断面図である。
【
図16】実施の形態3による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である導波管装置の一例の断面図である。
【
図17】実施の形態4による三次元造形物の製造方法の処理ステップを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、まず、実施の形態1による三次元造形物の製造方法について、
図1および2を用いて説明する。図中、X軸方向は、三次元造形物である管状造形物100の矩形状の断面における横方向に相当し、Y軸方向は、管状造形物100の矩形状の断面における縦方向に相当し、Z軸方向は、管状造形物100の延在する方向、すなわち、延在方向に相当する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向はそれぞれ直交する。
【0013】
実施の形態1による三次元造形物の製造方法の概略を
図1のフローチャートに示す。
不純物1を含有する金属粉末を用いて三次元造形物である管状造形物100を造形する造形工程(STEP1)と、管状造形物100の内壁4を、露出した不純物1を含めて化学研磨する化学研磨工程(STEP2)からなる。
実施の形態1による三次元造形物の製造方法で特徴的な工程である化学研磨工程の詳細については後述する。
【0014】
造形工程(STEP1)は、例えば、粉末床造形方式の3Dプリンタによる造形が挙げられる。つまり、三次元の形状データに基づいて、金属粉末などの粉末材料を1層ずつ層状に積み重ねて、断面形状をレーザあるいは電子ビームなどのエネルギー源で溶融してから固化させて三次元造形物を造形する。
なお、金属粉末として、銅あるいはアルミニウムが挙げられるが、これらの材料のみに限定されるわけではない。
【0015】
金属粉末には、不純物1が意図的に添加されている。金属粉末への不純物1の添加は、3Dプリンタによる三次元造形物の造形性を高める、あるいは、三次元造形後の三次元造形物の物性値を向上させるといった効果をもたらす。
【0016】
ここで、実施の形態1による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である管状造形物100についてまず説明する。
【0017】
実施の形態1による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物である管状造形物100の概観図を
図2に示す。管状造形物100の一端は、矩形の断面形状を呈している。なお、
図2に示される管状造形物100は、後述する各導波管装置の内部構造までは図示していない。
【0018】
実施の形態1による三次元造形物である管状造形物100は、
図1のフローチャートに示されるように、不純物1を含有する金属粉末を用いて造形される。かかる三次元造形された管状造形物100が導波管装置として使用される場合には、
図2の概観図に示すように、三次元造形物である管状造形物100は導波管本体3の管状部を電磁波が伝搬する導波管装置として機能し、不純物1が存在しないと想定した状態において、導波管装置としての使用周波数に合わせ込まれた面粗度Raとなるように化学研磨された内壁4を有する。
【0019】
なお、
図2の管状造形物100は、あくまで三次元造形物の一例であって、実施の形態1による三次元造形物の製造方法によって製造される三次元造形物は管状造形物100のみ、あるいは後述する導波管装置のみになんら限定されるものではなく、三次元造形物の全般に適用できる製造方法である。
【0020】
管状造形物100が適用される製品群の一態様である導波管装置は、伝送線路としての機能を有する導波管と、伝送線路上にフィルタ機能、分配機能および合成機能をもたらす導波管回路との両方の概念を含むものである。
【0021】
以下、三次元造形物である管状造形物100を導波管装置に適用した場合の各導波管装置110、120、130、140、150、160の断面構造を、
図3から6を用いて説明する。
図3から6に示される各断面図は、
図2に示される管状造形物100をA-A方向から見た断面図、つまり、X軸とZ軸とが交差する面における各導波管装置の断面図である。
【0022】
なお、
図2の管状造形物100は、上述したように、管状部5の内部構造を示すものではないし、さらに、
