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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】金属配線の製造方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/12 20060101AFI20240906BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20240906BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H05K3/12 610D
H05K3/10 C
H01B13/00 503D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020149168
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043723
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅志
(72)【発明者】
【氏名】湯本 徹
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-044202(JP,A)
【文献】特開平07-321444(JP,A)
【文献】特開2019-140284(JP,A)
【文献】特開2009-127085(JP,A)
【文献】特開平10-057877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/12
H05K 3/10
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を含む分散体を塗布して分散体層を形成する塗布工程と、
前記分散体層を乾燥させて前記基材と前記基材上に配置された乾燥塗膜とを有する乾燥塗膜付構造体を形成する乾燥工程と、
前記乾燥塗膜にレーザ光を照射して金属配線を形成するレーザ光照射工程と、
前記乾燥塗膜の前記金属配線以外の領域を現像液で現像除去する現像工程と
前記現像工程で生じた使用済現像液を用いて再生分散体を調製する再生分散体調製工程と、
を含み、
前記分散体として前記再生分散体を用い、
前記乾燥塗膜の固形分率が60質量%以上99質量%以下であり、
前記現像液が、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含み、
前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上であり、
前記現像液中の前記分散剤の濃度が0.1質量%以上20質量%以下である、金属配線の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程において、乾燥温度40℃以上120℃以下での乾燥時間が、10分以上8時間以下である、請求項1に記載の金属配線の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程の後に、前記乾燥塗膜付構造体を10分以上3日以下に亘って保管する保管工程を更に含む、請求項1又は2に記載の金属配線の製造方法。
【請求項4】
前記保管工程を、温度0℃以上40℃以下、かつ相対湿度20%以上70%以下の環境下で行う、請求項3に記載の金属配線の製造方法。
【請求項5】
前記現像工程において、前記基材を治具で保持して現像を行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属配線の製造方法。
【請求項6】
前記分散剤がリン酸エステルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属配線の製造方法。
【請求項7】
前記現像工程において、水で現像を行い、次いで前記現像液で現像を行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属配線の製造方法。
【請求項8】
(A)現像液と(B)乾燥塗膜付構造体を含むキットであって
(A)現像液が、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含み、
前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上であり、
前記(A)現像液中の前記分散剤の濃度が0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記(B)乾燥塗膜付構造体が、基材と、前記基材上に配置された、(i)金属粒子及び/又は金属酸化物粒子、(ii)前記(A)現像液中の前記分散剤の少なくとも1種と同種の化合物を含む分散剤(iii)還元剤、及び(iv)前記(A)現像液中の前記溶媒の少なくとも1種と同種の化合物を含む分散媒を含む乾燥塗膜とを有し、
前記乾燥塗膜の固形分率が60質量%以上99質量%以下である、
キット。
【請求項9】
(A)現像液と(B)導電部付構造体を含むキットであって
前記(A)現像液が、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含み、
前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上であり、
前記(A)現像液中の前記分散剤の濃度が0.1質量%以上20質量%以下であり、
前記(B)導電部付構造体が、基材と、前記基材上に配置された、(1)導電部領域及び(2)非導電部領域を有する膜とを有し、
前記(1)導電部領域が、銅を含む金属配線であり、
前記(2)非導電部領域が、酸化第一銅と、還元剤と、前記(A)現像液中の前記分散剤の少なくとも1種と同種の化合物を含む分散剤と、前記(A)現像液中の前記溶媒の少なくとも1種と同種の化合物を含む分散媒とを含み、
前記(2)非導電部領域の固形分率が60質量%以上99質量%以下である、
キット。
【請求項10】
前記(A)現像液中の前記分散剤及び前記(B)乾燥塗膜付構造体中の前記分散剤がリン含有有機化合物を含む、請求項に記載のキット。
【請求項11】
前記(A)現像液中の前記分散剤及び前記(2)非導電部領域中の前記分散剤がリン含有有機化合物を含む、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
前記還元剤が、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
請求項8に記載のキットの製造方法であって、
前記(A)現像液を準備する工程、
請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法において生じた前記再生分散体を基材の上に塗布して分散体層を形成する塗布工程、
前記分散体層を乾燥させて前記(B)乾燥塗膜付構造体を形成する乾燥工程、及び
前記(A)現像液と前記(B)乾燥塗膜付構造体とを組み合わせてキットを得るキット形成工程、
を含む、キットの製造方法。
【請求項14】
請求項9に記載のキットの製造方法であって、
前記(A)現像液を準備する工程、
請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法において生じた前記再生分散体を基材の上に塗布して分散体層を形成する塗布工程、
前記分散体層を乾燥させて前記基材と前記基材上に配置された乾燥塗膜とを有する乾燥塗膜付構造体を形成する乾燥工程、
前記乾燥塗膜にレーザ光を照射して前記(1)導電部領域を形成することで、前記(1)導電部領域と、前記(1)導電部領域以外の領域である(2)非導電部領域とを有する膜を有する前記(B)導電部付構造体を形成するレーザ光照射工程、及び
前記(A)現像液と前記(B)導電部付構造体とを組み合わせてキットを得るキット形成工程、
を含む、キットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配線の製造方法、及び金属配線を製造するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板は、基板上に導電性の配線を施した構造を有する。回路基板の製造方法は、一般的に、次の通りである。まず、金属箔を貼り合せた基板上にフォトレジストを塗布する。次に、フォトレジストを露光及び現像して所望の回路パターンのネガ状の形状を得る。次に、フォトレジストに被覆されていない部分の金属箔をケミカルエッチングにより除去してパターンを形成する。これにより、高性能の導電性基板を製造できる。
【0003】
しかしながら、従来の方法は、工程数が多く、煩雑であると共に、フォトレジスト材料を要する等の欠点がある。
【0004】
これに対し、金属粒子及び金属酸化物粒子からなる群から選択された粒子を分散させた分散体(以下、「ペースト材料」ともいう)で基板上に所望の配線パターンを直接印刷する直接配線印刷技術が注目されている。この技術は、工程数が少なく、フォトレジスト材料を用いる必要がない等、極めて生産性が高い。
【0005】
直接印刷配線技術の一例としては、ペースト材料を基板の全面に塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜にレーザ光をパターン状に照射して選択的に熱焼成することで、所望の配線パターンを得る方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
特許文献2には、波長830nmのGaAlAsレーザ光を照射して描画を行ったとき、酸化銅薄膜上でのビーム径は5μmであり、レーザ光被照射部は局部加熱されたことにより酸化銅が還元され、ほぼ5μm径の還元銅領域が形成されたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/024385号
【文献】特開平5-37126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のようにレーザ光照射により描画を行って配線を形成する場合、光が照射されなかった領域には塗膜が残存する。
【0009】
この残存した塗膜は、配線形成後のめっき操作において、目的の配線パターン外への金属の成長、マイグレーションによる短絡等の問題を招来する。
【0010】
そのため、レーザ光照射後には、現像操作により、残存した塗膜を十分に除去する必要があるが、当該塗膜を十分に除去する技術は従来確立されていなかった。更に、現像操作には、金属配線に対してダメージを与えることなく残存塗膜のみを十分に除去することが要求されるところ、このような要求を満足する現像手法は従来提案されていない。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、金属配線間に残存している塗膜を十分に除去できる良好な現像性を有しつつ金属配線にダメージを与えないような現像操作によって高品質の(より具体的には低抵抗でかつ抵抗値の部位間ばらつきが少ない)金属配線を製造することが可能な、金属配線の製造方法、乾燥塗膜付構造体と現像液とを含むキット、及び、導電部付構造体と現像液とを含むキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、以下の態様を包含する。
[1] 基材の上に、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を含む分散体を塗布して分散体層を形成する塗布工程と、
前記分散体層を乾燥させて前記基材と前記基材上に配置された乾燥塗膜とを有する乾燥塗膜付構造体を形成する乾燥工程と、
前記乾燥塗膜にレーザ光を照射して金属配線を形成するレーザ光照射工程と、
前記乾燥塗膜の前記金属配線以外の領域を現像液で現像除去する現像工程と、
