IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7550590トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム
<>
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図1
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図2
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図3
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図4
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図5
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図6
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図7
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図8
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図9
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図10
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図11
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図12
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図13
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図14
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図15
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図16
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図17
  • 特許-トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】トレーサビリティレビュー支援装置、トレーサビリティレビュー支援方法、およびトレーサビリティレビュー支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20240906BHJP
【FI】
G06Q10/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020166781
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059197
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 菜摘子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 潤二
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-348310(JP,A)
【文献】特許第6636667(JP,B1)
【文献】特開2019-061594(JP,A)
【文献】特開2013-033391(JP,A)
【文献】特開2018-200541(JP,A)
【文献】特開平08-235231(JP,A)
【文献】特開2010-039637(JP,A)
【文献】特開2019-028473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトウェア開発のプロセス間のトレーサビリティの対象項目であるトレース対象に関するユーザのレビュー音声を取得し、前記レビュー音声のテキストデータを含む加工済み音声データを作成する音声認識部と、
前記トレース対象のトレース元またはトレース先との対応関係を表す対応情報を含むトレース情報の一覧であるトレーサビリティ情報と、前記加工済み音声データとに基づき、前記ユーザがレビュー中の前記トレース情報を対象トレース情報として抽出する対象トレース認識部と、
前記加工済み音声データに基づき、前記対象トレース情報のレビュー結果を判定し、前記レビュー結果を出力するレビュー結果認識部と、を備え
前記レビュー結果は、レビューの品質を表す数値であるレビュー確度を含み、
前記テキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現の夫々に対応して、異なる数値が割り当てられ、
前記レビュー結果認識部は、前記対象トレース情報に関連する前記テキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現に割り当てられた数値を用いて、前記レビュー確度を算出する、
トレーサビリティレビュー支援装置。
【請求項2】
前記対象トレース認識部は、予め定められた前記トレース情報のレビュー順序に関するルールに基づき、前記トレーサビリティ情報の中から次にレビューすべき前記トレース情報を特定し、前記ユーザに通知する、
請求項1に記載のトレーサビリティレビュー支援装置。
【請求項3】
前記加工済み音声データは、前記テキストデータに紐づけられた固有の発言番号を含み、
前記対象トレース情報は、前記対象トレース情報の作成元の前記加工済み音声データの前記発言番号を含み、
前記レビュー結果認識部は、前記対象トレース情報に含まれる前記発言番号に紐づけられた前記テキストデータに基づき、前記対象トレース情報のレビュー結果を判定する、
請求項1または請求項に記載のトレーサビリティレビュー支援装置。
【請求項4】
前記音声認識部は、前記レビュー音声から声音の情報を抽出し、前記声音の情報を含む前記加工済み音声データを作成し、
前記声音の情報は、声の明るさの情報、声の大きさの情報、話す速度の情報、または流暢さの情報を含み、
前記レビュー結果認識部は、前記加工済み音声データの前記テキストデータに基づき算出した前記レビュー確度を、前記声の明るさの情報、声の大きさの情報、話す速度の情報、または流暢さの情報に基づき修正する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトレーサビリティレビュー支援装置。
【請求項5】
