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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】除湿システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20240906BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240906BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240906BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F7/06 R
F24F13/02 D
B01D53/26 230
B01D53/26 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020151479
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045733
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】川上 理亮
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 美志
(72)【発明者】
【氏名】大山 孝政
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美穂
(72)【発明者】
【氏名】中田 拓司
(72)【発明者】
【氏名】谷野 正幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 一正
(72)【発明者】
【氏名】井守 正隆
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-011927(JP,A)
【文献】特開2017-207217(JP,A)
【文献】特開2002-106941(JP,A)
【文献】特開平07-158949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/14
F24F 7/06
F24F 13/02
B01D 53/26
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を除湿して所定空間に供給する除湿システムであって、
排熱によって蓄熱、乾燥させた吸着材をケーシング内に収容し、当該吸着材に空気を通流させることで、当該空気を除湿する非回転式の除湿装置を有し、
前記所定空間に供給するための原料空気の流路から一部を抜き出し、前記除湿装置で除湿した後に前記流路に戻して、当該除湿後の空気と前記原料空気の残りの原料空気とを混合し、
前記混合後の空気を、前記所定空間に供給するようにし、
前記吸着材の吸着性能の低下に伴い、原料空気の流路から抜き出す空気の量を増加させて、前記除湿後の空気の割合を多くすることを特徴とする、除湿システム。
【請求項2】
空気を冷却する冷却器と、空気を加熱する加熱器と、を有し、
前記混合後の空気を、前記冷却器と前記加熱器によって温湿度を調整した後に、前記所定空間に供給するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の除湿システム。
【請求項3】
前記原料空気が流れる流路に接続して一部を抜き出すための抜出流路の接続部と、前記流路の下流側に設定され、除湿後の空気を前記流路に戻すための戻し流路の接続部とを有し、
前記戻し流路の出口は、前記流路内において前記戻し流路の接続部から下流側に向けられていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の除湿システム。
【請求項4】
前記原料空気が流れる流路に接続して一部を抜き出すための抜出流路の接続部と、前記流路の下流側に設定され、除湿後の空気を前記流路に戻すための戻し流路の接続部とを有し、
前記戻し流路の出口から前記流路内に流れ出た除湿後の空気が、前記流路内において上流側に逆流しないように、前記流路内には整流部材が設けられていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の除湿システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を除湿して所定空間に供給する除湿システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車などの車両ボディの塗装についていえば、塗装ブースと呼称される塗装室内の作業環境の悪化や、塗料のミストによる塗装の品質低下等に鑑みて、従来から温湿度が調整された専用の塗装室内で行われている。
