(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】空調制御装置、空調システム、換気促進方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20240906BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240906BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240906BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20240906BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/46
F24F7/007 B
F24F11/70
(21)【出願番号】P 2020185820
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】平岡 拓也
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-303835(JP,A)
【文献】特開2017-138074(JP,A)
【文献】特開2018-162925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間にて換気が行われていることを検出する換気検出手段と、
前記換気検出手段が、前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、
第1の風と第2の風とを吹き出して前記空調対象空間を空調する室内機を制御して
、前記第1の風により換気を促進
し前記第2の風により前記空調対象空間に存在する人の体感温度を調整する空調制御を行う空調制御手段と、
を備える空調制御装置。
【請求項2】
空調対象空間にて換気が行われていることを検出する換気検出手段と、
前記換気検出手段が、前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、前記空調対象空間を空調する
第1の室内機と第2の室内機とを制御して
、前記第1の室内機が吹き出す風により換気を促進
し前記第2の室内機が吹き出す風により前記空調対象空間に存在する人の体感温度を調整する空調制御を行う空調制御手段と、
を備える空調制御装置。
【請求項3】
空調対象空間にて換気が行われていることを検出する換気検出手段と、
前記換気検出手段が、前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、前記空調対象空間を空調する室内機を制御して換気を促進する空調制御を行う空調制御手段と、
前記空調対象空間にて換気を開始すべきタイミングを検出するタイミング検出手段と、
前記空調対象空間に存在する人の人数を検出する人数検出手段と、
前記人数検出手段により検出された人数に基づいて、換気すべき期間を算出する換気期間算出手段と、
前記換気期間算出手段により算出された前記換気すべき期間の間、前記空調対象空間にて換気を行う換気装置を制御する換気制御手段と、
を備える空調制御装置。
【請求項4】
前記換気検出手段は、前記空調対象空間を換気する換気装置の動作状態を示す情報に基づいて、前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出する、
請求項1
から3のいずれか1項に記載の空調制御装置。
【請求項5】
前記換気検出手段は、ユーザが入力した情報に基づいて、前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出する、
請求項1
から4のいずれか1項に記載の空調制御装置。
【請求項6】
前記換気検出手段は、前記空調対象空間に設置された内気温センサが示す前記空調対象空間の内気温の変化に基づいて、前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の空調制御装置。
【請求項7】
熱画像センサにより撮像された前記空調対象空間の熱画像に基づいて、前記空調対象空間に存在する開口部を検出する開口部検出手段をさらに備え、
前記換気検出手段は、前記熱画像における前記開口部の温度変化に基づいて、前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の空調制御装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の空調制御装置と、
前記空調対象空間を空調し前記空調制御手段により制御される室内機と、
を備える空調システム。
【請求項9】
空調対象空間にて換気が行われていることを検出し、
前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、
第1の風と第2の風とを吹き出して前記空調対象空間を空調する室内機を制御して
、前記第1の風により換気を促進
し前記第2の風により前記空調対象空間に存在する人の体感温度を調整する空調制御を行う、
換気促進方法。
【請求項10】
空調対象空間にて換気が行われていることを検出し、
前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、前記空調対象空間を空調する
第1の室内機と第2の室内機とを制御して
、前記第1の室内機が吹き出す風により換気を促進
し前記第2の室内機が吹き出す風により前記空調対象空間に存在する人の体感温度を調整する空調制御を行う、
換気促進方法。
【請求項11】
空調対象空間にて換気が行われていることを検出し、
前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、前記空調対象空間を空調する室内機を制御して換気を促進する空調制御を行
い、
前記空調対象空間にて換気を開始すべきタイミングを検出し、
前記空調対象空間に存在する人の人数を検出し、
検出した人数に基づいて、換気すべき期間を算出し、
算出した前記換気すべき期間の間、前記空調対象空間にて換気を行う換気装置を制御する、
換気促進方法。
【請求項12】
コンピュータに、
空調対象空間にて換気が行われていることを検出させ、
