(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】建物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
E04G21/14
(21)【出願番号】P 2020200400
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩章
(72)【発明者】
【氏名】山田 基裕
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正憲
(72)【発明者】
【氏名】池田 崇
(72)【発明者】
【氏名】松井 政樹
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-273311(JP,A)
【文献】特開2014-185484(JP,A)
【文献】特開2015-183386(JP,A)
【文献】特開2017-125322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00 - 21/22
E04B 1/00 - 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、
前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物
の最上階を形成する部分までを構築する工程と、
前記通路を残して前記建物が構築された後、前記通路に、あと施工基礎梁と、前記あと施工基礎梁の上方の前記建物と、を構築する工程と、
を備えた建物の構築方法。
【請求項2】
建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、
前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物
の最上階を形成する部分までを構築する工程と、
前記通路を残して前記建物を構築した後、前記通路の上方に前記建物を構築する工程と、
前記通路の上方に前記建物を構築した後、前記通路にあと施工基礎梁を施工する工程と、
を備えた建物の構築方法。
【請求項3】
前記通路は、前記建物の内側を横断している、請求項1又は2に記載の建物の構築方法。
【請求項4】
建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、
前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物を構築する工程と、
前記通路を残して前記建物が構築された後、前記通路に、鉄骨梁又はプレキャストコンクリート梁
であるあと施工基礎梁と、前記あと施工基礎梁の上方の前記建物と、を構築する工程と、
を備えた建物の構築方法。
【請求項5】
建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、
前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物を構築する工程と、
前記通路を残して前記建物を構築した後、前記通路の上方に前記建物を構築する工程と、
前記通路の上方に前記建物を構築した後、前記通路に、鉄骨梁又はプレキャストコンクリート梁である
あと施工基礎梁を施工する工程と、
を備えた建物の構築方法。
【請求項6】
建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、
前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物を構築する工程と、
前記通路を残して前記建物が構築された後、前記通路に、あと施工基礎梁と、前記あと施工基礎梁の上方の前記建物と、を構築する工程と、
を備え、
前記あと施工基礎梁からはコネクターが突出しており、
前記あと施工基礎梁の上方又は側方にコンクリートを打設して、前記コネクターが埋設されたコンクリートスラブを前記あと施工基礎梁に架け渡す、建物の構築方法。
【請求項7】
建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、
前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物を構築する工程と、
前記通路を残して前記建物を構築した後、前記通路の上方に前記建物を構築する工程と、
前記通路の上方に前記建物を構築した後、前記通路にあと施工基礎梁を施工する工程と、
を備え、
前記あと施工基礎梁からはコネクターが突出しており、
前記あと施工基礎梁の上方又は側方にコンクリートを打設して、前記コネクターが埋設されたコンクリートスラブを前記あと施工基礎梁に架け渡す、建物の構築方法。
【請求項8】
前記あと施工基礎梁、及び、前記あと施工基礎梁の上方の前記建物は、前記建物の外周部から順に構築される、
