(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240906BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240906BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 A
G02B7/02 B
G02B7/02 Z
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2020196622
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 敏男
(72)【発明者】
【氏名】山本 明典
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-244391(JP,A)
【文献】特開2019-109381(JP,A)
【文献】特開2020-144307(JP,A)
【文献】特開2018-054798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0045212(US,A1)
【文献】特開2008-090290(JP,A)
【文献】特開2020-024399(JP,A)
【文献】特開2019-179079(JP,A)
【文献】特開2016-099431(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087270(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向の物体側に配置された第1レンズと、
前記第1レンズに前記光軸方向の像側で対向する第2レンズを含み、前記第1レンズより像側に配置された複数の像側レンズと、
前記光軸を中心とする径方向内側に前記第1レンズおよび前記複数の像側レンズを保持するレンズ鏡筒と、
前記第1レンズと前記レンズ鏡筒との間を封止する第1封止部材と、
前記第1封止部材より前記径方向内側で前記第1レンズの像側の面と前記レンズ鏡筒との間を封止する第2封止部材と、
を有
し、
前記レンズ鏡筒には、前記第1封止部材と前記第2封止部材との間の第1空間と、前記レンズ鏡筒の外部とを連通させる第1連通路が設けられ、
前記第1連通路は、第3封止部材で封止され、
前記第2封止部材より前記径方向内側で前記第2レンズと前記レンズ鏡筒との間を封止する第4封止部材を有し、
前記レンズ鏡筒には、前記第2封止部材より前記径方向内側における前記第1レンズと前記第2レンズとの間の第2空間と、前記レンズ鏡筒の外部とを連通させる第2連通路が設けられ、
前記第2連通路は、第5封止部材で封止されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
請求項
1に記載のレンズユニットにおいて、
前記レンズ鏡筒は、前記第2レンズの外周側端部に物体側から被さるカシメ部を備え、
前記第4封止部材は、前記第2レンズと前記カシメ部との間に配置されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
請求項
2に記載のレンズユニットにおいて、
前記第1連通路および前記第2連通路は、互いの一部が合流して前記レンズ鏡筒の外部と連通し、
前記第3封止部材および前記第5封止部材は、一体に形成されて前記第1連通路および前記第2連通路を各々封止していることを特徴とするレンズユニット。
【請求項4】
請求項
1から3のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記光軸方向からみたとき、前記第1連通路の少なくとも一部は、前記第1封止部材と重なっていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項5】
請求項1から
4のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記第1レンズの前記像側の面には、レンズ面の周りを囲むように遮光層が設けられ、
前記光軸方向からみたとき、前記第2封止部材は前記遮光層と重なっていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項6】
請求項1から
5のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記レンズ鏡筒は、前記第1レンズの像側の面と対向する取付面部を備え、
前記第2封止部材は、前記第1レンズの像側の面と前記取付面部とを接合する接着剤であることを特徴とするレンズユニット。
【請求項7】
請求項
6に記載のレンズユニットにおいて、
前記取付面部は、前記第1レンズが載置される載置面部と、前記載置面部より前記像側に位置する底面部と、を備えることを特徴とするレンズユニット。