前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、
第1の風と第2の風とを吹き出して前記空調対象空間を空調する室内機を制御して
、前記第1の風により換気を促進
し前記第2の風により前記空調対象空間に存在する人の体感温度を調整する空調制御を行わせる、
プログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
空調対象空間にて換気が行われていることを検出させ、
前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、
第1の風と第2の風とを吹き出して前記空調対象空間を空調する室内機を制御して
、前記第1の風により換気を促進
し前記第2の風により前記空調対象空間に存在する人の体感温度を調整する空調制御を行わせる、
プログラム。
【請求項14】
コンピュータに、
空調対象空間にて換気が行われていることを検出させ、
前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、前記空調対象空間を空調する室内機を制御して換気を促進する空調制御を行わせ
、
前記空調対象空間にて換気を開始すべきタイミングを検出させ、
前記空調対象空間に存在する人の人数を検出させ、
検出した人数に基づいて、換気すべき期間を算出させ、
算出した前記換気すべき期間の間、前記空調対象空間にて換気を行う換気装置を制御させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調制御装置、空調システム、換気促進方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内、建物内などの空調対象空間において、換気と内気温調整とを両立するための技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、空調対象空間に設けられた窓、ドア、換気扇などの換気可能な開口部の状態を検出し、開口部による換気が行われているときに、開口部を介した空気の流出入を緩和するように空調制御を行う技術が開示されている。この技術により、空調対象空間の内気温に大きな変化を及ぼさずに済むため、ユーザの快適性を保持できる。つまり、この技術により、換気と内気温調整との両立が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術は、開口部を介した空気の流出入を緩和するように空調制御を行うものであるため、換気効率が悪化するという問題がある。そのため、例えば換気に要する期間が長くなり内気温調整に弊害が生じてしまい、空調対象空間にいるユーザの快適性をかえって損なってしまう可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、上記の事情に鑑み、換気を促進する空調制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示に係る空調制御装置は、
空調対象空間にて換気が行われていることを検出する換気検出手段と、
前記換気検出手段が、前記空調対象空間にて換気が行われていることを検出したときに、第1の風と第2の風とを吹き出して前記空調対象空間を空調する室内機を制御して、前記第1の風により換気を促進し前記第2の風により前記空調対象空間に存在する人の体感温度を調整する空調制御を行う空調制御手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、換気を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る空調システムの全体構成を示す図
【
図2】本開示の実施の形態1に係る空調システムによる換気促進の一例を示す図
【
図3】本開示の実施の形態1に係る空調システムによる換気促進の一例を示す図
【
図4】本開示の実施の形態1に係る空調制御装置の機能的構成を示す図
【
図5】本開示の実施の形態1に係る室内機の機能的構成を示す図
【
図6】本開示の実施の形態1に係る空調制御装置のハードウェア構成の一例を示す図
【
図7】本開示の実施の形態1に係る空調制御装置による換気促進の動作の一例を示すフローチャート
【
図8】本開示の実施の形態1の変形例1に係る空調制御装置の機能的構成を示す図
【
図9】本開示の実施の形態1の変形例2に係る空調制御装置の機能的構成を示す図
【
図10】本開示の実施の形態1の変形例3に係る空調システムの全体構成を示す図
【
図11】本開示の実施の形態1の変形例3に係る空調制御装置の機能的構成を示す図
【
図12】本開示の実施の形態2に係る室内機を平面視したときの一例を示す図
【
図13】本開示の実施の形態2に係る空調システムによる換気促進の一例を示す図
【
図14】本開示の実施の形態2の変形例1に係る空調システムの全体構成を示す図
【
図15】本開示の実施の形態3に係る空調制御装置の機能的構成を示す図
【
図16】本開示の実施の形態3に係る空調制御装置による換気制御の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態に係る空調システムを説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0011】
(実施の形態1)
図1を参照しながら、実施の形態1に係る空調システム1を説明する。空調システム1は、室内空間Rを空調する空調システムである。また、空調システム1は、室内空間Rに設けられた開口部である窓Wが開けられて換気が行われているときに、換気を促進するための空調を行う空調システムである。空調システム1は、空調制御装置10と室内機20とを備える。空調制御装置10と室内機20とは通信線にて通信可能に接続されている。空調システム1は、本開示に係る空調システムの一例である。
【0012】
室内空間Rは、例えば住宅内の1部屋内の空間、オフィスビル内の1居室内の空間などの室内空間である。室内空間Rでは、空調システム1の室内機20による空調が行われる。室内空間Rは、本開示に係る空調対象空間の一例である。
【0013】
窓Wは、室内空間Rと、室内空間Rの外部との境界に設けられた、開閉可能な窓である。室内空間Rにいる在室者は、窓Wを開けることにより室内空間Rの換気をすることができる。窓Wは、本開示に係る開口部の一例である。