請求項1又は2に記載の建物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、施工エリア内に確保した工事用通路の上方へ構造物を構築する建物の施工方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の建物の施工方法においては、工事用通路を残して、この工事用通路の上方へ構造物を構築することにより、施工エリア内に工事用の動線を確保している。
【0005】
しかしながら、工事用通路の上方へ構造物を構築しているため、工事用通路から揚重機のアームを旋回させることが難しい。このため、この建物の施工方法では、建物の構造部材を吊下げるために、建物の外側に配置したクレーン車を用いて、建物の高さより高い位置でアームを旋回させている。このため、揚重機の規模が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、揚重機を小型化できる建物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の建物の構築方法は、建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物の最上階を形成する部分までを構築する工程と、前記通路を残して前記建物が構築された後、前記通路に、あと施工基礎梁と、前記あと施工基礎梁の上方の前記建物と、を構築する工程と、を備えている。
【0008】
請求項1の建物の構築方法では、基礎梁が、建物の外側と内側とを連通する通路を残して構築される。すなわち、通路部分には基礎梁が構築されない。このため、建物の内側に揚重機等を通行させることができる。これにより、揚重機が建物の外側しか通行できない場合と比較して、アームが短い揚重機を用いて建物の構造部材を揚重して建物を構築することができる。したがって、揚重機を小型化できる。
【0009】
そして、通路を残して建物を構築した後、通路に、あと施工基礎梁と、あと施工基礎梁の上方の建物と、を構築する。これにより、通路の両側の建物と、通路の上方の建物と、で一体的な建物を構築することができる。
【0010】
請求項2の建物の構築方法は、建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物の最上階を形成する部分までを構築する工程と、前記通路を残して前記建物を構築した後、前記通路の上方に前記建物を構築する工程と、前記通路の上方に前記建物を構築した後、前記通路にあと施工基礎梁を施工する工程と、を備えている。
【0011】
請求項2の建物の構築方法では、基礎梁が、建物の外側と内側とを連通する通路を残して構築される。すなわち、通路部分には基礎梁が構築されない。このため、建物の内側に揚重機等を通行させることができる。これにより、揚重機が建物の外側しか通行できない場合と比較して、アームが短い揚重機を用いて建物の構造部材を揚重して建物を構築することができる。したがって、揚重機を小型化できる。
【0012】
そして、通路を残して建物を構築した後、通路の上方に建物を構築し、さらにその後に、通路にあと施工基礎梁を施工する。これにより、通路の上方の建物を構築している間、通路に揚重機を走行させられる。
【0013】
請求項3の建物の構築方法は、請求項1又は2に記載の建物の構築方法において、前記通路は、前記建物の内側を横断している。
【0014】
請求項3の建物の構築方法では、通路が建物の内側を横断している。これにより、揚重機は建物の内側を横断して走行できる。このため、通路が袋小路になっている場合と比較して、揚重機が建物の内側に出入りし易く、施工性が高い。
【0015】
請求項4の建物の構築方法は、建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物を構築する工程と、前記通路を残して前記建物が構築された後、前記通路に、鉄骨梁又はプレキャストコンクリート梁であるあと施工基礎梁と、前記あと施工基礎梁の上方の前記建物と、を構築する工程と、を備える。
【0016】
請求項4の建物の構築方法では、あと施工基礎梁は、鉄骨梁又はプレキャストコンクリート梁とされている。このため、あと施工基礎梁を現場打ちコンクリート梁等で構築する場合と比較して、工期を短縮できる。
請求項5の建物の構築方法は、建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物を構築する工程と、前記通路を残して前記建物を構築した後、前記通路の上方に前記建物を構築する工程と、前記通路の上方に前記建物を構築した後、前記通路に、鉄骨梁又はプレキャストコンクリート梁であるあと施工基礎梁を施工する工程と、を備える。
【0017】
請求項6の建物の構築方法は、建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物を構築する工程と、前記通路を残して前記建物が構築された後、前記通路に、あと施工基礎梁と、前記あと施工基礎梁の上方の前記建物と、を構築する工程と、を備え、前記あと施工基礎梁からはコネクターが突出しており、前記あと施工基礎梁の上方又は側方にコンクリートを打設して、前記コネクターが埋設されたコンクリートスラブを前記あと施工基礎梁に架け渡す。
【0018】
請求項6の建物の構築方法では、あと施工基礎梁から突出したコネクターが、コンクリートスラブに埋設される。これにより、あと施工基礎梁とコンクリートスラブとが構造的に接続される。
