(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】窓用断熱材、および窓用断熱材の取付方法
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
E06B5/00 C
(21)【出願番号】P 2020182528
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】520425246
【氏名又は名称】鈴木 修
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3184299(JP,U)
【文献】特開2002-147133(JP,A)
【文献】特開2010-095976(JP,A)
【文献】特開平11-131689(JP,A)
【文献】特開2014-129449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00-5/20
E06B 3/54-3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリスチレン
の板からなる窓用断熱材であって、
前記板の可視光透過率が、0.1%以上10%以下であり、
前記板の可視光反射率が、70%以上99%以下であり、
前記発泡ポリスチレンの熱伝導率が、0.045W/(m・K)以下である、
窓用断熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の窓用断熱材において、
前記発泡ポリスチレンの密度が、12kg/m
3以上35kg/m
3以下である、
窓用断熱材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の窓用断熱材において、
前記発泡ポリスチレンの平均セルサイズが、300μm未満である、
窓用断熱材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の窓用断熱材において、
前記発泡ポリスチレンは、ビーズ法ポリスチレンフォームである、
窓用断熱材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の窓用断熱材において、
前記板には、開口部が設けられ、
前記窓用断熱材が、前記発泡ポリスチレンの板からなる開閉用板を、さらに備え、
前記開口部は、前記開閉用板が移動することで、開閉可能である、
窓用断熱材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の窓用断熱材を、窓に取り付ける方法であって、
前記窓と前記窓用断熱材とを貼着できる粘着テープまたは面状ファスナーを用いて、
前記窓用断熱材の少なくとも一端が固定され、前記窓用断熱材の少なくとも一端は固定されないように、
前記粘着テープまたは前記面状ファスナーにより、前記窓用断熱材を前記窓に取り付ける、
窓用断熱材の取付方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の窓用断熱材を、窓に取り付ける方法であって、
前記窓は、前記窓用断熱材を取り付け可能な支持部を備えており、
前記窓用断熱材と前記支持部とが固定されないようにして、前記窓用断熱材
を窓枠に取り付ける、
窓用断熱材の取付方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の窓用断熱材を、窓に取り付ける方法であって、
前記窓は、上端に取付部を備え、
前記窓用断熱材と前記取付部とが固定されないようにして、前記窓用断熱材を前記取付部に吊下げて、取り付ける、
窓用断熱材の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓用断熱材、および窓用断熱材の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の部屋には、採光したり、屋外の様子を覗いたりするという観点から、窓が設けられている。しかしながら、窓は壁と比べて断熱性が低い。例えば、季節が冬で、屋外側の気温が屋内側よりも低い場合には、窓の周辺部で屋内側の気温が低下しやすい。そのため、窓の無い部屋と比べて、暖房の使用量が多くなってしまう。一方で、季節が夏の場合にも、窓の無い部屋と比べて、冷房の使用量が多くなってしまう。
