(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F25B 39/04 20060101AFI20240906BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20240906BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20240906BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F25B39/04 C
F28D1/053 A
F28F1/02 B
F25B1/00 396Z
(21)【出願番号】P 2020147245
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎田 晃
(72)【発明者】
【氏名】外山 智章
(72)【発明者】
【氏名】深田 紗代
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-002774(JP,A)
【文献】特開2019-035559(JP,A)
【文献】特開2013-228154(JP,A)
【文献】特開2018-112379(JP,A)
【文献】特開2014-048028(JP,A)
【文献】特開2019-100568(JP,A)
【文献】特開平03-059364(JP,A)
【文献】特許第3129721(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/038335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/00 ー 39/04
F28D 1/047 - 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラレルフロー型熱交換器と、前記パラレルフロー型熱交換器の内部に存在する冷媒とを有する空気調和機であって、
前記パラレルフロー型熱交換器は、冷媒が流通可能に構成された複数の扁平多穴管がフィンを介して平行に配列され、前記扁平多穴管と前記フィンとが上下方向に交互に積層されたコアと、
前記扁平多穴管の長手方向における前記コアの一端に配置され、前記扁平多穴管に接続された第1ヘッダと、
前記長手方向における前記コアの他端に配置され、前記扁平多穴管に接続された第2ヘッダと、を有し、
複数の前記扁平多穴管は、前記コアの最も上方に位置する第1扁平多穴管群と、前記第1扁平多穴管群の下方に隣接する第2扁平多穴管群とを含む複数の扁平多穴管群に区分されており、
前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダは、前記冷媒が複数の前記扁平多穴管群を上方から下方に向かって順次通過することができるように構成されており、
前記第2扁平多穴管群に属する前記扁平多穴管の数は14本以上であり、
第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は第2扁平多穴管群に属する前記扁平多穴管の数以下であ
り、
前記パラレルフロー型熱交換器が有する前記扁平多穴管の総数N[本]と、前記第1扁平多穴管群に属する前記扁平多穴管の本数N
1
[本]とが下記式(1)の関係を満足している、空気調和機。
N
1
>N×0.0014×ΔP
TP
0.48737
-2 ・・・(1)
(ただし、前記式(1)におけるΔP
TP
の値は、前記パラレルフロー型熱交換器の内部を流れる前記冷媒の質量流量をm
ref
[kg/s]、前記扁平多穴管の流路断面積をA
tube
[m
2
]、前記扁平多穴管の水力直径をD
h
[m]、前記扁平多穴管の長さをL
tube
[m]、液相における前記冷媒の粘度をμ
L
[Pa・s]、気相における前記冷媒の粘度をμ
V
[Pa・s]、液相における前記冷媒の密度をρ
L
[kg/m
3
]、気相における前記冷媒の密度をρ
V
[kg/m
3
]で表した場合に下記式(2)~(4)により算出される値である。
ΔP
TP
=0.0661×C
1
×Γ
-1.841
・・・(2)
C
1
=m
ref
1.75
×A
tube
-1.75
×D
h
-0.75
×μ
L
0.25
×ρ
L
-1
×4×L
tube
・・・(3)
Γ=(ρ
V
/ρ
L
)
0.5
×(μ
L
/μ
V
)
0.125
・・・(4))
【請求項2】
前記パラレルフロー型熱交換器は、冷媒としてR32が使用されるように構成されており、前記扁平多穴管の水力直径D
hが0.00032m以上0.001m以下であり、前記扁平多穴管の長さL
tubeが0.4m以上0.9m以下である、請求項1に記載の
空気調和機。
【請求項3】
前記パラレルフロー型熱交換器の定格能力が2kW以上12kW以下である、請求項1または2に
空気調和機。
【請求項4】
前記冷媒がR32である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記空気調和機は、前記パラレルフロー型熱交換器の内部における前記冷媒の質量流量m
refを0.01kg/s以上0.03333kg/s以下にすることができるように構成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルフロー型熱交換器及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機には、冷媒を凝縮させるための凝縮器が組み込まれている。凝縮器としては、扁平多穴管とコルゲートフィンとが交互に積層されてなるコアと、コアにおける扁平多穴管の長手方向の両端部に配置されたヘッダとを備えた、いわゆるパラレルフロー型の熱交換器が多用されている。
【0003】
この種の熱交換器の例として、特許文献1には、複数本のチューブと、隣接するチューブの間に配されるコルゲートフィンと、前記チューブの端部に接続されたタンクとを具備し、前記タンク内に設けられたセパレータによって前記複数のチューブを複数のチューブ群に分割し、冷媒が前記複数のチューブ群を流れる冷媒凝縮器が記載されている。
【0004】
従来、この種の熱交換器は、冷媒の流れの最上流に位置するチューブ群に属するチューブの本数が最も多く、下流に向かうにつれて各チューブ群に属するチューブの本数が少なくなるように構成されている。この理由は、以下の通りである。一般的な管内凝縮熱伝達における熱伝達率及び圧力損失は、冷媒の質量速度及び冷媒のクオリティ(つまり、凝縮の程度)に大きく影響されることが知られている。具体的には、管内凝縮熱伝達における熱伝達率及び圧力損失は、冷媒の質量速度が小さいほど低くなる傾向がある。また、管内凝縮熱伝達における熱伝達率及び圧力損失は、冷媒の凝縮が進行し、クオリティが低くなるほど低くなる傾向がある。
【0005】
冷媒凝縮器の最上流に位置するチューブ群には、気相状態の冷媒が流入し、チューブ内で凝縮しながら下流側のチューブ群に流出する。そのため、冷媒凝縮器の最上流に位置するチューブ群においては、熱伝達率が高くなるものの圧力損失も高くなる傾向がある。そこで、従来の冷媒凝縮器においては、最上流に位置するチューブ群に属するチューブの本数を最も多くすることにより、高クオリティの冷媒に起因する圧力損失の上昇を抑制しつつ高い熱伝達率を実現することを図っている。
【0006】
一方、最上流に位置するチューブ群よりも下流のチューブ群においては、冷媒の凝縮が進行しているため、最上流に位置するチューブ群よりも熱伝達率及び圧力損失が低くなる。そのため、従来の冷媒凝縮器においては、冷媒のクオリティが低くなるにつれて各チューブ群に属するチューブの本数を少なくすることにより、熱伝達率と圧力損失との最適化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の冷媒凝縮器よりもさらに熱交換量の大きい熱交換器が強く望まれている。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、圧力損失の上昇を抑制しつつ熱交換量を増大させることができるパラレルフロー型熱交換器及びこの熱交換器を備えた空気調和機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一参考態様は、冷媒が流通可能に構成された複数の扁平多穴管がフィンを介して平行に配列され、前記扁平多穴管と前記フィンとが上下方向に交互に積層されたコアと、