図5の導波管装置150および
図6の導波管装置160の外観を示すものでもない。
【0023】
図3から6に示される各導波管装置110、120、130、140、150、160の導波管本体3は、
図1のフローチャートにおける造形工程(STEP1)で容易に作製することができる。なお、
図2から6に示される各導波管装置の導波管本体3の内壁4には、めっき層は形成されていない。
【0024】
図3(A)に示される導波管装置110は、導波管本体3の内壁4が導波管装置110の延在方向、つまり
図3(A)におけるZ軸方向と交差するX軸方向において、対向する面の間の距離がランダムである。言い換えれば、導波管本体3の内側の一側面から管状部5の中心に向かって突出する凸部31がZ軸方向に沿って複数個配置され、一側面から凸部31の先端までの長さが、各凸部31によって異なる。
【0025】
一方、導波管本体3の内側の一側面と対向する側面側にも同じサイズの各凸部31が形成されている。すなわち、導波管本体3の内側で互いに対向する両側面に設けられた各凸部31は、Z軸に対して対称になるように配置されている。
【0026】
図3(B)に示される導波管装置120は、導波管本体3の内側の一側面から管状部5の中心に向かって突出する凸部31がZ軸方向に沿って複数個配置され、一側面から凸部31の先端までの長さが、各凸部31で同一となっている。つまり、一定の突出した長さを有する凸部31が、Z軸方向に沿って一定の間隔を保ちながら周期的に複数個配置されている。
【0027】
導波管本体3の内側の一側面と対向する側面側にも同一形状の凸部31が形成されている。すなわち、導波管本体3の内側で互いに対向する両側面に設けられた各凸部31は、Z軸方向に対して対称となるように配置されている。
【0028】
図4(A)に示される導波管装置130は、導波管本体3の内側に仕切り壁3aが設けられ、2つの管状部5が形成される。なお、仕切り壁3aの数は必要に応じてさらに設けることが可能である。導波管本体3の内側に仕切り壁3aをn個設けた場合は、管状部5がn+1個形成される。
【0029】
図4(B)に示される導波管装置140は、上述の導波管装置130の導波管本体3の内側に設けられた仕切り壁3aは、導波管本体3の延在方向、すなわち、Z軸方向における中央部で2つに分割された仕切り壁3bで構成される。言い換えれば、隣接する管状部5の一か所が連通している。
【0030】
導波管装置130と同様に、導波管装置140においても、2つの管状部5が形成される。なお、仕切り壁3bを必要に応じてさらに分割しても良い。
【0031】
図5に示される導波管装置150は、導波管本体3が、Z軸方向に延在する管状部5に加えて、X軸方向に延在する管状部5aが設けられている。導波管装置150の断面を上方、つまり、Y軸方向から見るとT字状を呈している。
【0032】
図6に示される導波管装置160は、導波管本体3がZ軸方向に沿って二つの方向に分岐している。導波管装置160の断面を上方、つまり、Y軸方向から見るとY字状を呈している。
【0033】
以上、
図3から6において、各導波管装置110、120、130、140、150、160を説明した。各導波管装置の構造は、所望の伝送すべき電磁波の周波数に応じて、適宜、選択される。
【0034】
次に、実施の形態1による三次元造形物の製造方法で特徴的な工程である化学研磨工程について詳細する。
【0035】
一般的に、金属粉末を用いて、3Dプリンタを用いて造形した三次元造形物は面粗度が粗いため、管状造形物100である導波管装置として使用する場合には電気的な損失が大きい。電気的な損失が大きい不具合要因として、2点が挙げられる。
【0036】
電気的な損失が大きい1番目の不具合要因は、三次元造形に使用する金属粉末には、不純物1、例えば、シリコンが含まれており、管状造形物100を導波管装置に適用する場合に、この不純物1が内壁4に露出すると、導波管本体3の内壁4の導電率の悪化、つまり、低下が生じて、損失が大きくなってしまう点にある。
【0037】
電気的な損失が大きい2番目の不具合要因は、導波管装置の管状部5を伝搬する電磁波の波長、すなわち、使用周波数の波長に対して、導波管本体3の内壁4の面粗度が粗いことに起因して、伝送線路長が実効的に長くなってしまうために、伝搬する電磁波の損失が大きくなってしまう点にある。