レビュー対象規模から想定レビュー時間を算出するレビュー時間算出部をさらに備え、
前記レビュー結果認識部は、実際のレビュー時間と前記想定レビュー時間との比較結果を出力する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のトレーサビリティレビュー支援装置。
【請求項6】
前記ユーザが指定した前記トレース情報に関する、前記加工済み音声データまたは前記レビューの議事録を含む議事情報を出力する議事情報出力部をさらに備える、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のトレーサビリティレビュー支援装置。
【請求項7】
音声認識部、対象トレース認識部、およびレビュー結果認識部を備えたトレーサビリティレビュー支援装置によるトレーサビリティ支援方法であって、
前記音声認識部が、ソフトウェア開発のプロセス間のトレーサビリティの対象項目であるトレース対象に関するユーザのレビュー音声を取得し、前記レビュー音声のテキストデータを含む加工済み音声データを作成し、
前記対象トレース認識部が、前記トレース対象のトレース元またはトレース先との対応関係を表す対応情報を含むトレース情報の一覧であるトレーサビリティ情報と、前記加工済み音声データとに基づき、前記ユーザがレビュー中の前記トレース情報を対象トレース情報として抽出し、
前記レビュー結果認識部が、前記加工済み音声データに基づき、前記対象トレース情報のレビュー結果を判定し、前記レビュー結果を出力
前記レビュー結果は、レビューの品質を表す数値であるレビュー確度を含み、
前記テキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現の夫々に対応して、異なる数値が割り当てられ、
前記レビュー結果認識部が、前記対象トレース情報に関連する前記テキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現に割り当てられた数値を用いて、前記レビュー確度を算出する、
トレーサビリティレビュー支援方法。
【請求項8】
コンピュータを、
ソフトウェア開発のプロセス間のトレーサビリティの対象項目であるトレース対象に関するユーザのレビュー音声を取得し、前記レビュー音声のテキストデータを含む加工済み音声データを作成する音声認識部と、
前記トレース対象のトレース元またはトレース先との対応関係を表す対応情報を含むトレース情報の一覧であるトレーサビリティ情報と、前記加工済み音声データとに基づき、前記ユーザがレビュー中の前記トレース情報を対象トレース情報として抽出する対象トレース認識部と、
前記加工済み音声データに基づき、前記対象トレース情報のレビュー結果を判定し、前記レビュー結果を出力するレビュー結果認識部と、
として動作させるための、
トレーサビリティレビュー支援プログラムであって、
前記レビュー結果は、レビューの品質を表す数値であるレビュー確度を含み、
前記テキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現の夫々に対応して、異なる数値が割り当てられ、
前記レビュー結果認識部が、前記対象トレース情報に関連する前記テキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現に割り当てられた数値を用いて、前記レビュー確度を算出する、
トレーサビリティレビュー支援プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トレーサビリティレビューの支援に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェアの開発フェーズにおける要求または設計等の各情報の関係性を明確にする手法として、トレーサビリティ(追跡可能性)がある。
【0003】
車載ソフトウェア開発における標準プロセスモデルとして採用されることの多いAutomotive SPICE(Software Process Improvement and Capability dEtermination)では、ソフトウェア開発において各プロセス間のトレーサビリティの対象項目(以下、「トレース対象」と称する)の対応情報(以下、「トレース情報」と称する)について双方向トレーサビリティを確立し、デザインレビュー等でトレース情報について一貫性が確保できていることを検証し、さらに検証結果を文書化するなどしてエビデンスとして残すことが求められている。
【0004】
特許文献1には、音声認識技術等を用いて、デザインレビュー(以下、「レビュー」と称する)における発言内容から他製品に展開可能な有用な知識を抽出する技術が開示されている。また、特許文献2には、音声認識技術等を用いて、会議の参加者に会議に関する情報を提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-28823号公報
【文献】特開2012-227745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大規模なソフトウェア開発では、要求、設計、または試験項目等のトレース対象の数が多く、各トレース情報の検証結果を漏れなく文書化することが困難である。特許文献1および特許文献2に開示された技術は、レビューまたは会議を支援するものであるが、トレーサビリティのレビュー結果を自動的に漏れなく文書化することはできない。
【0007】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、トレーサビリティのレビュー結果を漏れなく文書化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のトレーサビリティレビュー支援装置は、ソフトウェア開発のプロセス間のトレーサビリティの対象項目であるトレース対象に関するユーザのレビュー音声を取得し、レビュー音声のテキストデータを含む加工済み音声データを作成する音声認識部と、トレース対象のトレース元またはトレース先との対応関係を表す対応情報を含むトレース情報の一覧であるトレーサビリティ情報と、加工済み音声データとに基づき、ユーザがレビュー中のトレース情報を対象トレース情報として抽出する対象トレース認識部と、加工済み音声データに基づき、対象トレース情報のレビュー結果を判定し、レビュー結果を出力するレビュー結果認識部と、を備え、レビュー結果は、レビューの品質を表す数値であるレビュー確度を含み、テキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現の夫々に対応して、異なる数値が割り当てられ、レビュー結果認識部は、対象トレース情報に関連するテキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現に割り当てられた数値を用いて、レビュー確度を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、トレーサビリティのレビュー結果を機械的に漏れなく文書化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置の構成図である。