前記扁平多穴管の長手方向における前記コアの一端に配置され、前記扁平多穴管に接続された第1ヘッダと、
前記長手方向における前記コアの他端に配置され、前記扁平多穴管に接続された第2ヘッダと、を有し、
複数の前記扁平多穴管は、前記コアの最も上方に位置する第1扁平多穴管群と、前記第1扁平多穴管群の下方に隣接する第2扁平多穴管群とを含む複数の扁平多穴管群に区分されており、
前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダは、前記冷媒が複数の前記扁平多穴管群を上方から下方に向かって順次通過することができるように構成されており、
前記第2扁平多穴管群に属する前記扁平多穴管の数は14本以上であり、
前記第1扁平多穴管群に属する前記扁平多穴管の数は前記第2扁平多穴管群に属する前記扁平多穴管の数以下である、パラレルフロー型熱交換器にある。
【0011】
本発明の他の態様は、前記の態様のパラレルフロー型熱交換器と、前記パラレルフロー型熱交換器の内部に存在する冷媒とを有し、
前記パラレルフロー型熱交換器が有する前記扁平多穴管の総数N[本]と、前記第1扁平多穴管群に属する前記扁平多穴管の本数N
1
[本]とが下記式(1)の関係を満足している、空気調和機にある。
N
1
>N×0.0014×ΔP
TP
0.48737
-2 ・・・(1)
(ただし、前記式(1)におけるΔP
TP
の値は、前記パラレルフロー型熱交換器の内部を流れる前記冷媒の質量流量をm
ref
[kg/s]、前記扁平多穴管の流路断面積をA
tube
[m
2
]、前記扁平多穴管の水力直径をD
h
[m]、前記扁平多穴管の長さをL
tube
[m]、液相における前記冷媒の粘度をμ
L
[Pa・s]、気相における前記冷媒の粘度をμ
V
[Pa・s]、液相における前記冷媒の密度をρ
L
[kg/m
3
]、気相における前記冷媒の密度をρ
V
[kg/m
3
]で表した場合に下記式(2)~(4)により算出される値である。
ΔP
TP
=0.0661×C
1
×Γ
-1.841
・・・(2)
C
1
=m
ref
1.75
×A
tube
-1.75
×D
h
-0.75
×μ
L
0.25
×ρ
L
-1
×4×L
tube
・・・(3)
Γ=(ρ
V
/ρ
L
)
0.5
×(μ
L
/μ
V
)
0.125
・・・(4))
【発明の効果】
【0012】
前記パラレルフロー型熱交換器(以下、「熱交換器」という。)のコアは、複数の扁平多穴管を有しており、複数の扁平多穴管は、最も上方に配置された第1扁平多穴管群と、第1扁平多穴管群の下方に隣接して配置された第2扁平多穴管群と、を含む複数の扁平多穴管群に区分されている。そして、第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は14本以上であり、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数以下である。
【0013】
従来の熱交換器は、前述したように、クオリティの高い冷媒が流通する上流のチューブ群におけるチューブの本数が、冷媒のクオリティがある程度低下した下流のチューブ群よりも多くなるように構成されていた。しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、扁平多穴管は、冷媒の凝縮がある程度進行すると熱伝達率が冷媒の質量速度及び冷媒のクオリティに影響されにくくなるという特有の伝熱特性を有していることが見出された。かかる伝熱特性を利用すれば、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数を第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数以下とすることにより、第2扁平多穴管群において熱伝達率の低下の効果よりも熱交換面積の増大の効果を大きくし、第2扁平多穴管群における熱交換量を増大させることが可能となる。
【0014】
そして、前記熱交換器は、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数が第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数以下となるように構成されている。それ故、前記熱交換器は、圧力損失の上昇を抑制しつつ、第2扁平多穴管群における熱交換量を増大させることができる。その結果、熱交換器全体として熱交換量を増大させることができる。
【0015】
以上のように、前記の態様の熱交換器によれば、圧力損失の上昇を抑制しつつ熱交換量を増大させることができる。
【0016】
また、前記空気調和機は、前記の態様の熱交換器を有しているため、熱交換器における圧力損失の増大を抑制しつつ熱交換量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例1におけるパラレルフロー型熱交換器の要部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1における扁平多穴管の断面図である。
【
図3】
図3は、実施例2の各試験体における、冷媒の流れ方向の位置と熱交換量との関係を模式的に示した説明図である。
【
図4】
図4は、実施例2における数値解析に用いる解析モデルの説明図である。
【
図5】
図5は、実施例2における各セルで行う計算を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施例3における第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数の最適値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前記熱交換器のコアは、複数の扁平多穴管を有している。熱交換器が有する扁平多穴管の総数は、熱交換器の寸法や要求される定格能力、圧力損失等に応じて適宜設定することができる。扁平多穴管の総数は、例えば、28本以上168本以下であってもよい。
【0019】
複数の扁平多穴管は、第1扁平多穴管群及び第2扁平多穴管群を含む、複数の扁平多穴管群に区分されている。例えば、前記熱交換器における複数の扁平多穴管は、最も上方に位置する第1扁平多穴管群と、第1扁平多穴管群の下方に隣接して配置された第2扁平多穴管群と、第2扁平多穴管群の下方に隣接して配置された第3扁平多穴管群と、第3扁平多穴管群の下方に隣接して配置された第4扁平多穴管群との4つの扁平多穴管群に区分されていてもよい。
【0020】
第1ヘッダ及び第2ヘッダは、冷媒を複数の扁平多穴管群を上方から下方に向かって順次通過させることができるように構成されている。例えば、前記熱交換器が4つの扁平多穴管群を有している場合、第1ヘッダ及び第2ヘッダは、冷媒が、第1扁平多穴管群、第2扁平多穴管群、第3扁平多穴管群及び第4扁平多穴管群を順次通過するように構成されていればよい。
【0021】
