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特許7550582圧力の拍動性が低減された流体脱気システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】圧力の拍動性が低減された流体脱気システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20240906BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20240906BHJP
   F04B 45/04 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B01D61/00
B01D19/00 H
F04B45/04 J
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020158693
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2021049522
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】62/904,271
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513237308
【氏名又は名称】アイデックス ヘルス アンド サイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ラフ
(72)【発明者】
【氏名】ダン リーク
(72)【発明者】
【氏名】カール シムズ
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-542433(JP,A)
【文献】特開2001-074718(JP,A)
【文献】特表2014-508644(JP,A)
【文献】特開2018-199326(JP,A)
【文献】特表2013-520843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0260969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/44
B01D 19/00 - 19/04
F04B 43/00 - 47/14
DB名 Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を脱気するための方法であって、該方法は、
(a)脱気システムを提供するステップであって、該脱気システムは、
(i)流体入口、流体出口および排気ポートを有するチャンバを画定するモジュールと、
(ii)前記チャンバ内に配置され、前記チャンバを透過側と保持側に分離する気体透過性液体不透過性の膜と、
(iii)前記チャンバの前記透過側を排気するために前記排気ポートに流体接続されたポンプであって、該ポンプは、前記ポンプの吸気フェーズのための第1の運動で作動でき、かつ前記ポンプの排気フェーズのための第2の運動で作動できる駆動要素を備える、前記ポンプと
(iv)前記第1の運動および前記第2の運動で前記駆動要素を作動させるように前記駆動要素に結合されたモータと
を備える、前記脱気システムを提供するステップと、
(b)前記チャンバの前記保持側で前記膜を前記流体と接触させるステップと、
(c)第1の条件で前記モータを制御して前記チャンバの前記透過側を排気し、制御アルゴリズムに従って、前記第1の運動および前記第2の運動における前記駆動要素の速度を変調させることにより、第1の設定点圧力を維持するステップであって、前記制御アルゴリズムは、
/S<1
を含み、ここで、
=前記吸気フェーズでの駆動要素の平均速度、および
=前記排気フェーズでの駆動要素の平均速度
である、前記第1の設定点圧力を維持するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記排気フェーズ中に前記駆動要素の前記第2の運動を達成可能な最大速度で操作するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チャンバの前記透過側で感知された圧力に応答するPID制御方式に従って、前記吸気フェーズ中に前記駆動要素を操作するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記吸気フェーズおよび前記排気フェーズ中前記駆動要素の前記第1の運動を変調させるステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記吸気フェーズ中に一定の速度で前記駆動要素の前記第1の運動を操作するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