【請求項8】
請求項
7に記載のレンズユニットにおいて、
前記取付面部は、前記載置面部と前記底面部とを繋ぐ傾斜面部を備えることを特徴とするレンズユニット。
【請求項9】
請求項
6から8のうち何れか一項に記載のレンズユニットにおいて、
前記取付面部は、前記像側に凹んだ環状の溝部を備えることを特徴とするレンズユニット。
【請求項10】
請求項
9に記載のレンズユニットにおいて、
前記溝部は、環状の内周溝と、前記内周溝の径方向外側で周方向に延在する環状の外周溝とを備えることを特徴とするレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒に複数のレンズが保持されたレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や監視カメラ等に搭載される撮像装置では、複数のレンズがレンズホルダに収容されたレンズユニットが用いられる。このレンズユニットにおいて、最も物体側の第1レンズの物体側のレンズ面は、レンズホルダから外部に露出する。
【0003】
このようなレンズユニットは、例えば特許文献1に記載されている。同文献では、第1レンズは、樹脂製のレンズホルダに収容されている。より具体的には、第1レンズは、径方向外側からレンズホルダの第1レンズ保持用筒部に囲われている。第1レンズは、像側に小径部を備える。小径部の外周面と第1レンズ保持用筒部との間には、Oリングが配置されている。第1レンズが第1レンズ保持用筒部に熱カシメにより係止されるとともに、Oリングが第1レンズの小径部の外周面と第1レンズ保持用筒部との間に配置されているので、レンズユニットの内部の気密性は一定に保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レンズユニットを長時間使用すると、Oリングを通過した湿気が、レンズホルダの内部に侵入する恐れがある。また、樹脂は、湿気を吸収・放出する性質があるので、レンズユニットを長時間使用すると、湿気がレンズホルダを通過して内部に侵入する恐れがある。特に、第1レンズ保持用筒部では、湿気が通過し内部に侵入しやすい。このため、レンズホルダ内の温度よりも外部の温度が低くなると、第1レンズは外部に露出しているので、レンズホルダ内に侵入した湿気は、第1レンズの像側のレンズ面に結露し、レンズが曇る可能性がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、第1レンズの曇りを抑制することが可能なレンズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るレンズユニットは、光軸方向の物体側に配置された第1レンズと、前記第1レンズに前記光軸方向の像側で対向する第2レンズを含み、前記第1レンズより像側に配置された複数の像側レンズと、前記光軸を中心とする径方向内側に前記第1レンズおよび前記複数の像側レンズを保持するレンズ鏡筒と、前記第1レンズと前記レンズ鏡筒との間を封止する第1封止部材と、前記第1封止部材より前記径方向内側で前記第1レンズの像側の面と前記レンズ鏡筒との間を封止する第2封止部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1レンズとレンズ鏡筒との間を封止する第1封止部材と、第1封止部材より径方向内側で第1レンズの像側の面とレンズ鏡筒との間を封止する第2封止部材と、を有する。このため、レンズ鏡筒に収容された第1レンズは、第1封止部材および第2封止部材によって封止されているので、レンズ鏡筒内部の気密性が高い。また、レンズ鏡筒を湿気が通過しても、第2封止部材によって第1レンズの像側の面とレンズ鏡筒との間が
封止されているので、レンズ鏡筒内部に湿気が侵入しにくい。したがって、レンズユニットを長時間使用したとしても、レンズ鏡筒内部に湿気が侵入しにくいので、第1レンズの像側のレンズ面が曇ることを抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記レンズ鏡筒には、前記第1封止部材と前記第2封止部材との間の第1空間と、前記レンズ鏡筒の外部とを連通させる第1連通路が設けられていることが好ましい。このように構成すれば、第1レンズをレンズ鏡筒に組み付ける際、第1封止部材および第2封止部材の間の第1空間の空気を、レンズ鏡筒の外部に排気することができるので、第1レンズをレンズ鏡筒に組み付けることが容易となる。
【0010】