【0038】
実施の形態1による三次元造形物の製造方法では、上述の1番目の不具合要因に対処するために、化学研磨工程(STEP2)を行う。
これは、管状造形物100の内壁4を研磨するためには、一般的に用いられてきた機械的な研磨、例えば、流体を内部に流しながら研磨する流体研磨では、三次元造形物の複雑な内部構造に対応できないためである。
【0039】
実施の形態1による三次元造形物の製造方法において、さらに、2番目の不具合要因に対処する必要がある場合は、化学研磨工程(
図1のSTEP2)を、三次元造形物である管状造形物100が導波管装置に適用され、導波管本体3の内壁4に不純物1が存在しないと想定した状態において、管状部5を電磁波が伝搬する導波管装置としての使用周波数に合わせた面粗度Raに合わせ込むように研磨する工程とする。
【0040】
ここで、不純物1が存在しないと想定した状態とは、最終的に、三次元造形物である管状造形物100を導波管装置に適用する際は、銀めっきなどのめっき層6(導体層とも呼ぶ)を導波管本体3の内壁4に施して使用する場合、つまり、内壁4に、めっき層6が形成されて使用される場合を想定している。導波管本体3の内壁4に、めっき層6が形成された導波管装置については、実施の形態2において詳述する。
【0041】
次に、管状部5を電磁波が伝搬する導波管装置としての使用周波数に合わせた場合の導波管本体3の内壁4の面粗度Raは、不純物1が存在しないと想定した状態で、導波管装置の管状部5を伝搬する電磁波の損失、つまり挿入損失が予め定められた範囲内になるように制御されている。かかる導波管装置の構成は、実施の形態1による三次元造形物の一形態である。
【0042】
すなわち、化学研磨工程(STEP2)では、不純物1が存在しないと想定した状態で、導波管装置の導波管本体3の内壁4を、導波管装置の管状部5を伝搬する電磁波の損失が予め定められた範囲となるような面粗度Raに合わせ込むように研磨する工程といえる。
【0043】
化学研磨工程(
図1のSTEP2)の詳細について、化学研磨工程中をさらに詳細な各工程に分けて示した
図7のフローチャート、および、
図8の各工程における導波管装置の導波管本体3の内壁4の表面状態を模式的に表した図に基づき説明する。
【0044】
なお、
図8の表面状態を模式的に表した図において、(A)は造形工程(
図1のSTEP1)によって造形された三次元造形物である管状造形物100の内壁4の表面状態、(B)は後述の第1回目の平滑化処理工程(STEP11)の後の管状造形物100の内壁4の表面状態、(c)は後述の第1回目の不純物除去工程後の管状造形物100の内壁4の表面状態をそれぞれ表す。
【0045】
まず、平滑化処理工程(STEP11)として、造形工程(
図1のSTEP1)によって三次元造形された管状造形物100を化学研磨液に浸漬して、管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4を含む金属表面の平滑化を行う。
【0046】
平滑化処理工程(STEP11)の前後で、導波管装置の導波管本体3の内壁4の表面は、平滑化処理工程(STEP11)前の
図8(A)に示す模式的な表面状態から、平滑化処理工程(STEP11)後の
図8(B)に示す模式的な表面状態へと変化する。
【0047】
すなわち、平滑化処理工程(STEP11)前では、内壁4にはある程度の不純物1が露出している状態であるが、平滑化処理工程(STEP11)後では、以下に説明するように、内壁4の表面に露出する不純物1の個数は増加する。
【0048】
平滑化処理工程(STEP11)における導波管装置の導波管本体3の内壁4の化学研磨において、三次元造形物である管状造形物100を構成する金属を化学研磨することを目的とする化学研磨液では、通常は、不純物1を同時に化学研磨することができないので、化学研磨液による内壁4の化学研磨が進行するほど、内壁4の表面に露出する不純物1の個数は増加する。すなわち、内壁4の表面に露出する不純物1の密度が高くなり、内壁4は
図8(B)に示す模式的な表面状態となる。
【0049】