記駆動要素は、軸線の周りを回転する駆動シャフトを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記軸線の周りの駆動シャフトの回転速度を変調するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポンプは、前記駆動シャフトによって往復駆動されるダイヤフラムを備えた容積式ポンプである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ダイヤフラムは、前記吸気フェーズと前記排気フェーズとの間で往復運動する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポンプは、前記駆動シャフトによって往復駆動されるピストンを備えた容積式ポンプである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記駆動要素の感知された回転位置に応答して前記モータを制御するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記チャンバの前記透過側を前記第1の設定点圧力まで排気するための第2の条件で前記モータを制御するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記駆動要素は、前記第2の条件において一定速度で駆動される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体は、それぞれがそれぞれの蒸気圧を発揮する1つ以上の成分を含み、前記第1の設定点圧力は、前記1つ以上の蒸気圧の合計以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の蒸気圧の合計よりも低い第2の設定点圧力を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
流体入口、流体出口、および排気ポートを有するチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記チャンバを透過側と保持側に分離する気体透過性液体不透過性の膜と、
前記チャンバの前記透過側を排気するために前記排気ポートに流体接続されたポンプであって、前記ポンプは、前記ポンプの吸気フェーズのための第1の運動で作動でき、かつ前記ポンプの排気フェーズのための第2の運動で作動できる駆動要素を備える、前記ポンプと、
前記第1の駆動および前記第2の運動で前記駆動要素を作動させるように前記駆動要素に結合されたモータと、
前記チャンバの前記透過側の圧力を制御するために、感知された状態および入力パラメータに応答して前記モータを操作するための制御システムであって、前記制御システムは、制御アルゴリズムに従って前記駆動要素の速度を変調するために前記モータを制御するように適合されており、前記制御アルゴリズムは、
/S<1
を含み、ここで、
=前記吸気フェーズでの駆動要素の平均速度、
=前記排気フェーズでの駆動要素の平均速度、および
である、前記制御システムと
を備える、流体脱気システム。
【請求項17】
前記感知された状態は、前記チャンバの前記透過側で感知された圧力を含む、請求項16に記載の流体脱気システム。
【請求項18】
前記入力パラメータは、前記チャンバの前記透過側での第1の設定点圧力を含む、請求項17に記載の流体脱気システム。
【請求項19】
前記駆動要素は、軸線の周りを回転する駆動シャフトを備える、請求項16に記載の流体脱気システム。
【請求項20】
前記軸線の周りの前記駆動シャフトの回転速度を変調することを含む、請求項19に記載の流体脱気システム。
【請求項21】
前記感知された状態は、前記駆動要素の感知された回転位置を含む、請求項19に記載の流体脱気システム。
【請求項22】
流体入口、流体出口、および排気ポートを有するチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記チャンバを透過側と保持側に分離する膜と、
前記チャンバの前記透過側を排気するために前記排気ポートに流体接続されたポンプであって、前記ポンプは、前記ポンプの吸気フェーズのための第1の運動で作動でき、かつ前記ポンプの排気フェーズのための第2の運動で作動できる駆動要素を備え、前記ポンプと、
前記第1の駆動および前記第2の運動で前記駆動要素を作動させるように前記駆動要素に結合されたモータと、
前記チャンバの前記透過側の圧力を制御するために、感知された状態および入力パラメータに応答して前記モータを操作するための制御システムであって、前記制御システムは、前記第2の運動とは独立して前記第1の運動を制御する、前記制御システムと
を備える流体脱気システム。
【請求項23】
前記感知された状態に応答するPID制御方式に従って、前記吸気フェーズ中に前記駆動要素の第1の運動を操作することを含む、請求項22に記載の流体脱気システム。