を含み、
前記乾燥塗膜の固形分率が60質量%以上99質量%以下であり、
前記現像液が、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含み、
前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上であり、
前記現像液中の前記分散剤の濃度が0.1質量%以上20質量%以下である、金属配線の製造方法。
[2] 前記乾燥工程において、乾燥温度40℃以上120℃以下での乾燥時間が、10分以上8時間以下である、上記態様1に記載の金属配線の製造方法。
[3] 前記乾燥工程の後に、前記乾燥塗膜付構造体を10分以上3日以下に亘って保管する保管工程を更に含む、上記態様1又は2に記載の金属配線の製造方法。
[4] 前記保管工程を、温度0℃以上40℃以下、かつ相対湿度20%以上70%以下の環境下で行う、上記態様3に記載の金属配線の製造方法。
[5] 前記現像工程において、前記基材を治具で保持して現像を行う、上記態様1~4のいずれかに記載の金属配線の製造方法。
[6] 前記分散剤がリン酸エステルである、上記態様1~5のいずれかに記載の金属配線の製造方法。
[7] 前記現像工程において、水で現像を行い、次いで前記現像液で現像を行う、上記態様1~6のいずれかに記載の金属配線の製造方法。
[8] 前記方法が、現像工程の後に、使用済現像液を用いて再生分散体を調製する再生分散体調製工程を更に含み、
前記分散体として前記再生分散体を用いる、上記態様1~7のいずれかに記載の金属配線の製造方法。
[9] 乾燥塗膜付構造体と現像液とを含むキットであって、
前記乾燥塗膜付構造体が、基材と、前記基材上に配置された、(i)金属粒子及び/又は金属酸化物粒子、(ii)分散剤及び(iii)還元剤を含む乾燥塗膜とを有し、
前記乾燥塗膜の固形分率が60質量%以上99質量%以下であり、
前記現像液が、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含み、
前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上であり、
前記現像液中の前記分散剤の濃度が0.1質量%以上20質量%以下である、キット。
[10] 導電部付構造体と現像液とを含むキットであって、
前記導電部付構造体が、基材と、前記基材上に配置された、(1)導電部領域及び(2)非導電部領域を有する膜とを有し、
前記(1)導電部領域が、銅を含む金属配線であり、
前記(2)非導電部領域が、酸化第一銅と還元剤と分散剤とを含み、
前記(2)非導電部領域の固形分率が60質量%以上99質量%以下であり、
前記現像液が、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含み、前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上であり、前記現像液中の前記分散剤の濃度が0.1質量%以上20質量%以下である、キット。
[11] 前記還元剤が、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物を含む、上記態様9又は10に記載のキット。
[12] 前記分散剤がリン含有有機化合物を含む、上記態様9~11のいずれかに記載のキット。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、金属配線間に残存している塗膜を十分に除去できる良好な現像性を有しつつ金属配線にダメージを与えないような現像操作によって高品質の(より具体的には低抵抗でかつ抵抗値の部位間ばらつきが少ない)金属配線を製造することが可能な、金属配線の製造方法、乾燥塗膜付構造体と現像液とを含むキット、及び導電部付構造体と現像液とを含むキットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る金属配線の製造方法を説明する図である。
図2】本実施形態に係る金属配線の製造方法におけるレーザ光の重複照射について説明する模式図である。
図3】本実施形態に係る金属配線の製造方法の現像工程において導電部付構造体を保持する治具の一例を示す模式図である。
図4】本実施形態に係る金属配線の製造方法の現像工程において導電部付構造体を保持する治具の一例を示す模式図である。
図5】本実施形態に係る金属配線の製造方法の現像工程において導電部付構造体を保持する治具の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。
【0016】
<金属配線の製造方法>
本実施形態において、金属配線の製造方法は、
基材の上に、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を含む分散体を塗布して分散体層を形成する塗布工程と、
分散体層を乾燥させて基材と当該基材上に配置された乾燥塗膜とを有する乾燥塗膜付構造体を形成する乾燥工程と、
乾燥塗膜にレーザ光を照射して金属配線を形成するレーザ光照射工程と、
乾燥塗膜の当該金属配線以外の領域を現像液で現像除去する現像工程と、
を含む。
一態様において、乾燥塗膜の固形分率は60質量%以上99質量%以下である。一態様において、現像液は、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含む。一態様において、上記有機溶媒は、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上である。一態様において、現像液中の分散剤の濃度は、0.1質量%以上20質量%以下である。
【0017】
本発明者らは、基材上に配置された乾燥塗膜のうちレーザ光が照射された領域(以下、露光部ということもある。)を金属配線として形成するとともに当該乾燥塗膜のレーザ光が照射されなかった領域(以下、未露光部ということもある。)を現像液で現像除去する際に、未露光部が現像液によって十分に除去されない場合があることに着目し、更にその要因として、乾燥塗膜と基材との過度な密着力又は結合力、及び、乾燥塗膜中の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の現像液中への分散不足が考えられることを見出した。本発明者らは、これら要因を取り除いて良好な現像性を実現する手法を種々検討した結果、乾燥塗膜の固形分率を特定範囲に制御するとともに特定組成の現像液を用いることで、金属配線のダメージを回避しつつ良好な現像性を実現できることを見出した。
【0018】
[乾燥塗膜の固形分率]
乾燥塗膜の固形分率は、一態様において60質量%以上99質量%以下である。乾燥塗膜の固形分率が60質量%以上であると、レーザ光を照射して金属配線を形成する際の乾燥塗膜の体積収縮が少なく、金属配線中のボイド量が少なく焼結性が高くなるため、低抵抗でかつ抵抗値の部位間ばらつきが少ない配線を得ることができる。また、乾燥塗膜の固形分率が60質量%以上であると、未露光部と基材との密着力又は結合力が小さく良好な現像除去性が得られる。例えば、基材が樹脂基材である場合、乾燥塗膜中の分散媒によって基材が僅かに溶解して乾燥塗膜中に基材成分が拡散することによって、未露光部と基材とが強固に結合してしまう場合があるが、上記固形分率が60質量%以上であればこのような拡散を回避できる。一方、乾燥塗膜の固形分率が99質量%以下であると、乾燥塗膜中の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子が現像液中に良好に分散して、現像後の基材上の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の残存量を少なくできる(すなわち現像性が良好である)。乾燥塗膜の固形分率は、好ましくは、65質量%以上95質量%以下、又は70質量%以上90質量%以下である。
【0019】
乾燥塗膜の固形分率は、本開示の[実施例]の項に記載の通り、TG-DTA(熱重量示差熱分析)装置を用い、10℃/分の速度で500℃まで昇温したときの、昇温前重量に対する昇温後重量の比率として求められる値である。したがって、一態様において、乾燥塗膜の固形分率は、乾燥塗膜中の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の含有率に対応する。
【0020】
[現像液の組成]
現像液は、一態様において、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含む。一態様において、有機溶媒は、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上である。本開示の現像液は、分散剤の寄与によって、乾燥塗膜の塗膜成分(特に、現像除去され難い成分である金属粒子及び/又は金属酸化物粒子)を現像液中に良好に分散できるため、アルコール、ケトン、エステル及びエーテルから成る群から選ばれる有機溶媒並びに/又は水といった、金属配線及び基材にダメージを与え難い溶媒系であっても、良好な現像を実現できる。このように、本開示の現像液は、金属配線のダメージの回避と良好な現像性との両立に寄与する。溶媒は、1種又は2種以上の組合せであってよく、好ましくは極性溶媒を含み、より好ましくは極性溶媒で構成されている。極性溶媒は、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の分散能に優れるため、現像性の点で特に有利である。現像液に含まれる溶媒(1種又は2種以上の組合せであってよい)は、好ましくは、分散体に含まれる分散媒(1種又は2種以上の組合せであってよい)の少なくとも1種と同種の化合物を含み、又は、当該分散媒と同種の化合物で構成される。
【0021】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ターシャリーブタノール、ブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、1,4ジエチレンオキシド、ビニルエチレンカルボナート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0022】
現像液中の溶媒は、極性を高くできる点で、水、エタノール、プロパノール、ブタノール、及びイソプロピルアルコールから成る群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、当該1種以上で構成されていることが特に好ましい。
【0023】
一態様において、現像液は分散剤を含む。分散剤は、基材に付着した金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を効率よく現像液中に分散させる(すなわち効率よく除去する)ことができる。分散剤としては、本開示の分散体が含み得る分散剤として、[分散体及び乾燥塗膜の組成]の項で後述するものが好ましい。例えばリン含有有機化合物を用いると、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子(特に酸化銅粒子)が現像液中に良好に分散するため、現像が容易である。したがって一態様において、現像液中の分散剤の好適化合物例は、[分散体及び乾燥塗膜の組成]の項で後述する分散剤の好適化合物例と同様である。
【0024】
現像液中の分散剤の含有率は、基材に付着した金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を効率よく現像液中に分散させる(すなわち効率よく除去する)ことができる点で、好ましくは、0.1質量%以上、又は0.5質量%以上、又は1.0質量%以上であり、分散剤による金属配線の溶解を抑制できる点、高粘度の分散剤を使用しても現像に適した低粘度の現像液を形成できる点、及び、基材及び金属配線への余分な分散剤の付着を防ぎ、現像後の水洗工程を簡易化できる点で、好ましくは、20質量%以下、又は15質量%以下、又は10質量%以下である。