【0003】
そのように塗装ブースなどの所定空間内の温湿度を所望の範囲に維持するためには、冷却器を用いて空気の温度を下げて空気中の水分を除去した後、加熱器で加熱して空気を昇温させることが一般的であるが、それに要する冷却エネルギー及び加熱エネルギーを多く必要とする。
【0004】
そのため、従来は空調された空気を一定方向に流しつつ被塗物に塗料を吹き付けて塗装を行うための塗装ブースから排気される多湿空気の一部を回収し、回収した多湿空気の温度及び湿度を調節して再び前記塗装ブースに向けて送気するようにしているものもある。そして湿度を調整(除湿)するにあたっては、冷却器による除湿だけではなく、デシカントローターを備えた循環空気除湿手段を用いているものもある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-121783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記したデシカントローターは、ローターを回転させるモーターなどの回転駆動機器が必要であり、また再生ゾーンを加熱するための熱源がデシカントローター近くに必要となるなど、その分設備が大きくなり、改善の余地があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、従来よりも小型化が可能で、また再生用の加熱の熱源を別途近くに用意する必要がない除湿システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、空気を除湿して所定空間に供給する除湿システムであって、排熱によって蓄熱、乾燥させた吸着材をケーシング内に収容し、当該吸着材に空気を通流させることで、当該空気を除湿する非回転式の除湿装置を有し、前記所定空間に供給するための原料空気の流路から一部を抜き出し、前記除湿装置で除湿した後に前記流路に戻して、当該除湿後の空気と前記原料空気の残りの原料空気とを混合し、前記混合後の空気を、前記所定空間に供給するようにし、前記吸着材の吸着性能の低下に伴い、原料空気の流路から抜き出す空気の量を増加させて、前記除湿後の空気の割合を多くすることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、排熱によって蓄熱、乾燥させた吸着材をケーシング内に収容した非回転式の除湿装置を有し、所定空間に供給するための原料空気の流路から一部を抜き出し、前記除湿装置で除湿した後に前記流路に戻して、当該除湿後の空気と前記原料空気の残りの原料空気とを混合し、前記混合後の空気を、前記所定空間に供給するようにしたので、まずデシカントローターなど回転式の除湿装置と異なり、モーターなどの回転機器が不要であり、それに伴う設備機器が不要である。また原料空気の流路から一部を抜き出して除湿し、その後残りの原料空気と混合するようにしたので、全量を除湿する場合と比べ、ダクト回り、必要なファンもコンパクトにすることが可能である。さらにまたデシカントローターのように再生用の加熱装置をローター近傍に設ける必要がないから、システム全体として小型化することが可能である。加えて、追加する機器はコンパクトで、メインの空調ラインと接続できさえすればよいので、設置レイアウトを自由に設定できるメリットがある。
そして前記吸着材の吸着性能の低下に伴い、原料空気の流路から抜き出す空気の量を増加させて、前記除湿後の空気の割合を多くするようにしたので、運転時間の経過に伴い吸着性能が低下した場合、混合比率を変えることで、所定空間に供給する湿度を所望の値、範囲に維持することが可能である。
【0010】
また空気を冷却する冷却器と、空気を加熱する加熱器と、を有し、前記混合後の空気を、前記冷却器と前記加熱器によって温湿度を調整した後に、前記所定空間に供給するようにしてもよい。これによって、所定空間が厳格な温湿度の調整が必要な場合でも、温湿度の微調整が可能となり、対応可能である。
【0014】
前記原料空気が流れる流路に接続して一部を抜き出すための抜出流路の接続部と、前記流路の下流側に設定され、除湿後の空気を前記流路に戻すための戻し流路の接続部とを有し、前記戻し流路の出口は、前記流路内において前記戻し流路の接続部から下流側に向けられているようにしてもよい。また抜き出し流路の入口を、接続部から上流側に向けることでも同様の効果が得られ、上流側に逆流しても混合されて抜き出されることが防止される。
