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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/20 20060101AFI20240906BHJP
   B43K 5/18 20060101ALI20240906BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20240906BHJP
   B05C 17/00 20060101ALI20240906BHJP
   A45D 34/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B43K29/20 A
B43K5/18
B43K8/02
B05C17/00
A45D34/02 510Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020142818
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038358
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中田 瑛大
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-226091(JP,A)
【文献】特開2020-023118(JP,A)
【文献】特開2009-137271(JP,A)
【文献】特開2018-011888(JP,A)
【文献】特開2004-142255(JP,A)
【文献】特開2003-105244(JP,A)
【文献】特開2004-167997(JP,A)
【文献】特開2005-205919(JP,A)
【文献】特開2018-192794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 29/00-31/00
B43K 1/00- 1/12
B43K 5/00- 8/24
A45D 33/00-40/30
B05C 7/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の一端に配置した毛細管力を有する塗布体と、
軸筒の一端側から他端側にかけて軸筒内に形成され、外部と連通する空気孔を内部に有する管状部材と、
軸筒内及び管状部材の間の空間内に収容された液を空間内から塗布体に供給可能に形成された供給路と、
供給路に配置された液の一時保溜体と、
を備え
前記一時保溜体は、外周部に複数の櫛歯が配列され、各櫛歯に、軸方向に沿って後端から先方に向けてスリットが形成された毛管部材であり、スリットの外側の溝を介して前記空間内の塗布液を気液置換するものであり、
軸筒の他端が貫通孔で開放され、前記塗布体の液の蒸発成分が前記管状部材の空気孔を介して前記軸筒の他端の貫通孔から外部に放散するようにしたことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
管状部材には、軸筒又は一時保溜体の中心部に金属材料の芯棒が入る空間を有しており、
芯棒の外周に塗布体を備えると共に、前記軸筒の他端の貫通孔に多孔質体が装着されたことを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
空間内の塗布液は、溶剤と香料を含有する芳香液体であり、溶剤が、イソパラフィン系炭化水素、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよび3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールであり、イソパラフィン系炭化水素の含有量が60~90質量%であり、ジプロピレングリコールジメチルエーテルの含有量が5~20質量%であり、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールの含有量が10質量%以下であり、香料の含有量は0.1~30%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布具に関し、特許文献1は、操作部の操作によって後端から芳香を発散させる筆記用具を開示する。
【0003】
特許文献2は、香料入りのインク用液体を収容したコレクター式筆記具を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】2007-237722号公報
【文献】2004-142255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の芳香剤を搭載したペン体等の液体容器では、塗布若しくは揮発の一方のみしか選択することができず、塗布中に揮発させることができない。
【0006】
本開示は、直接的に塗布ができ、間接的に液体を揮発できる塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様は、軸筒の一端に配置した毛細管力を有する塗布体と、軸筒の一端側から他端側にかけて軸筒内に形成され、外部と連通する空気孔を有する管状部材と、軸筒内及び管状部材の間の空間内に収容された液を空間内から塗布体に供給可能に形成された供給路と、供給路に配置された液の一時保溜体と、を備えたことを特徴とする塗布具である。
