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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】重合体粒子およびそれらを用いた吸湿剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/26 20060101AFI20240906BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20240906BHJP
   C08F 222/02 20060101ALI20240906BHJP
   C08F 236/00 20060101ALI20240906BHJP
   C08F 246/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C08F220/26
C08F220/04
C08F222/02
C08F236/00
C08F246/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020183704
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073608
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】松本 和明
(72)【発明者】
【氏名】柏原 宮人
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196734(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202938(WO,A1)
【文献】特開2007-197644(JP,A)
【文献】特開2005-042119(JP,A)
【文献】特開平06-027665(JP,A)
【文献】特開2009-028618(JP,A)
【文献】特開2017-056404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 -246/00
C08F301/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
B01J 20/00 -20/28
B01J 20/30 -20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位と、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位とを有し、全構造単位100質量%に対し、該一般式(1)で表される構造単位の含有割合が10質量%以上であり、該一般式(1)で表される構造単位と該カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の合計が50質量%以上であり、体積平均粒子径が50nm~10.0μmである
ることを特徴とする、重合体粒子。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムを表す。)
【請求項2】
前記重合体粒子に、多官能エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む、請求項1に記載の重合体粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合体粒子を含む吸湿剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性を有する重合体粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より空気中の湿気を除去する手段として、無機系の吸湿剤としては、シリカゲル、ゼオライト等の多孔質物質や、塩化リチウム、塩化カルシウム、五酸化リン等の無機塩類が用いられている。これら無機系に対し、有機系の吸湿剤としては、ポリアクリル酸塩系に代表される吸水性樹脂が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-215531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無機系の吸湿剤は、吸湿量自体が少なく、また比重が大きいため、例えば樹脂などに分散しにくい場合や、潮解性を有するため吸湿後液状化し、他を汚染する等の課題があった。吸水性樹脂の場合は、液状の水の吸水能力は非常に優れているが、気体状である湿気の吸湿速度は遅く、吸湿性能を改善する余地があった。
【0005】
よって、本発明は、吸湿速度が速く、吸湿能力が良好な、吸湿性を有する重合体粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。すなわち本開示の重合体粒子とは、
下記一般式(1)で表される構造単位と、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位とを有し、全構造単位100質量%に対し、該一般式(1)で表される構造単位の含有割合が10質量%以上であり、該一般式(1)で表される構造単位と該カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の合計が50質量%以上である重合体粒子、である。
【0007】
【化1】
【0008】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムを表す。)
【発明の効果】
【0009】