【0025】
[分散体及び乾燥塗膜の組成]
本開示の、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を含みかつ特定範囲の固形分率を有する乾燥塗膜は、一態様において、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子と、分散媒と、任意に分散剤及び/又は還元剤とを含む分散体を基材上に塗布、次いで乾燥することによって形成される。したがって、一態様において、乾燥塗膜中の分散媒以外の成分の質量比率は、分散体中の分散媒以外の成分の質量比率と同一と見做してよい。又は、乾燥塗膜中の金属元素の含有量は、SEM(走査型電子顕微鏡)及びEDX(エネルギー分散型X線分析)装置により確認できる。
【0026】
分散体中及び乾燥塗膜中の分散剤の含有量は、TG-DTA(熱重量示差熱分析)装置を用いて確認できる。
【0027】
分散体中の還元剤の含有量は、GC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析)装置を用いたサロゲート法により確認できる。また、乾燥塗膜中の還元剤の含有量は、乾燥塗膜を分散媒に再分散させた後、GC/MS装置を用いたサロゲート法により確認できる。
以下に、還元剤としてヒドラジンを用いた場合の測定例を示す。
【0028】
(ヒドラジン定量方法)
分散体50μLに、ヒドラジン33μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加える。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行う。
【0029】
同じく、分散体50μLに、ヒドラジン66μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加える。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行う。
【0030】
同じく、分散体50μLに、ヒドラジン133μg、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加える。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行う。
【0031】
最後に、分散体50μLに、ヒドラジンを加えず、サロゲート物質(ヒドラジン1524)33μg、ベンズアルデヒド1質量%アセトニトリル溶液1mlを加え、最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行う。
【0032】
上記4点のGC/MS測定からm/z=207のクロマトグラムよりヒドラジンのピーク面積値を得る。次に、m/z=209のマスクロマトグラムよりサロゲートのピーク面積値を得る。x軸に、添加したヒドラジンの重量/添加したサロゲート物質の重量、y軸に、ヒドラジンのピーク面積値/サロゲート物質のピーク面積値をとり、サロゲート法による検量線を得る。
【0033】
検量線から得られたY切片の値を、添加したヒドラジンの重量/添加したサロゲート物質の重量で除しヒドラジンの重量を得る。
【0034】
((i)金属粒子及び/又は金属酸化物粒子)
金属粒子及び/又は金属酸化物粒子に含まれる金属は、アルミニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、イリジウム、白金、金、タリウム、鉛、ビスマス等であり、これらの1種、又は2種以上を含む合金若しくは混合物であってよい。また金属酸化物としては、上記で例示した金属の酸化物が挙げられる。中でも、銀又は銅の金属酸化物粒子は、レーザ光で照射を行った時に還元されやすく、均一な金属配線を形成できるため、好ましい。特に、銅の金属酸化物粒子は、空気中での安定性が比較的高く、さらに低コストで入手可能であり、事業上の観点から優位であり、好ましい。酸化銅は、例えば、酸化第一銅及び酸化第二銅を包含する。酸化第一銅は、レーザ光に対する吸光度が高く低温焼結が可能である点、及び低抵抗の焼結物を形成できる点で特に好ましい。酸化第一銅及び酸化第二銅は、これらを単独で用いてもよいし、これらを混合して用いてもよい。
【0035】
金属酸化物粒子は、一態様において酸化銅粒子を含み又は酸化銅粒子である。酸化銅粒子は、コア/シェル構造を有してよく、コア及びシェルのいずれか一方が酸化第一銅及び/又は酸化第二銅を含んでよい。
【0036】
酸化銅粒子の平均二次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは、500nm以下、又は200nm以下、又は100nm以下、又は80nm以下、又は50nm以下、又は20nm以下である。当該粒子の平均二次粒子径は、好ましくは、1nm以上、又は5nm以上、又は10nm以上、又は15nm以上である。
【0037】
平均二次粒子径とは、一次粒子が複数個集まって形成される凝集体(二次粒子)の平均粒子径のことである。この平均二次粒子径が500nm以下であると、基材上に微細な金属配線を形成でき好ましい。平均二次粒子径が1nm以上、特に5nm以上であれば、分散体の長期保管安定性が向上するため好ましい。当該粒子の平均二次粒子径は、動的散乱法によって測定される値である。
【0038】
二次粒子を構成する一次粒子の平均一次粒子径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。平均一次粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは5nm以上である。
【0039】
平均一次粒子径が100nm以下の場合、レーザ光照射による乾燥塗膜の焼成温度を低くできる傾向にある。このような低温焼成が可能になる理由は、粒子の粒子径が小さいほど、その表面エネルギーが大きくなって、融点が低下するためと考えられる。
【0040】
また、平均一次粒子径が1nm以上であれば、分散体中での粒子の良好な分散性を得ることができるため好ましい。基材に金属配線パターンを形成する場合、基材と乾燥塗膜との適度な密着性や低抵抗化の観点で、平均一次粒子径は、好ましくは2nm以上、100nm以下、より好ましくは5nm以上、50nm以下である。この傾向は基材が樹脂である場合に顕著である。当該粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定される値である。
【0041】
分散体及び乾燥塗膜は、銅粒子を含んでもよい。すなわち、本開示の分散体及び乾燥塗膜が銅を含んでもよい。
【0042】
分散体及び乾燥塗膜は、酸化銅粒子と銅粒子とを含んでもよい。この場合、酸化銅粒子に対する銅粒子の質量比率(以下、「銅粒子/酸化銅粒子」と記載する)は、導電性とクラック防止との観点から、好ましくは、1.0以上7.0以下、又は1.5以上6.0以下、又は2.0以上5.0以下である。
【0043】
分散体中の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の含有率は、金属粒子及び金属酸化物粒子の合計含有率で、分散体100質量%に対して、0.50質量%以上60質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。上記合計含有率が60質量%以下である場合、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の凝集を抑制しやすくなる傾向がある。上記合計含有率が0.50質量%以上である場合、乾燥塗膜をレーザ光照射によって焼成して得られる金属配線(すなわち導電膜)が薄くなりすぎず、導電性が良好である傾向がある。
【0044】
乾燥塗膜中の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の含有率は、金属粒子及び金属酸化物粒子の合計含有率で、乾燥塗膜100質量%に対して、40質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有率は、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
また乾燥塗膜中の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の含有率は、金属粒子及び金属酸化物粒子の合計含有率で、乾燥塗膜100体積%に対して、10体積%以上であることが好ましく、15体積%以上であることがより好ましく、25体積%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有率は、90体積%以下であることが好ましく、76体積%以下であることがより好ましく、60体積%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
乾燥塗膜における金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の含有率が、40質量%以上又は10体積%以上であれば、焼成によって粒子同士が融着して良好な導電性を発現するため好ましい。金属粒子及び/又は金属酸化物粒子が高濃度になるほど導電性の点では好ましいが、当該含有率が、98質量%以下又は90体積%以下である場合、乾燥塗膜が金属配線を安定形成できる程度に基材に対して良好に付着でき、特に95質量%以下又は76体積%以下である場合、付着がより強固であり、好ましい。また、当該含有率が、90質量%以下又は60体積%以下である場合には、乾燥塗膜の可撓性が高く、折り曲げ時にクラックが生じにくく、信頼性が高まる。
【0047】
((ii)分散剤)
分散体及び乾燥塗膜は、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を良好に分散させるための分散剤を含んでいる。
【0048】
分散剤の数平均分子量は、特に制限はないが、300~300,000であることが好ましく、300~30,000であることがより好ましく、300~10,000であることが更に好ましい。数平均分子量が300以上であると、分散体の分散安定性が増す傾向があり、また、300,000以下であると、配線形成時に焼成がしやすく、30,000以下であれば、焼成後の分散剤残存量がより少なく、金属配線の抵抗を小さくできる。なお本開示で、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算で求められる値である。
【0049】
分散剤としては、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の分散性に優れる点で、リン含有有機化合物が好ましい。また分散剤は、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子に吸着し、立体障害効果によって粒子の凝集を抑制する観点から、これら粒子に対して親和性の基(例えば水酸基)を有することが好ましい。特に、金属酸化物粒子と水酸基含有分散剤との併用は好ましい。分散剤は、好ましくはリン含有有機化合物を含む。分散剤の特に好適な例は、リン酸基を有するリン含有有機化合物である。
【0050】
リン含有有機化合物は、光及び/又は熱によって分解又は蒸発しやすいことが好ましい。光及び/又は熱によって分解又は蒸発しやすい有機物を用いることによって、焼成後に有機物の残渣が残りにくくなり、抵抗率の低い金属配線を得ることができる。
【0051】