本発明において、前記第1連通路は、第3封止部材で封止されることが好ましい。このように構成すれば、第1レンズを第1収容部に組み付けた後、第1連通路は第3封止部材で封止されるので、第1空間の空気をレンズ鏡筒の外部に排気するために第1連通路を設けた場合であっても、レンズ鏡筒内部の気密性を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記第2封止部材より前記径方向内側で前記第2レンズと前記レンズ鏡筒との間を封止する第4封止部材を有することが好ましい。このように構成すれば、第4封止部材によって第2レンズとレンズ鏡筒のとの気密性が向上するので、レンズ鏡筒内における第2レンズ以降の湿気が、第1レンズと第2レンズとの間に侵入することを抑制することができる。したがって、第1レンズの像側のレンズ面が曇ることを、より抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記レンズ鏡筒は、前記第2レンズの外周側端部に物体側から被さるカシメ部を備え、前記第4封止部材は、前記第2レンズと前記カシメ部との間に配置されることが好ましい。このように構成すれば、第4封止部材を第2レンズとレンズ鏡筒との間に配置しやすい。
【0013】
本発明において、前記レンズ鏡筒には、前記第2封止部材より前記径方向内側における前記第1レンズと前記第2レンズとの間の第2空間と、前記レンズ鏡筒の外部とを連通させる第2連通路が設けられていることが好ましい。このように構成すれば、第1レンズをレンズ鏡筒に組み付ける際、第1レンズおよび第2レンズの間の第2空間の空気を、レンズ鏡筒の外部に排気することができるので、第1レンズをレンズ鏡筒に組み付けることが容易となる。
【0014】
本発明において、前記第2連通路は、第5封止部材で封止されることが好ましい。このように構成すれば、第1レンズを第1収容部に組み付けた後、第2連通路は第5封止部材で封止されるので、第2空間の空気をレンズ鏡筒の外部に排気するために第2連通路を設けた場合であっても、レンズ鏡筒内部の気密性を高めることができる。
【0015】
本発明において、前記第1連通路および前記第2連通路は、互いの一部が合流して前記レンズ鏡筒の外部と連通し、前記第3封止部材および前記第5封止部材は、一体に形成されて前記第1連通路および前記第2連通路を各々封止していることが好ましい。このように構成すれば、第1連通路および第2連通路を、それぞれ封止する第3封止部材および第5封止部材を一体に形成することができるので、レンズユニットの組立を簡素化することができる。
【0016】
本発明において、前記光軸方向からみたとき、前記第1連通路の少なくとも一部は、前記第1封止部材と重なっていることが好ましい。このように構成すれば、第1封止部材および第2封止部材の間の空間の空気を、レンズ鏡筒の外部に排気しやすい。
【0017】
本発明において、前記第1レンズの前記像側の面には、レンズ面の周りを囲むように遮光層が設けられ、前記光軸方向からみたとき、前記第2封止部材は前記遮光層と重なっていることが好ましい。このように構成すれば、第2封止部材は、遮光層により、外部から視認されない。
【0018】
本発明において、前記レンズ鏡筒は、前記第1レンズの像側の面と対向する取付面部を備え、前記第2封止部材は、前記第1レンズの像側の面と前記取付面部とを接合する接着剤であることが好ましい。このように構成すれば、第2封止部材は、第1レンズの像側の面と取付面部との間を封止するとともに、接合することが可能となる。
【0019】
本発明において、前記取付面部は、前記第1レンズが載置される載置面部と、前記載置面部より前記像側に位置する底面部と、を備えることが好ましい。このように構成すれば、第1レンズを、載置面部に安定して載置させることができる。
【0020】
本発明において、前記取付面部は、前記載置面部と前記底面部とを繋ぐ傾斜面部を備えることが好ましい。ここで、取付面が載置面部と底面部とを備える場合、載置面部と底面部とで段部が形成される。この場合、取付面に接着剤を塗布すると、段部に接着剤が十分に塗布されず、隙間が生じる可能性がある。したがって、このように構成すれば、段部が形成されないので、取付面に接着剤を十分に塗布することが可能となる。この結果、レンズ鏡筒内部の気密性が高めることができる。
【0021】
本発明において、前記取付面部は、前記像側に凹んだ環状の溝部を備えることが好ましい。この場合、本発明において、前記溝部は、環状の内周溝と、前記内周溝の径方向外側で周方向に延在する環状の外周溝とを備えることが好ましい。このように構成すれば、内周溝と外周溝との間に、接着剤(第2封止部材)を配置すれば、第1レンズをレンズ鏡筒に組み付けた際、第1レンズの像側の面と取付面との間の余分な接着剤が、内周溝および外周溝には流入する。これにより、取付面において、接着剤が配置される範囲を規制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明において、レンズ鏡筒に収容された第1レンズは、第1封止部材および第2封止部材によって封止されているので、レンズ鏡筒内部の気密性が高い。また、レンズ鏡筒を湿気が通過しても、第2封止部材によって第1レンズの像側の面と取付面部との間が封止されているので、レンズ鏡筒内部に湿気が侵入しにくい。したがって、レンズユニットを長時間使用したとしても、レンズ鏡筒内部に湿気が侵入しにくいので、第1レンズの像側のレンズ面が曇ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明を適用したレンズユニットの断面図である。