本開示の吸湿性を有する重合体粒子は、吸湿速度が速く、吸湿能力が良好な機能を有する。よって、本開示の吸湿性の機能を活用することにより、繊維、繊維加工品、不織布、シート、紙、フィルム、バインダー、塗料、接着剤、増粘剤、センサー、樹脂、電気、電子などの各種分野への応用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0011】
[本開示の重合体粒子]
<一般式(1)で表される構造単位>
本開示の重合体粒子は、下記一般式(1)で表される構造単位を含む。
【0012】
【化2】
【0013】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムを表す。)
上記R1で表される炭素数1~4のアルキル基は、炭素数1~2のアルキル基であることが好ましく、炭素数1のアルキル基(メチル基)であることがより好ましい。
【0014】
で表されるアルカリ金属原子は、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、ナトリウム、カリウムがより好ましく、ナトリウムがより更に好ましい。
【0015】
で表されるアルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。
【0016】
上記一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(2)で表される単量体が重合反応を経由することにより形成されても良いが、他の方法で形成されても良い。例えば、一般式(2)において、Rが炭素数1~4のアルキル基である単量体を重合し、加水分解をすることにより、上記一般式(1)においてRがアルカリ金属の構造単位、アルカリ土類金属の構造単位、またはアンモニウムの構造単位を形成しても良い。
【0017】
【化3】
【0018】
(一般式(2)中、Rは、炭素数1~4のアルキル基、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアンモニウムを表す。)
なお、上記一般式(2)において、Rは、1種であってもよく、2種以上であっても良い。Rが2種以上の場合、2種以上の上記一般式(2)で表される単量体を重合して形成してもよく、Rが炭素数1~4のアルキル基である上記一般式(2)で表される単量体を重合した後に、エステル基を部分加水分解したり、2種以上の塩基性物質で加水分解することにより形成しても良い。
【0019】
上記Rが、アンモニウムとは、NH4+に限られず、有機アンモニウムを含む意味であると定義される。有機アンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムなどの4級アンモニウム;アミンをプロトン化することによって形成されるアンモニウム(1~3級アンモニウム)などが挙げられる。Rとしては、アンモニア又はアミンのプロトン化によって形成されるアンモニウムが好ましい。前記アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン(好ましくはトリC1-10アルキルアミン);ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのヒドロキシアルキルアミン(好ましくはジ又はトリ(ヒドロキシC1-10アルキル)アミンなど)などが挙げられ、ヒドロキシアルキルアミンが好ましい。
【0020】
本開示の重合体粒子は、上記一般式(1)で表される構造単位を、10質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含むことがより好ましく、25質量%以上含むことがさらに好ましく、35質量%以上含むことがよりさらに好ましく、45質量%以上含むことが特に好ましく、60質量%以上含むことが最も好ましい。一方、本開示の重合体粒子は、上記一般式(1)で表される構造単位を、99.9質量%以下含むことが好ましく、99.5質量%以下含むことがより好ましく、99.0質量%以下含むことがさらに好ましく、97.0質量%以下含むことが特に好ましく、95.0質量%以下含むことが最も好ましい。上記範囲で含むことにより、本開示の吸湿性を有する重合体粒子は、吸湿速度が速く、吸湿量が向上する傾向にある。また、吸湿後の凝集も起こしにくく、経時安定性が良好となる。
【0021】
本開示の重合体粒子は、多層構造を有していてもよく、例えばコア部とその表面に設けられたシェル部で構成されるコアシェル粒子であってもよい。本開示の重合体粒子が多層構造を有する場合には、最外殻の層における組成が上記範囲であることが好ましい。
【0022】
<カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位>
本開示において、カルボキシル基含有モノマーとは、少なくとも1つのカルボキシル基および/またはカルボキシル基の塩と、重合性の炭素炭素二重結合を有する化合物をいう。ただし、上記一般式(2)で表される単量体は、カルボキシル基含有モノマーには含めない。
【0023】
本開示において、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位とは、カルボキシル基含有モノマーの少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。なお、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位は、カルボキシル基含有モノマーの少なくとも1つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、カルボキシル基含有モノマーが重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。例えば、カルボキシル基含有モノマーが、アクリル酸、CH=CH(COOH)、である場合、アクリル酸由来の構造単位は、-CH2-CH(COOH)-、で表すことができる。ただし、上記一般式(1)で表される構造単位は、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位には含めない。