図2】実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置の動作の流れを示す図である。
図3】実施の形態1の加工済み音声データの例を示す図である。
図4】実施の形態1のトレーサビリティ情報の例を示す図である。
図5】実施の形態1の対象トレース情報の例1を示す図である。
図6】実施の形態1の対象トレース情報34の例を示す図である。
図7】実施の形態1のトレーサビリティレビュー結果の例1を示す図である。
図8】実施の形態1のトレーサビリティレビュー結果の例2を示す図である。
図9】実施の形態1のトレーサビリティレビュー結果の例3を示す図である。
図10】実施の形態1の変形例1のトレーサビリティレビュー支援装置の構成図である。
図11】実施の形態1の変形例3の対象トレース情報の例を示す図である。
図12】実施の形態1の変形例4の加工済み音声データの例を示す図である。
図13】実施の形態2のトレーサビリティレビュー支援装置の構成図である。
図14】実施の形態2のトレーサビリティレビュー支援装置の動作の流れを示す図である。
図15】実施の形態3のトレーサビリティレビュー支援装置の構成図である。
図16】実施の形態3のトレーサビリティレビュー支援装置の動作の流れを示す図である。
図17】実施の形態3の議事情報の例を示す図である。
図18】実施の形態3の抽出後議事情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<A.実施の形態1>
<A-1.構成>
図1は実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101を示す構成図である。トレーサビリティレビュー支援装置101はコンピュータであり、ハードウェアとして、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、および通信インタフェース14を備える。プロセッサ11は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0012】
プロセッサ11は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ11は、具体例としては、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0013】
メモリ12は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ12は、具体例としては、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。
【0014】
ストレージ13は、データを保管する記憶装置である。ストレージ13は、具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)である。また、ストレージ13は、SD(登録商標,Secure Digital)メモリカード、CF(CompactFlash)、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD(Digital Versatile Disk)といった可搬記憶媒体であってもよい。
【0015】
通信インタフェース14は、トレーサビリティレビュー支援装置101の外部の装置と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース14は、具体例としては、Ethernet(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)、またはHDMI(登録商標,High-Definition Multimedia Interface)のポートである。
【0016】
ストレージ13には、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23の機能を実現するプログラムが記憶されている。ストレージ13に記憶されたプログラムは、プロセッサ11によりメモリ12に読み込まれ、プロセッサ11によって実行される。これにより、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23の機能が実現する。言い換えれば、プロセッサ11は、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23を備えている。
【0017】
図1では、1つのプロセッサ11が示されているが、トレーサビリティレビュー支援装置101は、プロセッサ11を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23の機能を実現するプログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ11と同じように、プロセッシングを行うICである。
【0018】
<A-2.動作>
図2は、トレーサビリティレビュー支援装置101の動作の流れを示している。以下、図2を参照して、トレーサビリティレビュー支援装置101の動作を説明する。
【0019】
トレーサビリティレビュー支援装置101の動作は、実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援方法と、トレーサビリティレビュー支援プログラムの処理とに相当する。
【0020】
<A-2-1.音声認識部21>
音声認識部21は、通信インタフェース14を介してレビュー音声データ31の入力を受け付ける。レビュー音声データ31は、レビュー参加者であるユーザの、トレーサビリティレビューに関する音声(以下、「レビュー音声」とも称する)のデータである。
【0021】
音声認識部21は、レビュー音声データ31を音声認識することにより加工済み音声データ32を作成する。加工済み音声データ32は、例えばレビュー音声をテキスト化したテキストデータを含む。
【0022】