リン含有有機化合物の分解温度は、限定されないが、600℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。分解温度は、リン含有有機化合物の安定性の観点から、好ましくは60℃以上、又は90℃以上、又は120℃以上であってよい。なお本開示で、分解温度は、熱重量示差熱分析法で求められる分解開始温度の値である。
【0052】
リン含有有機化合物の沸点は、限定されないが、300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。沸点は、リン含有有機化合物の安定性の観点から、好ましくは、60℃以上、又は90℃以上、又は120℃以上であってよい。
【0053】
リン含有有機化合物の吸収特性は、限定されないが、焼成に用いるレーザ光を吸収できることが好ましい。なお本開示で、焼成に用いるレーザ光を吸収できるとは、紫外可視分光光度計で測定される波長532nmでの吸光係数が0.10cm-1以上であることを意味する。より具体的には、焼成に用いるレーザ光の発光波長(中心波長)としての、例えば355nm、405nm、445nm、450nm、532nm、1064nmなどの光を吸収するリン含有有機化合物が好ましい。特に、基材が樹脂基材である場合、中心波長が355nm、405nm、445nm、及び/又は450nmの光を吸収するリン含有有機化合物が好ましい。
【0054】
リン含有有機化合物がリン酸エステルであることは、分散体の大気下安定性向上の観点からも好ましい。例えば、下記一般式(1):
【化1】
(式中、Rは1価の有機基である。)
で表されるリン酸モノエステルは、金属酸化物粒子への吸着性に優れるとともに、基材に対する適度な密着性を示すことで金属配線の安定形成と未露光部の良好な現像との両立に寄与する点で好ましい。Rとしては、置換又は非置換の炭化水素基等を例示できる。
【0055】
リン酸モノエステルの一例として、下記式(2):
【化2】
で表される構造を有する化合物を例示できる。
【0056】
また、リン酸モノエステルの一例として、下記式(3):
【化3】
(式中、l、m及びnは、それぞれ独立に、1~20の整数である。)
で表される構造を有する化合物も例示できる。
【0057】
上記式(3)中、lは1~20の整数、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数であり、mは1~20の整数、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数であり、nは1~20の整数、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数である。
【0058】
リン含有有機化合物が有する有機構造としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリイミド、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN))、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリシロキサン、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリスルフィド、シリコーン樹脂、アルドース、セルロース、アミロース、プルラン、デキストリン、グルカン、フルクタン、キチン等の化合物に由来する(具体的には、官能基の変性若しくは修飾、又は重合等を経た)構造を有してよい。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアセタール、ポリブテン、及びポリスルフィドから選択されるポリマー骨格を有するリン含有有機化合物は、分解しやすく、焼成後に得られる金属配線中に残渣を残し難いため、好ましい。
【0059】
リン含有有機化合物の具体例としては、市販の材料を用いることができ、具体的には、ビックケミー社製のDISPERBYK(登録商標)-102、DISPERBYK-103、DISPERBYK-106、DISPERBYK-109、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111、DISPERBYK-118、DISPERBYK-140、DISPERBYK-145、DISPERBYK-168、DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、DISPERBYK-187、DISPERBYK-190、DISPERBYK-191、DISPERBYK-193、DISPERBYK-194N、DISPERBYK-199、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2008、DISPERBYK-2009、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2013、DISPERBYK-2015、DISPERBYK-2022、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2152、DISPERBYK-2055、DISPERBYK-2060、DISPERBYK-2061、DISPERBYK-2164、DISPERBYK-2096、DISPERBYK-2200、BYK(登録商標)-405、BYK-607、BYK-9076、BYK-9077、BYK-P105、第一工業製薬社製のプライサーフ(登録商標)M208F、プライサーフDBS等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0060】
分散体及び乾燥塗膜において、分散剤の含有量は、金属粒子及び金属酸化物粒子の合計体積を100体積部としたときに、5体積部以上900体積部以下であり得る。下限値は、好ましくは10体積部以上、より好ましくは30体積部以上、さらに好ましくは60体積部以上である。上限値は、好ましくは480体積部以下、より好ましくは240体積部以下である。
【0061】
質量部に換算すると、金属粒子及び金属酸化物粒子の合計100質量部に対する分散剤の含有量は、1質量部以上150質量部以下であることが好ましい。下限値は、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さら好ましくは10質量部以上である。上限値は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。分散剤の上記含有量が、5体積部以上又は1質量部以上であれば、厚みサブミクロンの薄膜を容易に形成できる。また、分散剤の上記含有量が、10体積部以上又は5質量部以上であれば、例えば厚み数十μmの厚膜を容易に形成できる。分散剤の上記含有量が、30体積部以上又は10質量部以上であれば、曲げてもクラックが入りにくい可撓性の高い乾燥塗膜を得ることができる。また、分散剤の上記含有量が、900体積部以下又は150質量部以下であれば、焼成によって良好な金属配線を得ることができる。
【0062】
分散体中の分散剤の含有率は、全分散体中、0.10質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.20質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。該含有率が20質量%以下である場合、焼成により得られる導電膜において分散剤由来の残渣が多くならず導電性が良好である傾向がある。また、該含有率が0.10質量%以上である場合、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子が凝集せず、良好な分散性を得ることができる。
【0063】
((iii)還元剤)
分散体及び乾燥塗膜は、還元剤を更に含んでよい。還元剤は、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の合成時に用いられたことによって分散体中に残存し、したがって乾燥塗膜中に残存するものであってもよい。還元剤は、好ましくは、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物を含み、より好ましくは、ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物である。分散体が金属酸化物粒子を含み、かつ乾燥塗膜が
【0064】
還元剤を含む場合、乾燥塗膜にレーザ光を照射した際に金属酸化物(例えば酸化銅)が金属(例えば銅)に還元されやすく、また還元後の金属(例えば銅)の低抵抗化が可能となる。乾燥塗膜のうち未露光部(すなわちレーザ光が照射されない領域)には、還元剤が残存する。
【0065】
分散体中及び乾燥塗膜中の還元剤の含有率の、金属粒子及び金属酸化物粒子の合計含有率に対する質量比率は、還元効果を良好に得る観点から、好ましくは、0.0001以上、又は0.0010以上、又は0.0020以上、又は0.0040以上であり、過剰な還元剤の残存を回避して低抵抗の金属配線を得る観点から、好ましくは、0.10以下、又は0.050以下、又は0.030以下である。
【0066】
また、分散体中及び乾燥塗膜中、ヒドラジン及びヒドラジン水和物の合計含有量(ヒドラジン量基準)と、酸化銅の含有量とは、下記関係を満たすことが好ましい。
0.0001≦(ヒドラジン質量/酸化銅質量)≦0.10
【0067】
((iv)分散媒)
分散媒は、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を分散させるため、分散体中及び乾燥塗膜中に含まれるものである。
【0068】
分散媒の具体例としては、アルコール(1価アルコール及び多価アルコール(例えば、グリコール))、アルコール(例えばグリコール)のエーテル、アルコール(例えばグリコール)のエステル等を使用できる。より具体例な例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、ノナン、デカン、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ1,2-プロピレングリコール、グリセロール酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルカーボネート、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0069】
中でも、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の分散性の観点から、炭素数10以下のモノアルコール又は多価アルコールがより好ましい。炭素数10以下のモノアルコールの中でも、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノールがさらに好ましい。これらのアルコールを単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0070】
分散体の固形分率は、0.6質量%以上80質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以上58質量%以下であることがさらに好ましい。分散体の固形分率は、分散体0.5~1.0gを測り取り、空気中60℃で4.5時間加熱をしたときの、加熱後の重量を加熱前の重量で除した値として求めることができる。一態様において、分散体の固形分率は、分散体中の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の含有率に対応する。固形分率が0.6質量%以上80質量%以下である場合、分散体が基材への塗布に適した粘度を有することができる。
【0071】