【0008】
本開示の態様において、管状部材には、軸筒又は一時保溜体の中心部に芯棒が入る空間を有しており、芯棒の外周に塗布体を備えたことが好適である。
本開示の態様において、軸筒の一端及び他端に段部のあるキャップが装着可能であると共に、一端及び他端に装着するキャップが、同形状であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様に係る塗布具によれば、空間内に収容された液を空間内から塗布体に供給可能に形成された供給路と、供給路に配置された液の一時保溜体とを備えるので、液を塗布体から直接的に塗付することが可能であると共に、液を間接的に揮発できる等の効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る塗布具であってキャップをした状態の説明図であり、(a)が全体側面図、(b)が(a)のB-B線に沿う縦断面図、(c)が先端部の拡大断面図である。
図2図1の塗布具がキャップを外した状態の説明図であって、(a)が全体側面図、(b)が(a)のB-B線に沿う縦断面図、(c)が先端部の拡大図、(d)が全体斜視図である。
図3図1の塗布具の部品である、一時保溜体の説明図であって、(a)が先方からの斜視図、(b)が先方からの視図、(c)がスリット側から見た側面図、(d)が(c)から90°回転させた側面図、(e)が(c)のE-E線に沿う縦断面図、(f)が後方からの斜視図、(g)が(d)のG-G線に沿う横断面図、(h)が後方からの視図である。
図4】第2実施形態に係る塗布具であってキャップをした状態の説明図であり、(a)が全体側面図、(b)が(a)のB-B線に沿う縦断面図、(c)が先端部の拡大断面図である。
図5図5の塗布具がキャップを外した状態の説明図であって、(a)が先方からの視図、(b)が全体側面図、(c)が(a)のC-C線に沿う縦断面図、(d)が先端部の拡大図、(e)が全体斜視図である。
図6図5の塗布具の部品である、軸筒の説明図であって、(a)が先方からの斜視図、(b)が後方からの斜視図、(c)が全体側面図、(d)が(c)のD-D線に沿う縦断面図である。
図7図5の塗布具の部品である、一時保溜体の説明図であって、(a)が先方からの斜視図、(b)が先方からの視図、(c)がスリット側から見た側面図、(d)が(e)のD-D線に沿う縦断面図、(e)が(c)から90°回転させた側面図、(f)が(c)のF-F線に沿う縦断面図、(g)が後方からの斜視図、(h)が後方からの視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について添付図面を参照して説明する。
[1 第1実施形態]
[1.1 全体構成]
図1は第1実施形態に係る塗布具のキャップをした状態、図2は塗布具からキャップを外した状態の全体説明図である。
【0012】
図1図2に示すように、第1実施形態に係る塗布具は、軸筒10の一端(先端:図において「F」側端)に配置した毛細管力を有する塗布体12と、軸筒10の一端側から他端(後端:図において「R」側端)側にかけて軸筒10内に形成され、外部と連通する空気孔14aを有する管状部材14と、軸筒10内及び管状部材14の間の空間(液収容空間)16内に収容された液を空間16内から塗布体12に供給可能に形成された供給路18と、供給路18に配置された液を一時的に保溜する一時保溜体20と、を備えた塗布具である。
【0013】
軸筒10の一端10f及び他端10rに段部のあるキャップ22、22が装着可能である。一端10f及び他端10rに装着するキャップ22、22は、同形状である。
【0014】
[1.2 各部構成]
〔軸筒10〕
図1図2に示すように、軸筒10の一端10f及び他端10rは、段部10f1及び10r1を介して中央部より縮径する形状である。
【0015】
軸筒10の他端10r(後部)には、段部10r1形成箇所の内側部に、径方向中央に貫通孔のある壁部10cが形成される。壁部10cは、貫通孔に管状部材14の後端部を装着してその後端部を支持する。環状部材14は、壁部10c中央の貫通孔を経由して空気孔14aによって外部と連通する。
【0016】
また、軸筒10の一端10f(先端)の周方向の一部に、切り欠き又は貫通孔の通気孔10dが形成される。
【0017】
軸筒10の一端10fには、一時保溜体(液保溜体)20が嵌入している。通気孔10は、一時保溜体20の外周を外気に通気して気液置換を可能にする。
【0018】
〔キャップ22〕
軸筒10の一端10f及び他端10rの各端部にキャップ22、22が外嵌される。
【0019】
キャップ22、22は、頂部に比較して開口部が大径であり段差の有る概略椀状を呈している。図1に示すように、キャップ22、22は、その各開口端部が軸筒10の一端10f及び他端10rの段部10f1及び10r1に当接して、かつ外周面に気密に嵌着する構造である。
【0020】