【請求項24】
前記感知された状態は、前記圧力を含む、請求項23に記載の流体脱気システム。
【請求項25】
前記感知された状態は、駆動要素の感知された位置を含む、請求項23に記載の流体脱気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く言えば、流体脱気システムに関し、より具体的には、特に低排気需要用途または操作フェーズにおいて、真空脱気システムの性能および一貫性を改善するための方法および装置に関するものである。本発明は、流体分析システムで利用され得るものなどの、流体脱気チャンバの制御された排気に特に向けられている。
【背景技術】
【0002】
流体脱気システムは、流体中の1つ以上の気体種の存在が望ましくない様々な用途で使用される。このような用途の特定の例は、液体クロマトグラフィーにおける液体移動相を含み、少量の溶存気体の存在でさえ、流体分析の精度および感度を妨げる可能性がある。例えば、液体移動相に溶解した空気は気泡の形で現れ、検出器のノイズおよびドリフトを引き起こす可能性がある。望ましくない気体種は、通常、脱気プロセスによってそのような液体移動相から除去される。
【0003】
膜分離は、液体移動相を脱気するためのクロマトグラフィー用途で一般的に使用される。真空脱気とは、半透膜が保持側および透過側を画定し、脱気する流体が膜の保持側に接触し、透過側を減圧に保つプロセスを指す。液体クロマトグラフィー用途の場合、不活性で気体透過性の膜の第1(保持)側は、溶媒または溶媒の混合物で構成される移動相と接触し、一方、膜の反対側の第2(透過)側は、大気圧が低下している可能性のある気体と接触している。膜の機能は、移動相に溶解した大気気体を、ヘンリーの法則およびドルトンの法則と一致する方法で膜の透過側に拡散させることであり、膜自体は、フィックの拡散の法則に従って動作する。クロマトグラフィー移動相脱気の分野で特に興味深いのは、移動相に溶解する可能性のある酸素、窒素、二酸化炭素などの大気中の固定気体が膜を選択的に通過可能にしながら、移動相の所望の液体成分の移動は膜を通過することから制限される膜の役割である。このような移動の制限は、一般的に膜の選択性と呼ばれる。したがって、移動相の液体成分を排除してこれらの固定気体の通過を可能にする膜材料を選択することが望ましい。
【0004】
真空脱気システムは、典型的には、分離膜によって保持側と透過側に分離されるチャンバを画定するハウジングを備えた脱気モジュールを含む。ハウジングはポートを含み、そのポートを通して真空源は、その排気のためにチャンバの透過側に流体接続することができる。真空ポンプは一例の真空源であり、真空ポンプは、制御システムによって操作されて、設定点圧力などの所望の程度までチャンバの透過側を排気することができる。真空脱気システムの例は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0005】
高圧液体クロマトグラフィー用途のための従来の真空脱気システムは、典型的には、約50~120mmHgの間の透過側圧力で作動する。しかしながら、特定のHPLC移動相脱気用途は、より望ましくは、約200mmHgなどのより高い透過側圧力レベルで実施することができる。従来の真空ポンプ制御プログラムは、圧力設定点を維持するように設定されている場合でさえも、透過側の圧力が大幅に変動する可能性がある。このような圧力変動は、従来、比較的大きなチャンバの容積、分離膜の厚さ、およびチャンバの保持側を通る流体の質量流量のために、脱気性能と一貫性に比較的小さな影響しか与えていなかった。参照により本明細書に組み込まれる特許文献3に記載されているような平板脱気モジュールにおける比較的小容積チャンバの出現、ならびに膜厚の減少および流体の質量流量の減少により、脱気チャンバの透過側での圧力変動は、分析検出システムのベースラインノイズでより明らかになる。透過側圧力の変動により、一貫性のない脱気性能が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,248,157号明細書
【文献】米国特許第6,494,938号明細書
【文献】米国特許第10,143,942号明細書
【文献】米国特許第9,381,449号明細書
【文献】米国特許第9,403,121号明細書
【文献】米国特許出願公開第2019/0091609号明細書
【文献】米国特許出願第62/772,601号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、比較的小容積チャンバを含む、透過側の圧力変動を大幅に低減するように制御される流体脱気システムを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、ポンプの吸気フェーズおよび排気フェーズに正確に対応する真空脱気システムにおける真空ポンプの可動要素の位置特性を動的に確認することである。したがって、そのような可動部品の速度制御は、可動部品の位置と相関し得る。