【
図3】レンズユニットの組立方法を説明するための図である。
【
図4】レンズユニットの組立方法を説明するための図である。
【
図5】レンズユニットの組立方法を説明するための図である。
【
図9】変形例2における取付面部の端面を模式的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図にお
いては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材の数や縮尺を異ならしめてある。また、以下の説明では、光軸Lが延在している光軸L方向において、物体側にLaを付し、像側にLbを付して説明する。
【0025】
(レンズユニットの構成)
図1は、本発明を適用したレンズユニットの断面図である。本形態のレンズユニット1は、撮像装置等の光学装置に用いられる。レンズユニット1は、光軸L周りの全体にわたって略同様な構成を有している。
図1に示すレンズユニット1は、光軸L方向にレンズが複数枚配置された広角レンズ10と、広角レンズ10を内側に保持するレンズ鏡筒20とを有する。レンズ鏡筒20の像側Lbには、撮像素子100が設けられる。撮像素子100は、CMOSなどである。
【0026】
(広角レンズ)
広角レンズ10は、例えば、6群7枚のレンズ構成を備えている。本形態では、広角レンズ10は、最も物体側Laに配置された第1レンズ11と、第1レンズ11に光軸L方向の像側Lbで対向する第2レンズ12を含み、第1レンズ11より像側Lbに配置された複数の像側レンズとを備える。より具体的には、広角レンズ10は、物体側Laから像側Lbに向かって、負のパワーを持つ第1レンズ11と、負のパワーを持つ第2レンズ12と、正または負のパワーを持つ第3レンズ13と、正のパワーを有する第4レンズ14と、正のパワーを有する第5レンズ15と、正のパワーを有する接合レンズ18(第6レンズ16および第7レンズ17)とを有している。複数の像側レンズは、第2レンズ12~第7レンズ17で構成される。
【0027】
第1レンズは、ガラスレンズまたはプラスチックレンズである。第1レンズ11は、メニスカスレンズである。第1レンズ11は、物体側Laの第1レンズ面111が物体側Laに向けて突出した凸曲面になっており、像側Lbの第2レンズ面112は、物体側Laに向けて凹んだ凹曲面になっている。第1レンズ11は、外周面113と、第1レンズ11の像側Lbの面であるフランジ面114とを備える。外周面113は、大径部117の第1外周面115と、大径部117より像側Lbに位置し大径部117より小径の小径部118の第2外周面116とを備える。フランジ面114は、第2レンズ面112の径方向外側に位置し像側Lbを向く。
【0028】
第2レンズ12、第3レンズ13および第4レンズ14は、プラスチックレンズである。第5レンズ15はガラスレンズである。接合レンズ18は、負のパワーを有するプラスチックレンズである第6レンズ16と、正のパワーを有するプラスチックレンズである第7レンズ17との接合レンズである。レンズユニット1は、第2レンズ12と第3レンズ13との間に円環状の遮光シート2を有し、第4レンズ14と第5レンズ15との間に円環状の絞り3を有している。
【0029】
第1レンズ11は、第2レンズ12、第3レンズ13、第4レンズ14、第5レンズ15および接合レンズ18より外径が大きい。第2レンズ12、第3レンズ13、第4レンズ14および接合レンズ18は外径が略等しく、接合レンズ18において、第6レンズ16は、第7レンズ17より外形が大きい。第5レンズ15は、第2レンズ12等より外径が小さい。
【0030】
(レンズ鏡筒)
図2は、レンズ鏡筒20を説明するための図であり、
図2(a)は、レンズ鏡筒20の斜視図であり、
図2(b)は、レンズ鏡筒20を像側Lbから見た図である。
【0031】
レンズ鏡筒20は、樹脂製である。レンズ鏡筒20の材料としては、対候性に優れた結
晶性プラスチック(ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン)、吸湿が比較的低い非晶性プラスチック(ポリカーボネート等)などが用いられる。レンズ鏡筒20は、筒状である。
図1および
図2に示すように、レンズ鏡筒20は、第1レンズを収容する第1収容部21と、第2レンズ12を含む複数の像側レンズを収容する第2収容部22と、第1収容部21の像側Lbから延在する外径筒部23とを備える。外径筒部23と第2収容部22との間には、肉盗み用の環状の凹部28が形成されている。
【0032】
図1および