【0014】
室内機20は、空調制御装置10及び図示しない室外機と協働して室内空間Rを空調する室内機である。
図1において、室内機20は室内空間Rの天井に設けられた天井カセット型の室内機である。室内機20は、空調制御装置10による制御に基づいて室内空間Rを空調する。室内機20の詳細な構成については後述する。室内機20は、本開示に係る室内機の一例である。
【0015】
空調制御装置10は、室内機20及び図示しない室外機を制御して、室内空間Rを空調するための空調制御を行う空調制御装置である。
図1においては、空調制御装置10は室内空間Rの外部に設けられているが、空調制御装置10は室内空間Rに設けられていてもよい。あるいは、空調制御装置10は、室内機20あるいは図示しない室外機に内蔵されるものであってもよい。
【0016】
また、空調制御装置10は、開口部である窓Wが開かれ室内空間Rにて換気が行われているとき、室内空間Rにて換気が行われていることを検出し、換気を促進するための空調制御を行う。具体的にどのように換気が行われていることを検出し、どのように換気を促進するかについては後述する。また、空調制御装置10の詳細な構成についても後述する。空調制御装置10は、本開示に係る空調制御装置の一例である。
【0017】
次に、
図2及び
図3を参照しながら、換気を促進するための空調の一例を概略的に説明する。
図2は、窓Wが開けられているときに、室内機20が開けられた窓Wに向かって風Fを送風することにより換気を促進することを示す図である。
図2において室内機20は、風向を制御することによって室内機20から送風される空気が窓Wに送風される位置に設置されている。このような位置に室内機20が配置されている場合において、窓Wが開かれ室内空間Rにて換気が行われていることを空調制御装置10が検出したときに、空調制御装置10が室内機20を制御して上記のように窓Wに向かって風Fを送風することにより、室内機20と窓Wとの間の室内空間Rの空気を窓Wから排出することができ、換気を促進する空調をすることができる。
【0018】
しかし、室内機20と窓Wとの位置関係によっては、室内機20が窓Wに向かって風Fを送風することが、必ずしも換気の促進のために最適とは限らない。例えば
図2に示すものよりも室内機20と窓Wが近接するときには、室内機20から窓Wに風Fを送風しても室内機20と窓Wとの間の短い区間のみ室内空間Rの空気が窓Wに送風され室内空間Rから排出される。このため、室内機20と窓Wが近接する時に室内機20が窓Wに向かって風Fを送風しても室内空間Rの空気を大きく動かすことができず、十分に換気を促進することができない。また、室内機20が窓Wの上方に設けられた壁掛けエアコンである場合または室内機20が設定可能な風向に窓Wの存在する位置が含まれない場合などそもそも室内機20から窓Wに向かって風Fを直接送風することができない場合がある。
【0019】
そこで、室内機20と窓Wが近接する場合または室内機20から窓Wに向かって風Fを直接送風することができない場合には、空調制御装置10が室内機20を制御して、
図3に示すように、窓Wを避けて風Fを送風することで室内空間Rの空気を動かし、換気を促進する空調をすることができる。特に
図3に示すように、空調制御装置10が室内機20を制御して、室内機20を基点として室内機20と最も近い窓Wの存在する室内空間Rの壁とは反対の方向(
図3では右方向が該当)に風Fを送風することが望ましい。反対の方向に風Fを送風することによって、窓Wが存在する壁とは逆側の壁に向けて室内機20が風Fを送風することにより対流Cが発生し、室内空間R全体の空気を動かすことができるので、換気をより促進する空調をすることができる。
【0020】
なお、室内機20が窓Wに近接しているか否かは以下に示すように判断することができる。例えば、室内機20と窓Wの距離が予め定められた距離L以上である場合は室内機20と窓Wが近接していないとし、室内機20と窓Wの距離が予め定められた距離L未満である場合は室内機20と窓Wが近接しているとする。この際に、室内機20と窓Wの距離は、室内機20の設置者が窓Wと室内機20の吹き出し口までの距離を測定し測定した距離を後述する空調制御装置10の二次記憶装置1004に室内機20のアドレスと紐づけて記憶させる方法、後述する室内機20が有する熱画像センサ220が撮像した熱画像情報から距離を推測する方法などが挙げられる。熱画像センサ220が撮像した熱画像情報から距離を推測する場合、熱画像情報が取得した窓Wに相当する領域の面積または領域の形状から距離が推測できる。例えば、窓Wが同サイズであれば、熱画像情報の窓Wに相当する領域の面積が小さいほど窓Wと室内機20との間の距離は長く、熱画像情報の窓Wに相当する領域の形状が扁平であるほど窓Wと室内機20との間の距離は短いと推測される。なお、窓Wが円形であれば熱画像情報の窓Wに相当する領域の扁平率が大きいほど扁平であるとし、窓Wが四角形であれば窓Wに相当する領域の長辺と短辺の差が大きいほど扁平であるとする。また、予め定められた距離Lは空調システム1の設計者、室内機20の設置者または空調システム1のユーザが後述する空調制御装置10の二次記憶装置1004に記憶させる。さらに、予め定められた距離Lの値は、室内機20と窓Wとの距離が距離L未満である場合に室内機20が窓Wを避けて風Fを送風した場合の換気量が、室内機20が窓Wに向かって風Fを送風した場合の換気量より大きくなるような値に、室内空間Rを模擬した実験またはシミュレーションを行うことによって決められることが望ましい。
【0021】
次に、
図4を参照しながら、空調制御装置10の機能的構成を説明する。空調制御装置10は、制御部100と記憶部110と通信部120とを備える。
【0022】
通信部120は、室内機20と通信し、空調制御のために必要な情報を送受信する。通信部120は、例えばGPIO(General-purpose input/output:汎用入出力)インタフェースである。通信部120は特に、後述する熱画像情報を室内機20から受信して制御部100に送信し、制御部100から室内機20を制御するための制御情報を受信して室内機20に送信する。後述するように、熱画像情報とは、室内機20が備える熱画像センサにより撮像された熱画像を示す情報である。熱画像情報は、換気が行われていることを検出するために使用される。より詳細には、熱画像情報が示す熱画像において急激に温度変化が生じる箇所があったとき、熱画像処理部101が、当該箇所を開かれた窓Wであると判定し、換気検出部103が、窓Wを開けることにより換気が行われていることを検出する。つまり、換気検出部103は、熱画像の変化に基づいて換気が行われていることを検出する。