分散体の粘度は、0.1mPa・s以上100,000mPa・s以下であることが好ましく、0.1mPa・s以上10,000mPa・s以下であることがより好ましく、1mPa・s以上1,000mPa・s以下であることが更に好ましい。粘度が0.1mPa・s以上100,000mPa・s以下である場合、基材に対して分散体をより均一に塗布できる。本開示で、粘度は、E型粘度計で測定される値である。
【0072】
分散体のpHは、分散体中の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子の溶解を防止する観点から、好ましくは、4.0以上、又は5.0以上、又は6.0以上である。pHは、基材へのダメージを低減するという観点から、例えば、10.0以下、又は9.0以下、又は8.0以下であってよい。
【0073】
分散体の表面自由エネルギーは、分散体を基材にムラなく均一に塗布できる点で、好ましくは、10mN/m以上50mN/m以下、又は12mN/m以上35mN/m以下、又は15mN/m以上25mN/m以下である。本開示で、表面自由エネルギーは、接触角計を用いたペンダントドロップ法で測定される値である。
【0074】
乾燥塗膜の厚みは、低抵抗でかつ機械特性に優れる金属配線を容易に製造する観点から、好ましくは、0.1μm以上、又は0.5μm以上、又は1.0μm以上であり、微細サイズの金属配線を高精度で製造する観点から、好ましくは、50μm以下、又は25μm以下、又は10μm以下であってよい。
【0075】
[基材]
基材は、金属配線が配置される面を構成する。基材の材質は、レーザ光により形成された金属配線間での電気絶縁性を確保するため、絶縁材料であることが好ましい。ただし、基材の全体が絶縁材料であることは必ずしも必要がない。金属配線が配置される面を構成する部分だけが絶縁材料であれば足りる。
【0076】
また、基材の材質は、レーザ光を照射したときに基材がレーザ光により焼けて煙が発生することを防ぐため、耐熱温度が60℃以上の材質であることが好ましい。基材は単一の素材から構成される必要は無く、耐熱温度を高くするために、例えば樹脂にグラスファイバーなどを添加していてもよい。
【0077】
基材の、乾燥塗膜が配置される面は、平面又は曲面であってよく、また段差等を含む面であってもよい。基材は、より具体的には、基板(例えば、板状体、フィルム又はシート)、又は立体物(例えば、筐体等)であってよい。板状体は、例えば、プリント基板等の回路基板に用いられる支持体である。フィルム又はシートは、例えば、フレキシブルプリント基板に用いられる、薄膜状の絶縁体であるベースフィルムである。
【0078】
立体物の一例としては、携帯電話端末、スマートフォン、スマートグラス、テレビ、パーソナルコンピュータ等の電気機器の筐体が挙げられる。また、立体物の他の例としては、自動車分野では、ダッシュボード、インストルメントパネル、ハンドル、シャーシ等が挙げられる。
【0079】
基材の具体例として、例えば、無機材料からなる基材(以下、「無機基材」)、又は樹脂からなる基材(以下、「樹脂基材」という)が挙げられる。
【0080】
無機基材は、例えば、ガラス、シリコン、雲母、サファイア、水晶、粘土膜、及び、セラミックス材料等から構成される。セラミックス材料は、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、イットリア及び窒化アルミニウム、並びに、これらのうち少なくとも2つの混合物から選ばれる。また、無機基材としては、特に光透過性が高い、ガラス、サファイア、水晶等から構成される基材を用いることができる。
【0081】
樹脂基材としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)(PA6、PA66等)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PENt)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、シクロオレフィンポリマー(COP)、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、及びシリコーン樹脂等から構成される支持体を用いることができる。
【0082】
また、上記以外に、例えばセルロースナノファイバーを含有する樹脂シートを基材として用いることもできる。
【0083】
特に、PI、PET及びPENからなる群から選択される少なくとも一種は、金属配線との密着性に優れ、且つ、市場流通性が良く低コストで入手可能であり、事業上の観点から有意であり、好ましい。
【0084】
さらに、PP、PA、ABS、PE、PC、POM、PBT、m-PPE及びPPSからなる群から選択される少なくとも一種は、特に筐体である場合、金属配線との密着性に優れ、また、成型性や成型後の機械的強度に優れる。更に、これらは、金属配線を形成するときのレーザ光照射等にも十分耐えうる耐熱性も有しているため、好ましい。
【0085】
また、立体物の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0086】
基材の、乾燥塗膜がその上に配置される面の算術平均表面粗さRaは、乾燥塗膜と基材とを良好に密着させて金属配線を安定的に形成する観点から、好ましくは、70nm以上、又は100nm以上、又は150nm以上であり、未露光部の良好な現像性の観点から、好ましくは、10000nm以下、又は5000nm以下、又は1000nm以下である。本開示で、算術平均表面粗さRaは、触針式表面形状測定器を用いて測定される値である。
【0087】
樹脂基材の荷重たわみ温度は、400℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。荷重たわみ温度が400℃以下の基材は、低コストで入手可能であり、事業上の観点から優位であり、好ましい。荷重たわみ温度は、樹脂基材の取扱い性の観点から、好ましくは、70℃以上、又は80℃以上、又は90℃以上、又は100℃以上である。本開示の荷重たわみ温度は、JIS K7191に準拠して得られる値である。
【0088】
基材の厚さは、例えば板状体、フィルム又はシートである場合、好ましくは、1μm~100mm、又は25μm~10mm、又は25μm~250μmである。基材の厚さが250μm以下である場合、作製される電子デバイスを、軽量化、省スペース化及びフレキシブル化でき好ましい。
【0089】
なお、基材が立体物である場合、その最大寸法(すなわち一辺の最大長さ)は、基材の機械的強度及び耐熱性が良好に発現される点で、好ましくは、1μm~1000mm、又は200μm~100mm、又は200μm~5mmである。
【0090】
[金属配線の製造方法の各工程]
図1は、本実施形態に係る金属配線の製造方法の一例を説明する図である。以下、図1を参照しながら、各工程の例示の態様について説明する。
【0091】
(分散体の調製)
一態様においては、塗布工程に先立って分散体を調製する。以下では、酸化第一銅粒子を含む分散体を調製する場合を例に説明する。
酸化第一銅粒子は、例えば下記の方法で合成できる。
(1)ポリオール溶剤中に、水及び銅アセチルアセトナト錯体を加え、一旦有機銅化合物を加熱溶解させ、反応に必要な量の水を更に添加し、有機銅の還元温度に加熱して還元する方法。
(2)有機銅化合物(銅-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン錯体)を、ヘキサデシルアミン等の保護剤の存在下、不活性雰囲気中で、300℃程度の高温で加熱する方法。
(3)水溶液に溶解した銅塩をヒドラジンで還元する方法(図1(a))。
【0092】
上記(1)の方法は、例えば、アンゲバンテ・ケミ・インターナショナル・エディション、40号、2巻、p.359、2001年に記載の条件で行うことができる。
【0093】
上記(2)の方法は、例えば、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ・1999年、121巻、p.11595に記載の条件で行うことができる。
【0094】
上記(3)の方法において、銅塩としては、二価の銅塩を好適に用いることができ、その例として、例えば、酢酸銅(II)、硝酸銅(II)、炭酸銅(II)、塩化銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。ヒドラジンの使用量は、銅塩1モルに対して、0.2モル~2モルとすることが好ましく、0.25モル~1.5モルとすることがより好ましい。
【0095】
銅塩を溶解した水溶液には、水溶性有機物を添加してもよい。該水溶液に水溶性有機物を添加することによって該水溶液の融点が下がるので、より低温における還元が可能となる。水溶性有機物としては、例えば、アルコール、水溶性高分子等を用いることができる。
【0096】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等を用いることができる。水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体等を用いることができる。
【0097】
上記(3)の方法における還元の際の温度は、例えば-20℃~60℃とすることができ、-10℃~30℃とすることが好ましい。この還元温度は、反応中一定でもよいし、途中で昇温又は降温してもよい。ヒドラジンの活性が高い反応初期は、10℃以下で還元することが好ましく、0℃以下で還元することがより好ましい。還元時間は、30分~300分とすることが好ましく、90分~200分とすることがより好ましい。還元の際の雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気であることが好ましい。
【0098】
上記(1)~(3)の方法の中でも、(3)の方法は操作が簡便で、且つ、粒子径の小さい粒子が得られるので好ましい。
【0099】
次いで、反応液を上澄みと沈殿物とに遠心分離し(図1(b))、酸化銅粒子を沈殿物として回収する。
【0100】
一方、酸化銅粒子として、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、イーエムジャパン社より販売されている平均一次粒子径18nmの酸化第一銅粒子が挙げられる。
【0101】
次いで、酸化銅粒子に、分散媒、及び一態様においては分散剤を加え、例えば、ホモジナイザのような公知の方法で撹拌して、酸化銅粒子を分散媒に分散させる(図1(c))。
【0102】
なお、分散媒によっては、酸化銅粒子が分散しにくく、分散が不充分な場合がある。このような場合は、例えば、酸化銅粒子が分散しやすいアルコール類、例えば、ブタノールなどを用い、酸化銅を分散させた後、所望の分散媒への溶媒置換と所望の濃度への濃縮を行うことが好ましい。一例として、限外濾過(UF)膜で濃縮する方法、並びに、所望の分散媒による希釈及び濃縮を繰り返す方法が挙げられる。
例えば以上のような手順で、目的の分散体を得ることができる(図1(d))。
【0103】
(塗布工程)
本工程では、基材の表面に分散体を塗布して分散体層を形成する(図1(e))。分散体層の形成方法は、特に限定されないが、ダイコート、スピンコート、スリットコート、バーコート、ナイフコート、スプレーコート、ディップコート等の塗布法を用いることができる。これらの方法を用いて、基材上に均一な厚みで分散体を塗布することが望ましい。
【0104】
(乾燥工程)
本工程では、基材と当該基材上に形成された分散体層とを乾燥させて乾燥塗膜を形成する(図1(f))。乾燥条件は、乾燥塗膜の固形分率が所望の範囲(一態様において60質量%以上99質量%以下)に制御されるように調整してよい。
【0105】