図2(a)に示すように、第1収容部21は、外周面113を囲む第1レンズ保持筒部24と、フランジ面114が載置される取付面部25とを備える。第1レンズ保持筒部24は、円筒形状である。第1レンズ保持筒部24の物体側Laの端部には、第1レンズ11を固定するカシメ部241が設けられている。第1レンズ保持筒部24の内径寸法は、第1レンズ11の第1外周面115の外径寸法より僅かに大きい。
【0033】
図2(a)に示すように、取付面部25は、第1レンズ保持筒部24の内周側に設けられた環状の面部である。取付面部25は、フランジ面114が載置される載置面部251と、載置面部251より像側Lbに位置する底面部252とを備える。載置面部251は、周方向に等間隔で4つ設けられている。
【0034】
図1および
図2(a)に示すように、第2収容部22は、第1収容部21の内側に位置する。第2収容部22は、第2レンズ12を含む複数の像側レンズの外周面を囲む第2レンズ保持筒部26と、第2レンズ保持筒部26の内周面から径方向内側に張り出した段部27と、第2レンズ保持筒部26の像側Lbの端部で径方向内側に張り出した張出部29とを備える。第2レンズ保持筒部26の物体側Laの端部には、第2レンズ12を固定するカシメ部261が設けられている。
【0035】
図1および
図2に示すように、レンズ鏡筒20には、後述する第1封止部材31と後述する第2封止部材32の間との第1空間S1と、レンズ鏡筒20の外部とを連通させる第1連通路201が設けられている。
図2(a)に示すように、第1連通路201は、1つの載置面部251の径方向外側に設けられた孔である。
図1および
図2(b)に示すように、第1連通路201は、レンズ鏡筒20の凹部28を介してレンズ鏡筒20の外部と連通する。第1連通路201は、レンズユニット1を組み立てた後、第3封止部材33によって、封止されている。
【0036】
図1および
図2に示すように、レンズ鏡筒20には、第2封止部材32より径方向内側における第1レンズ11と第2レンズ12との間の第2空間と、レンズ鏡筒20の外部とを連通させる第2連通路202が設けられている。より具体的には、
図2(a)に示すように、第2連通路202は、取付面部25の径方向内側に設けられた溝部210の側壁に設けられた孔である。
図1および
図2(b)に示すように、第2連通路202は、レンズ鏡筒20の凹部28を介してレンズ鏡筒20の外部に連通する。本形態では、
図2(a)に示すように、第2連通路202は、第1連通路201が設けられた載置面部251の径方向内側に位置する。
図1および
図2(b)に示すように、第2連通路202は、凹部28において、第1連通路201と互いの一部が合流し、一つの連通路200を形成しており、連通路200は、凹部28を介してレンズ鏡筒20の外部に連通している。
図1に示すように、第2連通路202は、レンズユニット1を組み立てた後、第5封止部材35によって、封止されている。なお、第3封止部材33および第5封止部材35は、封止部材36によって構成されている。すなわち、第3封止部材33および第5封止部材35は、一体となっている。本形態では、封止部材36は、UV硬化性の接着剤360である。本形態において、封止部材36は、接着剤360である。接着剤360は、UV硬化性接着剤である。
【0037】
(広角レンズの固定)
図1に示すように、第1レンズ11は、第1レンズ保持筒部24の内部に挿入されている。第1レンズ11は、カシメ部241が物体側Laから被さることによって物体側Laへの移動が規制されている。その結果、第1レンズ11は、第1収容部21の内部に保持される。
【0038】
第1レンズ11の第2外周面116と第1レンズ保持筒部24との間には、第1封止部材31が設けられる。本形態では、第1封止部材31は、Oリング310である。Oリング310は、径方向に弾性変形した状態で、第1レンズ11の第2外周面116および第1レンズ保持筒部24の内周面に密着している。この際、光軸L方向からみたとき、第1連通路201の少なくとも一部は、Oリング310の一部と重なっている。
【0039】
図1に示すように、Oリング310よりも内側において、第1レンズ11のフランジ面114と取付面部25との間には、第2封止部材32が設けられる。すなわち、第2封止部材32は、第1レンズ11のフランジ面114と載置面部251および底面部252との間に配置されている。本形態において、第2封止部材32は、第1封止部材31より径方向内側でフランジ面114とレンズ鏡筒20とを接合する接着剤320である。従って、第1レンズ11のフランジ面114は、接着剤320により取付面部25に接合されている。接着剤320は、熱硬化性接着剤である。
【0040】
ここで、第1レンズ11のフランジ面114には、第2レンズ面112の周りを囲むように遮光層119が設けられ、光軸L方向からみたとき、第2封止部材32は遮光層119と重なっている。したがって、第2封止部材32は、外部から視認されない。遮光層119は、第1レンズ11のフランジ面114に塗布された遮光性の塗膜である。
【0041】