一方で、窓から屋内を覗かれたりしないよう、カーテン、ブラインドおよび障子などで窓を遮蔽することも多い。また、障子などの代わりに、採光を確保しつつ、断熱性を向上させることも提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マット材を含有する薄層を表面に設けたプラスチックフィルムを含む表面材が、拡散光透過性硬質プラスチック発泡板の少なくとも一面に積層されている断熱採光板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の断熱採光板は、ある程度の断熱性を有するものの、その断熱性は、必ずしも十分なものではなかった。また、特許文献1に記載の断熱採光板は、表面にマット材を含有する薄層を有するため、可視光反射率が低く、室内光を十分に利用できないという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、窓からの採光が可能で、室内光を十分に利用でき、かつ優れた断熱性を有する窓用断熱材、並びに、この窓用断熱材の取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、発泡ポリスチレンからなる窓用断熱材であって、可視光透過率が、0.1%以上10%以下であり、可視光反射率が、70%以上99%以下であり、前記発泡ポリスチレンの熱伝導率が、0.045W/(m・K)以下である、窓用断熱材が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、前記本発明の一態様に係る窓用断熱材を、窓に取り付ける方法であって、前記窓と前記窓用断熱材とを貼着できる粘着テープまたは面状ファスナーを用いて、前記窓用断熱材の少なくとも一端が固定され、前記窓用断熱材の少なくとも一端は固定されないように、前記粘着テープまたは前記面状ファスナーにより、前記窓用断熱材を前記窓に取り付ける、窓用断熱材の取付方法が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記本発明の一態様に係る窓用断熱材を、窓に取り付ける方法であって、前記窓は、前記窓用断熱材を取り付け可能な支持部を備えており、前記窓用断熱材と前記支持部とが固定されないようにして、前記窓用断熱材を前記窓枠に取り付ける、窓用断熱材の取付方法が提供される。
【0010】
本発明の一態様によれば、前記本発明の一態様に係る窓用断熱材を、窓に取り付ける方法であって、前記窓は、上端に取付部を備え、前記窓用断熱材と前記取付部とが固定されないようにして、前記窓用断熱材を前記取付部に吊下げて、取り付ける、窓用断熱材の取付方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、窓からの採光が可能で、室内光を十分に利用でき、かつ優れた断熱性を有する窓用断熱材、並びに、この窓用断熱材の取付方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る窓用断熱材を示す概略図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る窓用断熱材を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る窓用断熱材の取付方法の一態様を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る窓用断熱材の取付方法の他の一態様を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る窓用断熱材の取付方法の他の一態様を示す概略図である。
【
図7】実施例3で得られた窓用断熱材の効果を検証するための測定データであり、日付と室温との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[窓用断熱材]
まず、本実施形態に係る窓用断熱材について説明する。
本実施形態に係る窓用断熱材は、発泡ポリスチレンからなる窓用断熱材であって、可視光透過率が、0.1%以上10%以下であり、可視光反射率が、70%以上99%以下であり、前記発泡ポリスチレンの熱伝導率が、0.045W/(m・K)以下である。
窓用断熱材の可視光透過率が0.1%未満である場合には、室外からの光を十分に取り込めない。他方、窓用断熱材の可視光透過率が10%超である場合には、断熱材としての断熱性が不十分となるおそれがある。また、窓からの採光と断熱性との両立の観点から、窓用断熱材の可視光透過率は、0.5%以上8%以下であることが好ましく、1%以上7%以下であることがより好ましい。
窓用断熱材の可視光透過率は、JIS R3106に記載の方法で測定できる。
なお、窓用断熱材の可視光透過率は、例えば、発泡ポリスチレンの密度や、窓用断熱材の厚さを変更することで調整できる。例えば、発泡ポリスチレンの密度を高くすると、窓用断熱材の可視光透過率は低くなる傾向がある。また、窓用断熱材を厚くすると、窓用断熱材の可視光透過率は低くなる傾向がある。