【0009】
本発明のさらなる目的は、最大出力未満で動作する真空ポンプを備えた真空脱気チャンバ内の真空制御の安定性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、流体の脱気性能は、真空脱気モジュール内の圧力変動を低減することによって高めることができる。設定点圧力は、本明細書に記載されているように、真空脱気制御システムを介してより厳密に順守することができる。特に、真空ポンプの動作速度は、各ポンプサイクル内で変調され、脱気チャンバ内の設定点圧力を維持するための排気要求に最も厳密に対応する。
【0011】
本発明の一実施形態では、流体を脱気するための方法は、流体入口、流体出口、および排気ポートを有するチャンバを画定するモジュールを備えた脱気システムを提供することを含む。気体透過性液体不透過性の膜が、チャンバ内に配置され、チャンバを透過側と保持側に分離し、ポンプが、チャンバの透過側を排気するために排気ポートに流体接続されている。ポンプは、ポンプの吸気フェーズと排気フェーズを駆動する駆動要素を備えたモータを含む。本方法は、チャンバの保持側で膜を流体と接触させることと、第1の条件でポンプを制御してチャンバの透過側を排気し、制御アルゴリズムに従って駆動要素の速度を変調させることにより、第1の設定点圧力を維持することであって、制御アルゴリズムは、
/S<1
を含むこととを含む。ここで、
=吸気フェーズでの駆動要素の平均速度、
=排気フェーズでの駆動要素の平均速度である。
【0012】
別の一実施形態では、流体を脱気するための方法は、吸気フェーズの間のみPID制御方式に従って駆動要素の速度を変調することによって、チャンバの透過側を排気して第1の設定点圧力を維持するようにポンプを第1の条件で制御することを含む。いくつかの実施形態では、駆動要素の速度は、排気フェーズで一定の速度で動作するように調整することができる。
【0013】
本発明の方法は、流体入口、流体出口、および排気ポートを備えたチャンバと、チャンバ内に配置され、チャンバを透過側と保持側に分離する気体透過性液体不透過性の膜とを含む流体脱気システムに組み込むことができる。本システムは、チャンバの透過側を排気するために排気ポートに流体接続されたポンプをさらに含む。ポンプは、ポンプの吸気フェーズおよび排気フェーズを駆動する駆動要素を備えたモータを含む。脱気システムは、好ましくは、チャンバの透過側の圧力を制御するために、感知された状態および入力パラメータに応答してポンプを操作するための制御システムを利用する。制御システムは、制御アルゴリズムに従って駆動要素の速度を変調するように適合されており、制御アルゴリズムは、
/S<1
を含む。ここで、
=吸気フェーズでの駆動要素の平均速度、
=排気フェーズでの駆動要素の平均速度
である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の定速排気ポンプ制御の結果としての圧力変動を示すチャートである。
図2】本発明の流体脱気システムの概略図である。
図3】本発明の流体脱気システムに有用な排気ポンプおよびモータの部分断面図である。
図4】本発明の流体脱気システムの制御下にある脱気モジュール内の減少した圧力変動を示すチャートである。
図5図1図4に示したシナリオでの圧力変動を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、本発明によって表される他の目的、構成、および進歩とともに上に列挙された目的および利点は、本発明の様々な可能な実施形態を代表することを意図する添付の図面の図を参照して説明される詳細な実施形態に関して示される。本発明の他の実施形態および態様は、当業者の把握の範囲内にあると認識される。
【0016】
真空ポンプ制御への従来のアプローチは、ポンプが最初に高速で動作されて、脱気チャンバを圧力設定点に向かって排気する例示的な方式を含む。脱気チャンバ内部の圧力が設定点に近づき始めると、真空ポンプの速度が大幅に低下し、そのような低下した速度で連続的に動作する。理想的には、真空ポンプが低下した速度で連続的に動作している間、脱気チャンバの圧力は一定のままである。しかしながら、前述のように、真空ポンプの吸気/排気サイクルにより、真空ポンプを一定速度で動作させても圧力変動が発生することが見出だされた。図1は、定速真空ポンプで脱気チャンバの圧力がどのように変化するかを示すチャートである。ポンプのサイクル「C」がチャートに示され、ポンプの1つの完全な吸気フェーズと完全な排気フェーズを表している。図示の例では、真空ポンプは、約212rpmの一定速度で動作している。サイクル「C」の最初の点は「C」で示され、これは、ポンプの吸気フェーズの開始であり、その時間の間にポンプは脱気チャンバを能動的に排気する。