乾燥温度は、乾燥の時間を短縮でき、工業的な生産性を高めることができる点で、好ましくは、40℃以上、又は50℃以上、又は60℃以上であり、基材(特に樹脂基材)の変形を抑制できる点で、好ましくは、120℃以下、又は110℃以下、又は100℃以下、又は90℃以下である。乾燥時間は、分散体層中の分散媒の過度な揮発を防止して、乾燥塗膜の固形分率を所望以上に制御し、これにより現像時の乾燥塗膜の分散を容易にする(すなわち現像性を良好にする)観点から、好ましくは、8時間以下、又は4時間以下、又は2時間以下であり、乾燥塗膜に含まれる微量な分散媒が基材(特に樹脂基材)と反応し、当該基材が溶解して乾燥塗膜中に拡散し乾燥塗膜と基材との結合が強まり、現像性が悪化することを抑制できる点、及び、後述するレーザ光照射工程で形成された金属配線に含まれる有機成分の含有率を低減し、低抵抗の金属配線を製造できる点で、好ましくは、10分以上、又は20分以上、又は30分以上である。乾燥圧力は、典型的には常圧であってよい。工業的な生産性を高めることができる点で、減圧を行ってもよく、好ましくは、ゲージ圧で、-0.01MPa以下、又は-0.03MPa以下であってよい。ゲージ圧は、分散媒を緩やかに揮発させて良好な膜質の乾燥塗膜を形成する観点から、好ましくは、-0.10MPa以上、又は-0.08MPa以上であってよい。
上記のような乾燥工程によって、基材と当該基材上に配置された乾燥塗膜とを有する乾燥塗膜付構造体を形成できる。
【0106】
(保管工程)
一態様においては、上記乾燥塗膜付構造体を所定時間保管する保管工程を行ってもよい。保管工程は、好ましくは、保管温度0℃以上40℃以下、かつ相対湿度20%以上70%以下の環境下で行う。保管温度は、より好ましくは0℃以上30℃以下であり、相対湿度は、より好ましくは30%以上50%以下である。乾燥塗膜付構造体を保管する際には、塗膜成分の変質、及びマイグレーションが生じる場合があり、マイグレーションは金属配線の短絡を招来する。保管温度及び相対湿度が上記範囲である場合、乾燥塗膜が安定的に保管されることで、塗膜成分の変質及びマイグレーションを抑制できる。保管時の圧力は、典型的には常圧であってよいが、減圧を行ってもよく、好ましくは、ゲージ圧で、-0.01MPa以下、又は-0.03MPa以下であってよい。ゲージ圧は、保管工程中に乾燥塗膜の膜質を安定的に維持する観点から、好ましくは、-0.10MPa以上、又は-0.08MPa以上であってよい。
【0107】
乾燥塗膜付構造体の保管時間は、乾燥工程時の熱を放冷でき、かつ、空気中の水分を乾燥塗膜が吸湿することによる塗膜組成の変化を抑制して後述のレーザ光照射工程でのレーザ照射によって形成される金属配線の抵抗値のばらつきを抑制できる点で、好ましくは、10分以上、又は20分以上、又は30分以上であり、乾燥塗膜中に含まれる微量な分散媒が基材(特に樹脂基材)と反応し、基材が溶解及び乾燥塗膜中に拡散して乾燥塗膜と基材との結合が強くなることによる、現像性の悪化を防止できる点で、好ましくは、3日以下、又は2日以下、又は1日以下である。
【0108】
(レーザ光照射工程)
本工程では、乾燥塗膜に対してレーザ光を照射して(図1(g))、基材と、当該基材上に配置された、導電部(露光部)及び非導電部(未露光部)を有する膜とを含む導電部付構造体を形成する(図1(h))。当該導電部は金属配線として形成される。例えば、酸化銅粒子を含む分散体を用いる場合には、レーザ光照射工程において、乾燥塗膜中の酸化銅を還元して銅粒子を生成させると共に当該生成された銅粒子同士の融着による一体化が生じる条件下で加熱処理を施し、金属配線を形成する。
【0109】
レーザ光照射には、レーザ光照射部を有する公知のレーザ光照射装置を用いてよい。レーザ光は、高強度の光を短時間露光し、基材上に形成した乾燥塗膜を短時間高温に上昇させ、焼成できる点で好ましい。レーザ光方式は、焼成時間を短時間にできるため基材へのダメージが少なく、耐熱性が低い基材(例えば樹脂フィルム基板)への適用も可能である点で有利である。また、レーザ光方式は、波長選択の自由度が大きく、乾燥塗膜の光吸収波長及び/又は基材の光吸収波長を考慮して波長を選択できる点でも有利である。
【0110】
更に、レーザ光方式によれば、ビームスキャンによる露光が可能であるため、露光範囲の調整が容易であり、例えば、マスクを使用せず、乾燥塗膜の目的の領域のみへの選択的な光照射(描画)が可能である。
【0111】
レーザ光源の種類としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、YVO(イットリウムバナデイト)、Yb(イッテルビウム)、半導体レーザ(GaAs,GaAlAs,GaInAs)、炭酸ガスなどを用いることができる。レーザとしては、基本波だけでなく必要に応じ、高調波を取り出して使用してもよい。
【0112】
レーザ光の中心波長は、350nm以上、600nm以下であることが好ましい。特に、金属酸化物として酸化第一銅を用いる場合、酸化第一銅は、上記範囲の中心波長を有するレーザ光を良好に吸収するため均一に還元され、低抵抗の金属配線を形成し得る。
【0113】
レーザ光は、ガルバノスキャナーを通して乾燥塗膜に照射されることが好ましい。ガルバノスキャナーによってレーザ光を乾燥塗膜上に走査することで、任意の形状の金属配線を得ることができる。
【0114】
レーザ光の照射出力は、所望の焼成(例えば酸化第一銅の還元)を効率よく行う観点から、好ましくは、100mW以上、又は200mW以上、又は300mW以上であり、レーザ光の過度な出力に起因するアブレーションによる金属配線の破壊を抑制して低抵抗の金属配線を得る観点から、好ましくは、1500mW以下、又は1250mW以下、又は1000mW以下である。
【0115】
一態様においては、レーザ光を乾燥塗膜上の所望の位置に繰り返し走査してよい。この場合、レーザ光の移動量は、隣接する走査線を互いに重複させるような移動量に設定することが好ましい。図2は、本実施形態に係る金属配線の製造方法におけるレーザ光の重複照射について説明する模式図である。図2を参照し、第1の走査線R1と、それに隣接する第2の走査線R2とが、互いに重複している。これにより、第1の走査線R1と第2の走査線R2とが重複するオーバーラップ領域において蓄熱量が大きくなるため、銅粒子の焼結度を高め、その結果、金属配線の抵抗値をより低くできる。
【0116】
オーバーラップ率Sは、レーザ光の第1の走査線R1の幅S1と、第2の走査線R2が走査長方向と垂直な方向において第1の走査線R1と重なる幅S2とから、下記式で求めることができる。
S=S2/S1×100(%)
【0117】
オーバーラップ率は、5%~99.5%の範囲であることが好ましく、10%~99.5%の範囲であることがより好ましく、15%~99.5%の範囲であることがさらに好ましい。オーバーラップ率が5%以上であることにより金属配線の焼結度を高めることができ、かつ煙の発生量を抑制できる。99.5%以下であることにより工業的に実用性のある速度でレーザ光を走査長方向と垂直の方向に移動させながら乾燥塗膜を焼結できる。上記範囲のオーバーラップ率によれば、例えば上記範囲を下回るオーバーラップ率と比べて金属配線の焼結度を高くできるため、脆くなく堅い金属配線を製造できる。これにより、例えば、金属配線をフレキシブル基板上に形成して曲げた際にも、金属配線が割れることなくフレキシブル基板に追従できる。
【0118】
(現像工程)
本工程では、乾燥塗膜のうち未露光部を現像液で現像除去する(図1(i))。現像の形態は特に限定されるものではない。例えば、導電部付構造体を現像液に浸漬して振とうしても良いし、導電部付構造体を現像液に浸漬した後に超音波装置を用いて超音波を照射しても良いし、スプレー等で現像液を導電部付構造体に直接吹き付けても良い。
【0119】
導電部付構造体を現像液に浸漬して現像を行う場合は、現像液を入れ替えることによって現像操作を2回以上繰り返すことが好ましい。現像液を入れ替えることで、塗膜が現像液中に分散する効果を高め、現像性をより良好にできる。
【0120】
導電部付構造体を現像液に浸漬し、超音波装置を用いて超音波照射を行う場合、超音波の照射時間は、1分以上30分以下であることが好ましい。1分以上照射を行うと、基材に付着した塗膜を分散させる効果が高く、30分以下であると、金属配線へのダメージを抑制できる。
【0121】
また、現像工程において、水による洗浄、次いで本開示の(すなわち分散剤を含む)現像液による洗浄を行うと、より現像性が向上する。水洗浄及び/又は現像液洗浄の際に超音波装置を用いると、現像性がさらに向上する。
【0122】
現像工程においては、導電部付構造体の基材を保持する治具を用いることが好ましい。治具の形状は特に限定されるものではないが、現像操作を行う際に、現像液を収容する容器の底面、側壁面等と導電部付構造体とが接触したり、複数の導電部付構造体を同時に現像する場合に当該構造体同士が接触したりすることによる金属配線の損傷又は脱落を防止できる形状が望ましい。治具は、例えば、導電部付構造体を1つずつ保持する窪みを有する治具、構造体を保持するためのクリップ等であってよい。
【0123】
図3~5は、本実施形態に係る金属配線の製造方法の現像工程において導電部付構造体を保持する治具の一例を示す模式図である。図3は、容器11内に、ラック部12aを有する治具12を配置し、ラック部12a上に、基材13aと照射後塗膜13b(すなわち導電部と非導電部とを有する膜)とを有する導電部付構造体13を載置する例を示している。図4は、容器21内に、窪み部22aを形成する治具22を配置し、窪み部22a内に、立体形状の基材23aと、照射後塗膜23bとを有する導電部付構造体23を挿入する例を示している。図5は、容器31が、窪み部32aを形成する治具32部位を有することで治具としても機能し、窪み部32a内に、立体形状の基材33aと、照射後塗膜33bとを有する導電部付構造体33を挿入する例を示している。図4及び5に示す窪み部22a,32aは、立体形状の基材を用いる場合に特に有用である。
【0124】
特に、現像に際して導電部付構造体に超音波を照射する場合、図3に示すラック部12a、並びに図4及び5に示す窪み部22a,32aは、導電部付構造体同士の接触を良好に防止する。
【0125】
治具は、導電部付構造体を良好に保持しつつ現像液と導電部付構造体との接触は妨げない構造、例えばメッシュ状構造であることがより好ましい。
【0126】
更に、治具は、導電部付構造体が現像液中で浮き上がるのを防止するための蓋等、所望に応じた任意の部材又は形状を有してよい。
【0127】
(再生分散体調製工程)
一態様において、本開示の分散体は、現像工程で現像に用いられた後の現像液(すなわち使用済現像液)を用いて調製された再生分散体であってよい。一態様において、金属配線の製造方法は、現像工程の後に、使用済現像液を用いて再生分散体を調製する再生分散体調製工程を含む。使用済現像液を回収して分散体の調製に再利用することは、廃棄物を減らし、コストダウンにつながるため好ましい。分散体の調製時に用いた分散媒と同種の化合物を現像液の溶媒として用いる場合、現像液の再利用がより容易である。
【0128】
現像工程で生じた使用済現像液は、回収後、(1)濃縮、(2)金属粒子及び/又は金属酸化物粒子、分散剤、還元剤、並びに分散媒のうち1つ以上の添加、並びに(3)使用済現像液中の成分の分散処理、のうち1つ以上の処理を経て、再生分散体として回収される。これらの処理の順序は特に限定されるものではないが、(1)、(2)、(3)の順が好ましい。
【0129】
(1)濃縮
使用済現像液の濃縮方法としては、特に限定されるものではないが、エバポレーター等で加熱、減圧を行い蒸発濃縮する方法、分離膜を用いて濃縮する方法、また、凍結乾燥などで一度乾燥させたのち、得られた粉体を再度分散媒に分散させる方法などが挙げられる。濃縮により、固形分率を好ましくは5質量%以上、又は10質量%以上に調整してよく、また好ましくは60質量%以下、又は50質量%以下に調整してよい。
【0130】
(2)添加