図1に示すように、第6レンズ16のフランジ部160は、段部27に物体側Laから当接する。第5レンズは、ホルダ4に保持されており、ホルダ4は、第6レンズのフランジ部160に物体側Laから当接する。第4レンズ14のフランジ部140は、ホルダ4に物体側Laから当接する。第3レンズ13のフランジ部130は、第4レンズ14のフランジ部140に絞り3を介して物体側Laから当接する。第2レンズ12のフランジ部120は、第3レンズ13のフランジ部130に遮光シート2を介して物体側Laから当接している。
【0042】
第2レンズ12のフランジ部120は、カシメ部261が物体側Laから被さることによって第2レンズ12の物体側Laへの移動が規制されている。その結果、第2レンズ12、遮光シート2、第3レンズ13、第4レンズ14、絞り3、第5レンズ15および接合レンズ18が第2収容部22の内部に保持される。
【0043】
図1に示すように、本形態において、第2封止部材32より径方向内側には、第2レンズ12とレンズ鏡筒20との間を封止する第4封止部材34が設けられている。本形態において、第4封止部材34は、第2レンズ12とカシメ部261との間に設けられており、第2レンズ12とカシメ部261との間は、第4封止部材34によって封止されている。本形態において、第4封止部材34は、第2レンズ12とカシメ部261とを接合する接着剤340である。接着剤340は、UV硬化性接着剤である。
【0044】
(レンズユニットの組立)
次に、レンズユニット1に組立方法について説明する。
図3~5は、レンズユニット1の組立方法を説明するための図である。
【0045】
図3(a)に示すように、第2収容部22の内部に、第2レンズ12、遮光シート2、
第3レンズ13、第4レンズ14、絞り3、第5レンズ15および接合レンズ18を収容し、熱カシメによって、カシメ部261を形成する。その後、
図3(b)に示すように、第2レンズ12とカシメ部261との間に、接着剤340を塗布する。塗布した後、紫外線を接着剤340に向けて照射し、接着剤340を硬化させる。
【0046】
次に、
図4(a)に示すように、気密性試験機(真空ポンプ)400を張出部29に接続して第2収容部22内部を減圧して、接着剤340の封止による気密性の試験(リークチェック)を行う。これによって、第2収容部22の気密性を確認する。
【0047】
次に、取付面部25に、接着剤320を塗布する。その後、
図4(b)に示すように、第1レンズ11の第2外周面116にOリング310を配置した状態で、第1レンズ11を第1レンズ保持筒部24に挿入する。第1レンズ11を第1レンズ保持筒部24に挿入する際、Oリング310は、径方向に弾性変形した状態で、第1レンズ11の第2外周面116および第1レンズ保持筒部24の内周面に密着するので、第1空間S1の空気は第1レンズ11と第1レンズ保持筒部24との間から排出されずに圧縮される。しかしながら、第1連通路201(連通路200)が設けられているので、第1空間S1の空気は、第1連通路201(連通路200)から凹部28に排出される。同様に、第2空間S2の空気は圧縮されるが、第2連通路202(連通路200)が設けられているので、第2空間S2の空気は、第2連通路202(連通路200)から凹部28に排出される。これにより、第1空間S1および第2空間S2で圧縮された空気が、凹部28に排出されるので、圧縮された空気によって接着剤320に隙間が発生することを防止することができる。また、第1レンズ11を第1レンズ保持筒部24に挿入することが容易となる。
【0048】
次に、
図5(a)に示すように、接着剤320に熱を加えることにより接着剤320を硬化させる。この際、熱により、第1空間S1の空気は膨張するが、第1空間S1の空気は、第1連通路201(連通路200)から凹部28に排出される。同様に、第2空間S2の空気は膨張するが、第2空間S2の空気は、第2連通路202(連通路200)から凹部28に排出される。これにより、第1空間S1および第2空間S2で膨張した空気が、凹部28に排出されるので、膨張した空気によって接着剤320に隙間が発生することを防止することができる。
【0049】
その後、気密性試験機400を、凹部28を含む領域に接続し、Oリング310による気密性の試験を行う。これによって、第1収容部21の気密性を確認する。気密性試験に合格した場合には、
図5(b)に示すように、第1連通路201および第2連通路202に、凹部28および連通路200を介して接着剤360を塗布する。接着剤360を塗布した後、紫外線を接着剤360に向けて照射し、接着剤360を硬化する。これにより、接着剤360によって第1連通路201および第2連通路202を封止する。