脱気チャンバ内の圧力は、それに応じて約210mmHgから約190mmHgに低下する。チャートの点「C」は、真空ポンプの吸気フェーズの終了と排気フェーズの開始を示し、ここでは、吸気フェーズ中にポンプによって収集された気体が大気に排出される。ポンプは排気フェーズの間、脱気チャンバを能動的に排気しないため、膜を通ってチャンバの透過側に入る気体、ならびにブリードバルブを通ってチャンバの透過側に入る大気気体により、チャンバ内の圧力が上昇する。点「C」は、サイクル「C」の排気フェーズの終了と、新たなポンプサイクルの吸気フェーズの開始を示す。図1に示されている例示的な従来のシステムにおける各サイクルは、約20mmHgの圧力変動を示している。本発明の制御システムおよび方法は、この圧力変動を最小限に抑える。
【0017】
図2は、脱気モジュール12、モータ16によって駆動されるポンプ14、およびセンサ20によって感知された圧力または駆動要素の位置など感知された状態に応答してモータ16を介してポンプ14を動作させるための制御システム18を含む、本発明の流体脱気システム10を概略的に示す。
【0018】
脱気モジュール12は、流体入口38、流体出口40、および排気ポート42を有するチャンバ34を画定するハウジング32を含む。分離膜44は、チャンバ34内に配置され、チャンバ34を透過側36aと保持側36bに分離する。分離膜44は、流体から気体を分離するのに有効な様々な半透膜のいずれかとすることができる。いくつかの実施形態では、分離膜44は、管状または平面構成の気体透過性液体不透過性の膜とすることができる。しかしながら、分離膜44の他の構成もまた、本発明によって考えられる。特定の一実施形態では、分離膜44は、本出願の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献4および特許文献5に記載されているものとすることができる。本発明の制御システムおよび方法は、透過側の圧力変動が脱気性能に重大な影響を及ぼし得る、平板分離で利用される脱気モジュールなどの比較的小容積脱気モジュール12において特に有用である可能性があると考えられる。
【0019】
脱気モジュール12は、当技術分野で知られているように、様々な構成をとることができる。脱気モジュール12の例示的な構成には、本出願と同じ譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献3および特許文献6に記載されているものが含まれる。
【0020】
ポンプ14は、チャンバ34の透過側36aを排気するために、脱気モジュール12の排気ポート42に流体接続されている。例示的なポンプ14は、2段の直列ダイヤフラムポンプ機構として図3に示されている。マニホルド100は、第1段ヘッド102および第2段ヘッド104を含む。マニホルドは、第1段に関連する吸気逆止弁106および第2段に関連する出口逆止弁108をさらに含む。第1段および第2段は、逆止弁110を介して第1段に取り付けられ、バーブフィッティング112を介して第2段に取り付けられたチューブ109を介して互いに流体の流れで連通している。第1段で溶剤蒸気を排出するために、焼結プラグ114を含むベントフリットを提供してもよい。このブリード機能は通常、吸気行程中の蒸気の蓄積を防ぎ、第1段に入る脱気蒸気へのポンプダイアフラムの曝露を低減し、それによってポンプ14の耐用年数を延ばすために第1段に配置される。以下でさらに説明されるように、第1段の排気行程中、第2段はその吸気行程にあり、それは環境への漏れがほとんどないことを保証する。
【0021】
図示の実施形態では、第2のベントフリット115は、ポンプ14の第2段に提供される。第2のベントフリット115は、ポンプ14の第2段に、特に、出口逆止弁108またはその近くに形成され得る残留溶媒蒸気を排出するために含まれる。第1のベントフリット114と同様に、第2のベントフリット115は、ブリード機能を提供するためにポンプ14の第2段に配置され、それによって有害な溶媒凝縮を減少させる。そのようなベントフリット114、115の使用は、好ましくは、第1および第2段ヘッド102、104の両方を新鮮な空気で掃引して、ポンプ14内で発生する真空に大きな悪影響を及ぼさずに溶媒凝縮を除去する。
【0022】
ダイヤフラム116は、第1段から第2段まで延びる。第1段では、ダイヤフラム116は、ロッド118に形成されたボア122に受け入れられた圧入ピンまたはネジ120によってロッド118に固定される。ワッシャ124およびOリング126は、ダイヤフラム116をロッド118に密閉する。ダイヤフラム116は、同様に第2段でロッド128に固定される。ダイヤフラム116は、不活性材料から形成することができ、クロマトグラフィー用途で一般的な溶媒および蒸気への曝露に耐性がある。
【0023】