図3は、加工済み音声データ32の一例を示している。図3において、加工済み音声データ32は、発言番号、発言者、および発言内容を紐づけたデータである。加工済み音声データ32に含まれる発言内容が、レビュー音声のテキストデータである。例えば、発言番号が1の加工済み音声データ32は、参加者aの「要件Aは機能1に紐づいています。」という発言内容をテキスト化したテキストファイルである。
【0023】
具体的には、音声認識部21は、レビュー音声データ31を音声認識し、発言者が参加者aであること、および発言内容が「要件Aは機能1に紐づいています。」であることを認識すると、発言番号1を採番し、発言番号1に発言者の情報と発言内容のテキストデータとを紐づけて、加工済み音声データ32とする。音声認識部21は、レビュー音声データ31を取得する度に、発言番号を採番して加工済み音声データ32を作成する。
【0024】
音声認識部21は、既存の技術を用いて参加者の音声を認識してもよい。また、参加者がトレーサビリティレビュー支援装置101に、直接文字データを入力してもよい。また、トレーサビリティレビュー支援装置101は、音声認識部21が発言を音声認識できなかった参加者またはその発言内容に対して、認識エラーである旨の表示を行い、その都度、参加者がトレーサビリティレビュー支援装置101に直接文字データを入力し、修正を行ってもよい。
【0025】
音声認識部21は、レビュー中に随時、加工済み音声データ32をメモリ12に書き込む。
【0026】
<A-2-2.対象トレース認識部22>
対象トレース認識部22は、通信インタフェース14を介してトレーサビリティ情報33の入力を受け付け、対象トレース情報34をメモリ12に書き込む。
【0027】
対象トレース認識部22は、音声認識部21で作成された加工済み音声データ32と、トレーサビリティ情報33とを基に、対象トレース情報34を作成する。
【0028】
トレーサビリティ情報33は、トレース対象間の対応関係を表すトレース情報をリスト化したものである。図4は、トレーサビリティ情報33の一例を示している。図4において、トレーサビリティ情報33は要件と機能とを紐付けたリストである。要件と機能との対応関係は、要件が一つまたは複数の機能によって満たされることを示している。例えば、図4のトレーサビリティ情報33において、要件Aと機能1とが紐づけられ、要件Bが機能2と機能3とに紐づけられている。これは、要件Aが機能1によって満たされ、要件Bが機能2と機能3とによって満たされることを示している。
【0029】
トレーサビリティ情報33は、ユーザが手動で作成しても良いし、ツールまたはスクリプトによって自動で作成されても良い。
【0030】
対象トレース情報34は、トレーサビリティ情報33に含まれるトレース情報のうち、ユーザによるレビュー中のトレース情報をリスト化したものである。図5および図6は、対象トレース情報34の一例を示している。図5および図6において、対象トレース情報34は要件と機能とを紐付けたリストである。
【0031】
図3から図6を参照して、対象トレース認識部22の処理を説明する。
【0032】
対象トレース認識部22は、加工済み音声データ32の発言内容からレビュー中のトレース情報を抽出する。トレーサビリティ情報33には、今回のレビュー対象か否かを示す情報が付加されていてもよい。この場合、対象トレース認識部22は、当該情報が付加されたトレース情報を、処理対象のトレース情報として抽出することができる。
【0033】
次に、対象トレース認識部22は、加工済み音声データ32の発言内容からトレース対象を抽出し、対象トレース情報34を作成する。
【0034】
具体的には、対象トレース認識部22は、図3の加工済み音声データ32を発言番号順に処理する。図3の発言番号1の加工済み音声データ32の発言内容は、「要件Aは機能1に紐づいています。」である。対象トレース認識部22は、発言番号1の加工済み音声データ32の発言内容から、要件Aと機能1をレビュー中のトレース対象として抽出し、図5に示されるように、要件Aと機能1とを紐づけるトレース情報を対象トレース情報34として作成する。
【0035】
次に、対象トレース認識部22は、発言番号2の加工済み音声データ32を処理する。発言番号2の加工済み音声データ32の発言内容は、「要件Aは〇〇という要件です。」である。対象トレース認識部22は、発言番号2の加工済み音声データ32の発言内容から、要件Aをレビュー中のトレース対象として抽出する。ここで抽出したトレース対象である要件Aは、既存の対象トレース情報34に含まれているため、対象トレース認識部22は対象トレース情報34を変更しない。順次、対象トレース認識部22は、発言番号3,4の加工済み音声データ32を処理するが、同様に対象トレース情報34の変更は行わない。
【0036】
その後、対象トレース認識部22は、発言番号5の加工済み音声データ32を処理する。発言番号5の加工済み音声データ32の発言内容は、「次に、要件Bは機能2と機能3に紐づいています。」である。対象トレース認識部22は、発言番号5の加工済み音声データ32の発言内容から、要件Bと機能2とをレビュー中のトレース対象として抽出し、図6に示されるように、要件Bと機能2とを紐づける対象トレース情報34を新たに作成する。ここで、対象トレース認識部22は、図5に示される対象トレース情報34を削除する。
【0037】
また、対象トレース認識部22は、発言番号5の加工済み音声データ32の発言内容から、機能3をレビュー中のトレース対象として抽出する。対象トレース認識部22は、機能3のトレース元またはトレース先のトレース対象が不明な場合、一つ前の対象トレース情報34に書き込まれたトレース対象を転記する。つまり、対象トレース認識部22は、図6に示されるように、発言内容から抽出した機能3と前回の対象トレース情報34から抽出した要件Bとを組み合わせて、対象トレース情報34を追記する。
【0038】
このように、対象トレース認識部22は、レビュー結果認識部23によりレビュー結果が出力される前に新たなトレース対象を認識した場合、対象トレース情報34を書き換えるのではなく追記する。但し、対象トレース認識部22は、レビュー結果認識部23によるレビュー結果の出力タイミングを参照せず、トレース対象が既存の対象トレース情報34に含まれるトレース対象と同じ発言から抽出された場合に、対象トレース情報34を追記してもよい。
【0039】
対象トレース認識部22は、レビュー中に随時、対象トレース情報34をメモリ12に書き込む。その後、対象トレース認識部22は、加工済み音声データ32から対象トレース情報34を作成する動作と、対象トレース情報34をメモリ12に書き込む動作とをレビュー終了まで繰り返す。
【0040】