導波管本体3の内壁4の表面に露出した不純物1は、導波管装置の性能を著しく劣化させるため、除去する必要がある。かかる目的のため、平滑化処理工程(STEP11)の後に、不純物除去工程(STEP12)を行う。具体的には、内壁4の表面上に露出した不純物1を、不純物1を選択的に溶解するような薬液で除去する。ここで、選択的に溶解するとは、不純物1は溶解するが、導波管装置の導波管本体3を構成する金属を殆ど、あるいは全く溶解しない、という意味である。
【0050】
不純物除去工程(STEP12)後、洗浄工程(STEP13)を実施する。具体的には、水洗によって三次元造形物である管状造形物100を洗浄する。
【0051】
洗浄工程(STEP13)後、面粗度(Ra)検査工程(STEP14)を行う。上述したように、導波管装置の導波管本体3の内壁4の面粗度Raは、導波管装置の管状部5を伝搬する電磁波の損失の度合いに強く影響を及ぼすので、制御しなければならないパラメータの一つである。
【0052】
導波管装置の導波管本体3の内壁4の面粗度Raの測定は、JISB0651に定義されている触針式表面粗さ測定機により測定される。また、面粗度Raは、JISB0601などによって定義される面粗度とする。
【0053】
管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4の面粗度Raは、導波管装置の使用周波数によって予め設定された数値範囲内になるように調整すべき数値パラメータである。
管状造形物100である導波管装置をアンテナ用に適用する場合は、例えば、予め設定された数値範囲内として、面粗度Raが2μm以上4μm以下の数値範囲が挙げられる。
【0054】
なお、この面粗度Raの数値範囲は、管状造形物100である導波管装置をアンテナ用に適用する場合の一例として挙げたが、管状造形物100である導波管装置をアンテナ用以外の用途に使用する場合も有効な数値範囲である。
【0055】
第1回目の平滑化処理工程(STEP11)および不純物除去工程(STEP12)の1サイクルを経て、面粗度(Ra)検査工程(STEP14)で測定された面粗度Raが、予め設定された数値範囲内でない場合、つまり、通常は数値範囲内の上限値より大きい場合は、面粗度Raが予め設定された数値範囲内に合わせ込まれるまで上記サイクルを繰り返し、最終的には、予め設定された数値範囲内に面粗度Raを合わせ込む(STEP15)。
【0056】
以上、実施の形態1による三次元造形物の製造方法における特徴的な工程である化学研磨工程(
図1のSTEP2)を詳細に説明した。
【0057】
図9は、化学研磨工程(STEP2)を施した管状造形物100である導波管装置における挿入損失と面粗度Raの関係を示したグラフである。
図9の縦軸は挿入損失[dB]を示し、横軸は面粗度(Ra)[μm]をそれぞれ示している。
【0058】
挿入損失は、高周波回路、すなわち、伝送線路の一方のポートから入力した電磁波と、他方のポートから出力した電磁波とを比較して、高周波回路(伝送線路)における損失を示す指標である。
【0059】
面粗度Raは、算術平均粗さと呼ばれるパラメータであり、凹凸の高さ方向のパラメータである。上述したように、面粗度Raは、JISB0601などによって定義される面粗度である。
【0060】
図9は、具体的には、
図2に示す管状造形物100である導波管装置の一方のポート、つまり一端の開口から入力した導波管装置としての使用周波数の電磁波と、一端のポートと連通した他端のポート、つまり、他端の開口から出力された電磁波とを比較した結果である。
【0061】
図9から、化学研磨工程(
図1のSTEP2)によって、内壁4の化学研磨が進行し、内壁4の面粗度Raが小さくなる、つまり、
図9のグラフ上では原点側に近接するにつれて、挿入損失も向上することが分かる。上述したように、面粗度Raは、例えば、2μm以上4μm以下の範囲が好適である。
【0062】
図10は、三次元造形された管状造形物100である導波管装置における、挿入損失と使用周波数の関係を示すグラフである。
図10の縦軸は挿入損失[dB]を示し、横軸は使用周波数[GHz]をそれぞれ示している。ここで挿入損失とは、上述のとおり、一方のポートから入力した電磁波と、他方のポートから出力した電磁波とを比較した損失を示す指標である。
【0063】
図10において、曲線(a)は、造形工程(
図1のSTEP1)の後に、なんら処理してない管状造形物100である導波管装置から得たデータである。曲線(b)は、比較例として、造形工程(