キャップ22,22は、同形状とすることで、装着が容易でかつ塗布具容器からの揮発防止だけでなく、筆記のみとする場合や、芳香の放散や匂いの吸引のみを目的とする場合に、キャップ同士で容易に連結して、キャップの紛失を防止することができる。また軸筒10の外径と略同径とすることで、塗布具全体のスリムデザイン化を可能となる。
【0021】
〔一時保溜体20〕
図3は、一時保溜体20の説明図である。
【0022】
一時保溜体20は、図3に示すように、外周部に複数の櫛歯(枚葉体)20a…が配列された、櫛歯状の毛管部材となっており、櫛歯20a…間に液体を一時保溜可能な構造となる。コレクターとも称される。
【0023】
一時保溜体20は、中空筒状の本体20a1の周囲に、円形枚葉体の櫛歯20aが複数配列された構成である。
【0024】
各櫛歯20aには、軸方向に沿って後端から先方に向けてスリット20bが形成される。スリット20bは空間16側から先側の櫛歯20a…まで貫通しており、スリットの毛細管力によって液体を誘導し櫛歯20a…間に液体を一時保溜する。
【0025】
スリット20bの外側の溝を介して空間16内の塗布液を気液置換する。
【0026】
又、図1図2に示すように、一時保溜体20の先端部は、鍔状に拡径して鍔部20cの後面が軸筒10先端部に当接する。スリット20bは、鍔部20cに隣接する櫛歯20aまで形成されている。
【0027】
軸筒10一端10fには、鍔部20cに隣接する箇所であって周方向の1箇所に、一時保溜体20との気液置換のための通気孔10dが内外周に貫通して形成されている。
【0028】
一時保溜体20の鍔部20cの先方には、筒部20dが先方に延びて形成されている。
【0029】
一時保溜体20の筒部20dから筒状本体の内周面は連続しており、その内部の先方に塗布体12の後端部が、後方に管状部材14の先端部が装着されている。
【0030】
〔塗布体12〕
図1図2に示すように、塗布体12は、筆記端となるペン芯が毛細管力によって空間16内のインクを、供給路18の経由によって供給可能な樹脂成形品である。塗布端12aが先端部の半球状に縮径する形状となり、後端12bが軸垂直な平坦面となっている。塗布体12のペン芯は全体がほぼ円筒形状又は砲弾形状を呈する。
【0031】
後端12bは、管状部材14の先端面が突き当たる構造となっている。
【0032】
〔管状部材14、空間16〕
管状部材14は、先端部が一時保溜体20内に装着され、後端部が軸筒10の壁部10cに装着されて支持されている。
【0033】
管状部材14の空気孔14aは、芳香の発散を効率的に行う観点から内径0.5mm以上が好適である。
【0034】
軸筒10内に液を収容する空間16が形成される。詳しくは、軸筒10の内周面と、壁部0cの先側面と管状部材14の外周面と、一時保溜体20の後面との間で形成する空間16が液(インク等)を貯蔵する機能を有する。
【0035】
〔供給路18〕
供給路18は、管状部材14の外周面と一時保溜体20内周面と間のクリアランスで形成されている。つまり、供給路18の途上に一時保溜体20が配置されている。
【0036】
そして、塗布体12に対して、空間16内のインクがクリアランスの供給路18を介して塗布体12の後端に供給される。一時保溜体20には、空間16の内圧が上がるとインクが一時保留され、塗布によって消費される。
【0037】
〔空間16内の液〕
空間16内の液は、溶剤と香料を含有する芳香液体が好ましい。溶剤が、イソパラフィン系炭化水素、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよび3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールであり、イソパラフィン系炭化水素の含有量が60~90質量%であり、ジプロピレングリコールジメチルエーテルの含有量が5~20質量%であり、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールの含有量が10質量%以下であり、香料の含有量は0.1~30%である。
【0038】
イソパラフィン系炭化水素は、側鎖のあるヘプタン、オクタン、ノナン、ナフサ等の炭化水素の1種または2種以上が混合された溶剤である。このイソパラフィン系炭化水素の物性は特に限定されるものではないが、例えば、最終沸点が100~360℃である。イソパラフィン系炭化水素は、含有量が60%よりも少ないと、極性の低い成分が溶解することができない場合があり、90%よりも多いと香料に含まれる極性の高い成分を溶解することができず、組成物が白濁する場合がある。
【0039】
ジプロピレングリコールジメチルエーテルは、含有量が5%よりも少ないと香料に含まれる極性の高い成分を溶解することができない場合があり、20%よりも多いと香料に含まれる極性の低い成分を溶解することができない場合があり、組成物が白濁する場合がある。
【0040】
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールは、含有量が10%より多いと3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが空気中の水分を取り込んでしまうため白濁や分離をするため好ましくない。
【0041】