トレース対象のレビュー順序に関するルールが予め定められている場合、対象トレース認識部22は当該ルールに則り、次にレビューすべきトレース対象をレビュー参加者に通知しても良い。例えば、図4に示されるトレーサビリティ情報33の未レビューのトレース情報の内、レビュー中のトレース情報を除く最も上の行に記載されたトレース情報を優先する、というルールが定められているとする。図7のトレーサビリティレビュー結果35に示されるように、要件Bと機能3とのトレース情報についてまでレビューが完了している場合、対象トレース認識部22は、次にレビューすべきトレース対象として要件Cと機能4とのトレース情報をレビュー参加者に通知する。あるいは、現在の対象トレース情報34に要件Cと機能4との組合せが記載されている場合、対象トレース認識部22は、その次にレビューすべきトレース対象として、要件Cと機能5とのトレース情報をレビュー参加者に通知する。
【0041】
レビューすべきトレース対象の通知方法は、音声アナウンスでも良いし、参加者に表示したトレーサビリティレビュー結果の該当セル背景の彩色等の装飾でも良い。
【0042】
<A-2-3.レビュー結果認識部23>
レビュー結果認識部23は、音声認識部21で作成された加工済み音声データ32と、対象トレース認識部22で作成された対象トレース情報34とを基に、トレーサビリティレビュー結果35を作成する。
【0043】
トレーサビリティレビュー結果35は、トレーサビリティ情報33にレビュー結果を追記したリストである。図7にトレーサビリティレビュー結果35の一例を示す。図7に示されるように、トレーサビリティレビュー結果35は、要件、機能、およびレビュー結果が紐づけられた情報である。レビュー結果は、OKまたはNGとして示されている。
【0044】
図7から図9を参照して、レビュー結果認識部23の処理を説明する。図7のトレーサビリティレビュー結果35において、要件Aと機能1とのトレース情報に対するレビュー結果は「OK」であり、要件Aと機能1とのトレーサビリティに問題がないことが示されている。また、要件Bと機能2とのトレース情報、および要件Bと機能3とのトレース情報に対するレビュー結果は「NG」であり、これらのトレーサビリティに問題があることが示されている。また、要件Cおよび要件Dに関するトレース情報に対するレビュー結果は空欄であり、これらのトレーサビリティについては未レビューであることが示されている。
【0045】
レビュー結果認識部23は、加工済み音声データ32からレビュー結果に関する発言を抽出し、抽出した発言に基づきレビュー結果を認識する。例えば、レビュー結果認識部23は、「問題ありません」、「問題ない」、「大丈夫」、または「OK」等の肯定的な単語または語句を認識すると、トレーサビリティに問題なしとのレビュー結果を認識する。また、レビュー結果認識部23は、「間違い」、「おかしい」、「違います」、「見直し」、または「修正」等の否定的な単語または語句を認識すると、トレーサビリティに問題ありとのレビュー結果を認識する。
【0046】
例えば、レビュー結果認識部23は、図3の発言番号4から「問題ありません」という語句を抽出すると、トレーサビリティに問題なしとのレビュー結果を認識する。
【0047】
加工済み音声データ32に、肯定的な単語または語句と、否定的な単語または語句の両方が混在する場合、レビュー結果認識部23は、レビュー結果を「認識エラー」としても良いし、最後に出現した単語または語句に基づいてレビュー結果を認識しても良い。
【0048】
次に、レビュー結果認識部23は、対象トレース情報34に基づき、現在レビュー中のトレース情報を認識する。具体的には、レビュー結果認識部23は、図5に示される対象トレース情報34に基づき、要件Aと機能1とのトレース情報についてレビュー中であることを認識する。
【0049】
レビュー結果認識部23は、認識したレビュー結果に基づきトレーサビリティレビュー結果35を作成する。具体的には、図7に示されるトレーサビリティレビュー結果35のように、要件Aと機能1とのトレース情報に対するレビュー結果として「OK」を書き込む。
【0050】
図7に示されるトレーサビリティレビュー結果35は、1行目にトレース元の要件、2行目にトレース先の機能、3行目にレビュー結果が記載されるものである。この他、トレーサビリティレビュー結果35は、図8に示されるように、縦にトレース元の要件、横にトレース先の機能を並べたマトリクスであってもよい。図8に示されるトレーサビリティレビュー結果35の場合、レビュー結果認識部23は、要件Aと機能1とのトレース情報に対するレビュー結果として2行目2列目に「〇」を書き込む。「〇」は、要件Aと機能1とのトレーサビリティに問題がないことを示している。
【0051】
レビュー結果認識部23は、レビュー結果の判断に用いる単語または語句毎に確度を設定することにより、レビュー結果の確度を算出してもよい。確度とは、レビュー結果としてどの程度トレーサビリティに問題があるか、またはないかを示す曖昧さを数値化したものであり、例えば0から100の数値で表される。確度が100に近いほどトレーサビリティに問題があるレビュー結果であることを表し、確度が0に近いほどトレーサビリティに問題がないレビュー結果であることを表す。
【0052】
例えば、図3に示される加工済み音声データ32において、「問題ありません」という肯定的な単語または語句には確度100が設定され、「おそらく」などの曖昧さを表す単語または語句には確度±30が設定され、「見直します」という否定的な単語または語句には確度0が設定される。要件Aと機能1とのトレース情報に関する発言番号1-4の加工済み音声データ32には、レビュー結果の判断に用いる単語または語句として、曖昧さを表す単語または語句が出現せず、確度100の「問題ありません」のみが出現する。従って、レビュー結果認識部23は、要件Aと機能1とのトレース情報のレビュー結果の確度を100と判定する。
【0053】
要件Bと機能2または機能3とのトレース情報に関する発言番号5-10の加工済み音声データ32には、レビュー結果の判断に用いる単語または語句として、角度±30の「おそらく」(発言番号9)と、確度0の「見直します」が出現する。従って、レビュー結果認識部23は、要件Bと機能2,3とのトレース情報のレビュー結果の確度を30と判定する。これにより、「おそらく」という曖昧な表現がレビュー結果に反映される。
【0054】
図9は、レビュー結果の確度が記載されたトレーサビリティレビュー結果35を示している。このトレーサビリティレビュー結果35の2行目2列目の欄には、要件Aと機能1とのトレース情報のレビュー結果の確度として100が記載され、3行目3列目の欄には、要件Bと機能2とのトレース情報のレビュー結果の確度として30が記載され、要件Bと機能3とのトレース情報のレビュー結果の確度として30が記載されている。図7に示される形式のトレーサビリティレビュー結果35においても、レビュー結果認識部23は、レビュー結果として確度を記載してもよい。