このような態様を実現するためには、例えば、第1ヘッダの内部空間を、第1扁平多穴管群の端部に接続される入口部と、第2扁平多穴管群及び第3扁平多穴管群の両方の端部に接続される第2ターン部と、第4扁平多穴管群の端部に接続される出口部との3つの空間に区画するとともに、第2ヘッダの内部空間を、第1扁平多穴管群及び第2扁平多穴管群の両方の端部に接続される第1ターン部と、第3扁平多穴管群及び第4扁平多穴管群の両方の端部に接続される第3ターン部の2つの空間に区画すればよい。この場合、第1ヘッダの入口部に冷媒を供給することにより、冷媒が第1扁平多穴管群、第1ターン部、第2扁平多穴管群、第2ターン部、第3扁平多穴管群、第3ターン部及び第4扁平多穴管群を順次通過する。そして、第1ヘッダの出口部から冷媒を熱交換器の外部に排出することにより、熱交換器内に冷媒を流通させることができる。
【0022】
第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は、14本以上であり、かつ、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数以下である。これにより、冷媒が第2扁平多穴管群を通過する際の熱交換量を増大させ、ひいては熱交換器全体での熱交換量を増大させることができる。熱交換器の圧力損失と熱交換量とのバランスの観点からは、第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は、第2扁平多穴管群以外の各扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数以上であることが好ましい。
【0023】
具体的には、例えば熱交換器が4つの扁平多穴管群を有する場合、第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は、熱交換器が有する扁平多穴管の総数の35%以上79%以下、好ましくは35%以上75%以下、より好ましくは35%以上60%以下とすることができる。
【0024】
第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数は、第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数以下である。第1扁平多穴管群に流れ込む冷媒は、気相状態、つまり、高いクオリティを有する冷媒であるため、冷媒が第1扁平多穴管群を通過する際の熱伝達率は比較的高くなりやすい。また、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数を少なくする場合、熱交換面積が減少する一方で冷媒の質量速度が上昇する。それ故、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数を第2扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数以下にしても、第1扁平多穴管群における熱交換量の低下を抑制することができる。その結果、熱交換器全体での熱交換量を増大させることができる。
【0025】
前記熱交換器が3つ以上の扁平多穴管群を有している場合、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数は、第3扁平多穴管群及び第3扁平多穴管群よりも下方に位置する扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数よりも多いことが好ましい。この場合には、冷媒が第1扁平多穴管群を通過する際の圧力損失をより低減するとともに、熱交換量をより多くすることができる。その結果、熱交換器全体での圧力損失をより低減するとともに、熱交換量をより多くすることができる。
【0026】
また、前記熱交換器は、特定の冷媒を用いた場合に優れた熱交換性能を示すように設計されていることがある。このような場合、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数N1[本]は、下記式(1)の関係を満足していることがより好ましい。
N1>N×0.0014×ΔPTP
0.48737-2 ・・・(1)
【0027】
ただし、前記式(1)におけるN[本]は、熱交換器が有する扁平多穴管の総数である。また、ΔPTPの値は、熱交換器の圧力損失である。ΔPTPの値は、前記パラレルフロー型熱交換器の内部を流れる前記冷媒の質量流量をmref[kg/s]、前記扁平多穴管の流路断面積をAtube[m2]、前記扁平多穴管の水力直径をDh[m]、前記扁平多穴管の長さをLtube[m]、液相における前記冷媒の粘度をμL[Pa・s]、気相における前記冷媒の粘度をμV[Pa・s]、液相における前記冷媒の密度をρL[kg/m3]、気相における前記冷媒の密度をρV[kg/m3]で表した場合に下記式(2)~(4)により算出される。
ΔPTP=0.0661×C1×Γ-1.841 ・・・(2)
C1=mref
1.75×Atube
-1.75×Dh
-0.75×μL
0.25×ρL
-1×4×Ltube ・・・(3)
Γ=(ρV/ρL)0.5×(μL/μV)0.125 ・・・(4)
【0028】
このように、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数を冷媒の物性を考慮した範囲内にすることにより、第1扁平多穴管群における熱交換量と圧力損失とのバランスを最適化することができる。その結果、熱交換器全体での圧力損失をより低減するとともに、熱交換量をより多くすることができる。
【0029】
なお、前記式(1)~式(4)は、以下の考え方に基づいて決定されている。すなわち、発明者らが数値解析を利用して試行錯誤的に検討を行った結果、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の最適な本数N1は、熱交換器の圧力損失ΔPTPの大きさに応じて大きく変化することが見出された。熱交換器の圧力損失ΔPTPは、主に、冷媒が扁平多穴管を通過する際に生じると考えられる。
【0030】
扁平多穴管内の冷媒の流れが乱流であると仮定すると、冷媒が扁平多穴管を通過する際の圧力損失ΔPSPは、ダルシー・ワイズバッハの式(下記式(5)参照)で表される。
【0031】
【0032】
前記式(5)において、管摩擦係数fにブラジウスの管摩擦係数を用いることにより下記式(6)を導くことができる。
【0033】
【0034】
前記式(6)におけるGはmref/Atubeと表すことができるから、前記式(6)を整理すると下記式(3’)の関係を導くことができる。
ΔPSP∝mref
1.75×Atube
-1.75×Dh
-0.75×μL
0.25×ρL
-1×4×Ltube ・・・(3’)
【0035】
以上から、熱交換器の圧力損失ΔPTPを表すに当たっては、冷媒が扁平多穴管を通過する際の圧力損失ΔPSPに関連するパラメータC1(前記式(3))を用いればよいことがわかる。
【0036】
また、熱交換器内を流れる冷媒は気液二相流である。それ故、熱交換器の圧力損失ΔPTPの大きさを算出するに当たっては、前述したパラメータC1だけではなく、気液二相流の影響を考慮するためのパラメータであるΓ(前記式(4))を導入する必要がある。
【0037】
以上に基づいて発明者らが行った数値解析の結果を整理すると、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の最適な本数N1’が下記式(1’)で近似できること、及び、熱交換器の圧力損失ΔPTPが前記式(2)で近似できることが見出された。
N1’=N×0.0014×ΔPTP
0.48737 ・・・(1’)
【0038】
そして、後述する実施例において説明するように、前記式(1’)によって予測される扁平多穴管の最適な本数N1’は、数値解析によって導き出された扁平多穴管の最適な本数N1に対して最大で2本多くなる。従って、前記式(1’)の両辺から2を差し引き、左辺をN1とおくことにより、前記式(1)を導くことができる。
【0039】