香料は、特に限定されるものではないが、特に極性の高い香料成分を含有する油性香料が好ましい。なお、これら香料は、2種以上を混合しても良い。
また、上記成分の他に、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の溶剤、安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、色素等を適宜含有させても良い。
【0042】
上記の液とすることで、極性の高い調合香料から極性の低い調合香料まで多種の香料成分を可溶化することができ、香調の選択性が広がるとともに、白濁や分離が生じず、透明で均一な溶液状態と優れた芳香作用を維持できる。
【0043】
[1.3 作用効果]
図1に示すように、軸筒10の一端10f及び他端10rにキャップ22、22をしている状態では、液体の放散や液体の吸引作用が生じることがない保管状態にすることができる。
【0044】
図2に示すように、軸筒10の一端10f及び他端10rから、両キャップ22、22を外した状態では、対象面に塗布した際には、塗布と共に塗布された液が芳香作用を発揮する。
【0045】
そして、軸筒10の一端10fにキャップ22を外した塗布状態の際や、キャップ22を嵌めた状態のいずれも、管状部材14の内部の空気孔14aが塗布体12や一時保溜体18から先後に貫通して他端1rを開放しているので、液が空気孔14aから軸筒10の壁部10cの貫通孔を経由して他端1rから芳香液体の蒸発成分を塗布体外部に放散できる。
【0046】
したがって、第1実施形態に係る塗布具によれば、空間16内に収容された液を空間16内から塗布体12に供給可能に形成された供給路18と、供給路18に配置された液の一時保溜体20とを備えるので、液を塗布体12から直接的に塗付することが可能であると共に、少なくとも塗布体から液体を揮発又は液体に匂いを吸引させることが可能であり間接的な揮発できる等の効果を奏し得る。
【0047】
よって、第1実施形態の塗布具は、塗布に際して、塗布体12の先端を紙面等の対象面に当接して空間16内の液体を塗布することが可能である。
【0048】
又、液体は芳香液体であるから、対象面に塗布された液体が芳香を生じるばかりでなく、塗布体12自体やさらには、管状部材14の空気孔14aを通して外部に芳香を放散することができる。使用者は塗布している際に、液体の芳香を嗅ぐことができることから、塗布と匂いを楽しむことができる。
【0049】
又、塗布具の不使用時に、塗布具の一端1f(先端部)にキャップ22を嵌めると共に、後端部のキャップ22を外した状態として、先端部のキャップ22を下方に向けて塗布具を机上に載置しておく。これによって、開放された軸筒10の後端には、壁部10cの貫通孔を通して管状部材14の空気孔14aが開放した状態になる。空気孔14aが塗布体12の後端から液体に空気を流通させるので、不使用に、軸筒10の後端から芳香が外部に放散する機能を奏する。
【0050】
[2. 第2実施形態]
図4は第2実施形態に係る塗布具のキャップ42をした状態、図5は塗布具からキャップ42を外した状態の全体説明図である。
【0051】
[2.1 全体構成]
図4図5に示すように、第2実施形態に係る活塗布具は、軸筒(外筒)30の一端(先端:図において「F」側端)に配置した毛細管力を有する塗布体32と、軸筒30の一端側から他端(後端:図において「R」側端)側にかけて軸筒30内に形成され、外部と連通する空気孔34aを有する管状部材(内筒)34と、軸筒30及び管状部材34の間の空間(収容空間)36内に収容された液を収容空間36内から塗布体32に供給可能に形成された供給路38と、供給路38に配置された液の一時保溜体40と、を備えた塗布具である。
【0052】
[2.2 各部構成]
〔キャップ22〕
塗布具では、軸筒30の一端30f及び他端30rの各端部に、キャップ42、42が着脱自在に外嵌される。図4が両端部にキャップ42、42が外嵌された状態、図5が両端部からキャップ42、42が外された状態を示す。キャップ42、42は頂部に比較して開口部が大径の椀状を呈している。
【0053】
軸筒30の一端30f及び他端30rの各端部は、第1実施形態の軸筒10と同様に段部30f1及び30r1が形成されると共に、キャップ42、42は、第1実施形態のキャップ22,22と構造、作用効果が同様である。
【0054】
〔塗布体32〕
図4図5に示すように、塗布体32は、筆記端となるペン芯が毛細管力によって空間36内のインクを、供給路38の経由によって供給可能な樹脂成形品である。塗布端32aが先端部の先細く縮径する形状となり、後端32bが軸垂直な平坦面となっている。塗布体32のペン芯は全体がほぼ円筒形状を呈する。
【0055】
塗布体32は、一時保溜体40の貫通孔40dに装着されて、その後端32bが櫛歯40aの先端側に隣接する構造となっている。
【0056】
〔軸筒30、管状部材34〕
図6は軸筒30の部品図である。
【0057】
軸筒30の後部の内周は、管状部材34の後端部と壁部30cによって連続し、軸筒30及び管状部材34とが一体形成されている。
【0058】
壁部30cは、壁部30c中央の貫通孔を経由して管状部材34の空気孔34aが外部と連通する。