【0055】
上記において、レビュー結果認識部23は、要件Bと機能2とのトレース情報、および要件Bと機能3とのトレース情報の両方について、レビュー結果の確度を30と判定した。しかし、このように対象トレース情報34が複数ある場合、最後に発言のあった要件Bと機能3とのトレース情報についてのみ、レビュー結果に確度「30」を記載し、要件Bと機能2とのトレース情報については未レビュー扱いのままにしてもよい。
【0056】
また、図9のトレーサビリティレビュー結果35にはレビュー結果として確度のみが示されているが、OKまたはNGなどのレビュー結果と共に確度が示されていても良い。
【0057】
レビュー結果の確度はレビュー品質とみなされる。トレーサビリティレビュー支援装置101は、レビュー結果の確度に閾値(例えば70)を設定し、レビュー品質が閾値よりも低いトレース情報を見直してもよい。
【0058】
参加者がトレーサビリティレビュー支援装置101に直接文字データとしてレビュー結果を入力してもよい。レビュー結果認識部23は、認識できなかったレビュー結果について認識エラーである旨を表示し、その都度参加者がトレーサビリティレビュー支援装置101に直接文字データを入力して修正してもよい。
【0059】
レビュー結果認識部23は、トレーサビリティレビュー結果35をメモリ12に書き込む。また、レビュー結果認識部23は、通信インタフェース14を通してトレーサビリティレビュー結果35を出力する。
【0060】
その後、レビュー結果認識部23は、加工済み音声データ32と対象トレース情報34とに基づきトレーサビリティレビュー結果35を作成する動作と、トレーサビリティレビュー結果35をメモリ12に書き込む動作とを、レビュー終了まで繰り返す。
【0061】
<A-3.効果>
実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101は、ソフトウェア開発のプロセス間のトレーサビリティの対象項目であるトレース対象に関するユーザのレビュー音声を取得し、レビュー音声のテキストデータを含む加工済み音声データ32を作成する音声認識部21と、トレース対象のトレース元またはトレース先との対応関係を表す対応情報を含むトレース情報の一覧であるトレーサビリティ情報33と、加工済み音声データ32とに基づき、ユーザがレビュー中のトレース情報を対象トレース情報34として抽出する対象トレース認識部22と、加工済み音声データ32に基づき、対象トレース情報34のレビュー結果を判定し、レビュー結果を出力するレビュー結果認識部と、を備える。これにより、トレーサビリティのレビュー結果が機械的に文書化されるため、トレーサビリティの検証漏れの発生、または検証漏れに付随する不具合の発生が抑制される。また、トレーサビリティレビュー支援装置101によれば、トレーサビリティの検証の効率化を図ることができる。
【0062】
実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101において、レビュー結果は、レビューの品質を表す数値であるレビュー確度を含む。これにより、レビューの曖昧さをレビュー結果に反映させることが可能となる。
【0063】
実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101において、テキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現の夫々に対応して、異なる数値が割り当てられ、レビュー結果認識部23は、対象トレース情報34に関連するテキストデータ中の否定的な表現、肯定的な表現、および曖昧な表現に割り当てられた数値を用いて、レビュー結果の確度を算出する。これにより、レビューの曖昧さをレビュー結果に反映させることが可能となる。
【0064】
実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101において、対象トレース認識部22は、予め定められたトレース情報のレビュー順序に関するルールに基づき、トレーサビリティ情報の中から次にレビューすべきトレース情報を特定し、ユーザに通知する。これにより、レビューの効率化が図られる。
【0065】
<A-4.変形例1>
実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101では、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23の機能がソフトウェアにより実現された。これに対して実施の形態1の変形例1のトレーサビリティレビュー支援装置101Aでは、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23の機能がハードウェアで実現される。
【0066】
図10は、トレーサビリティレビュー支援装置101Aの構成を示している。以下、トレーサビリティレビュー支援装置101Aの構成について、実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101と異なる点を説明する。
【0067】
トレーサビリティレビュー支援装置101Aは、トレーサビリティレビュー支援装置101のプロセッサ11、メモリ12、およびストレージ13に代えて、処理回路15を備えている。処理回路15は、音声認識部21、対象トレース認識部22、レビュー結果認識部23、メモリ12、およびストレージ13の機能を実現する専用の電子回路である。
【0068】
処理回路15は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA(Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)が想定される。
【0069】
図10では、1つの処理回路15が示されている。しかし、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23の機能は、複数の処理回路に分散して実現されてもよい。
【0070】
<A-5.変形例2>
実施の形態1の変形例2のトレーサビリティレビュー支援装置では、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23のうち、一部の機能がハードウェアで実現され、他の機能がソフトウェアで実現される。つまり、変形例2のトレーサビリティレビュー支援装置は、実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101の構成に加えて、処理回路15を備える。