ロッド118および128は、駆動部材130に取り付けられた対向する偏心部分またはカム138、140に動作可能に結合されたベアリング134、136で駆動要素130に接続されて示されている。この構成では、駆動部材130の回転は、第1および第2のロッド118、128の往復運動をもたらす。
【0024】
モータ16は、好ましくは、制御手段に応答し、そのオープンループおよび/またはクローズドループ制御を提供する任意の可変速モータとすることができる。モータ16の特定の例には、ブラシレスステッピングモータ、周波数変調モータ、およびパルス幅変調モータが含まれる。駆動要素130は、制御された速度でモータ16によって駆動される。図示の実施形態では、駆動要素130は、軸線311を中心に回転する駆動シャフトである。
【0025】
センサ20は、脱気システム10の1つ以上の状態を感知するように必要に応じて構成することができる。いくつかの実施形態では、センサ20は、チャンバ34の透過側36aで圧力を感知するように構成された圧力センサである。例示的な圧力センサは、圧力レベルと供給電圧に対してレシオメトリックである電圧出力を生成することができる。センサ出力は増幅され、制御システム18のプロセッサに送信されるパルス幅変調信号に変換することができる。センサ20は、回転可能な駆動シャフトの回転位置などの駆動要素130の位置を検出するように追加的または代替的に構成することができる。以下でより詳細に説明するように、可動駆動要素130のその回転位置などの位置は、ポンプ14の吸気フェーズおよび排気フェーズのそれぞれの開始および終了に結び付けることができる。多段真空ポンプ14の場合、吸気フェーズおよび排気フェーズの開始および終了は、ポンプ14の第1段に結び付けることができる。磁気、電磁、光学、および他の既知の位置センサなどの位置センサを脱気システム10のセンサ20に使用することができる。制御システム18は、好ましくは、脱気システム10の感知状態と、入力パラメータとを利用し、入力パラメータに対して感知状態が直接的または間接的に比較されてモータ16への制御信号を生成し、それによって駆動要素130の速度を調整し、それによってチャンバ34の透過側36aの排気速度を調整する。現在の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献7に記載されているように、入力パラメータは、透過側36aの設定点圧力、駆動要素130の位置、および性能較正などの値を含むことができる。1つまたは複数の入力パラメータは、制御システム18にアクセス可能なデータベース内の制御システム18に提供することができるか、またはコンピュータなどのユーザインタフェース22から制御システム18に提供することができる。制御システム18によって利用される入力パラメータは、必要に応じて、静的または動的に更新され得ることが考えられる。
【0026】
制御システム18は、好ましくは、ポンプ14の吸気フェーズおよび排気フェーズの少なくとも1つの間に駆動要素130の速度を変調するようにプログラムされる。本明細書の目的に対して、「吸気フェーズ」という用語は、脱気モジュール12からポンプ14に、または多段ポンプの場合はポンプ14の第1段に気体を引き込むように作用するポンプ14のサイクルの部分を意味することを意図している。いくつかの実施形態では、「吸気フェーズ」は、気体をポンプ14に、または多段ポンプの場合はポンプ14の第1段に吸気するポンプ14のサイクルの部分を意味する。本明細書の目的に対して、「排気フェーズ」という用語は、ポンプ14から、または多段ポンプの場合はポンプ14の第1段から気体を排気するように作用するポンプ14のサイクルの部分を意味する。いくつかの実施形態では、「排気フェーズ」は、ポンプ14から、または多段ポンプの場合はポンプ14の第1段から気体を排出するポンプ14のサイクルの部分を意味する。図3に示されるポンプ14の実施形態を参照した例として、ポンプ14の吸気フェーズは、ロッド118が第1段ヘッド102に隣接するその最上部位置から第1段ヘッド102から遠位のその最下部位置まで下降する間のポンプサイクルの部分として定義することができる。同様に、排気フェーズは、ロッド118が第1段ヘッド102から遠位のその最下部位置から第1段ヘッド102に隣接するその最上部位置まで上昇する間のポンプサイクルの部分として定義することができる。別の一実施形態では、吸気フェーズは、吸気逆止弁106の開放から入口逆止弁106の閉鎖までの間のポンプサイクルの部分として定義することができる。同様に、いくつかの実施形態では、排気フェーズは、出口逆止弁110の開放から出口逆止弁110の閉鎖までの間のポンプサイクルの部分として定義することができる。
【0027】
制御システム18は、好ましくは、ポンプ14の各サイクルの吸気フェーズおよび排気フェーズを独立して制御することができ、特に、ポンプ14の少なくとも選択されたサイクル中に駆動要素130の速度を独立して制御できるようにプログラムされる。いくつかの実施形態では、制御システム18は、ポンプ14の各サイクル中に駆動要素130の速度を独立して制御することができる。