【0019】
このため、あと施工基礎梁と建物(例として、フーチング、柱又は梁)とは強固に固定する必要がなく、あと施工基礎梁が施工時に脱落しない程度の強度を備えた一時的な固定とすることができる。これにより、あと施工基礎梁の建方の施工性が向上するため、工期を短縮し、工事費を削減できる。
請求項7の建物の構築方法は、建物の外側と内側とを連通する通路を残して基礎梁を構築する工程と、前記建物の構造部材を前記通路から揚重して、前記基礎梁の上方に前記建物を構築する工程と、前記通路を残して前記建物を構築した後、前記通路の上方に前記建物を構築する工程と、前記通路の上方に前記建物を構築した後、前記通路にあと施工基礎梁を施工する工程と、を備え、前記あと施工基礎梁からはコネクターが突出しており、前記あと施工基礎梁の上方又は側方にコンクリートを打設して、前記コネクターが埋設されたコンクリートスラブを前記あと施工基礎梁に架け渡す。
請求項8の建物の構築方法は、請求項1又は2に記載の建物の構築方法において、前記あと施工基礎梁、及び、前記あと施工基礎梁の上方の前記建物は、前記建物の外周部から順に構築される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、揚重機を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る建物の構築方法において、基礎梁とあと施工基礎梁とを施工した状態を示す平面図である。
【
図2】(A)は本発明の実施形態に係る建物の構築方法において、通路を残して基礎梁を施工した状態を示す平面図であり、(B)は基礎梁の上方に建物を構築している状態を示す平面図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る建物の構築方法において、通路にあと施工基礎梁を施工した状態を示す立面図であり、(B)はあと施工基礎梁に先行して通路の上方の梁を施工した状態を示す立面図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態に係る建物の構築方法におけるあと施工基礎梁を示す立面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)はコンクリートスラブをあと施工基礎梁の側方に形成した変形例を示す断面図である。
【
図5】(A)は本発明の実施形態に係る建物の構築方法におけるあと施工基礎梁を、梁に固定した変形例を示す部分立面図であり、(B)はあと施工基礎梁をプレキャストコンクリートで形成した変形例を示す部分立面図であり、(C)は(B)におけるC-C線断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る建物の構築方法において、通路を2本形成した変形例を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る建物の構築方法において、通路の一端を建物の内側で終端させた変形例を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る建物の構築方法において、建物の周囲に通路を形成しない変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る建物の構築方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0023】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0024】
(建物)
本発明の実施形態に係る建物の構築方法は、
図1に示す建物10を構築する方法である。建物10は、複数階に亘って形成された多層建築物である。なお、
図1においては、建物10の基礎を形成するフーチング20、基礎梁22及びあと施工基礎梁24並びに柱26が示されている。建物10が建設された敷地において敷地境界線Lと建物10との間には、通路LOが形成されている。通路LOは、建物10の外周を取り囲んで形成されている。
【0025】
(建物の構築方法)
建物10を構築するためには、まず、
図2(A)に示すように、フーチング20及び基礎梁22を構築する。基礎梁22は、建物10の外側と内側とを連通する通路LIを残した部分において、フーチング20と一体的に構築する。
【0026】
ここで、建物10の「外側」とは建物10の外壁より屋外側の部分であり、「内側」とは建物10の外壁より屋内側の部分である。通路LIは、建物10の外側の通路LOと建物の内側とを連通している。また、通路LIは、建物10の内側をX方向に沿って横断し、建物10におけるX方向一方側の通路LOから、X方向他方側の通路LOに亘って形成されている。
【0027】
次に、
図2(B)に示すように、建物10の構造部材、例えば柱26や梁28を、通路LO、LIから楊重して、基礎梁22の上方に柱梁架構を構築する。換言すると、基礎梁22の上方に建物10を構築する。柱26及び梁28は、建物10における最上階を形成する部分まで積み上げて構築する。これにより、建物10における通路LIを除く部分が構築される。