図1のSTEP1)の直後に、つまり、内壁4の化学研磨を行わない状態で、導電性のめっきを施した管状造形物100である導波管装置から得たデータである。曲線(c)は、実施の形態1による三次元造形物の製造方法である化学研磨工程(
図1のSTEP2)を経て製造された管状造形物100である導波管装置から得たデータである。
【0064】
以上の結果から、比較例である曲線(b)に示されるように、導波管装置の導波管本体3の内壁4の表面に導電性のめっきを単に施しても、挿入損失は理想的な数値にはならないことが分かる。この実験結果は、実施の形態1による三次元造形物の製造方法における特徴的な工程である化学研磨工程(
図1のSTEP2)が有効であることを顕著に表している。
【0065】
図10から、導波管装置としての使用周波数が比較的低く、不純物1の影響が少ない場合は、後述の実施の形態2で説明するめっき工程を省略しても、三次元造形された管状造形物100である導波管装置を導波管回路として使用した場合でも、挿入損失の小さい導波管装置が得られることが分かる。
【0066】
以上、実施の形態1による三次元造形物の製造方法では、化学研磨工程を適用し、さら化学研磨工程において三次元造形物(導波管装置)の内壁の面粗度Raを予め設定された数値範囲内に制御するので、挿入損失が低減された三次元造形物(導波管装置)を容易に製造できる効果を奏する。
【0067】
また、実施の形態1による三次元造形物では、三次元造形物(導波管装置)の導波管本体の内壁の面粗度Raが予め設定された数値範囲内に制御されているので、挿入損失が低減された三次元造形物(導波管装置)が得られるという効果を奏する。
【0068】
実施の形態2.
以下、実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法について、
図11および
図12を用いて説明する。
【0069】
実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法は、具体的には、導電性の管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4の加工方法である。
図11に示すように、管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4を化学研磨する化学研磨工程(STEP21)と、化学研磨工程(STEP21)後に、管状造形物100の内壁4に導電性のめっきを施すめっき工程(STEP22)とを備えたことを特徴とする。
【0070】
なお、管状造形物100を造形する際に材料となる金属粉末が不純物1を含まない場合、あるいは、管状造形物100を導波管装置として使用した場合の使用周波数が比較的低く、かつ、不純物1の影響が少ない場合は、後述のめっき工程(STEP22)なしで、管状造形物100を導波管回路として使用してもよい。
【0071】
実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法は、実施の形態1による三次元造形物の製造方法における造形工程(
図1のSTEP1)で得られた管状造形物100である導波管装置の内壁4の加工方法として好適である。この場合、化学研磨工程(STEP21)は、不純物1を含有する導電性の管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4を化学研磨する工程となる。そして、めっき工程(STEP22)は、化学研磨工程(STEP21)後に、露出した不純物1をある程度含有する導波管本体3の内壁4に対して、導電性のめっきを施す工程となる。
【0072】
しかしながら、実施の形態2による内壁加工方法が適用される管状造形物は、実施の形態1による三次元造形物の製造方法における造形工程(
図1のSTEP1)で得られた管状造形物100に限定されない。すなわち、実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法は、一般的な管状造形物の製造方法によって作製された管状造形物に対しても、同様の効果を奏する。
【0073】
化学研磨工程(STEP21)は、不純物1を含有する金属粉末から造形された管状造形物100を研磨する工程である。また、化学研磨工程(STEP21)は、管状造形物100の造形時に内壁に生じた凹凸を研磨する工程でもある。管状造形物100が導波管装置の場合、化学研磨工程(STEP21)は、管状造形物100の導波管本体3の内壁4を研磨する工程に相当する。