前記熱交換器が3つ以上の扁平多穴管群を有している場合、第3扁平多穴管群及び第3扁平多穴管群よりも下方に位置する扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数は特に限定されることはない。しかし、通常、下方に位置する扁平多穴管群を流れる冷媒のクオリティは、上方に位置する扁平多穴管群を流れる冷媒のクオリティと同等以下となる。それ故、下方に位置する扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数を上方に位置する扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数以下とすることにより、熱交換器全体での圧力損失をより低減するとともに熱交換量をより増大させることができる。
【0040】
例えば、熱交換器が4つの扁平多穴管群を有している場合、第3扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は、熱交換器が有する扁平多穴管の総数の5%以上21%以下とすることができる。圧力損失と熱交換量とのバランスの観点からは、第3扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は、7%以上17%以下とすることが好ましく、9%以上14%以下とすることがより好ましい。
【0041】
同様に、第4扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は、例えば、熱交換器が有する扁平多穴管の総数の4%以上14%以下とすることができる。圧力損失と熱交換量とのバランスの観点からは、第4扁平多穴管群に属する扁平多穴管の数は、6%以上12%以下とすることが好ましく、6%以上10%以下とすることがより好ましい。
【0042】
前記熱交換器における扁平多穴管は、互いに間隔をあけて対向して配置された一対の平坦壁部と、平坦壁部の幅方向における両端同士を接続する接続壁部と、平坦壁部と接続壁部とによって囲まれた内部空間を複数の冷媒流路に区画する隔壁部と、を有している。扁平多穴管の長手方向に垂直な断面における個々の冷媒流路の形状は、例えば、扁平多穴管の長手方向に垂直な断面において、円形、楕円形、長円形、半円形、三角形、四角形などの種々の態様を取り得る。扁平多穴管における冷媒流路の数は、例えば、4本以上20本以下の範囲から適宜設定することができる。
【0043】
扁平多穴管の冷媒流路は、長手方向に垂直な断面において、非円形、つまり、1か所以上の角部を有する形状であることが好ましい。かかる冷媒流路を備えた扁平多穴管を第2扁平多穴管群に組み込むことにより、第2扁平多穴管群における熱伝達率の低下をより抑制することができる。その結果、第2扁平多穴管群における熱交換量増大の効果をより高め、ひいては熱交換器全体の熱交換量をより増大させることができる。なお、前述した非円形の断面形状には、例えば、半円形、三角形、四角形などの形状が包含される。前述した作用効果をより高める観点からは、扁平多穴管の冷媒流路は、長手方向に垂直な断面における輪郭が直線のみから構成されている形状であることがより好ましい。このような断面形状には、例えば、三角形や四角形などの形状が包含される。
【0044】
扁平多穴管の水力直径Dhは、例えば0.00032m以上0.001m以下の範囲から適宜設定することができる。この場合には、各扁平多穴管における熱伝達効率をより向上させることができる。なお、前述した扁平多穴管の水力直径Dhは、扁平多穴管の流路断面積Atube[m2]および扁平多穴管の流路濡れ縁長さStube[m]を用いて下記式(7)で表される。
Dh=4×Atube/Stube ・・・(7)
【0045】
また、扁平多穴管の長さLtubeは0.4m以上0.9m以下の範囲から適宜設定することができる。この場合には、各扁平多穴管における熱伝達効率をより向上させることができる。
【0046】
前記熱交換器が冷媒としてR32(つまり、ジフルオロメタン)が使用されるように構成されている場合、扁平多穴管の水力直径Dhが0.00032m以上0.001m以下であり、長さLtubeが0.4m以上0.9m以下であることが好ましい。前記特定の範囲の水力直径Dh及び長さLtubeを備えた扁平多穴管は、冷媒としてR32を用いる場合に特に優れた熱交換効率を実現することができる。それ故、前記特定の範囲の水力直径Dh及び長さLtubeを備えた扁平多穴管は、冷媒としてR32が使用されるように構成された熱交換器に好適である。
【0047】
前記熱交換器は、例えば2kW以上12kW以下の定格能力を有していてもよい。なお、前述した熱交換器の定格能力は、JIS B8615-1:2013に規定された冷房能力試験により得られる定格冷房能力の値とする。
【0048】
前記熱交換器の用途は特に限定されるものではなく、例えば、家庭用や業務用などの、据え置き型の空気調和機における室外機に用いられるように構成されていてもよい。また、前記熱交換器は、例えば、車両用空気調和機の凝縮器に用いられるように構成されていてもよい。
【0049】
前記熱交換器を、冷媒配管を介して圧縮機や膨張弁、ポンプ、前記熱交換器とは別の熱交換器等の空気調和機の構成部品と接続し、内部に冷媒を充填することにより、空気調和機を構成することができる。
【0050】
空気調和機に用いられる冷媒は特に限定されることはなく、例えば、R410A及びR32等のハイドロフルオロカーボン冷媒や、R1234yf及びR1123等のハイドロフルオロオレフィン冷媒などを使用することができる。空気調和機に用いられる冷媒は、R32であることが好ましい。R32は、比較的凝縮潜熱が大きく、熱伝導率も高いため、空気調和機の小型化及び高効率化をより容易に行うことができる。
【0051】
前記空気調和機は、扁平多穴管の総数N[本]と、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数N1[本]とが前記式(1)の関係を満足しているパラレルフロー型熱交換器を有している。
N1>N×0.0014×ΔPTP
0.48737-2 ・・・(1)
【0052】
前述したように、第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数を冷媒の物性を考慮した範囲内にすることにより、熱交換器全体での圧力損失の増大をより効果的に抑制するとともに、熱交換量をより多くすることができる。その結果、空気調和機の消費エネルギーをより低減することができる。
【0053】
前記空気調和機は、熱交換器の内部における前記冷媒の質量流量mrefを、例えば、0.01kg/s以上0.03333kg/s以下での範囲から設定することができるように構成されていてもよい。この場合には、前記熱交換器における圧力損失の増大をより効果的に抑制するとともに、熱交換量をより増大させることができる。その結果、空気調和機の消費エネルギーをより低減することができる。
【0054】
特に、前記空気調和機の冷媒がR32である場合、熱交換器の内部における前記冷媒の質量流量mrefを0.01kg/s以上0.03333kg/s以下の範囲内とすることにより、前述した作用効果をより確実に奏することができる。
【0055】
同様の観点から、前記空気調和機の冷媒がR32である場合には、熱交換器における扁平多穴管の水力直径Dhを0.00032m以上0.001m以下、長さLtubeを0.4m以上0.9m以下とし、冷媒の質量流量mrefを0.01kg/s以上0.03333kg/s以下の範囲内とすることが特に好ましい。
【実施例】
【0056】
前記パラレルフロー型熱交換器の実施例を説明する。
【0057】
(実施例1)
図1に示すように、本例のパラレルフロー型熱交換器1は、冷媒を流通させる複数の扁平多穴管2がフィン3を介して平行に配列され、扁平多穴管2とフィン3とが上下方向に交互に積層されたコア11と、扁平多穴管2の長手方向におけるコア11の一端に配置された第1ヘッダ4と、長手方向におけるコア11の他端に配置された第2ヘッダ5と、を有している。複数の扁平多穴管2は、コア11の最も上方に位置する第1扁平多穴管群21と、第1扁平多穴管群21の下方に隣接する第2扁平多穴管群22と、を含む複数の扁平多穴管群21~24に区分されている。