【0028】
次に、建物10における通路LIの部分を構築する。建物10における通路LIの部分の構築方法は、一例として、
図3(A)に示すように、通路LIにあと施工基礎梁24を構築し、その後、あと施工基礎梁24の上方の梁28を構築する。
【0029】
このとき、
図1に示すあと施工基礎梁24Aを構築し、次いで、あと施工基礎梁24Aの上方の梁28(
図3(A)参照)を構築する。その後、あと施工基礎梁24Bを構築し、次いで、あと施工基礎梁24Bの上方の梁28(
図3(A)参照)を構築する。さらに、あと施工基礎梁24Cを構築し、次いで、あと施工基礎梁24Cの上方の梁28(
図3(A)参照)を構築する。あと施工基礎梁24Aは建物の外周部に配置されるあと施工基礎梁である。また、あと施工基礎梁24Bはあと施工基礎梁24Aと隣り合って配置されるあと施工基礎梁である。さらに、あと施工基礎梁24Cはあと施工基礎梁24Bと隣り合って配置されるあと施工基礎梁である。
【0030】
つまり、建物10の外周部である通路LIの端部から、1スパンずつ、あと施工基礎梁24及びその上方の梁28を順に構築することで、建物10における通路LIの部分を構築する(所謂建て逃げ方式)。
【0031】
建物10における通路LIの部分の構築方法の別の一例は、
図3(B)に示すように、通路LIにあと施工基礎梁24以外の梁28を構築し、その後、あと施工基礎梁24を構築する。
【0032】
あと施工基礎梁24に先行して梁28を構築する場合は、
図3(A)に示した例と同様に、1スパンずつ、梁28及びあと施工基礎梁24を建て逃げ方式で構築することができる。
【0033】
(あと施工基礎梁の構造)
あと施工基礎梁24は、
図4(A)に示すようにH形鋼で形成され、フーチング20に載せられる。また、あと施工基礎梁24は、フーチング20にアンカーボルト24Dで固定される。なお、あと施工基礎梁24のフーチング20に対する固定強度は、あと施工基礎梁24が、施工誤差として許容できる寸法以上ずれない程度の強度を有していればよい。なお、アンカーボルト24Dは、あと施工アンカーボルトとしてもよい。
【0034】
あと施工基礎梁24の上フランジには、コネクターとしてのスタッドボルト24Sが溶接され、このスタッドボルト24Sは、あと施工基礎梁24の上面から上方向に突出している。
図4(A)においては図示が省略されているが、
図4(B)に示すように、あと施工基礎梁24の上部には、コンクリートスラブ30が形成されている。コンクリートスラブ30は、現場打ちコンクリートをあと施工基礎梁24の上方に打設して形成され、スタッドボルト24Sは、コンクリートスラブ30に埋設されている。
【0035】
なお、
図4(C)に示すように、スタッドボルト24Sは、あと施工基礎梁24のウェブに溶接してもよい。この場合、コンクリートスラブ30は、あと施工基礎梁24の側方に架け渡される。
【0036】
また、
図5(A)に示すように、あと施工基礎梁24はフーチング20に固定しなくてもよい。例えばフーチング20の高さが低い場合、あと施工基礎梁24は、基礎梁22(又は柱26の柱脚部)に固定したアングル材32に載せてもよい。これにより、フーチング20を必要高さ以上に形成する必要がない。なお、アングル材32は、アンカーボルト24Eによって、基礎梁22に固定する。
【0037】
さらに、あと施工基礎梁は必ずしもH形鋼で形成しなくてもよい。例えば
図5(B)、(C)に示すあと施工基礎梁34のように、あと施工基礎梁は、プレキャストコンクトートで形成してもよい。あと施工基礎梁34は、例えばフーチング20に固定したアングル材36によって挟まれて、フーチング20に仮固定される。また、あと施工基礎梁34の上部からは、スターラップ(あばら筋)38が突出し、このスターラップ38は、コンクリートスラブ30(
図5(B)では不図示)に埋設されている。
【0038】
このように、本発明の実施形態に係る建物の構築方法では、あと施工基礎梁は、鉄骨梁又はプレキャストコンクリート梁とされている。このため、あと施工基礎梁を現場打ちコンクリート梁等で構築する場合と比較して、工期を短縮できる。
【0039】
なお、あと施工基礎梁24が固定されるフーチング20の側面間の距離は、7m以上確保することが好ましい。これにより、揚重機がフーチング20の間を走行できる。揚重機のサイズに応じて、この寸法は適宜調整できる。
【0040】
(作用及び効果)
本発明の実施形態に係る建物の構築方法では、
図2(A)に示すように、基礎梁22が、建物10の外側と内側とを連通する通路LIを残して構築される。すなわち、通路LI部分には、通路LIの両側の建物10における柱26及び梁28が構築されるまで、あと施工基礎梁24が構築されない。このため、建物10の内側に揚重機等を通行させることができる。
【0041】
これにより、揚重機が建物10の外側(例えば通路LO)しか通行できない場合と比較して、アームが短い揚重機を用いて建物10の構造部材を揚重し、建物を構築することができる。したがって、揚重機を小型化できる。
【0042】
すなわち、例えば