【0074】
実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法におけるめっき工程(STEP22)は、管状造形物100が導波管装置である場合、管状部5を電磁波が伝搬する導波管装置に仕上げる工程に相当する。めっき工程(STEP22)の一例として、管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4に、例えば、銀めっきを施す工程が挙げられる。
【0075】
図12は、管状造形物100である導波管装置における、挿入損失と使用周波数の関係を示すグラフである。
図10の縦軸は挿入損失[dB]を示し、横軸は使用周波数[GHz]をそれぞれ示している。ここで挿入損失とは、上述のとおり、一方のポートから入力した電磁波と、他方のポートから出力した電磁波とを比較した損失を示す指標である。
【0076】
図12において、曲線(a)は、造形工程(
図1のSTEP1)の後に、なんら処理はしてない管状造形物100である導波管装置から得たデータである。曲線(b)は、比較例として、造形工程(
図1のSTEP1)の直後に、つまり、内壁4の化学研磨を行わない状態で、導電性のめっきを施した管状造形物100である導波管装置から得たデータである。曲線(c)は、実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法である化学研磨工程(STEP21)を経て製造された管状造形物100である導波管装置から得たデータである。曲線(d)は、実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法である化学研磨工程(STEP21)およびめっき工程(STEP22)を行い、導波管本体3の内壁4にめっき層6が形成された導波管装置から得たデータである。
【0077】
各曲線のうち、曲線(d)が理論値に近い数値を示している。これに対して、曲線(b)の比較例に示されるように、管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4の表面に、導電性のめっきを単に施しても、挿入損失は理想的なものにはならない。
図12に示される各データは、実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法における化学研磨工程(STEP21)およびめっき工程(STEP22)の有効性を裏付けるものである。
【0078】
図12から分かるように、金属粉末が不純物1を含まない場合、あるいは、管状造形物100である導波管装置の使用周波数が比較的低く、不純物1の影響が少ない場合は、めっき工程(STEP22)なしで、管状造形物100である導波管装置を導波管回路として使用してもよいことが分かる。
【0079】
化学研磨工程(STEP21)およびめっき工程(STEP22)によって内壁4を加工された管状造形物100が導波管装置である場合、後述する
図13から16に示されるような断面構造を有する導波管装置となる。
【0080】
化学研磨工程(STEP21)は、実施の形態1と同様な化学研磨工程(
図1のSTEP1、
図7のフローチャートに示される各工程を含む化学研磨工程)、すなわち、管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4を、導波管装置の使用周波数に合わせた面粗度Raに合わせ込むように研磨する工程であることが好ましい。つまり、
図11の化学研磨工程(STEP21)は、管状造形物100である導波管装置の導波管本体3の内壁4を、導波管装置の管状部5を伝搬する電磁波の損失が予め設定された数値範囲内となるような面粗度Raに合わせ込むように研磨する工程である。つまり、面粗度Raの数値範囲は、導波管装置の管状部5を伝搬する電磁波の損失に基づき決定される。
【0081】
以上、実施の形態2による管状造形物の内壁加工法では、管状造形物の内壁に化学研磨を適用し、さらに内壁の表面にめっき層を形成するので、挿入損失が低減された管状造形物(導波管装置)を容易に製造できる効果を奏する。
【0082】
実施の形態3.
