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特許7550613自動ドア、自動ドアの稼働方法、自動ドアの稼働プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】自動ドア、自動ドアの稼働方法、自動ドアの稼働プログラム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/74 20150101AFI20240906BHJP
   G01V 8/20 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
E05F15/74
G01V8/20 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020190187
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079176
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】来海 大輔
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-178546(JP,A)
【文献】特開2018-123673(JP,A)
【文献】特開2020-066970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0360256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/74
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光し、その反射光の受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサと、
前記自動ドアの開駆動時に前記受光情報が生成された前記検知セグメントの数に関する検知セグメントデータを記憶する記憶部と
前記検知セグメント毎に点数を設定するエリアフィルタと、
を備え
前記検知セグメントデータは、前記自動ドアの開駆動時に前記受光情報が生成された前記検知セグメントの前記点数の和である自動ドア。
【請求項2】
前記記憶部は、前記検知セグメントデータと併せて、前記自動ドアの開駆動時に前記受光情報が生成された前記検知セグメントの位置データを記憶する
請求項1に記載の自動ドア。
【請求項3】
前記検知セグメントデータに基づいて、誤検知、横切り、通常開閉の少なくともいずれか一つを推定する推定部を備える
請求項1または2に記載の自動ドア。
【請求項4】
前記エリアフィルタは、前記自動ドアの開口部に近い前記検知セグメントほど高い点数を設定する第1エリアフィルタを含み、
前記記憶部は、前記第1エリアフィルタに基づく第1検知セグメントデータを記憶する
請求項1から3のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項5】
前記第1検知セグメントデータが、所定の誤検知閾値未満の場合は誤検知と推定し、前記誤検知閾値以上で所定の横切り閾値未満の場合は横切りと推定し、前記横切り閾値以上の場合は通常開閉と推定する推定部を備える
請求項に記載の自動ドア。
【請求項6】
前記エリアフィルタは、前記自動ドアの開口部から遠い前記検知セグメントほど高い点数を設定する第2エリアフィルタを含み、
前記記憶部は、前記第2エリアフィルタに基づく第2検知セグメントデータを記憶する
請求項からのいずれかに記載の自動ドア。
【請求項7】
前記エリアフィルタは、一部の前記検知セグメントのみに点数を設定する第3エリアフィルタを含み、
前記記憶部は、前記第3エリアフィルタに基づく第3検知セグメントデータを記憶する
請求項からのいずれかに記載の自動ドア。
【請求項8】
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光し、その反射光の受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサと、
前記自動ドアの開駆動時に前記受光情報が生成された前記検知セグメントの数に関する検知セグメントデータを記憶する記憶部と、
前記自動ドアの開駆動時に、前記各検知セグメントが前記受光情報を生成している検知時間を取得する検知時間取得部と、
を備え、
前記検知セグメントデータは、前記検知時間によって重み付けされた前記各検知セグメントの前記受光情報に基づく自動ドア。
【請求項9】
前記記憶部で記憶された前記検知セグメントデータを提示する提示部を備える
請求項1からのいずれかに記載の自動ドア。
【請求項10】
光学センサが、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光し、その反射光の受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成するステップと、
前記自動ドアの開駆動時に前記受光情報が生成された前記検知セグメントの数に関する検知セグメントデータを記憶する記憶ステップと
を備え
前記検知セグメントデータは、前記自動ドアの開駆動時に前記受光情報が生成された前記検知セグメントの、エリアフィルタが前記検知セグメント毎に設定する点数の和である自動ドアの稼働方法。
【請求項11】
光学センサが、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光し、その反射光の受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成するステップと、
前記自動ドアの開駆動時に前記受光情報が生成された前記検知セグメントの数に関する検知セグメントデータを記憶する記憶ステップと
をコンピュータに実行させ
前記検知セグメントデータは、前記自動ドアの開駆動時に前記受光情報が生成された前記検知セグメントの、エリアフィルタが前記検知セグメント毎に設定する点数の和である自動ドアの稼働プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