【0015】
かかる構成をとることで、抜出流路の接続部と戻し流路の接続部とを接近させても、戻し流路からの除湿後の空気が、上流側に逆流して混合されてしまい、その後再び抜出流路から抜き出されることが防止される。
【0016】
さらにまた同様な観点から、前記戻し流路の出口から前記流路内に流れ出た除湿後の空気が、前記流路内において上流側に逆流しないように、前記流路内に整流部材が設けられていてもよい。
【0017】
このような整流部材を設けても、抜出流路の接続部と戻し流路の接続部とを接近させても、戻し流路からの除湿後の空気が、上流側に逆流して混合されてしまい、その後再び抜出流路から抜き出されることが防止される。かかる場合、前記戻し流路の出口の方向と併用してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来よりも小型化が可能で、また再生用の加熱の熱源を別途近くに用意する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態にかかる除湿システムが採用された、自動車用塗装ブースのリサイクルシステムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
図2図1の除湿システムにおける抜き出し用の流路と戻し用の流路の主流路との接続状態を示す断面図である。
図3図1の除湿システムにおける除湿装置の構成の概略を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態について説明すると、図1は、実施の形態にかかる除湿システムDを適用した自動車用の塗装ブースのリサイクルシステム1の構成の概略を示しており、この除湿システムDは、所定空間である無人塗装ブース10に対して、除湿後の空気と原料空気との混合空気を供給するように構成されている。
【0021】
無人塗装ブース10は、有人塗装ブース20に連設されている。これら無人塗装ブース10、有人塗装ブース20は、自動車のボディ2に対してブース内で塗料を用いて塗布するための領域であり、有人塗装ブース20で一次塗装がなされた後、無人塗装ブース10で二次塗装が施される。いずれのブースにおいても浮遊している塗料ミストを回収するために、ミスト回収用の水噴霧シャワーが実施されている。
【0022】
そして無人塗装ブース10、有人塗装ブース20ともブース内の雰囲気を所定の温湿度に維持するため、温度センサ11、21、湿度センサ12、22で温湿度がモニタリングされている。これら各センサからの温湿度信号は、後述の制御装置Cへと出力される。なおこの実施の形態が適用された塗装ラインは、前記したように有人塗装ブース10と無人塗装ブース20を有しているが、もちろん本発明が適用される塗装ラインは、塗装ブースが有人か無人かを問わないものである。
【0023】
一次塗装がなされる有人塗装ブース20には、別に設けられた空調機(図示せず)によって温湿度が調整された給気がダクトなどの流路23を通じて供給される。そして有人塗装ブース20から排気された多湿の空気は、主流路24からブース外へと排出され、その後、後述の除湿システムDの除湿装置40で除湿された空気と混合されて、無人塗装ブース10へと供給される。このような有人塗装ブース20からの排気、無人塗装ブース10への給気は、例えば主流路24に設けられた2台のファン25、26によって行われる。
【0024】
実施の形態にかかる除湿システムDは、主流路24から原料空気となる有人塗装ブース20からの排気の一部を取り出し、取り出した原料空気を除湿した後、主流路24へと戻すように構成されている。以下、除湿システムDについて詳述する。
【0025】
除湿システムDは、主流路24から原料空気の一部を抜き出すためのダクトや配管等によって構成される抜き出し用の流路31(以下、単に流路31ということがある)と、除湿装置40で除湿した後の空気を、主流路24に戻すための戻し用の流路32(以下、単に流路32ということがある)を有している。流路31には、流量計33、主流路24から原料空気の一部を抜き出して除湿装置40に供給するためのファン34、温湿度計35が設けられ、流路31は除湿装置40の入口側に接続されている。ファン34は、インバータ制御が可能である。
【0026】
除湿装置40の出口側には、流路32の一端部が接続されている。流路32には温湿度計36、フィルタ37が設けられている。そして流路32の他端部は、主流路24に接続されている。具体的な接続の様子は、図2に示した通りである。すなわち、抜き出し用の流路31は、主流路24に対して通常の接続がなされているが、戻し用の流路32の出口32aは、主流路24内に入り込んで、主流路24の下流側に向けられている。