【0024】
カルボキシル基含有モノマーは、モノカルボキシル基含有モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、またはこれらの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等)が挙げられ、ジカルボン酸系モノマーとして、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、またはこれらの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等)が挙げられ、さらにこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、またはこれらの塩が重合速度の観点から好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸が特に好ましい。
【0025】
<その他の単量体に由来する構造単位>
本開示の重合体粒子は、上記一般式(1)で表される構造単位と、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位以外の単量体に由来する構造単位(以下、「その他の単量体に由来する構造単位」ともいう)を1種または2種以上含んでいても良い。すなわち、上記一般式(2)で表される単量体、カルボキシル基含有モノマー以外の単量体(以下、「その他の単量体」といもいう)に由来する構造単位を1種または2種以上含んでいても良い。
【0026】
その他単量体としては、特に限定されず、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどのシラン基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等の窒素原子含有単量体;エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどのオキソ基含有単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体;2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-(メタ)アクリレート等の光安定化単量体;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などの紫外線吸収性単量体、多官能エチレン性不飽和単量体などが例示される。
【0027】
多官能エチレン性不飽和単量体としては、エチレン性の炭素炭素二重結合を2または3以上含む化合物であれば、特に制限されないが、例えば、CH2=CH-基、CH2=CH-O-基、CH2=CH-CH2-O-基、CH2=C(CH3)-CH2-O-基、CH2=CH-CH2-CH2-O-基、CH2=C(CH3)-CH2-CH2-O-基、CH2=CH-CO-O-基、CH2=C(CH3)-CO-O-基、CH2=CH-CO-NH-基、から選択される1種または2種以上のエチレン性の炭素炭素二重結合を2または3以上含む化合物が例示される。
【0028】
本開示において、多官能エチレン性不飽和単量体としては、分子量が50以上、1000以下であることが好ましく、100以上、400以下であることがより好ましい。
【0029】
本開示において、多官能エチレン性不飽和単量体としては、ジビニルベンゼン;1,3-ブタジエン;トリビニルベンゼン;ジビニルナフタレン;トリビニルシクロヘキサン;ジビニルエーテル;ジアリルエーテル;多価メタクリル酸エステル、N、N’-メチレンビスアクリルアミド等が例示される。耐加水分解性の観点から、ジビニルベンゼン、ジアリルエーテル、多価メタクリル酸エステル等が好ましく、より好ましくは、ジビニルベンゼン、多価メタクリル酸エステルが好ましく、さらに好ましくは、ジビニルベンゼンである。ジアリルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ジブチレングリコールジアリルエーテル等のジアルキレングリコールジアリルエーテル;ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリブチレングリコールジアリルエーテル等のポリアルキレングリコールジアリルエーテルが挙げられる。また、多価メタクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、メタクリル変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0030】
その他単量体に由来する構造単位とは、その他単量体の、少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。例えば、ジビニルベンゼン、CH2=CH-C6H4-CH=CH2、であれば、ジビニルベンゼン由来の構造単位は、例えば-CH2-CH-C6H4-CH-CH2-、で表すことができる。その他単量体由来の構造単位は、例えば、その他単量体をラジカル重合することにより形成することができる。なお、その他単量体由来の構造単位は、その他単量体の炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、その他単量体が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