電気等の動力で自動的に開閉する自動ドアにおいて、通行者の検知精度を高めるため、自動ドア付近の検知エリアを複数の検知セグメントに分割し、その検知セグメント毎に光学センサの投受光による検知を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-17990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、以上のような複数の検知セグメントが設けられる自動ドアを独自に検討した結果、次の課題を認識するに至った。すなわち、複数の検知セグメントがそれぞれ自動ドアの開駆動のための検知情報を生成できるため、自動ドアを通行しようとする通行者がいないにも関わらず、何らかの物体を検知して誤って開駆動してしまう誤検知の問題が起こりやすくなる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、誤検知の問題を効果的に把握できる自動ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動ドアは、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光し、その反射光の受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサと、自動ドアの開駆動時に受光情報が生成された検知セグメントの数に関する検知セグメントデータを記憶する記憶部とを備える。
【0007】
通常開閉時と誤検知時を比較すると、概して、受光情報を生成する検知セグメントの数は前者の方が多い。通常開閉時は、通行者がその通行経路上の多数の検知セグメントを通過するのに対し、誤検知時は、外乱等によって少数の検知セグメントが影響を受けることが多いためである。そこで、本態様の自動ドアでは、通常開閉時と誤検知時で差異が生じる検知セグメント数に関する検知セグメントデータを記憶する。この検知セグメントデータにより、誤検知の問題を効果的に把握できる。
【0008】
本発明の別の態様は、自動ドアの稼働方法である。この方法は、光学センサが、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光し、その反射光の受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成するステップと、自動ドアの開駆動時に受光情報が生成された検知セグメントの数に関する検知セグメントデータを記憶する記憶ステップとを備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動ドアの誤検知の問題を効果的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】自動ドアを概略的に示す正面図である。
図2】自動ドアの内外で相互に通信可能な各種の構成機器を模式的に示す図である。
図3】センサによる投光および受光の態様を模式的に示す図である。
図4】センサが投受光する検知エリアを模式的に示す図である。
図5】検知セグメント毎に点数を設定するエリアフィルタの例を示す図である。
図6】検知セグメントの受光情報に基づく推定処理を行う推定装置の機能を表すブロック図である。
図7】度数分布表による推定結果の提示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、図1および図2を参照して、本発明の実施形態が適用される自動ドア100の概要を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自動ドア100を概略的に示す正面図である。自動ドア100は、開閉駆動される扉部10と、自動ドア100全体を制御するコントローラ20と、通行者を検知するセンサ30(起動センサ31、補助センサ32の総称)と、動力を発生させるドアエンジン40と、動力を扉部10に伝達する動力伝達部50とを主に備える。なお、以下の説明では、図1における左右方向を水平方向とし、図1における上下方向を鉛直方向とするが、自動ドア100は任意の姿勢で設置することができ、その設置方向が以下の例に限定されるものではない。
【0013】
扉部10は、それぞれ水平方向に可動に設けられる第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rと、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rが開状態のときにそれぞれと重なる位置に設けられる第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rと、第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の動作をガイドするガイド機構13を備える。第1の可動扉11L、第2の可動扉11R、第1の固定扉12L、第2の固定扉12Rは、鉛直方向の寸法が水平方向の寸法よりも大きい縦長の矩形状に構成される。扉部10の開駆動時には、図1で左側に示される第1の可動扉11Lが左方向に駆動され、図1で右側に示される第2の可動扉11Rが右側に駆動される。また、扉部10の閉駆動時には、開駆動時とは逆に、第1の可動扉11Lが右方向に駆動され、第2の可動扉11Rが左方向に駆動される。なお、扉部10を構成する扉の数や形状は上記に限られず、設置場所のニーズに合わせて適宜設計可能である。また、同様に、扉部10の可動方向も水平方向に限られず、水平方向から傾斜した方向としてもよい。
【0014】
ガイド機構13は、走行レール131と、戸車132と、ガイドレール133と、振れ止め部134を備える。走行レール131は、可動扉11L、11Rの上方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する柱状のレール部材である。戸車132は、可動扉11L、11Rの上部にそれぞれ二つずつ設けられ、各可動扉11L、11Rを走行レール131に懸架する。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、戸車132が走行レール131を転動するため、円滑な開閉動作が可能となる。ガイドレール133は、可動扉11L、11Rの下方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する溝状のレール部材である。振れ止め部134は、可動扉11L、11Rの下部から張り出して溝状のガイドレール133に収まる。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、振れ止め部134がガイドレール133に沿って動くため、各可動扉11L、11Rの見込み方向(図1の紙面に垂直な方向)の振動を抑制できる。