【0027】
前記した除湿装置40は、図3に示した構成を有している。すなわち、除湿装置40は、ケーシング41内に、通気性のある仕切り板、例えば通風性を有する部材、例えばパンチングメタル等によって上下に区画し、その間の空間に吸着材Mを充填した充填部42を有している。充填部42の上下には、上側空間43、下側空間44が形成されている。一方で流路31は、上下2つに分岐して分岐流路31a、31bに分かれている。そして分岐流路31aは上側空間43に連通し、分岐流路31bは下側空間44に連通している。分岐流路31a、31bには対応するバルブ31c、31dが設けられている。
【0028】
また流路32の一端部は、上下2つに分岐して分岐流路32a、32bに分かれている。そして分岐流路32aは上側空間43に連通し、分岐流路32bは下側空間44に連通している。分岐流路32a、32bには対応するバルブ32c、32dが設けられている。
【0029】
以上の構成により、抜き出し用の流路31から流れてきた原料空気は、バルブ31c、31dの切り替え操作により、上側空間43または下側空間44へと導入することが可能であり、一方戻し用の流路32についても、バルブ31c、31dの切り替え操作により、上側空間43または下側空間44の空気を流路32へと導出することが可能である。
【0030】
これによって抜き出し用の流路31から流れてきた原料空気を上側空間43に導入して、吸着材Mを通流させて除湿して、下側空間44から戻し用の流路32へと導出させたり、あるいはその流れを逆にして、抜き出し用の流路31から流れてきた原料空気を下側空間44に導入して、吸着材Mを通流させて除湿して、上側空間43を経て戻し用の流路32から導出させることが可能である。
【0031】
実施の形態においては、吸着材Mとして、例えば造粒された吸着材を使用している。この吸着材には、たとえばシリカゲルやゼオライト等公知の吸着材を用いることができ、通風抵抗や熱/物質伝達など、所望の性能を有する吸着材の造粒体を、蓄熱機能を有する吸着剤として用いることができる。かかる場合、非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性粘土からなる複合体、例えばハスクレイ(登録商標)や高分子収着剤の低温再生型吸着材は、従来の吸着材(シリカゲルやゼオライト等)に比べて幅広い湿度帯において水蒸気を吸着でき、高密度な蓄熱機能を有する吸着材として本発明に適している。
【0032】
かかる場合、吸着材Mの除湿、昇温能力は、後述の冷却器50の除湿能力、加熱器60の昇温能力よりも、無人塗装ブース10に供給する空気に要求される温湿度に調整する能力が大きいものであることが好ましい。これによって無人塗装ブース10に供給する空気を、要求される温湿度に調整する際に、冷却器50、加熱器60に投入するエネルギーを抑えて、省エネ効果を高めることができる。
【0033】
また吸着材Mは、除湿装置Dが塗装ブースのリサイクルシステム1に設置される前に予め蓄熱、乾燥されていることが好ましい。すなわち、除湿装置40は、モーター等の回転駆動機器を持たないケーシング41内に吸着材Mを充填したシンプルな構成であるため、塗装ブースのリサイクルシステム1に設置が容易であり、また車両等によって運搬が可能である。そのため、たとえば塗装ブースから離れた場所にて吸着材Mを加熱して蓄熱、乾燥させ、その後に塗装ブースのリサイクルシステム1の所定位置に設置することが可能である。また塗装ブースから離れた場所にて吸着材Mを蓄熱、乾燥させることができるから、例えば工場など排熱が発生する場所にて、当該排熱によって吸着材Mを加熱して蓄熱、乾燥させることで、極めて省エネ効果が高くなる。なおその熱源は、そのような排熱に限らず、例えば太陽熱などに求めてもよい。
【0034】
もちろん塗装ブース近くに排熱等の熱源がある場合には、除湿装置40を設置した後、塗装ブース近傍の当該熱源から、ダクト等によって除湿装置40内に収容されている吸着材Mに対して熱を供給して蓄熱、乾燥させ、吸着機能を発揮させるようにしてもよい。
【0035】
前記した抜出用の流路31と、戻し用の流路32は、主流路24に設けられたフィルタ27、28間に接続されている。またファン25の出口側には温度センサ29が設けられている。
【0036】
主流路24における戻し用の流路32の接続部の下流側には、主流路24内を流れる空気を冷却する冷却器50と、冷却器50によって降温した空気を加熱する加熱器60が設けられている。
【0037】