【0023】
記憶部110は、室内機20から受信した熱画像情報を保存する。後述するように、熱画像情報が示す熱画像の変化に基づいて、換気が行われていることを検出するので、熱画像情報を保存することが必要となる。
【0024】
制御部100は、空調制御装置10を統括制御する。制御部100は、熱画像処理部101と開口部検出部102と換気検出部103と空調制御部104とを備える。
【0025】
熱画像処理部101は、定期的に通信部120を介して室内機20から熱画像情報を受信し、受信した熱画像情報を時系列的に記憶部110に保存する。熱画像処理部101は、例えば1分ごとに室内機20から熱画像情報を受信して記憶部110に保存する。熱画像情報を時系列的に保存する理由は、上記のとおり換気が行われていることの検出は、熱画像の変化に基づいてなされるため、過去の熱画像情報が必要となるからである。ただし、換気が行われていることが検出できる程度の分だけ熱画像情報が保存されていればよいので、熱画像処理部101は、例えば直近10分間よりも前に記憶部110に保存された熱画像情報を削除してもよい。
【0026】
開口部検出部102は、記憶部110に時系列的に保存された熱画像情報に基づいて、室内空間Rに設けられた開口部を検出する。例えば、開口部検出部102は、窓Wと室内空間Rに設けられた壁面とでは温度分布に差があることを利用して、開口部である窓Wを検出する。窓Wは外気に面しているため壁面よりも外気に近い温度となるため、温度分布に差が生じる。そのため、熱画像上において窓Wに相当する領域とその他の領域とでは温度分布に差が生じる。開口部検出部102は、熱画像上における温度分布の違いに基づいて、熱画像上において窓Wに相当する領域を検出することができる。開口部検出部102は、本開示に係る開口部検出手段の一例である。
【0027】
なお、開口部検出部102は、窓Wが開けられているときの熱画像情報に基づいて、開口部である窓Wを検出してもよい。例えば、窓Wが二重窓である場合には、窓Wが閉じているときには壁面との温度差が生じないことが想定される。そのため、窓Wと壁面との温度差が生じていないときには開口部の検出を諦め、窓Wが開けられ窓Wと壁面との温度差が生じているときにのみ開口部である窓Wの検出を試みてもよい。開口部検出部102は、例えば室内空間Rに設けられた開口部が窓Wではなくドアであるときにも、上記のように開口部を検出することができる。
【0028】
換気検出部103は、記憶部110に時系列的に保存された熱画像情報に基づいて、開口部検出部102が検出した熱画像上における窓Wに対応する領域において急激な温度変化が生じているか否かを判定する。換気検出部103は、窓Wに対応する領域において急激な温度変化が生じているとき、窓Wが開けられ室内空間Rにて換気が行われていることを検出する。窓Wが開けられたとき、窓Wを介して室内空間Rと外部との間で空気の流出入が生じるので、窓Wの周辺の領域では急激な温度変化が生じるからである。換気検出部103は、本開示に係る換気検出手段の一例である。
【0029】
また、換気検出部103は、記憶部110に時系列的に保存された熱画像情報に基づいて、窓W周辺の空気の温度が、ゆるやかに他の領域の空気の温度に近づいているか否かを判定する。換気検出部103は、窓W周辺の空気の温度が、ゆるやかに他の領域の空気の温度に近づいているとき、窓Wが閉められ換気が行われていないことを検出する。窓Wが閉められているとき、窓W周辺の空気の温度はゆるやかに他の領域の空気の温度に近づくからである。
【0030】
なお、在室者が室内空間R内を移動したときにも、熱画像上において急激な温度変化が生じるが、この場合は急激な温度変化が生じている領域の形状が四角形でないこと、温度変化が生じている領域が一定の領域ではなく在室者の移動にあわせて変化するものであることなどから、換気検出部103は、在室者の移動により温度変化が生じた領域と、窓Wが開けられたことにより温度変化が生じた領域とを区別することができる。
【0031】
空調制御部104は、換気検出部103が室内空間Rにて換気が行われていることを検出したときに、換気を促進するように室内機20を制御する。具体的には、空調制御部104は、例えば室内機20が
図2あるいは
図3に示すような送風を行うための制御信号を、通信部120を介して室内機20に送信することにより室内機20を制御する。このとき、空調制御部104は、風向の制御のみならず、風量の制御をしてもよい。換気を促進するときには風量を通常より多くしたほうが好ましいからである。空調制御部104は、本開示に係る空調制御手段の一例である。
【0032】
なお、空調制御部104は、開口部検出部102が熱画像上において検出した窓Wの領域に基づいて風向を制御することが好ましい。例えば
図2に示す風向制御を精度良く行うためには、熱画像上のどの領域が窓Wの領域であるかを特定する必要がある。
【0033】
次に、
図5を参照しながら、室内機20の機能的構成を説明する。室内機20は、制御部200とメインユニット210と熱画像センサ220と通信部230とを備える。
【0034】
メインユニット210は、室外機と協働して熱交換を行う熱交換器、室内空間Rに風を送風するファン、風の方向を調整するルーバー、室温を測定する温度センサなど、室内機20が空調装置として機能するための主要部を含む。メインユニット210は、後述する制御部200のユニット制御部202による制御に基づいて動作する。
【0035】
熱画像センサ220は、室内空間Rの温度分布を示す熱画像を撮像する熱画像センサである。室内空間R全体の熱画像を撮像可能とするために、熱画像センサ220は回動可能であることが好ましい。あるいは、熱画像センサ220は複数の熱画像センサを含み、複数の熱画像センサが協働して室内空間R全体を撮像するものであってもよい。熱画像センサ220は、本開示に係る熱画像センサの一例である。
【0036】