【0015】
なお、扉部10の開閉に関する各種のパラメータはコントローラ20で設定可能である。例えば、開閉速度、開閉強度、開口幅等を設定できる。開閉速度は、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rの水平方向の速度であり、両扉の速度の方向は互いに逆向きである。両扉で速度の大きさ(速さ)は等しくするのが好適であるが、異なる速さとしてもよい。また、開閉速度は、通常開閉時とそれ以外の時で異なる値を設定してもよい。例えば、扉部10の通常の閉駆動中に、閉じる可動扉11L、11Rに通行者が挟まれるのを緊急回避するために開駆動に切り替えるいわゆる反転の場合、その開駆動時の可動扉11L、11Rの速度は、通常の開駆動時の速度と異なる値を設定してもよい。
【0016】
開閉強度は、可動扉11L、11Rの開閉時の力の大きさであり、後述するモータ42の発生トルク値で制御される。上記の開閉速度と同様に、基本的には可動扉11L、11Rで等しい開閉強度とするのが好適である。また、通常開閉時とそれ以外の時で異なる開閉強度を設定してもよい。開口幅は、扉部10が全開のときの第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の間隔である。図1に示されるように、第1の可動扉11Lの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW1、第2の可動扉11Rの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW2とすれば、開口幅はW1+W2で表される。ここで、移動距離W1、W2は、自動ドア100の水平方向寸法に収まる範囲で個別に設定できる。
【0017】
図1には、センサ30の例として、光学センサとしての起動センサ31と、補助センサ32が設けられる。起動センサ31は、扉部10の上方の無目60の表面に設けられる光電センサである。起動センサ31は、赤外線等の光を床面に向けて投光する投光部と、床面からの反射光を受光する受光部を備える。通行者等の物体が自動ドア100に近づいて光を遮ると受光部の受光量が変化するため、物体を検知できる。このような起動センサ31での検知情報がコントローラ20に入力されると、ドアエンジン40の駆動により扉部10が開く。なお、起動センサ31は室内側(例えば図1の紙面の表側)と室外側(例えば図1の紙面の裏側)にそれぞれ設けられ、いずれの側から近づく通行者も検知できる。以下で両者を区別する必要がある場合は、それぞれ室内側起動センサ31、室外側起動センサ31と記載する。
【0018】
なお、起動センサ31は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検知する構成としてもよい。また、図1で31Aとして示すように、可動扉11Lおよび11Rの少なくとも一方に設けられるタッチプレートが通行者によって押されることで、扉部10を駆動する構成としてもよい。また、観光施設やアミューズメントパーク等では、通行者の検知や操作に加えてまたは代えて、施設の係員の操作で扉部10を駆動する態様も想定される。このとき、施設の係員は、扉部10から離れた位置に設けられる操作盤や、自動ドア100と通信可能な操作端末で遠隔から扉部10を駆動できる。
【0019】
補助センサ32は、扉部10の第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rに設けられる光電センサである。補助センサ32は、第1の固定扉12Lおよび第2の固定扉12Rの一方に設けられる投光部と、他方に設けられる受光部を備える。投光部と受光部は床面から同じ高さに設けられ、投光部から水平方向に投光される赤外線等の光を受光部で受光する。扉部10が開いている状態で、その開口部を通行者が通過して光を遮ると受光部の受光量が変化するため、通行者を検知できる。補助センサ32の主な目的は閉保護であり、可動扉11L、11Rの閉動作中に補助センサ32が通行者を検知すると、コントローラ20は閉駆動を中止して開駆動に切り替える反転制御を行う。これにより、通行者が閉じる可動扉11L、11Rに挟まれるのを防止できる。なお、このような閉保護の制御において、補助センサ32と同様に光電センサで構成される起動センサ31の検知情報を併用することで、通行者の検知精度を高めて安全性を更に向上できる。
【0020】
なお、補助センサ32は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検知する構成としてもよい。また、補助センサ32は固定扉12L、12Rとは異なる場所に設けてもよい。例えば、起動センサ31と同様に無目60に設けてもよいし、自動ドア100近傍の天井に設置してもよい。このような補助センサ32を複数設ければ、コスト高にはなるものの、安全性が飛躍的に高まる。
【0021】
上記の起動センサ31および補助センサ32は、出力段に増幅器を備えており、各センサでの検知情報を、後段のコントローラ20で扱える所定のレベルまで増幅する。したがって、センサの検出強度が低い場合は増幅率が高くなり、センサの検出強度が大きい場合は増幅率が低くなる。このように、各センサの増幅率は各センサの検出強度を示すデータになっている。
【0022】
ドアエンジン40は、モータ駆動部41と、モータ42と、駆動プーリ43を備える。モータ駆動部41は、インテリジェントパワーモジュール(IPM)で構成され、コントローラ20の制御の下でモータ42を駆動する電圧ないし電流を発生させる。回転動力を発生させる動力源としてのモータ42は、各種の公知のモータとして構成できるが、本実施形態では、一例として、ホール素子を用いたエンコーダを備えるブラシレスモータとする。エンコーダで検出されたモータ42の回転子の位置がモータ駆動部41に入力され、それに応じた駆動電圧ないし駆動電流がモータ42に印加されることで、所望の回転動力が発生される。モータ42によって回転駆動される駆動プーリ43は、図示しない歯車機構等を介してモータ42の回転子と連結され、連動して回転する。
【0023】