本実施の形態では、冷却器50は冷却コイルであり、例えばポンプ51によって往管52から冷却水が冷却コイル内に導入され、主流路24内の空気と熱交換した後、還管53から冷却水源(図示せず)へと戻される。往管52には入口側の温度センサ54が設けられ、還管53には出口側の温度センサ55が設けられている。
【0038】
加熱器60は加熱コイルであり、例えばポンプ61によって往管62から加熱コイル内に温水が導入され、主流路24内の空気と熱交換した後、還管63から温水水源(図示せず)へと戻される。往管62には入口側の温度センサ64が設けられ、還管63には出口側の温度センサ65が設けられている。
【0039】
そして冷却器50、加熱器60を経て温湿度調整された空気は、ファン26によって無人塗装ブース10へと主流路24を通じて供給される。また無人塗装ブース10内の雰囲気は、排気ファン71によって、排気流路72から系外へと排気されるようになっている。
【0040】
制御装置Cは、除湿システムDにおける各種部材、機器を制御するように構成されている。たとえば、ファン25、26、34の風量制御、バルブ31c、31d、32c、32dの切り替え操作、冷却器50の温度制御、加熱器60の温度制御を行うことができる。また制御にあたっての指標については、例えば無人塗装ブース10内の温度センサ11、湿度センサ12、主流路24における温度センサ29、抜き出し用の流路31における流量計33、温湿度計35、戻し用の流路32における温湿度計36からの各データを組み合わせたものに基づいて、前記した各部材、機器を制御するように構成されている。かかる場合の制御については、PID制御、フィードフォワード制御が条件、制御対象に応じて実施される。
【0041】
実施の形態にかかる除湿システムD並びに当該除湿システムDを採用した自動車用塗装ブースのリサイクルシステム1は以上のように構成されており、塗装対象となる自動車のボディ2は、まず有人塗装ブース20で一次塗装がなされ、その後に無人塗装ブース10に移送されて二次塗装が施される。
【0042】
無人塗装ブース10から排気される空気は、噴霧された塗料回収用のミストによって低温多湿となっている。この低温多湿の空気(原料空気)は、主流路24を通じて流れていき、まずフィルタ27によって清浄化される。そして清浄化された空気のうちの一部は、図2にも示したように、抜き出し用の流路31を経て、除湿装置40へと供給される。
【0043】
除湿装置40では、図3に示したように、流路31から送られてきた低温多湿の空気(原料空気)が、例えば上側空間43に導入され、充填部42に充填されている吸着材Mを通過して、下側空間44へと流れていく。このとき充填部42に充填されている吸着材Mは、予め蓄熱、乾燥させているから、低温多湿の空気の水分は除去され、かつ昇温する。このようにして吸着材Mによって除湿された空気は、フィルタ37を経て清浄化された後、主流路24へと戻され、一部を吹き出した後の低温多湿の空気と主流路24内で混合される。
【0044】
このとき、抜き出し用の流路31は、主流路24に対して通常の接続がなされているが、戻し用の流路32の出口32aは主流路24内に入り込んで、主流路24の下流側に向けられているので、抜き出し用の流路31と戻し用の流路32とを、近接させて主流路24に接続しても、流路32から流れてくる除湿後の空気が上流側に逆流して、低温多湿の空気と混ざることはない。したがって、抜き出し用の流路31と戻し用の流路32の各主流路24に対する接続部を接近させることができる。例えば図2に示した抜き出し用の流路31と戻し用の流路32との間の距離Lを短くすることができる。
【0045】
これによって、主流路24に対する抜き出し用の流路31と戻し用の流路32のダクト回り、配管回りをコンパクトにすることが可能である。また前記した非回転型の除湿装置40の構成と相まって、除湿システムD自体を、小型化することができる。したがって、従来既存の設備に対しても適用が容易である。
また従来の冷却コイルやデシカントローターを備えた除湿装置を用いて大きく湿度を落とすにはそれなりの規模になるが、本実施の形態では、リサイクルシステム1に必要な除湿関連の設備機器は、極めてコンパクトになっている。すなわち、従来の冷却コイルの場合にはコイル自体のサイズアップが必要であり、デシカントローターの場合には混流の課題があり、蓄熱材への圧損を低くする必要から大きくサイズアップする必要があった。これに対し、本実施の形態では、従来よりも除湿効率が高いため、設備規模を大幅に縮小できるので、これら従来の設備よりも極めてコンパクトにすることが可能になっている。
【0046】