以下、実施の形態3による導波管装置について
図13から16を用いて説明する。
【0083】
実施の形態3による各導波管装置210、220、230、240、250、260は、不純物1を含有する導電性の管状造形物100である導波管装置の導波管本体3と、導波管装置としての使用周波数に合わせた面粗度Raに合わせ込むように研磨された導波管本体3の内壁4と、露出した不純物1を含有する導波管本体3の内壁4の表面を覆うめっき層(導体層)6とを備えたことを特徴とする。
【0084】
めっき層6の一例として、銀めっきによるめっき層6が挙げられる。実施の形態3による導波管装置は、三次元造形された導電性の管状造形物100である導波管装置が、この導波管装置の使用周波数に合わせ込んだ面粗度Raに研磨された導波管本体3の内壁4を有するものでもよい。つまり、面粗度Raの数値範囲は、導波管装置として使用する電磁波の周波数に基づき決定される。
【0085】
図13から16に示されるような断面構造を有する各導波管装置210、220、230、240、250、260は、
図3から
図6に示されるような断面構造を有する各導波管装置110、120、130、140、150、160の導波管本体3の内壁4の表面にめっき層6を形成したものである。
【0086】
すなわち、
図3から
図6に示されるような断面構造を有する各導波管装置では導波管本体3の内壁4が露出しているが、
図13から16に示されるような断面構造を有する各導波管装置210、220、230、240、250、260は、導波管本体3の内壁4の表面はめっき層6で覆われている点が異なる。
【0087】
以下、実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法により作製された三次元造形物である管状造形物100を導波管装置に適用した場合の各導波管装置210、220、230、240、250、260の断面構造を
図13から16を用いて説明する。なお、実施の形態2による管状造形物の内壁加工方法により作製された三次元造形物である管状造形物の外観は、実施の形態1による管状造形物100と同一の外観である。
【0088】
図13から16に示される各断面図は、
図2に示される管状造形物100をA-A方向から見た断面図、つまり、X軸とZ軸とが交差する面における各導波管装置の断面図である。なお、
図2の管状造形物100は、上述したように、管状部の内部構造を示すものではないし、さらに、
図15の導波管装置250および
図16の導波管装置260の外観を示すものでもない。
【0089】
図13から16に示される各導波管装置210、220、230、240、250、260の導波管本体3は、例えば、
図1のフローチャートにおける造形工程(STEP1)で容易に作製することができる。
【0090】
図13(A)に示される導波管装置210は、導波管本体3の内壁4が導波管装置210の延在方向、つまり
図13(A)におけるZ軸方向と交差するX軸方向において、対向する面の間の距離がランダムである。言い換えれば、導波管本体3の内側の一側面から管状部5の中心に向かって突出する凸部31がZ軸方向に沿って複数個配置され、一側面から凸部31の先端までの長さが、各凸部31によって異なる。
【0091】
一方、導波管本体3の内側の一側面と対向する側面側にも同じサイズの各凸部31が形成されている。すなわち、導波管本体3の内側で互いに対向する両側面に設けられた各凸部31は、Z軸に対して対称になるように配置されている。
【0092】
導波管装置210の導波管本体3の内壁4の表面にはめっき層6が形成されている。なお、内壁4の一部をなす各凸部31の側面部分にもめっき層6が形成されている。
【0093】
図13(B)に示される導波管装置220は、導波管本体3の内側の一側面から管状部5の中心に向かって突出する凸部31がZ軸方向に沿って複数個配置され、一側面から凸部31の先端までの長さが、各凸部31で同一となっている。つまり、一定の突出した長さを有する凸部31が、Z軸方向に沿って一定の間隔を保ちながら周期的に複数個配置されている。
【0094】
導波管本体3の内側の一側面と対向する側面側にも同一形状の凸部31が形成されている。すなわち、導波管本体3の内側で互いに対向する両側面に設けられた各凸部31は、Z軸方向に対して対称となるように配置されている。
【0095】
導波管装置220の導波管本体3の内壁4の表面にはめっき層6が形成されている。なお、内壁4の一部をなす各凸部31の側面部分にもめっき層6が形成されている。
【0096】
図14(A)に示される導波管装置230は、導波管本体3の内側に、仕切り壁3aが設けられ、2つの管状部5が形成される。なお、仕切り壁3aの数は必要に応じてさらに設けることが可能である。導波管本体3の内側に仕切り壁3aをn個設けた場合は、管状部5がn+1個形成される。
【0097】
導波管装置230の導波管本体3の内壁4の表面にはめっき層6が形成されている。また、内壁4の一部をなす仕切り壁3aの両側面にもめっき層6が形成されている。