動力伝達部50は、ドアエンジン40で発生された動力を扉部10に伝達し、可動扉11L、11Rを開閉駆動する。動力伝達部50は、動力伝達ベルト51、従動プーリ52、連結部材53を備える。動力伝達ベルト51は、内周面に多数の歯が形成された環状のタイミングベルトであり、図1の右側において駆動プーリ43に巻き付けられ、図1の左側において従動プーリ52に巻き付けられる。この状態において動力伝達ベルト51の水平方向の寸法は、駆動プーリ43と従動プーリ52の水平方向の距離に等しく、また可動扉11L、11Rの可動域の水平方向の寸法と同程度である。モータ42により駆動プーリ43が回転すると、動力伝達ベルト51を介して従動プーリ52が連動して回転する。
【0024】
連結部材53は、可動扉11L、11Rをそれぞれ動力伝達ベルト51に連結して、開閉駆動する。ここで、一方の可動扉は動力伝達ベルト51の上側に連結され、他方の可動扉は動力伝達ベルト51の下側に連結される。図1の例では、動力伝達ベルト51が反時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが左側に移動し第2の可動扉11Rが右側に移動する開動作となり、動力伝達ベルト51が時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが右側に移動し第2の可動扉11Rが左側に移動する閉動作となる。
【0025】
以上のような構成の自動ドア100において、起動センサ31が通行者を検知すると、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が反時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を開駆動する。また、開駆動後、通行者が検知されない状態が所定時間継続した場合は、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を閉駆動する。なお、閉駆動中に補助センサ32や起動センサ31が通行者を検知すると、コントローラ20が閉駆動から開駆動に切り替える反転制御を行う。
【0026】
図2は、自動ドア100の内外で相互に通信可能な各種の構成機器を模式的に示す。自動ドア100は、各構成機器が接続され、構成機器間のデータ通信を行うバス2を有する。バス2は、任意の通信規格、例えばCAN(Controller Area Network)に則って構成される。CANは、ホストコンピュータを介さずに構成機器が相互に通信できるように設計されており、自動ドアに限らず様々なシステムの制御情報の伝送に広く利用されている。バス2に接続された各構成機器は、バス2を介して他の構成機器に情報を送信でき、他の構成機器がバス2に送信した情報のうち自身に必要な情報を選択的に受信できる。
【0027】
図2には、バス2に接続される構成機器として、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37が例示され、いずれの構成機器も自動ドア100を構成する。なお、本図は、バス2に接続されうる構成機器を例示列挙したものであり、図1に示されない構成機器も含まれている。また、実際の自動ドア100に設ける構成機器は目的に応じて選択でき、図示される全ての構成機器を設ける必要はない。例えば、通行者の検知や操作のみで扉部10を駆動する自動ドア100においては、係員等の操作を行うための操作盤33は設ける必要はない。逆に、観光施設やアミューズメントパーク等で、施設の係員の操作のみで扉部10を駆動する自動ドア100においては、通行者の検知や操作のための起動センサ31やタッチプレート31Aを設ける必要はない。ただし、自動ドア100全体を制御するコントローラ20は、多くの場合で必須の構成機器である。
【0028】
図示される構成機器のうち、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32については前述したので説明を省略する。
【0029】
操作盤33は、観光施設やアミューズメントパーク等で施設の係員が操作し、扉部10を駆動する制御盤である。例えば、利用者が所定のタイミングで異なる部屋を移動するアトラクションにおいては、その移動タイミングに合わせて係員が操作盤33を操作し、各部屋の扉部10を開閉制御することで利用者が円滑に移動できる。なお、操作盤33は、施設に固定的に設置されたものでもよいし、係員が携帯できるものでもよい。また、後述する外部インターフェース36を介してコントローラ20等と通信可能なタブレットやスマートフォン等の通信端末に操作盤33の機能を実装してもよい。
【0030】
認証装置34は、集合住宅やオフィスの入口など、高いレベルのセキュリティが要求される場所で、通行を許可すべき通行者を認証するものである。認証の方法は、扉部10近傍に設けられるキーパッドの入力によるパスワード認証や、指紋等の通行者の生体情報を用いた生体認証などがある。認証装置34での認証が成功すると、コントローラ20が扉部10を開駆動し、通行者は自動ドア100を通行できる。認証装置34での認証が失敗すると、たとえ起動センサ31が通行者を検知していたとしても、コントローラ20は扉部10を開駆動せず、未認証の通行者の不正な通行を阻止できる。
【0031】
電気錠コントローラ35は、自動ドア100を施錠する電気錠35Aを制御する。電気錠35Aは、錠を施錠位置と解錠位置の間で駆動する錠駆動手段として、例えば通電状態に応じた駆動力を発生するソレノイドを備える。
【0032】
外部インターフェース36は、有線または無線の接続により、自動ドア100外の各種の外部機器36Aとの間で信号を入出力する。外部機器36Aとしては、自動ドア100の設置や保守点検のために現場に赴いた作業員が使用する調整器等の作業端末や、インターネット等の公衆情報通信網を介して接続された遠隔のサーバやコンピュータが例示される。このような外部機器36Aの入力操作により、自動ドア100の各構成機器の制御やパラメータ調整等の各種設定を行える。また、外部機器36Aは、自動ドア100の各構成機器や、それらに付随して設けられるメモリから情報を読み取り、状態診断や保守点検を行える。なお、上述の通り、自動ドア100内のバス2はCAN規格に則って構成されるが、外部機器36Aと外部インターフェース36の間の通信が、それとは別の規格、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)で行われる場合、外部インターフェース36は一方の規格に基づく信号を他方の規格に基づく信号に変換するプロトコル変換器として機能する。
【0033】