通信部230は、空調制御装置10と通信し、空調制御のために必要な情報を送受信する。通信部230は、例えばGPIOインタフェースである。通信部230は特に、熱画像センサ220により撮像された熱画像を示す熱画像情報を制御部200から受信して空調制御装置10に送信し、空調制御装置10から室内機20を制御するための制御情報を受信して制御部200に送信する。
【0037】
制御部200は、室内機20を統括制御する。制御部200は、熱画像取得部201とユニット制御部202とを備える。
【0038】
熱画像取得部201は、熱画像センサ220が撮像した室内空間Rの熱画像を示す熱画像情報を取得する。また、熱画像取得部201は、取得した熱画像情報を、通信部230を介して空調制御装置10に送信する。
【0039】
ユニット制御部202は、通信部230を介して空調制御装置10から空調制御に関する制御情報を受信する。ユニット制御部202は、受信した制御情報に基づいてメインユニット210を制御する。ユニット制御部202は、メインユニット210を制御して風向及び風量を制御することにより、空調制御装置10の制御に基づいて換気を促進することができる。
【0040】
次に、空調制御装置10のハードウェア構成の一例について、
図6を参照しながら説明する。
図6に示す空調制御装置10は、例えばパーソナルコンピュータ、マイクロコントローラなどのコンピュータにより実現される。
【0041】
空調制御装置10は、バス1000を介して互いに接続された、プロセッサ1001と、メモリ1002と、インタフェース1003と、二次記憶装置1004と、を備える。
【0042】
プロセッサ1001は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)である。プロセッサ1001が、二次記憶装置1004に記憶された動作プログラムをメモリ1002に読み込んで実行することにより、空調制御装置10の各機能が実現される。
【0043】
メモリ1002は、例えば、RAM(Random Access Memory)により構成される主記憶装置である。メモリ1002は、プロセッサ1001が二次記憶装置1004から読み込んだ動作プログラムを記憶する。また、メモリ1002は、プロセッサ1001が動作プログラムを実行する際のワークメモリとして機能する。
【0044】
インタフェース1003は、例えばシリアルポート、GPIOインタフェースなどのI/O(Input/Output)インタフェースである。インタフェース1003により通信部120の機能が実現される。
【0045】
二次記憶装置1004は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)である。二次記憶装置1004は、プロセッサ1001が実行する動作プログラムを記憶する。また、二次記憶装置1004により記憶部110の機能が実現される。
【0046】
次に、
図7を参照しながら、空調制御装置10による換気促進の動作の一例を説明する。
図7に示す動作は、空調制御装置10が稼働しているときには常時実行される。
【0047】
空調制御装置10の制御部100の熱画像処理部101は、室内機20の熱画像センサ220により撮像された室内空間Rの熱画像を示す熱画像情報を室内機20から受信して、受信した熱画像情報を記憶部110に時系列的に保存する(ステップS101)。
【0048】
制御部100の開口部検出部102は、記憶部110に時系列的に保存された熱画像情報に基づいて、室内空間Rに設けられた開口部を検出する(ステップS102)。上記のとおり、実施の形態1においては、開口部は窓Wである。
【0049】
制御部100の換気検出部103は、記憶部110に時系列的に保存された熱画像情報に基づいて開口部が開かれているか否かを判定することにより、換気が行われていること又は換気が行われていないことを検出する(ステップS103)。
【0050】
換気が行われていることが検出されたとき(ステップS103:Yes)、制御部100の空調制御部104は、室内機20を制御して換気を促進するための空調制御を行う(ステップS104)。上記のとおり、空調制御部104は、室内機20が吹き出す風の風向及び風量を制御することにより換気を促進するための空調制御を行う。
【0051】
換気が行われていないことが検出されたとき(ステップS103:No)、空調制御部104は、室内機20を制御して通常の空調制御を行う(ステップS105)。
【0052】
制御部100は、ステップS104又はステップS105の動作ののち、ステップS101からの動作を繰り返す。
【0053】
以上、実施の形態1に係る空調システム1を説明した。実施の形態1に係る空調システム1によれば、換気検出部103が、熱画像情報に基づいて室内空間Rにて換気が行われていることを検出し、換気が行われていることを検出したときに、空調制御部104が室内機20を制御して換気を促進する空調制御を行う。そのため、実施の形態1に係る空調システム1によれば、換気が行われているときに適切に換気を促進することができる。
【0054】
(実施の形態1の変形例1)
実施の形態1では、換気検出部103は、熱画像情報に基づいて換気が行われていることを検出した。これに代えて、換気検出部103は、室内空間Rの内気温の変化に基づいて換気が行われていることを検出してもよい。
【0055】
例えば
図8に示すように、空調制御装置10の制御部100は、熱画像処理部101及び開口部検出部102を備えず、内気温変化検出部101Bを備えるものであってもよい。内気温変化検出部101Bは、通信部120を介して、室内機20から内気温を示す情報を受信し、内気温の変化を検出する。上記のとおり、室内機20のメインユニット210は温度センサを備えるため、室内機20は内気温を示す情報を空調制御装置10に送信することができる。この場合において、室内機20が備える温度センサは、本開示に係る内気温センサの一例である。
【0056】
この場合、換気検出部103は、内気温の変化が急激なものであったときに、換気が開始されたと判定し、換気が行われていることを検出する。開口部である窓Wが開けられたとき、外部との空気の流出入が生じるため内気温に急激な変化が生じることが想定されるからである。
【0057】