【0031】
本開示の重合体粒子は、その他の単量体に由来する構造単位を、0.01質量%以上含むことが好ましく、0.1質量%以上含むことがより好ましく、0.5質量%以上含むことがさらに好ましく、1.0質量%以上含むことがよりさらに好ましく、2.0質量%以上含むことが特に好ましい。一方、本開示の重合体粒子は、その他の単量体に由来する構造単位を、30.0質量%以下含むことが好ましく、20.0質量%以下含むことがより好ましく、18.0質量%以下含むことがさらに好ましく、15.0質量%以下含むことがよりさらに好ましく、12.5質量%以下含むことが特に好ましい。
【0032】
上記範囲であることにより、本開示の重合体粒子は吸湿速度が速く吸湿能力が向上する傾向にある。また、吸湿後の凝集も起こしにくく、経時安定性が良好となる。
【0033】
本開示の重合体粒子は、多層構造を有していてもよく、例えばコア部とその表面に設けられたシェル部で構成されるコアシェル粒子であってもよい。本開示の重合体粒子が多層構造を有する場合には、最外殻の層における組成が上記範囲であることが好ましい。
【0034】
[本開示の重合体粒子の性状]
本開示の重合体粒子は、体積平均粒子径が50nm~10.0μmであることが好ましく、80nm~8.0μmであることがより好ましく、100nm~6.0μmであることがさらに好ましく、120~5.0μmであることが特に好ましい。
【0035】
[本開示の重合体粒子の製造方法]
本開示の重合体粒子は、特に限定されないが、式(2)で表される単量体のうちRが炭素数1~4のアルキル基であるもの(以下、ヒドロキシメチルアクリル酸エステルという)と、カルボキシル基含有モノマーと(以下、これらをまとめて「原料単量体成分」という場合がある)を水系溶媒中で重合し、必要に応じ、部分的に又は完全に加水分解することにより製造することが好ましい。
重合方法としては、懸濁重合、乳化重合、分散重合等が挙げられる。中でも、乳化剤の存在下、上記原料単量体成分を反応溶媒に分散させて(ラジカル)重合反応を行う乳化重合が好ましく、具体的には、本発明の重合体粒子の製造方法としては、乳化剤の存在下、式(2)で示される単量体の少なくとも1種と、多官能エチレン性不飽和単量体とを水系溶媒に分散させて重合反応を行う乳化重合を含むことが好ましい。乳化重合は、1段階のみで行ってもよく多段階で行ってもよい。
【0036】
前記乳化剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、非反応型界面活性剤であっても、ラジカル重合可能な基を構造中に有する反応型界面活性剤であってもよい。
【0037】
非反応型界面活性剤には、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が包含される。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル(アリル)スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸塩等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0038】
反応型界面活性剤には、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が包含される。アニオン性反応型界面活性剤としては、エーテルサルフェート型反応型界面活性剤、リン酸エステル系反応型界面活性剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0039】
乳化剤は、原料単量体成分の合計100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
【0040】
本開示において、水系溶媒とは、水単独、または水と水混和性有機溶媒との混合溶媒が挙げられるが、水単独であることが好ましい。水系溶媒とは、典型的には、水の含有量が50体積%を超える溶媒を指す。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等を用いることができる。水混和性有機溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール等)を用いることができる。重合体粒子中に有機溶媒が極力残存しないようにする観点から、水系溶媒の80体積%以上が水である水系溶媒が好ましく、水系溶媒の90体積%以上が水である水系溶媒がより好ましく、水系溶媒の95体積%以上が水である水系溶媒がさらに好ましく、実質的に水からなる水系溶媒(99.5体積%以上が水である水系溶媒)が特に好ましく、水単独であることが最も好ましい。
【0041】
原料単量体成分を重合する際には、例えば、重合開始剤、紫外線や放射線の照射、熱の印加等の手段が用いられ、重合開始剤を使用することが好ましく、原料単量体成分を効率よく反応させ、残存するモノマーを十分に低減させる観点から、酸化剤及び還元剤を組み合わせた重合開始剤(レドックス型重合開始剤)が好ましい。
【0042】