表示装置37は、他の構成機器から受信した情報に基づいて自動ドア100の稼働状況等を表示する表示部である。この表示装置37がタッチパネル等の入力機能を備える場合は、表示画面上のタッチ操作により、自動ドア100の各構成機器の制御やパラメータ調整等の各種設定を行える。なお、表示装置37は、扉部10の付近に設けてもよいし、扉部10から離れた場所、例えば、自動ドア100と同じ建物内でその管理を行うバックヤードに設けてもよい。
【0034】
以上で例示列挙した自動ドア100を構成する構成機器、すなわち、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37は、CAN規格に則ったバス2を介して相互に通信可能である。つまり、各構成機器はCAN通信のためのCANトランシーバとCANコントローラを内蔵している。外部インターフェース36は、これらに加え、外部機器36Aが利用する通信規格とCAN規格のプロトコル変換を行うプロトコル変換部を有する。これにより、外部インターフェース36に接続された外部機器36Aは、自動ドア100の他の構成機器とバス2を介して相互に通信可能である。
【0035】
以上、図1および図2を参照して、本発明の実施形態が適用される自動ドア100の概要を説明した。続いて、本実施形態を詳細に説明する。
【0036】
図3は、本実施形態のセンサ30による投光および受光の態様を模式的に示す。センサ30は、検知エリア90に投光する投光部70と、検知エリア90からの反射光を受光する受光部80を備える。投光部70は、mを自然数として、m個の投光素子71-1、71-2・・・71-m(投光素子71と総称する)と、m個の投光レンズ72-1、72-2・・・72-m(投光レンズ72と総称する)を備える。受光部80は、nを自然数として、n個の受光素子81-1、81-2・・・81-n(受光素子81と総称する)と、n個の受光レンズ82-1、82-2・・・82-nを備える(受光レンズ82と総称する)。検知エリア90は、センサ30の設置態様によって異なるが、図1に示した起動センサ31においては、赤外線が投受光される床面に相当する。なお、図示の都合上、投光部70と受光部80を別体として示したが、一体として構成してもよい。特に、投光部70を構成する各投光素子71と受光部80を構成する各受光素子81はフォトカプラとして一体的に構成できる。
【0037】
投光素子71は、電気信号に基づいて発光するLED等の発光素子である。自動ドア100の通行者の妨げとならないように、非可視光である赤外線が用いられる。投光レンズ72は、投光素子71からの光を複数の光線に分割する。分割して生成する光線の本数は任意であるが、図示の例では、各投光レンズ72が二本の光線を生成する。投光素子71は全部でm個あり、それぞれの光が投光レンズ72で二本の光線に分割されるため、投光部70は合計2m本の光線を生成して検知エリア90に照射する。
【0038】
受光素子81は、検知エリア90からの反射光を受光して電気信号である受光情報を生成するフォトダイオード等である。受光素子81の受光可能な波長帯は、投光素子71が発する光(本例では赤外線)に合わせられる。受光レンズ82は、検知エリア90からの複数の光線を集め、対応する受光素子81に照射する。各受光レンズ82が集める光線の本数は任意であるが、図示の例では、各受光レンズ82が三本の光線を集める。受光レンズ82は全部でn個あり、それぞれが三本の光線を集めるため、受光部80は合計3n本の光線を検知エリア90から受け取る。
【0039】
投光部70が生成する2m本の光線と、受光部80が受け取る3n本の光線は、一対一に対応しており、総本数は等しい。つまり、2m=3nである。以下、この総本数が72の場合、すなわち、m(投光素子71および投光レンズ72の数)が36、n(受光素子81および受光レンズ82の数)が24の場合を例に説明する。なお、この例では、投光レンズ72の分割光線数を2、受光レンズ82の集約光線数を3としたが、これらも任意に設定でき、それに応じて投光素子71の数mと受光素子81の数nも任意に設定できる。具体的には、投光素子71の数mと、受光素子81の数nは、所望の光線総数(72)を上限とする任意の自然数でよい。投光素子71が最少の1個の場合、同じく1個の投光レンズ72が72本の光線を生成する。投光素子71が最多の72個の場合は、投光レンズ72で分光しなくても72本の光線が得られるので、投光レンズ72は不要である。受光素子81が最少の1個の場合、同じく1個の受光レンズ82が72本の光線を集める。受光素子81が最多の72個の場合は、光線を集約しなくてもよいので、受光レンズ82は不要である。
【0040】
図4は、センサ30が投受光する床面等の検知エリア90を模式的に示す。検知エリア90は、72本の光線に対応して、72個の検知セグメントに区分される。図示の例では、矩形状の検知エリア90が、6行12列の行列状ないし格子状に区分される。この検知エリア90は、自動ドア100の扉部10の開口部に面した床面であり、行番号が大きくなるほど開口部に近い。すなわち、行番号1の検知セグメントは開口部から最も遠く、行番号6の検知セグメントは開口部に最も近い。また、列番号L1~L6は、図1における扉部10の左側の領域に対応し、列番号R1~R6は、図1における扉部10の右側の領域に対応する。以上のように区分された検知セグメントには、図示のように1~72の固有のセグメント番号が付与されている。
【0041】
各検知セグメントには、投光番号と受光番号も付与される。投光番号は、その検知セグメントに投光する投光素子71を表す。受光番号は、その検知セグメントからの反射光を受光する受光素子81を表す。例えば、図の左上角の61番の検知セグメントは、1番の投光素子71-1から光を受けて1番の受光素子81-1に反射する。その右隣の62番の検知セグメントは、1番の投光素子71-1から光を受けて2番の受光素子81-2に反射する。また、図の右下角の12番の検知セグメントは、34番の投光素子71-34から光を受けて24番の受光素子81-24に反射する。
【0042】
投光番号に着目すると、各投光素子71-1~36は、左右方向に隣接する二つの検知セグメントに同時に投光する。例えば、1番の投光素子71-1は、左右方向に隣接する61番と62番の検知セグメントに同時に投光する。同様に、2番の投光素子71―2は、左右方向に隣接する63番と64番の検知セグメントに同時に投光する。
【0043】