【0050】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のレンズユニット1は、光軸L方向の物体側Laに配置された第1レンズ11と、第1レンズ11に光軸L方向の像側Lbで対向する第2レンズ12を含み、第1レンズ11より像側Lbに配置された複数の像側レンズ(第2レンズ12~第7レンズ17)と、光軸Lを中心とする径方向内側に第1レンズ11および複数の像側レンズを保持するレンズ鏡筒20と、第1レンズ11とレンズ鏡筒20との間を封止する第1封止部材31と、第1封止部材31より径方向内側で第1レンズ11の像側の面(フランジ面114)とレンズ鏡筒20との間を封止する第2封止部材32と、を有する。
【0051】
本形態によれば、レンズ鏡筒20に収容された第1レンズ11は、第1封止部材31および第2封止部材32によって封止されているので、レンズ鏡筒20内部の気密性が高い。また、レンズ鏡筒20を湿気が通過しても、第2封止部材32によって第1レンズ11
のフランジ面114とレンズ鏡筒20との間が封止されているので、レンズ鏡筒20内部に湿気が侵入しにくい。したがって、レンズユニット1を長時間使用したとしても、レンズ鏡筒20内部に湿気が侵入しにくいので、第1レンズ11の像側Lbの第2レンズ面112が曇ることを抑制することができる。
【0052】
本形態において、レンズ鏡筒20には、第1封止部材31と第2封止部材32との間の第1空間S1と、レンズ鏡筒20の外部とを連通させる第1連通路201が設けられている。このように構成すれば、第1レンズ11をレンズ鏡筒20に組み付ける際、第1封止部材31および第2封止部材32の間の第1空間S1の空気を、レンズ鏡筒20の外部に排気することができるので、第1レンズ11をレンズ鏡筒20に組み付けることが容易となる。
【0053】
本形態において、第1連通路201は、第3封止部材33で封止される。このように構成すれば、第1レンズ11をレンズ鏡筒20に組み付けた後、第1連通路201は第3封止部材33で封止されるので、第1空間S1の空気をレンズ鏡筒20の外部に排気するために第1連通路201を設けた場合であっても、レンズ鏡筒20内部の気密性を高めることができる。
【0054】
本形態において、第2封止部材32より径方向内側で第2レンズ12とレンズ鏡筒20との間を封止する第4封止部材34を有する。このように構成すれば、第4封止部材34によって第2レンズ12とレンズ鏡筒20のとの気密性が向上するので、レンズ鏡筒20内における第2レンズ12以降の湿気が、第1レンズ11と第2レンズ12との間に侵入することを抑制することができる。したがって、第1レンズ11の像側Lbの第2レンズ面112が曇ることを、より抑制することができる。
【0055】
本形態において、レンズ鏡筒20は、第2レンズ12の外周側端部に物体側から被さるカシメ部261を備える。第4封止部材34は、第2レンズ12とカシメ部261との間に配置される。このように構成すれば、第4封止部材34を第2レンズ12とレンズ鏡筒20との間に配置しやすい。
【0056】
本形態において、レンズ鏡筒20には、第2封止部材32より径方向内側における第1レンズ11と第2レンズ12との間の第2空間S2と、レンズ鏡筒20の外部とを連通させる第2連通路202が設けられている。このように構成すれば、第1レンズ11をレンズ鏡筒20に組み付ける際、第1レンズ11および第2レンズ12の間の第2空間S2の空気を、レンズ鏡筒20の外部に排気することができるので、第1レンズ11をレンズ鏡筒20に組み付けることが容易となる。
【0057】
本形態において、第2連通路202は、第5封止部材35で封止される。このように構成すれば、第1レンズ11をレンズ鏡筒20に組み付けた後、第2連通路202は第5封止部材35で封止されるので、第2空間S2の空気をレンズ鏡筒20の外部に排気するために第2連通路202を設けた場合であっても、レンズ鏡筒20内部の気密性を高めることができる。
【0058】
本形態において、第1連通路201および第2連通路202は、互いの一部が合流してレンズ鏡筒20の外部と連通する。第3封止部材33および第5封止部材35は、一体に形成されて第1連通路201および第2連通路202を各々封止している。このように構成すれば、第1連通路201および第2連通路202を、それぞれ封止する第3封止部材33および第5封止部材35を一体に形成することができるので、レンズユニット1の組立を簡素化することができる。
【0059】
本形態において、光軸L方向からみたとき、第1連通路201の少なくとも一部は、第1封止部材31と重なっている。このように構成すれば、第1封止部材31および第2封止部材32の間の第1空間S1の空気を、レンズ鏡筒20の外部に排気しやすい。
【0060】
本形態において、第1レンズ11の像側の面(フランジ面114)には、第2レンズ面112の周りを囲むように遮光層119が設けられ、光軸L方向からみたとき、第2封止部材32は遮光層119と重なっている。このように構成すれば、第2封止部材32は、遮光層119により、外部から視認されない。
【0061】