また、換気検出部103は、内気温が徐々に換気開始前における内気温に近づく変化をしているとき、換気が終了したと判定し、換気が行われていないことを検出する。開口部である窓Wが閉められたとき、外部との空気の流出入が遮断され、空調により内気温が徐々に換気開始前の内気温に戻るからである。
【0058】
なお、実施の形態1とこの変形例とを併用してもよい。つまり、実施の形態1のように熱画像に基づく検出をメインとしつつ、内気温の変化を補助的に利用してもよい。熱画像と内気温の変化との双方を利用することにより、換気検出の精度の向上が期待できる。
【0059】
(実施の形態1の変形例2)
また、実施の形態1に代えて、換気が行われている旨の情報をユーザが入力し、換気検出部103は当該情報に基づいて換気が行われていることを検出してもよい。例えば
図9に示すように、空調制御装置10の通信部120は室内機20のみならずリモートコントローラ30とも接続され、制御部100は熱画像処理部101及び開口部検出部102に代えて入力情報取得部101Cを備えるものであってもよい。
【0060】
リモートコントローラ30は、空調制御のための情報をユーザから受け付けるためのリモートコントローラである。リモートコントローラ30は特に、換気が行われている旨の情報及び換気が行われていない旨の情報を受け付ける。リモートコントローラ30は、例えば室内空間Rの壁面に設けられた壁掛けリモートコントローラである。
【0061】
入力情報取得部101Cは、ユーザがリモートコントローラ30を介して入力した情報を取得する。入力情報取得部101Cは特に、換気が行われている旨の情報及び換気が行われていない旨を取得する。
【0062】
換気検出部103は、換気が行われている旨の情報を入力情報取得部101Cが取得したときに、換気が行われていることを検出し、換気が行われていない旨の情報を入力情報取得部101Cが取得したときに、換気が行われていないことを検出する。これにより、熱画像センサ、内気温の変化のいずれに基づく換気検出であっても精度良く換気検出ができない場合に対応できる。例えば、開口部として室内空間Rの天井に換気口が設けられている場合には、当該換気口周辺の熱画像を撮像するのが困難である、内気温が急激に変化しない等の可能性があるため、ユーザの入力に基づく換気検出が有効となりうる。
【0063】
(実施の形態1の変形例3)
また、室内空間Rに換気扇、レンジフードなどの換気装置が設けられている場合には、実施の形態1に代えて、当該換気装置の動作状態に基づいて換気検出を行ってもよい。
【0064】
例えば
図10に示すように、室内空間Rには窓Wに代えて換気装置40が設けられ、換気装置40と空調制御装置10とが通信可能に接続されている場合が考えられる。このとき、
図11に示すように、空調制御装置10の通信部120は室内機20のみならず換気装置40とも接続され、制御部100は熱画像処理部101及び開口部検出部102に代えて換気装置状態取得部101Dを備える。
【0065】
換気装置40は、換気装置40自身が稼働しているときに、換気装置40が稼働していることを示す情報、換気装置40が吸気しているのか排気しているのかを示す情報などを空調制御装置10に送信する。なお、換気装置40が稼働していない場合には、空調制御装置10にはこれらの情報は送信されない。
【0066】
換気装置状態取得部101Dは、換気装置40が稼働していることを示す情報、換気装置40が吸気しているか排気しているかを示す情報などを、通信部を介して換気装置40から取得する。
【0067】
換気検出部103は、換気装置40が稼働している旨の情報を換気装置状態取得部101Dが取得したときに、換気が行われていることを検出し、換気装置40が稼働している旨の情報を換気装置状態取得部101Dが取得していないときに、換気が行われていないことを検出する。
【0068】
空調制御部104は、換気装置状態取得部101Dが取得した、換気装置40が吸気しているのか排気しているのかを示す情報に基づいて、室内機20の風向及び風量を制御する。例えば換気装置40が吸気をしているときには、換気装置40に直接風を当てる風向制御よりも、室内空間R内の空気全体に対流を発生させるような風向制御のほうが、吸気を促進するという観点からは好ましい。
【0069】
(実施の形態1のその他の変形例)
実施の形態1において、空調制御部104は、開口部検出部102が熱画像上において検出した窓Wの領域に基づいて風向を制御することが好ましいものとした。しかし、これに代えて、間取り図データに基づいて窓Wの位置を特定してもよい。具体的には、空調制御装置10の記憶部110に室内空間Rに関する間取り図データを予め保存する。当該間取り図データには窓Wの位置に関するデータが含まれるものとする。空調制御装置10は、風向制御を行う際に、当該間取り図データが示す窓Wの位置を参照し、窓Wの位置に基づいて風向制御を行う。この風向制御方法は特に、上記の実施の形態1の変形例1-変形例3においては有効となる。これらの変形例では、制御部100が熱画像処理部101を備えないからである。
【0070】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る空調システム1について、実施の形態1と異なる点を説明する。空調システム1の全体構成は
図1に示すものと同様であり、また、空調制御装置10の機能的構成及び室内機20の機能的構成も
図4及び
図5に示すものと同様である。詳細は以下に説明するが、実施の形態2に係る空調システム1においては、室内機20が2方向に風を吹き出すことが可能であり、空調制御装置10は、それぞれの風により換気の促進と在室者の体感温度の調整との双方を行うための空調制御を行う点が、実施の形態1と異なる。
【0071】
実施の形態2に係る室内機20を下方から平面視した図を
図12にて示す。室内機20は、吹き出し口21aと吹き出し口21bとを備える。室内機20は、吹き出し口21aから吹き出される風と吹き出し口21bから吹き出される風とを、それぞれ異なる風向にて吹き出すことができる。例えば、吹き出し口21aに設けられたルーバーと吹き出し口21bに設けられたルーバーとを、独立に稼働可能なものとすることにより、吹き出し口21aから吹き出される風の風向と吹き出し口21bから吹き出される風の風向とを異なるものとすることができる。
【0072】