受光番号に着目すると、各受光素子81-1~24は、図4の上下方向(図1の紙面に垂直な方向)に一つ置きで並ぶ、互いに隣接しない三つの検知セグメントからの反射光を同時に受光する。例えば、1番の受光素子81-1は、上下方向に一つ置きで並ぶ61番、37番、13番の三つの検知セグメントからの反射光を同時に受光する。同様に、13番の受光素子81-13は、上下方向に一つ置きで並ぶ49番、25番、1番の三つの検知セグメントからの反射光を同時に受光する。
【0044】
以上に示した、検知エリア90の検知セグメントへの区分、各検知セグメントで使用する投光素子71および受光素子81の選択、各検知セグメントへの各種番号の付与は一例に過ぎず、これ以外の態様でもよい。例えば、検知エリア90は、行列状ないし格子状に限らず、任意の形状で検知セグメントに区分できる。また、各検知セグメントで使用する投光素子71および受光素子81については、各投光素子71、各投光レンズ72、各受光素子81、各受光レンズ82の配置や構成を適宜調整することで、任意の投光素子71および任意の受光素子81を任意の検知セグメントに割り当てることができる。以上の例では、同一の投光素子71を左右方向に並ぶ複数の検知セグメントで使用し、同一の受光素子81を上下方向に並ぶ複数の検知セグメントで使用したが、これとは逆に、同一の投光素子71を上下方向に並ぶ複数の検知セグメントで使用し、同一の受光素子81を左右方向に並ぶ複数の検知セグメントで使用してもよい。また、以上の例では、同一の投光素子71を隣接する複数の検知セグメントで使用し、同一の受光素子81を一つ置きの互いに隣接しない複数の検知セグメントで使用したが、これとは逆に、同一の投光素子71を一つ置きの互いに隣接しない複数の検知セグメントで使用し、同一の受光素子81を隣接する複数の検知セグメントで使用してもよい。なお、同一の投光素子71または同一の受光素子81を共用する複数の検知セグメントの間隔は、以上の例のゼロ(隣接)や一セグメント(一つ置き)に限らず、任意の数のセグメントでよい。
【0045】
図5は、検知セグメント毎に点数を設定するエリアフィルタの例を示す。図5(A)に示される第1エリアフィルタ91は、扉部10の開口部に近い検知セグメントほど高い点数を設定する。図5(B)に示される第2エリアフィルタ92は、扉部10の開口部から遠い検知セグメントほど高い点数を設定する。図5(C)に示される第3エリアフィルタ93は、特定の検知セグメントのみに点数を設定する。これらのエリアフィルタは、自動ドア100の開駆動時に受光情報が生成された検知セグメントの点数の和を演算するもので、開駆動時の検知態様や通行者の通行態様を示す情報を提供する。
【0046】
例えば、図5(A)に示す第1エリアフィルタ91は、通常開閉、横切り、誤検知を示す情報を提供する。すなわち、通行者が扉部10に向かって正面から近づく通常開閉の際は、図の上下方向(通行者の進行方向)に沿った一連の検知セグメントが受光情報を生成し、特に扉部10の開口部に近い高得点(8点)の検知セグメントが受光情報を生成するので、第1エリアフィルタ91の演算結果は高得点となる。通行者が扉部10から離れた場所を扉部10と平行に進行する横切りの際は、図の左右方向(通行者の進行方向)に沿った一連の検知セグメントが受光情報を生成するが、扉部10から離れた場所は点数が低く設定されているため(0.5点~1点)、第1エリアフィルタ91の演算結果は中程度の得点となる。通行者の進行によらない外乱等による誤検知の際は、少数の検知セグメントのみが受光情報を生成するため、第1エリアフィルタ91の演算結果は低得点となる。このように、第1エリアフィルタ91の演算結果は、通常開閉(高得点)/横切り(中得点)/誤検知(低得点)に関する示唆を与える。また、通常開閉と横切りを区別するための横切り閾値と、横切りと誤検知を区別するための誤検知閾値を設定することで、推定処理を自動化できる。すなわち、第1エリアフィルタ91の点数が、誤検知閾値未満の場合は誤検知と推定し、誤検知閾値以上で横切り閾値未満の場合は横切りと推定し、横切り閾値以上の場合は通常開閉と推定できる。
【0047】
図5(B)に示す第2エリアフィルタ92は、横切りの検出に適したものである。通行者が扉部10から離れた場所を扉部10と平行に進行する横切りの際は、図の左右方向(通行者の進行方向)に沿った一連の検知セグメントが受光情報を生成し、特に扉部10の開口部から遠い高得点(3点~8点)の検知セグメントが受光情報を生成するので、第2エリアフィルタ92の演算結果は高得点となる。
【0048】
図5(C)に示す第3エリアフィルタ93は、特定箇所の誤検知の検出に適したものである。自動ドア100の設置環境によって、特定箇所に直射日光等の外乱の影響が集中することがある。このような場合に第3エリアフィルタ93を用いれば、外乱による誤検知の発生状況を的確に把握でき、効果的な対策を講じることができる。
【0049】
以上のように、図5(A)の第1エリアフィルタ91だけでも通常開閉、横切り、誤検知を検出できるが、横切りの検出に適した図5(B)の第2エリアフィルタ92および誤検知の検出に適した図5(C)の第3エリアフィルタ93を併用することで、検出精度を高めることができる。
【0050】
なお、図5は例に過ぎず、エリアフィルタには検出目的に応じて任意の得点分布を設定できる。一つの特殊な変形例として、全ての検知セグメントに同一の点数(例えば1点)を設定してもよい。この場合のエリアフィルタは、自動ドア100の開駆動時に受光情報が生成された検知セグメントの総数を演算していることになる。したがって、エリアフィルタを設ける代わりに、受光情報を生成した検知セグメントを計数するカウンタとして構成することもできる。このような場合、通行者が通行する検知セグメント数は通常開閉と横切りの場合で有意な差が出ない可能性があるが、検知セグメント数が少ない誤検知は検出できる。また、エリアフィルタは図5に示したような、各検知セグメントに個別に点数を設定するものに限らず、各検知セグメントの受光情報や後述する検知時間に基づいて点数等の検知セグメントデータを演算するものであればよい。n番の検知セグメントの受光情報をRn、検知時間をTnとし、それらに基づく任意の関数をfとしたときに、検知セグメントデータSはS=f(R1,R2,…, R72, T1, T2,…, T72)と一般化して表せる。
【0051】
図6は、以上のような検知セグメントの受光情報に基づく推定処理を行う推定装置300の機能を表すブロック図である。推定装置300は、データ取得部301と、検知セグメントデータ演算部302と、推定部303と、記憶部304と、提示部305と、情報提供部306を備える。