使用済現像液に対して、粘度調整及び/又は固形分率調整のために、分散体の含有成分として前述で例示した成分のうち1つ以上、より具体的には、金属粒子及び/又は金属酸化物粒子、分散剤、還元剤、並びに分散媒のうち1つ以上を添加することが好ましい。一態様においては、分散体の所望の含有成分のうち、使用済現像液に含まれないか、使用済現像液に含まれるが所望量を下回る成分を添加してよい。
【0131】
(3)分散処理
高品質の再生分散体を得る観点から、使用済現像液中の含有成分の分散処理を行うことが好ましい。分散方法としては特に限定されるものではないが、例えば使用済現像液を容器に入れて振とう器での振とうを続け、液流れによって分散を促しても良いし、ホモジナイザ等を用いて機械的な分散処理を行っても良い。使用済現像液の安定性の観点から、分散時間は、好ましくは1分以上である。分散時間は長い方がよいが、生産効率の観点から例えば1時間以下であってよい。上記(2)の添加も行う場合、分散処理は、上記(2)の添加の後に実施することが好ましい。
【0132】
上記で例示した処理を介して再生分散体を調製できる。再生分散体の含有成分種、各成分の含有率、及び各種特性(固形分率、粘度、pH、表面自由エネルギー等)は、分散体について前述したのと同様であってよい。
【0133】
<乾燥塗膜付構造体又は導電部付構造体と現像液とを含むキット>
本発明の一態様はまた、前述した本開示の乾燥塗膜付構造体と、前述した本開示の現像液とを含むキットを提供する。乾燥塗膜付構造体は、基材と、当該基材上に配置された本開示の乾燥塗膜とを有する。すなわち当該乾燥塗膜は、一態様において、(i)金属粒子及び/又は金属酸化物粒子、(ii)分散剤、及び(iii)還元剤、を含む。乾燥塗膜の固形分率は、本開示で列挙した範囲であってよく、一態様において60質量%以上99質量%以下である。
本発明の一態様はまた、前述した本開示の導電部付構造体と、前述した本開示の現像液とを含むキットを提供する。導電部付構造体は、基材と、当該基材上に配置された、(1)導電部領域及び(2)非導電部領域を有する膜とを有する。一態様において、(1)導電部領域は本開示の露光部に対応し、(2)非導電部領域は本開示の未露光部に対応する。一態様において、(1)導電部領域は、銅を含む金属配線であり、(2)非導電部領域は、酸化第一銅と還元剤と分散剤とを含む。(2)非導電部領域の固形分率は、本開示で列挙した範囲であってよく、一態様において60質量%以上99質量%以下である。
【0134】
これらキットにおいて、現像液は、一態様において、有機溶媒若しくは水又はこれらの混合物である溶媒と、分散剤とを含む。有機溶媒は、一態様において、アルコール、ケトン、エステル、及びエーテルから成る群から選ばれる1種以上である。現像液中の分散剤の濃度は、本開示で列挙した範囲であってよく、一態様において0.1質量%以上20質量%以下である。
【0135】
これらキットにおいて、乾燥塗膜及び非導電部の各々が含む分散剤は、好ましくはリン含有有機化合物を含む。またこれらキットにおいて、乾燥塗膜及び非導電部の各々が含む還元剤は、好ましくはヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物を含む。
【0136】
上記のような乾燥塗膜付構造体と現像液とを組み合わせて用いることにより、乾燥塗膜へのレーザ光照射によって低抵抗の金属配線を形成するとともに、当該金属配線にダメージを与えることなく未露光部を良好に現像除去して、基材と当該基材上に配置された金属配線とを有する高品質の金属配線付構造体を製造できる。また上記のような導電部付構造体と現像液とを組み合わせて用いることにより、金属配線である導電部にダメージを与えることなく非導電部を良好に現像除去して、高品質の金属配線付構造体を製造できる。
【0137】
<適用例>
以上説明したように、本実施形態に係る金属配線の製造方法、並びに、乾燥塗膜付構造体又は導電部付構造体と現像液との組み合わせによれば、高品質の金属配線付構造体を良好な現像性で製造できる。本実施形態に係る金属配線付構造体は、例えば、電子回路基板等の金属配線材(プリント基板、RFID、自動車におけるワイヤハーネスの代替など)、携帯情報機器(スマートフォン等)の筐体に形成されたアンテナ、メッシュ電極(静電容量式タッチパネル用電極フィルム)、電磁波シールド材、及び、放熱材料等に好適に適用できる。
【実施例
【0138】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0139】
<評価方法>
[基材の算術平均表面粗さRa]
基材の分散体が塗布される面の算術平均表面粗さRaは以下の方法で測定した。触針式表面形状測定器(Bruker社製 DektakXT)と、解析ソフト(Vision64)を用いて、基材の表面粗さを測定した。測定条件は以下のとおりである。
スキャンタイプ:スタンダードスキャン
レンジ:65.5μm
プロファイル:Hills&Valleys
触針タイプ:半径12.5μm
触針力:1mg
長さ:1000μm
保持時間:5秒
解像度:0.666μm/pt
基材表面の形状を測定した後、表面粗さの解析を行った。粗さの解析条件は以下のとおりである。
フィルタータイプ:ガウス回帰
ロンク゛カットオフ:ロンク゛カットオフ適用・スタンダードカットオフ使用(0.25mm)
粗さプロファイル:Ra
パラメータ計算:ISO4287
計算でも用いたサンプル長:自動選択
上記条件で得られた表面粗さの値と、上記測定の方向と直交する方向にて測定した表面粗さの値との平均値を、基材の算術平均表面粗さRaの値とした。
【0140】
[乾燥塗膜の固形分率]
乾燥塗膜の固形分率は以下の方法で評価した。乾燥塗膜0.1mg以上1mg以下をミクロスパーテルで削り取り、TG-DTA(熱重量示差熱分析)装置(SII社製 TG/DTA6200)にセットしたアルミ製パンに入れ、試料重量Wa(g)を測定した。窒素ガスをフローしながら、10℃/分の速度で500℃まで昇温し、減少した重量から、昇温後の試料重量Wb(g)を算出した。
昇温前後それぞれの重量から、下記(式1)によって、塗膜中の固形分率A(質量%)を算出した。
(式1) A = (Wb/Wa)×100
【0141】
[金属配線の抵抗]
レーザ光照射によって作製された金属配線の長手方向両端から0.5mmの位置にテスタを当て、導電性を評価した。
【0142】
[導電部付構造体の現像性]
現像性は以下の方法で評価した。レーザ光照射工程で作製した導電部付構造体(すなわち銅配線とレーザ光が照射されていない乾燥塗膜とを含む構造体)を、当該構造体全体が浸漬される量の現像液(23℃)に浸漬し、超音波装置を用いて1分以上30分以内の時間で超音波を照射し、現像を行った。
【0143】
現像後の基材のうち、金属配線が存在しない部分を10mm角に切り取り、SEM(走査型電子顕微鏡)用試料台にカーボンテープで貼り付け、コーター(真空デバイス社製 MSP-1S)を用いて白金-パラジウムをコートした。この時、コート条件は、プロセスタイム:1.5分に設定した。コート後の試料について、SEM(日立ハイテク社製 FlexSEM1000)と、EDX(エネルギー分散型X線分析)装置(オックスフォード・インストゥルメンツ社製 AztecOne)を用いて、基材表面の塗布金属残存濃度を測定した。この時、電子線の条件は加速電圧:5kV、スポット強度:80、フォーカス位置:10mmとし、試料表面にフォーカスを合わせた後、倍率:200倍にして、視野全体のマッピング分析を行った。マッピング取得の条件は、解像度:256、収集時間:50フレーム、プロセスタイム:高感度、ピクセルデュエルタイム:150μs、フレームライブタイム:0:00:08とした。また、測定元素を、炭素、酸素、窒素、及び塗布された(すなわち分散体が含む)金属元素とし、コーティングに用いた白金及びパラジウムは測定元素に含めないよう指定した。上記の条件で測定を行い、得られた金属元素濃度(質量%)を、現像できずに基材に残った金属の濃度とした。
【0144】
(現像性評価基準)
上記導電部付構造体の現像性評価において、基材に残った金属の濃度が20質量%以下であれば良好、10質量%以下であればより良好、2.0質量%以下であればさらに良好であると判断した。良好は△、より良好は○、さらに良好は◎と表記する。一方、基材に残った金属の濃度が20質量%より大きい場合、又は現像操作において明らかに現像液に塗膜が分散せず基材に塗膜が残存している場合は、×と表記する。
【0145】
<実施例1>
[分散体の製造]
水30240g及び1,2-プロピレングリコール(旭硝子製)13976gからなる混合溶媒中に、酢酸銅(II)一水和物(日本化学産業製)3224gを溶解し、ヒドラジン水和物(日本ファインケム製)940gを加えて攪拌した後、遠心分離を用いて上澄みと沈殿物とに分離した。
【0146】
得られた沈殿物858gに、リン含有有機化合物としてDISPERBYK-145(商品名、ビックケミー社製)(BYK-145)113g及び分散媒として1-ブタノール(三共化学製)916gを加え、ホモジナイザを用いて分散し、酸化第一銅(酸化銅(I))を含む酸化第一銅粒子を含有する分散体を得た。この時、分散体を常圧、60℃で4.5時間加熱した時の固形分残渣(酸化第一銅粒子)は、34.7質量%であった。
【0147】
[分散体の塗布及び乾燥]
幅×奥行き×厚さが50mm×50mm×1mm、表面の算術平均表面粗さRaが139nmのABS基板(基材として)の当該表面にUVオゾン処理を施した後、分散体1mlを滴下し、スピンコート(300rpm、300秒)した後、常圧、60℃で1時間加熱乾燥を行った。乾燥後、常圧、室温23℃、相対湿度40%の室内で10分間保管し、基材上に乾燥塗膜が形成された試料を得た。
【0148】
(乾燥塗膜の固形分率)
前述の方法で固形分率を測定したところ、固形分率Aは76質量%であった。
【0149】
[レーザ光照射]
上記試料を、上面が石英ガラスで構成された、長さ200mm×幅150mm×高さ41mmのボックスに、乾燥塗膜を上側にして配置し、圧縮した空気を分離膜で窒素と酸素に分離し、分離された窒素ガスをボックス内に吹き込み、ボックス内の酸素濃度を0.5質量%以下とした。次いで、ガルバノスキャナーを用いて最大速度25mm/秒で焦点位置を基材表面上で動かしながら、レーザ光(中心波長355nm、周波数300kHz、パルス、出力130mW)を、走査しながら乾燥塗膜に繰り返し照射し、所望とする長さ5mm×幅1mmの寸法の銅金属配線を得た。このとき、レーザ光は、走査線幅方向にオーバーラップ率93.2%となるように移動させながら繰り返し照射した。同様の条件で、さらに2つの銅配線を作製し、計3つの銅配線を得た。
【0150】
[レーザ光照射後の配線抵抗]
得られた金属配線の抵抗を前述の方法で測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ3.3Ω、2.4Ω、5.7Ωであった。
【0151】
[未露光部の現像性]
導電部付構造体を、2質量%のDISPERBYK-145溶液50ml(23℃)に浸漬し、超音波洗浄器(アズワン社製 USD-4R)で5分間超音波照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、50mlの超純水で流水洗浄を行った。その後、新たに2質量%のDISPERBYK-145溶液50ml(23℃)に浸漬し、超音波を15分間照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、50mlの超純水で流水洗浄を行った。
上記現像操作の後、前述の方法で基材上の金属配線が存在しない部分の銅濃度測定を行った結果、2.0質量%であり、評価は◎であった。
【0152】
[現像後の配線抵抗]
現像操作後に前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ21Ω、13Ω、16Ωであった。
【0153】
<実施例2>
[分散体の製造]