本開示の重合体粒子の加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、アンモニア水溶液、シクロヘキシルアミン水溶液等の塩基性水溶液を添加することで加水分解を行うことができる。さらに、加水分解液に適宜酸を添加することで、部分中和又は完全中和を行うことができる。加水分解及び中和を行うことで、式(1)のRに該当する基を水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ金属原子またはアンモニウムにできる。重合時、加水分解時、及び中和時に用いる酸や塩基の量を調整したり、Rが水素原子である単量体単位の割合を調整することで、重合体粒子のpH及び粒子表面の親水性を容易に調整することができるため、本開示の重合体粒子は吸湿速度が速く吸湿能力向上する傾向にある。
【0043】
[本開示の重合体粒子を含む吸湿剤]
本開示の重合体粒子を吸湿剤として使用する方法としては、特に制限はない。例えば重合体粒子をそのまま乾燥する方法やさらに粉末化する方法、紙、フィルム、シート等の適当な基材に定着させて吸湿性シートとして使用する方法、樹脂、繊維、塗料等に練り込んで使用する方法等を挙げることができる。
【0044】
定着される基材としては特に限定はなく、使用される用途に応じて適宜選択し用いることができる。例えば、紙、不織布、織物、編み物、繊維成形体、フィルム、シートなどの形態を有するもので、またこの素材としては有機物あるいは無機物等、特に限定はない。
【0045】
定着させる方法についても特に限定はなく、重合体粒子を含む溶液を基材に付着あるいは含浸させ、その後乾燥等により溶媒等を除く方法をとることができる。溶媒としては、水、あるいは有機溶剤があり、またそれらの混合物も使用することができる。
【0046】
本開示の重合体粒子を含む吸湿剤は、本開示の重合体粒子のみを含んでいても良いが、他の成分を含んでいても良い。他の成分としては、本開示の重合体粒子以外の重合体粒子、無機系吸湿剤、吸水性樹脂、染料、顔料などが例示される。
【0047】
本開示の重合体粒子を含む吸湿剤は、本開示の重合体粒子を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%以下含むことが好ましく、98質量%以下含むことがより好ましい。
【0048】
本開示の重合体粒子は高い彩色性を発現するため、化粧料、筆記用品など、各種分野への応用も可能となる。
【実施例
【0049】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0050】
<体積平均粒子径>
重合体粒子分散体をイオン交換水で希釈したものを光散乱粒度分布測定機(スペクトリス社製「Zetasizer Ultra」)を用いて測定して、動的光散乱法により重合体粒子の体積平均粒子径(nm)を求めた。
【0051】
<吸湿性評価>
蓋つきの内径5cmのガラス製の秤量瓶を用意し、秤量瓶の質量を測定し、測定した質量を(g)とした。次に、得られた試験用粉末約0.5質量部を蓋つきの内径5cmのガラス製の秤量瓶に入れた後に蓋をして、正確に質量を測定し、測定した質量をY(g)とした。続いて、試験用粉末入りのシャーレの蓋を外した状態で、恒温恒湿器(エスペック社製「SH-241」)に入れて温度20℃、相対湿度65%の条件下で静置し、試験開始から所定時間後に、シャーレに蓋をして取り出して、吸湿後の質量を測定し、測定した質量をZ(g)とした。吸湿率は以下の計算式で計算した。試験開始1時間後の吸湿率を、初期吸湿率とし、試験開始24時間後の吸湿率を、飽和吸湿率とした。同様に、温度30℃、相対湿度90%の条件下で試験し、所定時間後の吸湿率を算出した。
吸湿率(%)=[(Z-Y)/(Y-X)]×100
また、吸湿率の温度依存性を示す環境依存度指数を計算した。
環境依存指数=飽和吸湿率(温度20℃×相対湿度65%)/飽和吸湿率(温度30℃×相対湿度90%)
【0052】
<分散安定性評価>
重合体粒子が2.0質量%となるようにイオン交換水を加えた重合体粒子分散体を、50mlのスクリュー管に40質量部入れ、室温で静置した。24時間後、重合体粒子分散体を目開き16μmのステンレス製メッシュに流し、メッシュ上に残渣が残らなかった場合は「〇」、残渣が残った場合は「×」として分散安定性を評価した。
【0053】
[重合体粒子の合成]
<製造例1>
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水815.8質量部およびエーテルサルフェート型アンモニウム塩を主成分とするアニオン性反応型界面活性剤アデカリアソープSR-20(有効成分100質量%、ADEKA社製)をイオン交換水で有効成分25.0質量%に希釈したもの(以下、「SR-20(有効成分25.0質量%)」という)を1.44質量部加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、上記反応釜とは異なる容器で、2-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル(以下「RHMA」と称する)255.0質量部、ジビニルベンゼン(新日鉄住金化学社製、ジビニルベンゼン純度81%、以下「DVB810」と称する)30.0質量部、メタクリル酸(以下「MAA」と称する)15.0質量部とを混合して、単量体組成物300.0質量部を調製した。次に、上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物60.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度2.0質量%)20.0質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度3.0質量%)20.0質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。続いて、上記単量体組成物の残部240.