【0052】
これらの各機能ブロックは、ハードウェア的には、演算機能、制御機能、記憶機能、入力機能、出力機能を有するコンピュータや、各種の電子素子、機械部品等で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックが描かれる。したがって、これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによって様々な形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。また、これらの各機能ブロックは、図2に示される自動ドア100の各種構成機器や外部機器36Aでも実現できる。特に図6では、推定装置300をコントローラ20およびセンサ30と別体として示すが、推定装置300の各機能ブロックは、コントローラ20またはセンサ30の一部として構成してもよい。
【0053】
前述の通り、センサ30は、72個の検知セグメントで構成される検知エリア90に投光部70から投光し、その反射光を受光部80で受光する。受光部80は、各受光素子81-1~24での受光情報に基づき自動ドア100の開閉駆動のための検知情報を生成し、コントローラ20に送信する。
【0054】
データ取得部301は、自動ドア100の開駆動時に受光情報が生成された検知セグメントに関する各種のデータを取得する。具体的には、受光情報を生成した検知セグメントの特定データとしてのセグメント番号(1~72)、その検知セグメントの位置データ、その検知セグメントが受光情報を生成している検知時間を開駆動の度に取得する。また、データ取得部301は、これらのデータを取得した時刻、すなわち各開駆動の時刻も取得する。あるいは、各検知セグメントが受光情報の生成を開始した時刻を個別に取得してもよい。この場合、隣接する複数の検知セグメントの時刻データを比較することで通行者の通行方向が分かる。
【0055】
検知セグメントデータ演算部302は、自動ドア100の開駆動時に受光情報が生成された検知セグメントの数に関する検知セグメントデータを演算する。具体的には、図5に関して説明した第1エリアフィルタ91、第2エリアフィルタ92、第3エリアフィルタ93等に基づいて演算される各点数が検知セグメントデータとなる。各エリアフィルタでの点数の演算を行う際に、データ取得部301で取得された検知時間によって重み付けするのが好ましい。例えば、8点の検知セグメントが2秒間受光情報を生成した場合、8点×2秒間=16点をその検知セグメントの重み付けされた点数とし、3点の検知セグメントが0.5秒間受光情報を生成した場合、3点×0.5秒間=1.5点をその検知セグメントの重み付けされた点数とする。このように検知時間による点数の重み付けを行うことで、検知時間の長い通行者の通行と、検知時間の短い外乱等による誤検知を効果的に区別できる。
【0056】
推定部303は、検知セグメントデータに基づいて、開駆動時の検知態様や通行者の通行態様を推定する。具体的には、誤検知、横切り、通常開閉の少なくともいずれか一つを推定する。図5に関して説明したように、図5(A)の第1エリアフィルタ91に基づく第1検知セグメントデータによれば、通常開閉(高得点)/横切り(中得点)/誤検知(低得点)を推定できる。すなわち、推定部303は、第1検知セグメントデータが、所定の誤検知閾値未満の低得点の場合は誤検知と推定し、誤検知閾値以上で所定の横切り閾値未満の中得点の場合は横切りと推定し、横切り閾値以上の高得点の場合は通常開閉と推定する。また、図5(B)の第2エリアフィルタ92に基づく第2検知セグメントデータを併用すれば、横切りを効果的に推定でき、図5(C)の第3エリアフィルタ93に基づく第3検知セグメントデータを併用すれば、誤検知を効果的に推定できる。
【0057】
記憶部304は、自動ドア100の一回の開駆動について、データ取得部301が取得した各種データの全部または一部、検知セグメントデータ演算部302が演算した検知セグメントデータの全部または一部、推定部303の推定結果の全部または一部を、互いに関連付けて記憶する。記憶部304は、各検知セグメントの全受光情報を記憶してもよいが、それに基づく演算結果である検知セグメントデータを代わりに記憶することで、記憶すべきデータ量を低減できる。また、定期保守点検等の際に、作業員等が過去の一連の情報を確認できるように、過去の一定期間に亘る開駆動について情報を記憶することが好ましい。このとき、推定部303における推定の類型のうち、問題の少ない通常開閉については情報を記憶せず、横切りや誤検知についてのみ情報を記憶すれば、記憶すべきデータ量を低減できる。なお、記憶部304は、コントローラ20や共通のバス2に設けられる汎用の共有メモリで実現してもよい。
【0058】
提示部305は、検知セグメントデータを含む記憶部304で記憶された情報を各種の態様で提示する。提示の一態様として検知セグメントデータとともに推定部303の推定結果を表示する際は、図2の表示装置37が提示部305として機能する。提示の他の態様として外部機器36Aに検知セグメントデータとともに推定部303の推定結果を通信する際は、図2の外部インターフェース36が提示部305として機能する。
【0059】
提示部305による提示の具体的な態様は特に限定されないが、例えば、図7のような度数分布表を用いるのが好ましい。これは、横軸に示される第1エリアフィルタ91の点数に応じた区間ごとに、過去の一定期間に亘る開駆動の回数を縦軸に示したものである。前述の通り、通常開閉は高得点、横切りは中得点、誤検知は低得点となるので、この度数分布表によって、それぞれの発生状況を一覧できる。横切りが多い場合は、自動ドア100の周りの設置物や動線を見直す等の対策を講じることができる。誤検知が多い場合は、必要に応じて第3エリアフィルタ93も併用して誤検知の発生箇所を特定し、直射日光や温度上昇といった原因の分析と対策を行うことができる。なお、本図には示されないが、データ取得部301が取得する各開駆動の時刻データと対照することで、時間帯毎に通常開閉/横切り/誤検知の発生状況を確認できる。同様に、本図には示されないが、データ取得部301が取得する検知セグメントのセグメント番号や位置データと対照することで、検知セグメント毎に通常開閉/横切り/誤検知の発生状況を確認できる。特に、横切りや誤検知が発生している検知セグメントを具体的に特定できるので、迅速に対策を講じることができる。
【0060】