なお戻し流路32の出口32aから主流路24内に流れ出た除湿後の空気が、主流路24内において上流側に逆流しないように、主流路24内に整流板や邪魔板などの整流部材を設けるようにしてもよい。このような整流部材を設けることで、抜き出し用の流路31と戻し用の流路32とを接近させた場合であっても、戻し流路32からの除湿後の空気が、逆流して抜き出し用の流路31の上流で原料空気である低温多湿の空気と混合されることを防止できる。また抜き出し用の流路31と戻し用の流路32との間の距離Lを短くして、主流路24に対する抜き出し用の流路31と戻し用の流路32のダクト回り、配管回りをコンパクトにすることが可能である。もちろん図2に示した例から、さらに整流部材を付加してもよい。
【0047】
戻し用の流路32から流れてきた高温低湿の空気と、低温多湿の原料空気とは、主流路24内で混合された後、冷却器50によって湿度調整がなされる。その後、下流側の加熱器60によって温度調整がなされる。このようにして温湿度調整がなされた空気は、ファン26によって無人塗装ブース10へと供給される。なお本実施の形態においては、ファン25の下流側に別途ファン26を設けているので、主流路24内において原料空気である低温多湿の空気と除湿後の高温多湿の空気とを、攪拌させることが可能である。したがって無人塗装ブース10へと供給される空気は、温湿度に偏りのない給気となっており、ブース内の塗装にとって好適である。
【0048】
なお除湿装置40において収容されている吸着材Mはその性質上、運転時間の経過に伴って吸着性能が低下していく可能性がある。これに対応するため、本実施の形態にかかる除湿システムDでは、例えば以下のような方策をとることが可能である。
【0049】
[流路切り替え]
例えば図3に示したように。運転当初は、主流路24から一部抜き出した原料空気を、除湿装置40において上側空間43から吸着材Mを通流して下側空間44へと流すようにしていたが、吸着材Mは層状に積まれているので、上側空間43に近いほど性能の低下が大きく、下側空間44に近い側は性能の低下は小さい。したがって、導入側のバルブ31c、31d及び導出側のバルブ32c、32dを切り替えて、原料空気を下側空間44から導入し、吸着材Mを通流して上側空間43に流すようにすれば、性能の低下に対して手当てすることができる。
【0050】
[混合比率の変化]
吸着材Mの吸着性能が低下すると、それに応じて主流路24からの原料空気の量を抜き出して、より多くの風量を除湿して、戻し用の流路32から主流路24に戻して混合する際の混合比率を変えれば、混合後の絶対湿度を所定の範囲に維持することができる。すなわち、吸着材Mの吸着性能の低下に伴い、抜き出し用の流路から抜き出す空気の量を増加させて、除湿する風量を多くして、炊き出し後の原料空気との混合比率を変える(抜き出して除湿した空気の割合を多くする)ことで、吸着材Mの吸着性能が低下を補うことができる。
【0051】
このような混合比率の制御は、例えば抜き出し用のファン34をインバータ制御することで、これを容易に実現することができる。またそのような制御は。例えば温湿度計35、36の検出結果に基づいた絶対湿度を制御対象として、
ファン34に対してフィードフォワード制御し、その後の調整はPID制御することが提案できる。
【0052】
なお前記した実施の形態にかかる除湿システムDは、所定空間として無人塗装ブース10に対して適用し、原料空気として有人塗装ブース20からの排気を用いたものであつたが、本発明はこれに限らず他の空間に対しても適用可能である。例えば、半導体製造工場における大規模クリーンルームにおいて、湿度調整を必要とする工程において、原料空気を当該クリーンルームからの還気として、その一部を抜き出して除湿し、当該還気に混合するようにしてもよい。この場合、フィルタ27、28、37に高性能フィルタを用いればよい。
【0053】
その他、薬剤製造工場、食品工場、印刷工場など、特に湿度や温湿度管理が厳しい空間に対して、当該空間からの還気や排気の一部を抜き出して除湿し、その後これら還気や排気に混合して当該空間に供給するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、工場等において湿度調整が必要な空間の空調に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 塗装ブースのリサイクルシステム
2 自動車のボディ
10 無人塗装ブース
20 有人塗装ブース
24 主流路
25、26、34 ファン
27、28、37 フィルタ
31 抜き出し用の流路
32 戻し用の流路
33 流量計
35、36 温湿度計
40 除湿装置
41 ケーシング
50 冷却器
60 加熱器
C 制御装置
D 除湿システム
M 吸着材
図1
図2
図3