水30240g及び1,2-プロピレングリコール(和光純薬製)13976gからなる混合溶媒中に、酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)3224gを溶解し、ヒドラジン水和物(和光純薬製)940gを加えて攪拌した後、遠心分離を用いて上澄みと沈殿物とに分離した。
【0154】
得られた沈殿物1136gに、リン含有有機化合物としてDISPERBYK-145(商品名、ビックケミー社製)(BYK-145)23.9g及び分散媒としてエタノール(和光純薬製)144.7gを加え、ホモジナイザを用いて分散した。さらにエタノールによる希釈と濃縮を繰り返し、これにより、酸化第一銅(酸化銅(I))を含む酸化第一銅粒子を含有する分散体を得た。この時、分散体を常圧、60℃で4.5時間加熱した時の固形分残渣(酸化第一銅粒子)は、51.7質量%であった。さらに、上記分散体85.8gに、BYK-145 4.2g、エタノール 10.0gを加え、ホモジナイザを用いて分散し、常圧、60℃で4.5時間加熱した時の固形分残渣が44.3質量%の分散体を得た。
【0155】
[分散体の塗布及び乾燥]
幅×奥行き×厚さが70mm×70mm×0.1mm、表面の算術平均表面粗さRaが42nmのポリイミド基板(基材として)の当該表面にUVオゾン処理を施した後、分散体1mlを滴下し、スピンコート(700rpm、300秒)した後、常圧、90℃で2時間加熱乾燥を行った。乾燥後、常圧、室温23℃、相対湿度40%の室内で18時間保管し、基材上に乾燥塗膜が形成された試料を得た。
【0156】
(乾燥塗膜の固形分率)
前述の方法で固形分率を測定したところ、固形分率Aは73質量%であった。
【0157】
[レーザ光照射]
レーザ光の出力を602mWとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ光照射を行った。
【0158】
[レーザ光照射後の配線抵抗]
前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ0.17Ω、0.18Ω、0.18Ωであった。
【0159】
[未露光部の現像性]
レーザ光照射後の構造体を、超純水100ml(23℃)に浸漬し、超音波洗浄器(アズワン社製 USD-4R)で5分間超音波照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、50mlの超純水で流水洗浄を行った。その後、2質量%のDISPERBYK-145溶液100ml(23℃)に浸漬し、超音波洗浄器(アズワン社製 USD-4R)で5分間超音波照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、50mlの超純水で流水洗浄を行った。その後、新たに2質量%のDISPERBYK-145溶液100ml(23℃)に浸漬し、超音波を5分間照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、50mlの超純水で流水洗浄を行った。最後に、EtOH溶液100mlに浸漬し、超音波を1分間照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、乾燥した。
上記現像操作の後、前述の方法で基材上の銅濃度測定を行った結果、0.2質量%であり、評価は◎であった。理由は不明であるが、水現像を行った後に分散剤を含む現像液で現像した方が、水現像を行わないよりも現像性が良好であった。
【0160】
[現像後の配線抵抗]
現像操作後に前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ0.18Ω、0.18Ω、0.18Ωであった。
【0161】
<実施例3>
[分散体の製造]
実施例1と同様の方法で分散体を製造した。
[分散体の塗布及び乾燥]
幅×奥行き×厚さが50mm×50mm×1mm、表面の算術平均表面粗さRaが68nmのABS基板(基材として)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で塗布を行った。
(乾燥塗膜の固形分率)
実施例1と同様の方法で評価した。その結果、固形分率は83質量%であった。
[レーザ光照射]
レーザ光の出力を165mWとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ光照射を行った。
[レーザ光照射後の配線抵抗]
前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ2.2Ω、2.5Ω、1.8Ωであった。
[未露光部の現像性]
実施例1と同様の方法で現像を行った。現像操作の後、前述の方法で基材上の銅濃度測定を行った結果、0.6質量%であり、評価は◎であった。
[現像後の配線抵抗]
現像操作後に前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ2.7Ω、2.6Ω、2.2Ωであった。
【0162】
<実施例4>
[分散体の製造]
実施例1と同様の方法で分散体を製造した。
[分散体の塗布及び乾燥]
幅×奥行き×厚さが50mm×50mm×1mm、表面の算術平均表面粗さRaが513nmのABS基板(基材として)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で塗布および乾燥を行った。
(乾燥塗膜の固形分率)
実施例1と同様の方法で評価した。その結果、固形分率は80質量%であった。
[レーザ光照射]
実施例1と同様の方法でレーザ光照射を行った。
[レーザ光照射後の配線抵抗]
前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ1.4Ω、1.3Ω、1.6Ωであった。
[未露光部の現像性]
実施例1と同様の方法で現像を行った。現像操作の後、前述の方法で基材上の銅濃度測定を行った結果、0.9質量%であり、評価は◎であった。
[現像後の配線抵抗]
現像操作後に前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ1.7Ω、1.6Ω、1.6Ωであった。
【0163】
<比較例1>
[分散体の製造]
実施例1と同様の方法で分散体を製造した。
[分散体の塗布及び乾燥]
基材表面の算術平均表面粗さRaが136nmであること以外は、実施例1と同様の方法で塗布を行った。
(乾燥塗膜の固形分率)
実施例1と同様の方法で評価した結果、固形分率は75質量%であった。
[レーザ光照射]
実施例1と同様の方法でレーザ光照射を行った。
[レーザ光照射後の配線抵抗]
前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ1.8Ω、2.0Ω、2.4Ωであった。
[未露光部の現像性]
現像液として超純水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で現像を行った。その結果、基材上の銅濃度は22.1質量%であり、評価は×であった。
[現像後の配線抵抗]
現像操作後に前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ3.1Ω、5.7Ω、24Ωであった。
【0164】
<比較例2>
[分散体の製造]
実施例1と同様の方法で分散体を製造した。
[分散体の塗布]
基材として、幅×奥行き×厚みが50mm×20mm×15mmであり、算術平均表面粗さRaが638nmである凸型表面を有するABS樹脂成形体を用い、スプレーコート法により当該表面への分散体の塗布を行い、コート後に常圧、60℃で1時間加熱乾燥を行った。乾燥後、常圧、室温23℃、相対湿度40%の室内で126日間保管し、基材上に乾燥塗膜が形成された試料を得た。
(乾燥塗膜の固形分率)
実施例1と同様の方法で評価した結果、固形分率は54質量%であった。
[レーザ光照射]
ガルバノスキャナーを用いて最大速度50mm/秒で焦点位置を基材表面上で動かしたこと、レーザ光の出力を401mWとしたこと、配線は1つだけ作製したこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ光照射を行った。
[レーザ光照射後の配線抵抗]
前述の方法で抵抗を測定した結果、3.2Ωであった。
[未露光部の現像性]
現像液として超純水(23℃)を用いて、超音波を5分照射した結果、塗膜に変化が全く見られず、明らかに基材に塗膜が残存しており、評価は×であった。
[現像後の配線抵抗]
現像評価が明らかに×であり、測定を行わなかった。
【0165】
<比較例3>
[分散体の製造]
実施例1と同様の方法で分散体を製造した。
[分散体の塗布及び乾燥]
幅×奥行き×厚さが50mm×50mm×1mm、表面の算術平均表面粗さRaが151nmのABS基板(基材として)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で塗布及び乾燥を行った。乾燥後、常圧、室温23℃、相対湿度40%の室内で4日間保管し、基材上に乾燥塗膜が形成された試料を得た。
(乾燥塗膜の固形分率)
実施例1と同様の方法で評価した。その結果、固形分率は59質量%であった。
[レーザ光照射]
レーザ光の出力を93mWとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ光照射を行った。
[レーザ光照射後の配線抵抗]
前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ6.5Ω、7.1Ω、5.4Ωであった。
【0166】
[未露光部の現像性]
レーザ光照射後の構造体を、超純水100ml(23℃)に浸漬し、超音波洗浄器(アズワン社製 USD-4R)で5分間超音波照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、50mlの超純水で流水洗浄を行った。その後、2質量%のDISPERBYK-145溶液100ml(23℃)に浸漬し、超音波洗浄器(アズワン社製 USD-4R)で5分間超音波照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、50mlの超純水で流水洗浄を行った。その後、新たに2質量%のDISPERBYK-145溶液100ml(23℃)に浸漬し、超音波を5分間照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、50mlの超純水で流水洗浄を行った。最後に、EtOH溶液100mlに浸漬し、超音波を1分間照射した後、構造体をピンセットで引き上げ、乾燥した。
現像操作の後、前述の方法で基材上の銅濃度測定を行った結果、49質量%であり、評価は×であった。
[現像後の配線抵抗]
現像操作後に前述の方法で抵抗を測定したところ、3つの銅配線について、それぞれ6.7Ω、7.3Ω、7.8Ωであった。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明によれば、現像工程において未露光部の金属粒子及び/又は金属酸化物粒子を効率的に除去できるため、例えば、後続のメッキ工程におけるパターン外析出、マイグレーションによる短絡等の問題を回避できる金属配線付構造体を提供できる。
【0168】
このような金属配線付構造体は、電子回路基板等の金属配線材、メッシュ電極、電磁波シールド材、及び放熱材料等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0169】
R1 第1の走査線
R2 第2の走査線
S1 幅
S2 幅
11,21,31 容器
12,22,32 治具
12a ラック部
22a,32a 窪み部
13,23,33 導電部付構造体
13a,23a,33a 基材
13b,23b,33b 照射後塗膜
図1
図2
図3
図4
図5