【0071】
そして、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23のうち一部の機能は、ストレージ13に記憶されたプログラムをプロセッサ11がメモリ12に読み込んで実行することにより、実現される。また、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23のうち他の機能は処理回路15によって実現される。
【0072】
プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、および処理回路15を、総称して「プロセッシングサーキットリー」という。つまり、音声認識部21、対象トレース認識部22、およびレビュー結果認識部23は、プロセッシングサーキットリーにより実現される。
【0073】
<A-6.変形例3>
実施の形態1の変形例3において、対象トレース情報34は、作成元となった加工済み音声データの発言番号の情報を含む。図11は、発言番号の情報を含む対象トレース情報34の一例を示している。図11に示される対象トレース情報34は、1列目に作成元の加工済み音声データの発言番号を含んでいる。2行目から5行目は、発言番号1から発言番号4の間に要件Aと機能1のトレース情報について議論していること、6行目は、発言番号5以降で要件Bと機能2および機能3のトレース情報について議論していることを示している。
【0074】
これにより、レビュー結果認識部23は、対象トレース情報34に含まれる発言番号を参照してトレーサビリティレビュー結果35を作成することが可能となる。図11の例では、レビュー結果認識部23は、発言番号1から発言番号4において、要件Aと機能1とのトレース情報について議論されていることを認識する。そして、レビュー結果認識部23は、図3の発言番号1から発言番号4の間の発言内容からレビュー結果に関する単語または語句を抽出し、要件Aと機能1とのトレース情報に対するレビュー結果を判定する。
【0075】
このように、実施の形態1の変形例3のトレーサビリティレビュー支援装置において、加工済み音声データ32は、テキストデータに紐づけられた固有の発言番号を含み、対象トレース情報34は、対象トレース情報34の作成元の加工済み音声データ32の発言番号を含み、レビュー結果認識部23は、対象トレース情報34に含まれる発言番号に紐づけられたテキストデータに基づき、対象トレース情報34のレビュー結果を判定する。従って、対象トレース認識部22の処理とレビュー結果認識部23の処理を連続的に実行することが可能となる。
【0076】
<A-7.変形例4>
実施の形態1の変形例4において、加工済み音声データ32は、レビュー参加者の声音の情報を含む。声音とは声の調子であり、例えば、声の明るさ、大きさ、速さ、または流暢さ等を含む。音声認識部21は、受け付けたレビュー音声データ31を音声認識する際、発言者の声音を認識し、声音の情報を含む加工済み音声データ32を作成する。
【0077】
図12は、声音の情報を含む加工済み音声データ32の一例を示している。図12に示される加工済み音声データ32は、4列目に声音の情報を含む。音声認識部21は、既存の技術を用いて声音を認識してもよい。また、参加者がトレーサビリティレビュー支援装置に直接、声音の情報を文字データとして入力してもよい。
【0078】
レビュー結果認識部23は、加工済み音声データ32の発言内容から抽出した特定の単語または語句の他、声音にも基づいてレビュー結果を判定する。図12の加工済み音声データ32の例では、発言番号4の加工済み音声データ32の発言内容は「問題ありません」であり、声音は「明るい」である。従って、レビュー結果認識部23は、声音を考慮した場合も、発言内容のみを考慮する場合と同様、要件Aと機能1とのトレーサビリティのレビュー確度を100とする。また、発言番号10の加工済み音声データの発言内容は「見直します」」であり、声音は「暗い」である。従って、レビュー結果認識部23は、要件Bと機能3とのトレーサビリティのレビュー確度を、発言内容のみを考慮した場合の30から、さらに10下げて20とする。
【0079】
このように、レビュー結果認識部23は、加工済み音声データ32の発言内容に基づき算出したレビュー確度を、声音に基づき修正する。例えば、レビュー結果認識部23は、声が明るければレビュー確度を大きく、声が暗ければレビュー確度を小さくする方向に修正する。また、レビュー結果認識部23は、声が大きければレビュー確度を大きく、声が小さければレビュー確度を小さくする方向に修正する。また、レビュー結果認識部23は、声が速ければレビュー確度を大きく、声が遅ければレビュー確度を小さくする方向に修正する。また、レビュー結果認識部23は、流暢であればレビュー確度を大きく、流暢でなければレビュー確度を小さくする方向に修正する。
【0080】
実施の形態1の変形例4のトレーサビリティレビュー支援装置において、音声認識部21は、レビュー音声から声音の情報を抽出し、声音の情報を含む加工済み音声データ32を作成し、レビュー結果認識部23は、加工済み音声データのテキストデータおよび声音の情報に基づき、レビュー確度を算出する。従って、実施の形態1の変形例4のトレーサビリティレビュー支援装置は、レビュー参加者の声音を考慮してレビュー確度を算出することができる。
【0081】
<B.実施の形態2>
<B-1.構成>
図13は、実施の形態2のトレーサビリティレビュー支援装置102の構成を示している。トレーサビリティレビュー支援装置102は、プロセッサ11においてレビュー時間算出部24を備え、レビューの時間に関する情報を処理する点でのみ、実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101と異なる。
【0082】
図13に示すトレーサビリティレビュー支援装置102において、レビュー時間算出部24はソフトウェアによって実現されるが、ハードウェアによって実現されてもよい。
【0083】
<B-2.動作>
図14は、トレーサビリティレビュー支援装置102の動作の流れを示している。以下、図14を参照して、トレーサビリティレビュー支援装置102の動作を説明する。トレーサビリティレビュー支援装置102の動作は、実施の形態2のトレーサビリティレビュー支援方法と、トレーサビリティレビュー支援プログラムの処理とに相当する。
【0084】
<B-2-1.レビュー時間算出部24>
レビュー時間算出部24は、通信インタフェース14を介してレビュー対象規模36の入力を受け付ける。レビュー対象規模36は、例えばソースコードのコード行数、設計書のページ数、トレース対象数、またはトレース情報数等である。
【0085】