【0098】
図14(B)に示される導波管装置240は、上述の導波管装置230の導波管本体3の内側に設けられた仕切り壁3aは、導波管本体3の延在方向、すなわち、Z軸方向における中央部で2つに分割された仕切り壁3bで構成される。言い換えれば、隣接する管状部5の一か所が連通している。
【0099】
導波管装置230と同様に、導波管装置240においても、2つの管状部5が形成される。なお、仕切り壁3bを必要に応じてさらに分割しても良い。
【0100】
導波管装置240の導波管本体3の内壁4の表面にはめっき層6が形成されている。また、内壁4の一部をなす各仕切り壁3bの両側面にもめっき層6が形成されている。
【0101】
図15に示される導波管装置250は、導波管本体3が、Z軸方向に延在する管状部5に加えて、X軸方向に延在する管状部5aが設けられている。導波管装置250の断面を上方、つまり、Y軸方向から見るとT字状を呈している。
【0102】
導波管装置250の導波管本体3の内壁4の表面にはめっき層6が形成されている。また、X軸方向に延在する管状部5a側の内壁4にもめっき層6が形成されている。
【0103】
図16に示される導波管装置260は、導波管本体3がZ軸方向に沿って二つの方向に分岐している。導波管装置260の断面を上方、つまり、Y軸方向から見るとY字状を呈している。
【0104】
導波管装置260の導波管本体3の内壁4の表面にはめっき層6が形成されている。また、二つの方向に分岐している管状部の内壁4のそれぞれにもめっき層6が形成されている。
【0105】
以上、
図13から16において、各導波管装置210、220、230、240、250、260を説明した。各導波管装置の構造は、所望の伝送すべき電磁波の周波数に応じて、適宜、選択される。
【0106】
実施の形態3による導波管装置では、導波管装置の導波管本体の内壁の面粗度Raが予め設定された数値範囲内に制御され、かつ、内壁の表面にはめっき層が形成されているので、挿入損失が低減された導波管装置が得られるという効果を奏する。
【0107】
実施の形態4.
実施の形態4による三次元造形物の製造方法について、
図17のフローチャートを用いて説明する。
実施の形態1による三次元造形物の製造方法では、処理ステップとして、造形工程(STEP1)と化学研磨工程(STEP2)とを用いたものを説明した。また、実施の形態2による管状造形物の内壁加工法では、処理ステップとして、化学研磨工程(STEP21)とめっき工程(STEP22)とを用いたものを説明した。すなわち、各処理ステップを分けて実施する三次元造形物の製造方法をそれぞれ説明してきたが、実施の形態4による三次元造形物の製造方法では、
図17のフローチャートに示すように、造形工程(STEP31)、化学研磨工程(STEP32)、めっき工程(STEP33)の3工程からなるものである。
【0108】
図17のフローチャートに示すように、実施の形態4による三次元造形物の製造方法では、三次元構造の導電性の管状造形物100を三次元造形する造形工程(STEP31)と、三次元造形物である管状造形物100の内壁4を化学研磨する化学研磨工程(STEP32)と、化学研磨工程(STEP32)後に、管状造形物100の内壁4に導電性のめっきを施してめっき層6を形成するめっき工程(STEP33)からなることを特徴とする。
【0109】
実施の形態4による三次元造形物の製造方法における造形工程(STEP31)は実施の形態1の造形工程(STEP1)と、化学研磨工程(STEP32)は実施の形態1の化学研磨工程(STEP2)と、めっき工程(STEP33)は実施の形態2のめっき工程(STEP22)とそれぞれ同一の工程であり、個々の工程の詳細および管状造形物100である導波管装置の形状については、実施の形態1から3で説明したとおりなので、説明を省略する。
【0110】
図17に示す一連の工程を実施することにより、特に化学研磨工程の適用によって、三次元造形物である導波管装置の内壁の面粗度Raを予め設定された数値範囲内に制御でき、かつ、内壁の表面にめっき層を形成するので、挿入損失が低減された三次元造形物(導波管装置)を容易に製造できる。
【0111】
以上、実施の形態4による三次元造形物の製造方法では、三次元造形された三次元造形物(導波管装置)の内壁に化学研磨を適用し、さらに、三次元造形物の内壁の表面にめっき層を形成するので、挿入損失が低減された三次元造形物(導波管装置)を容易に製造できる効果を奏する。
【0112】
本開示は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
【0113】
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0114】
1 不純物、3 導波管本体、3a、3b 仕切り壁、4 内壁、5、5a 管状部、6 めっき層、31 凸部、100 管状造形物、110、120、130、140、150、160、210、220、230、240、250、260 導波管装置