情報提供部306は、上記の提示部305が提示する情報を含め、記憶部304で記憶された情報を、リアルタイムまたは一定期間毎に、自動ドア100の開閉駆動を行うコントローラ20に提供する。これを受けたコントローラ20は、開閉速度、開閉強度、開口幅等の開閉駆動のパラメータの調整や、横切りや誤検知等に関する異常の点検や復旧のための保守プロセスを開始できる。
【0061】
特に、コントローラ20は、自動ドア100の稼働に関する各種の稼働情報を時刻情報と共に記憶しており、これらの稼働情報を情報提供部306から提供される同じ時間帯の情報と対照することで、多様な観点から自動ドア100やその設置環境について分析できる。
【0062】
以下は、情報提供部306から提供される情報と対照可能な自動ドア100の稼働情報の例示である。
・コントローラ20の駆動情報:コントローラ20がドアエンジン40を駆動する際の電圧、電流、1駆動当たりの通電時間等
・構成機器3の稼働情報:起動センサ31や補助センサ32の検出強度、1検出当たりの通電時間、電気錠35Aの施錠/解錠の状態、外部インターフェース36への外部機器36Aの接続状態等
・自動ドア100の動作状態に関する情報:例えば、扉部10の動作状態に応じた「全閉待機時」、「全開待機時」、「停止中」(全閉待機時、全開待機時以外で扉部10が停止中)、「閉作動中」、「開作動中」、「開閉作動中」等の情報
・自動ドア100に発生した異常に関する情報
・扉部10の開閉状態に関する情報:例えば、扉部10が全閉位置まで到達したときにコントローラ20が出力する「全閉リミット」、扉部10が全開位置まで到達したときに出力する「全開リミット」等の情報
・自動ドア100の動作モードに関する情報:例えば、夜間に扉部10の開閉速度を落としたり、扉部10の開駆動のためのセンサ30の検出閾値を上げたりする夜間モードや、休日のオフィス等で自動ドア100の屋内側から近づく通行者に対してはセンサ30に基づく開駆動を許容し、自動ドア100の屋外側から近づく通行者に対しては開駆動のために認証装置34による認証を必要とする休日モード等の情報
・コントローラ20が他の構成機器3を制御する情報
・構成機器3が自動ドア100の駆動等のためにコントローラ20や他の構成機器3に送信する情報:起動センサ31や補助センサ32の検知情報、各国の安全規格に則り補助センサ32が開閉の度に動作テストする際のテスト結果(テストが失敗した場合は成功するまでのリトライ回数や時間も含む)等
【0063】
以上のような稼働情報との対照により、コントローラ20の駆動情報が特定の値や状態にあるときに通常開閉/横切り/誤検知が増加する、構成機器3の稼働情報が特定の値や状態にあるときに通常開閉/横切り/誤検知が増加する、自動ドア100が特定の動作状態にあるときに通常開閉/横切り/誤検知が増加する、自動ドア100に発生する特定の異常と通常開閉/横切り/誤検知に相関がある、扉部10が特定の開閉状態にあるときに通常開閉/横切り/誤検知が増加する、自動ドア100が特定の動作モードにあるとき通常開閉/横切り/誤検知が増加する、コントローラ20が特定の構成機器3に特定の制御情報を送信する際に通常開閉/横切り/誤検知が増加する、特定の構成機器3がコントローラ20や他の構成機器3に特定の情報を送信する際に通常開閉/横切り/誤検知が増加する、等の自動ドア100の診断に有用な知見を得ることができる。逆に、通常開閉/横切り/誤検知が、コントローラ20の駆動情報、構成機器3の稼働情報、自動ドア100の動作状態、自動ドア100に発生した異常、扉部10の開閉状態、自動ドア100の動作モード、コントローラ20が他の構成機器3を制御する情報、構成機器3が送信する情報に及ぼす影響を分析することもできる。例えば、図7等で誤検知が確認された時刻に、扉部10が実際に開閉していれば、その誤検知に基づいて扉部10が誤開閉したことが分かる。また、自動ドア100内から取得できる稼働情報に限らず、インターネット等の公衆情報通信網を介して自動ドア100外から取得できる天気等の外部環境情報を情報提供部306からの情報と対照してもよい。これにより、特定の外部環境条件にあるときに通常開閉/横切り/誤検知が増加する等の知見を得ることができる。
【0064】
また、コントローラ20は、横切りや誤検知が多い検知セグメントに基づく検知情報の生成をセンサ30に停止させることで、横切りや誤検知を抑制できる。一方で、一部の検知セグメントを無効化することで、通行者を検知しづらくなり、自動ドア100の開閉駆動が通常より遅くなる可能性がある。そこで、通行量が少なく開閉駆動が遅くても大きな問題が生じない所定の時間帯、例えば夜間や休日に限って、停止処理を有効にしてもよい。人の少ない夜間や休日等の誤検知や誤動作を防止できるので、セキュリティ面のメリットもある。
【0065】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0066】
実施形態では、センサ30が生成する検知情報に基づいて自動ドア100を開駆動し、その開駆動時のデータに基づいて推定部303が通常開閉/横切り/誤検知を推定していたが、推定部303の通常開閉との推定結果に基づいて自動ドア100を開駆動してもよい。例えば、第1エリアフィルタ91の算出する点数が通常開閉を示す高得点となったことをもって自動ドア100を開駆動する。これにより、点数が低い誤検知や横切りの際は自動ドア100が開駆動されないので、誤開閉を抑制できる。一方で、推定部303での推定処理に時間を要するため、自動ドア100の開駆動が遅くても大きな問題が生じない夜間や休日に限って、このような処理を有効にするのが好ましい。
【0067】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0068】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0069】
2 バス、3 構成機器、20 コントローラ、30 センサ、31 起動センサ、32 補助センサ、70 投光部、71 投光素子、72 投光レンズ、80 受光部、81 受光素子、82 受光レンズ、90 検知エリア、91 第1エリアフィルタ、92 第2エリアフィルタ、93 第3エリアフィルタ、100 自動ドア、300 推定装置、301 データ取得部、302 検知セグメントデータ演算部、303 推定部、304 記憶部、305 提示部、306 情報提供部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7