図13を参照しながら、2つの風により換気の促進と在室者の体感温度の調整との双方を行うための空調制御の一例を説明する。
図13において、室内機20は、窓Wに向かって吹き出される風F1により換気を促進し、在室者Hに向かって吹き出される風F2により在室者Hの体感温度を調整している。なお、在室者Hの体感温度を調整するためには、必ずしも在室者Hに直接風F2を当てなくてもよい。例えば、在室者Hに直接風F2を当てずに在室者Hの周辺に風F2を吹き出すことにより在室者Hの周囲の空気温度を調整して在室者Hの体感温度を調整することも可能である。
図13に示す例において、風F1は本開示に係る第1の風の一例であり、風F2は本開示に係る第2の風の一例であり、在室者Hは本開示に係る、空調対象空間に存在する人の一例である。
【0073】
なお、室内機20が、吹き出し口21aから吹き出す風の風量と吹き出し口21bから吹き出す風の風量とを異なるものとする風量制御が可能である場合、換気を促進する風の風量を多くして、在室者の体感温度を調整する風の風量を少なくすることも考えられる。例えば、吹き出し口21aから風を吹き出すためのファンと吹き出し口21bから風を吹き出すためのファンとがそれぞれ独立したものである場合、このような風量制御が可能となる。
【0074】
また、室内機20において、吹き出し口21aから吹き出す第1の風の熱源と吹き出し口21bから吹き出す第2の風の熱源とが異なるものである場合、第1の風と第2の風とを、換気を促進する風と在室者の体感温度を調整する風とに割り振ることも考えられる。例えば、室内機20が第1の熱交換器と第2の熱交換器とを備え、第1の熱交換器により温度調整された空気が吹き出し口21aから第1の風として吹き出し、第2の熱交換器により温度調整された空気が吹き出し口21bから第2の風として吹き出す場合を考える。この場合において、第1の風の温度は第2の風の温度よりも高いとする。この条件下において、室内機20により室内空間Rが冷房されている場合を考える。この場合において換気が行われているとき、室内機20は、吹き出し口21aから吹き出される高温の第1の風により換気を促進し、吹き出し口21bから吹き出される低温の第2の風により在室者の体感温度を調整する。第2の風のほうが第1の風よりも低温であるため、在室者の体感温度を調整に適しているからである。
【0075】
空調制御装置10の制御部100の空調制御部104は、上記のような空調制御を実現するために室内機20を制御する。空調制御部104は、在室者の体感温度を調整するための空調制御において、例えば熱画像情報に基づいて在室者の存在位置を検出し、検出した位置に基づいて、在室者の体感温度を調整するための風を吹き出す空調制御を行う。
【0076】
以上、実施の形態2に係る空調システム1を説明した。実施の形態2に係る空調システム1によれば、室内機20が、換気を促進するための風と在室者の体感温度を調整するための風とを吹き出すことにより、換気を促進しつつ、在室者の快適性を維持することができる。
【0077】
(実施の形態2の変形例)
実施の形態2においては、1つの室内機20が換気を促進するための風と在室者の体感温度を調整するための風とを吹き出すことにより、換気を促進しつつ在室者の快適性を維持するものとした。しかし、
図14に示すように、1つの室内機20ではなく室内機20a及び室内機20bにより、換気を促進しつつ在室者の快適性を維持するものとしてもよい。例えば、室内機20aが換気を促進するための第1の風を吹き出し、室内機20bが在室者の体感温度を調整するための第2の風を吹き出すものとしてもよい。この変形例により、室内機20a、室内機20bのそれぞれが1方向にのみ風を吹き出すものであったとしても、室内機20a、室内機20bのそれぞれについて独立して風向を制御可能でさえあれば、換気を促進しつつ在室者の快適性を維持することができる。この場合において、室内機20aは本開示に係る第1の室内機の一例であり、室内機20bは本開示に係る第2の室内機の一例である。
【0078】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3に係る空調システム1について、実施の形態1と異なる点を説明する。実施の形態3に係る空調システム1の全体構成は、
図10に示す実施の形態1の変形例3の場合と概ね同様である。実施の形態3と、実施の形態1の変形例3とでは、空調制御装置10が換気装置40を制御可能な点と、空調制御装置10が室内空間R内の在室者の人数を検出可能な点が主に異なる。詳細は以下に説明するが、実施の形態3に係る空調システム1によれば、室内空間R内の在室者の人数に基づいて換気に必要な期間を算出し、算出した期間の間だけ換気装置40を稼働し、換気装置40の稼働中に室内機20により換気を促進する空調をすることができる。
【0079】
図15を参照しながら、実施の形態3に係る空調制御装置10を説明する。実施の形態3に係る空調制御装置10の通信部120は、室内機20のみならず換気装置40とも通信可能に接続されている。また、実施の形態3に係る空調制御装置10の制御部100は、熱画像処理部101と開口部検出部102に代えて、タイミング検出部105と人数検出部106と換気期間算出部107と換気制御部108とを備える。ただし、後述の人数検出の際に熱画像を用いる方法もあるため、人数検出の際に熱画像を用いる方法を採用する場合には、制御部100は熱画像処理部101を備えてもよい。
【0080】
タイミング検出部105は、換気を開始すべきタイミングを検出する。換気を開始すべきタイミングとは、例えば平日の午前9時から午後17時までの毎時0分などの予め定められた時刻である。あるいは、後述の人数検出部106により検出された、室内空間R内の在室者の人数が変化したときを、換気を開始すべきタイミングとして検出する。タイミング検出部105は、本開示に係るタイミング検出手段の一例である。
【0081】
人数検出部106は、室内空間R内の在室者の人数を検出する。例えば、室内機20が人感センサをさらに備え、人数検出部106が、通信部120を介して室内機20から人感センサにより検出した人の数を示す情報を受信することにより、室内空間R内の在室者の人数を検出する。あるいは、実施の形態1の場合と同様に熱画像処理部101が室内機20から熱画像情報を受信して記憶部110に保存し、人数検出部106が熱画像情報に基づいて熱画像内の人を検出し、検出した人の数を室内空間R内の在室者の人数として検出してもよい。人数検出部106は、本開示に係る人数検出手段の一例である。