【0058】
第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数は14本以上である。また、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の数は第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数以下である。以下、本例の熱交換器1の構成をより詳細に説明する。
【0059】
熱交換器1を構成する各部品は、アルミニウム材(アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。)から構成されていてもよい。例えば、扁平多穴管2は、1000系アルミニウムや3000系合金から構成されていてもよい。扁平多穴管2の材質として3000系合金を用いることにより、より高い圧力の冷媒を使用することができる。フィン3は、例えば、1000系アルミニウムや3000系合金から構成されていてもよい。また、フィン3は、1000系アルミニウムや3000系合金からなる心材の両面に4000系合金からなるろう材が積層された、ブレージングシートから構成されていてもよい。
【0060】
第1ヘッダ4及び第2ヘッダ5は、1000系アルミニウムや3000系合金から構成されていてもよい。また、第1ヘッダ4及び第2ヘッダ5は、1000系アルミニウムや3000系合金からなる心材の両面に4000系合金からなるろう材が積層された、ブレージングシートから構成されていてもよい。
【0061】
熱交換器1のコア11は、
図1に示すように、上下方向に間隔を開けて配置された複数本の扁平多穴管2と、扁平多穴管2同士の間に介在するフィン3とを有している。扁平多穴管2とフィン3とは、ろう付によって接合されている。本例のコア11は、更に、アルミニウム材からなるサイドシート111を有している。サイドシート111は、複数本の扁平多穴管2のうち上端に配置された扁平多穴管2a及び下端に配置された扁平多穴管2bにフィン3を介して接合されている。
【0062】
コア11の寸法は、所望する熱交換量や空気調和機において許容される配置スペース等に応じて適宜設定することができる。具体的には、コア11の上下方向、つまり、コア11の積層方向の外寸法は、250mm以上1500mm以下の範囲から適宜設定すればよい。また、コア11の奥行方向、つまり、扁平多穴管2の幅方向の外寸法は、6mm以上20mm以下の範囲から適宜設定すればよい。
【0063】
コアの幅方向の外寸法は、所望する扁平多穴管2の有効長、つまり、扁平多穴管2の長手方向における第1ヘッダ4から第2ヘッダ5までの距離に応じて設定すればよい。扁平多穴管2の有効長は、例えば、400mm以上1000mm以下の範囲から適宜設定することができる。
【0064】
コア11が有する扁平多穴管2の総数は、28本以上168本以下の範囲から適宜設定することができる。例えば、本例においては、コア11が有する扁平多穴管2の総数を52本とすることができる。
【0065】
本例の熱交換器1における扁平多穴管2は、第1扁平多穴管群21~第4扁平多穴管群24の4つの扁平多穴管群に区分されている。第1扁平多穴管群21は、コア11における最も上方に配置されている。第2扁平多穴管群22は第1扁平多穴管群21の下方に隣接して配置されている。第3扁平多穴管群23は第2扁平多穴管群22の下方に隣接して配置されている。第4扁平多穴管群24は第3扁平多穴管群23の下方に隣接して配置されており、コア11における最も下方に位置している。
【0066】
第1ヘッダ4の内部空間は、第1扁平多穴管群21の端部に接続された入口部41と、第2扁平多穴管群22と第3扁平多穴管群23との両方の端部に接続された第2ターン部42と、第4扁平多穴管群24の端部に接続された出口部43と、の3つの空間に区画されている。入口部41と第2ターン部42との間、及び、第2ターン部42と出口部43との間には、これらの空間を区画する第1仕切り板44、45が設けられている。
【0067】
第2ヘッダ5の内部空間は、第1扁平多穴管群21と第2扁平多穴管群22との両方の端部に接続された第1ターン部51と、第3扁平多穴管群23と第4扁平多穴管群24との両方の端部に接続された第3ターン部52と、の2つの空間に区画されている。第1ターン部51と第3ターン部52との間には、両者を区画する第2仕切り板53が設けられている。
【0068】
また、第1ヘッダ4の入口部41には、熱交換器1内に冷媒を供給可能に構成された冷媒供給管6が接続されており、出口部43には、熱交換器1内の冷媒を外部に排出可能に構成された冷媒排出管7が接続されている。
【0069】
それ故、本例の熱交換器1における冷媒の流れは、以下のようになる。すなわち、冷媒供給管6から入口部41内に流入した冷媒は、入口部41において第1扁平多穴管群21に属する各扁平多穴管2に分配される。第1扁平多穴管群21を通過した冷媒は、第2ヘッダ5における第1ターン部51に流入する。第1ターン部51において合流した冷媒は、第2扁平多穴管群22に属する各扁平多穴管2に分配される。第2扁平多穴管群22を通過した冷媒は、以降、第1ヘッダ4における第2ターン部42、第3扁平多穴管群23、第2ヘッダ5における第3ターン部52及び第4扁平多穴管群24を順次通過し、第1ヘッダ4の出口部43に流入する。そして、出口部43において合流した冷媒は、冷媒排出管7から熱交換器1の外部に排出される。
【0070】
本例の熱交換器1において、各扁平多穴管群21~24に属する扁平多穴管2の数は、第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数が14本以上であり、かつ、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の数が第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数以下となるように設定すればよい。
【0071】
例えば、本例においては、
図1に示すように、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の数を19本、第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数を25本、第3扁平多穴管群23に属する扁平多穴管2の数を4本、第4扁平多穴管群24に属する扁平多穴管2の数を4本とすることができる。
【0072】
図2に示すように、本例の扁平多穴管2は、長手方向に垂直な断面において長方形状を呈している。扁平多穴管2の外寸法は、例えば、厚み1.1mm以上3.0mm以下、幅6mm以上20mm以下の範囲から適宜設定することができる。例えば、本例においては、扁平多穴管2の厚みを1.15mmとし、幅を13.85mmとすることができる。
【0073】
扁平多穴管2は、互いに間隔をあけて対向して配置された一対の平坦壁部211と、平坦壁部211の幅方向における両端同士を接続する接続壁部212と、平坦壁部211と接続壁部212とによって囲まれた内部空間を複数の冷媒流路213に区画する隔壁部214と、を有している。扁平多穴管2は、長手方向に垂直な断面において、
図2に示すように長方形状を呈していてもよいし、図には示さないが長円状を呈していてもよい。
図1に示すように、扁平多穴管2の平坦壁部211にはフィン3が接合されている。
【0074】
扁平多穴管2における冷媒流路213の数は、例えば、4本以上20本以下の範囲から適宜設定することができる。例えば、本例においては、
図2に示すように、扁平多穴管2における冷媒流路213の数を15本とすることができる。また、本例の扁平多穴管2における冷媒流路213は、長手方向に垂直な断面において長方形状を呈している。
【0075】