【0059】
軸筒30は、壁部30cの後方側が椀状を呈しており、その椀状部分には、スポンジ等の多孔質体44が装着されて、壁部30cの貫通孔を覆い、空気孔34aを通じて液体が漏れることを防止している(図4図5参照)。
【0060】
管状部材34には、一時保溜体40の中心部に芯棒46が入る挿入空間48が空気孔34aの前方に有しており、芯棒46の外周に塗布体32を備えている。軸筒30の中心位置に芯棒46が設けられる。
【0061】
なお、一時保溜体40が後方等、別位置に配置する変形をした場合に、軸筒30の先端に配置して。軸筒30の中心位置に芯棒46を直接設けることもできる。
【0062】
〔一時保溜体20〕
図7は、一時保溜体40の説明図である。
【0063】
一時保溜体40は、図7に示すように、本体40a1の外周部に複数の櫛歯(枚葉体)20a…が配列された、櫛歯状の毛管部材となっており、櫛歯40a…間にインクを一時保溜可能な構造となる。コレクターとも称される。
【0064】
一時保溜体40の軸中央部には、筒状の本体40a1の周囲に円形枚葉体の櫛歯40aが複数配列されている。
【0065】
各櫛歯40aには、軸方向に沿って後端から先方に向けてスリット40bが形成される。スリット40bは収容空間36側から先側の櫛歯40a…まで貫通しており、スリット40bの毛細管力によって塗布液を誘導し櫛歯40a…間に塗布液を一時保溜する。
【0066】
スリット40bの外側の溝を介して収容空間36内の塗布液を気液置換する。
【0067】
又、図1図2に示すように、一時保溜体40の先端部は、鍔状に拡径して鍔部40cの後面が軸筒30先端部に当接する。スリット40bは、鍔部40cに隣接する櫛歯40aまで形成されている。
【0068】
一時保溜体40の鍔部40cは、比較的厚く形成されており、鍔部40cに塗布体32の後部を嵌着して支持する貫通孔40dが形成されている。
【0069】
図4に示すように、鍔部40cにおいて、貫通孔40dは、スリット40bの先方側であって隣接した位置に形成されている。塗布体32は、貫通孔40dに嵌入して固定されている。塗布体32の後端32bが櫛歯40a及びスリット40bの先端部に隣接しており、櫛歯40a間の液体が塗布体32に充分に供給されるようになっている。
【0070】
供給路38は、収容空間36からスリット40bを通って、塗布体32の後端32bに至る、液体の供給経路である。
【0071】
一時保溜体40の筒状の本体40a1の内周部は、芯棒46を挿入する挿入空間48になっている。また、一時保溜体40の筒状の本体40a1の後端部には、内外周を貫通する流通孔40a11が形成され、流通孔40a11を介して液体又はその気体が空気孔34a内に流通するようになっている。空気孔34aを通じて液体の外部への芳香作用を発揮することができる。
【0072】
なお、変形例として流通孔40a11を閉じた態様がある。この変形例では、空気孔34aからはできないが、芳香または吸引を塗布体32自体から行うことも可能である。
【0073】
〔芯棒46〕
芯棒46は一時保溜体40本体40a1内部の挿入空間48内に先方から内方に向けて装着している。芯棒46の周囲には、フランジ46aが形成され、フランジ46aが一時保溜体40の先端面に当接して、芯棒46の潜り込みを防止する。
【0074】
芯棒46と塗布体32を同時に対象面に当てれば、斜めに塗布できる。又芯棒46の長さを塗布体32の長さに対応させれば、芯棒46を中心として円を描くことができる。
【0075】
芯棒46は、取り外し可能であり、軸筒30よりも比重の重い例えば金属材料で形成することが好適である。
【0076】
[2.3 作用効果]
図5に示すように、管状部材34の内部の空気孔34aは後端部の壁部30cを貫通しており、キャップ42を外して状態では、塗布体32が空気孔34aから壁部30cの貫通孔を経由して芳香液体の蒸発成分を塗布体外部に放散することができる。
【0077】
したがって、第2実施形態に係る塗布具によれば、収容空間36内に収容された液を収容空間36内から塗布体32に供給可能に形成された供給路38と、供給路38に配置された液の一時保溜体40とを備えるので、液体を塗布体32から直接的に塗付することが可能であると共に、少なくとも塗布体32から液体を揮発又は液体に匂いを吸引させることが可能であり間接的に揮発できる等の効果を奏し得る。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の塗布具は、芳香液体を塗布する塗布具に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 軸筒(第1実施形態)
12 塗布体
12a 塗布端
12b 後端
14 管状部材
14a 空気孔
16 空間
18 供給路
20 一時保溜体
22 キャップ
30 軸筒(第2実施形態)
32 塗布体
34 管状部材
36 収容空間
38 供給路
40 一時保溜体
40b スリット
40c 鍔部
40d 貫通孔
42 キャップ
44 多孔質体
46 芯棒
48 挿入空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7