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度1.6質量%)100.0質量部、L-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度2.4質量%)100.0質量部、SR-20(有効成分25.0質量%)22.6質量部とアンモニア水溶液(アンモニア濃度28.0質量%)0.5質量部と脱イオン水52.9質量部の混合組成物76.0質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ4時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、75℃で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、重合体粒子(1A)が分散した重合体粒子分散体(1a)を得た。
前記で得られた重合体粒子分散体(1a)30.0質量部、及び塩基性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(濃度10.0質量%)9.2質量部を混合し、25℃で終夜撹拌することにより、加水分解された重合体粒子(1B)が分散した重合体粒子分散体(1b)を得た。この際、重合体粒子分散体中のRHMAとMAAの合計したモル数に対し、加えた水酸化ナトリウムのモル数の割合は50%であった。
【0054】
<製造例2および3>
製造例1において単量体組成物の比率を表1の通り変更したこと以外は、製造例1と同様にして重合体粒子(2B)および重合体粒子(3B)が分散した重合体粒子分散体(2b)および(3b)をそれぞれ合成した。
【0055】
<製造例4>
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水815.8質量部およびエーテルサルフェート型アンモニウム塩を主成分とするアニオン性反応型界面活性剤アデカリアソープSR-20(有効成分100質量%、ADEKA社製)をイオン交換水で有効成分25.0質量%に希釈したもの(以下、「SR-20(有効成分25.0質量%)」という)を1.44質量部加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、上記反応釜とは異なる容器で、RHMA 18.0質量部、DVB810 6.0質量部、MAA 36.0質量部とを混合して、単量体組成物60.0質量部を調製した。次に、上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物60.0質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度2.0質量%)20.0質量部、及びL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度3.0質量%)20.0質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。初期重合完了後、75℃で1時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、重合体粒子(4A)が分散した重合体粒子分散体(4a)を得た。
前記で得られた重合体粒子分散体(4a)30.0質量部、及び塩基性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(濃度10.0質量%)3.8質量部を混合し、25℃で終夜撹拌することにより、加水分解された重合体粒子(4B)が分散した重合体粒子分散体(4b)を得た。この際、重合体粒子分散体中のRHMAとMAAの合計モル数に対し、加えた水酸化ナトリウムのモル数の割合は50%であった。
【0056】
<製造例5>
製造例4において単量体組成物の比率を表1の通り変更したこと以外は、製造例4と同様にして重合体粒子(5B)が分散した重合体粒子分散体(5b)を合成した。
【0057】
<製造例6>
製造例1において単量体組成物の比率を表1の通り変更し、加えた水酸化ナトリウムのモル数の割合を75%にしたこと以外は、製造例1と同様にして重合体粒子(6B)が分散した重合体粒子分散体(6b)を合成した。
【0058】
<製造例7>
製造例1において単量体組成物の比率を表1の通り変更し、加えた水酸化ナトリウムのモル数の割合を100%にしたこと以外は、製造例1と同様にして重合体粒子(7B)が分散した重合体粒子分散体(7b)を合成した。
【0059】
<製造例8および9>
製造例4において単量体組成物の比率を表1の通り変更したこと以外は、製造例4と同様にして重合体粒子(8B)および重合体粒子(9B)が分散した重合体粒子分散体(8b)および(9b)をそれぞれ合成した。
【0060】
[吸湿性評価試料]
(実施例1)
ステンレス製バットに重合体粒子分散体(1b)を投入し、送風定温恒温器(ヤマト科学社製「DNF400」)にて120℃で30分間乾燥した。得られた乾燥粉体をメノウ鉢ですりつぶし乾燥粉末とした。続いて、乾燥粉末を再度送風定温恒温器にて105℃で30分間乾燥させ、試験用粉末を得た。
(実施例2~7、比較例1~2)
実施例1において、重合体粒子分散体(1b)を重合体粒子分散体(2b)~(9b)に変更した以外は実施例1と同様にして、試験用粉末を得た。
(比較例3)
アクリル酸塩系の高吸水性ポリマー(富士フィルム和光純薬製)を再度送風定温恒温器にて105℃で30分間乾燥させ、試験用粉末を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の結果から、吸湿速度が速く、吸湿能力が良好な、吸湿性を有する重合体粒子を提供することを目的とする。