図1に示すように、フィン3としては、コルゲートフィンを使用することができる。フィン3の板厚は、例えば、0.06~0.12mmとすることができる。また、上下方向におけるフィン3の高さは、6~8mmとすることができる。
【0076】
フィン3における平坦部31(
図1参照)、即ち、扁平多穴管2に接合された屈曲部32の間の部分には、フィン3の厚み方向に突出したルーバーが設けられていてもよい。ルーバーの数は、1か所の平坦部31当たり6~16本とすることができる。また、ルーバーは、フィン3の幅方向に対して20~60度傾いた方向に延設することができる。なお、
図1においては、便宜上、ルーバーの記載を省略した。
【0077】
第1ヘッダ4は、上下方向、即ちコア11の積層方向に延設された筒状を呈するヘッダ本体46と、ヘッダ本体46の上端及び下端を閉鎖するキャップ47、48とを有している。
【0078】
ヘッダ本体46としては、例えば、外径15~25mm、肉厚1.0~2.5mmの円筒管を使用することができるが、この形状に限定されるものではない。また、キャップ47、48及び第1仕切り板44、45は、ろう付によりヘッダ本体46に接合されている。
【0079】
ヘッダ本体46とキャップ47、48とにより囲まれた第1ヘッダ4の内部空間は、2枚の第1仕切り板44、45により、3つの空間に区画されている。第1ヘッダ4の上端411から上方に配置された第1仕切り板44までの部分は、第1ヘッダ4の入口部41を構成している。入口部41には第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の端部が挿入されている。
【0080】
また、入口部41には、熱交換器1内に冷媒を供給するための冷媒供給管6が接続されている。冷媒供給管6の端部は入口部41内に挿入されており、冷媒供給管6と第1扁平多穴管群21に属する各扁平多穴管2とが入口部41を介して連通している。これにより、入口部41は、冷媒供給管6から供給された冷媒を第1扁平多穴管群21に属する各扁平多穴管2に分配することができるように構成されている。
【0081】
第1ヘッダ4における、上方に配置された第1仕切り板44から下方に配置された第1仕切り板45までの部分は第2ターン部42を構成している。第2ターン部42には、第2扁平多穴管群22及び第3扁平多穴管群23に属する扁平多穴管2の端部が挿入されている。これにより、第2ターン部42は、第2扁平多穴管群22に属する各扁平多穴管2を通過した冷媒を合流させるとともに、第3扁平多穴管群23に属する各扁平多穴管2に冷媒を分配することができるように構成されている。
【0082】
第1ヘッダ4の下端412から下方に配置された第1仕切り板45までの部分は出口部43を構成している。出口部43には、第4扁平多穴管群24に属する扁平多穴管2の端部が挿入されている。
【0083】
また、出口部43には、熱交換器1内の冷媒を外部に排出するための冷媒排出管7が接続されている。冷媒排出管7の端部は出口部43内に挿入されており、冷媒排出管7と第4扁平多穴管群24に属する各扁平多穴管2とが出口部43を介して連通している。これにより、出口部43は、第4扁平多穴管群24に属する各扁平多穴管2から排出された冷媒を合流させ、冷媒排出管7を介して熱交換器1の外部へ排出することができるように構成されている。
【0084】
第1ヘッダ4に挿入された扁平多穴管2、冷媒供給管6及び冷媒排出管7は、ろう付により第1ヘッダ4のヘッダ本体46に接合されている。
【0085】
第2ヘッダ5は、上下方向、即ちコア11の積層方向に延設された筒状を呈するヘッダ本体56と、ヘッダ本体56の上端及び下端を閉鎖するキャップ57、58とを有している。また、ヘッダ本体56とキャップ57、58とにより囲まれた第2ヘッダ5の内部空間は、1枚の第2仕切り板53により、2つの空間に区画されている。
【0086】
ヘッダ本体56としては、第1ヘッダ4のヘッダ本体46と同様に、例えば、外径15~25mm、肉厚1.0~2.5mmの円筒管を使用することができるが、この形状に限定されるものではない。また、キャップ57、58及び第2仕切り板53は、ろう付によりヘッダ本体56に接合されている。
【0087】
第2ヘッダ5の上端511から第2仕切り板53までの部分は第1ターン部51を構成している。第1ターン部51には第1扁平多穴管群21及び第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の端部が挿入されている。これにより、第2ターン部42は、第1扁平多穴管群21に属する各扁平多穴管2を通過した冷媒を合流させるとともに、第2扁平多穴管群22に属する各扁平多穴管2に冷媒を分配することができるように構成されている。
【0088】
第2ヘッダ5の下端512から第2仕切り板53までの部分は第3ターン部52を構成している。第3ターン部52には、第3扁平多穴管群23及び第4扁平多穴管群24に属する扁平多穴管2の端部が挿入されている。これにより、第3ターン部52は、第3扁平多穴管群23に属する各扁平多穴管2を通過した冷媒を合流させるとともに、第4扁平多穴管群24に属する各扁平多穴管2に冷媒を分配することができるように構成されている。
【0089】
第2ヘッダ5に挿入された扁平多穴管2は、ろう付により第2ヘッダ5のヘッダ本体56に接合されている。
【0090】
本例の熱交換器1のコア11は、複数の扁平多穴管群21~24を有しており、第1扁平多穴管群21、第2扁平多穴管群22、第3扁平多穴管群23及び第4扁平多穴管群24の順に冷媒が流れるように構成されている。また、第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数は14本以上であり、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の数は第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数以下である。それ故、熱交換器1は、圧力損失の上昇を抑制しつつ、第2扁平多穴管群22における熱交換量を増大させることができる。その結果、熱交換器1全体として熱交換量を増大させることができる。
【0091】
以上の結果、本例の熱交換器1によれば、圧力損失の上昇を抑制しつつ熱交換量を増大させることができる。
【0092】
(実施例2)
本例においては、各扁平多穴管群21~24に属する扁平多穴管2の数を変更した2種の熱交換器1(試験体A及び試験体B)を作製し、これらの熱交換器1の熱交換量を評価する。各試験体の具体的な構成を以下に説明する。なお、本例以降の例において用いられる符号のうち、既出の例において用いられた符号と同一のものは、特に説明のない限り既出の例における構成要素等と同様の構成要素等を表す。
【0093】
<試験体A>
試験体Aの基本的な形状は、実施例1の熱交換器1と同様である。試験体Aの各部の具体的な寸法等は、以下の通りである。
・有効幅:664mm
・奥行方向の外寸法:13.85mm
・扁平多穴管2の寸法:幅13.85mm、厚み1.15mm
・扁平多穴管2における冷媒流路の数:15本
・扁平多穴管2の水力直径Dh:0.530mm
・扁平多穴管2の流路断面積Atube:5.433mm2
【0094】
・扁平多穴管2の総数:52本
・第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の数:19本
・第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数:25本
・第3扁平多穴管群23に属する扁平多穴管2の数:4本
・第4扁平多穴管群24に属する扁平多穴管2の数:4本
【0095】
・フィン3の高さ:7.61mm
・フィン3のピッチ:1.1mm
【0096】
なお、前述した有効幅とは、扁平多穴管2の長手方向における第1ヘッダ4から第2ヘッダ5までの距離、つまり、実質的に扁平多穴管2と外気との熱交換が行われる部分の長さをいう。また、フィン3のピッチとは、フィン3における屈曲部32の周期の長さをいう。