【0014】
窓用断熱材の可視光反射率が70%未満である場合には、室内光を十分に反射できず、室内の明るさが不十分となる。他方、窓用断熱材の可視光反射率が99%超である場合には、室外からの光を十分に取り込めないおそれがある。また、室外からの光と室内光の両方をバランスよく利用するという観点から、窓用断熱材の可視光反射率は、80%以上98%以下であることが好ましく、85%以上97%以下であることがより好ましい。
窓用断熱材の可視光反射率は、JIS R3106に記載の方法で測定できる。
なお、窓用断熱材の可視光反射率は、例えば、発泡ポリスチレンの密度や、窓用断熱材の表面の滑らかさを変更することで調整できる。
【0015】
発泡ポリスチレンの熱伝導率が0.045W/(m・K)超である場合には、断熱材としての断熱性が不十分となるおそれがある。また、断熱性の観点から、発泡ポリスチレンの熱伝導率は、0.041W/(m・K)以下であることが好ましい。なお、発泡ポリスチレンの熱伝導率は、薄い厚さから断熱効果を発揮させるという観点から、0.03W/(m・K)以上であることが好ましい。
発泡ポリスチレンの熱伝導率は、JIS A1412-2に記載の方法で測定できる。
なお、発泡ポリスチレンの熱伝導率は、例えば、発泡ポリスチレンの発泡倍率を変更することで調整できる。
【0016】
本実施形態において、発泡ポリスチレンの密度は、12kg/m3以上35kg/m3以下であることが好ましく、14kg/m3以上32kg/m3以下であることがより好ましい。
発泡ポリスチレンの密度が12kg/m3以上であれば、高い断熱性を確保することができる。他方、発泡ポリスチレンの密度が35kg/m3以下であれば、室外からの光を十分に取り込むことができる。
発泡ポリスチレンの密度は、見かけ密度であり、JIS K7222に記載の方法で測定できる。
なお、発泡ポリスチレンの密度は、例えば、発泡ポリスチレンの発泡倍率を変更することで調整できる。
【0017】
本実施形態において、発泡ポリスチレンの平均セルサイズは、300μm未満であることが好ましく、200μm未満であることがより好ましく、30μm以上100μm以下であることが特に好ましい。
発泡ポリスチレンの平均セルサイズが300μm未満であれば、断熱材としての断熱性を更に向上できる。
発泡ポリスチレンの平均セルサイズは、ASTM D3576に記載の方法で測定できる。
なお、発泡ポリスチレンの平均セルサイズは、例えば、発泡ポリスチレンの発泡倍率を変更することで調整できる。
【0018】
本実施形態に用いる発泡ポリスチレンとしては、押出法ポリスチレンフォーム、およびビーズ法ポリスチレンフォームが挙げられる。これらの中でも、ビーズ法ポリスチレンフォームを用いることが好ましい。発泡ポリスチレンが、ビーズ法ポリスチレンフォームであれば、熱伝導率、密度および平均セルサイズなどが上記の条件を満たす発泡ポリスチレンを容易に製造できる。
【0019】
ビーズ法ポリスチレンフォームは、ポリスチレンビーズに、炭化水素ガス(ブタンおよびペンタンなど)を吸収させた上で100℃以上の蒸気を当てて、樹脂を軟化させつつ圧力を加えることで、発泡させて得られる。
このときの発泡倍率は、特に限定されず、適宜設定できる。なお、発泡倍率が大きすぎると、熱伝導率が大きくなり、断熱性が悪化する傾向にある。他方、発泡倍率が小さすぎると、可視光透過率が低くなる傾向にある。
【0020】
本実施形態に係る窓用断熱材は、
図1に示すように、板状の発泡ポリスチレンからなるものである。この窓用断熱材1は、窓に取り付けて使用する。そして、窓用断熱材1は、窓からの採光が可能で、かつ優れた断熱性を有するものであるので、窓に取り付けた場合、窓の周辺部で屋内側の気温が変化するのを抑制できる。また、窓用断熱材1は、室内光を十分に反射できるので、夜間など窓からの採光ができない場合でも、室内の明るさを向上できる。
一方で、窓用断熱材1は、窓からの採光が可能であるが、窓から外を覗くことができない。しかし、窓用断熱材1は、容易に切断できる発泡ポリスチレンからなる。そこで、窓用断熱材1の一部を切断し、切断した部分から、外を覗くことができる。
【0021】
本実施形態においては、
図2に示すように、窓用断熱材1Aには、開閉可能な開口部13が設けられていてもよい。窓用断熱材1Aは、開口部13とほぼ同じ大きさの発泡ポリスチレン板11と、発泡ポリスチレン板11を上下方向に移動可能なレール機構12を備えている。そして、
図2(A)に示すように、下側にある発泡ポリスチレン板11を、
図2(B)に示すように、上方向に移動させることで、開口部13をほぼ半分閉じることができる。さらに、発泡ポリスチレン板11を、