本形態において、レンズ鏡筒20は、第1レンズ11の像側の面(フランジ面114)と対向する取付面部25を備え、第2封止部材32は、第1レンズ11の像側の面(フランジ面114)と取付面部25とを接合する接着剤である。このように構成すれば、第2封止部材32は、第1レンズ11のフランジ面114と取付面部25との間を封止するとともに、接合することが可能となる。
【0062】
本形態において、取付面部25は、第1レンズ11が載置される載置面部251と、載置面部251より像側Lbに位置する底面部252と、を備える。このように構成すれば、第1レンズ11を、載置面部251に安定して載置させることができる。
【0063】
(本発明の実施形態の変形例1)
図6は、変形例1のレンズ鏡筒20の斜視図である。
図7は、変形例1における取付面部25の断面図である。変形例1のレンズ鏡筒20は、上記のレンズ鏡筒20の取付面部25の構成が相違するが、他の構成は同一である。よって、変形例1のレンズ鏡筒20の説明では、上記のレンズ鏡筒20と対応する構成に同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0064】
図6および
図7に示すように、取付面部25は、像側Lbに凹んだ環状の溝部253を備える。溝部253は、環状の内周溝254と、内周溝254の径方向外側で周方向に延在する環状の外周溝255とを備える。本形態では、接着剤320は、内周溝254と外周溝255との間に配置される。第1レンズ11を第1収容部21に組み付けた際、第1レンズ11のフランジ面114と載置面部251との間の余分な接着剤が、内周溝254および外周溝255には流入する。これにより、載置面部251において、接着剤が配置される範囲を規制することができる。
【0065】
(本発明の実施形態の変形例2)
図8は、変形例2のレンズ鏡筒20の斜視図である。
図9は、変形例2における取付面部25の端面を模式的に説明するための図である。変形例2のレンズ鏡筒20は、上記のレンズ鏡筒20の取付面部25の構成が相違するが、他の構成は同一である。よって、変形例2のレンズ鏡筒20の説明では、上記のレンズ鏡筒20と対応する構成に同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0066】
図8および
図9に示すように、取付面部25は、載置面部251と底面部252とを繋ぐ傾斜面部256を備える。ここで、傾斜面部256を備えない取付面部25に接着剤320を塗布した場合、載置面部251および底面部252で形成される段部に接着剤が十分に塗布されず、隙間が生じる可能性がある。したがって、本例のように構成すれば、傾斜面部256により載置面部251および底面部252は連続するので、取付面部25に接着剤を隙間なく塗布することができる。これにより、接着剤320により、第1レンズ11のフランジ面114と取付面部25との間を、確実に封止することができる。なお、本例の取付面部25に変形例1の溝部253を設けてもよい。
【0067】
(本発明の実施形態の他の変形例)
上記実施形態では、第1封止部材31と第2封止部材32との間の第1空間S1をレンズ鏡筒20の外部と連通させる第1連通路201、および第1レンズ11と第2レンズ12との間の第2空間S2をレンズ鏡筒20の外部と連通させる第2連通路202の双方が設けられていたが、第1連通路201および第2連通路202のうちの第1連通路201のみが設けられた態様や、第1連通路201および第2連通路202のうちの第2連通路202のみが設けられた態様を採用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…レンズユニット、2…遮光シート、3…絞り、4…ホルダ、10…広角レンズ、11…第1レンズ、12…第2レンズ、13…第3レンズ、14…第4レンズ、15…第5レンズ、16…第6レンズ、17…第7レンズ、18…接合レンズ、20…レンズ鏡筒、21…第1収容部、22…第2収容部、23…外径筒部、24…第1レンズ保持筒部、25…取付面部、26…第2レンズ保持筒部、27…段部、28…凹部、29…張出部、31…第1封止部材、32…第2封止部材、33…第3封止部材、34…第4封止部材、35…第5封止部材、36…封止部材、100…撮像素子、111…第1レンズ面、112…第2レンズ面、113…外周面、114…フランジ面、115…第1外周面、116…第2外周面、117…大径部、118…小径部、119…遮光層、120…フランジ部、130…フランジ部、140…フランジ部、160…フランジ部、200…連通路、201…第1連通路、202…第2連通路、210…溝部、241…カシメ部、251…載置面部、252…底面部、253…溝部、254…内周溝、255…外周溝、256…傾斜面部、261…カシメ部、310…Oリング、320…接着剤、340…接着剤、360…接着剤、400…気密性試験機、L…光軸、La…物体側、Lb…像側、S1…第1空間、S2…第2空間