【0082】
換気期間算出部107は、人数検出部106が検出した人数に基づいて、換気に必要な期間を算出する。換気に必要な期間は、例えば以下の式(1)により算出される。
【0083】
換気に必要な期間[h]=必要換気量[m3/人]×検出人数[人]÷換気装置40の排気能力[m3/h]・・・(1)
【0084】
式(1)において、必要換気量は、在室者一人あたりの換気すべき空気の量である。必要換気量は、例えば30[m3/人]である。この値は、厚生労働省が定める基準に基づくものである。厚生労働省が定める基準は、一人あたりについて、1時間あたり30m3の量の空気を換気すべきことを定めるものである。そのため、式(1)により、1時間で必要な換気量を達成するために換気装置40を稼働すべき期間を算出するができる。換気期間算出部107は、本開示に係る換気期間算出手段の一例である。
【0085】
換気制御部108は、換気期間算出部107が算出した期間の間だけ換気装置40を稼働させる制御を行う。具体的には、換気制御部108は、換気装置40を稼働させるための制御信号を、通信部120を介して換気装置40に送信することにより、換気装置40を制御する。また、換気制御部108は、換気装置40の稼働開始から換気期間算出部107が算出した期間を経過したときに、換気装置40を停止させるための制御信号を換気装置40に送信する。換気制御部108は、本開示に係る換気制御手段の一例である。
【0086】
換気検出部103は、換気制御部108により換気装置40が稼働しているときに、換気が行われていることを検出し、換気制御部108により換気装置40が稼働していないときに、換気が行われていないことを検出する。
【0087】
次に、
図16を参照しながら、実施の形態3に係る空調制御装置10による換気制御の動作の一例を説明する。
図16に示す動作は、空調制御装置10が稼働しているときには常時実行される。
【0088】
空調制御装置10の制御部100は、制御部100のタイミング検出部105が換気を開始すべきタイミングを検出するまで待機する(ステップS301)。タイミング検出部105が換気を開始すべきタイミングを検出したとき、制御部100はステップS302からの動作を実行する。
【0089】
制御部100の人数検出部106は、室内空間R内の在室者の人数を検出する(ステップS302)。
【0090】
制御部100の換気期間算出部107は、ステップS302にて検出された在室者の人数に基づいて、換気をすべき期間を算出する(ステップS303)。
【0091】
制御部100の換気制御部108は、換気装置40を制御して室内空間Rの換気を開始する(ステップS304)。なお、換気が開始されたとき、制御部100の換気検出部103は換気が行われていることを検出し、空調制御部104は換気を促進するための空調制御を行う。
【0092】
換気制御部108は、ステップS304の換気開始から、ステップS303にて算出された換気をすべき期間が経過するまで待機する(ステップS305)。なお、この間、空調制御部104は換気を促進するための空調制御を行う。換気をすべき期間が経過したとき、制御部100はステップS306からの動作を実行する。
【0093】
換気制御部108は、換気をすべき期間が経過したので、換気装置40を制御して換気を終了し(ステップS306)、制御部100はステップS301からの動作を繰り返す。なお、換気が終了したとき、換気検出部103は換気が行われていないことを検出し、空調制御部104は通常の空調のための空調制御を行う。
【0094】
以上、実施の形態3に係る空調システム1を説明した。実施の形態3に係る空調システム1によれば、換気の促進のみならず、換気装置40と協働して、在室者の人数に応じて必要な換気を行うことができる。
【0095】
(その他の変形例)
上記の各実施の形態における熱画像センサは、室内機20が備えるものではなく、独立した外部装置であってもよい。例えば、室内空間Rの側壁に熱画像センサが設けられ、空調制御装置10と通信可能に接続されるものであってもよい。
【0096】
また、その他のセンサ、例えば実施の形態1の変形例1における温度センサ、実施の形態3における人感センサについても、室内機20が備えるものに代えて独立した外部装置であってもよい。例えば、実施の形態3にて使用される人感センサは、室内空間Rの入口近辺に設置された人感センサであってもよい。
【0097】
図6に示すハードウェア構成においては、空調制御装置10が二次記憶装置1004を備えている。しかし、これに限らず、二次記憶装置1004を空調制御装置10の外部に設け、インタフェース1003を介して空調制御装置10と二次記憶装置1004とが接続される形態としてもよい。この形態においては、USBフラッシュドライブ、メモリカードなどのリムーバブルメディアも二次記憶装置1004として使用可能である。
【0098】
また、
図6に示すハードウェア構成に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いた専用回路により空調制御装置10を構成してもよい。また、
図6に示すハードウェア構成において、空調制御装置10の機能の一部を、例えばインタフェース1003に接続された専用回路により実現してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 空調システム、10 空調制御装置、20,20a,20b 室内機、21a,21b 吹き出し口、30 リモートコントローラ、40 換気装置、100 制御部、101 熱画像処理部、101B 内気温変化検出部、101C 入力情報取得部、101D 換気装置状態取得部、102 開口部検出部、103 換気検出部、104 空調制御部、105 タイミング検出部、106 人数検出部、107 換気期間算出部、108 換気制御部、110 記憶部、120 通信部、200 制御部、201 熱画像取得部、202 ユニット制御部、210 メインユニット、220 熱画像センサ、230 通信部、1000 バス、1001 プロセッサ、1002 メモリ、1003 インタフェース、1004 二次記憶装置、C 対流、F,F1,F2 風、H 在室者、R 室内空間、W 窓。