【0097】
<試験体B>
試験体Bは、各扁平多穴管群21~24に属する扁平多穴管2の本数を以下のように変更した以外は、試験体Aと同様の構成を有している。
【0098】
・第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の数:22本
・第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数:15本
・第3扁平多穴管群23に属する扁平多穴管2の数:10本
・第4扁平多穴管群24に属する扁平多穴管2の数:5本
【0099】
次に、試験体A及び試験体Bの熱交換量の測定方法を説明する。まず、試験体Aまたは試験体Bを恒温恒湿試験室内に設けられた風洞装置に設置する。次いで、試験室内の空気温度を乾球温度:35℃、湿球温度:24℃とし、風洞装置から表1に示すいずれかの風速で熱交換器に空気を送風する。その後、各試験体の冷媒供給管6から冷媒としてR32を供給する。なお、R32の凝縮温度は45℃である。
【0100】
そして、冷媒供給管6における冷媒の温度が65℃(つまり、過熱度:20K)、冷媒排出管7における冷媒の温度が40℃(つまり、過冷却度:5K)となるように冷媒を流通させつつ、空気と冷媒との熱バランスを測定する。表1の「熱交換量」欄に、空気と冷媒との熱バランスが定常状態に達した時点での熱交換量を示す。また、表1の「比率」欄に、各風速における試験体Bの熱交換量に対する試験体Aの熱交換量の比を百分率(%)で表した値を示す。
【0101】
【0102】
表1に示したように、第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の本数を他の扁平多穴管群21、23、24に属する扁平多穴管2の数以上とした試験体Aは、第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の本数が第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の数よりも少ない試験体Bに比べて、いずれの風速においても熱交換量を増大させることができる。
【0103】
図3は、各試験体における、冷媒の流れ方向の位置と熱交換量との関係を模式的に示した図である。
図3の縦軸は、扁平多穴管2と冷媒との熱伝達率α
refと、各扁平多穴管群21~24における扁平多穴管2と冷媒との熱交換面積A
i,cellとの積である。また、
図3の横軸は、冷媒供給管6を基準とした場合の冷媒の流れ方向における位置である。α
refとA
i,cellとの積は熱交換量の指標となる値であり、α
refとA
i,cellとの積が大きいほど熱交換量を大きくすることができる。
【0104】
図3に示すように、試験体Aに冷媒が流入すると、まず、高クオリティの冷媒と空気との間で熱量が交換される。そのため、第1扁平多穴管群21の入口においては、高クオリティの冷媒に由来する高い熱伝達率α
refのため、α
refとA
i,cellとの積が急峻に立ち上がる。そして、冷媒のクオリティは、第1扁平多穴管群21内を進むにつれて徐々に低下する。これに伴い、α
refとA
i,cellとの積は、第1扁平多穴管群21内を進むにつれて徐々に減衰する。
【0105】
一方、第2扁平多穴管群22においては、扁平多穴管2の数が増えた分、冷媒との熱交換面積A
i,cellが大きくなる。これにより、α
refとA
i,cellとの積を大きくすることができる。また、扁平多穴管2は、前述した特有の伝熱特性により、ある程度凝縮が進行した冷媒が通過する際の熱伝達率α
refの低下を抑制することができる。そのため、第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の数を多くすることにより、
図3に示すように、第2扁平多穴管群22における熱交換量をより大きくし、ひいては熱交換器全体での熱交換量を増大させることができる。
【0106】
(実施例3)
本例においては、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の本数の検討を行う。本例では、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の本数を検討するために、以下の解析モデルを用いて数値解析を行う。
【0107】
図4及び
図5に、解析モデルの概略を示す。
図4に模式的に示すように、解析モデルは、第1扁平多穴管群21~第4扁平多穴管群24に対応する4本の冷媒パスP1~P4を有している。これらの冷媒パスP1~P4は、扁平多穴管2の長手方向において複数の計算セルCに分割されている。そして、
図5に模式的に示すように、セルの入口における冷媒の状態量(温度T
ref,in[K]、圧力P
ref,in[Pa]及び比エンタルピh
ref,in[kJ/kg])及び空気の状態量(温度T
air,in[K])に基づいて出口における冷媒の状態量(温度T
ref,out[K]、圧力P
ref,out[Pa]及び比エンタルピh
ref,out[kJ/kg])及び空気の状態量(温度T
air,out[K])を算出する操作を冷媒の流れ方向に沿って順次行うことにより、熱交換器全体の熱交換量や圧力損失などを算出することができる。
【0108】
各セルの出口における冷媒の状態量は、セル内のエネルギー保存式及び運動量保存式を繰り返し計算によって解くことにより算出することができる。具体的には、セルの出口における冷媒の温度Tref,out及び比エンタルピhref,outの算出には、空気と扁平多穴管2との間のエネルギー保存式(下記式(8)参照)及び扁平多穴管2と冷媒との間のエネルギー保存式(下記式(10)参照)を用いればよい。
【0109】
各セルにおける空気側のエネルギー保存式は、下記式(8)により表すことができる。
αair・LMTD・Ao,cell=Vair・Afront,cell・ρair・Cp(Tair,out-Tair,in) ・・・(8)
【0110】
前記式(8)における記号の意味は以下の通りである。
αair:空気と扁平多穴管2及びフィン3との間の熱伝達率[W/(m2・K)]
Ao,cell:セルあたりの扁平多穴管2及びフィン3と空気との熱交換面積[m2]
Vair:各セルの空気の入口に流入する空気の風速[m/s]
Afront,cell:各セルにおける空気の入口の面積[m2]
ρair:空気の密度[kg/m3]
Cp:空気の定圧比熱[J/(kg・K)]
Tair,out:各セルの空気の出口における空気の温度[K]
Tair,in:各セルの空気の入口における空気の温度[K]
【0111】
なお、各セルの空気の入口に流入する空気の風速Vairは、セルに流入する空気の体積流量[m3/s]をセルの空気の入口の面積Afront,cell[m2]で除した値である。
【0112】
また、前記式(8)における記号LMTDは、各セルにおける冷媒の出入口の温度と、空気の出入口の温度との対数平均温度差である。LMTDの値は、具体的には扁平多穴管2の壁面温度Twall[K]を用いて下記式(9)により算出することができる。
LMTD=(Tair,out-Tair,in)/log{(Tair,out-Twall)/(Tair,in-Twall)} ・・・(9)
【0113】
各セルにおける冷媒側のエネルギー保存式は、下記式(10)により表すことができる。
αref・(Tref-Twall)・Ai,cell=Mref・(href,in-href,out) ・・・(10)
【0114】
前記式(10)における記号の意味は以下の通りである。
αref:冷媒と扁平多穴管2との間の熱伝達率[W/(m2・K)]
Tref:冷媒の温度[K]
Ai,cell:セルあたりの冷媒と扁平多穴管2との熱交換面積[m2]
Mref:冷媒の質量流量[kg/s]