図2(C)に示すように、上方向に移動させることで、開口部13を閉じることができる。
このように、開閉可能な開口部13が設けられている窓用断熱材1Aであれば、開口部13を開いた場合には、窓から外を覗くことができ、この開口部13を閉じた場合には、断熱性を確保できる。
【0022】
[窓用断熱材の取付方法]
次に、本実施形態に係る窓用断熱材の取付方法について説明する。
本実施形態に係る窓用断熱材の取付方法は、窓用断熱材1を、窓に取り付ける方法である。この窓用断熱材の取付方法においては、
図3および
図4に示すように、窓9と窓用断熱材1とを貼着できる粘着テープ2を用いて、窓用断熱材1の少なくとも一端が固定され、窓用断熱材1の少なくとも一端は固定されないように、粘着テープ2により、窓用断熱材1を窓9に取り付ける。
粘着テープ2は、窓用断熱材1の少なくとも一端に、貼着すればよい。また、粘着テープ2は、
図3に示すように、部分的に貼着してもよい。窓用断熱材1は、軽量なので、部分的な貼着でも十分に支えることができる。なお、粘着テープ2に代えて、面状ファスナーを用いることもできる。
窓9は、窓枠91と、窓ガラス92とを備える。粘着テープ2は、窓枠91に取り付けてもよく、窓ガラス92に取り付けてもよい。
【0023】
窓用断熱材1は、夏場の日射などによる温度上昇のために膨張して、寸法変化を生じ、反ったりするおそれがある。これに対し、本実施形態においては、窓用断熱材1の一端が、粘着テープ2で固定されているが、少なくとも一端は固定されていない。そのため、窓用断熱材1が膨張しても、窓用断熱材1の寸法変化を、吸収したり、逃がすことができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る別の窓用断熱材の取付方法について説明する。この窓用断熱材の取付方法においては、
図5に示すように、窓9Aは、窓用断熱材1を取り付け可能な支持部911を備えており、窓用断熱材1と支持部911とが固定されないようにして、窓用断熱材1を支持部91に取り付ける。
窓9Aは、窓枠91と、窓ガラス92とを備える。窓枠91には、窓用断熱材1を取り付け可能な支持部911が設けられている。なお、支持部911は、窓ガラス92に設けられていてもよい。
【0025】
本実施形態においては、窓用断熱材1と支持部911とは固定されていないため、窓用断熱材1が膨張しても、窓用断熱材1の寸法変化を、逃がすことができる。
【0026】
次に、本実施形態に係る別の窓用断熱材の取付方法について説明する。この窓用断熱材の取付方法においては、
図6に示すように、窓9Bは、上端に取付部93を備え、窓用断熱材1と取付部93とが固定されないようにして、窓用断熱材1を取付部93に吊下げる。このようにして、窓用断熱材1を窓9Bに取り付ける。
窓9Bは、さらに、窓枠91と、窓ガラス92とを備える。取付部93は、例えば窓枠91に、例えば2つ設けられている。取付部93としては、フックなどが挙げられる。そして、窓用断熱材1には、取付部93に対応する位置に、穴14が設けられている。この穴14を、取付部93に引っ掛けることで、窓用断熱材1を吊下げられる。穴14の大きさは、窓用断熱材1が膨張した場合に破損を防ぐという観点から、取付部93よりも大きいことが好ましい。
【0027】
本実施形態においては、窓用断熱材1と取付部93とは固定されておらず、また、窓用断熱材1の一端は、全く支えられていない。そのため、窓用断熱材1が膨張しても、窓用断熱材1の寸法変化を、吸収したり、逃がすことができる。
【0028】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態では、窓用断熱材1を窓枠91に取り付けているが、これに限定されない。例えば、窓用断熱材1は、窓ガラス92に取り付けてもよい。
また、前述の実施形態では、窓用断熱材1は、単層の発泡ポリスチレン板からなるが、これに限定されない。例えば、発泡ポリスチレン板の表面に、熱伝導率、可視光透過率および可視光反射率に影響のない範囲で、樹脂フィルムなどの薄層を積層しても構わない。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
株式会社ジェイエスピー製の発泡性ポリスチレン樹脂粒子、商品名「スチロダイア FA 200」(平均粒径:約1.1mm)を使用し、これを発泡性ポリスチレン用のスチーム発泡機でスチーム加熱して15kg/m3の嵩密度を有する予備発泡樹脂粒子を得た。この予備発泡樹脂粒子を室温で24時間熟成させた後、発泡ポリスチレン用成形機の成形型内に充填し、スチーム加熱することにより、1850mm×930mm×500mmのブロック状の密度15kg/m3の発泡ポリスチレンを得た。