そして、レビュー時間算出部24は、レビュー対象規模36を基に、想定する理想のレビュー時間を想定レビュー時間37として算出する。想定レビュー時間37は、その時間レビューを行うことで十分な議論が行われると想定されるレビュー時間である。
【0086】
レビュー時間算出部24は、例えば、コード行数1KLあたりのレビュー時間に関する過去の知見に基づき、想定レビュー時間37を算出しても良い。また、レビュー時間算出部24は、トレース情報1件あたり、またはトレース対象1件あたりの想定レビュー時間を算出し、想定レビュー時間37を作成しても良い。また、ユーザーが自身の知見によって手動で想定レビュー時間37を算出し、トレーサビリティレビュー支援装置102に入力してもよい。
【0087】
次に、レビュー時間算出部24は、想定レビュー時間37をメモリ12に書き込む。
【0088】
<B-2-2.レビュー結果認識部23>
レビュー結果認識部23は、実施の形態1と同様の対象トレース情報34および加工済み音声データ32に加えて、レビュー時間算出部24で作成された想定レビュー時間37に基づき、トレーサビリティレビュー結果35を作成する。
【0089】
実施の形態2のトレーサビリティレビュー結果35は、実施の形態1のトレーサビリティレビュー結果35に加えて、レビュー品質情報として、実際のレビュー時間と想定レビュー時間37との比較結果に関する情報を含む。具体的には、想定レビュー時間37よりも実際のレビュー時間が短ければ短いほど、レビュー品質が悪いとみなされる。
【0090】
レビュー結果認識部23は、レビュー中に想定レビュー時間37を参加者に提示してもよい。また、レビュー結果認識部23は、進捗情報として、実際のレビュー時間が想定レビュー時間37の何%程度であるかを参加者に提示してもよい。また、レビュー結果認識部23は、実際のレビュー時間が想定レビュー時間37を経過した時点で、その旨を参加者に通知してもよい。また、レビュー結果認識部23は、想定レビュー時間37に達することなくレビューが終了した場合、または想定レビュー時間37に達することなくトレース対象またはトレース情報のレビューが終了した場合に、その旨を参加者に通知しても良い。
【0091】
<B-3.効果>
実施の形態2のトレーサビリティレビュー支援装置102は、レビュー対象規模36から想定レビュー時間37を算出するレビュー時間算出部24を備える。レビュー結果認識部23は、実際のレビュー時間と想定レビュー時間37との比較結果を出力する。従って、トレーサビリティレビュー支援装置102によれば、実際のレビュー時間と想定レビュー時間37との比較に基づき、レビュー品質を数値化することが可能である。また、参加者にレビュー時間に関する情報を通知することで、レビューの不足を防ぐことが可能である。また、実際のレビュー時間が想定レビュー時間37よりも長い場合、参加者に予期せぬ問題の発生の可能性を通知することが可能となる。
【0092】
<C.実施の形態3>
<C-1.構成>
図15は、実施の形態3のトレーサビリティレビュー支援装置103の構成を示している。トレーサビリティレビュー支援装置103は、プロセッサ11において議事情報出力部25を備え、任意のトレース情報に関する議事情報を出力する点でのみ、実施の形態1のトレーサビリティレビュー支援装置101と異なる。議事情報は、レビュー音声データ31または議事録を含む。図15に示すトレーサビリティレビュー支援装置103において、議事情報出力部25はソフトウェアによって実現されるが、その一部または全部がハードウェアによって実現されてもよい。
【0093】
<C-2.動作>
図16は、トレーサビリティレビュー支援装置103の動作の流れを示している。以下、図16を参照して、トレーサビリティレビュー支援装置103の動作を説明する。トレーサビリティレビュー支援装置103の動作は、実施の形態3のトレーサビリティレビュー支援方法と、トレーサビリティレビュー支援プログラムの処理とに相当する。
【0094】
<C-2-1.レビュー結果認識部23>
レビュー結果認識部23は、実施の形態1と同様のトレーサビリティレビュー結果35に加えて、議事情報38を作成する。図17は、議事情報38の一例を示している。議事情報38は、要件と機能の対で示される各トレース情報に対して、発言番号、発言者、発言内容等の加工済み音声データ32が紐づけられた情報である。図17の議事情報38の例では、要件Aと機能1とのトレース情報に対して、発言番号1-4の加工済み音声データ32が関連することが示されている。
【0095】
レビュー結果認識部23は、レビュー中に随時、またはレビュー終了後に、議事情報38をメモリ12に書き込む。
【0096】
<C-2-2.議事情報出力部25>
議事情報出力部25は、トレーサビリティレビュー結果35と議事情報38とに基づき、作業者が指定するトレース情報に関する加工済み音声データ32を抽出して抽出後議事情報39を作成する。作業者は、例えばトレース元とトレース先との組み合わせを入力し、または図9に示されるようなトレーサビリティレビュー結果35のマトリクスから対象のトレース情報を指定する。
【0097】
図18は、抽出後議事情報39の一例を示している。抽出後議事情報39は、加工済み音声データ32のテキストデータを画面に表示する形式で出力されても良いし、加工済み音声データ32に対応するレビュー音声データ31の該当箇所をトリミングして再生する形式で出力されても良い。
【0098】
<C-3.効果>
実施の形態3のトレーサビリティレビュー支援装置103は、ユーザが指定したトレース情報に関する、加工済み音声データ32またはレビューの議事録を含む議事情報を出力する議事情報出力部25を備える。これにより、ユーザは、レビュー中またはレビュー後に、任意のトレース情報に関する議事情報を確認することができ、レビューを容易に振り返ることができる。
【0099】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0100】
11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 通信インタフェース、15 処理回路、21 音声認識部、22 対象トレース認識部、23 レビュー結果認識部、24 レビュー時間算出部、25 議事情報出力部、31 レビュー音声データ、32 加工済み音声データ、33 トレーサビリティ情報、34 対象トレース情報、35 トレーサビリティレビュー結果、36 レビュー対象規模、37 想定レビュー時間、38 議事情報、39 抽出後議事情報、101,101A,102,103 トレーサビリティレビュー支援装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18