href,in:各セルの冷媒の入口における冷媒の比エンタルピ
href,out:各セルの冷媒の出口における冷媒の比エンタルピ
【0115】
空気と扁平多穴管2との熱交換量と、扁平多穴管2と冷媒との熱交換量とは等しいから、前記式(8)の右辺と前記式(10)の右辺とを等号で結ぶことができる。これにより、下記式(11)を得ることができる。
Vair・Afront,cell・ρair・Cp(Tair,out-Tair,in)=Mref・(href,in-href,out) ・・・(11)
【0116】
前記式(8)における空気と扁平多穴管2との間の熱伝達率αair及び前記式(10)における冷媒と扁平多穴管2との間の熱伝達率αrefは別途計算で決定することができる。また、各セルの入口における冷媒の状態量には、計算対象のセルの上流にセルが存在しない場合には適切に設定された初期値を用い、計算対象のセルの上流にセルが存在する場合には上流のセルの出口における状態量を用いればよい。また、各セルの入口における空気の状態量には、適切に設定された初期値を用いればよい。
【0117】
従って、前記式(8)、式(10)及び式(11)には、セルの空気の出口における空気の温度Tair,out、扁平多穴管2の壁面温度Twall及び冷媒の出口における冷媒の比エンタルピhref,outの3つの未知の状態量が存在している。一方、前記式(8)、式(10)及び式(11)は保存式であるから、反復法を用いることにより、これらの未知の状態量を決定することができる。具体的には、二分法を用いてこれらの未知の状態量を決定すればよい。
【0118】
また、セルの冷媒の出口における冷媒の圧力Pref,outには、下記式(12)を用いればよい。
Pref,out=Pref,in-ΔPf-ΔPm ・・・(12)
【0119】
前記式(12)における記号ΔPfは地下-小山の式に基づく管内摩擦損失の値であり、ΔPmは冷媒の相変化に伴う圧力変化である。冷媒の相変化に伴う圧力変化ΔPmの値は、下記式(13)で表すことができる。
ΔPm=G2・(1/ρV-1/ρL)・(xref,in-xref,out) ・・・(13)
【0120】
なお、前記式(13)における記号の意味は以下の通りである。
G:冷媒の質量速度[kg/(m2s)]
xref,in:セルの冷媒の入口における冷媒のクオリティ[-]
xref,out:セルの冷媒の出口における冷媒のクオリティ[-]
【0121】
前記の解析モデルの妥当性は、例えば、実施例1における試験体A及び試験体Bを模擬したモデルの計算結果を実験結果と比較することにより確認できる。表2に、試験体A及び試験体Bを模擬したモデルの計算結果を示す。
【0122】
【0123】
表2に示した通り、数値解析によって算出された試験体Aの熱交換量は、いずれの風速においても試験体Bの熱交換量よりも大きくなった。また、試験体Aの熱交換量は、風速が早くなるほど大きくなった。このように、前記の解析モデルにより算出される熱交換量は、実験結果と同様の傾向を示している。これらの結果から、前記の解析モデルが妥当であることが理解できる。
【0124】
次に、前記の解析モデルを用い、表3に示す解析条件A~Jのそれぞれにおいて熱交換量が最も大きくなる扁平多穴管2の分配方法を探索する。なお、表3に示した値以外の解析モデルの構成は、以下の通りである。
【0125】
・有効幅:700mm
・奥行方向の外寸法:13.85mm
・扁平多穴管2の総数:52本
・フィン3の高さ:7.61mm
・フィン3のピッチ:1.1mm
【0126】
・冷媒:R32
・空気の乾球温度:35℃
・空気の湿球温度:24℃
【0127】
・扁平多穴管A
寸法:幅13.85mm、厚み1.15mm
冷媒流路の数:15本
水力直径Dh:0.530mm
流路断面積Atube:5.433mm2
【0128】
・扁平多穴管B
寸法:幅13.85mm、厚み1.93mm
冷媒流路の数:13本
水力直径Dh:0.740mm
流路断面積Atube:12.23mm2
【0129】
表3に、解析条件A~Jのそれぞれにおける、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の本数の最適な値を示す。なお、表には示さないが、解析条件A~Jのいずれにおいても第2扁平多穴管群22に属する扁平多穴管2の本数の最適な値は、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の本数の最適な値以上となる。
【0130】
【0131】
図6に、熱交換器が有する扁平多穴管の総数N[本]に対する第1扁平多穴管群に属する扁平多穴管の本数N
1[本]の比率N
1/Nを下記式(2)におけるΔP
TPの値で整理したグラフを示す。
図6の縦軸はN
1/Nの値であり、横軸は下記式(2)におけるΔP
TPの値である。また、
図6中の破線は、下記式(1’)で表される曲線である。なお、
図6の横軸の目盛は対数目盛である。
【0132】
ΔPTP=0.0661×C1×Γ-1.841 ・・・(2)
N1
’=N×0.0014×ΔPTP
0.48737 ・・・(1’)
【0133】
ただし、前記式(2)におけるΔPTPの値は、前記パラレルフロー型熱交換器の内部を流れる前記冷媒の質量流量をmref[kg/s]、前記扁平多穴管の流路断面積をAtube[m2]、前記扁平多穴管の水力直径をDh[m]、前記扁平多穴管の長さをLtube[m]、液相における前記冷媒の粘度をμL[Pa・s]、気相における前記冷媒の粘度をμV[Pa・s]、液相における前記冷媒の密度をρL[kg/m3]、気相における前記冷媒の密度をρV[kg/m3]で表した場合に下記式(3)~(4)により算出される値である。
C1=mref
1.75×Atube
-1.75×Dh
-0.75×μL
0.25×ρL
-1×4×Ltube ・・・(3)
Γ=(ρV/ρL)0.5×(μL/μV)0.125 ・・・(4)
【0134】
図6に示したグラフによれば、前記式(1’)で表される曲線は、解析条件A~Jにおける、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の最適値をよく近似していることが理解できる。従って、前記式(1’)を用いることにより、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の最適値を容易に予測することができる。
【0135】
また、表3の「式(1’)による予測値」欄に、前記式(1’)により算出された第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の最適値を示す。これらの結果によれば、前記式(1’)により予測された値は、数値解析によって導き出された第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の最適な本数に対して最大で2本多くなっていることが理解できる。
【0136】
従って、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の本数の下限を、前記式(1’)により予測された第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の最適値よりも2本少ない本数とすることにより、第1扁平多穴管群21に属する扁平多穴管2の本数を容易に最適化し、熱交換器全体の熱交換量をより多くすることができる。
【0137】
以上のように、実施例1~実施例3に基づいて本発明に係るパラレルフロー型熱交換器の構成例を説明したが、本発明に係るパラレルフロー型熱交換器の具体的な態様は前述した実施例に記載された態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【符号の説明】
【0138】
1 パラレルフロー型熱交換器
11 コア
2 扁平多穴管
21 第1扁平多穴管群
22 第2扁平多穴管群
3 フィン
4 第1ヘッダ
5 第2ヘッダ