得られた発泡ポリスチレン板を、熱線スライスにより、厚さ6.2mmにスライスして、窓用断熱材を得た。
【0031】
[実施例2]
スライスする厚さを10.1mmに変更した以外は、実施例1と同様にして、窓用断熱材を得た。
【0032】
[実施例3]
スライスする厚さを14.3mmに変更した以外は、実施例1と同様にして、窓用断熱材を得た。
【0033】
[実施例4]
株式会社ジェイエスピー製の発泡性ポリスチレン樹脂粒子、商品名「スチロダイア FA 200」(平均粒径:約1.1mm)を使用し、これを発泡性ポリスチレン用のスチーム発泡機でスチーム加熱して30kg/m3の嵩密度を有する予備発泡樹脂粒子を得た。この予備発泡樹脂粒子を室温で24時間熟成させた後、発泡ポリスチレン用成形機の成形型内に充填し、スチーム加熱することにより、1850mm×930mm×500mmのブロック状の密度30kg/m3の発泡ポリスチレンを得た。
得られた発泡ポリスチレン板を、熱線スライスにより、厚さ10.2mmにスライスして、窓用断熱材を得た。
【0034】
[窓用断熱材の評価]
窓用断熱材の評価(可視光透過率、可視光反射率、全光線透過率、並びに、発泡ポリスチレンの熱伝導率、密度、および平均セルサイズ)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。なお、各例における窓用断熱材の厚さについても表1に示す。
【0035】
(1)可視光透過率および可視光反射率
JIS R3106に記載の方法に準拠して、窓用断熱材の可視光透過率および可視光反射率を測定した。なお、測定波長範囲は、300nmから2500nmとした。試験片の大きさは、50mm×50mmとした。測定は、試験片の中央付近と、そこから左右に3mmずらした点の計3点で行い、これら測定値の平均値とした。
(2)全光線透過率
JIS K6717に記載の方法に準拠して、窓用断熱材の全光線透過率を測定した。
(3)発泡ポリスチレンの熱伝導率
JIS A1412-2に記載の方法に準拠して、発泡ポリスチレンの熱伝導率を測定した。
(4)発泡ポリスチレンの密度
JIS K7222に記載の方法に準拠して、発泡ポリスチレンの密度(見かけ密度)を測定した。
(5)発泡ポリスチレンの平均セルサイズ
ASTM D3576に記載の方法に準拠して、発泡ポリスチレンの平均セルサイズを測定した。
【0036】
【0037】
[窓用断熱材の断熱性評価]
実施例3で得られた窓用断熱材を試料として、次のような実験を行った。すなわち、試料を部屋の全ての窓に取り付け、本年(2020年)の1月から3月の間、室内の温度、電灯の消費電力、および暖房の消費電力を記録した。そして、試料を部屋の窓に取り付けていなかった前年(2019年)の1月から3月の間、室内の温度、電灯の消費電力、および暖房の消費電力と比較した。
室内の温度の測定データ(2020年1月から3月と2019年1月から3月における日付と温度との関係を示すグラフ)を、
図7に示す。
図7に示す結果から、室内の温度については、前年と比較して、温度の変動幅が小さく、快適な室温条件になっていることが分かった。
また、電灯の消費電力、および暖房の消費電力については、表2に示す。
【0038】
【0039】
表2に示す結果からも明らかなように、電灯および暖房の消費電力は、試料を部屋の窓に取り付けていなかった前年と比較して、少なくできることが分かった。
さらに、窓用断熱材により室内光を利用できることを検証するために、次のような実験を行った。すなわち、試料を部屋の窓に取り付けた場合と、試料を部屋の窓に取り付けていない場合とで、日没後における窓の近傍での室内照度を比較した。結果は、以下の通りであった。
窓用断熱材あり:570lux
窓用断熱材なし:460lux
このことから、日没後においては、窓用断熱材により室内光を利用でき、窓の近傍での室内照度を高めて、より快適な環境にできることが分かった。なお、事務所の照度基準(JIS Z9110)において、事務室の照度は、300luxから750luxの範囲が好ましいとされている。
以上のことから、本発明に係る窓用断熱材は、窓からの採光が可能で、室内光を十分に利用でき、かつ優れた断熱性を有することが確認された。
また、本年の1月から8月までの断熱性評価試験後に、窓用断熱材(発泡ポリスチレン板)の黄色度を測定したところ、黄色への変化は見られなかった。このことから、本発明に係る窓用断熱材は、数年間の使用に耐えうる耐久性があることが分かった。
【符号の説明】
【0040】
1,1A…窓用断熱材、11…発泡ポリスチレン板、12…レール機構、13…開口部
14…穴、2…粘着テープ、9,9A,9B…窓、91…窓枠、911…支持部、92…窓ガラス、93…取付部。