【0028】
制御システム18は、制御アルゴリズムに従って、駆動要素130の速度を変調するようにプログラムすることができ、制御アルゴリズムは、
/S<1
を含む。ここで、
=吸気フェーズでの駆動要素の平均速度、
=排気フェーズでの駆動要素の平均速度である。
【0029】
チャンバ34の透過側36aでの圧力レベルは、吸気フェーズ中に駆動要素130の速度を制御することによって、言い換えれば、吸気フェーズの期間を制御することによって、より正確に制御できることが出願人によって発見された。いくつかの実施形態では、駆動要素130は、吸気フェーズの少なくとも一部の間、固定した速度に制御することができる。駆動要素130は、追加的または代替的に、感知された状態のセンサ20からのフィードバックを使用する比例積分微分(PID)制御方式に従って制御することができる。駆動要素130の速度を変調するための他の制御方式もまた、またはその代わりに、制御システム18によって使用することができる。
【0030】
出願人は、ポンプサイクルの吸気フェーズおよび排気フェーズ中に駆動要素130の速度を独立して制御することにより、脱気チャンバ内の圧力変動を低減できることを発見した。いくつかの実施形態では、吸気フェーズ中の駆動要素30の平均速度は、排気フェーズ中の駆動要素130の平均速度よりも遅い。図4のチャートは、吸気フェーズと排気フェーズとの間のように独立して駆動部材の速度を制御する本発明の例示的な一実施形態を示している。この例では、駆動部材130は、約2~3rpmで吸気フェーズ中にPID制御下で動作し、排気フェーズ中に40rpmの固定速度で動作するように切り替えられた駆動シャフトである。そのような制御方式を使用して、チャンバ34の透過側36aでの圧力変動は、約198mmHg~201.5mmHgの間に低減され、全体の変動振幅は3.5mmHgである。この低減された圧力変動は、約20mmHgの圧力変動振幅をもたらした図1に示されている従来の定速制御方法と比べて有利である。図5のチャートは、従来の定速制御方法と、ポンプサイクルの吸気フェーズおよび排気フェーズの本発明の独立した制御との間の圧力変動性能の違いをグラフで示している。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明の制御システム18は、気体のポンプへの吸気が実際に開始および終了する駆動要素130の位置を特定するために、1つ以上の完全なポンプサイクル中にチャンバ34の透過側36aで感知された圧力を評価するようにプログラムされる。そのような駆動部材の位置は、制御システム18にアクセス可能なデータベースに記録することができるか、またはその代わりに連続的または半連続的に決定することができる。その後、単位時間あたりの駆動部材130の速度を変化させることによって、圧力レベルへの制御を達成することができる。チャンバ34の透過側36aでの圧力の上昇と下降との間の関係のさらなる検査を使用して、吸気フェーズの開始および終了を動的に決定し、それに応じて制御システム18のデータベースで更新することができる。
【0032】
制御システム18は、様々な設定点圧力を維持するために、複数のポンプ条件を使用して、チャンバ34の透過側36aを排気することができると考えられる。例示的な第1の設定点圧力は、分離膜を通る溶媒のパーベーパレーションを最小化するレベルで定義することができる。第1の設定点圧力は、そのような実施形態では、流体の1つ以上の構成要素によって及ぼされる1つ以上の蒸気圧の合計以上とすることができる。制御システム18は、第1の設定点圧力とは異なる第2の設定点圧力を含むことができる。例えば、第2の設定点圧力は、流体の1つ以上の構成要素によって及ぼされる1つ以上の蒸気圧の合計よりも小さくてもよい。
【0033】
図2に示されるように、流体は、脱気モジュール12を通って、チャンバ34の保持側36bで分離膜44に接触するように向けることができ、流体の流れ方向が、矢印によって示されている。脱気モジュール12はまた、チャンバ34の透過側36aならびにそこから下流での溶媒凝縮を減少または防止する手段として、大気気体または他の流体をチャンバ34の透過側36aに入れることを可能にするためのブリードバルブ44を含むことができる。
【0034】
本発明は、特許法に準拠するために、かつ新規の原理を適用し、必要に応じて本発明の実施形態を構築および使用するために必要な情報を当業者に提供するために、本明細書にかなり詳細に記載されている。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正を達成することができることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5