図1に示した状態は、通路LI部分にあと施工基礎梁24が施工された後の状態である。この場合、揚重機は建物10の外側の通路LOしか通行できない。この状態において建物10の全体に揚重機のアームが届くようにするためには、大きな揚重機が必要となる。
【0043】
仮に、あと施工基礎梁24が施工される部分の基礎梁を、基礎梁22と同時に施工した場合、基礎梁22の施工後、揚重機は通路LOしか通行できない。このため、通路LOから柱26の2スパン分の長さのアームを備えた揚重機では、建物10においてアームが届かない場所が生じる。このため、さらに大きな揚重機が必要となる。
【0044】
一方で、
図2(A)に示すように、建物内部に通路LIを設け、この通路LIに揚重機を走行させることで、柱26の2スパン分に満たない長さのアームを備えた揚重機でも、アームを建物10の全体に届かせることができる。つまり、揚重機のアームが短くても、建物10の全体にアームを届かせることができる。すなわち、本実施形態においては、建物10の内側に通路LIを確保した状態で、通路LIに揚重機を走行させることで、小さな揚重機で建物10を構築することができる。
【0045】
そして、
図2(B)に示すように、通路LIを残して建物10を構築した後、
図3(A)又は
図3(B)に示すように、通路LIに、あと施工基礎梁24と、あと施工基礎梁24の上方の建物10(梁28)と、を構築する。これにより、通路LIの両側の建物10と、通路の上方の建物10と、で一体的な建物を構築することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、あと施工基礎梁24及び梁28を1スパンずつ構築する建て逃げ方式を採用しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0047】
例えば
図2(B)に示すように通路LIを残して建物10を構築した後、通路LIの上方全体に亘って建物10における梁28(すなわち、あと施工基礎梁24以外の梁、
図3(B)参照)を構築し、さらにその後に、通路LIにあと施工基礎梁24をまとめて施工してもよい。これにより、通路LIの上方の梁28を構築している間、通路LIに揚重機やその他の重機、車両等を走行させられる。
【0048】
また、本発明の実施形態に係る建物の構築方法では、
図2(A)に示すように、通路LIが建物10の内側を横断している。これにより、揚重機は建物10の内側を横断して走行できる。このため、通路LIが袋小路になっている場合と比較して、揚重機が建物10の内側に出入りし易く、施工性が高い。
【0049】
なお、本実施形態において、通路LIを一本のみ形成したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図6に示すように、建物10の大きさや揚重機の大きさに応じて、適宜通路LIの本数は調整できる。
【0050】
また、通路LIは、必ずしも建物10の内側を横断する必要はなく、
図7に示す通路LEのように、一方の端部が建物10の内部で終端した袋小路状の通路としてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態においては、建物10の周囲にも、揚重機が通行可能な通路LOが形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図8に示すように、建物10の周囲に、通路は必ずしも必要ではない。但し、揚重機が敷地の外部から通路LIへ侵入できるように、通路LIは敷地の前面道路へ連通している、又は通路LIと前面道路との間にアプローチ用の空地が確保されているものとする。
【0052】
また、本発明の実施形態に係る建物の構築方法では、あと施工基礎梁から突出したコネクター(
図5(A)~(C)に示すスタッドボルト24Sや
図5(B)、(C)に示すスターラップ38)が、コンクリートスラブ30に埋設される。これにより、あと施工基礎梁24、34とコンクリートスラブ30とが構造的に接続される。
【0053】
このため、あと施工基礎梁24、34と建物10(例として、フーチング20、柱26又は基礎梁22)とは強固に固定する必要がなく、あと施工基礎梁24、34が施工時に脱落しない程度の強度を備えた一時的な固定とすることができる。これにより、あと施工基礎梁24、34の建方の施工性が向上するため、工期を短縮し、工事費を削減できる。
【0054】
なお、本実施形態においては、あと施工基礎梁が、鉄骨梁(あと施工基礎梁24)又はプレキャストコンクリート梁(あと施工基礎梁34)とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0055】
例えばあと施工基礎梁を現場打ちコンクリートで形成しても、通路LI、LEを残して建物10を構築する工程を経ることで、揚重機を小さくする効果を得ることができる。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【符号の説明】
【0056】
10 建物
22 基礎梁
24 あと施工基礎梁
24S スタッドボルト(コネクター)
26 柱(構造部材)
28 梁(構造部材)
34 あと施工基礎梁
38 スターラップ(コネクター)
LI 通路
LE 通路